インテルの歴史的なプロセッサ「Intel 8086」から40年、そしてインテル創業から50年を記念して…。ターボ時に5.0GHzで動作する限定版のCPU「Core i7 8086K」が登場。さっそくi7 8086Kを入手したので、実機レビューを行ってみる。
「i7 8086K」誕生の経緯

Wikimedia「File:Intel C8086」より
インテルは1968年に創業し、その10年後に発表した「Intel 8086」プロセッサでCPU市場で大ヒット。その前には4004や8008 / 8080などがあったが、インテルの知名度を飛躍的に高める要因にはならなかった。
- 創業から50年
- 8086誕生から40年
2018年はこのようにインテルにとって何かと節目の年なので、記念となるCPUが(マーケティング的な意味でも…)必要になった。そして誕生したのが「Core i7 8086K」です。
ターボブースト時のクロック周波数は「5 GHz」に達するのが最大の特徴。今までのIntel CPUで、ターボ時に5 GHzに到達する製品は1つもなかった。インテルとしては初の5 GHzプロセッサとなる。
ちなみに、i7 8086Kの「5 GHz」には大きな意味があります。1978年に登場した「Intel 8086」のクロック周波数は「5 MHz」だったので、40年でクロック周波数は1000倍にまで進化したという意味です。
- 1978年の”8086”は最大5 MHz(= 0.005 GHz)
- 2018年の”8086″は最大5 GHz(= 5000 MHz)
技術の進歩ってすごい(小並感)。
「i7 8086K」を実機レビュー
パッケージング & 開封

では「開封の儀」から行きましょうか。i7 8086Kは限定版なので、普段のパッケージと違ってCore i7のロゴの直下に「Limited Edition」と加えられている。
ただ、個人的にはLimited Editionのデザインがイマイチに見えてしまいます。


他の違いは、パッケージの構造です。普通のパッケージは横から開くようになっているのですが、この限定版パッケージは下からスライドさせないと開かない構造。

他のIntel CPUパッケージと比較。Limited Editionのデザインが微妙と言いましたが、こうして並べてみると「パッと見で限定版と分かる」ので、デザインとしての仕事は果たしています。

横のスペック表は特に目立った変化はなし。

開封。

通常版より付属品が2枚多い。いつもはCPU本体とCPUのロゴシールが付属する説明書だけですが、限定版はインテルCEOからのメッセージカードが入っています。

このロゴシールが限定版にしてはちょっと残念なところだったり…。CPU-Z(最新版)だと、本来のロゴデザインが表示されるので地味に嬉しいですが、やっぱり付属のシールもこのデザインにして欲しかったな。

普段とは違う2つの付属品。左が「COA」(このi7 8086Kが本物であることを証明するモノ)で、右はCEO(Brian Krzanich氏)からのメッセージカード。
Dear Valued Customor. Thank you for your purchase of the 8th Gen Intel Core i7 8086K Limited Edition processor. This processor celebrates the 40th anniversary of the introduction of intel's x86 architecture and our fiest 8086 microprocessor that helped build intel into the pioneering technology company it is today. As we celecrate intel's 50 the anniversary as a company, we look to the future and imagine tha advancements in technology that intel will make possible. Know that your thirst for technology innovation helps drive us to push for these breakthroughs every day and for that we thank you. Kind Regard, Brian Krzanich CEO, Intel Corporation
「i7 8086Kを買ってくれてありがとう。8086誕生から40年、インテル創業から50年を祝福して…」とか「ユーザーの飽くなき技術革新への欲求が、今日のブレイクスルーを生み出す」とか「Intelはそのことに感謝しています。」という感じの内容。
※ 筆者の英語力の無さ…

