インテルの第8世代「Coffee Lake」のモバイル向けCPUは、ついに「4コア化」しました。今まで2コア縛りだったUシリーズが4コアになってどれくらい性能が伸びたのか。
この記事では「Core i7 8550U」を、先代の「i7 7500U」と性能比較しながら解説してみる。
i7 8550UのCPU性能はどれくらい伸びたか
CPU | Core i7 8550U | i7 7500U |
---|---|---|
世代 | 8th Coffee Lake | 7th Kaby Lake |
プロセスルール | 14nm++ | 14nm+ |
コア数 | 4 | 2 |
スレッド数 | 8 | 4 |
クロック周波数 | 1800 Mhz | 2700 Mhz |
ブーストクロック | 4000 Mhz | 3500 Mhz |
L1 Cache | 256 KB | 128 KB |
L2 Cache | 1 MB | 512 KB |
L3 Cache | 8 MB | 4 MB |
PCIe | 12レーン | |
対応メモリ | x2 DDR4-2400 | x2 DDR4-2133 |
内蔵GPU | Intel UHD 620 | Intel HD 620 |
GPUクロック | 300 ~ 1150 Mhz | 300 ~ 1050 Mhz |
TDP | 15W | |
MSRP | $409 | $393 |
まずは仕様(カタログスペック)を確認。今までと違い、第8世代のモバイル向けCPUは色々と変化したところが多いです。いつもならクロック周波数が少し上がった…とか、そんな程度だったんですけど。
- プロセスサイズは更に微細化
- コア数が4個に(倍増)
- キャッシュも2倍に
- クロック周波数は最大で4.0Ghz
- 対応メモリが2133Mhzから2400Mhzへ
- 内蔵GPUは「HD 620」から「UHD 620」に
- やや値上がり
ようやく「Core i7」にふさわしいスペックになったと言える。今までのUシリーズは正直なところ「なんちゃってi7」という状態でしたから。たかが2コアでi7を名乗るなんて、詐称だよ。
さて、4コア & 最大4Ghzになったことで実際の処理性能はどれくらい伸びたのか。各種ベンチマークでチェックしていきます。
https://www.notebookcheck.net/Intel-Core-i7-8550U-SoC-Benchmarks-and-Specs
Cinebench R15
CinebenchはCPUにレンダリングを行わせて、終わるのにかかった時間でCPU性能を点数化するベンチマークソフト。非常に分かりやすいので国際的にとても人気。もちろん日本でもかなり有名になってきている。
Cinebench R15 – シングルスレッド性能
まずは1コアあたりの性能である「シングルスレッド性能」から見ていく。基本的にこのシングル性能が高いほど、体感上のレスポンスに大きく影響してくる傾向がある。
結果は見ての通り、従来のモバイル向けCore i7とは一線を画す性能※を記録。Uシリーズで150cbオーバーとは…すごい進化です。
※「Xeon E」「HQ」「HK」シリーズは除外しての話。従来の「U / Y」シリーズの中では最高クラスです。
Cinebench R15 – マルチスレッド性能
マルチスレッド性能は当然、過去最高。Uシリーズは今まで2コア4スレッド縛りだったのが、Coffee Lakeからは4コア8スレッドへと倍増した。デスクトップ向けCore i5とかなり似た性能になった。
wPrime
円周率を計算させるテスト。計算速度でCPUの性能を測ることができる。
wPrime 2.0X – 10億2400万桁
マルチスレッド性能が効きやすい「10億桁」のテストではi7 8550Uが圧勝。
wPrime 2.0X – 3200万桁
桁数を少なくするとシングルスレッド性能の影響が大きくなるが、i7 8550UはCinebench R15で見た通りシングル性能も優秀。だからこういう単純作業も極めて高速にテキパキとこなす。
SuperPi
Super Pi Mod – 100万桁
100万桁の円周率を計算。まぁ…10秒を割っていますから十分すぎる性能でしょう。モバイル向けCore i7で10秒割れは、おそらくi7 8550Uが初です。
X264 HD Benchmark
X264エンコードの処理速度を計測できるベンチマーク。単位はfps(1秒間に処理したフレーム数)で、早ければ早いほどエンコード性能が高いCPUということに。
X264 HD Benchmark 4.0 – Pass 1/ fps
まずはスピードが速いPass 1(シングルパス)モードを。2コア増えたことで処理速度は大幅に上がっていますね。30%程度はエンコードが速くなった。
