総額50万円近い測定機材を使って、モニターの性能をテストしているモニターオタクの筆者が、2023年時点でおすすめできるWQHDゲーミングモニターを「7台」に絞って解説します。
できるかぎり、実際に使ったモニターからおすすめを厳選しました。
(公開:2023/2/28 | 更新:2023/2/28)
おすすめWQHDモニター:7選を解説【2023年版】

WQHDゲーミングモニターの選び方がよく分からない、初心者向けにざっくりとした選び方をかんたんに解説します。
- 「IPSパネル」がおすすめ
- 理由:無難に高画質でハズレが少ない
- 応答速度は「3ミリ秒」くらいが目安
- 理由:3ミリ秒なら十分キレのある残像感
- リフレッシュレートは「120 Hz」以上
- 理由:60 Hzより高画質で入力遅延も少ない
本当は選び方だけで10000文字の長文を書けますが、長すぎて読むのが面倒くさいと思うので以上3つにまとめました。
WQHDゲーミングモニター選びでハズレを避けるコツは、「IPSパネル」「応答速度:3ミリ秒」「120 Hz以上」の3ポイントです。
しかし、この3つのうち応答速度だけは買う前に正しい判断ができません。メーカーがスペック表に記載している応答速度は理論値に過ぎず、実際の応答速度を示してないです。
実際に筆者がテストしたゲーミングモニターのひとつに、メーカーが1ミリ秒と記載しているのに、実際に測定すると10ミリ秒だった実例があります。実測値と理論値で10倍も違ってます。

答えはとてもシンプル。応答速度を実際に測定しているブログやサイトを探して参考にしましょう。当ブログ「ちもろぐ」も実際に応答速度を測定しています。
今回のおすすめWQHDゲーミングモニターに選んだモニターも、実際に使って応答速度を調べています。使っていないモニターにかんしては、信頼できるデータを調べて確認済みです。
「性能」に直接関係しないけど確認すべき2点
なお、性能以外の部分であと2つだけ、確認したほうがいい部分があります。
- FPSやるならゲーミング機能もチェック
- 理由:敵プレイヤーを見えやすく調整できます
- PS5で使う場合はHDMI 2.1に注意
- 理由:PS5 VRRを使うためにHDMI 2.1が必要
Apex Legendsやオーバーウォッチ2を、ガチでプレイするつもりなら「ゲーミング機能」も要チェックです。
暗い部分や色のついた部分を見やすく補正したり、残像感をクリアに除去してキレのあるくっきりした映像にしたり、最近のゲーミング機能はかなり実用的です。
普通にゲームをするだけなら必須ではないものの、FPSゲームをがっつり遊ぶなら重宝します。
「HDMI 2.1」はPS5で使いたい方に要注意。まだベータ版ですが、PS5が近日「WQHD解像度でPS5 VRR」に対応する予定です。
WQHD表示だけなら従来のHDMI 2.0で問題なく対応できます。しかし、PS5 VRR機能はHDMI 2.1が必要とのこと。
実際はHDMI 2.1がなくても、ゲーミングモニターによってWQHDでVRRが使えたり使えなかったり、挙動がまちまち・・・。
HDMI 2.1があったほうが確実です(※Xbox Series XはHDMI 2.1が無くてもVRRに対応します)。


- 【万人向け】MSI MAG274QRF-QD
- 【低予算おすすめ】LG UltraGear 27GN800-B
- 【FPSにおすすめ】MOBIUZ EX2710R
- 【240 Hzおすすめ】Alienware AW2723DF
- 【HDRにおすすめ】KTC M27T20
- 【クリエイター向け】Creator PS321QR
- 【最高のWQHD】MOBIUZ EX270QM
【万人向け】MSI MAG274QRF-QD
WQHDゲーミングモニター選びで迷ったらおすすめ

MSI MAG274QRF-QD | |
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基本スペック |
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応答速度 (実測値) |
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画質 (実測値) |
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ゲーミング機能 |
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- 最大165 Hz(PS5で120 Hz)
- 量子ドットで非常に高画質
- IPSパネルなのに応答速度が速い
- ゲーミング機能あり
- PS5の4Kダウンコンバート対応
- HDR対応(Display HDR 400)
- 3年保証
- 内蔵スピーカーなし
- HDMI 2.1なし
- 価格はちょっと高い
高画質で応答速度も速いWQHDゲーミングモニターが「MSI MAG274QRF-QD(レビュー)」です。少し値は張りますが、払った価格に見合うパフォーマンスが手に入ります。
最大の特徴がなんといっても「量子ドット(Q-dot)」技術を搭載した、Rapid IPSパネルです。IPSパネルの割に応答速度が3.6ミリ秒前後とかなり速く、量子ドットのおかげで表示できる色がめちゃ広いです。
普通のIPSパネルモニターだと、DCI P3が90%ちょっと、AdobeRGBが80%台です。量子ドット搭載のMAG274QRF-QDはDCI P3が98%、AdobeRGBはなんと100%を表示できます。
とにかく表示できる色が広く、ほとんどのゲームや動画コンテンツで忠実な色再現性能が可能です。普通のIPSパネルから乗り換えて、その鮮やかさに驚く人も少なくないです。
WQHDゲーミングモニターの愛好家からも「迷ったらこれ」と言われる程度に、定評のあるモデルです。
- Display Port 1.2a(165 Hz)
- HDMI 2.0b(144 Hz)
- HDMI 2.0b(144 Hz)
- USB Type-C(DP Alt:165 Hz)
MAG274QRF-QDの映像出力端子は全部4つあります。
PS5の120 Hz表示、4Kダウンコンバート表示に対応。ただし、PS5 VRRに対応できるかは不明です。

