インテルの第9世代Core シリーズで最上位に位置する「Core i9 9900K」。やっと入手したので、スペックの違いや9900Kの位置づけといった基本的なことから、肝心の性能についてのレビューと検証。
9700K / 8700Kと比較しながら、解説していきたいと思います。
Core i9 9900Kの仕様とスペック
かなり話題のCPUなのでスペックを既に把握している人は多いと思いますが、念のためCore i9 9900Kのカタログスペック(仕様)について、解説しておきます。
CPU | Core i9 9900K | Core i7 7820X | Ryzen 7 2700X |
---|---|---|---|
ロゴ | |||
世代 | 9th Coffee Lake R | 6th Skylake-X | 2nd Zen+ |
プロセス | 14nm++ | 14nm++ | 12nm |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | サーマルグリス | ソルダリング |
ソケット | LGA 1151 v2 | LGA 2066 | Socket AM4 |
チップセット | Intel 300 | Intel X299 | AMD 300 / 400 |
コア数 | 8 | 8 | 8 |
スレッド数 | 16 | 16 | 16 |
ベースクロック | 3.60 GHz | 3.60 GHz | 3.70 GHz |
ブーストクロックシングルコア使用時 | 5.00 GHz | 4.30 GHz | ~ 4.30 GHz |
ブーストクロック全コア使用時 | 4.70 GHz | 4.00 GHz | ~ 4.30 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 可能 |
L1 Cache | 512 KB | 512 KB | 768 KB |
L2 Cache | 2 MB | 8 MB | 4 MB |
L3 Cache | 16 MB | 11 MB | 16 MB |
対応メモリ | DDR4-2666 | DDR4-2666 | DDR4-2933 |
チャネル | x2 | x4 | x2 |
最大メモリ | 64 GB | 128 GB | 64 GB |
ECC対応 | 不可 | 不可 | U-DIMMのみ |
PCIe | 16 | 28 | 16 + 4 |
構成 | 1×16 + 2×8 | 1×16 + 1×8 + 1×4 | 1×16 + 1×4 |
1×8 + 2×4 | 3×8 + 1×4 | – | |
内蔵GPU | UHD 630 | なし | なし |
GPUクロック | 350 ~ 1200 MHz | – | – |
TDP | 95 W | 140 W | 105 W |
MSRP | $ 499 | $ 599 | $ 329 |
参考価格国内Amazon(平常時) | 65980 円 | 64800 円 | 36980円 |
参考価格国内Amazon(品薄時) | 69980 円 | 82300 円 | 39000 円 |
Core i9 9900Kの特徴はなんと言っても「8コア / 16スレッド」という、明らかにライバルのRyzen 7 2700Xを意識した仕様です。そしてクロック周波数も大幅に引き上げられている。
同じコア数 / スレッド数に揃えるだけでなく、インテルの強みである「高いクロック周波数」を更に加えることで、圧倒的な性能差を見せつけるという意気込みが感じられます。
ちなみに、なぜライバルはRyzen 7なのに、9900Kは「Core i9」に分類されているのか。ここについては細かいことを気にしたら負けという感じです。
なぜなら、インテルのCoreブランドの振り分け方は割りと大雑把。型番の2桁目の数字でだいたい決まってます。比較表に載せた通り、同じ8コアでも「i7 7820X」というCPUが存在していることが良い証拠。
高クロックに耐えるべく「ソルダリング」が復活
第9世代のCoreシリーズ全体の特徴として「TIMがソルダリングに変更された。」というのは重要なポイント。TIMとは、Thermal Interface Materialの略で、日本語的には「熱伝導材」という意味になる。
CPUのチップ内部を、横から断面図を見たイメージがこちら。CPUの殻(ヒートスプレッダ)と、CPU本体(ダイ)の間に、従来のインテルCPUでは「サーマルグリス」が熱伝導材として使われていた。
サーマルグリスは米国のダウコーニング社で製造しているモノで、安価で高耐久なのがメリット。一方、熱伝導率はかなり悪いため、非常に冷えにくいという悪評がある。
冷えにくいということは、クロック周波数を上げにくい。だから、高クロック化を目指す第9世代では、もっと熱伝導率に優れた別のTIMに変更する必要があった。