X264 HD Benchmark 4.0 – Pass 2 / fps
次はスピードは遅いけど出来栄えは良いPass 2(マルチパス)モードでやってみる。やはり同様の結果で、i7 8550Uは50%くらい速くなっています。
Geekbench 4.0
Geekbench 4.0は国際的に有名なベンチマークソフト。複数のタイプが違うテストを連続で行い、すべての処理が終わる時間でCPU性能を評価する。マルチプラットフォーム化されているのが最大の特徴でもある。
Geekbench 4.0 – シングルスレッド性能
先代を大きく引き離す性能を記録。今までは世代を更新しても10%も性能が伸びなかったUシリーズだが、Coffee Lakeから一気に変化した。
Geekbench 4.0 – マルチスレッド性能
マルチスレッド性能は…やはりコア数を増やすのがもっとも手っ取り早く、スコアを伸ばせる方法といえる。コア数が倍増したから、スコアが80%も伸びていても違和感はない。
で、この14000点というスコアはモバイル向けCPUとしては最高レベルの水準ではありますが、Apple A11 Bionic(実質2コアのCPU)が10500点をつけるなど、かなり迫っています。
Apple製SoCの確実な進化や、AMDのモバイル向けRyzen APUなど。ライバルが確実に強くなってきた感があるから、インテルも多少は焦っているのかもしれない。…だからこその4コア化という感じ。
Mozilla Kraken
Web上で動作するベンチマーク。Javascriptの実行処理速度でCPU性能を評価します。単位はミリ秒なので、数値は低いほど優秀ということ。
Mozilla Kraken 1.1
爆速です。Uシリーズでは初の「1000ms割れ」です。基本的にKrakenは1秒を割れれば十分に早い。
Octane V2
Krakenと同様、Javascriptの処理速度を測るベンチマークサイト。
Octane V2
はぁ…随分と伸びたな。
まとめ:4コア化した「i7 8550U」はとても高速なCPU
単にコア数が2倍になっただけでなく、1コアあたりの性能が伸びているのも頼もしい。シングル性能は実際に使う時のレスポンスなどに表れやすいので、ユーザーとしては一番うれしいところ。
もちろん、4コア化したことでマルチタスクにも強くなり、エンコードなど物量が求められる作業にも強くなっている。史上最速クラスの「Uシリーズ」と言って間違いないだろう。
今までは「i7 7500U」と「i7 6600U」で悩んだ場合、どちらでもいいような状況だった。しかし、「i7 8550U」と「i7 7500U」なら、間違いなくi7 8550Uを選ぶべき。と言えるようになった。
やっぱり競争って大事ですね。Apple、AMD、Qualcommなどライバル企業が生産するSoCの質が確実にインテルを脅かすモノになってきた…という意味だからね、今回の4コア化。
i7 8550Uの内蔵グラフィックスの性能
内蔵GPU | Intel UHD Graphics 620 | HD Graphics 620 |
---|---|---|
コードネーム | Kaby Lake Refresh GT2 | Kaby Lake GT2 |
パイプライン | 24 | |
クロック周波数 | 300 – 1150 Mhz | 300 – 1050 Mhz |
共有メモリ | 実装 | |
DirectX | 12 | |
プロセスルール | 14nm | |
対応API | QuichSync |
実は、Coffee Lakeの内蔵GPUは「Kaby Lakeを少し改良しただけ」だったりする。コードネームに「Refresh」とついている通り、単なる改良版です。
クロック周波数がCore i7では100Mhz伸びたくらいしか変化がなく、大きな性能上昇は見込めないだろう…。一応データを見ますか。
3DMark – Ice Storm Unlimited
グラフィックボードのベンチマークとして有名な「3DMark」。デスクトップPCでは主に「FireStrike」が使われるが、モバイル向けのCPU(SoC)には「Ice Storm Unlimited」の方が傾向は分かりやすい。
3DMark – Ice Storm Unlimited Physics 1280×720 offscreen
クロック周波数では50Mhzしか変化していないが、こうしてベンチマークを見てみるとKaby Lakeのi7 7500Uやi7 7Y75からちゃんと進化していて驚きです。
さて、ベンチマークスコアはこれ1つで十分だ。実用性を見るためには実際のゲーミング性能(平均フレームレート)を見たほうが手っ取り早く、直感的に性能を理解できます。
Battlefield 1
