タブレット向けCPU「Atom x5-Z8350」の仕様と性能まとめ

2万~5万円台のタブレットPCや2 in 1デバイスでかなり頻繁に見かけるようになった「Atom x5-Z8350」というCPU。Atomと聞くだけで「非力そう。弱そう。」というイメージしか無いが、性能としてはどれくらいのモノなのか。

この記事ではx5-Z8350と、想定されるライバルCPUと性能比較をまとめてみます。

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「Intel Atom x5」はCherry Trail世代のSoC

マニアックな話が多め

一応最初に「Atomとは何か?」について解説しておくけれど、性能についてだけを知りたいという人は「→ Atom x5 z8350の性能まとめ」に行ってくれて構いません。

世代Bay Trail-TCherry Trail
SoCAtom Z3745Atom x5 Z8350
コア / スレッド4 / 44 / 4
ベースクロック1330 Mhz1440 Mhz
ブーストクロック1860 Mhz2400 Mhz
プロセスルール22nm14nm
発表年20142016

2014年に発表されたBay Trail-T世代のAtomは22nmプロセスで製造されていました。それから2年経った2016年に発表されたのが後継「Cherry Trail」世代。

より小さい14nmプロセスで製造されるAtomで、カタログスペック面ではクロック周波数がわずかに上がっただけだが電力効率の大幅な向上に成功している最新のAtomです。

まぁ…今は2018年なので、未だに2016年のAtomが最新のタブレットに搭載されていると思うと…インテルのAtomに対するやる気の無さが見えてきて悲しいですね(今のところ最新Atomの情報は無し)。

最新Atom「Cherry Trail」の中身

Cherry Trail世代のAtom(x5 / x7)の中身はこのようになっていて、CPUコアや内蔵グラフィックスはもちろん、キャッシュやストレージ用のコントローラにその他もろもろが詰め込まれている。

色々と詰め込まれている理由は、Atomが「SoC」として開発・製造されているためだ。事実、Cherry Trail世代のAtomはその多くが2 in 1デバイスやタブレット端末に採用されており、デスクトップPCではほぼ見かけない。

※ 記事タイトルに「CPU」と書いた理由は、「SoC」という用語の知名度が低そうだから。ぼく自身もSoCを知る前は「スマホ向けCPU」という呼び方をしていたくらいですし。

AtomのCPU部分には「Airmont」というプロセッサが使われている。先代は「Silvermont」プロセッサで、主な変更点はプロセスルールの縮小(22nm→14nm)と、わずかなクロック周波数の上昇のみ。

このAirmontを合計で4コアを搭載する。よってAtom x5 / x7は基本的に「4コア / 4スレッド」を備えるクアッドコアCPUということに。

スペックBay Trail GPUCherry Trail (x5-Z8350)Cherry Trail (x7-Z8700)
実行ユニット4個12個16個
ベースクロック311 Mhz200 Mhz200 Mhz
ブーストクロック896 Mhz500 Mhz600 Mhz

内蔵グラフィックスはGen 8(Braswell世代)のGPUが搭載された。先代の内蔵GPUはBay Trail世代で、大きな変更点はBay Trailが4つの実行ユニットを備えるのに対して、Gen 8ではその3~4倍に増えたこと。

クロック周波数はかなり下がってしまったが、実行ユニットを増やすことでGPU全体の性能を底上げした形になっている。性能はのちほどベンチマーク編でチェックします。

Cherry Trail世代のAtom一覧

SoCクロック周波数コア / スレッドGPUGPUクロック代表例
Atom x7 Z87501600 ~ 2560Mhz4 / 4HD Graphics 405@16 320 ~ 700MhzTeclast Tbook 16
Atom x7 Z87001600 ~ 2400Mhz4 / 4HD Graphics (Cherry Trail)@16 200 ~ 600MhzAcer Predator 8
Atom x5 Z85501440 ~ 2400Mhz4 / 4HD Graphics 400@12 320 ~ 640MhzLenovo Yoga Book シリーズ
Panasonic Toughpad
Atom x5 Z85001440 ~ 2240Mhz4 / 4HD Graphics (Cherry Trail)@12 200 ~ 600MhzLenovo Yoga Tab 3 Pro 10
Xiaomi MiPad 2
Atom x5 Z83501440 ~ 1920Mhz4 / 4HD Graphics (Cherry Trail)@12 200 ~ 500MhzAsus Transformer Book シリーズ
Lenovo IdeaPad Miix シリーズ
Atom x5 Z83001440 ~ 1840Mhz4 / 4HD Graphics (Cherry Trail)@12 200 ~ 500MhzAcer Aspire Switch シリーズ
Chuwi 全般
HP Pavilion x2

