ゲーミングモニターの応答速度を客観的に計測する方法

ゲーミングモニターの「本当の応答速度」を、客観的かつ正確に計測するのは非常に難しいです。しかもメーカーの公称値は驚くほど信用ならないです。にも関わらず、メーカーの公称値を鵜呑みにしたレビューや評価が少なくない。

そこで「ちもろぐ」のゲーミングモニターレビューでは、実測に基づいた客観的なレビュー方法を導入しました。

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応答速度の「公称値」は意外とテキトー

スペックに記載される「G2G応答速度」とは?

スペックに記載される「G2G応答速度」とは?

ゲーミングモニターが登場した頃は「ISO 13406-2」規格に基づいたISO応答速度が記載されていましたが、最近はもっぱら「Gray to Gray」、ある灰色から別の灰色へ変化するのに掛かった時間が「G2G応答速度」として表記されています。

G2G応答速度とISO応答速度
  • ISO応答速度:「白(0)→ 黒(255)→ 白(0)」に掛かった時間(往復)
  • G2G応答速度:「ある灰色 → 別の灰色」に掛かった時間(片道)

ISO応答速度は、白(0)から黒(255)への往復に掛かった時間です。一方でG2G応答速度は、ある灰色から別の灰色。たとえば、灰色(50)から灰色(150)へ片道だけで掛かった時間を示します。

ISOと比較して、G2G応答速度はとても自由度の高い表記方法なので、悪い言い方をすればメーカー側のやりたい放題です。どんな灰色かは決まってないので、とにかく一番速い応答速度を出せる灰色で計測すればOKです。

極端な話をすれば、「100の組み合わせで灰色 → 灰色の時間を計測したら、1パターンだけ1 ミリ秒が見つかった」から、スペック表に「1 ミリ秒(G2G)」と記載している可能性は十分にあり得ます。

G2G応答速度の測定条件は「あいまい」

ディスプレイの業界団体である「VESA(Video Electronics Standards Association)」によって、G2G応答速度の測定条件はザックリと決められていますが、残念ながら非常にあいまいな仕様のまま放置されています。

消費者(ユーザー)にとって、特に問題なのが以下の3つ。

  • 灰色(1~254)であればOK
  • 測定機材のレギュレーションは無し
  • オーバードライブの条件もなし

ISO応答速度はハッキリと「白」と「黒」と指定されているのに対して、G2G応答速度は灰色(1~254)であれば何を使ってもOKです。だからメーカーにとって最高の数値を出しやすく、スペック表に強烈な応答速度を掲載できます。

加えて、測定機材についても特に指定は無いようです。実際にぼくも測定機材を用いて応答速度を計測したところ、黒色(0)に近いほど測定機材の性能差がハッキリと出てしまい、驚きました。

オシロスコープの分解能が不足した場合

黒に近いほど計測される光が小さいため、ノイズの影響を受けてしまいますし、オシロスコープの性能によっては分解能が不足してザックリとした数値しか計測できない場合もあります。

よって、メーカーが示している応答速度そのものが、正確な数値なのかどうかもアヤシイのが現状です。

さらにオーバードライブの条件も決まっていません。オーバードライブ機能を使えば確かに応答速度は改善しますが、オーバードライブを掛けすぎると「オーバーシュート」が発生して「逆残像」が発生する場合もあります。

いくら応答速度が速くても、逆残像が発生してしまえば意味が無いです。しかしG2G応答速度はオーバードライブの条件は無いし、オーバーシュートが発生しても「どれくらい発生するか?」を記載する義務もありません。

オーバーシュートが発生して「逆残像」

「オーバーシュートが発生して逆に残像出てるけど、1 ミリ秒は出たからスペック表に掲載しておく。」なんてことは普通にあり得るし、実際、安価なゲーミングモニターではよくあることです。

応答速度を計測する方法

デジカメのスローモーション撮影を使った方法

デジカメでスローモーション撮影

Sonyの「RX100V」など、960 fps(1秒に960回)のスローモーション撮影に対応したデジカメを使って、残像を撮影して視覚的に応答速度を計測する方法があります。確かに応答速度を捉えることが可能です。

しかし、デジカメの960 fps程度のスローモーション撮影では、おそらくメーカーが掲載している応答速度よりも正確性に欠ける結果になる可能性が高いです。

  • 分解能は「約1.04ミリ 秒」しかない
  • 計測パターンを増やすと検証に莫大な時間が必要
  • 計測する範囲が「あいまい」になりやすい

1 ミリ秒なら精度として割とアリだと思います。問題は1回のスローモーション撮影に時間がかかりすぎるので、検証パターンを増やしにくいこと。そして計測する範囲が分かりづらく、検証する人によって「再現性」が変わってしまうことです。