【低予算おすすめ】LG UltraGear 27GN800-B
3万円台で応答速度が速いIPSゲーミングモニター

LG UltraGear 27GN800-B | |
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基本スペック |
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応答速度 (実測値) |
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画質 (実測値) |
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ゲーミング機能 |
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- 最大165 Hz(PS5で120 Hz)
- 色鮮やかな広色域IPSパネル
- IPSパネルなのに応答速度が速い
- ゲーミング機能あり
- PS5の4Kダウンコンバート対応
- 3年保証(無輝点保証あり)
- 内蔵スピーカーなし
- HDMI 2.1なし
- HDR性能はイマイチ
3万円台で買える低予算WQHDゲーミングモニターでおすすめは「LG UltraGear 27GN800-B(レビュー)」です。
BOE製IPSパネルを搭載し、Nano IPSにあと一歩で迫るすぐれた映像美と、平均で3ミリ秒を下回る非常に高速な応答速度を実現します。3万円台で3ミリ秒はシンプルにコスパが良いです。
画質もかなり優秀。sRGBで100%カバー、DCI P3で約94%もカバーします。並のIPSパネルだとDCI P3がそもそも90%を超えられませんから、27GN800-Bは平均以上の画質です。
安くて高画質でOKなら、とりあえず27GN800-Bを選んでおけばハズレないでしょう。
LG UltraGearシリーズらしく、ゲーミング機能もいくつか対応します。暗いところを明るく補正する「Dark Stabilizer」や、残像を軽減する黒挿入機能「1ms Motion Blur Reduction」が使えます。
FreeSyncに対応しているため、Xbox Series X/SでVRRも対応。ただし、PS5 VRRはHDMI 2.1が必要ですので規格的に対応できないです。
安くて高性能なWQHDゲーミングモニターに「27GN800-B」をおすすめします。
- Display Port 1.4(144 Hz)
- HDMI 2.0(144 Hz)
- HDMI 2.0(144 Hz)
LG UltraGear 27GN800-Bの映像出力端子は全部3つあります。
PS5の120 Hz表示、4Kダウンコンバート表示に対応。ただし、PS5 VRRに対応できるかは不明です。

【FPSにおすすめ】MOBIUZ EX2710R
高速VAパネル + 充実のゲーマー向け機能が魅力

BenQ MOBIUZ EX2710R | |
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基本スペック |
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応答速度 (実測値) |
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画質 (実測値) |
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ゲーミング機能 |
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- 最大165 Hz(PS5で120 Hz)
- 締まった黒色のVAパネル
(実測で4000:1超のコントラスト比) - VAパネルなのに応答速度が速い
- 実用的なゲーミング機能
- HDR対応(Display HDR 400)
- PS5の4Kダウンコンバート対応
- 2.1 ch内蔵スピーカー搭載
- 3年保証
- 湾曲型でやや用途を選ぶ
- HDMI 2.1なし
MOBIUZ EX2710QをFPS向けに推奨する予定でしたが、搭載パネルがややガチャ仕様(LG製 or Innolux製)で若干おすすめしづらいです。
よって湾曲型VAパネルを搭載する「MOBIUZ EX2710R(レビュー)」をFPS向けに挙げます。
一般的にVAパネルは応答速度が遅いとの定評がありますが、最新世代のAMVAパネルを搭載するEX2710Rでは、なんと3ミリ秒台に達します。
3ミリ秒台の速い応答速度と、最大165 Hzの高いリフレッシュレートで残像感の少ない映像を表示できます。湾曲型パネルで没入感も高めです。
加えて、BenQ MOBIUZシリーズ独自のゲーミング機能をフル装備します。
- Black eQualizer(暗い部分を明るく)
- Light Tuner(暗い部分を明るく)
- Color Vibrance(色を強調して見やすく)
- ブレ軽減(残像を少なく見せる)
BenQの競技向けモニターに搭載されている「Black eQualizer」「Color Vibrance」のほか、「DyAc+」の低価格版に相当する「ブレ削減」も対応。
DyAc+の低価格版とはいえ、競合するモニターの同等機能より高い効果です。決しておまけレベルのちゃちな機能ではなく、実用的なゲーミング機能です。
treVolo内蔵スピーカーシステム(2.1 ch)を搭載し、2000円クラスのUSBスピーカーに相当する音質を出せます。
高コントラスト比(4000:1)の高画質 + 高速な応答速度 + 便利なゲーミング機能が合わさった、万能型WQHDゲーミングモニターです。
ただし、湾曲したパネル形状なので少し用途を選びます。ゲーミングや映像を見る分には没入感があって良いのですが、イラストや動画編集などクリエイティブな用途と相性がイマイチです。
- Display Port 1.4(165 Hz)
- HDMI 2.0(144 Hz)
- HDMI 2.0(144 Hz)
MOBIUZ EX2710Rの映像出力端子は全部で3つあります。
PS5の120 Hz表示、4Kダウンコンバート表示に対応。ただし、PS5 VRRに対応できるかは不明です。

※微妙に誤解を招くので注釈:速いのはAUO AMVAやSamsung VAなど、一部のハイエンドVAパネルのみ。KOORUIやPixioなどの低価格ゲーミングモニターに入っているVAパネルは今も普通に遅いです。
【240 Hzおすすめ】Alienware AW2723DF
WQHDで240 Hzゲーミングモニターは意外と少ない・・・
DELL Alienware AW2723DF | |
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基本スペック |
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応答速度 (実測値) |
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画質 (実測値) |
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ゲーミング機能 |
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- 最大280 Hz(PS5で120 Hz)
- 高画質で速いFast IPSパネル
- IPSパネルなのに応答速度が速い
- ゲーミング機能あり
- HDR対応(Display HDR 600)
- PS5の4Kダウンコンバート対応
- USB 3.2ハブ機能(4ポート)
- 3年保証
- 内蔵スピーカーなし
- 120 Hz時の応答速度がやや遅い
- HDMI 2.1なし
WQHDで240 Hzに対応したゲーミングモニターは意外と少ないです。
去年(2022年)まで、コスパ最強の「GIGABYTE M27Q X(レビュー)」が売っていて迷ったらM27Q Xを買えば解決する状況だったのですが、2023年から販売終了となり選ぶのが難しい状況に。
いろいろと探した結果、おすすめできそうな水準に達している240 HzのWQHDゲーミングモニターは「Alienware AW2723DF」です。
応答速度に優れたFast IPSパネルを搭載し、最大240 Hz(OC時:280 Hz)に対応します。応答速度は4ミリ秒でギリギリ3ミリ秒台に入らないですが、240 Hzの効果でホールドボケが軽減され、残像感を確実に軽減できます。
ゲーミング機能は「Dark Stablizer(暗い部分を明るく)」のみ対応。残像を軽減する黒挿入は無いです。
AW2723DFはDisplay HDR 600認証を取得し、HDR 400よりワンランク上の明るいHDR映像を表示できます。没入感あるHDRゲーミングを楽しめる性能です。
価格が高いだけあって弱点の少ないゲーミングモニターです。強いていえば、120 Hz時の応答速度がやや遅いのが難点でしょうか・・・。
とはいえ、240 Hzのモニターをわざわざ120 Hzで動かすゲーマーは少ないはず。実用上、大した問題ではありません。120 Hzで十分なら先に紹介した「MOBIUZ EX2710R」を推します。
- Display Port 1.4(280 Hz)
- HDMI 2.0(144 Hz)
- HDMI 2.0(144 Hz)
Alienware AW2723DFの映像出力端子は全部で3つあります。Display Portで最大280 Hzまで、HDMI 2.0は最大144 Hzまで対応。
PS5の120 Hz表示、4Kダウンコンバート表示に対応。ただし、PS5 VRRに対応できるかは不明です。

