Ryzen 7 5800Xベンチマークレビュー:8コアCPUに6万円の価値はあるか?

ついに登場した第4世代Ryzen「Zen3」の8コア16スレモデル「Ryzen 7 5800X」を詳しくベンチマーク & レビューします。

今まではゲームのIntel、マルチ性能とコスパのRyzenという棲み分けでしたが、今期のRyzenでこの関係性も終わりを告げるのかどうか・・・見ていきましょう。

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Ryzen 7 5800Xの仕様とスペック

AMD / コア : 8 / スレッド : 16 / ソケット : Socket AM4 / チップセット : AMD 400~500 / 付属クーラー : なし
CPURyzen 7 5800XRyzen 7 3800XCore i9 10850K
ロゴ
世代4th Zen 33rd Zen 210th Comet Lake
プロセス7 nm製造:TSMC7 nm製造:TSMC14 nm+++製造:Intel
チップセットAMD 400 / 500AMD 400 / 500Intel 400
内部構造8コア8コア(4 + 4)10コア
コア数8810
スレッド数161620
ベースクロック3.80 GHz3.90 GHz3.70 GHz
ブーストクロック~ 4.70 GHz~ 4.50 GHz5.20 GHz
TDP105 W105 W125 W
付属クーラーなしWraith PRISM with RGB92 mm LEDファン(105W対応)なし
MSRP$ 449$ 399$ 464
参考価格58828 円50738 円53990 円
CPURyzen 7 5800XRyzen 7 3800XCore i9 10850K
世代4th Zen 33rd Zen 210th Comet Lake
プロセス7 nm7 nm製造:TSMC14 nm+++製造:Intel
TIMCPU内部の熱伝導材ソルダリングソルダリングソルダリング
ソケットSocket AM4Socket AM4LGA 1200
チップセットAMD 400 / 500AMD 400 / 500Intel 400
コア数8810
スレッド数161620
ベースクロック3.80 GHz3.90 GHz3.70 GHz
ブーストクロックシングルコア使用時~ 4.70 GHz~ 4.50 GHz5.20 GHz
ブーストクロック全コア使用時~ 4.70 GHz~ 4.50 GHz4.80 GHz
手動OC可能可能可能
L1 Cache512 KB512 KB640 KB
L2 Cache4 MB4 MB2.5 MB
L3 Cache32 MB32 MB20 MB
対応メモリDDR4-3200DDR4-3200DDR4-2933
チャネルx2x2x2
最大メモリ128 GB128 GB128
ECCメモリU-DIMMのみU-DIMMのみなし
PCIeレーンGen4Gen4Gen3
16 + 416 + 416
レーン構成1×16 + 1×41×16 + 1×41×16 + 2×4
2×8 + 1×42×8 + 1×41×8 + 2×4
1×8 + 2×4 + 1×41×8 + 2×4 + 1×4
内蔵GPUなしなしUHD 630
GPUクロック350 ~ 1200 MHz
TDP105 W105 W125 W
MSRP$ 449$ 399$ 464
参考価格58828 円50738 円53990 円

Ryzen 7 5800Xのスペックを確認します。位置づけとしては、Ryzen 7 3800Xの後継モデルですが、記事を書いている時点でRyzen 7 3700Xの後継が出るかどうかは不明です。

価格設定は50ドル引き上げられ、日本国内の販売価格は約5.9万円・・・ハッキリ言って8コア16スレッドCPUとしては割高です。あと5000円安く、10コア20スレッドのCore i9 10850Kが買えます。

CPUに詳しい人はともかく、見かけのスペックと価格に注目しやすいPC初心者にとって、おそらくRyzen 7 5800Xはかなりお買い得感に欠けたCPUに映ります。

コア数は同じだけど「内部構造」が違います

見かけのスペック(コア数やクロック周波数)は同じように思えて、実は第4世代Ryzen(Zen3)はコアの内部構造にメスが入っています。

こちら↑の記事で詳しく解説している通り、Ryzenはコア数の少ないCPUを組み合わせて作っています。その最小単位を「CCX」と呼び、初代 ~ 第3世代までCCXは最大4コアでした。

Zen3の最小単位(CCX)は最大8コア
Zen2の最小単位(CCX)は最大4コア

第4世代(Zen3)では最大8コアのCCXが使われます。つまり、同じ8コアのRyzen 7でも、Zen2とZen3では性質が大きく変わります。

  • Ryzen 7 5800Xは正真正銘ホンモノの8コアCPU
  • Ryzen 7 3800Xは中身が4 + 4コアの合計8コアCPU

ライバルのインテルCPUと同じく、Ryzen 7 5800Xはつなぎ目※の無い完全な8コアCPUです。従来の4 + 4コアで問題だった「2つのCCX間のレイテンシ(遅延)」が解消され、より効率よく性能を発揮します。

※つなぎ目 = 2つのCCXを接続するバスインターフェイス「Infinity Fabric」のこと。Zenアーキテクチャの設計者Jim Keller氏の天才的な発想のひとつです。

Ryzen 7 5800XのCPU間のレイテンシ

CPUコア間のレイテンシ(遅延)をグラフで比較すると分かりやすいですね。

Ryzen 7 5800Xはつなぎ目が無いのですべてのCPUコアで一貫してレイテンシが短いです。一方、4 + 4コア構造のRyzen 7 3700Xでは、片方のCCXへ処理が行くと遅延が一気に伸びてしまいます。

