パソコンについて少し知識がついてくると、インテルCoreシリーズのライバルCPU「AMD Ryzen」を知るはずです。
しかし、同じAMD Ryzenでも「世代」があって、世代によって性能と中身がまったく違う状況を知っている人はまだまだ少数派。
というわけで、本記事では初心者向けに分かりやすくAMD Ryzenシリーズの世代一覧と性能差を解説します。
(公開:2024/8/24 | 更新:2024/12/1)
AMD Ryzenシリーズの世代一覧
世代 | プロセス | 代表作 | ソケット | チップセット | 対応OS |
---|---|---|---|---|---|
6th Zen5 | 4 nm (TSMC) |
| Socket AM5 | AMD 600 / 800シリーズ B650 / X670 / X870など | Windows 10 / 11 |
5th Zen4 |
| ||||
5 nm (TSMC) |
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4th Zen3 | 7 nm (TSMC) | Socket AM4 | AMD 300 / 400 / 500シリーズ B450 / B550 / X570など | ||
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3rd Zen2 |
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2nd Zen+ | 12 nm (GF) |
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1st Zen | 14 nm (GF) |
| Windows 10 | ||
|
世代 | 種類 | 最大メモリ容量 | メモリの規格 | PCIeレーン |
---|---|---|---|---|
Zen5 | CPU | 196 GB(DDR5) | DDR5-5600 | Gen 5 x16 / x4 / x4 / x4 |
Zen4 | CPU | DDR5-5200 | ||
APU | DDR5-5200 | Gen 4 x8 / x4 / x4 / x4 (Zen4 Only) Gen 4 x4 / x4 / x2 / x4 (Zen4 + Zen4c) | ||
Zen3 | CPU | 128 GB(DDR4) | DDR4-3200 | Gen 4 x16 / x4 / x4 / x4 |
APU | Gen 3 x8 / x4 / x4 / x4 | |||
Zen2 | CPU | Gen 4 x16 / x4 / x4 / x4 | ||
APU | Gen 3 x8 / x4 / x4 / x4 | |||
Zen+ | CPU | DDR4-2933 | Gen 3 x16 / x4 / x4 | |
APU | Gen 3 x8 / x4 / x4 | |||
Zen | CPU | DDR4-2666 | Gen 3 x16 / x4 / x4 | |
APU | DDR4-2933 | Gen 3 x8 / x4 / x4 |
世代を更新するごとに、メモリ規格と対応クロックが少しずつ向上しています。
初代ZenはDDR4-2666(4枚でDDR4-1866)とかなりの遅さでしたが、第5世代から割と安定してDDR5-5200(4枚でDDR5-4800)で動作可能です。
PCIeレーンの帯域幅は初代から数えて4倍(PCIe Gen3 → Gen5)に跳ね上がる一方、拡張性の幅広さにかかわるPCIeレーン数そのものは第3世代Zen2を最後に、停滞しています。
内蔵グラフィックスに特化したAPUだと、グラボ用のPCIeレーン数が半減(50%カット)される仕様もずっと続いています。
現在のRyzen 3、Ryzen 5、Ryzen 7、Ryzen 9のブランド展開は2017年に登場した「Zen」世代がすべての始まりです。
それから1年ちょっとのペースで世代更新をつづけ、Coreシリーズに対抗できるほどの性能アップを果たしています。
さらにAMD Ryzenは対応するソケットとチップセットの互換性が、とても長続きする傾向です。おおむね4世代ごとに互換性が消失するものの、Intel Coreと比較して2倍も長持ちします。
いったん新しいプラットフォームに乗り換えてしまえば、あとはBIOSをアップデートしてからCPUを交換するとグレードアップ可能です。Intel Coreシリーズより経済的です。
Ryzenは2種類ある?:「CPU」と「APU」
PC初心者によく知っておいて欲しいのが「Ryzenの種類」です。