ヒートスプレッダの印字はこの通り。

Core i5 8600Kと比較。特に目立った変化はなく、いつもどおりのヒートスプレッダですね。

テスト環境 & 比較対象

「i7 8086K」の検証に使ったテスト環境はこの通り。
- CPU:i7 8086K / i5 8600K
- GPU:MSI GTX 1060 6GB Gaming X
- マザボ:Gigabyte Z370 AORUS Ultra Gaming Rev.1
- メモリ:DDR4-2666 8GB x4(Kingston / G.Skill)
- クーラー:NZXT X62(280mmラジエーター / 140mm FDBファン x2)
- SSD:Intel Optane Memory 32GB(キャッシュ用)
- HDD:Seagate ST2000DM006(2TB / 7200rpm)
- 電源:Antec NeoECO Classic NE550C※(550W / 80+ Bronze)
- ケース:マザボの外箱
- OS:Windows 10 64bit LTSB 2016
i7 8068Kのために新規購入したパーツは、280mm簡易水冷「NZXT X62」のみ。この簡易水冷を選んだ理由は、国内で入手可能な簡易水冷では今のところ「最高性能」だから。
i7 8086Kは、i7 8700Kと同様に発熱がかなり出ると思われるので、4000~5000円の120mm空冷だと殻割り無しにマトモなオーバークロックが出来そうにない。
なお、ケースに入れていない理由はCPUの交換が面倒くさいため。マザーボードの箱の上に置いた状態で検証を進めていきます。
※ 自作にあまり詳しくない頃に選んだ電源ユニットです。3年以上マトモに稼働しているけれど、あえてオススメはしない。
比較対象はi5 8600Kと、一応i7 8700Kを。前者については今回、実際にテストを実行した録り下ろしですが、後者は以前レビューしたG-tuneの「i1630PA2-SP-DL」よりデータを引用します。
CPUとしての性能
Core i7 8086KがCPUとしてどこまで優秀なのかをチェックする。
Cinebench R15

レンダリングソフト「Cinema 4D」のベンチマークソフト。シングルスレッド性能は「204 cb」で、マルチスレッド性能は「1401 cb」という結果に。
さすがにCore i7系というだけあって、シングルスレッド性能の速さは圧倒的です。定格で簡単に200 cb超えを実現できるのは、やはり1コアだけとは言え5 GHzで動作する所以でしょう。
Cinebench R15 | i7 8086K | i7 8700K | i5 8600K |
---|---|---|---|
Single | 204 cb | 193 cb | 184 cb |
Multi | 1401 cb | 1397 cb | 1018 cb |
5 GHz動作のおかげでシングル性能は圧倒的。しかし、マルチスレッド性能となると…i7 8700Kとほとんど差は無い。
Geekbench 4

Geekbench 4.1 | i7 8086K | i7 8700K | i5 8600K |
---|---|---|---|
Single | 5799 | 5672 | 5302 |
Multi | 24112 | 23773 | 20553 |
Geekbench 4は様々なベンチマークを実行させて、総合スコアを出すAnTuTuに少し似たベンチマークソフト。やはりシングルスコアが優秀ですが、マルチスコアは思ったより伸びません。
CPU-Z

CPU-Z | i7 8086K | i7 8700K | i5 8600K |
---|---|---|---|
Single | 499 | 513.2 | 490.9 |
Multi | 3713 | 3751.2 | 2830.1 |
ハードウェア情報を取得するCPU-Zに付属しているベンチマーク。i7 8700Kと比較して、ほとんど大差無い結果になっています。
Blender 2.78

フリーの3DCG / レンダリングソフトである「Blender」に、BMWというプリセットを読み込んでレンダリングを実行。処理が終わるまでにかかった時間でCPU性能を比較できます。
Blender 2.78 | i7 8086K | i7 8700K | i5 8600K |
---|---|---|---|
BMW | 5分7秒 | – | 7分22秒 |
結果は5分7秒。手持ちのデータは無いですが、海外のテスト結果を見る限りではi7 8700Kもだいたい5分前後です。Cinebenchで予感はしていたけど、やはりi7 8700Kと比較してマルチスレッド性能に大きな変化はない様子。
Photoshop CC 2018