【HDRにおすすめ】KTC M27T20
ぜひ日本でも売って欲しいHDR 1000対応WQHD
KTC M27T20 | |
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基本スペック |
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応答速度 (実測見つからず) |
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画質 |
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ゲーミング機能 |
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HDR機能 |
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- 最大165 Hz(PS5で120 Hz)
- 量子ドットで非常に高画質
- 真のHDR対応(Display HDR 1000)
- 576分割のローカル調光
- USB Type-C(90 W出力)
- 3年保証
- コストパフォーマンスがいい
- 日本で売ってない
- ゲーミング機能は少ない
- 本当の応答速度は不明
- HDMI 2.1なし
- 内蔵スピーカーなし
- 入手性が悪い
残念ながら、HDRに特化したWQHDゲーミングモニターは日本国内で未発売です。
4Kなら「27M2V」や「32M2V」など、低価格で極めて本格的なHDR性能を実装した特化型ゲーミングモニターがありますが、WQHDだと日本国内での入手難易度がとても高いです。
ぼくはHDR 400 / 600 / 1000それぞれを実際に試して違いを知っているので、HDR 400程度のモニターをいまさら「HDRにおすすめ」などと書けません。
HDR用に推奨するには、少なくともDisplay HDR 600以上、できればDisplay HDR 1000かつFALD方式が必要だと実感しています。
今回はDisplay HDR 1000認証かつ、Mini LEDによる576ゾーン分割FALD方式に対応していながら、価格がわずか約5~6万円の「KTC M27T20」を挙げておきます。
カタログスペックは現在日本で販売中のどのWQHDゲーミングモニターよりも、圧倒的にHDR性能に特化しており、本格的なHDR性能に期待できます。

KTC M27T20はDisplay HDR 1000認証を取得済み。民生向けのHDR規格で最高グレードのHDRクラスです。HDR 1000規格に合格するため、2304個のMini LEDを使い、576個のゾーンに分割したフルアレイローカル調光(FALD)方式を採用。
明るい部分だけMini LED(4個で1ゾーンを担当)を点灯させて、暗い部分はMini LEDを無点灯にして、非常に高いピーク輝度と完全な黒に近い黒色を両立します。
しかも、KTC M27T20はネイティブコントラスト比が高いVAパネルをベースにしているため、IPSパネルをベースにしたDisplay HDR 1000モニターより体感できるコントラスト比がより高くなりやすいです。

KTC M27T20のVAパネルは量子ドットフィルターを搭載。
色の純度が非常に高く、sRGBで99%、DCI P3で93%、AdobeRGBを99%カバーする広い色域に対応します。出荷時にΔE < 2.0にキャリブレーション済みで、最初から色が合っている点もメリットです。
ゲーミング機能はBlack Equalizer(暗い部分を明るく)のみ。値段なりに機能性が削られています。
と思いきや、なぜかUSB Type-C(90 W給電)ポートがあったり、1台のキーボードとマウスで複数のパソコンを操作できるKVMスイッチ機能に対応しています。USB Type-CとKVMを削ればもっと価格を安くできそうです。
- Display Port 1.4(165 Hz)
- HDMI 2.0(144 Hz)
- HDMI 2.0(144 Hz)
- USB Type-C(165 Hz)
KTC M27T20の映像出力端子は全部で4つあります。Display Portで最大165 Hzまで、HDMI 2.0は最大144 Hzまで、USB Type-C DP Alt Modeは最大165 Hzまで対応。
PS5の120 Hz表示に対応できます。ただし、4Kダウンコンバート表示とPS5 VRRに対応できるかは不明です。

HDRにおすすめなWQHDゲーミングモニターに「Cooler Master GP27Q」を挙げる予定だったのですが、GP27Qには明確な問題があります。
特定の条件でしかHDR 1000の条件を満たせないため、VESAの正式なHDR 1000認証を今も取得できていません。KTC M27T20はVESAの「認証済みリスト」に記載があり、複雑な条件なしにHDR 1000の性能を発揮できるようです。
KTC M27T20はかなり情報が少なく、応答速度の信頼できる数値も見つからないです。よってGP27Qを掲載する予定が、こちらはこちらでHDR 1000認定を取れてない事情があって微妙で、結局M27T20をおすすめに・・・。
なお、M27T20にかんしてはKTCの北米サポートに連絡済みですが、2週間くらい放置されているので諦めてTaobaoから輸入する予定です。
【クリエイター向け】Creator PS321QR
広色域IPSパネルをΔE < 2.0にキャリブレーション
MSI Creator PS321QR | |
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基本スペック |
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応答速度 (実測値) |
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画質 |
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ゲーミング機能 |
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クリエイター機能 |
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- 最大165 Hz(PS5で120 Hz)
- 量子ドットで非常に高画質
- IPSパネルなのに応答速度が速い
- クリエイター機能あり
- HDR対応(Display HDR 600)
- 16分割のローカル調光
- PS5の4Kダウンコンバート対応
- USB 3.2ハブ機能(合計3ポート)
- 3年保証
- コストパフォーマンスがいい
- WQHDで32インチ
- ゲーミング機能は少ない
- HDMI 2.1なし
- 内蔵スピーカーなし
- 入手性が悪い
クリエイター向けにおすすめしたいWQHDモニターが「Creator PS321QR」です。
量子ドットフィルターを使った高画質なRapid IPSパネル(AUO製)を搭載し、MAG274QRF-QDに匹敵する圧倒的に広い色域で、鮮やかな色再現性能を可能に。
クリエイター向けらしく、色域ごとのエミュレートモードも用意されています。AdobeRGB、Display P3、sRGBモードを備え、必要とする色域に合わせて表示を制限可能です。
モニター上に実寸サイズのメーター(定規やグリッド)を表示する機能もあり、印刷を前提とした制作物を作るときに重宝します。
HDR機能は値段の割に本格的です。16ゾーンに分割したローカル調光を備え、600 cd/m²を超える明るいHDR表示に対応。もちろん、Display HDR 600認証も取得済みです。
量子ドット + HDR 600で得られる映像美はほとんどの人にとっては十分なクオリティかと思われます。これで満足できなければ、残る選択肢はFALD方式のDisplay HDR 1000になってしまい、必要な金額が1桁上がります。
クリエイター向けをアピールしながら、なにげに最大165 Hzと平均3ミリ秒台の速い応答速度だったり。ゲーミング機能もなぜか残像軽減に対応しています。
クリエイターだけでなく、ゲーマーが買っても意外といい仕事をしてくれる万能型WQHDモニターです。
- Display Port 1.2a(165 Hz)
- HDMI 2.0b(144 Hz)
- HDMI 2.0b(144 Hz)
- USB Type-C(DP Alt:165 Hz)
MSI Creator PS321QRの映像出力端子は全部4つあります。PS5の120 Hz表示、PS5の4Kダウンコンバートに対応します。ただし、PS5 VRRは不明です。

【最高のWQHD】MOBIUZ EX270QM
HDR 600 + 240 Hzにゲーミング機能を全部盛り!