クロックは同じでも性能は「1.2倍」

さきほど説明した8コアに倍増したCCXに加えて、第4世代Ryzenはいろんな部分で細かい改良が加えられてます。その結果、Zen3はZen2と比較してIPCがおよそ1.2倍に伸びました。

「IPC」の意味は「クロックあたりの性能(Instructions per clock)」です。同じクロックでも性能は1.2倍・・・単純計算すると、Ryzen 7 3800Xが4.5 GHzでやっと出せる性能を、Ryzen 7 5800Xはたった3.75 GHzで出せる計算です。

でも、Ryzen 7 5800Xのクロック周波数は最大4.7 GHzとスペック表に書いてあります。Ryzen 7 5800Xの実際の性能がとんでもないことになるのは、簡単に予想できると思います。

互換性は終わり:Socket AM4最後のCPU

Ryzen 7 5800XはSocket AM4で使用可能

CPUソケットは初代から続いてきた「Socket AM4」を続投。対応チップセットは2020年11月時点で「X570」「B550」の2つのみ。2021年から「X470」「B450」もサポートされる予定です。

  • CPUソケット:Socket AM4
  • 対応チップセット:AMD X570 / B550 / X470 / B450

マザーボードメーカーの対応次第ではもっと古いチップセット(B350やA320など)で使える場合もありますが、これからZen3を買う人はB550あたりを選んだ方が無難でしょう。

なお、次世代Ryzen(Zen4以降)では新しいCPUソケットに移行する可能性が非常に高いため、おそらく第4世代RyzenはSocket AM4最後のCPUになります。

Ryzen 7 5800XのCPU性能:i9 10850Kに急接近

テスト環境

Ryzen 7 5800Xを検証するPCスペック
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」
PCver.Intelver.AMD
CPUCore i9 10850KRyzen 7 5800X
冷却Corsair H100i Pro240 mm簡易水冷クーラー
マザーボードASUS ROG STRIXZ490-E GAMINGASUS ROG STRIXX570-E GAMING
メモリDDR4-2666 8GB x2使用モデル「G.Skill FlareX C14」
グラボRTX 2080 Ti使用モデル「MSI Gaming X Trio」
SSDSATA 500GB使用モデル「Samsung 860 EVO」
SATA 2TB使用モデル「Micron 1100」
電源ユニットシステム全体1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」
電源ユニットCPUのみ850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」
OSWindows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」
ドライバNVIDIA 456.55

Ryzen 7 5800Xの性能を詳しくベンチマークします。ちもろぐ専用ベンチ機のPCスペックは以上の通り。比較に使うCPU以外は、可能な限り同じPCパーツで揃え、CPUの性能だけを比較検証できる環境にしてます。

メモリは容量8 GBを2枚で合計16 GB、メモリクロックはBTOパソコンで一般的なDDR4-2666です。しかし、インテルの第11世代CPUがようやくDDR4-3200に対応するらしいので、近いうちにDDR4-3200で統一する予定です。

グラフィックボードは「RTX 2080 Ti」を使用します。RTX 3080を使ったデータはまだ不足しているため、比較できるデータの多さを優先して2080 Tiを続投です。こちらもいずれRTX 3080に更新予定です。

システムストレージはどちらもSSDで揃え、アプリケーションやベンチマークはSATA接続の2TB SSDから起動しています。おおむね、CPU本体の性能差をテストできるスペック環境です。

Ryzen 7 5800Xと比較するCPUについて
「Ryzen 7 5800X」と比較するCPUたち
Ryzen 7 3700X1世代前のRyzen 7(8コア16スレッド)
Ryzen 7 3800XT3700Xの高クロック版(8コア16スレッド)
Core i9 10850K5000円安いインテルCPU(10コア20スレッド)

比較に使うCPUは主に3つ。

1世代前の大人気8コアCPU「Ryzen 7 3700X」は当然として、同じ価格帯に位置する「Ryzen 7 3800XT」も比較に入れています。

しかし、Ryzen 7 5800Xにとって最大級のライバルは5000円安く買える「Core i9 10850K」でしょう。10コア20スレッド、最大5.2 GHzブーストを備え、5800Xより5000円も安い・・・かなりの強敵です。

加えて、過去の検証データも参考程度にまとめて掲載します。

AMD / コア : 8 / スレッド : 16 / ソケット : Socket AM4 / チップセット : AMD 400~500 / 付属クーラー : なし
Intel / コア : 10 / スレッド : 20 / ソケット : LGA 1200 / チップセット : Intel 400 Series / 付属クーラー : なし / 内蔵GPU : Intel UHD 630 / 備考 : i9 10900Kの廉価版(選別落ち)
AMD / コア : 8 / スレッド : 16 / ソケット : Socket AM4 / チップセット : AMD 400~500 / 付属クーラー : Wraith Prism with RGB
ASUS / チップセット : Intel Z490 / フォーム : ATX / ソケット : LGA1200 / フェーズ数 : 16(DrMOS) / マルチGPU : SLI or CF / M.2 : 2スロット / LAN : 2.5 GbE / 無線 : Wi-Fi 6
ASUS / チップセット : AMD X570 / フォーム : ATX / ソケット : Socket AM4 / フェーズ数 : 12+4 / マルチGPU : SLI対応 / LAN : 1.0 + 2.5 GbE
MSI / ブーストクロック : 1755 MHz / ファン : トリプル内排気 / 厚み : 2スロット(55.6 mm) / TDP : 300 W / 備考 : 8 + 8 + 6 pinが必要