Puget Systems社が配布しているベンチマーク(バッチファイルを用いた自動実行)を使って、Photoshop CC 2018の動作をスコア化する。
Photoshop CC 2018 | |||
---|---|---|---|
総合 | 927.6 | – | 838.6 |
一般 | 87.4 | – | 73.9 |
フィルター | 95.8 | – | 88.7 |
Photomerge | 97.4 | – | 94.1 |
GPU | 89.5 | – | 86.4 |
グラボがGTX 1060なので、ややスコアが下がってしまったが、総合927.6点も出ていればほとんど不満は無いレベル(最大で1000点前後に収まる仕様です)。
エンコード速度

HandbrakeとHWBOTを使って、エンコード速度を検証しました。
Handbrake | i7 8086K | i7 8700K | i5 8600K |
---|---|---|---|
x264 Fast | 86.37 fps | 87.60 fps | 63.88 fps |
x265 MKV | 44.28 fps | – | 38.82 fps |
「x264 Fast 480p」プリセットを使ったテストは、86.37 fpsでi7 8700Kと大差なし。「x265 MKV」プリセットで行ったH.265形式のテストは44.28fpsでした。

HWBOT | i7 8086K | i7 8700K | i5 8600K |
---|---|---|---|
x265 1080p | 44.15 fps | 44.53 fps | 35.47 fps |
HWBOTを使ってH.265のエンコード速度を検証したところ、44.15fpsだった。
圧縮と解凍

7-Zip | i7 8086K | i7 8700K | i5 8600K |
---|---|---|---|
圧縮 | 39654 MIPS | 40099 MIPS | 28673 MIPS |
解凍 | 37524 MIPS | 37396 MIPS | 25268 MIPS |
総合 | 38589 MIPS | 38747 MIPS | 26971 MIPS |
「圧縮」「解凍」ともにほぼ同スコア。
Mozilla Kraken 1.1

Kraken 1.1 | i7 8086K | i7 8700K | i5 8600K |
---|---|---|---|
Total | 938.9 ms | 921.0 ms | 1029.0 ms |
ブラウザ上でJavaScriptの実行速度を競うベンチマーク。1000 msを割り込む圧倒的なスピードを叩き出した。
ゲーミング性能
GTX 1060 6GB程度のグラボでは、i5 8600Kと比較して優位な性能差を得ることは出来ないと思うが、せっかくなのでテストしました。
CS:GO

フレームレートが非常に出やすい軽量なゲーム「CS:GO」だと、若干だがフレームレートが伸びた。
- i7 8086K:平均249.4fps
- i5 8600K:平均242.0fps
240fpsを突破しているので、これ以上のフレームレートを求めたところで実用上の意味は全く無いですが、ゲーミング性能は確実に向上している。
Rainbow Six Siege

レインボーシックスシージはほとんど差はない。
- i7 8086K:平均110.9fps
- i5 8600K:平均110.7fps
GTX 1060レベルのグラボでは、Core i5を大きく引き離すのはやっぱり難しいと思われます。
黒い砂漠

黒い砂漠は5%ほどフレームレートが向上。高負荷時(人が密集する地域)の最低フレームレートに大きな変化はないが、フレームレートが出やすい場面では更に伸びる具合ですね。
- i7 8086K:平均66.0fps
- i5 8600K:平均63.3fps
比較的、黒い砂漠はCPU性能の影響を受けやすい印象。
FINAL FANTASY XV

スクエニの公式ベンチマークの動作中に、フレームレートを計測して影響を調べました。
- i7 8086K:平均67.8fps
- i5 8600K:平均65.6fps
差は決して大きくはないが、CPUの影響は確認できた(FF15は割りとCPUに影響を受ける)。
- i7 8086K:6873点
- i5 8600K:6738点
ベンチマーク終了後に表示される総合スコアは、i7 8086Kが「6873点」でi5 8600Kが「6738点」でした。性能差は約2%になった。
DOOM 2016