AMD Ryzenシリーズは、CPUの処理性能に特化した「CPU」と、機能を少しカットした代わりに内蔵グラフィックスを強化した「APU」の2種類ラインナップされています。
「2種類あるから何?」と思われるかもしれません。今までの傾向から、AMDはCPUに古い型番をつけて、APUに新しい型番をつける傾向が強いです。
たとえば・・・
- Ryzen 5 3400G
- Ryzen 5 2600X
Ryzen 5 3400GとRyzen 5 2600Xなら、数字が大きいRyzen 5 3400Gの方が新しい世代に思えますが、実際はどちらも同じ世代です。
- Ryzen 5 8600G
- Ryzen 5 7600X
Ryzen 5 8600GとRyzen 5 7600Xも、数字が大きいRyzen 5 8600Gの方が新世代に見えますが、残念ながらどちらも同じ世代です。
しかも、Ryzen APUは一部の機能をカットして内蔵グラフィックスに特化したシリーズなので、普通のCPU処理性能は数字が小さいRyzen 5 7600Xに劣っています。
これでかんたん「Ryzen世代」の見分け方
世代を見分ける方法はかんたんです。AMD Ryzenシリーズの商品名(型番)の法則を見ると、4桁の型番の一番最初を見るだけ。あとは早見表で判断します。
世代の見分け方(早見表) | ||
---|---|---|
世代 | Ryzen CPUの場合 | |
6th Zen5 | 4桁の最初の一文字が「9」 | Ryzen 7 9700X |
5th Zen4 | 4桁の最初の一文字が「7」 | Ryzen 7 7700X |
4th Zen3 | 4桁の最初の一文字が「5」 | Ryzen 7 5700X |
3rd Zen2 | 4桁の最初の一文字が「3」 | Ryzen 7 3700X |
2nd Zen+ | 4桁の最初の一文字が「2」 | Ryzen 7 2700X |
1st Zen | 4桁の最初の一文字が「1」 | Ryzen 7 1700X |
Ryzen CPUの世代表は以上のとおりです。
一番新しい第6世代Ryzen(Zen6)なら、「Ryzen 7 9700X」や「Ryzen 5 9600X」など。型番の先頭に世代ナンバー「9」が振り分けられています。
世代の見分け方(早見表) | ||
---|---|---|
世代 | Ryzen APUの場合 | |
6th Zen5 | 未発表 | 未発表 |
5th Zen4 | 4桁の最初の一文字が「8」 | Ryzen 5 8600G |
4th Zen3 | 4桁の最初の一文字が「5」 | Ryzen 7 5600G |
3rd Zen2 | 4桁の最初の一文字が「4」 | Ryzen 7 4600G |
2nd Zen+ | 4桁の最初の一文字が「3」 | Ryzen 7 3400G |
1st Zen | 4桁の最初の一文字が「2」 | Ryzen 7 2400G |
Ryzen APUの世代表は以上のとおりです。
一番新しい第5世代Ryzen(Zen5)なら、「Ryzen 5 8600G」や「Ryzen 3 8300G」など。型番の先頭に世代ナンバー「8」が振り分けられています。
Intel Coreシリーズのように13なら13世代、14は14世代、といった具合に分かりやすい世代ナンバー振られていれば混乱せずに済んだのですが・・・。
なぜか世代更新が来るたびに番号を1つスキップしたり、そのまま同じ番号を使ったり。法則性がやや薄いです。世代と型番の関係性を事前にきちんと把握しておきましょう。
CPUの種類を見分ける「接尾辞(Suffix)」
型番の一番後ろに付いている「一文字のアルファベット」。
いわゆる接尾辞(英語でSuffix)と呼ばれるコードで、AMD Ryzenの場合はそのCPUの性質や特徴を示すために使われています。代表的な接尾辞は以下のとおり。
接尾辞 | 意味 | ざっくり解説 |
---|---|---|
無印 | 標準 |
|
X | 高性能 |
|
X3D | ゲーム性能 |
|
F | 内蔵GPUなし |
|
G | APU |
|
別売りのグラフィックボードを用意するなら、高性能タイプの「X」モデルがおすすめです。CPU処理性能に特化した設計になっていて、ゲーミング性能も優秀です。
ただし、ハイエンドクラスのグラボを使う予定なら、ゲーム高性能タイプの「X3D」モデルも要検討。CPU処理性能がわずかに下がる代わりに、ゲーム性能はもはや別物の次元に。
「無印」モデルはPC初心者キラーな仕様が多いので、スペック表を自分で調べられるマニア向け。たとえば「5700X」と「5700」は同じに見えて、後者の性能がだいぶ落ちます。
お得なモデルと、コスパがイマイチなモデルに分かれています。