レンダリング性能

CPUの性能をはかるベンチマークとして、「CPUレンダリング」は定番の方法です。ちもろぐでは、下記3つのソフトを用いてCPUレンダリング性能をテストします。

  • Cinebench R15
  • Cinebench R20
  • Blender(BMW)

日本国内だけでなく、国際的にも定番のベンチマークソフトです。なお、CPUレンダリングで調べた性能はあくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Cinebench R15(マルチスレッド)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Cinebench R15(シングルスレッド)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Cinebench R20(マルチスレッド)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Cinebench R20(シングルスレッド)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Blender(BMWレンダリング)

マルチスレッド性能は2647 cbを叩き出し、2コア多いi9 10850Kとi9 10900Kをわずかに上回る驚異的な性能です。

1コアあたりの性能「シングルスレッド性能」は268 cbです。過去に前例のない最高のシングル性能によって、Ryzen 7 5800X(8コア)のマルチ性能はi9 10850K(10コア)をしのぎます。Cinebench R20もほぼ同じ結果です。

一方、BlenderでBMWプリセットをレンダリングさせると、i9 10850Kに約19秒も引き離されます。実際のレンダリングだと、Cinebenchのように10コアに並ぶほどのパフォーマンスは得られないようです。

やかもち
R20のシングル性能が600 cb超え。うっかり変な声が出るレベルです。

計算速度

計算速度は、マルチプラットフォーム対応のベンチマークソフト「Geekbench 4.1」で検証です。内容はAES(暗号処理)やGEMM(行列乗算)、FFT(フーリエ変換)などのワークロードを実行し、CPUの計算性能をスコア化します。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Geekbench 4(計算性能・マルチスレッド)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Geekbench 4(計算性能・シングルスレッド)

Cinebenchと似たようなスコア傾向です。マルチスレッド性能は10コアのi9 10850Kと横並び、シングルスレッド性能はi9 10900Kすら抑えての1位。シングルお化けです。

動画エンコード

CPUレンダリングと並んで、動画エンコードはCPUの性能を調べる定番の方法です。

ちもろぐでは、フリー動画エンコードソフト「Handbrake」と、日本国内で人気の動画編集ソフト「Aviutl」における動画エンコード速度をテストします。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Handbrake(動画エンコード・Fast 480p)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Handbrake(動画エンコード・Fast 480p)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Handbrake(動画エンコード・MKV 1080p)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Handbrake(動画エンコード・MKV 480p)

処理が軽い「Fast 480p」「Fast 1080p」では、あともう少しでi9 10850Kに追いつけそうなエンコード性能です。

圧縮率が高くさらに負荷が重たい「MKV 480p(x265)」「MKV 1080p(x265)」になると、10コアのi9 10850Kどころか12コアのRyzen 9 3900Xすら超えるエンコード性能を示します。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Aviutl(x264guiEx)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Aviutl(x265guiEx)

Aviutlにて、拡張プラグイン「x264guiEx」「x265guiEx」を使って動画エンコードをしました。

過去のデータを見る限り、rigaya氏のguiEx系プラグインは意外とIPC(クロックあたりの性能)に敏感に適応する傾向が強いですね。x264で12コアの3900X超え、x265では3900Xとほぼ同等のエンコード性能です。

やかもち
8コアだから心配だったけど、ガチで10コア並の性能を出せるとはビックリです。x265だと12コア相当の性能は予想外でした。

動画編集

Davinci Resolve(動画編集)

「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。

ちもろぐでは、Puget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve 16における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:4K動画編集(Davinci Resolve)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:4K動画編集(Davinci Resolve Fusion)
Davinci Resolve / 4K動画編集
テスト内容Ryzen 7 5800XRyzen 7 3800XTCore i9 10850K
Overall Score937 /1000913 /1000954 /1000
Basic Grade83.486.194.2
OpenFX – Lens Flare
+ Tilt-Shift Blur + Sharpen
88.590.989.2
Temporal NR
Better 2 Frames
94.591.992.1
3x Temporal NR
Better 2 Frames
95.695.395.2
Optimized Media106.792.1106.2
テスト内容Ryzen 7 5800XRyzen 7 3800XTCore i9 10850K単位
4KOverall Score937913954Score
4K Test AverageBasic Grade83.486.194.2Score
4K Test AverageOpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen88.590.989.2Score
4K Test AverageTemporal NR – Better 2 Frames94.591.992.1Score
4K Test Average3x Temporal NR – Better 2 Frames95.695.395.2Score
4K Test AverageOptimized Media106.792.1106.2Score
4K CinemaRAW LightCodec Average97.692.597.3Score
4K H264 150Mbps 8bit84.385.889.1Score
4K ProRes 42295.793.395.1Score
4K ProRes 444491.487.191.8Score
4K RED99.797.6103.6Score
4K CinemaRAW LightBasic Grade44.0438.7244.05FPS
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen18.0117.1416.94FPS
Temporal NR – Better 2 Frames14.3214.0413.52FPS
3x Temporal NR – Better 2 Frames7.447.447.52FPS
Optimized Media98.3491.58106.17FPS
4K H264 150Mbps 8bitBasic Grade31.4942.0346.06FPS
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen17.0216.8316.83FPS
Temporal NR – Better 2 Frames17.917.8918.33FPS
3x Temporal NR – Better 2 Frames7.777.767.77FPS
Optimized Media63.1855.7960.53FPS
4K ProRes 422Basic Grade47.5844.6144.62FPS
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen13.1517.8717.03FPS
Temporal NR – Better 2 Frames18.5718.5618.33FPS
3x Temporal NR – Better 2 Frames7.947.897.81FPS
Optimized Media173.97133.25154.95FPS
Basic Grade19.6719.0221.42FPS
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen17.0216.6316.08FPS
Temporal NR – Better 2 Frames15.414.1814.61FPS
3x Temporal NR – Better 2 Frames7.377.417.41FPS
Optimized Media108.497.41112.55FPS
4K REDBasic Grade20.824.7127.56FPS
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen14.313.6213.62FPS
Temporal NR – Better 2 Frames13.1512.6712.8FPS
3x Temporal NR – Better 2 Frames6.66.536.48FPS
Optimized Media48.1741.449.17FPS

