Core i9 9900KSから約2年半ぶりのスペシャル版CPU「Core i9 12900KS」を、今回インテルより提供してもらったので詳しくレビューします。
(公開:2022/6/20 | 更新:2022/6/20)
Core i9 12900KSの仕様とスペック
CPU | Core i9 12900K | Core i9 12900KS | Ryzen 9 5950X |
---|---|---|---|
ロゴ | |||
世代 | 12th Alder Lake S | 12th Alder Lake S | 4th Zen 3 |
プロセス | Intel 10 nm | Intel 10 nm | TSMC 7 nm |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング |
ソケット | LGA 1700 | LGA 1700 | Socket AM4 |
チップセット | Intel 600 | Intel 600 | AMD 400 / 500 |
コア数 | 16 | 16 | 16 |
スレッド数 | 24 | 24 | 32 |
ベースクロック | 3.20 GHz | 3.40 GHz | 3.40 GHz |
ブーストクロック全コア使用時 | 5.10 GHz | 5.20 GHz | 4.90 GHz |
内蔵GPU | UHD 770 | UHD 770 | なし |
GPUクロック | 300 ~ 1550 MHz | 350 ~ 1550 MHz | – |
TDP | 125 W | 150 W | 105 W |
MSRP | $ 599 | $ 749 | $ 799 |
参考価格 2022/06時点(正規品) | 75870 円 | 94580 円 | 89800 円 |
CPU | Core i9 12900K | Core i9 12900KS | Ryzen 9 5950X |
---|---|---|---|
世代 | 12th Alder Lake S | 12th Alder Lake S | 4th Zen 3 |
プロセス | 10 nm | 10 nm | 7 nm |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング |
ソケット | LGA 1700 | LGA 1700 | Socket AM4 |
チップセット | Intel 600 | Intel 600 | AMD 400 / 500 |
コア数 | 16 | 16 | 16 |
スレッド数 | 24 | 24 | 32 |
ベースクロック | 3.20 GHz | 3.40 GHz | 3.40 GHz |
ブーストクロック全コア使用時 | 5.10 GHz | 5.20 GHz | 4.90 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 可能 |
L1 Cache | 1408 KB | 1408 KB | 1024 KB |
L2 Cache | 14 MB | 14 MB | 8 MB |
L3 Cache | 30 MB | 30 MB | 64 MB |
対応メモリ | DDR5-4800 DDR4-3200 | DDR5-4800 DDR4-3200 | DDR4-3200 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | 不可 | 不可 | U-DIMMのみ |
PCIeレーン | Gen5 + Gen4 | Gen5 + Gen4 | Gen4 |
16 + 4 | 16 + 4 | 16 + 4 | |
レーン構成 | 1×16 + 4 | 1×16 + 4 | 1×16 + 1×4 |
2×8 + 4 | 2×8 + 4 | 2×8 + 1×4 | |
– | – | 1×8 + 2×4 + 1×4 | |
内蔵GPU | UHD 770 | UHD 770 | なし |
GPUクロック | 300 ~ 1550 MHz | 300 ~ 1550 MHz | – |
TDP | 125 W | 150 W | 105 W |
MSRP | $ 599 | $ 749 | $ 799 |
参考価格 | 75870 円 | 94580 円 | 89800 円 |
「Core i9 12900KS」はCore i9 12900Kのスペシャル版(Special Edition)です。
ノーマル版のCore i9 12900Kと基本的なスペックにほとんど差はないですが、電気的特性に優れた個体だけを選び抜いた「高選別モデル」です。