最後に「G」モデルがRyzen APUを示す接尾辞です。内蔵グラフィックスに超特化したタイプで、別売りのグラボを搭載したくない人に嬉しい仕様です。
接尾辞 | 意味 | ざっくり解説 |
---|---|---|
E | 省電力 |
|
XT | 高性能 |
|
AF | 在庫処分 |
|
GE | 省電力APU |
|
PRO GE | 企業向け 省電力APU |
|
基本的に、これらの接尾辞はめったにラインナップされません。主流のモデルから外れている場合が多いので、購入候補に入れる必要があまり無いです。
ノートパソコン(モバイル向け)の接尾辞は以下のとおり。
接尾辞 | 意味 | ざっくり解説 |
---|---|---|
HX | 最高性能 |
|
H | 高性能 |
|
HS | やや高性能 |
|
U | 標準 |
|
C | Chromebook |
|
e | ファンレス |
|
ノートパソコン(モバイル向け)Ryzenは、消費電力ごとに区切られています。
HXになるほど消費電力も多くてパワフルな性能、eに行くほど省エネで性能も控えめに。個人的に、体感性能のバランスがいい「HS」モデルをおすすめしたいです。
AMD Ryzenの世代ごとの性能差
世代ごとの互換性や型番の読み方はおおむね解説できました。
次は「AMD Ryzenは世代更新でどれくらい性能が変わるの?」という素朴な疑問について、ベンチマークデータで分かりやすく解説します。
Ryzen 9の世代ごとの性能比較
「Ryzen 9」世代別の性能(Cinebench R23)
世代更新には多くの場合「製造プロセスの微細化」が伴います。同じ面積により多くのチップを載せられるようになるので、同じコストでより高いパフォーマンスを得られます。
AMD Ryzenは自社でプロセスを作らず、他社に委託するファブレス方式を採っているため、Intel Coreよりも順調にプロセス微細化が進んでいます。
- 第6世代「Zen5」:4 nm(TSMC製)
- 第5世代「Zen4」:5 nm(TSMC製)
- 第4世代「Zen3」:7 nm(TSMC製)
- 第3世代「Zen2」:7 nm(TSMC製)
- 第2世代「Zen+」:12 nm(GlobalFoundries製)
- 第1世代「Zen」:14 nm(GlobalFoundries製)
最新世代のAMD Ryzenは4 nmです。
プロセス微細化にともない、AMDはますますリッチで中身の詰まった設計をRyzenに搭載し、同じコア数のまま性能を伸ばし続けています。
第4世代「Zen3」から、Ryzenの最小単位コアユニット(CCX)を4コアから8コアに倍増して、動画エンコードやゲーム性能を大幅に改善。
第5世代「Zen4」ではライバルのIntel Coreに対抗するべく、消費電力の設定を大幅に引き上げて同等クラスの性能に。
最新の第6世代「Zen5」は、前世代より消費電力が30 Wも減ったのに、むしろ性能は上がっています。
サーバー向けCPU「AMD EPYC」と同じ設計を流用する部分が多いため、結果的にAMD Ryzenは少ない電力で高性能を出すのが得意です。
Ryzenを設計した当時のAMDはとにかくお金が無かったです。最先端の製造プロセスでリッチな設計をする余裕はなく、アイディア勝負でライバルを出し抜く必要がありました。
そこで生み出された解決策が「小さなCPUを作って合体すれば、低コストでコア数を増やせてIntel Coreに勝負を挑めるかもしれない」でした。
小さいCPUがRyzenのコアユニット「CCX(Core Complexの略)」です。初代ZenのCCXは4コア8スレッドあり、2つのCCXを合体して8コア16スレッドのCPU※1を制作します。
初代Zenが発売された当時、ライバルのCore i7はまだ4コア8スレッドでした。一方、安い製造コストでコア数を倍々に増やせるRyzen 7は同じ価格帯なのに8コア16スレッドを誇ります。
CPUの性能指標(ベンチマーク)として人気が高い「Cinebench R15」において、初代Ryzen 7は当時のCore i7より約1.6倍も高性能で、値段が2~3倍も高い業務向けCPUにすら肉薄する性能を見せます。
こうしてAMDは見事に復活を遂げて、世代を更新する事に着実にファンを獲得しています。
低コストでコア数をどんどん増やせる性質により、大量のコアを必要とするサーバー市場でもAMDは大躍進中。低コスト、省エネ、そしてパワフルな性能でIntelから市場シェアを奪い続けています。
なお、コアユニット「CCX」は第4世代「Zen3」で8コア16スレッドに倍増します。
(CCXから別のCCXへアクセスする時間が大幅短縮)
第4世代「Zen3」以降、2つのCCXの間にあったタイムラグがほぼ消滅※2します。