そこで、昔のインテルCPUで使われていた「ソルダリング」仕様を復活させた、というわけ。インジウムという金属を使って「はんだ付け」にしたので、従来の安物グリスと比較すると大幅に冷えやすくなっている。
結果として、i9 9900Kは従来のCore i7から更に2コアも増え8コアになったにも関わらず、ブーストクロック時は最大4.7 ~ 5.0 GHzで動作できるようになった。
従来のチップセットを利用可能
これだけの仕様変更を加えた割には、第8世代から始まったチップセット「Intel 300」シリーズを引き続き利用可能。互換性は維持されているので、乗り換えできます。
CPU | Core i7 9700K | Core i7 8700K | Core i7 7700K |
---|---|---|---|
対応ソケット | LGA 1151 v2 | LGA 1151 | |
対応チップセット | Intel Z390 | – | |
Intel Z370 | Intel Z270 | ||
Intel H370 | Intel H270 | ||
Intel B360 | Intel B250 | ||
Intel H310 | – |
「Z390」は第9世代に合わせて登場した、新しいチップセットですが、機能的には従来のZ370とそれほど変わらない。既にZ370マザーボードを持っているなら、あえて乗り換える必要はなし。
BIOS更新することで、第9世代のCPUを使えるようになります。あえてZ390搭載マザーボードに乗り換える意味としては、かなり派手なオーバークロックをする人くらいですね
Z390搭載マザーボードはVRMフェーズなど、電力供給の設計がかなり強化されているため、理屈では従来のマザーボードよりオーバークロックがしやすい。
「i9 9900K」のスペック要点まとめ
最後に、Core i9 9900Kの仕様上の重要ポイントをまとめておきます。
- Ryzenに対抗する「8コア / 16スレッド」
- クロック周波数は大幅に引き上げ
- ソルダリング仕様で熱対策を図る
- 希望小売価格は100ドルの値下げ
MSRPは499ドルで、Ryzen 7 2700Xより5割ほど高い。一方で、インテルの8コア16スレッドに位置していたCore i7 7820Xから見ると、100ドルほど値下げです。
プラットフォームが「Intel X299」から「Intel 300シリーズ」に変更されたことで、マザーボードの最低コストもザックリ100ドルほど低くなった。
なんだかんだスペックが似ているRyzen 7と比較されがちだが、一応は「7820Xの高クロック版を、より安価に使えるようになった」ため。インテルCPUとしてはちゃんと進化しています。
Core i9 9900Kを実機レビュー
独特のパッケージング & 開封
i9 9900Kは黒色の布袋に収められている。
出してみると、中には正12面体の独特なパッケージングが登場。
「嵩張る」「輸送効率が悪い」「まるでサッカーボールだ」など、いろいろと賛否両論あるらしいパッケージングですが、個人的には好きです。写真映りは良いし、コレクター欲も満たせるデザイン。
でも、確かにCPU本体の大きさに対して、あまりにも大き過ぎる体積というのは否定出来ないか…w
では開封していきます。基本的にサッカーボール上のパッケージングの4箇所にシールを貼って閉じているだけなので、Ryzen Threadripperほどギミックな開封方法ではない。
一番外側を外すと、帯状の梱包が外れていき、また梱包シールが見当たるので剥がします。
帯が取れたら、次は透明ブルーの本体のシールを剥がす。
反対側も同じシールで閉じられているので剥がします。
最後は卵が割れるように、パカッと開封。梱包シールはどれも丁寧に剥がせば、後が全く残らないタイプだったので安心です。キレイなまま、この独特なパッケージングを保存できる。
おまけとして、従来のCore i9や、40周年記念の限定版i7 8086Kとパッケージングを比較してみた。高さだけでなく奥行きも増したため、インテルのパッケージングでは最もデカイ。
付属品はいつも通りです
あまりに独特なパッケージングですが、付属品はいつも通りでした。CPU本体と、説明書(兼保証書)が入っています。
説明書の裏側に、Core i9(第9世代)のロゴシールが用意されている。ホログラム加工が施されているため、見る方向によって色が変化する仕様でした。
この面積に約7万円が詰まってる…と思うと、人間が作ってるモノの中では、最も緻密な工業製品なのは間違いないな…としみじみ。
テスト環境の紹介と比較対象
テスト環境 | パーツ | 備考 / 詳細 |
---|---|---|
CPU #1 | Core i9 9900K | i9 9900KはAuto設定 / i7 9700Kはプロファイルで再現 |