ベースクロックが200 MHz増の3.4 GHz、ブーストクロック(全コア)は100 MHz増の5.2 GHz、シングルスレッド時の最大クロックはなんと5.5 GHz(300 MHz増)に達します。
かんたんに言うと、ノーマル版と同じ性能ならより低消費電力で動作し、同じ消費電力ならノーマル版以上の高いクロックで動作が可能です。
そのかわり、価格が599ドルから749ドルへ値上がりしています。日本国内だとなんと約9.5万円です。同じ16コアのRyzen 9 5950Xより5000円ほど高いです。
Core i9 12900Kの基本的な仕様や、第12世代Alder Lakeアーキテクチャの解説は過去のレビュー記事で確認してください。本記事では省略します。
スペシャル版とノーマル版のパッケージデザインです。スペシャル版は紫がかった深い群青色の背景に、Special Editionの英字フォントが入っています。
ヒートスプレッダの形状もほぼ同じです。
刻印の内容はヒートスプレッダの偽造防止のため、若干変更が入っています。インテルのロゴが四角形に、一番下の行にQRコードのような文字列が追加されました。
Core i9 12900KSのCPU性能:定格でノーマル版との差を探る
テスト環境
テスト環境 「ちもろぐ専用ベンチ機(2022)」 | |||
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PC | ver.Intel | ver.Intel | ver.AMD |
CPU | Core i9 12900KS | Core i9 10900K | Ryzen 9 5950X |
冷却 | NZXT X63 280 mm簡易水冷クーラー | ||
マザーボード | ASUS TUF GAMINGZ690-PLUS WIFI D4 | ASUS ROG STRIXZ590-E GAMING | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用モデル「G.Skill TridentZ C16」 | ||
グラボ | RTX 3080使用モデル「MSI VENTUS 3X OC」 | ||
SSD | NVMe 1TB使用モデル「Samsung 970 EVO Plus」 | ||
電源ユニットシステム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | ||
電源ユニットCPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | ||
OS | Windows 11 Pro(Build 22000) 修正パッチ「KB5006746」導入済み | Windows 11 Pro(Build 22000) 修正パッチ「KB5006746」導入済み AMD「3.10.08.506」導入済み | |
ドライバ | NVIDIA 512.95 DCH |
Core i9 12900KSをベンチマークしていく、ちもろぐ専用ベンチ機のスペック表です。なるべくプラットフォーム間で同じようなスペックになるように調整しています。
Alder Lake世代はDDR5メモリに対応するプラットフォームですが、残念ながらDDR5メモリと対応するマザーボードの価格があまりにも高額すぎるため、本レビューでは両プラットフォームでDDR4-3200メモリを使って性能比較します。
OSはWindows 11 Proを新品の「Samsung 970 EVO Plus 1TB」にインストール済み。
Windows 11のバージョンはBuild 22000かつ、ゲーミング性能の不具合を解消した「KB50006746」パッチを適応、さらにAMD Ryzen側は性能低下を防ぐ最新版のチップセットドライバ(3.10.08.560以降)をインストール済みです。
おおむね同じスペックに揃えられていますが、マザーボードに関しては第12世代Coreだけ1ランク低いマザーボードを使います。今回のASUS E-GAMINGはDDR5対応となり、DDR4メモリの互換性が無いので断念しました。
※AMD Ryzenでは「1:1モード」、Intel CPUでは「Gear 1モード」と呼ばれています。互換性重視の「1:2」や「Gear 2」モードは実効性能が悪いので使わないです。
レンダリング性能
CPUの性能をはかるベンチマークとして、「CPUレンダリング」は定番の方法です。ちもろぐでは、下記3つのソフトを用いてCPUレンダリング性能をテストします。
- Cinebench R15
- Cinebench R23
- Blender(BMW)
日本国内だけでなく、国際的にも定番のベンチマークソフトです。なお、CPUレンダリングで調べた性能はあくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。