DOOMは目立った変化はなく、むしろ今回計測したケースではi5 8600Kの方がフレームレートが高い結果に。
- i7 8086K:平均131.4fps
- i5 8600K:平均136.0fps
DOOMはもともと最適化が非常にこなれているゲームなので、CPUのゲーミング性能にあまり影響を受けずにグラボ本来の性能を出しやすい傾向のようですね。
マインクラフト

筆者が自作した検証用マップにて、マインクラフトの動作検証を行いました。かなり作り込んでいるので、描画距離(読み込みチャンク量)を増やすとかなりの高負荷になるマップ。
マインクラフトはチャンク読み込み時(マップの読み込みと同じ現象)にかなりのCPU性能を要求してくるゲームなので、「 i7 8086K」の優位性を発揮できる可能性は濃厚です。

- i7 8086K:平均152.9fps
- i5 8600K:平均146.3fps
シェーダーを入れていない状態。想定していたとおり、やはりi7 8086Kの方が高いフレームレートを叩き出している(約4.5%の向上)。

- i7 8086K:平均36.7fps
- i5 8600K:平均34.1fps
負荷の重たいKUDAシェーダーを導入すると、動作フレームレートは一気に低下。これだけフレームレートが落ちても、i7 8086Kの方がフレームレートが高い結果を出せた。
ゲーミング性能まとめ
テスト項目 | i7 8086K | i5 8600 | 性能差 |
---|---|---|---|
CSGO | 249.4 | 242 | +3.1% |
Rainbow Six Siege | 110.9 | 110.7 | +0.2% |
黒い砂漠 | 66 | 63.3 | +4.3% |
Final Fantasy XV | 67.8 | 65.6 | +3.4% |
DOOM | 131.4 | 136 | -3.4% |
Minecraft | 152.9 | 146.3 | +4.5% |
Minecraft / KUDA | 36.7 | 34.1 | +7.6% |
平均 | 116.4 | 114.0 | +2.8% |
結果を表にまとめた。基本的にグラボがGTX 1060 6GBなので大きな差は出ないが、マインクラフトのようにCPUに依存する部分が多いゲームだと最大で7.6%なので結構ありますね。
2018年時点で、一般向けで最速のGPU「GTX 1080 Ti」の性能を最も引き出せるのはCore i7 8700K。ですが、実質的に8700Kの高クロック版である8086Kは、更に上のゲーミング性能を持つ可能性は高いです。
動作温度とオーバークロック

1コアだけとは言え、i7 8086Kは最大5 GHzに達するCPUなので選別品のダイが使用されていると言われている。つまり、普通のi7 8700Kよりオーバークロックがしやすいという意味です。
もちろん定格のままで使うのも選択肢の一つですが、せっかく選別品が使われているかもしれない限定版なので…手動オーバークロックをせずにはいられない。
というわけで、さっそくBIOS経由で手動オーバークロックを施していきます。負荷テストにはレンダリングソフトの「Blender 2.78」にて、「BMW」を実行して検証することにした。
OCCT : Linpack + AVXほどではないけれど、Cinebench R15を超える負荷を4~5分※に渡って掛け続けられるので使い勝手は良いです。
※ Core i7の場合はおおむね5分前後。遅いCPUなら終了までに掛かる時間はもっと伸びます。
定格

BIOSから何も設定をしていない定格状態でBlenderを回す。CPU温度は65度以内に収まり、さすがに280mm簡易水冷のNZXT X62の冷却性能は優秀なモノだとよく分かる。

なお、定格状態のクロック周波数はこのように推移しています。シングルスレッド処理の内は5 GHzで動作するが、全てのコアが処理を始めると4.3 GHzに落ち着く仕様です。
Amazonの商品ページでは「5GHzまで昇圧された最速6コアプロセッサ」と宣伝されているけれど、確認した通り実際には全てのコアが5 GHzになるわけではないので注意してください。
オーバークロック時
ここからがある意味で「本題」。
選別ダイの効果がどれほどのモノなのかが検証できる。まずはシンプルに、「コア電圧の昇圧」と「クロック倍率」の設定だけを使った方法でオーバークロックを行います。