「4K Test(4K動画編集)」の総合スコアは、Ryzen 7 5800Xが937点を記録。ライバルのi9 10850Kは954点で、5800Xは8コアながらも10コアに迫る性能を出せています。

圧縮と解凍

ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:7-Zip Benchmark(圧縮)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:7-Zip Benchmark(解凍)

Cinebench以上に、圧倒的なシングルスレッド性能が大きくスコアに寄与しています。圧縮と解凍、どちらでもRyzen 7 5800Xは10コアのi9 10850Kを上回る処理性能(MIPS)です。

ブラウザの処理速度

ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUがブラウザ上のWebアプリをどれだけ速く処理できるかを検証します。単位はミリ秒なので、短いほど処理が速いです。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:mozilla kraken(ブラウザの処理速度)

krakenテストはシングルスレッド性能が反映されやすいため、Ryzen 7 5800Xが当たり前のように1位に君臨。シングル番長のi9 10900Kを170 ミリ秒近く、Ryzen XTシリーズを130 ~ 140 ミリ秒も引き離し、500 ミリ秒台に突入です。

とはいえ、mozilla krakenは1000 ミリ秒が大きな目標のひとつで、ここでテストしたCPUはすべて1000 ミリ秒を下回っています。つまり、どれを選んでも実用上はまったく問題ない性能です。

やかもち
ちなみに500 ミリ秒台はiPhone 11(Apple A13 Bionic)と同じくらいの処理速度です。

Photoshop CC

写真編集の定番ソフト「Adobe Photoshop CC」の処理速度をテストします。Puget Systems社のプリセットを用いて、Photoshopを実際に動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出する仕組みです。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Photoshop CCの処理速度
テスト内容Ryzen 7 5800XRyzen 7 3800XTCore i9 10850K
総合スコア1137 /1000977 /10001037.8 /1000
一般処理のスコア105.795.9100.2
フィルタ系のスコア116.797.7106.6
GPUスコア114.697.3112.6
Photomergeのスコア123.7101.3105.3
CPURyzen 7 5800XRyzen 7 3800XTCore i9 10850K
総合スコア11379771037.8
一般処理のスコア105.795.9100.2
フィルタ系のスコア116.797.7106.6
GPUスコア114.697.3112.6
Photomergeのスコア123.7101.3105.3
テストの詳細結果
RAW画像の展開1.11.021.26
500MBへのリサイズ1.141.181.12
回転0.790.970.76
自動選択8.958.649.26
マスク2.432.782.62
バケツ1.291.221.28
グラデーション0.250.310.25
塗りつぶし3.664.724.36
PSD保存5.396.15.93
PSD展開2.262.852.46
Camera Raw フィルタ3.914.634.23
レンズ補正フィルター10.0813.4713.61
ノイズ除去13.2715.5916.61
スマートシャーペン11.6914.9612.41
フィールドぼかし11.6613.8411.89
チルトシフトぼかし11.6113.5511.6
虹彩絞りぼかし12.1614.9312.43
広角補正フィルター1617.4716.25
ゆがみツール(Liquify)3.43.753.7
Photomerge(2200万画素)55.5369.4964.42
Photomerge(4500万画素)75.990.4190.22

Ryzen 7 5800XのPhotoshop総合スコアは「1137点」です。満点の1000点をゆうゆうと突破して、過去テストしたCPUでトップの座につきます。

Photoshop用のCPUを性能重視で選ぶなら、Ryzen 7 5800Xは最高のCPUです。コスパを取るなら、5000円安いi9 10850Kも悩ましい存在ではありますが・・・。

Microsoft Office

パソコンの一般的なワークロードといえば、Microsoftの「Office」ソフトが代表例です。しかし、Microsoft Officeにベンチマークモードはありませんので、ちもろぐでは「PCMark 8 Advanced Edition」を使います。

単なる再現テストではなく、PCMark 8が実際にMicrosoft Office(Word / Excel / PowerPoint)を動かして、各処理にかかった時間を計測します。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Wordの処理速度
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:Excelの処理速度
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:PowerPointの処理速度