高性能コア(Pコア)が5.1 GHzに、効率コア(Eコア)が4.0 GHzに上昇した分だけレンダリング性能も向上します。
ノーマル版と比較して、マルチスレッド性能が約4~5%、シングルスレッド性能も約4~5%ほど改善されています。Cinebench R23だとマルチとシングルともにRyzen 9 5950X以上の性能です。
動画エンコード
CPUレンダリングと並んで、動画エンコードはCPUの性能を調べる定番の方法です。
- Handbrake
- Aviutl(rigaya氏の拡張プラグインを使用)
ちもろぐでは、フリー動画エンコードソフト「Handbrake」と、日本国内で人気の動画編集ソフト「Aviutl」における動画エンコード速度をテストします。
ノーマル版ではRyzen 9 5950Xと接戦でしたが、クロックが上昇したCore i9 12900KSならテストした4項目すべてで最高のエンコード性能を示します。
Aviutlにて、拡張プラグイン「x264guiEx」「x265guiEx」を使って動画エンコードをしました。処理が軽い「x264」だとRyzen 9 5950Xがトップですが、「x265」ではCore i9 12900KSが逆転します。
動画編集
「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。
ちもろぐでは、Puget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve 17における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。
Davinci Resolve 17 / 4K動画編集 | |||
---|---|---|---|
テスト内容 | Core i9 12900KS | Core i9 12900K | Ryzen 9 5950X |
Standard Overall Score | 1723 /1000 | 1747 /1000 | 1667 /1000 |
4K Media Score | 145 | 143 | 147 |
GPU Effects Score | 132 | 134 | 134 |
Fusion Score | 240 | 247 | 219 |
Davinci Resolveベンチマークの性能はあまり大きな差が出ていません。Core i9 12900KSとノーマル版の性能差はほぼ無いと考えていいでしょう。
「Premiere Pro」は言わずもがな、超有名な動画編集ソフトです。Ryzenが登場した頃はマルチコアが効きづらい残念ソフトでしたが、2020年以降よりマルチコアが効きやすく最適化されています。
Core i9 12900KSの総合スコアは「1048点」でトップです。Core i9 12900KとRyzen 9 5950Xを上回ります。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。
圧縮スピードは「84190 MIPS」で、Core i7 12700と大差なし。解凍スピードは「152947 MIPS」に伸びますが、5950Xどころか5900Xにすら届かないです。
スコアの傾向を見る限り、圧縮だとEコアの処理性能がほとんど効かないようです。解凍は圧縮よりEコアが効いているものの、Ryzenに追いつけません。
ブラウザの処理速度
PCMark 10 Professional版の「Microsoft Edgeテスト」と、ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUのブラウザ処理性能をテストします。
Edgeブラウザ(Chromium)の処理速度は、Core i9 12900KSが最強です。シングルスレッド性能が効いています。
krakenテストもシングルスレッド性能が反映されやすいです。Core i9 12900KSは423.5 ミリ秒でテストを走破。ノーマル版が記録した441.7 ミリ秒を超える性能です。
Alder Lake世代のブラウザ処理速度は、デスクトップ向けCPUとしては最強クラスです。モバイルSoCだとiPhone 12のApple A14 Bionicに迫る、もしくは並ぶ処理速度だったりします。
なお、mozilla krakenは1000 ミリ秒が大きな目標のひとつで、ここでテストしたCPUはすべて1000 ミリ秒を下回っています。つまり、どれを選んでも実用上はまったく問題ない性能です。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Adobe Photoshop CC」の処理速度をテストします。Puget Systems社のプリセットを用いて、Photoshopを実際に動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出する仕組みです。