Battlefield 1 – 1280×720 / 低設定
解像度を落とし、設定も落として計測されている。Battlefield 1では大きく変化していない様子。
DOOM 2016
DOOM 2016 – 1280×720 / 低設定
DOOMでは若干、伸びています。内蔵GPUでも最新ゲームを720p(1280×720)まで縮小して、設定を落とせばある程度遊べるようになってきているんだな…。すごい。
Rise of the Tomb Raider
Rise of the Tomb Raider – 1280×720 / 低設定
Rise of the Tomb Raiderも内蔵GPUで動く。決して快適ではないが、動くには動く。i7 7500Uより5%ほど性能が上がっています。
Rainbow Six Siege
Rainbow Six Siege – 1024×768 / 低設定
解像度を更に落としています。平均37.1fpsと、割と動いていますね。視野が狭すぎてプレイしていられないと思いますが。
CS:GO
Counter Strike : GO – 1366×768 / 中間設定
2012年のゲームだから、最近のと比較すれば大幅に軽い。解像度を落として設定を調整すれば、60fpsを出すのは難しくない様子。
Grand Theft Auto V
Grand Theft Auto V – 1024×768 / 低設定
GTA Vはさすがに重たい。1024×768まで落としてやっとこれくらい。
まとめ:本格的なゲームはやっぱり無理
内蔵グラフィックス「Intel UHD Graphics 620」は、HD 620より確かに進化したものの…まだまだ補助的な役割を担うに過ぎない。
- Webアプリ
- 軽めのゲーム
- 動画再生
- Windowsのエフェクト効果
- 重たい3Dゲーム
- 最新のFPS / TPSはなおさら無理
ゲームをするなら少なくとも「GeForce 940MX」や「GeForce GTX 960M」などが必要になるだろう。
バッテリーの駆動時間について
バッテリー駆動時間 / Dell XPS 13
アイドル時Wifi / Web閲覧画面(最大輝度)
「Dell XPS 13」で比較するとこんな感じ。性能が上がり、コア数が2倍になった分だけバッテリーの駆動時間は落ちている。
Core i5搭載モデルでは10時間ほど持っていたのが、Core i7 8550U搭載モデルでは10時間を割り込むように。想定している用途に合わせて…ということになる。
大したマルチタスクはしないから長時間持ってほしいなら超省電力のYシリーズを選んだ方がいいし、家や職場でガッツリ使う人なら今回のUシリーズの方が良いだろう。
Core i7 8550Uは過去もっとも「i7」らしい出来栄え
Coffee Lake以前は「HK」シリーズなどが、デスクトップ版のCore i7と比較して遜色のない性能を持っていました。しかし、消費電力が半端なく、搭載マシンも重量なのが課題。
そして今までのUシリーズ、たとえば「Core i7 7500U」などはi7を名乗っておきながら2コアしか入っていないし「Core i5 7200U」と比較して性能が大きく変わるわけでもない…。
つまりユーザーを欺いているような存在だったわけだが、今回のUシリーズのCore i7はとりあえずi7を名乗って問題ない仕上がりです。
Cinebench R15 – マルチスレッド性能
CPUの本体価格は2000円ほど値上がりしましたが、性能は約60%も向上している。もし性能重視のノートPCを探しているなら「i7 7500U」ではなく「i7 8550U」を選ぼう。
- 価格はほぼ据え置き
- 処理性能は30~60%も上昇
- 「i7」ブランドに相応しい出来栄え
- 省電力性はやや低下
- アイドル時では約30%ほど駆動時間が短く
- Web閲覧などでは約10%ほど駆動時間が短縮
以上「ノートPC向けCPU、i7 8550Uの性能:i7 7500Uと比較」について書きました。
なぜ、マルチメディアの時代にデジカメのRAW現像速度のベンチはないのですか?
ノートパソコンでゲームのベンチ、動画のエンコードのベンチ、とあるのですから
当然、今時の高画素デジカメのRAW現像のベンチは大変気になるところです。
是非、ベンチ測定よろしくお願いします。
デスクトップCPUと違ってモバイルは発熱処理の能力で決まってしまいますからね。
熱ダレでベンチ二回目三回目で一回目より性能が落ちる。
スペック通りの性能が出るかどうかはそのモデル次第になりますね。
[…] ノートPC向けCPU「i7 8550U」の性能:i7 7500Uと比較インテルの第8世代「Coffee Lake」のモバイル向けCPUは、ついに「4コア化」しました。今まで2コア縛りだったUシリーズが4コアになってどれく […]