タイムラグが原因で性能が下がりやすいゲーミングや動画エンコードなども大幅に性能が改善され、ライバルに匹敵するレベルです。
今のAMDはお金に余裕があるから、初代Zenのような低コスト志向から離れ始め、最先端プロセスを惜しみなく使った高コストでリッチな設計のCPUへ姿を変えつつあります。
Ryzen 7の世代ごとの性能差
「Ryzen 7」世代別の性能(Cinebench R23)
Ryzen 7シリーズも着実に性能を伸ばし続けています。
初代(Zen)から第6世代(Zen5)まで同じ8コア16スレッドのまま、見事に性能が上がっています。初代と最新世代を比較すると2倍以上の性能差です。
しかも最新世代は消費電力が142 W → 88 Wへ削減されたにもかかわらず、約5~6%の性能アップです。約40%の省エネ化をしながら性能を引き上げています。
消費電力が下がったのに性能が上がっているなら、同じ消費電力で揃えたときの性能はざっくり2割強の性能アップです。
Ryzen 7 8700G(APU)とRyzen 7 7700X(CPU)は、一見すると8700Gの方が数字が大きくて性能も良さそうですが、実際の性能スコアは7700Xがむしろ良いです。
Ryzen APUの消費電力がCPUより低めに設定されていたり、内蔵グラフィックスを大きくするために、CPU側の機能を一部カットする※3など。CPUの性能が下がってしまう設計が目立ちます。
Ryzen 5の世代ごとの性能差
「Ryzen 5」世代別の性能(Cinebench R23)
Ryzen 7と同じく、Ryzen 5シリーズも世代更新ごとに性能が伸びています。初代(Zen)から第6世代(Zen5)まで、同じ6コア12スレッドのまま約2.4倍もの性能差です。
最新世代は1世代前から消費電力が142 W → 88 Wへカットされていますが、それでも約6~7%の性能アップです。省エネでよりパワフルな性能に進化しています。
そしてRyzen 7と同様にAPUとCPUの性能差に注意したいです。Ryzen 5 8600Gがネーミング的に新しい世代に見えますが、実際はRyzen 5 7600Xが高性能です。
何度も解説してきたとおり、APUは内蔵グラフィックスに特化した分だけ、CPUの処理性能は下がっています。別売りのグラフィックボードを搭載する予定がある方は、基本的にCPUを選ぶべきです。
AMD Ryzenの奇妙な命名法則は、ときに消費者に牙を剥きます。
型番 | タイプ | L3キャッシュ | PCIe世代 |
---|---|---|---|
Ryzen 5 5600X | CPU | 32 MB | Gen 4 |
Ryzen 5 5600 | CPU | 32 MB | Gen 4 |
Ryzen 5 5500GT | APU (内蔵GPUなし) | 16 MB | Gen 3 |
Ryzen 5 5500 | APU (内蔵GPUなし) | 16 MB | Gen 3 |
たとえば、Ryzen 5シリーズが少しややこしいです。「5600」以上なら性能に特化したCPUタイプですが、「5500GT」以下から内蔵グラフィックスに特化したAPUタイプを搭載します。
・・・ややこしいですね。型番の接尾辞が「G」だったらAPUタイプを意味するはずが、5500は無印なのにAPUタイプです。
「G」が付いていないからCPUタイプだと期待して買った消費者を裏切っています。
逆に5600GTは、接尾辞に「G」が付いているのになぜか内蔵グラフィックス非搭載。「G」が付いているからAPUタイプを期待して買った消費者を裏切っています。
別売りのグラフィックボードを使う予定がある方は、なるべく「X」モデル(高性能タイプ)を選ぶと失敗しづらいです。
- Ryzen 7 5700X(CPUタイプ)
- Ryzen 7 5700(実はAPUタイプ)
ちなみに上記2モデルも似たようなパターンです。標準タイプに見えて、実は内蔵グラフィックスを省略したAPU(5700GF相当)です。
今後も似たパターンの型番を出す可能性があります。接尾辞(Suffix)だけで早とちりせず、必ずメーカーの仕様表をよく読んで何か落とし穴が無いか確認しましょう。
Ryzen 3の世代ごとの性能差
「Ryzen 3」世代別の性能(Cinebench R23)
AMD Ryzenシリーズの問題児が「Ryzen 3」です。
見てのとおり、第3世代(Zen2)から性能の伸びが停滞しています。初代(Zen)から第5世代(Zen4)で約2.3倍の性能アップですが、第3世代(Zen2)から比較するとたったの1割です。
Ryzen 7とRyzen 5で性能が大きく伸びていた第5世代(Zen4)も、Ryzen 3だとなぜか性能がイマイチ振るわない状況。1世代前と同じ4コア8スレッドなのに、どうして?