Photoshop CC 2021 1800万画素の写真編集 | |||
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テスト内容 | Core i9 12900KS | Core i9 12900K | Ryzen 9 5950X |
総合スコア | 1334 /1000 | 1335 /1000 | 1020 /1000 |
GPUスコア | 143.8 | 141.1 | 145.5 |
一般処理のスコア | 115.6 | 113.1 | 112.2 |
フィルタ系のスコア | 151.2 | 153.9 | 137.2 |
Core i9 12900KSのPhotoshop総合スコアは「1334点」です。Core i9 12900K(ノーマル版)と並ぶ、トップクラスのPhotoshop性能です。
Microsoft Office
パソコンの一般的なワークロードといえば、Microsoftの「Office」ソフトが代表例です。しかし、Microsoft Officeにベンチマークモードはありませんので、ちもろぐでは「PCMark 10 Professional版」を使います。
単なる再現テストではなく、PCMark 10が実際にMicrosoft Office(Word / Excel / PowerPoint)を動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出します。
WordとExcelは最強クラスの性能を発揮します。PowerPointはなぜか8コア以上のRyzen 5000シリーズに大きく差を付けられます。
性能の傾向がばらついていますが、スコア自体は非常に高く、Core i9 12900KSのオフィスワーク処理性能はおおむね優秀です。
ビデオチャット(VC)の処理性能
コロナウイルスの流行によって、テレワーク(在宅勤務)の導入が進み、ビデオ通話(VC)ソフトも出番が増えています。
検証は「PCMark 10」のビデオ会議テストを使います。ビデオ通話のフレームレート、顔認識の処理速度、エンコード(アバター着用など)の処理速度から、ビデオ通話の性能をスコア化します。
ビデオ通話テストはi9 12900KSの性能の割には振るわない結果です。特に「顔識別」のCPUフレームレートはRyzen 5 5600Xにすら届いておらず、処理が最適化されていない様子が伺えます。
「IPC」でCPUの真の進化をチェック
最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。
方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz
これでIPCの違いをキレイに抽出できます。グラフを見ての通り、Core i9 12900KSもといAlder Lake世代はIntel Core史上最高のIPCを達成し、Zen3世代のIPCを上回ります。
2世代前のComet Lakeと比較して約28%、前任者のRocket Lake比で約14%のIPC改善です。
Comet LakeからRocket LakeでZen2を超え、Rocket LakeからAlder LakeでついにZen3超え。息抜きを挟まず2回連続で設計変更を行ったインテルですが、着実に性能を改善しており、今後のRaptor Lake世代やMeteor Lake世代も期待が持てます。
Core i9 12900KSのゲーミング性能
ゲームで100 fpsを軽く超えるハイフレームレートを出すなら、グラフィックボードの性能が重要です。と同時に、グラフィックボードが高性能であればあるほど・・・CPUの性能も影響が大きくなります。
ゲーマー向けグラフィックボードで、ほぼ最強の近い性能を持つ「RTX 3080」を使って、FF14ベンチマークのフレームレートを測定した結果です。
グラフを見ての通り、同じグラボなのに性能に差が出るのが分かります。これが「CPUボトルネック」と呼ばれる現象です。
基本的にゲーミング性能は適度なコア数(6~8コア)と、シングルスレッド性能の高さに相関性があるため、高性能コアが8個かつ最強のシングルスレッド性能を持つCore i9 12900KSのゲーミング性能は非常に期待できます。
前回のレビューから時間が空いてしまっているので、今回は8つのゲームタイトルを使ってデータをあらためて取り直しました。