BenQ MOBIUZ EX270QM | |
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基本スペック |
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応答速度 (実測値) |
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画質 (実測値) |
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ゲーミング機能 |
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- 最大240 Hz(PS5で120 Hz)
- 高画質で速いFast IPSパネル
- IPSパネルなのに応答速度が速い
- 実用的なゲーミング機能
- HDR対応(Display HDR 600)
- PS5の4Kダウンコンバート対応
- USB 3.1ハブ機能(2ポート)
- 音質のいい2.1 ch内蔵スピーカー
- HDMI 2.1あり(PS5 VRR対応)
- 3年保証
- そこそこ値段も高い
WQHDゲーミングモニターの最高峰が「MOBIUZ EX270QM(レビュー)」です。
10万円超えの価格でWQHDゲーミングモニターとしてはかなり高いですが、価格に見合うハイクオリティな性能と機能性が詰め込まれています。
高画質で応答速度に優れるFast IPS(AUO製)パネルを搭載。120 Hz時で平均3.8ミリ秒、240 Hz時で平均3.0ミリ秒はIPSパネルとしてトップクラスの速さです。
加えて、BenQ MOBIUZシリーズ独自の強力なゲーミング機能をフル装備。
- Black eQualizer(暗い部分を明るく)
- Light Tuner(暗い部分を明るく)
- Color Vibrance(色を強調して見やすく)
- ブレ軽減(残像を少なく見せる)
BenQの競技向けモニターに搭載されている「Black eQualizer」「Color Vibrance」のほか、「DyAc+」の低価格版に相当する「ブレ削減」も対応。
DyAc+の低価格版とはいえ、競合するモニターの同等機能より高い効果です。決しておまけレベルのちゃちな機能ではなく、実用的なゲーミング機能です。
HDRはDisplay HDR 600認証を取得済み。実測で700 cd/m²を超える、とても明るいHDR映像を表示でき、HDR 400とは別格のHDRゲーミングやHDRコンテンツを楽しめます。
2W + 2W + 5Wの2.1 ch内蔵スピーカーシステム「treVolo」を搭載しており、2000~3000円くらいの外付けUSBスピーカーに匹敵する音質を出せます。音にこだわりなければ普通に聞けるレベル。
WQHDゲーミングモニターとして非常に珍しく、HDMI 2.1端子があります。PS5で4Kダウンコンバート表示、PS5で120 Hz表示はもちろん、PS5 VRRも対応できます。WQHDゲーミングモニターでは非常にまれです。
おおむね「Alienware AW2723DF」の完全上位互換に位置づけられる、高性能ゲーミングモニターです。ただし値段も相応にかかります。
WQHDで約11万円だと、あと1~2万円も出せば4K 144 Hzゲーミングモニターに手が届いてしまい、WQHDか4Kどちらにするか悩ましいラインです。
念のため、4Kゲーミングモニターを確認しておくと安心です。それでも「WQHDの240 Hzで最高の画質を」追求するなら止めはしません。
- Display Port 1.4(240 Hz)
- HDMI 2.1(240 Hz)
- HDMI 2.1(240 Hz)
MOBIUZ EX270QMの映像出力端子は全部で3つあります。PS5の120 Hz表示、PS5の4Kダウンコンバートに対応します。HDMI 2.1だからPS5 VRRも対応できます。

おすすめから外れたWQHDモニター
おすすめWQHDゲーミングモニターに入れなかった理由

240 HzのWQHDでおすすめに入れる予定だった「GIGABYTE M27Q X」です。
まともな価格で高性能、IPSパネルで応答速度も速い、黒挿入(Aim Stabilizer)機能も対応。スキが少ない完成度の高いゲーミングモニターなのに、GIGABYTEの国内代理店があまりにもやる気が無いです。
ロクにプロモーションを打たないため、知名度やブランド力がほとんど無く、日本で売ってることすら知られないまま勝手に販売終了しました。海外なら非常に人気のあるゲーミングモニターだけに、もったい無いです。
海外とくらべて国内市場はやや特殊です。性能の良し悪しでゲーミングモニターを選ぶ人は極めて少数派であり、M27Q Xがどれほどコスパに優れたモニターだったとしても広告を打たない時点で勝負は決まっています。
国内市場で売れるモニターの共通点は広告の掛け方に比例する傾向が強いです。ASUS、BenQ、MSI、Pixioあたりは大手メディアや個人Youtuberを装ったマーケ屋に対して、多額のスポンサー料やサンプル機材の提供を行っています。
広告をロクに打たない(= 打てない?)GIGABYTEが売れるには、いささか難しすぎる市場状況でしょう。


「BenQ EX2780Q」はいわゆる万能型です。発売当時としてはかなり完成度の高いWQHDゲーミングモニターでしたが、応答速度の遅さが目立った弱点です。
セール特価で3.2~3.6万円を狙って買うならアリ。定価なら無理して買わなくていいと思います。

画質と応答速度に定評がある「Nano IPS(LG製)」パネルを搭載した、WQHDゲーミングモニターです。4万円前半でNano IPSが手に入るため、地味に人気を集めているWQHDモニターの定番だったりします。
しかし、今回の低予算おすすめに挙げた「LG 27GN800-B」と比較すると、価格差に見合う性能差があるかどうかが微妙です。
DCI P3領域で3~4%ほどS2721DGFが有利ですが、応答速度は27GN800-Bのほうが高速で、残像感を軽減する黒挿入(1ms Motion Blur Reduction)機能も付いてきます。
27GN800-BはPS5の4Kダウンコンバート表示も対応します。性能と価格で比較してしまうと、意外と妥当なコストパフォーマンスに思えてしまい、おすすめするなら27GN800-Bで良いかな・・・と。

- 【万人向け】MSI MAG274QRF-QD
- 【低予算おすすめ】LG UltraGear 27GN800-B
- 【FPSにおすすめ】MOBIUZ EX2710R
- 【240 Hzおすすめ】Alienware AW2723DF
- 【HDRにおすすめ】KTC M27T20
- 【クリエイター向け】Creator PS321QR
- 【最高のWQHD】MOBIUZ EX270QM
2023年時点のおすすめWQHDゲーミングモニターは以上です。