※ GPUクロックの「~@」は実行ユニット数を示す。

2018年2月時点、市場に投入されているCherry Trail世代は以上の通り。今回の記事で重点的に扱う「Atom x5 Z8350」はLenovo、ASUS、HP製のタブレットPCにて頻繁に採用されています。

「Atom x5 Z8350」の性能まとめ【比較アリ】

単にAtom x5 Z8350の性能だけでなく、同じCherry Trail世代のAtomや、ライバルや比較対象として見られやすい「Celeron」「Pentium」。参考として「Core」シリーズなどの性能もまとめていく。

CPUの性能は相対的に見ないと、分かりにくいからね。

Cinebench R15

Windows向けのベンチマークでは定番のソフト。CPUにレンダリングという処理を行わせて、その処理時間でCPUの性能をスコア化する。シングル性能とマルチ性能を見られるので傾向をつかみやすい。

Cinebench R15 – シングルスレッド性能

  • Atom x7 Z8750
    39
  • Atom x7 Z8700
    37
  • Atom x5 Z8550
    36
  • Atom x5 Z8500
    35
  • Atom x5 Z8350
    28
  • Atom x5 Z8300
    27
  • Core i7 7Y75
    125
  • Core i5 7Y54
    112
  • Core m3 7Y30
    105
  • Pentium N3700
    37
  • Celeron N3350
    46
  • Atom Z3795
    37

1コアあたりの性能を示すシングルスレッド性能はこの通り。Atom x5 Z8350は28点と非常に低スコア。モバイル向けのCore i3であるCore m3 7Y30のスコアが100点を超えていることを見れば、いかに低いスコアか分かるかと。

Cinebench R15 – マルチスレッド性能

  • Atom x7 Z8750
    133
  • Atom x7 Z8700
    116
  • Atom x5 Z8550
    134
  • Atom x5 Z8500
    106
  • Atom x5 Z8350
    97
  • Atom x5 Z8300
    94
  • Core i7 7Y75
    247
  • Core i5 7Y54
    221
  • Core m3 7Y30
    250
  • Pentium N3700
    141
  • Celeron N3350
    86
  • Atom Z3795
    131

全てのコアを使用するマルチスレッド性能は、4コア入っている分伸びやすい。それでもx5 Z8350は100点すら超えないが…。まぁ、100点近くあればブラウジング(Chromeなど)やOfficeソフトはなんとかなるレベル。

本当に必要最低限の性能ラインなので、あまり期待してはいけない。「外出先でWeb閲覧がある程度出来れば良いかな。」くらいの期待が丁度いいです。

Geekbench 3.0

GeekbenchはCinebenchと違って、複数のテストを実行して総合的なスコアを出してくれるマルチプラットフォーム対応のベンチマークソフト。

Geekbench 3 – シングルスレッド性能

  • Atom x7 Z8750
  • Atom x7 Z8700
    970
  • Atom x5 Z8550
  • Atom x5 Z8500
    858
  • Atom x5 Z8350
    743
  • Atom x5 Z8300
    750
  • Core i7 7Y75
  • Core i5 7Y54
    3056
  • Core m3 7Y30
    2538
  • Pentium N3700
    956
  • Celeron N3350
    1341
  • Atom Z3795

シングルスレッド性能はやはり…Cinebenchと同様の結果になりました。やっぱり「Core」シリーズは強いですね。Atomよりランクは格上のPentiumやCeleronもそれなりに優秀。

Geekbench 3 – マルチスレッド性能

  • Atom x7 Z8750
  • Atom x7 Z8700
    3300
  • Atom x5 Z8550
  • Atom x5 Z8500
    2454
  • Atom x5 Z8350
    2224
  • Atom x5 Z8300
    2186
  • Core i7 7Y75
  • Core i5 7Y54
    5619
  • Core m3 7Y30
    5006
  • Pentium N3700
    3210
  • Celeron N3350
    2409
  • Atom Z3795

マルチスレッド性能もだいたい同じ傾向のスコアに。

x264 HD Benchmark 4.0

動画のエンコード速度をベンチマークできるソフト。

X264 HD Benchmark 4.0 – 1 Pass モード

  • Atom x7 Z8750
    48.0
  • Atom x7 Z8700
    50.8
  • Atom x5 Z8550
  • Atom x5 Z8500
    36.6
  • Atom x5 Z8350
  • Atom x5 Z8300
    35.7
  • Core i7 7Y75
    91.2
  • Core i5 7Y54
    73.0
  • Core m3 7Y30
    85.3
  • Pentium N3700
    49.7
  • Celeron N3350
    32.5
  • Atom Z3795
    42.1