CPU #2 | Core i7 8086K | Core i7 8700Kを想定し最大4.7 GHzに制限 |
冷却 | NZXT X62 | 280mm簡易水冷ユニット |
グラボ | RTX 2080 Ti | MSI Gaming X Trio |
メモリ | DDR4-2666 8GB x2 | G.Skill Sniper X |
マザーボード | Intel Z370 | Gigabyte AORUS Ultra Gaming / BIOSはF12に更新 |
SSD | SATA 250GB | Samsung 860 EVO M.2 |
SATA 2TB | Micron 1100 2TB | |
電源ユニット | 1200W(80+ Platinum) | Toughpower iRGB PLUS 1200W |
OS | Windows 10 Pro 64bit | Ver 1803 |
ドライバ | NVIDIA 416.34 WQHL | RTXシリーズ対応ドライバ |
ディスプレイ | 1920 x 1080 @144Hz | BenQ XL2536 |
Core i9 9900Kの検証は、いつも通り「ちもろぐ専用ベンチ機」を用いる。マザーボードはZ370ですが、BIOSを「F12」に更新することで対応させた。
さて、i9 9900Kだけを検証しても分かりにくいので、筆者が持っているCore i7 8086Kも検証に使う。それと、i7 9700も比較してみたかったので、BIOSからエミュレートして同一の性能を再現することにした。
グラフィックボードには現状もっともボトルネックが出やすい「最速のRTX 2080 Ti」を使用。従来のCore i7では引き出せなかった性能を、9700Kや9900Kは引き出せるのか注目ですね。
メモリーは無難に「DDR4-2666」に調整。電源ユニットは容量1200Wのプラチナ認証で、余裕たっぷり。DSP内蔵なので、消費電力の計測も可能です。
「i9 9900K」のCPU性能 : 最強の8コア
では、まずはCPUとしての性能を検証していく。
レンダリング性能
Cinebench R15はCPU用の定番ベンチマーク。CPUに物量タスクである「レンダリング」を実行させて、掛かった時間からスコアを算出する。CPUの持っている理論上の性能を最大限に引き出してくれるため、傾向が分かりやすい。
Cinebench R15 / マルチスレッド性能
マルチスレッド性能はやはり、16スレッドを備えるi9 9900Kが2000 cbを突破してみせた。i7 8700Kと比較すると、実に5割近い性能アップ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能
1コアあたりの性能は、おおむねクロック周波数に沿った結果です。i9 9900Kはシングル処理だと5.0 GHzで動作するために、200 cbオーバーは当たり前のスコアだと言える。
Blenderは無料で使える国際的に知名度の高い、3Dレンダリングソフト。「BMW」プリセットを読み込んで、生成に掛かった時間でCPUの性能を計測できます。
Blender / BMWの生成時間
結果はCinebench R15とだいたい同じです。i7 9700Kはわずかに高速で、i9 9900Kはぶっちぎりで速い。
最後はグラフィックボード用のベンチマークである「3DMark – FireStrike」の物理演算スコア(Phisycs)から、CPUの処理性能を測ってみる。
FireStrike / Physics Score
やっぱりCore i9 9900Kが極端に速いです。
計算速度
Geekbench 4はマルチプラットフォーム対応のベンチマークで、内容は様々なテストのパッケージとなっている。その中身は、AESなどの暗号処理の計算速度などが問われていて、シンプルな計算速度が重視されています。
Geekbench 4 / マルチスレッド
そのため、スレッド数よりもクロック周波数の方が、スコアに与える影響が大きいです。
Geekbench 4 / シングルスレッド
シングルスレッド性能も、だいたいクロック周波数に沿った結果に。
Euler3Dは流体力学の計算をCPUに実行させることで、CPUの計算速度を計測するベンチマーク。単位はHz(ヘルツ : 1秒間あたりの計算回数)で示され、数値が大きいほど優秀です。
Euler3D / 1秒あたりの計算速度
なぜかi7 9700Kが一番速い速度を叩き出しているが、これも基本的にはシングルスレッド性能が優秀であればあるほど、計算速度が速くなる傾向。
動画エンコード
無料の動画エンコードソフトで特に有名な「Handbrake」。約1GBのアニメファイル(.mkv)をエンコードし、ログに残された「平均フレームレート」でCPU性能を比較できます。