WQHDゲーミングモニターの選び方
IPSパネルでいい?:4つある「パネル」の違い
パネル | メリット | 弱点 |
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TN (Twisted Nematic) |
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万人向けおすすめ IPS (In-Plane Switching) |
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VA (Vertical Alignment) |
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OLED (Organic LED) |
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おおざっぱにパネルごとの特徴をまとめました。
WQHDモニターのパネル選びは迷ったら「IPSパネル」が無難です。応答速度がそこそこ速い傾向があり、万人受けする美しい画質が特徴です。
次におすすめは「VAパネル」ですが、IPSパネルと比較して応答速度が遅い傾向あり。一部のハイエンドVAパネルはIPSパネルより速いものの、低価格なVAパネルは依然として応答速度が遅いので注意してください。
予算たっぷりな方は、応答速度がゼロミリ秒でコントラスト比が無限な「OLEDパネル」も候補ですが、使い方次第でパネルが焼き付いてしまうリスクが存在します。リスクを理解せずに買うのはやめましょう。
「TNパネル」を解説:FPSゲーマー向け

TNパネル (Twisted Nematic) | ||||
---|---|---|---|---|
応答速度 | 色 | 視野角 | コントラスト比 | 価格 |
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
TNパネルは低価格で応答速度が速いパネルです。もっぱらFPSゲーム向けですが、WQHDモニターで重視される「映像美」を大きく損なうデメリットがあります。
最新のハイエンドTNパネルであれば、割りと画質が改善されています。それでもIPSパネルやVAパネルと比較してしまうと、画質の差は決して埋まっておらず無視できないです。
競技向けにTNパネルのフルHDを買うのはアリです。しかし、WQHDゲーミングモニターでは推奨できません。

「IPSパネル」を解説:万人向けにおすすめ

IPSパネル (In-Plane Switching) | ||||
---|---|---|---|---|
応答速度 | 色 | 視野角 | コントラスト比 | 価格 |
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
IPSパネルはそこそこの応答速度、広い視野角、美しい色表現が魅力の万人向けパネルです。迷ったらIPSパネルを選びましょう。
価格はTNパネルより高い傾向があり、応答速度もTNパネルには勝てないですが、WQHDモニターで求められている映像美はIPSパネルが圧倒的に有利です。
HDR機能に特化したハイエンドモデルになると、IPSパネルが苦手とするコントラスト比も改善されています(※IPSパネルでコントラスト比が10000:1を超えるゲーミングモニターも存在するほど)。

「VAパネル」を解説:深い黒色で没入感

VAパネル (Vertical Alignment) | ||||
---|---|---|---|---|
応答速度 | 色 | 視野角 | コントラスト比 | 価格 |
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
VAパネルは引き締まった黒色が美しいパネルです。
とにかく深い黒色を得意とするパネル方式で、コントラスト比が3000~4000:1に達します。一般的なIPSパネルの約3~4倍、IPS Blackパネルと比較して約1.5~2倍もコントラスト比が高いパネルです。
優れたコントラスト比のおかげで、没入感に優れたリアリティのある映像表現を得意とします。視野角はIPSパネルに劣るものの、TNパネルよりずっとマシです。
弱点は応答速度の遅さです。価格の安いVAパネルだと、基本的に同じ価格帯のIPSパネルに応答速度で劣ってしまい、残像感(特に暗い部分での)が目立ちます。
「MOBIUZ EX2710R」のように、ハイエンドなVAパネルを搭載していれば応答速度の問題はほぼ解決されますが、値段も相応に高いです。

「OLED」を解説:最強の応答速度と黒色

OLEDパネル (Organic LED = 有機EL) | ||||
---|---|---|---|---|
応答速度 | 色 | 視野角 | コントラスト比 | 価格 |
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OLED(有機EL)パネルは、1ドット1ドットが独立して点灯・消灯できる「自発光式」のパネルです。

OLEDは自発光式だから「バックライト」が不要
自発光式だとバックライトを使わずに画面を明るくできるので、OLEDパネルは液晶パネルと比較して「完璧な黒」と「瞬時の応答速度」をそなえます。
- 完璧な黒だからコントラスト比はほぼ無限
- 応答速度はTNパネルよりも速い
- 輝度ムラがほとんどない
コントラスト比はほぼ無限で、IPSやVAパネルと比較して輝度ムラもほとんど無く、応答速度はTNパネルよりも高速です。
基本的に、既存のパネルタイプ(IPS、VA、TN)を圧倒する、最強クラスのパネルと考えて問題ありません。
一方でデメリットも多いです。
IPSやVAパネルと比較して価格が非常に高く、使い方次第でパネルが焼き付く構造上の問題も抱えています。液晶パネルなら3年~5年保証なのに、OLEDパネルだと1年しか保証しないメーカーが多いのは、焼き付きリスクの問題が大きいです。

なお、画面サイズの問題は着実に解消されつつあります。
2022年まで34インチが限界だったゲーミングモニター向けOLEDパネルが、2023年からLG Displayによって26.5インチまで小型化します。ようやく一般的なサイズでOLEDゲーミングモニターが量産可能になり、売れ行き次第で低価格化も期待ができそうです。

ちなみに、ウルトラワイドWQHD(3440×1440)なら、OLEDパネルの中でも特に高画質 & 高耐久な「QD-OLED」パネルを使ったゲーミングモニターがすでに販売済みです。
OLEDパネルに興味がある方は、AW3423DWのレビューを読んでみてください。
RTINGS.comが2017年製のOLEDテレビ「LG C7」を6台使って、約9000時間(およそ2年間)にわたって焼き付きが発生するかどうかを実験しました(参考:Real Life OLED Burn-In Test on 6 TVs)。
焼き付き | 24週目 | 48週目 | 72週目 | 102週目 |
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1台 ニュース番組 | わずかに | はっきり | はっきり | 明らかに |
2台 ニュース番組(最大輝度) | わずかに | はっきり | 明らかに | 明らかに |
3台 サッカー番組 | – | – | わずかに | わずかに |
4台 テレビ番組 | – | – | – | – |
5台 FIFA 18 | – | – | – | – |
6台 COD:WW2 | – | – | – | – |
6台それぞれに別の映像を表示させ続けた結果、ニュース番組(CNNライブ)を表示している1台と2台で顕著な焼き付きが発生・・・。
一方で、画面全体が動いている普通のテレビ番組や映像コンテンツ、ゲームプレイでは2年経過しても焼き付きはほとんど発生しないままです。ゲーミングモニター的な使い方なら、焼き付きが発生するリスクは非常に低いです。
参考までに、筆者が2019年に購入した「LG C9 OLED」は今年で4年目ですが、目視でわかるほどの焼き付きは見られません。
一定時間ピクセルに動きがないと一瞬だけドットをずらす機能や、輝度が高いシーンで自動的に輝度を下げるABL(自動輝度制限)など。数々の焼き付き防止システムによって、普通の使い方だとかんたんには焼き付かないよう対策が施されています。
応答速度は「3ミリ秒」でいい?:残像の見え方