まずは高速エンコードを実行できるシングルパスモードの結果を。傾向としては、シングルスレッド性能の高さに影響を受けていることが分かります。

まぁ…このAtomでエンコードをしようと思う人は、多分ほとんどいないと思うので参考程度に見るのが良いですね。

X264 HD Benchmark 4.0 – 2 Pass モード

  • Atom x7 Z8750
    10.0
  • Atom x7 Z8700
    10.3
  • Atom x5 Z8550
  • Atom x5 Z8500
    7.2
  • Atom x5 Z8350
  • Atom x5 Z8300
    7.0
  • Core i7 7Y75
    16.0
  • Core i5 7Y54
    13.0
  • Core m3 7Y30
    15.6
  • Pentium N3700
    10.0
  • Celeron N3350
    6.2
  • Atom Z3795
    8.3

一応、マルチパスモードの結果も見ておきます。どのCPUも秒間10フレーム台が限界で、安価なタブレットPCでエンコードをするべきではない…ということを端的に示してしまった感がある。

wPrime 2.0x

円周率の計算をさせてCPUの処理性能をスコア化するベンチマーク。

wPrime 2.0x – 10億2400万桁(秒)

  • Atom x7 Z8750
    772
  • Atom x7 Z8700
  • Atom x5 Z8550
  • Atom x5 Z8500
  • Atom x5 Z8350
    1108
  • Atom x5 Z8300
    1150
  • Core i7 7Y75
    619
  • Core i5 7Y54
    762
  • Core m3 7Y30
    692
  • Pentium N3700
    720
  • Celeron N3350
    1258
  • Atom Z3795
    1019

Atom x5 Z8350は10億桁を計算するのに1108秒(約18分)も掛かった。一方のCore i7は約10分で計算を完了させており、2倍近く高速であることを示しました。

wPrime 2.0x – 3200万桁(秒)

  • Atom x7 Z8750
    24.7
  • Atom x7 Z8700
    24.5
  • Atom x5 Z8550
  • Atom x5 Z8500
  • Atom x5 Z8350
    36.2
  • Atom x5 Z8300
    36.4
  • Core i7 7Y75
    17.4
  • Core i5 7Y54
    16.8
  • Core m3 7Y30
    20.2
  • Pentium N3700
    23.1
  • Celeron N3350
    45.5
  • Atom Z3795
    27.2

処理が早く終わる3200万桁の計算も、傾向はほとんど同じ。i7はAtomに対して2倍ほど速い。

Mozilla Kraken 1.1

ブラウザ上でJavaScriptの実行速度を計測するベンチマーク。ブラウザの処理をどれだけサクサクとこなせるかが分かりやすいベンチマークです。

Mozilla Kraken 1.1 – 処理時間(ミリ秒)

  • Atom x7 Z8750
  • Atom x7 Z8700
    4369.9
  • Atom x5 Z8550
    4419.0
  • Atom x5 Z8500
    4706.2
  • Atom x5 Z8350
    5569.7
  • Atom x5 Z8300
    5707.1
  • Core i7 7Y75
  • Core i5 7Y54
    1255.0
  • Core m3 7Y30
    1421.1
  • Pentium N3700
    4377.8
  • Celeron N3350
    3489.3
  • Atom Z3795
    8367.3

Atom x5 Z8350は約5.6秒と出ており、かなり遅い。Core m3(=i3)やCore i5は約1.2~1.4秒で処理を終えており、さすがにキビキビと動いていますね。

5~6万円のデスクトップPC並のキビキビさは無理だとしても、ChromeやIEを使ってインターネットで検索したりショッピングしたりするには十分な性能ではある。

Octane V2

Krakenとほぼ同様のベンチマーク。主な違いは結果をスコア化してくれるところ。

Octane V2 – トータルスコア

  • Atom x7 Z8750
  • Atom x7 Z8700
    8408
  • Atom x5 Z8550
    8060
  • Atom x5 Z8500
    8033
  • Atom x5 Z8350
    6818
  • Atom x5 Z8300
    6374
  • Core i7 7Y75
    26712
  • Core i5 7Y54
    27627
  • Core m3 7Y30
    24813
  • Pentium N3700
    8665
  • Celeron N3350
    9592
  • Atom Z3795
    3353