- アサシンクリード:ヴァルハラ
- サイバーパンク2077(ベンチマークまとめ)
- FF14:暁月のフィナーレ
- FF15:ベンチマーク
- Forza Horizon 5
- 原神(ベンチマークまとめ)
- Microsoft Flight Simulator 2020(ベンチマークまとめ)
- レインボーシックスシージ(ベンチマークまとめ)
- VALORANT
- Watch Dogs Legion
なお、Apex LegendsはCPUの性能差が非常に出づらいため、今回のテストから除外しています。
フルHDゲーミング(10個)のテスト結果
比較的シングルスレッド性能が反映されやすい「FF14ベンチマーク」では、Core i9 12900KSがトップでした。
GPU負荷が重たい「FF15ベンチマーク」は、比較したCPUで大きな差は出ないです。
アサシンクリード:ヴァルハラもFF15と同じく、GPU負荷が高いゲームゆえにCPU性能の差はほとんど確認できません。
ヴァロラントは動作が非常に軽く、CPUの性能が効きやすいです。しかし、ノーマル版との差はほぼ無しで、Ryzen 9 5950Xと約2.7%の性能差にとどまります。
サイバーパンク2077は非常に重たいゲームで、CPUの性能差がほぼ出ません。
Forza Horizon 5もCPU性能差が出づらいですが、Ryzen 9 5950Xより約2.5%高い性能です。
フレームレート制限を解除した原神では、GPU使用率がやや遊び気味で思ったほど性能が出ないですが、CPUのシングルスレッド性能に若干影響を受けているようです。
MSFS 2020は思った以上にCPUの性能が反映されています。
平均60 fpsを超えるとGPU使用率の伸びが悪化する傾向のあるゲームですが、Core i9 12900KSがトップにいるあたりシングルスレッド性能の高さが効いているように見えます。
レインボーシックスシージはGPU負荷が軽いゲームです。その割にCPUの性能差はほとんど出ていません。Ryzen 9 5950Xとの性能差は約2.7%です。
ウォッチドッグス:レギオンはCore i9 12900KSと同じAlder Lake世代と性能差なし。Ryzen 9 5950Xとの性能差は約4.9%でした。
平均パフォーマンス
測定した10個のデータを平均パフォーマンスとしてまとめました。Core i9 12900KSの平均ゲーミング性能は、Core i9 12900Kを超えて最強です。
ライバルのRyzen 9 5950Xより平均およそ4%高い性能を示しており、最強のゲーミングCPUに君臨しています。
ただし、ゲーム向けに特化したRyzen 7 5800X3Dと比較してどうなるか・・・?は持っていないので不明です。
消費電力とCPU温度
ちもろぐのCPUレビューでは、電力ロガー機能が付いた電源ユニットを2台使って、CPU単体の消費電力を実際に測定します。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
電源ユニットを2台に分けて電力供給を分割しているため、CPUに電力供給している電源ユニットの計測値(+12V Power)を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。
ゲーミング時の消費電力
比較的、CPU負荷が大きいFF15ベンチマークを実行中に、消費電力を測定した結果です。
Core i9 12900KSの消費電力は平均でおよそ128 Wです。クロックが上がった分だけ、ノーマル版より13 W増えています。
Ryzen 9 5950Xも意外と100 W台に達しており、ゲーミング用途だとどちらも省エネとはいえません。
消費電力とワットパフォーマンス
Cinebench R23のストレステストを使って、CPU使用率を100%に維持します。
Core i9 12900KSの消費電力は平均285 Wに達し、ピーク時に300 Wを超えます。ノーマル版と比較して30 Wくらい消費電力が増えています。
280 Wの消費電力でも、旧世代と比較して確実にワットパフォーマンスが改善されています。
- Core i9 12900KS:Core i9 11900K = 約1.48倍
- Core i9 12900KS:Core i9 10900K = 約1.42倍
- Core i9 12900KS:Core i9 12900K = 約0.91倍
- Core i9 12900KS:Ryzen 9 5950X = 約0.49倍
2世代前のCore i9 10900K(72.0 cb/W)から約1.42倍、1世代前のCore i9 11900K(69.0 cb/W)から約1.48倍と、消費電力あたりの性能は1.5倍です。