↑こちらは応答速度の違うゲーミングモニターを実際に6台用意して、残像の見え方を分かりやすく撮影した比較写真です。
「人間の感覚は200ミリ秒だから応答速度の差なんて分からない」だから応答速度を気にしなくて良い、などと意味の分からない解説をしているブログやYoutubeがあります。
はっきり言って大嘘も良いところです。応答速度は速ければ速いほど良いと覚えておきましょう。目指すべき理想はもちろん「1ミリ秒」です。
応答速度が速い(短い)ほど、「残像」が少ないキレのある映像を表示できます。
では、なぜ応答速度が残像に関係するのか。応答速度とは、ものすごくザックリ言うなら「モニターが次のフレームを表示するのにかかる時間」です。
次のフレームを表示するのにかかった時間が長いほど、前のフレームが残ったままになるので、「ホールドボケ」と呼ばれる現象を引き起こします。

この「ホールドボケ」が、いわゆる「残像」の原因です。応答速度が短いほど残像が短く見え、キリッとした映像に。逆に応答速度が長いと残像が伸びて、ボヤッとした視認性の悪い映像になってしまいます。
筆者のおすすめ応答速度は「1ミリ秒」が理想ですが、現在の技術だとほとんどのWQHDゲーミングモニターは1ミリ秒を出せません。
現実的な目標として「3ミリ秒」とします。3ミリ秒なら、目視で見て十分にくっきりとした映像を得られます。
ちなみに、スペック表に記載されている応答速度(公称値)は一番条件のいい理論値です。実用に耐えない設定でしか出せない場合がほとんどですので、参考程度に見ましょう。

こちら↑は過去レビューしてきたゲーミングモニターで、応答速度を測定した結果をまとめたグラフです(参考記事:どうやってモニターの応答速度を測定するのか?)。
平均1ミリ秒に達したWQHDゲーミングモニターはまだ1台もありません。平均2ミリ秒に達したモニターは「M27Q X」ただ1台のみ。
WQHDゲーミングモニターでおすすめな応答速度は実質「3ミリ秒」くらいが限界です。
WQHDでは「120 Hz」以上がいい理由

リフレッシュレートとは、「モニターが1秒間に表示できる映像の回数」です。たとえば144 Hz(ヘルツ)なら、1秒間に144回も映像を表示できます。
- 60 Hz:1秒間に60 回表示可能
- 120 Hz:1秒間に120 回表示可能
- 144 Hz:1秒間に144 回表示可能
- 240 Hz:1秒間に240 回表示可能
パラパラマンガをイメージすると分かりやすいです。
リフレッシュレートが高いほど、パラパラマンガを素早くめくるので、映像がなめらかに見えます。1秒間に60回めくるより、120回めくった方がパラパラマンガは2倍なめらかです。
実際に60 Hz、144 Hz、240 Hzのゲーミングモニターを用意して比較映像を撮影しました。どうでしょうか、ヘルツが高いモニターほど映像がなめらかに表示されているのが分かります。
60 Hzから120~144 Hzにアップグレードすると、ほとんどの人はヌルヌル具合に違いを体感できます。入力遅延も半減するので、競技性の高いFPSゲームや格闘ゲームも有利です。

120~144 Hzのメリットは「ホールドボケ」の軽減も強いです。モニターの応答速度が同じでも、リフレッシュレートが高いだけで、映像の残像感が軽減されます。

実は、4KほどWQHDは重たくないです。最近はグラフィックボードの性能も大きく伸びており、平均120 fps程度を出すくらい意外と行けます。

設定を下げればRTX 3060 Tiで120 fps行けそう(画像:Apex推奨スペックまとめ)
たとえばApex Legends(最高設定)だと、予算20万円のゲーミングPCでWQHDで120 fps以上を狙えます。設定を少し妥協する前提であれば、予算15万円もあれば間に合います。
最新ゲーム機(PS5やXbox Series X)はWQHDで120 Hzに対応していますが、120 Hzに対応しているゲームは少数派で、対応していても実際にWQHDで120 Hzが出せるわけではないので注意してください。

FPSゲームで重要視される「ゲーミング機能」

各メーカーがアピールする「ゲーミング機能」とは?
競技性が求められるFPS / TPSゲームでは、映像美を多少犠牲にしてでも、敵プレイヤーを発見しやすくするゲーミング機能が重視されています。
覚えておきたい、代表的なゲーミング機能は5つです。
- 暗所補正:暗い部分を明るく補正する
- 鮮やか補正:色の付いている部分を見やすく補正する
- 残像低減:黒挿入を利用して残像感を軽減する
- UI表示系:おもに「照準」を表示する機能
- 可変同期:テアリング現象を抑える
(※可変リフレッシュレート:略してVRR)
上から順番に解説します。
暗所補正を使ったイメージ | |
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Light Tuner:オフ | Light Tuner:有効 |
暗所補正は名前の通り、暗い部分を明るく表示してゲームプレイの視認性を大きく改善する、定番のゲーミング機能です。
BenQなら「Black eQualizer」や「Light Tuner」、ASUSは「Shadow Boost」、MSIは「Night Vision」などなど。たいていのゲーミングモニターに搭載されている機能です。対応していないモニターのほうが、今となっては珍しいでしょう。
なお、メーカーによって性能に若干違いがあります。画面全体をそのまま明るくするだけで視認性がイマイチ改善されない場合や、BenQのBlack eQualizerのようにいい感じに明るく補正できる機能もあります。
競技向けにゲーミングモニターを開発しているメーカーの方が、暗所補正の味付けが上手い印象です。暗所補正を目当てにモニターを選ぶなら、BenQ MOBIUZやASUS ROGシリーズをおすすめします。
鮮やか補正を使ったイメージ | |
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Color Vibrance:オフ | Color Vibrance:有効 |
鮮やか補正は、もっぱらBenQのゲーミングモニターに搭載されている「Color Vibrance」を指します。他社のゲーミングモニターで同様の機能を見かけません。
彩度の調整やサチュレーションに似ているように思えて、微妙に挙動が違っているのが特徴です。ただ単に彩度を上げ下げするのではなく、色の付いている部分を見やすいように補正するイメージです。
役に立つかどうかはゲームによります。個人的に、Dead by Daylightで赤色をピンポイントに強調して表示できるので便利です。サバイバーが残した足跡や、キラーの赤い目線を見やすく改善でき、若干ハードウェアチートな感じがします。
残像低減を使ったイメージ | |
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DyAc+:オフ | DyAc+:有効 |
残像低減は、名前の通り「残像感」を軽減してクッキリとした映像を表示する、FPSゲーマーから特に根強い人気があるゲーミング機能です。
見た目で分かるレベルで映像がクッキリ明瞭に映るため、まるで応答速度が速くなったかのように錯覚する効果があります。もちろん、実際に応答速度が速くなっているわけではなく、「黒挿入」と呼ばれるシンプルな仕組みを使っています。