全体的にMozilla Krakenと似た傾向になっている。

3DMark 11

GPU専用のベンチマークとして国際的に有名な3DMark。内蔵グラフィックスの性能をスコア化できる。

3DMark 11 – Performance Physics 1280×720

  • Atom x7 Z8750
    1499
  • Atom x7 Z8700
    1186
  • Atom x5 Z8550
    1737
  • Atom x5 Z8500
    1353
  • Atom x5 Z8350
    1347
  • Atom x5 Z8300
    1123
  • Core i7 7Y75
    3528
  • Core i5 7Y54
    3024
  • Core m3 7Y30
    3615
  • Pentium N3700
    1768
  • Celeron N3350
    1292
  • Atom Z3795
    1301

先代Bay Trail-T(Atom Z3795)よりは進化したことが分かるが、大幅に性能が伸びたとは言えないところ。マインクラフトなど軽めのゲームなら、一応動かせるレベルですね。

動作としてはこんな具合。ガッツリとマイクラをするのは厳しそうな動作だ。

AnTuTu Benchmark v6

「Atom x5」はAndroidデバイスにも搭載されている例があるので、スマートフォン向けのベンチマーク「AnTuTu Benchmark」のスコアも一応参考としてまとめてみた。

AnTuTu Benchmark v6

Atom x5 Z8350は「iPad」(2017年モデル)と比較してほぼ半分くらいの性能。Apple A9は2015年のSoCで当時はハイエンドでしたが、最近は3~4万円程度のiPadに搭載されるようになったためコスパは非常に良い…。

まぁ、Atomは主にWindowsを搭載する2 in 1デバイスやエントリー向けノートパソコンが中心で、iPadのような完全なタブレットとは違うので直接的な比較にはなりませんが。

まとめ:必要最低限の性能「Atom x5 Z8350」

Atom x5 Z8350は決して性能に期待するようなモノではなく、「3~4万円でこれだけ動いてくれれば十分かな。」という位置づけを目指したSoCと言える。

  • 単価がわずか21ドル、圧倒的に安い
  • Web閲覧、ブラウジングには十分に事足りる性能
  • マイクラをHD画質でかろうじて動かせるグラフィック性能
  • 価格に対して、それなりの性能といえる
  • わずか2~4W程度の超低消費電力
  • 過度な期待は禁物
  • Windowsマシンとしては必要最低限の性能と思ったほうが吉

Atom x5 Z8350の強みと弱みをまとめるとこんなところです。

必要最低限の性能を「格安」で提供するのが、Atom x5 Z8350の存在意義と言っていい。以上「タブレット向けCPU、Atom x5-Z8350の仕様と性能まとめ」でした。

モバイル向け「Core」について

性能編にて、Coreシリーズの性能は優秀と書きましたが。あくまでもAtomと比較しての話です。

初心者もち
「Core」シリーズにも色々あるってこと?
自作歴17台のやかもち
そうそう。Intelがややこしい名前の付け方をしたり、最近仕様をガラッと変えたこともあり、割りと難しい状況。

インテルのノートパソコン向けCPUはブランドが細分化され過ぎている上に、同じCoreシリーズでも性能が大幅に違うなんてことも多い。全体的に知るなら以下の記事がオススメ。

世代更新で仕様をガラッと変え、大幅な性能アップを実現したのが「i7 8550U」や「i5 8250U」です。性能重視でi5やi7を選ぶつもりなら、必ず8000番台のCPUを選んだほうが良い。詳細は以下。

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5 件のコメント

  • Atomで『Windowsマシンとしては必要最低限の性能と思ったほうが吉』なら、うちにあるあのA4-1200マシンはどうなるんだ。あれターボクロックですら1GHzだぞ。スペックの悪さに逆に笑えてきた(そいつにWin10入れてタスクマネージャー確認したらウェブ見るだけで使い切ったんだが)。

  • どーもざっと調べた限りではAtomさんの開発はすでに打ち切られてるっぽいですなあ。
    なのでハードウェアベンダーの要望で2年前の脳みそをいまだに作り続けられてる感じなんですかね。
    まあ2~5万程度の安い本体に入れる脳みそなんて安過ぎて儲からないでしょうから、インテルもこれ以上あんまり作りたくはないんでしょうな。

  • 3736F メモリ2GB 使ってた頃が懐かしい
    タスクマネージャー(更新頻度普通)開いてるだけで10%近く使うから中々に
    そもそも低価格帯はメモリ2GB(その頃は1GBも普通にあったけど…w)だからシングルタスク前提みたいな感じだし
    今年はsnapdragon搭載windowsノートPC出るみたいだし、GPD WINシリーズの事もあるからcore mには頑張ってもらいたい(とりあえずプロセスルール微細化しないかな…)

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