実は・・・
- Ryzen 3 8300G(大型コア:1個 + 小型コア:3個)
- Ryzen 3 5300G(大型コア:4個)
中身が大型コアと小型コアの混合設計に変わったからです。
大型コアを「Zen4」、小型コアを「Zen4c」と呼びます。ほとんど同じ設計を流用する似たもの同士ですが、Zen4c(小型コア)の動作クロックはZen4(大型コア)より約26~33%も低いです。
性能の高いコアと性能の低いコアが混ざっているから、1世代前から性能の伸びがイマイチになってます。
なお、本記事を書いた時点で第6世代(Zen5)のRyzen 3は未だに予定なし。
依然としてRyzen 3シリーズは魅力に欠けるラインナップと性能が多く、かつてコスパ最高と呼ばれたRyzen 3の面影はどこにも見当たらない状況です。
Ryzen 5 ~ Ryzen 9は最新世代までラインナップがきちんと充実しているのに、一番下のRyzen 3だけラインナップが手抜きになりがちです。
「儲からない」は理由として十分にありえますが、技術的な観点で見ると理由が2つ思い浮かびます。
- 製造プロセスの価格高騰
CPUを作るのにかかるコストが高くなると、製品の値段を上げる必要が出てきます。必然的に値段を安くしがちなRyzen 3をわざわざ用意するモチベーションが失われます。
「儲からないから」と似た理由です。もうひとつの理由は製造品質の高さです。
- 製造プロセスの高い製造品質
第3世代(Zen2)の頃から、AMD Ryzenを製造しているTSMCの品質が良すぎて、Ryzen 3に流用しやすい不良品があまり取れていないらしいです。
(良品率が高い = 歩留まりが高い)
最近のAMD Ryzenはどれも8コアを最小単位※4として製造します。Core i3のように最初から少ないコア(= 狭い面積)で作っているわけでなく、すべて8コアをベースに作ります。
8コアCPUを大量に作ってみたら、ちょうどいい具合に4コア欠けている不良品があまり取れず、結果的にRyzen 3をラインナップできない状況が続いている様子です。
ちなみに4コア欠損品があまり取れないと予想した理由が「Ryzen 3 3300X」です。初回入荷のあと、めったに新しい在庫が入荷されず、気づけば市場からフェードアウトした伝説のRyzen 3がかつて存在しました。
それほどまでにTSMCの最先端プロセスは良品率が高いと思われます。
今からRyzenシリーズを選ぶなら「第4世代(Zen3)」以降
グレード | Ryzen 7 | Ryzen 5 | Ryzen 3 |
---|---|---|---|
第6世代 Ryzen 9000 | 性能:約2.3倍 8コア / 16スレッド | 性能:約2.4倍 6コア / 12スレッド | なし |
第5世代 Ryzen 8000 Ryzen 7000 | 性能:約2.2倍 8コア / 16スレッド | 性能:約2.2倍 6コア / 12スレッド | 性能:約2.3倍 4コア / 8スレッド |
第4世代 Ryzen 5000 | 性能:約1.7倍 8コア / 16スレッド | 性能:約1.6倍 6コア / 12スレッド | 性能:約2.3倍 4コア / 8スレッド |
第3世代 Ryzen 4000 Ryzen 3000 | 性能:約1.35倍 8コア / 16スレッド | 性能:約1.40倍 6コア / 12スレッド | 性能:約1.9倍 4コア / 8スレッド |
第2世代 Ryzen 3000 Ryzen 2000 | 性能:約1.15倍 8コア / 16スレッド | 性能:約1.15倍 6コア / 12スレッド | 性能:約1.2倍 4コア / 4スレッド |
第1世代 Ryzen 1000 | 8コア / 16スレッド | 6コア / 12スレッド | 4コア / 4スレッド |
今からAMD RyzenシリーズのCPUを選ぶ予定なら、コスパで第4世代(Ryzen 5000 CPU)、ゲーム性能重視で第5世代(Ryzen 7000 CPU)以降がおすすめです。
第4世代(Ryzen 5000 CPU)シリーズは、2020年から発売されている古い世代ですが、とにかく価格が安くてコストパフォーマンスに優れています。
マザーボードと合わせて約3万円台で、8コア16スレッドのそれなりに速い環境が揃います。別売りのグラボは「RTX 4060」程度までなら間に合うゲーム性能です。
今さら4年前のCPUを買うのは気持ちが乗らない。と感じた方は第5世代(Ryzen 7000 CPU)シリーズをおすすめします。
特にRyzen 5 7500F(6コア12スレッド)を搭載したパソコンがコスパ良し。「RTX 4060 Ti」まで間に合い、「RTX 4070」にギリギリ追いつけるゲーム性能です。