しかし、ノーマル版のi9 12900K(111.7 cb/W)と比較すると約0.91倍でかえって悪化します。
CPU温度
Cinebench R23のストレステスト(10分間)を実行中に、CPU温度を記録します。
Core i9 12900KSのCPU温度は平均で84.7℃、最大87℃でした。280 Wも電力を消費している割に、280 mm簡易水冷クーラーで普通に冷やせてビックリです。
消費電力が半分しかないRyzen 7 5800Xと大差ない温度差です。
- ヒートスプレッダーの面積と厚みが従来世代より大きい
- チップ(ダイ)の厚みを従来世代よりさらに薄型化
- Ryzen 5000(Zen3)よりチップの面積が大きい
以前のAlder Lakeレビューで説明してきたように、Alder Lake世代は冷えやすいように設計上の工夫が施されています。チップ(ダイ)の面積、ヒートスプレッダーの面積が広いので、消費電力の割に冷やしやすいです。
オーバークロックと低電圧化を検証
オーバークロックで全コア5.3 GHzまで可能
コア負荷別のクロック設定(By Core Usage)と、クロック周波数別のコア電圧(V/F Curve OC)を併用して、Core i9 12900KSのオーバークロックを軽く検証しました。
なお、テスト時のキャッシュ倍率はAuto、ロードラインキャリブレーション(LLC)もAuto(Lv3)です。
クロック | VFカーブ | Vcore | 温度 | 消費電力※ | CR23 | W/P |
---|---|---|---|---|---|---|
55 / 53 / 40 | #4 -0.075 #5 -0.060 #6 -0.025 | 1.354 V | 96℃ | 311.3 W | 29771 | 95.6 cb/W |
55 / 52 / 40 | #4 -0.075 #5 -0.075 #6 -0.025 | 1.301 V | 86℃ | 276.5 W | 29358 | 106.2 cb/W |
55 / 52 / 39 | #4 -0.125 #5 -0.090 #6 -0.025 | 1.287 V | 85℃ | 267.9 W | 29198 | 109.0 cb/W |
Auto ( 54 / 51 / 40 ) | Auto | 1.285 V | 83℃ | 270.5 W | 28991 | 107.2 cb/W |
55 / 51 / 39 | #4 -0.150 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.210 V | 73℃ | 225.7 W | 28805 | 127.6 cb/W |
55 / 49 / 39 | #4 -0.125 #5 -0.090 #6 -0.025 | 1.190 V | 69℃ | 211.0 W | 28048 | 132.9 cb/W |
55 / 49 / 38 | #4 -0.145 #5 -0.090 #6 -0.025 | 1.154 V | 66℃ | 195.4 W | 27920 | 142.9 cb/W |
55 / 49 / 38 | #4 -0.180 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.154 V | 66℃ | 195.6 W | 27848 | 142.4 cb/W |
55 / 46 / 37 | #3 -0.075 #4 -0.250 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.119 V | 60℃ | 173.1 W | 26459 | 152.8 cb/W |
55 / 46 / 36 | #3 -0.100 #4 -0.300 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.080 V | 58℃ | 159.0 W | 26177 | 164.6 cb/W |
※同じCPUの比較では、刻み値がやや大きい+12Vの実測値ではなく、HWiNFOのソフト読み(Package Power)を使います。
今回のレビューで使用したCore i9 12900KSだと、オーバークロックはシングルスレッドで5.5 GHz、マルチスレッドで5.3 GHzまで安定動作が可能です。
5.3 GHz時の消費電力は約310 Wで、CPU温度は最大96℃に達します。より強力な冷却システム(60 mm厚の360 mmラジエーターなど)を使えば、90℃前後まで抑えられそうです。
さすがSpecial Edition・・・、ノーマル版のCore i9 12900Kとはまったく電気的特性が違います。