Handbrake x264 / 平均処理速度
高速なエンコードが行える「x264」では、i9 9900Kはi7 8700Kより約30%ほど高速化。Ryzen 7が90 ~ 96 fpsの範囲に来るので、同じコア数で比較するならi9 9900KはRyzenに勝てる状況。
ただ、動画エンコードには「AVX 2」を駆使するため、インテルの方が有利という事情もある。加えて、全コアのブーストクロックが4.7 GHzであることも、この圧倒的な速さの要因ですね。
Handbrake x265 / 平均処理速度
より複雑な「x265」も、だいたい同じ傾向になった。
ゲーム実況配信
動画エンコードの次は「リアルタイムエンコード」を検証する。もっぱら「ゲーム実況配信」のことですね。実際に「黒い砂漠」の配信と録画を行い、録画された動画のドロップフレームで性能を測ります。
なお、配信の品質は「fast」プリセットで、録画はmp4形式かつ60fpsです。
i7 8700 | i7 9700 | i9 9900K | R7 2700X |
---|
そうして出来上がった比較動画はこの通り。fast品質だと、8スレッド以下のCPUは意外と苦戦していることが分かります。8コア搭載のi7 9700Kはもう少し頑張るかな、と思っていましたがダメでしたね。
やはり8スレッドでは足りない。一方で、16スレッドのRyzen 7 2700Xとi9 9900Kは見違えて安定している。そして、両者ともに同じスレッド数だが、i9 9900Kの方が、かなりスムーズな映像を出力できているのが体感できる。
圧縮と解凍
7-Zipは非常に有名なフリー解凍ソフト。付属のベンチマークツールを使って、CPUの解凍と圧縮の処理スピードを計測する。単位はMIPSですが、スコアのようなものと思えばOK。
7-Zip Benchmark / 圧縮
圧縮は割りとコア数が重要な傾向で、16スレッドあるi9 9900Kが8スレッドのi7 9700Kをそれほど引き離せていない。
7-Zip Benchmark / 解凍
解凍はi9 9900Kが圧勝。スコアの傾向としては、Cinebenchと似ている印象です。
ブラウザの処理速度
ブラウザ上で動作するベンチマーク。Javascriptの処理速度で、CPUがどれだけブラウザの処理やWebアプリを高速に実行できるかをスコア化する。単位はミリ秒なので、小さいほど高速です。
Kraken / Webアプリの実行速度
意外とi7 9700Kが速い。こういう単純な処理はスレッドが分割されていない方が有利なのかもしれない。とはいえ、1000msを割り込んでいれば十分過ぎる速度ですけど。
Photoshop CC 2018
バッチファイルを用いて、Photoshop CC 2018を実際に動作させる。それぞれの処理に掛かった時間から、スコアを算出してCPUがどれくらいPhotoshopを速く動かせるかを比較できます。
Photoshop CC 2018 / 総合スコア
全てのスコアをひとまとめにした総合スコアはこの通り。マルチスレッド性能が高い、かつ、ブースト時のクロック周波数が高いi9 9900Kがかなり素早くPhotoshopを動かせた。
Photoshop CC 2018 / GPUスコア
内訳を見ていくと、GPUスコアがもっとも伸びている傾向でした。おそらく、RTX 2080 Tiの性能を更に引き出した結果と推測できる。要するに、i7 8700Kではやっぱり2080 Tiに追いつけない可能性が高いということ。
「i9 9900K」のゲーミング性能 : ボトルネック検証
CPU性能の次は、ゲーミング性能を検証。RTX 2080 TiはCore i7 8700Kですら追いつけない(ボトルネックになる)ほど速いが、Core i9 9900Kはどこまで性能を引き出すことが出来るのか。
CS : GO
CS:GO / 最高画質 / 1920 x 1080
非常に軽い動作のためボトルネックが発生しやすいCS:GOでは、クロック周波数の速さに応じてRTX 2080 Tiの性能を引き出せている印象。ただ、既に200fps超えなので、これ以上フレームレートを伸ばす意味は特に無かったり。
Rainbow Six Siege
Rainbow Six Siege / 超高設定 / 1920 x 1080
レインボーシックスシージでは、若干ボトルネックを埋める傾向があったが、効果はごくわずか。
PUBG
PUBG / ウルトラ設定 / 1920 x 1080
PUBGは15%ほどフレームレートが伸びた。まだ伸びる余地があったとは、ちょっと意外です。i7 9700Kとi9 9900Kでそれほど性能が変わらないところを見ると、8コア化が効いてそうな感じ。
Overwatch
Overwatch / エピック設定 / 1920 x 1080