Wordは0.6秒台でi9 10900Kと互角の速さ。Excelは思ったように性能が出ていませんが、PCMark 8側の不調が原因※です。

PowerPointは1.8秒の壁を打ち破り、1.6秒台に到達します。Ryzen 7 5800Xのオフィスワーク処理性能は驚異的です。

※設定のミスやPCMark 8のバージョンなど。色々と見直した上で5回はテストを繰り返していますが、なぜか以前のテスト時よりも遅い結果が出ています。

ビデオチャット(VC)の処理性能

コロナウイルスの流行によって、テレワーク(在宅勤務)の導入が進み、ビデオ通話(VC)ソフトも出番が増えています。

PCMark 10でビデオチャットの性能をテスト

検証は「PCMark 10」のビデオ会議テストを使います。ビデオ通話のフレームレート、顔認識の処理速度、エンコード(アバター着用など)の処理速度から、ビデオ通話の性能をスコア化します。

Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:PCMark 10(ビデオ通話の処理性能)
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:グループ通話の平均フレームレート
Ryzen 7 5800Xのベンチマーク比較:「顔識別」の平均フレームレート

PCMark 10のスコアは余裕で9000点超え。ライバルのCore i9 10850Kはもちろん、i9 10900Kも上回るトップ性能です。グループ通話のフレームレートは、どのCPUも上限30 fpsに張り付いており、実用上はどれを選んでも問題なし。

「顔識別」のフレームレートはRyzen 5 5600Xと同様、やはり興味深い結果です。シングルスレッド性能の寄与がかなり大きく、i9 10900Kをおよそ1割も超えるフレームレートです。

ただし、グラフに掲載したCPUはどれも60 fps以上を出しているため、実用上はどのCPUを選んでも問題ないと言えます。

やかもち
PCMark 10公式いわく「4100点以上」でおおむねOKとのこと。

ゲーム実況配信

最近になって、CPUで「ゲーム実況配信」ができるかどうかが重要視されるようになりました。しかし、実際のところは「ゲーム配信ならグラボ(NVEnc)が有利」です。特にNVIDIAのTuring世代のグラボは、高画質かつ安定性に優れています。

とはいえ、ぼく自身の好奇心の観点から、一応CPUの性能評価として「OBS(略:Open Broadcaster Software)」を使った配信性能を検証しておきます。参考程度に見てください。

配信中のドロップフレーム率設定 : Medium / 144 fps
CPUレンダリングラグエンコードラグ平均fps
Core i9 10900K0.0%5.0%97.0 fps
Core i9 10850K0.0%3.2%111.7 fps
Core i7 10700K0.0%37.2%131.6 fps
Core i9 9900K0.0%39.9%131.0 fps
Core i7 9700K0.0%82.8%182.4 fps
Ryzen 9 3900XT0.0%0.0%96.0 fps
Ryzen 9 3900X0.0%0.0%94.5 fps
Ryzen 7 3800XT0.0%16.7%85.6 fps
Ryzen 7 3700X0.0%39.1%109.0 fps
Ryzen 7 5800X0.0%4.3%112.2 fps
Ryzen 5 5600X0.1%77.3%103.1 fps
配信中のドロップフレーム率設定 : Medium / 60 fps
CPUレンダリングラグエンコードラグ平均fps
Core i9 10900K0.0%2.6%59.1 fps
Core i9 10850K0.0%0.3%58.4 fps
Core i7 10700K0.0%27.1%59.8 fps
Core i9 9900K0.0%29.1%59.8 fps
Core i7 9700K0.0%69.5%59.9 fps
Ryzen 9 3900XT0.1%0.0%59.1 fps
Ryzen 9 3900X0.0%0.0%59.5 fps
Ryzen 7 3800XT0.0%11.8%58.5 fps
Ryzen 7 3700X0.0%33.7%58.5 fps
Ryzen 7 5800X0.0%0.3%59.8 fps
Ryzen 5 5600X0.0%70.5%58.9 fps

10コアのi9 10850Kがド安定なのは当然として、注目すべきは同じ8コア16スレッドのi7 10700Kやi9 9900Kと比較して、Ryzen 7 5800Xは明らかにコマ落ちが少ない点です。

動画エンコード編(Handbrake、Aviutl)で見てきた通り、Ryzen 7 5800Xのエンコード性能は確かに従来の10コアに相当するパワーがあります。OBSのリアルタイム配信でも、10コア相当の安定した配信を可能にします。

とはいえ、今はNVIDIAの「NVEnc」やRadeonの「VCE」を使ったほうが、遙かに低コストでスムーズなリアルタイム配信が可能な時代です。あえてCPUで頑張ってOBS配信をするメリットは、ほとんどありません。