以前レビューで使ったCore i9 12900Kだと、305 Wも使って5.1 GHzが限界だったのに対して、今回のCore i9 12900KSなら310 Wで5.3 GHzまでオーバークロックができます。
同じ5.1 GHz設定だと消費電力はなんと226 Wに抑えられており、低いコア電圧で高いクロック周波数を維持できます。
50 W少ない消費電力でi9 12900Kと同等
クロック | VFカーブ | Vcore | 温度 | 消費電力 | CR23 | W/P |
---|---|---|---|---|---|---|
55 / 49 / 39 | #4 -0.125 #5 -0.090 #6 -0.025 | 1.190 V | 69℃ | 211.0 W | 28048 | 132.9 cb/W |
55 / 49 / 38 | #4 -0.145 #5 -0.090 #6 -0.025 | 1.154 V | 66℃ | 195.4 W | 27920 | 142.9 cb/W |
55 / 49 / 38 | #4 -0.180 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.154 V | 66℃ | 195.6 W | 27848 | 142.4 cb/W |
Auto (i9 12900K) | Auto | Auto | 81℃ | 247.8 W | 27713 | 111.8 cb/W |
55 / 46 / 37 | #3 -0.075 #4 -0.250 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.119 V | 60℃ | 173.1 W | 26459 | 152.8 cb/W |
55 / 46 / 36 | #3 -0.100 #4 -0.300 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.080 V | 58℃ | 159.0 W | 26177 | 164.6 cb/W |
さらに設定を突き詰めて、Core i9 12900Kの定格時とほぼ同じ性能に揃えると、消費電力を196 Wまで下げられました。CPU温度は最大66℃で大人しいです。
性能を維持しつつ、消費電力を下げるコツはEコアのクロック設定です。
実際にいろいろと設定をいじっていて気づいたのですが、高性能コア(Pコア)より効率コア(Eコア)の方が要求電圧が高いです。Eコアのクロックを無理に維持すると、Pコア側の消費電力もつられて下がりにくい感覚があります。
クロック | VFカーブ | Vcore | 温度 | 消費電力 | CR23 | W/P |
---|---|---|---|---|---|---|
55 / 46 / 37 | #3 -0.075 #4 -0.250 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.119 V | 60℃ | 173.1 W | 26459 | 152.8 cb/W |
55 / 46 / 36 | #3 -0.100 #4 -0.300 #5 -0.100 #6 -0.025 | 1.080 V | 58℃ | 159.0 W | 26177 | 164.6 cb/W |
VFカーブで電圧を下げてもなぜかコア電圧(Vcore)が一向に下がらず、消費電力が下がらない症状に遭遇したため、Eコアを100 MHz下げてみるとあっさりと消費電力が下がりました。
Eコアを100 MHz下げてもマルチスレッド性能はわずか1%しか下がっていません。一方で、消費電力は約8%も低下し、ワットパフォーマンスの改善が可能です。
調整後のCore i9 12900KSのワットパフォーマンスを比較したグラフです。
Special Editionはさすがに特性が優秀だと分かります。5.1 GHz設定ですら、定格のCore i9 12900Kを上回る効率を示します。同じ性能に維持しても約1.27倍も効率が良いです。
Ryzen 9 5950X相当の性能はおよそ150~160 Wで到達できます。5950Xからわずか5%低い性能なら、130 W台で可能でした。130 Wまで下がると温度は最大でも50℃ちょっとで扱いやすいです。
しかし、今回のレビューで使ったCore i9 12900KSは、125 W以下の特性が若干イマイチな傾向。Eコアとキャッシュの低電圧耐性があまり良くないのか、手動設定だとブルスク連発。
結局、パワーリミット設定(TDP:105 W)で参考値だけ取って終わりました。
まとめ:Special版は「やさしいCore i9 12900K」
「Core i9 12900KS」のデメリットと弱点