スローモーションカメラでモニターを撮影すると、ものすごいスピードで「黒い帯」が連続で点滅している様子が分かります。
この黒い帯の正体が、次のフレームに切り替わる瞬間に表示される黒い画面です。連続して何度も黒い画面を挟むため、カメラには「黒い帯」として映っています。
黒い画面を一瞬だけ挟むだけで、1つ前のフレームに映っていた映像が消えてしまい、結果的に「ホールドボケ」を軽減できる仕組みです。
BenQは「DyAc+」「ブレ軽減」、ASUSは「ELMB」「ELMB Sync」、LGは「Pro Motion」「1ms Motion Blur Reduction」、Pixioは「MPRT」などの名称で呼んでいます。
メーカーによって性能に大きく差があるものの、基本的な仕組みはどこも黒挿入を使っているだけです。なお、一番性能がいい黒挿入は「DyAc+」です。

UI表示系を使ったイメージ | |
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クロスヘアー:十字形 | クロスヘアー:丸型 |
UI表示系は、画面上にクロスヘアーやフレームレートを表示できる便利な機能です。暗所補正と同じくらい、あらゆるゲーミングモニターで見かける定番のゲーミング機能です。
ただし、eSports競技向けにゲーミングモニターを開発しているBenQは、UI表示系に対応していない場合が多いです。分かりやすくハードウェアチートですし、eSportsのイメージを損なわないためにあえて実装していない可能性が考えられます。
たいていのFPSゲームはもとからクロスヘアー(照準)が表示されているので、さほど有用性はありません。逆に言えば、クロスヘアーが表示されないゲームなら・・・かなり有利かもしれません。
可変同期を使ったイメージ | |
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G-SYNC:なし | G-SYNC:あり |
可変同期(可変リフレッシュレート:略してVRR)はイメージしづらい機能ですが、ざっくりいうとゲーム側のフレームレートと、モニター側のリフレッシュレートをぴったり揃えて映像の破綻を防ぐ機能です。
ゲーミングモニターで定番の可変同期モード「G-SYNC互換モード」を使って、スローモーションカメラで撮影した比較写真↑を見てください。

G-SYNC互換モードがないと、画面にチラチラと横線が入ったように途切れる「テアリング(引き裂き現象)」がかなりの頻度で発生します。特にゲーム側のフレームレートが安定しない状態で、テアリングが目立ちます。

G-SYNC互換モードを有効化すると、ゲーム側のフレームレートに合わせて、モニター側のリフレッシュレートが一致するように調整されます。結果的に「テアリング」が大幅に減って、安定した映像に仕上がります。

主なVRRモード | 動作に必要な条件 |
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G-SYNC互換はFreeSyncに対応したゲーミングモニターで、Display Portを経由して利用できます。HDMIだと使えません(HDMI 2.1以上が必要)。
AMD FreeSyncは、FreeSyncに対応したゲーミングモニターとAMD Radeonグラフィックボードで利用できます。Display PortまたはHDMIで機能します。
FreeSyncの上位版「FreeSync Premium」や、G-SYNC互換モードの上位版「G-SYNC認定」の違いはいろいろとありますが、一番大きなメリットは「LFC(Low Framerate Compensation)」です。
LFCは日本語で「低フレームレート補正」を意味する用語で、ざっくり説明すると低いフレームレートでもVRRが正しく機能するように対応します。
普通のFreeSyncとG-SYNC互換モードでは、基本的に48 Hz未満でVRRがうまく機能しないリスクがあります。
48 Hz未満のVRRはフレームレートが100 fpsを超えるゲーミングPCなら大した問題にならないですが、上限フレームレートが60 fpsに制限されがちなゲーム機だと厄介です。
LCF対応であれば、48 Hz未満でもVRRが正常に機能しやすいです。フレームレートが伸びにくい4Kゲーミングや、ゲーム機でゲームを楽しむ方は「FreeSync Premium」や「G-SYNC認定」を重視する価値があります。
ただし、PS5はそもそもFreeSyncをサポートしませんので、こだわっても意味がないです。Xbox Series X/Sをお使いの方は、FreeSync PremiumやFreeSync Premium Pro対応モデルを選ぶと確実でしょう。
PS5で使う場合は「HDMI 2.1」に注意しよう

PS5でWQHDゲーミングモニターを使うときの注意点は「HDMI 2.1」の有無です。
フルHD~WQHDで120 Hzを出すだけなら、HDMI 2.1が無くても大丈夫。しかし、先ほど解説したテアリングを防ぐ効果がある「VRR」を使うにはHDMI 2.1がほぼ必須です。

(PlayStation.Blog より引用)
ゲーミングモニターの仕様によって、HDMI 2.1がなくてもVRRが使えたり使えなかったりするものの、Sonyの公式見解は「PS5 VRRを有効化するのにHDMI 2.1が必須」とのこと。
フルHD / WQHD / 4Kは関係ないです。なぜなら、PS5のVRR機能は「HDMI VRR」に依存しており、(仕様上)HDMI 2.1でしか実装できない機能です。
HDMI 2.1を搭載するWQHDゲーミングモニターはまだまだ数が少なく、たとえHDMI 2.1対応モデルがあっても価格がとても高いです(例:MOBIUZ EX270QMなど)。
PS5 VRRのためにHDMI 2.1を搭載したモニターを買うべきかどうかは、かなり微妙なラインです。

HDR機能は「Display HDR」を確認

Prime Videoやネットフリックスをはじめとしたストリーミングサービス、Cyberpunk 2077やELDEN RINGに代表されるAAAゲーム、Windows 11やXbox Series X/Sによる「Auto HDR」機能などなど。
HDRに対応したゲームやコンテンツが少しずつ増えています。もし、HDRコンテンツを楽しむためにゲーミングモニターを選ぶなら、「Display HDR」規格の有無を確認しましょう。
「Display HDR」はモニターの業界団体VESAが策定した、HDRの品質をわかりやすく示す認証グレードです。
Display HDRの解説ガイドを読んでくれればわかりますが、要するに後ろの数字が大きいほど高性能なHDR性能を保証します。
規格 | ピーク輝度 | 黒色 | 色域 |
---|---|---|---|
Display HDR 400 | 400 cd/m2 | 0.4 cd/m2 | sRGB:95%以上 |
Display HDR 500 | 500 cd/m2 | 0.1 cd/m2 | sRGB:99%以上 DCI P3:90%以上 |
Display HDR 600 | 600 cd/m2 | 0.1 cd/m2 | |
Display HDR 1000 | 1000 cd/m2 | 0.05 cd/m2 | |
Display HDR 1400 | 1400 cd/m2 | 0.02 cd/m2 | sRGB:99%以上 DCI P3:95%以上 |
HDR 400よりHDR 600の方が広い色と明るい輝度を表示でき、HDR 600よりHDR 1000の方がもっと明るくて黒色はちゃんと黒として表示できます。
なお、HDR 400規格は普通のゲーミングモニターなら取得できて当たり前です。だからHDRのためにモニターを買う場合はHDR 400を避けてください。
HDRコンテンツを楽しむためにモニターを選ぶなら、最低でも「HDR 600」から、できれば「HDR 1000」を強くおすすめします。