6コア12スレッドといえど、初代から約2.1~2.2倍もの性能アップを遂げています。体感性能(レスポンス)も良好でサクサクとパソコンが動きます。
発売されたばかりで価格が非常に割高です。時期尚早だから、価格が落ち着くのを待ちましょう。
AMDの公式発表でWindowsと上手く連携できておらず、100%の性能を発揮できない事情もあり、今のところは様子見した方がいい状況です。
2024年の今から、AMD Ryzenの旧世代(~3世代)を選ぶメリットはまったく無いです。
- Windowsの互換性で足切りされる危険性
- セキュリティパッチの影響を受けやすい
- ゲーム性能が低くてグラボの性能を引き出せない
旧世代のCPUほど、Windowsのアップデートや新バージョンで互換性リストから弾かれるリスクが高まります。たとえば、Windows 11(24H2)では最低でも第2世代からサポートです。
CPUの脆弱性を防ぐセキュリティパッチによる性能低下も、旧世代のCPUになるほど深刻で、コストパフォーマンスを大きく損ないます。
そしてゲーミング性能の問題。新世代のCPUほど、ゲーム性能を意識したぜいたくなコア設計が施されています。「RTX 4060」など最新世代のグラフィックボードと組み合わせたとき、旧世代のCPUはフレームレートが伸びにくい傾向です。
マインクラフトやパルワールドのサーバー用に、第3世代(Ryzen 5000 Mobile)の入ったミニPCを買うのはアリかもしれませんが、普通の自作PCやゲーミングPC用に買うのはおすすめしません。
AMD Ryzenシリーズまとめ
最後にここまで解説してきた、AMD Ryzenシリーズの世代や注意するべき互換性の話についてまとめます。
世代 | プロセス | 代表作 | ソケット | チップセット | 対応OS |
---|---|---|---|---|---|
6th Zen5 | 4 nm (TSMC) |
| Socket AM5 | AMD 600 / 800シリーズ B650 / X670 / X870など | Windows 10 / 11 |
5th Zen4 |
| ||||
5 nm (TSMC) |
| ||||
4th Zen3 | 7 nm (TSMC) | Socket AM4 | AMD 300 / 400 / 500シリーズ B450 / B550 / X570など | ||
| |||||
3rd Zen2 |
| ||||
2nd Zen+ | 12 nm (GF) |
| |||
| |||||
1st Zen | 14 nm (GF) |
| Windows 10 | ||
|
Intel Coreシリーズと比較して、AMD Ryzenシリーズは対応しているソケット・チップセット・OSが統一されています。
- 第5世代(Zen4)~以降
Socket AM5 / AMD 600チップセット / Windows 11 - 初代(Zen)から第4世代(Zen3)
Socket AM4 / AMD 500チップセット / Windows 11
初代(Zen)から第4世代(Zen3)と、第5世代(Zen4)以降から対応しているソケットが違う、とだけ覚えておけば十分です。
とてもシンプルです。
ただし、新しい世代のRyzen CPUを古い世代のマザーボードで使う場合は、BIOSアップデートが必要になる可能性があります。
たとえば、第4世代RyzenをAMD 400番台マザーボードと組み合わせるつもりなら、USBメモリだけでBIOSアップデートができる「BIOS Flashback」機能がついているかどうか確認してください。
AMD 300番台のマザーボードだと、BIOSのバージョンによって対応している世代の幅がまるっと変わるので要注意。・・・正直ややこしいから、無理して古い世代のマザーボードを買わなくていいです。
使いたい世代 | 必要なプラットフォーム | ||
---|---|---|---|
第6世代 Ryzen 9000 | Socket AM5 | AMD 600 / 800シリーズ A620 / B650 / X670 / X870など | Windows 11 / 10 |
第5世代 Ryzen 8000 Ryzen 7000 | |||
第4世代 Ryzen 5000 | Socket AM4 | AMD 300 / 400 / 500シリーズ A520 / B550 / X570など | |
第3世代 Ryzen 4000 Ryzen 3000 | |||
第2世代 Ryzen 3000 Ryzen 2000 | |||
第1世代 Ryzen 1000 | Windows 10 |
世代とチップセットの対応表をまとめてみました。