やかもち
まさかOBSでも10コア相当の性能を出すとは、いい意味で裏切られました。まるで10コアのような8コアCPUです。

「IPC」でCPUの真の進化をチェック

IPC(クロックあたりの処理性能)をCinebench R15でテスト

最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。

方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。

Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz

  • Ryzen 7 5800X
    194 cb
  • Ryzen 5 5600X
    194 cb
  • Ryzen 9 3950X
    166 cb
  • Ryzen 9 3900XT
    166 cb
  • Ryzen 9 3900X
    166 cb
  • Ryzen 3 3300X
    166 cb
  • Ryzen 7 3800XT
    166 cb
  • Ryzen 5 3600XT
    166 cb
  • Ryzen 7 3700X
    165 cb
  • Ryzen 5 3600
    164 cb
  • Ryzen 5 3500
    163 cb
  • Ryzen 3 3100
    163 cb
  • Core i9 10900K
    156 cb
  • Core i9 10850K
    156 cb
  • Core i7 10700K
    156 cb
  • Core i5 10400F
    155 cb
  • Core i9 9900K
    155 cb
  • Core i7 9700K
    155 cb
  • Core i3 9100F
    155 cb
  • Core i3 10100
    154 cb
  • Core i5 9400F
    154 cb
  • Core i7 8700K
    152 cb
  • Ryzen 7 2700X
    148 cb
  • Ryzen 5 2600
    147 cb
  • Ryzen 5 1600 AF
    147 cb
  • Ryzen 5 3400G
    143 cb
  • Ryzen 3 3200G
    143 cb
  • Core i7 4790K
    133 cb
  • Core i7 950
    104 cb

これでIPCの違いをキレイに抽出できます。グラフを見ての通り、Ryzen 7 5800Xは歴代最高のIPCを叩き出しました。

第3世代(Zen2)比較で約17%、第2世代(Zen+)比較だと約31%もIPCを改善しています。一方のインテルは第8~10世代まで、IPCにほとんど変化がありません。

技術的に最先端を走っているのは間違いなくAMD Ryzenです。

AMD / コア : 8 / スレッド : 16 / ソケット : Socket AM4 / チップセット : AMD 400~500 / 付属クーラー : なし
インテルはRocket Lake世代で18%のIPC改善

インテルが2021年Q1に投入する予定の第11世代「Rocket Lake」では、現行の14 nmシリーズ(つまりSkylake ~ Comet Lake)に対して約18%のIPC改善を見込んでます。

同じクロックで比較するとZen3には及ばないですが、インテルお得意の5 GHzを軽々と超える驚異的なブーストクロックのおかげで、いい勝負をする可能性が高いです。

Rocket Lakeは最大8コアとされているので、8コアのRyzen 7 5800Xが相手ならそれなりに勝負はできるでしょう。

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Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能

ゲームで100 fpsを軽く超えるハイフレームレートを出すなら、グラフィックボードの性能が重要です。と同時に、グラフィックボードが高性能であればあるほど・・・CPUの性能も影響が大きくなります。

CPUボトルネック(ゲーミング性能)をテスト

RTX 3080の次に性能がいい「RTX 2080 Ti」を使って、Shadow of the Tomb Raider(ベンチマーク)でフレームレートを測定した結果です。グラフを見ての通り、同じグラボなのに性能に差が出るのが分かります。

これが「CPUボトルネック」と呼ばれる現象です。

Ryzen 7 5800XはシングルCCX化でレイテンシを大幅にカットして、シングルスレッド性能も過去最高です。圧倒的なゲーミング性能に期待できそうですが、果たしてどうなるか検証です。

  • Fortnite:テストに使っていたリプレイモードが使用不可に
  • PUBG:テストに使っていたリプレイモードが使用不可に

上記の理由により、検証タイトルから「Fortnite」「PUBG」を外しました。ハッキリ言って、リプレイモードに使用期限を設ける理由がまったく分かりません(激おこ)。

フルHDゲーミング(8個)のテスト結果

ひとつずつグラフを掲載するとムダに長文になるので、テストした結果を以下のスライドにまとめました。

Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較
Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較
Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較
Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較
Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較
 
Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較
Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較
Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較

うっ・・・感無量(2回目)。

やっぱりあれだけゲーミング性能だけはインテルに遅れを取り続けていたRyzenが、おおむね互角レベル、ゲームによってはi9 10900Kすら超えていく様を眺めるのは気持ちが良いです。

苦手としていたFF14ベンチですらRyzen 7 5800Xは圧倒的に強く、大幅に改善されたシングルスレッド(とIPC)や、シングルCCX設計がきちんと性能に反映されています。

しかも、今回のテストは公平性を期すために双方ともにDDR4-2666です。DDR4-3200を使えば更にゲーム性能を伸ばせる余地があり、「ゲームのインテル」の地位は着実に崩されています。

平均パフォーマンス

Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能を比較

測定した8個のデータを平均パフォーマンスとしてまとめました

Ryzen 7 5800Xの平均フレームレートは、ライバルのi9 10850Kにあと一歩のところまで迫ります。旧来のRyzen 7 3800XTと比較すると、飛躍的な進化です。

日本国内でユーザーが多いタイトル(FF14やモンハンワールド、Apex Legendsなど)では、Ryzen 7 5800Xはi9 10850と同等かそれ以上の性能です。Ryzen 7 5800Xは「真のゲーマー向けRyzen※」と評価できます。

※AMD自身、過去に「ゲーマー向けRyzen」と何度かアピールしてきた経緯がありますが、今度こそ「本物」と言っていいでしょう。

【参考】メモリクロックを上げると?
Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能とメモリクロックの関係

参考までに、メモリをDDR4-3200(CL14)、DDR4-3600(CL16)でFF14ベンチマークをテストしてみた。性能は約4~5%ほど上昇して、i9 10850Kとの性能差はさらに開きます。