実際にDisplay HDR 1000対応(FALD方式Mini LEDバックライト搭載)モデルと、Display HDR 400対応のゲーミングモニターを用意して、見え方がどれくらい変わるか比較写真を用意しました。

HDR 1000はやはりコントラスト比が桁違いに高いです。せいぜい1000:1程度しか出ないHDR 400に対して、HDR 1000だと実測で50000:1を軽く超えます。
パッチテストを使って無理やり条件を悪化させても4000~25000:1程度のコントラスト比を維持でき、普通のHDR 400~600とは別次元の性能です。

HDR 1000はピーク輝度が1000 cd/m²を超えるため、HDRコンテンツの階調表現が正確です。HDR 400だと白飛びして表現できないディティールを、HDR 1000ならきちんと描写できます。

海の表面を拡大表示すると、HDR 1000とHDR 400の性能差は明らかです。HDR 400は明るさが不足してしまい、明るい部分の階調表現がままならずディティールが損なわれます。

何気ない昼間の空に対する表現力ですら、HDR 1000は圧倒的にリアリティある再現性能を発揮します。空はただ青いだけのように見えて、実際は目が潰れそうな恐ろしい明るさです。
「高画質なHDRを体験したい」と考えているなら、少なくともDisplay HDR 600以上が必要です。もちろん、理想は言うまでもなくDisplay HDR 1000かつMini LED搭載モデルです。
しかし、日本国内ではMini LEDを搭載したHDR 1000対応のWQHDゲーミングモニターが売っていません。

以上「【WQHD】おすすめゲーミングモニター:7選を測定オタクが解説【2023年版】」でした。
WQHDゲーミングモニターのレビュー記事
おすすめなゲーミングモニターまとめ
今PCの買い替えを検討していて
それに合わせてモニターをWQHDにしたいと考えていて
この記事はとてもありがたいです。
参考にさせていただきます。
GIGABYTEはもうちょっと頑張ってくれ
Gigabyteさんは国内代理店が変わってから、凋落の一途を辿ってますね・・・。ゲーミングモニターにかぎらず、マザーボードやグラフィックボードも人気が落ち続けてます。
MAG274QRF-QDはちょっと高いので、廉価版(完全な下位互換ではないみたいですが)っぽいG274QRF-QDを候補にしてたんですが、ちもろぐさんにお勧めされてるのを見ると迷う……
個人的には27インチ版のHUAWEI Mateview GTを推していきたいですね
モニターを買う人のどれぐらいが応答速度を気にしているのかが気になるところです
MateView GTは3440×1440では・・・?と思ったら、27インチ版(2560×1440)があったんですね。
Huawei Storeで30%クーポンが出てるので、買ってみました。楽しみです。
GIGABYTE M27Q Xは日本での販売が終わってるだけで個人輸入等(米尼など)ではまだ買えるのでしょうか?
北米Amazon、Neweggで$429.99で販売中です。個人輸入だと送料の問題で、あまり安くならないのが難点。
このサイト見てる自分もそうだけど「●●がおすすめしてるからこれでいいか」てのは大きいですよねやっぱり…広告大事
それに映像がまともに映らないとかでなければ大抵の人は出力された映像で「まぁこんなもんか」てなるし
個人的には綺麗な画面でやりたい原神やフライトシムの時は4k60でヴァロラントやAPEXをやる時はフルHDの240の2枚構成に落ち着いたのでWQHDは選択肢外なのですが、シムやMMOだとワイドもいいよなぁというのは頭に残っています
FHD版も気になります
EX2710Qで満足している民ですが、
最近発売されたMAG274QRF-QDの廉価版っぽいG274QPF-QDの性能が気になるところです。
S2721DGF、この間セールやってたから買っちまったwww
DELLとASUS信者だからMSIはいいとして、KTCは気になりますね…
AG275QXL/11が気になります
イートレンドでは32800円なのでお買い得なのではないでしょうか
AG275QXL/11は海外も含めてかなり調べましたが、
・それほど速くないInnolux製パネル
(※少なくともSharp IGZO IPSに劣る)
・デザインが個人的に好みじゃない
・ゲーミング機能がほぼ皆無
など、売れ残ってしまう理由がいくつか見つかりました。
Nano IPSやFast IPS(AUO製)だったらコスパの良い水準に入るのですが、Innoluxだと・・・セール時に安くなるBenQ EX2780Qの方が失敗しないかな、と思います。
なるほど
モニターは全く分からないので参考になりました
ありがとうございます!
Dellの旧モデルであるAw2721を持っていますが、色味が黄色っぽくて忠実に再現できていないような気がします。色温度を調整しても正しい色を表現するのは難しいように感じています。現行モデルはどうなのでしょうか。
Ipsの中でも最近rapidやらfadtやら見かけますが、どれくらい違うんでしょうか?
KTC M27T20は8bitまでしか対応してないようですが。。。
MAG274QRF-QDの廉価版っぽいG274QPF-QDが気になりますね。
DisplayHDR400には対応していますが、色域や端子を少なくして安くしているようですが、モニタ能力の差がどんなものなのでしょうか?
10億色対応ってゲーミングでの重要度はいかがでしょうか?FRCであっても価値ありますでしょうか?掲載いただけると幸いです。
IODATAのEX-GCQ271HAと
グリーンハウスのGH-ELCG27WA-BK
が気になっているんですがレビューしていただけるとうれしいです
最近出たViewsonicのVX2728J-2K-7が気になってるんですが、応答速度がGTGじゃなくてMPRT表記なんですよね。
あれはどこまで信用して良い数値なんでしょうか。
Odyssey G7や273CQRX-QDは価格的に入らないって感じですかね?
LG UltraGear 27GN800-Bのリフレッシュレート165hzとありますが、リンクとんだ先では144hzで紹介されていました。設定変更などで165hzになるかんじでしょうか?
カテゴリ分けで紹介頂けているのはありがたいが、どれも1つずつなので合わないと全く参考にならなくなってしまう。
次回は2,3個ぐらい紹介して頂きたい。
HPのX27q、それと他の方も言っているViewsonicのVX2728J-2K-7の2つが気になってます。
もし可能でしたらレビュー楽しみに待ってます。