- コア電圧:1.225V
- 倍率:47倍
これで6コア全てが4.7 GHzで動作するようになった。CPU温度は定格からグッと14度ほど上昇して、最大80度に達する状態に。やはり発熱は出やすいので、簡易水冷は必須アイテムかも。
- Blender 2.78:4分39秒(10%高速化)
- Cinebench R15:1528 cb(9.1%高速化)
マルチスレッド性能は10%前後のアップに成功。単に電圧を盛り付けるだけ…という雑なオーバークロックだが、普通に完走してくれました。

- コア電圧:1.275V
- 倍率:48倍
0.050V昇圧して、4.8 GHzに挑んでみた。アッサリと通りましたが、やや不安定になってきた。さすがに昇圧だけを用いたオーバークロックは厳しくなってきたかも…。
- Blender 2.78:4分29秒(14.1%高速化)
- Cinebench R15:1558 cb(11.2%高速化)
定格から更に11~14%程度の性能アップを果たした。今のところはクロック周波数に従って、順当に性能が伸びています。

次は4.9 GHzに挑戦。
- コア電圧:1.375V
- 倍率:49倍
かなりコア電圧を盛り付けたが、その割にはCPU温度が変わっていない。
- Blender 2.78:4分30秒(13.7%高速化)
- Cinebench R15:1583 cb(13.0%高速化)
高負荷なBlenderだと処理速度に変化がなく、逆に負荷がそれよりも少ないCinebenchなら性能アップに成功している。ということは…何らかのリミッターが発動して、必要な電圧を引っ張り出せていない可能性が高い。
とりあえず、コア電圧の昇圧だけで4.9 GHzまでオーバークロックが出来ることがわかった。
しっかり設定すれば「全コア5 GHz」は余裕です
ここから先は単に電圧を盛るだけでは安定したオーバークロックは出来ない。ターボブースト時のクロックを5 GHzに設定し、電圧をマザボ任せにすることで、何とか全コア5 GHzを実現できるが…。

見ての通り、コア電圧をマザーボード任せ(Auto)にしているため、CPU温度は非常に高くなっている。
- Blender 2.78:4分31秒(13.3%高速化)
- Cinebench R15:1628 cb(16.2%高速化)
決して安定した状態ではなく、実効処理性能も高負荷なBlenderに関しては頭打ちになってしまう。
「i7 8086K」を5 GHzにする方法
というわけで、安定した「5 GHz」を実現するべく、より細かいオーバークロック設定を施していく。以下の方法を用いれば、ほとんどのi7 8086Kで安定した5 GHz稼働を実現できるはずだ。

「Advanced Frequency Settings」へ。

まずは基本の「CPU Clock Ratio」。ここを50にすると、50倍 = 5000 MHzになります。

「Advanced CPU Core Settings」へ進む。

処理性能にほとんど影響を与えない機能を「無効化」(Disabled)します。

そして一番上に戻って「Uncore Ratio」を45倍に設定。CPUコア以外の部分のクロック周波数なので、コアクロックほど性能に影響はしない。けれど、どうせなのでここも性能アップしておいて良い。

次は「Chipset」タブへ移動し、「Internal Graphics」(内蔵GPU)を無力化する。グラボから出力しているので、内蔵GPUは無駄な機能になっている。だから無力化しておく。