考えるのが面倒くさくなったら、「Ryzen 5000 CPUはB550マザーボード」「Ryzen 7000以降はB650やX870マザーボード」と覚えましょう。
これならBIOSアップデートに引っかかるリスクもほぼ無いです。
以上「AMD Ryzenシリーズ「3 / 5 / 7 / 9」世代一覧と性能差まとめ」について解説でした。
AMD Ryzenの性能をもっと詳しく
AMD Ryzenの性能をもっと詳しく知るなら、各種ベンチマーク記事を参考にどうぞ。
ちなみに、筆者イチオシのAMD Ryzenは「Ryzen 7 9800X3D」です。ライバルのCore i9やCore Ultra 9を平均値で3割強、ゲーム次第で1.5倍以上も引き離す、別次元のゲーム性能を発揮します。
パルワールドやEscape from Tarkov(タルコフ)のCPU別ベンチマークでは、ゲーム特化型の高性能タイプ「Ryzen 7 7800X3D」が猛威を振るっているかが分かります。
CPU単品を詳しく知りたいなら、CPU個別ベンチマーク記事がおすすめ。「Ryzen 9 7950X」のレビューを読めば、おおむね性能を把握できるはずです。
AMD Ryzen搭載おすすめゲーミングPC
最高のゲーム特化型CPU「Ryzen 7 9800X3D」搭載でおすすめはツクモのG-GEARです。
9800X3Dの次に性能がいい「Ryzen 7 7800X3D」搭載でおすすめはマウスのNEXTGEARです。
Ryzen 5 7600やRyzen 7 7700を搭載した予算にやさしいゲーミングPCは、LenovoのLegion Tower 5 Gen 8です。
第4世代Zen3(Ryzen 5 5600XやRyzen 7 5700X)でとにかく予算を圧縮したいなら、パソコン工房のLEVEL∞が適任です。
実際にCPUごとにベンチマークしてみた【ゲーム別fps】
Intel Coreシリーズ解説はこちら
- 2024年8月24日:記事を初公開
- 2024年12月1日:Ryzen 7 9800X3Dについて追記(UPDATE !!)
- Ryzen 3 8300Gは市販されていないOEM向けモデルなので、Ryzen 5 8500Gをベースに、一部のコアを無効化してクロック周波数を合わせてCinebenchスコアをエミュレーションしました。
- Ryzen 3 2300XもOEM向けモデルらしく筆者が所有していなかったため、Ryzen 7 2700Xをベースに、一部コア無効化でCinebenchスコアをエミュレーションしました。
- 一部の「Gモデル」はグラフを見やすくするため、あえてPROの文字を省略しています。たとえば「Ryzen 7 4750G」の正式型番は「Ryzen 7 PRO 4750G」です。
- 記事中に出てくる専門用語「CCX(Core Complex)」「CCD(Core Complex Die)」は、AMD社のホワイトペーパーから引用しています。メーカー自ら発信している情報なら正式名称でしょう。
- PCIeレーン数についてはAMDが公式サイトで詳細をほとんど開示しないため、実機で確認しています。具体的に書くと、RTX 3070(PCIe 4.0 x16)を接続してPCIe Bandwidth Renderingベンチマークで最高帯域幅を測定し、マザーボード側の仕様と照らし合わせてレーン数を推定します。最低x8接続が可能なマザーボードで、x4相当の帯域幅が確認されれば、PCIe 3.0 x8(Gen3 x8 / x4 / x4 / x4)と推定が可能です。
5600GのGPU無しモデルは5500ではなかったでしょうか。5700系はご記載のとおりの関係性だったと思いますが…
勘違いでしたらすみません。
ryzenは確かにわかりにくいw
気持ち悪いからもっとシンプルにしてほしいね
とりあえずはallow lake s待ってzen5とどっちにするか決めるけど、次のwindowsアプデでryzenのゲーミング性能上がるらしいし、消費電力が低いのは魅力ありますね
冷却をnoctuaで固めて静音性も重視したい勢としてはうれしい
AMDの型番は本当に分かりにくいです。
5600X/5600、ちもろぐ氏も騙されてますねw
5600無印は純粋なクロックダウンモデル(Vermeer)です…
初心者に伝わるように書かれててありがてえ
RyzenがなんでAPUとCPUで最初の番号がバラバラなのかは
AMDが発売された年に合わせて数字を増やしているからだと考えれば納得できるよ
※ちなみにZen5はZen4X付きモデルと比較すると
ワッパが劇的に改善していますが
Zen4無印モデルと比べるとそうでもないです
そりゃそうでしょw Xと無印とでは同世代でもクロックからして違う