もちろん、実際に試して出た結論です。デジカメのスローモーション撮影で得られるデータは、所詮「おまけ」レベルでしかありません。

やかもち
960 fpsで撮影ができる「RX100V」は素直にスゴイと思うけど、応答速度の計測には向かないですね。

光ディテクターとオシロスコープを使った方法

光ディテクターとUSBオシロスコープ

ゲーミングモニターの「応答速度」は、つまるところ「明るさの変化」です。明るさの変化をもっとも効率よく正確に計測できる方法が、「光ディテクター」を使って明るさの変化を検知し、「オシロスコープ」を使って記録する方法です。

  • 光ディテクター:光の明るさを「電圧」に変換する機材
  • オシロスコープ:検知した結果をデジタルデータに変換する機材

ハッキリ言って、デジカメのスローモーション撮影とは桁の違う次元でモニターの応答速度を計測できます。

機材記録回数マイクロ秒性能差
光ディテクター2400000 fps0.4166 μs2500倍 !!
デジタルカメラSony RX100V960 fps1041.66 μs

当ブログ「ちもろぐ」で使用する光ディテクターは、0.4166 マイクロ秒刻み(= 2.4 MHz)で明るさの変化を検知可能です。デジカメが960 fpsに対し、光ディテクターは2400000 fpsなので、データの細かさは2500倍に達します。

対応している波長は「340 ~ 1100 nm」で、可視光線(= 人間の目に見える光)を100%カバー。ゲーミングモニターの応答速度は、せいぜい「0.00 ミリ秒」単位なので、使用している光ディテクターの性能で十分です。

PicoScope / 接続 : USB / 帯域幅 : 10 MHz / ch数 : 2 / メモリ長 : 8000 / 垂直分解能 : 8 bit / サンプリングレート : 最大100 MS秒 / 保証 : 4年

オシロスコープはPicoScope社の「2204A」を使用。周波数帯域は10 MHzで価格なりのオシロスコープですが、ミリ秒単位の記録にはなんとか使えているのでコスパはかなり良いオシロスコープです。

PicoScope 5242Aに買い替えました
PicoScope / 接続 : USB / 帯域幅 : 60 MHz / ch数 : 2 / メモリ長 : 1280000 / 垂直分解能 : 8~16 bit / サンプリングレート : 最大1 GS秒 / 保証 : 4年 / 備考 : ちもろぐでは型落ちの「5242A」を使用

2204Aより遥かに高性能なUSBオシロスコープ「5242A」に買い替えました。周波数帯域は60 MHz、垂直分解能は8 ~ 16 bitを選択できます。わずかな明るさの変化も、12 bitの分解能で計測可能になり、より高精度な応答速度の測定が可能です。

やかもち
型落ちとはいえ定価は約13万円もする、ハイエンドなオシロスコープです。ミリ秒の世界を見るには十分すぎる性能。
始点 / 終点050100150200255
00.32 ms0.27 ms0.30 ms0.25 ms0.30 ms
500.17 ms0.21 ms0.27 ms0.28 ms0.28 ms
1000.30 ms0.21 ms0.22 ms0.27 ms0.27 ms
1500.24 ms0.28 ms0.16 ms0.27 ms0.21 ms
2000.25 ms0.25 ms0.20 ms0.18 ms0.19 ms
2550.25 ms0.37 ms0.28 ms0.15 ms0.20 ms

光ディテクターとオシロスコープを使って、6段階のグレーで合計30パターンの「G2G応答速度」を実測。ちなみに30パターンの計測は1分くらいで完了します。

オシロスコープで応答速度を計測する

※筆者が使ってる4Kモニター(IPS)の応答速度

計測する範囲は、始点から終点まで100%すべてではなく、VESAの規格と同じく「10~90%」の範囲を応答時間としてカウントします。

LG C9 OLEDの応答速度60 Hz / オーバードライブ:なし
平均値最速値最遅値明るく暗く
0.25 ms0.15 ms0.37 ms0.26 ms0.23 ms

30パターンすべての応答時間を集計し、「平均値(Average)」「最速値(Faster)」「最遅値(Lowest)」「明るく(立ち上がり、Rise Timeの平均値)」「暗く(立ち下がり、Fall Timeの平均値)」を表にまとめます。

もっとも重視するのは「平均値」です。ゲーミングモニターが対応している最大リフレッシュレートに対して、必要な応答速度を満たせているかどうかが重要です。

初心者もち
リフレッシュレートに対して必要な応答速度ってなんですか?