オーバーウォッチはRTX 2080 Tiを使うと、ほぼ300 fps上限に張り付くため、ボトルネックを有無を確認することはできなかった。
Call of Duty : Black Ops IV
Call of Duty : BO4 / 最高設定 / 1920 x 1080
CoD : BO4はマップ「SKIRMISH」でハーフゲーム分、検証を行った。i7 8700Kとi7 9700K / i9 9900Kの間には、ハッキリと性能差が出ており、最大で約14%ほどの伸びとなった。
FINAL FANTASY 14 : 紅蓮のリベレーター
FF14 : 紅蓮のリベレーター / 最高品質 / 1920 x 1080
FF14 : 紅蓮のリベレーターでは、驚くほどキレイにボトルネックが出現しています。性能差としては、約11%ほど。
Final Fantasy XV : Benchmark
FF15 : ベンチマーク / 高品質 / 1920 x 1080
Final Fantasy XVも、FF14と同様グラフ上になかなかキレイに差が出てくれました。性能差は約10%ほどなので、クロック周波数の増加が効いているようです。
黒い砂漠
黒い砂漠 / リマスター画質 / 1920 x 1080
無料MMORPGとして、もっとも美麗なグラフィックを持つ「黒い砂漠」。比較的軽いリマスター画質で検証すると、なんとビックリ。i7 9700Kだけ驚くほどフレームレートを叩き出してくれた。
このように、ハイパースレッディングが無い方が効率よくゲーミング性能を発揮できる場合もあります。
黒い砂漠 / ウルトラ画質 / 1920 x 1080
もっとも重たいウルトラ画質に切り替えると、性能差は7~8%に縮小。黒い砂漠のウルトラ画質はあまりに重すぎて、RTX 2080 Tiですらボトルネックがそれほど出ない様子です。
Monster Hunter World
モンスターハンターワールド / 最高設定 / 1920 x 1080
モンスターハンターワールドも検証してみた。マップ「古代樹の森」をグルリと一周して計測。結果のグラフには、ボトルネックがハッキリと浮かび上がっていて、高クロックな第9世代の強さがよく分かる。
Witcher 3
Witcher 3 / 最高設定(+HairWorks) / 1920 x 1080
Witcher 3では、顕著なボトルネックは見られないものの、フレームレートがフッと上昇する場面ではi9 9900Kの方が伸ばし切れている印象です。
平均パフォーマンス
平均性能 / グラボ : RTX 2080 Ti / 1920 x 1080
あまり時間が取れずサンプルが少ない気もしますが、とりあえずここまでの検証で分かった範囲では、やはりCore i9 9900Kのゲーミング性能はi7 8700Kより秀でています。
インテル自ら「最強のゲーミングCPU」とアピールするだけのことはあります。ただ、ちょっと意外だったのがハイパースレッディングを切った状態であるi7 9700Kの方が、一部のゲームで顕著に優秀だったこと。
理屈としては、ハイパースレッディングが無い方が、特定のアプリケーションにリソースをしっかりと充てられるといったところでしょう。まぁ、これはソフト側の最適化次第という部分も大いにあります。
CPU温度と消費電力
消費電力はやはり増大
それなりに負荷の大きいレンダリングソフト「Blender」を実行中に、HWiNFOを使ってCPUの消費電力を計測させた。グラフを見ての通り、8コア化と高クロック化で、消費電力は大幅に増加しています。
消費電力 / Blender実行時
i7 8700Kと比較すると、4割ほど消費電力が増加したことになる。さて、ここで1Wあたりにどれくらいの処理をこなせているのか。ワットパフォーマンスを計算してみる。
ワットパフォーマンス(CR15 / 消費電力)
それほど大きな差は無く、1ワットあたりの性能は特に改善していない。それでも若干i9 9900Kのワッパが向上しているのは、ソルダリングで多少なりとも冷えやすくなったことと、猛烈に強い16スレッドのおかげ。
CPU温度を検証、ソルダリングの効果は?
CPU温度 / Blender実行時の平均値
消費電力の時と同じく、Blender実行中にCPU温度を計測しておいた。結果はこの通りで、もっとも消費電力が少ないはずのi7 8700Kが最も高温になっており、次にi9 9900Kそしてi7 9700Kの順番でした。
ソルダリングは「殻割り」を行っている自作ガチ勢からは、それほど冷えないと低評価を食らっているが、少なくとも以前のサーマルグリスTIMより冷却効率は改善しているようです。
消費電力が似ているi7 8700Kとi7 9700Kの結果が、そのことを分かりやすく示している。消費電力の比率で言えば、i7 9700Kは約10%高い温度になるべきですが、実際には20℃近く離れています。