元のタブへ戻り「Advanced Voltage Settings」へ行く。

「Advanced Power Settings」へ。

「CPU Vcore Loadline Calibration」を「Turbo」に書き換える。
この機能はCPUに対して、マザーボードが最適な電圧を供給する機能です。しかし、オーバークロックではなるべく要求された電圧は100%供給してあげた方が「安定」するため、この機能はジャマになりやすい。
CPU温度が上がりやすいというデメリットもあるが、安定性のほうが重要だ。
- Auto(4.9 GHzまではこれで良いかも)
- Turbo(5.0 GHzなら推奨)
- Extreme(5.1 GHz以降なら必要かも)
設定は3種類あるので、コアクロックに応じて使い分けます。とりあえず5 GHzが目標なのでExtremeは使わずに無難なTurboで行くことにした。

一つ戻って「CPU Core Voltage Control」へ。

「CPU Vcore」(コア電圧)に、1.275Vほど盛る。他の設定をいろいろと変更した後なので、いきなり1.300V以上で挑むのはやめておこう。まずは1.275Vから様子見。

「Save & Exit」タブに移動して、「Save Profiles」にここまでの設定を保存する。「i7 8086K 5GHz」という名前でプロファイルを保存しておいた。

BIOSから出ていく時は、かならず設定を保存した状態で終了すること。

結果はこの通り。全コア5 GHz稼働にも関わらず、何の問題もなくBlenderを完走。適切な設定を行うことで、Auto電圧の5 GHzと比較してCPU温度は3~5度ほど下がった。
- CPU温度(最大値):97度 → 94度
- Blender 2.78:4分25秒(15.8%高速化)
- Cinebench R15:1627 cb(16.2%高速化)
処理性能もちゃんと上昇。定格と比較して、16%前後の性能アップに成功した。

シングルスレッド性能は「204 cb」から「217 cb」に。シングル性能に関しては圧倒的ですね。

シングルスレッド性能の影響が大きいPhotoshop CC 2018のパフォーマンスも、16.7%向上して「1082.8点」に到達。

なお、Photoshop CC 2018実行時のCPU温度は落ち着いています。Photoshopなど、Adobe系のソフトを多用するクリエイターさんに意外と向いているCPUかもしれない。

オーバークロックの効率はこの通り。クロック周波数ごとの効用はちゃんと出ており、少なくとも自分が検証した5 GHzまでは順当に性能アップが可能でした。

レビューまとめ:最高クロックに挑戦するならアリ

テキトーなオーバークロックでは限界がありますが、適切なOC設定と240mmラジエーターを備える簡易水冷ユニットを用いることで、容易に5 GHz動作を実現できるのが特徴。
コア電圧1.275Vで安定して5 GHzが動作するなら、Coffee Lake用のダイの中でもそれなりの選別品が使われている可能性はやっぱり高い(断定は出来ないけど)。
1万円の差額をどう捉えるか
最大の評価の別れどころが「価格」になると思う。
日本国内ではインテルのキャンペーンに当選すれば無料で入手可能(日本は500個配布)だが、それ以外の方法は「単品購入」か「BTO搭載品の購入」の2択になってくる。
Amazonでも入手可能で、2018年6月時点…
- i7 8700K:約41000円
- i7 8086K:約51500円
およそ1万円ほどの違いがある。今回、i7 8086Kを検証して断言できることは「定格」で使うなら間違いなく選択肢にならないことです。
- 選別ダイによる容易な「5 GHz」オーバークロック
- 最高速度のPhotoshopパフォーマンス
- 最強クラスのゲーミング性能
- CPU業界では極めて稀な「限定品」
水冷さえ揃えればオーバークロックが非常にカンタンなので、容易に「最高速度」に達する。これが選別ダイを使ったi7 8086Kの最大のメリットになる。

それに加えて、CPU市場ではとてもめずらしい「限定品」という希少性。全世界に50000個しか無いらしいので、「レアさ」に惹かれる人なら手に取る価値は大きいかと。
一方、デメリットも
- i7 8700Kと比べて劇的な性能変化はなし(定格時)
- 付属ロゴシールのデザイン…
- 実売価格5万円はやや敷居が高い
さっきも説明したしベンチマークでも確認してきたとおり、定格運用ではi7 8700Kと性能差はほぼ無い。よって普通に運用しようと考えているユーザーには魅力の無い存在です。
付属品も1万円の差額に見合ったモノなのか、と言われるとかなり微妙ですし。しかし、i7 8700Kを買うよりかは高い確率で選別ダイを引けるのが「強み」だろう。