- ワッパはRyzen 9 5950Xに届かない
- 付属クーラーなし
- CPUクーラーの互換性(LGA 1700)
- あらぶる初期設定
- 玄人向け(設定が必要)
- 価格が高い
「Core i9 12900KS」のメリットと強み
- ノーマル版より電気的特性がいい
- 全コア5.3 GHz動作が可能
- 最強のシングルスレッド性能
- 最強のゲーミング性能
- マルチスレッド性能(5950Xと同等)
- 汎用性の高いCPU性能
- 前世代より改善されたワッパ
- PCIe 5.0と4.0をサポート
- DDR5メモリに対応
- 内蔵GPU「Xe Graphics」搭載
- 「Intel 10 nm」プロセス採用
Core i9 12900K(ノーマル版)よりも、要求される消費電力が少なく済む傾向があり、扱いやすくなった「やさしいCore i9 12900K」です。
今回のレビューで使ったCore i9 12900KSに限っていえば、50 Wも少ない消費電力でほぼ同じマルチスレッド性能と、シングルスレッド時に5.5 GHzを叩き出します。
200 W以内の消費電力なら、一般的な240~280 mm水冷クーラーで普通に冷やせます。12900K(ノーマル)と同等の性能を出した設定は最大70℃すら超えなかったです。
もちろん、Alder Lake世代のCPUが適切に冷えるかどうかはマザーボード側の個体差も大きいので一概には言えないものの、ノーマル版よりSpecial版の方が冷えやすさに期待できます。
というわけで、ちもろぐの評価は「Aランク」で決まりです。
価格が2万円も上がっているため手放しでオススメできないCPUですが、第12世代Alder Lakeで最強のCPUです。
以上「Core i9 12900KSベンチマーク&レビュー:これはやさしいi9 12900K」でした。
参考:i9 12900KSにおすすめなマザボ
最後に少しだけ、Core i9 12900KSにおすすめなマザーボードをサラッと紹介しておきます。
コスパが良いのは「ASUS TUF GAMING Z690 WIFI D4」または、WiFI無しバージョンの「ASUS TUF GAMING Z690 D4」です。今回のレビューで使用しているように、5.3 GHz動作もでき、VFカーブで調整もしやすいです。
「ASRock Z690 Extreme WiFi 6E」は、最近では珍しいデュアルLAN(2.5+1.0G LAN)のZ690マザーボードです。
「MSI MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4」は、70A SPS MOSを合計18個使った強靭なVRMフェーズと、4つのM.2スロットがついて3万円前半で買えるコスパの良いZ690マザーボード。
ほぼ光らないシックなデザインもメリットです。
設定次第でワッパが良くなるのは面白いですね。
今までのデスクトップCPUはOCして楽しむ文化でしたが、今後は電力制限も楽しめそうです。
12900KSは絞ってこそ真価を発揮する製品って感じがあって面白い
電気代高いですからね
Core i9 9900KSから約2年半ぶりのスペシャル版、とありますが、その1つ前、8086K=8700KSでしたよね。
IPC比較の”Zen4では約29%のIPC改善が予想されているため、IPC競争はまだイタチごっこが続く可能性も高いです”が消えてしまったのが悲しい…
あと”ワッパはRyzen 9 5905Xに届かない”という謎CPUになってしまっていますよ
正しくはRyzen 9 5950Xでしょう
一般的な水冷クーラーで普通に冷やせます って言葉、冷静に考えると異常ですよねw
常用するのに水冷って以前では考えられなかったです。13世代は改善されるかなぁ
記事の内容と直接関係なくて申し訳ないのですが、原神のfps上限の突破というのはunityの起動オプションなのでしょうか?そしてそれは規約上どうなのでしょうか?
直接関係ない質問すみません。
MSFS 2020専用で考えれば100fps以上出る5800X3D択一ですが他のゲームも考慮すると選択難しい
悩んでる間に次世代がもうすぐで時期が悪い
とは言え今更12900KSを買おうとは思わないかな
13900Kの方が遥かに低い周波数と消費電力で余裕でcinebenchR23 30000越えするでしょ
13900Kなら5950Xの電力効率を超えるのは間違いないし
次世代は特にRYZEN 7xxxの消費電力と価格の双方で大幅アップはダメージ大
マザーボードがこれまでより倍の値段になっている DDR5メモリも必須
どうしてもよりマルチ性能が必須ならば仕方がないが・・・
そうでなければ最悪の展開が一度に来てしまった
次世代がこんなに時期が悪いとは・・・