オーバークロックを検証
消費電力、温度ときたら、次はオーバークロックの検証です。「ソルダリングで冷えやすくなったから余裕なはず。」と思いきや、現実はそう甘くなかった。9700Kはともかく、9900Kはかなり難しい。
オーバークロックはBIOSの設定画面から「倍率」を設定して行う。i9 9900Kの場合は、初期設定で47倍が入っているので、100 MHz x 47 = 4700 MHz(4.7 GHz)で動作するというわけ。
だから48倍と入れると4.8 GHzになるし、50倍なら5.0 GHzで動作する。ただ、闇雲に倍率を上げていくと消費電力も増大して、CPUの熱が大変なことになってしまう。
そこで、CPUに与える電力を絞ったり増やしたりして、許容できる温度で動くクロックを見つける作業になります。しかし、今回のi9 9900Kはややハズレ気味のCPUらしく、5.0 GHzでBlenderを完走させるのは無理でした。
Blender完走は4.8 GHzまで…
4.9 GHzでも、途中でシステムがクラッシュしてしまって失敗。もっと電圧を盛れば通りそうな気もしたけど、Blenderは4.8 GHzまでで諦めることにした。
CR15完走は5.0 GHzまで…
Cinebench R15はものの数秒で完走してしまうので、1.325V(他にも省電力機能を切ったり、電圧レギュレーターを弄ったりした上での1.325Vです…)まで盛り付けて、5.0 GHz完走です。
CPU温度はすぐに93~94℃くらいに到達するため、常用は厳しい。それに、ソフトによってはCinebenchやBlenderで通った設定がダメだったりもする。主観的な感触ですが、i7 8086Kよりシビアな印象を受けた。
まとめ:ゲーム配信やコアゲーマーにおすすめ
「i9 9900K」のデメリットと弱点
- 希望小売価格から乖離した国内価格
- オーバークロックはやや難しめ
- それなりに高性能なCPUクーラーが必要
- 150Wを超える消費電力
- 安物のマザーボードで使うのは怖い
Core i9 9900Kの主なデメリットは、ほとんどコストに関わる部分ばかりです。特に、設定価格499ドルに対して、国内では6.5~7.5万円という現状の価格は高すぎる水準と言える。
価格が落ち着いてきて、昔のRyzen 7 1800Xと同じく5.2~5.4万円くらいになってくれれば、妥当な価格として受け入れられると思います。
i7 7820Xより安価とは言え、やっぱり6~7万はそこそこ高い印象。それに加えて、運用する上であまりケチったパーツで組むわけにも行かないCPUなので、尚更コストは問題になってしまう。
特に負荷の重たいエンコードやゲーム配信を主な用途にするなら、少なくとも大型空冷ファンか、予算が許すのであれば280mm以上の簡易水冷ユニットがあると安心です。
「i9 9900K」のメリットと強み
- (今のところ)最強クラスの8コアCPU
- トップクラスのゲーミング性能
- ソルダリング仕様
- 性能のムダがない優れた「汎用性」
- 「配信向けCPU」としてのコスパは良好
- (個人的に好きな)独特なパッケージング
Core i9 9900Kの魅力は、やはり「汎用性に優れた最高速度の8コア」であること。現状、これほど速い8コアCPUは他になく、あらゆるソフトでほぼ100%の性能を出せるCPUも、他にはない。
「性能」だけに目を向ければ、「欠点の無いRyzen 7」と言っていい存在です。Aviutlのようなレガシーソフトをスムーズに動かせますし、動画エンコードも高速で、リアルタイムエンコードも軽快にこなしてくれる。
シングルスレッド性能が突出して高いので、多コア対応がやたらと遅いAdobe系ソフトも怖くない。現時点の価格高騰と入手性の悪ささえ無ければ、文句なしに魅力的なCPUと言っていい。
というわけで、「ライバルと比較して死角のない性能」「更に安くなったインテルの8コア」という要素を評価して、ぼくの個人的な評価は「A+」ランクとします。
なお、i9 9900Kはクリエイターやコアゲーマーよりも、ゲーム配信を日常的に行っている実況者さんなど。「ゲーミング + 猛烈な物量タスク」を行うユーザーにこそオススメです。
以上「【レビュー】Core i9 9900Kの強みと弱み:最強の8コアCPUを試す」でした。
Core i9 9900Kを入手する
ようやく在庫が少しずつ入ってくるようになったので、入手性はやや改善されています。それでも品薄という状況に変わりはなく、定価にかなり上乗せされた価格で流通している状況です。
ちなみに定価は一応65980円(税込)ですが、この価格設定自体、ある程度品薄を織り込んだ設定のような気がします。5.2~5.4万円くらいになればかなり魅力的だけれど、まだまだ先の話になりそうかな。
Core i9 9900K搭載のおすすめBTOは?