Xと比べるならばX。無印と比べるならば無印とだよ
トランジスタ密度(MTr/mm2)もプロセス比較に加えるべきじゃないかな。
いつもわかりやすい解説ありがとうございます。
ZEN第一世代からのAMDユーザーですが、毎回CPUアップデートしているので特に型番が分かりにくいとは思ったことないですよ。
Ryzen7 5800搭載のLenovo社製PCを所有していますが、5800X/5800も5700X/5700と同様な関係性なのでしょうか。
TDP105W:5800XT、5800X
TDP65W:5800無印(OEM限定)=5700X
APU:5700G、5700(5700GのGPU無効化)
いつも楽しく拝見してます。
5600で組んだのでコメントしますが、5600は5600Xのダウンクロック版で、クーラーも付属していたのでお得なモデル「でした」。
ちなみに、
5800→ダウンクロック版(PCI-E 4.0)
5700→APU上がり(PCI-E 3.0)
5500→ APU上がり(PCI-E 3.0)
だと思います。
5700以上だと普通はクーラー買ってX選ぶでしょうけど。
PCI-Eが違うので、グラボを別途用意する方は要注意かもです。このややこしさ、優良誤認と言われても仕方ない気がします。
製品はすごく良いのに唯一残念な点だと思います。
名機7800x3D
Ryzen9 7900 使いのワシ、7800X3Dの人気に嫉妬
省電力でもやればできる子なのに影が薄くて悲しい
今は7800X3Dより7900X3Dの方がよりお勧めですね。
7900も240Hz以下のモニターならDDR5メモリーの設定しだいではゲームも十分で、クーラーもついていて実はお買い得だったりはしますが。
なるほど、価格差も随分縮んで来てるんですね〜
ゲームはグラボに頑張ってもらうとして
7900無印は発熱が少ないから静かに動かせるのも良いんですよ
CPUクーラーはやかもちさんが過去にレビューしてくれてた
これ使ってます
https://www.amazon.co.jp/Thermalright-Peerless-Assassin-CPU風冷放熱器、ダブルタワー式放熱器、6本のホットパイプCPU冷却器、ダブル120-PWMファン、アルミ製放熱器カバー、AGHP技術、AMD-Intelプラットフォーム、PMWファン内蔵、AMD/dp/B0C4JWC4LM
こ、これでリンク出来るのか!?
買った時より1000円位値上がりしてますね
いつも楽しくみさせていただいております
administrator権限で動かすとゲームの性能が上がるみたいですが
geekbenchなど仕事系のベンチマークも変わるのでしょうか?
仕事で使う場合、管理者権限がないと必要なソフトがインストールできない・動かないってことがあるのでパフォーマンス以前の問題だったりします(管理者じゃないアカウントだと不具合が発生することを開発側すら知らなくて詰みかけたことがある)
NEXTGEARは側面のどデカいNEXTGEARロゴをカッコいいと思えるか、許容出来るかどうかがすべてな気はする。
型番もわかりにくいが5700Xが各社一斉に1万跳ね上がったりするのも意味がわからん
AMDの正規代理店のCPUは全て日本AMD(実態はアスク)を通しているので価格統制(一律のアスク税が上乗せ)されている。
アスク税には独自の通貨レート(通称アスクドル)と、商品によって独自の上乗せ(割引きの場合も)がある。
アスク税は常に消費者の足元を見てこまめに改訂されている。
現在は1ASK$≒180円で商品によって値引きされているものもある(9950Xは-9000円、9900Xは-1万円)。
旧製品は卸売価格がよく分からないものの、Intelがやらかして需要増になっている為、また、新製品に合わせて値上げ(5700Xの場合は独自の割り増し)している。
やっぱ5600はツッコミ入るよなw
注意喚起している人が間違えるくらいややこしいと言うことで
初心者にはどれがどれだか分かるわけないな。
モバイルはもっとわかりづらいよなw
AMD国境の方に難民の塊がぞろぞろ動き出してる段階だからこういう記事も必要だね
5600が内蔵GPU無効化モデルだって言うソースはどこ?公式から発表されてるん?
5600の誤情報いつまで経っても修正されなかったり、シンプルに記事の質落ちてきてるの気になる
ライターでも雇った?
記事中に出てくるZen6っていつの間に発売していたんですか?
2024/8月に初めてAMDでPCを組みました。今までintelしか組んだ事がなかったのですが、AMDCPUの凄さが理解できました。もっと早期にintel⇒AMDに移行するべきだったと凄く後悔しています。。。
これからはAMDでしか組みません。(心に誓いました)