結論、評価は「A」ランク。(i7 8700KはSランク)
オーバークロックをしないなら「8700Kで十分。」だし、付属品もちょっとイマイチ。そのあたりを引き算して「A」ランク評価とします。
- 「オーバークロックに耐えやすい良い石が欲しい。」
- 「CPUでは極めて珍しい”限定版”CPUに惹かれる。」
人を選ぶCPUなのは間違いないが、もし以上に挙げたどちらかに一致するなら手に取る価値は大きいCPUだ。以上「Intelの40周年記念の限定版Core i7 8086Kを早速レビュー」でした。

※ 最大負荷の掛かる作業はあまりせず、AdobeソフトとフルHDゲーミングが中心なので今のところ安定稼働中。
コレクターの方はぜひ。50000個の限定生産だそうですが、日本に何個在庫が流れているかは不明です。
5 GHzオーバークロックを目指すなら「簡易水冷」を。NZXT X62は性能・静音・デザインのすべてで最高の水準に達している。デメリットは国内価格が盛られていて高いということくらい。
BTOで古いマシンから一気にアップグレードする予定の人はドスパラがおすすめ。
CPUが「i7 8700K → i7 8086K」に、SSDが「SATA 500GB → NVMe 500GB」に、サイドパネルが「真っ黒 → クリアパネル(透明)」にアップグレードされた「ガレリアZZ」です。
他にもあるCPUレビュー記事


蛇足ですが50周年ではなく、40周年では。
やっぱり性能面では買う価値はなさそうですね。
コレクターなら欲しいんでしょうがゲーマー目線からすると1万の差額出す余裕あるなら他のパーツのアップグレードに使いますね。
(小並感)ね・・・
ん?あ、(察し)ふ~ん。
ホントにパッケ限定って感じないですねAMD見たいに面白い形とか試して作ってみてもよかったのに。
しかしこの製品ってツイッターだったかな、言われてなければそのままでなかった可能性ありそうIntel忘れてたんじゃなかろうか、言った人はすごい喜んでそう。
どっかの28C/56Tで5GHzいったマザーみたいなのだったら行けたかもしれません。
たぶんクロック上げただけのi7-8700K(それを言ったら身も蓋もない
最近のIntelはRyzen Threadripper 2の発表前日に、一般ユーザーにはほぼ無理な「28コアのCore i9を5 GHzまでOC」というパフォーマンスを見せるなど。マーケティング面であれこれと動いている様子なので、残念ながら「i7-8086K」もその動きの一部なのかもしれません。
小並感・・・
お前ホモか!?(歓喜)
「ねとラボ」(http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1306/20/news146.html)で確認してから使ってみたものの、やっぱり元ネタを知っている人は多いんですね…。
当たり前だよなぁ?
限定ならもっとパッケージにしろ機能にしろ
もっと特別感欲しいですよね
まあ懸賞でもらえたなら大絶賛しますけど
せめて、限定ロゴシールくらいはやって欲しいところですホント…orz
5ghz は1coreだけ動かした場合という限定条件下であって全core動かしつつ5ghz目指すならOCしなきゃいけないって店員が言ってたなあ だからゲームなんぞで5Ghzはまずでないそうで
レビューお疲れ様です。
面白かったです。
そういえばAMDがこれとRyzenスリッパを交換するみたいだね・・・。何故?
これocするならから割りした方がいいよ
5ghzでも温度が10度以上違う
最近買いました
8700Kと迷ったけど、
自分の場合、
「8700KよりもOC耐性が大外れな個体に当たる確率が減るかな?」
ってのに1万円お布施した感じですね。