単品は品薄で入手性も悪いという状況にも関わらず、BTOは驚くほど在庫が潤沢な様子。i9 9900K搭載モデルでも「即日~2日で出荷」と言うから驚きです。
GALLERIA ZZ 9900K | ||
---|---|---|
スペック | 標準仕様 | 推奨カスタマイズ |
CPU | Core i9 9900K | – |
冷却 | 静音パックまんぞくコース | グリス:Thermal Grizzly製グリス |
※120mm中型空冷ファン | – | |
グラボ | RTX 2080 Ti 11GB※3スロット占有のOCモデル採用 | – |
メモリ | DDR4-2666 8GB x2(合計16GB) | – |
マザーボード | Intel Z390搭載 ATX規格 | – |
SSD | NVMe 500GB | – |
HDD | 3TB | – |
ドライブ | DVDドライブ | – |
電源 | 750W 静音電源SilverStone SST-ST75F-PT / 80+ Titanium認証 | 850W 静音電源Corsair HX850i / 80+ Platinum認証 |
OS | Windows 10 Home 64bit | – |
保証 | 1年間 / 持込修理保証 | – |
参考価格 | 339980円(税抜き)最新価格をチェックする |
筆者のおすすめは、既に実機レビュー済みの「ガレリアZZ」。Core i9 9900K + RTX 2080 Tiで圧倒的なゲーミング性能を、スペックの割には安く実現しています。
コスパはあまり考慮せず、しっかりとパーツを選びたいと考えるなら、自作代行メーカーである「サイコム」がおすすめ。第9世代のCPUを選べるようになり、水冷対応モデルも登場したのでコスパ度外視ならオススメ。
ただし、かなり高くなるので、PCパーツに対して一定の知識を持っている人向けですね。
Core i7 9700K(8コア)について、もっと深掘りしたい人はこちらの記事を。
NVIDIAの最新グラボシリーズ「RTX 20」の中では、もっともコスパ的にバランスが取れている「RTX 2070」の性能を解説する記事。
最初の表まちがえすぎ
最初のスペック表のCore i7 9700Kのスペック
Core i7 9700Kじゃない気がするんですが…
1番上のCPU3個の表
明らかに間違えてません?
どうみてもcore_i7 9700kのスペックじゃないw
i9はソルタリングのくせにグリスより冷えていないって聞いた。
最初の比較表ですが、i7 7820Xがi7 9700Kになっています
あの、Core i7 9700Kじゃなくi7 7820X or i7 9800Xでは?
ゲーミング性能テストはOCなしでの結果ですか?
後、定格で使用した場合、ゲーミング時のCPU温度はどれぐらいか教えてほしいです。
ゲーミング性能、CPU性能の検証は「Auto設定」任せです。黒い砂漠のようにCPUをよく使うゲームだと、4.7 GHzで動作しています。
温度はこんな感じ。FF15は平均70℃前後、FF14は平均63℃前後でした。
返信ありがとうございます。
水冷使っても70度越えるのですね。
ゲーミング時においてCPU温度が70度前後いっても問題は無いのでしょうか?
何度ぐらいまでなら無難なのかというのも分からないです。
< 水冷使っても70度越えるのですね。 ぼくの個体は本当にハズレらしく、電圧を落とすとゲームが安定しませんでした。Auto設定に任せると1.300V前後で動作するので、水冷を使っても70℃を超えてしまいます(...悲しい)。 < CPU温度が70度前後いっても問題は無いのでしょうか? 70℃くらいなら特に問題ないです。 常に85~90℃くらいだと、CPUではなくマザーボード側が心配になります。 ちなみに、CPU自体は「熱」が原因で壊れることは滅多にありません。
うちの個体もZ370でCinebench R15をAuto設定で回すと4700MHz/VCORE1.280Vです
恐らくこれもハズレの部類に入りそうですが、アタリ石はAuto設定で1.240Vとか明らかに低い電圧なのかな?
因みにAutoだと1.280Vですが、固定1.200VでCinebench R15を回しても完走します。それ以下は試していません
こんにちは、やかもちさん。色々アドバイスを頂き機種も絞りこんだのですがXiaomi【POCOPHONE F1】という機種を知ってしまいました。この機種の解説の予定はありませんか?また私の使用用途(動画ダウンロード、外部ストレージに移動)にはどうでしょうか?楽しみにしております。
最初の表の真ん中が9700kになってますよ。
最初の表の2つ目のCPUは9700kではなく7820xでは?
質問ですが最初のところ、Core i7 9700KではなくCore i7 7820Xではないですか?
みなさん、表の誤植の指摘ありがとうございます。修正しました(_ _)
いつもお世話になってます、相変わらず分かりやすい説明で助かります。
某所でみた検証ではヒートスプレッタの面積が小さく、それが冷えにくい原因だと言われてるみたいです、cpu重量が8700kが30.5g(hs26.8g)に対し9900kが26g(hs20.2g)であり、8700kが87.8%、9900kが77.6%とプロセスルールの関係もあるかもしれませんが明らかに前世代より軽くヒートスプレッタも小さいです、今後の世代は熱効率についてももう少し改善して欲しいですね
測ってみたら本当に重量が違っていて驚きました。
< ヒートスプレッタの面積が小さく、それが冷えにくい原因だと ソルダリングの割に冷えにくい理由は、やっぱり面積ですよね。i7 7700Kから同じヒートスプレッダを続投させているので、放熱面が小さ過ぎるのだと思われます。 他にも...、
といった要因があるようです。
熱伝導率の高い銅製ヒートスプレッダや、クマ金属グリスへの置き換え、更にダイの研磨などを行うと更に20℃ほど冷えるようになりますが、やる気が起こらないですね。
殻割りが前提の人たちからすると「余計なことをしてくれたな。」という感じかもしれません。
過剰なOCマージンを排除したい、と言うIntel側の思惑が透けて見えますね(セコイ)
まあ手抜きする余裕があるなら10コアのCometLake(うわさ)も商品化できる余地があるって事ですかね
すいません、質問です。
『リアルタイム配信』ではなく、単純な『動画投稿』なら9700で十分ってことでいいんでしょうか?