G.Skill / 種類 : デスクトップ用 / 規格 : DDR4-3200 / CL : 14-14-14-34 / ランク : 1-Rank / 容量 : 8 GB / 枚数 : 2枚 / チップ : Samsung B-die / 備考 : for AMDメモリ

ただし、DDR4-3200(CL14)で動作できるオーバークロックメモリは決して安いとは言えないので、積極的にオススメする気は無いです。

消費電力とCPU温度

Ryzen 7 3700Xのテスト環境

※写真は過去記事より使い回しです

ちもろぐのCPUレビューでは、電力ロガー機能が付いた電源ユニットを2台使って、CPU単体の消費電力を実際に測定します。

テスト環境
電源ユニット #1システム全体1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」
電源ユニット #2CPUのみ850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」

電源ユニットを2台に分けて電力供給を分割しているため、CPUに電力供給している電源ユニットの計測値(+12V Power)を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。

消費電力とワットパフォーマンス

Ryzen 7 5800Xの消費電力を測定する

消費電力は、Handbrakeで「Fast 1080p(x264)」プリセットでエンコードしながら測定します。10コア20スレッドCPUまでなら、この方法でCPU使用率は常時100%に張り付き、CPU本体の消費電力をほぼフルに引き出せます。

Ryzen 7 5800Xの消費電力を比較

動画エンコード中の消費電力は平均値で131.1 Wでした。ライバルのi9 10850Kより85 Wも少ないです。

なお、Ryzen 7 5800XはTDP : 105 WのCPUですが、電力制限(PPT)の初期設定は142 Wです。消費電力が軽く105 Wをオーバーするのは、あくまでもPPT : 142 Wの範囲内で動作するからです。

マルチスレッド時の動作クロックは4.55 ~ 4.625 GHzで推移し、シングルスレッドでは最大4.85 GHzまで確認済みです。詳しい理由は知りませんが、Zen2世代より明らかに低電圧で高クロックな動作が可能になっています。

消費電力1ワットあたりの動画エンコード速度(= ワットパフォーマンス)は、i9 10850Kを約50%も上回り、Ryzen 7 3800XTとほぼ同等のワッパです。

なお、ワットパフォーマンスは動画エンコード速度を計算に使っているので、参考程度に見てください。

CPU温度

Ryzen 7 5800XのCPU温度を比較

動画エンコード中にCPU温度を記録します。Ryzen 7 5800XのCPU温度は中央値で85.8℃、最大87.2℃です。

初心者もち
ど・・・どうして200 W超えのi9 10850Kよりも温度が高いの?

理由は熱密度です。ザックリ説明すると、Ryzen 7 5800XはインテルCPUよりも狭い面積に、チップをぎっしり詰め込んでます。たとえ同じ消費電力だったとしても、面積が狭いほど「熱密度」が高くなって冷却しづらくなります。

消費電力130 W台のCPU(=Ryzen 7 5800X)を、240 mmサイズの簡易水冷ユニット「Corsair H100i Pro RGB」を全力でぶん回しても、CPU温度が80℃を軽くオーバーするのは単に熱密度が高いからです。

やかもち
Ryzen CPUは動作に問題がない程度に、自動的にブーストクロックをかけてくれるから、温度に関して神経質になる必要はありません。
Scythe / ソケット : LGA 115X・2011・Socket AM4 / ファン : 120 mm x2 / 全高 : 155 mm / 備考:奥行きが180 mmもある
Corsair / ソケット : LGA 115X・2011・Socket AM4 / ラジエーター : 240 mm / ファン : 120mm x2 / 備考:5年保証

・・・とは言っても、ファンが全力で回ると騒音が問題ですよね。動作音が気になる人は、静音性に優れた空冷クーラーを使えば解決します。

結局のところ、Ryzenの自動オーバークロック機能はインテルよりも優秀です。一定の温度(Ryzen 7 5800Xは90℃リミット)を超えない範囲で、勝手に最適なブーストクロックへと調整を行います。

だから静音性を求めるなら、ただ単に静かなCPUクーラーを使えばOK。使っているクーラーの冷却性能に応じて、Ryzenは勝手にブーストします。

オーバークロックを検証

さきほども説明した通り、Ryzenは自動オーバークロック機能がとても優秀なので、あえて自分で手動オーバークロックを設定するメリットはあまり無いです。手動OCは製品保証を失うデメリットがあり、なおさら推奨はしません。

ですがRyzenには「低電圧化」というテクニックが存在し、設定次第では性能をあまり落とさずに消費電力を劇的に下げられる可能性があります。

以下より、Ryzen 7 5800Xのオーバークロックと低電圧を検証した結果を並べていきます。手動オーバークロックは自己責任の領域ですので、参考程度に見てください。

Ryzen 7 5800Xのオーバークロック(CPU温度)

オーバークロックの設定別に、CPU温度をグラフにまとめます。定格クロックがもっとも温度が高く、少しだけクロックと電圧を下げるだけで5~10℃ほど温度を下げられます。

Ryzen 7 5800Xのオーバークロック(消費電力)