こちらの記事でも解説している通り、応答速度はリフレッシュレート(モニターを更新する時間)よりも短くなければ、残像が発生する確率が大幅に高くなってしまいます。以下の表にまとめます。

リフレッシュレート更新時間応答速度(推奨)
60 Hz16.67 ms16 ms以下
75 Hz13.33 ms13 ms以下
144 Hz6.94 ms6.9 ms以下
165 Hz6.06 ms6.0 ms以下
240 Hz4.17 ms4.1 ms以下
280 Hz3.57 ms3.5 ms以下
360 Hz2.78 ms2.7 ms以下

悲しいかな、ほとんどのゲーミングモニターは、公称値どおりの応答速度を計測できません。平均値ですら、リフレッシュレートに対して必要な応答速度を下回らないです。

やかもち
オーバードライブを限界まで掛けて、30パターンのうち数パターンが公称値に届くのが現実です。

オーバーシュートの度合いも計測が可能に

TUF Gaming VG279QMの応答速度(オーバーシュート)

逆残像の原因になるオーバーシュート(立ち下がりの場合はアンダーシュート)は、終点(100%)からどれだけ乖離したかで「程度」を計測可能です。

たとえば、白(0)から灰色(100)の応答速度で、目標の100を超えて125を記録した場合。オーバーシュートの度合い(エラー率)は単に25%と計算します。

  • 0~5%:ほぼ目立たない、安定したオーバードライブ性能
  • 5~10%:逆残像が見えつつあるが、見るに耐えるレベル
  • 10%~:逆残像がハッキリと見え、見るに堪えないレベル

エラー率の目安は10%オーバーで「使えない」と判断します。5%前後なら、実用的なオーバードライブ機能と評価できますが、10%以上は本当に「逆残像」が目立ってしまうのでダメです。

エラー率050100150200255
017.4 %20.1 %48.5 %20.2 %0.0 %
500.0 %16.1 %34.1 %22.8 %0.0 %
1000.0 %6.1 %22.1 %27.6 %0.0 %
1500.0 %0.0 %7.9 %16.7 %0.0 %
2000.0 %0.0 %0.0 %15.3 %0.0 %
2550.0 %0.0 %0.0 %0.0 %17.6 %

エラー率も30パターン計測して、応答速度と同じように表にまとめます。

まとめ:ゲーミングモニターの客観的な評価

ゲーミングモニターの一例

「光ディテクター」と「オシロスコープ」を用いて、ゲーミングモニターの応答速度を実測することで、ゲーミングモニターの極めて客観的な性能評価が可能になりました。

メーカーの公称値を真に受けただけのレビュー、デジカメのスローモーション撮影を使った視覚的な計測レビューなどがありますが、光ディテクターを使った計測方法はそのどれよりも遥かに正確で客観的です。

応答速度の客観的な比較も可能

応答速度を数値データとして集計するので、他のゲーミングモニターとの比較も簡単にできます。同じ値段の240 Hzモニターがあったとして、平均2 ミリ秒と平均4 ミリ秒なら、前者の方が高性能と判断できます。

やかもち
ここまで解説した計測方法については、基本的に英国の「TFT Central」を参考にさせて頂きました。

以上「ゲーミングモニターの応答速度を客観的に計測する方法」について、解説でした。

測定に基づいたレビューを読んでみる?

やかもち

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10 件のコメント

  • まとめのグラフの SampleA と SampleB のモニターは何を使っているのでしょうか?教えて頂けたら助かります。

    • EIZOのゲーミングモニターって「FORIS」シリーズでしたっけ?
      発売日が古いので、応答速度は期待できないですね…その割に値段がけっこう高いので、検証予定はないです。EIZOさんがサンプルを貸し出してくれれば別ですが。

  • 凄い精度で計測されてますね。素晴らしいです。
    基本的にHzに準して応答性はほぼほぼ決まっている傾向に思えます。OLEDは別格として。
    そして最速値はカタログスペックレベルとして参考にはしますが、現実的には最遅値や平均値の方を気にすべきなのも分かります。
    にしても測定させてみるとBenQの240Hz 1ms TN e-Sports ゲーミングモニターXL2546は、遅いときは全部の60Hzモニターではないみたいですがそれより遅いとは意外ですね。

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