そうですね。編集した動画のエンコードを、寝ている間や外出中に行うなら、そこまで速度にこだわる必要も無いと思います。
>5.2~5.4万円
今のレートだと499ドルって5.6万円以上なんで、さすがにそれは…
それくらいにまで下がらないと魅力が薄いってことじゃないんですか?
しかも米尼やB&Hの販売価格が535ドル~560ドルだからね
さらに送料と消費税がかかると価格で買える国内価格と大差ない
ちなみに米尼個人輸入すると6.5万かかる。
ロクに調べもせずよく適当かけるな
初めまして。 突然なのですが、R6sにて i9 9900K&1080tiという組み合わせ時のFPSを教えていただきませんでしょうか。設定は超高設定です。
レビュー記事お疲れ様です、いつも楽しみに見させて頂いてます
i9 9900Kは当たり外れの振り幅が結構あるんですかね
エンスー系ではないって言っても6万以上もする決して安くはないCPUなのに
品質は一定に出来ないものなのなのでしょうかね
温度、消費電力、価格、殻割、当たり外れ
購入を躊躇するような要素がいくつもあって手軽に手を出しづらい感ありますねぇ、、
一定の品質ってのはTBを含めた定格動作の事でしょう
そもそもOCは保証外の行為なんでOCマージンまで保証しろ的な考えはどうなんでしょう
OCも万全なハイスペマザボ、メモリ等も用意して、6万7万払って外れ掴まされる可能性があるのはちょっと・・
CPUと言う製品の作り方からOC耐性に差があるのは仕方がないよ
それは製品価格が幾らだろうとそう言うもの、と考えるべきでしょうね
単純なゲーミングだけだとi7が僅かに上回る場面が多いですね
参考になりました
モバイルの9世代目いつ出てくれるのだろうか
インテルもここ数世代はあまり進化がみられずネタ切れ感があるよな
そうは言っても8世代目は一部モデルで
「物理」コアが増えては久々に食指が動いたけど
9700kか配信ではこんなに明確に8700kに劣るんですね
9900kが圧倒的な大差かと思いましたが割とそうでもないんですね。まあ現状のCPU業界の伸び代がコア数を増やすくらいしかないから仕方ないか…。
それはそうと以前から思っていたのですが、今後の性能テストの項目に動画編集時の「Live Playback性能」を追加していただきたいです。動画編集においての快適性はレンダリング速度ではなく、編集時のプレビュー性能だと思いますので。
プレビュー再生においてCPUごとのコマ落ち数を検証していただければ幸いです。要はデコード性能ですね。
いつも非常にわかりやすく実用的な質の高い記事を書いてくださるので、とても有り難いです。今後も頑張って下さい。
>>「i9 9900K」のゲーミング性能 : ボトルネック検証
検証では9700kの方が有利でしたが、もし2080や2080tiをSLIにした場合9900kの方がスコアは伸びるのでしょうか?
今度2080のSLIに挑戦しようかなと思っているので、CPUは9700kか9900kどちらのしようか悩んでるんですよねぇ。コスパ度外視でSLI組むと言ってもやっぱり2万の差は気になる...
ハイパースレッディングのないi7 9700Kの方が、一部のゲームで優秀だったとのことですが。
i9 9900Kでも、BIOSの設定でハイパースレッディングを無効にすることもできると思うのですけど、それら「一部のゲーム」でこれをやったら、ゲーム性能アップするのでしょうか。
なりますよ~。i9 9900Kでも、HTをBIOSから「Disable」にしてしまえば、i7 9700K相当の性能に変化します。
skylake-x は14nm+では?
3000番台 ライゼンが すべてにおいてインテルを 上回るか?
9900kや2080TIは あまりにも 熱が出すぎて故障する報告が
多数 あります やっぱり 無理な設計だったようで
次回の次世代10世代CPuに 期待する
RTX2070superとCorei9 9900Kでマイクラをやっているとバニラでもよくて180FPS
シェーダーを入れると40FPS位しか出ないのですがそんなもんなのでしょうか?