コア電圧によって消費電力も変化します。電圧を落とせば落とすほど、消費電力は下がり続け、筆者のテストでは40 W台に到達します。

Ryzen 7 5800Xのオーバークロック(消費電力)
OC設定マルチ性能シングル性能動画エンコード消費電力ワッパ
4.7 GHz
@1.296 V
2708 cb260 cb103.10 fps128.7 W0.80 fps/W
PBO Mode 150W2665 cb265 cb100.14 fps134.6 W0.74 fps/W
Stock
@1.312 V
2647 cb268 cb98.86 fps134.5 W0.74 fps/W
4.6 GHz
@1.240 V
2633 cb254 cb100.39 fps113.9 W0.88 fps/W
4.5 GHz
@1.200 V
2599 cb249 cb98.54 fps104.9 W0.94 fps/W
4.35 GHz
@1.150 V
2520 cb240 cb94.82 fps92.9 W1.02 fps/W
ECO Mode
@1.104 V
2472 cb267 cb93.97 fps83.9 W1.12 fps/W
PBO Mode 71W2348 cb265 cb88.70 fps68.9 W1.29 fps/W
3.8 GHz
@0.875 V
2197 cb210 cb84.93 fps44.9 W1.89 fps/W

動作エンコード(Handbrake Fast 1080p)中の消費電力です。

定格クロックの時点で、4.6 GHz前後とかなりハイクロック動作なため、4.7 GHzまでオーバークロックしても性能的なメリットはわずかです。4.8 GHzは必要な電圧が一気に跳ね上がり、検証はしていません。

Ryzen 7 5800Xのオーバークロック(Cinebench R15)

設定別に、Cinebench R15の結果をまとめました。グラフを見ての通り、BIOSから手動でクロックと電圧を固定する方法は、シングルスレッド性能を失うデメリットがあります。

シングルスレッド性能も維持したい場合は、BIOSではなく「Ryzen Master」がおすすめです。

Ryzen Masterから「ECO Mode」を設定する

Ryzen MasterはAMD謹製のOCツールで、Windows上でダイレクトにRyzenの挙動を設定できます。クロックごとの動作電圧を探るなど、手間のかかる作業もRyzen Masterを使えば、かなりラクです。

そしてシングルスレッド性能を維持しつつの省エネ化も、Ryzen Masterならワンクリックです。とにかく省エネなら「ECO Mode」を、性能も欲しい人は「PBO」から「任意のPPT」を入力してください。

Ryzen Masterから電力制限(PPT)を設定できます

Ryzen 7 5800XのPPT下限値は「71 W」

たとえばPPTに71 Wと入力すると、消費電力71 Wの範囲内でブーストクロックが機能します。もちろん、さきほどのグラフに掲載したとおり、シングルスレッド性能はしっかりと維持されます。

やかもち
Ryzen Master便利すぎ・・・食わず嫌いせず、もっと早く手を出すべきだったかも。

まとめ:8コアで10コア相当の性能・・・あとは値段 !!

Ryzen 7 5800Xレビューまとめ
AMD / コア : 8 / スレッド : 16 / ソケット : Socket AM4 / チップセット : AMD 400~500 / 付属クーラー : なし

「Ryzen 7 5800X」のデメリットと弱点

  • 熱密度のせいで冷やしづらい
  • やや荒々しい定格動作
  • 8コアで約6万円
  • 内蔵グラフィックなし
  • 付属クーラーなし
  • 限定的なオーバークロック

「Ryzen 7 5800X」のメリットと強み

  • 最高のシングルスレッド性能
  • マルチスレッド性能は10コア相当
  • 優れたゲーミング性能
  • 極めて汎用性の高いCPU性能
  • PCIe 4.0をサポート
  • 消費電力が少ない
  • 強力なワットパフォーマンス
  • 低電圧化がよく効く

Ryzen 7 5800Xでシネベンチを回してすぐに「8コアで10コアを食える性能ってスゴイ。」と思いましたが、ふと我に返ってスペック表を見ると参考価格 : 58828円でした。

性能については文句なしです。マルチスレッド性能はi9 10850K相当で、動画エンコードもおおむね10コアに近い性能を示します。ゲーミング性能も大幅な進化を遂げ、ゲーム次第でi9 10850Kを超えるほど。

でも値札を見るとi9 10850K(10コア)より5000円も高いし、Ryzen 9 3900X(12コア)より4000円高いです。Ryzen 7 5800Xは、ただただ値段設定がもったいないと言わざるを得ません。

過去に例がない強烈なシングルスレッド性能(Cinebench)につい目を奪われますが、全体的な性能を見ると意外にも「価格相応プラス」な性能です。

Ryzen 7 5800Xの評価(A+ランク)

というわけで、ちもろぐの評価は「A+ランク」で決まりです。目的や用途によって、より安価なCPU(= 10コアのi9 10850Kや12コアのRyzen 9 3900X)を選べる余地がある以上・・・Sランクは厳しい印象。

i9 10850Kやi9 10900Kに相当する性能を、85 Wも少ない消費電力で出せる驚異的なワットパフォーマンスは素直に高評価ですが、それでもRyzen 7 5800Xが6万円前後の王者だとは言い切れません。

以上「Ryzen 7 5800Xベンチマークレビュー:8コアCPUに6万円の価値はあるか?」でした。

AMD / コア : 8 / スレッド : 16 / ソケット : Socket AM4 / チップセット : AMD 400~500 / 付属クーラー : なし
AMD / コア : 12 / スレッド : 24 / ソケット : Socket AM4 / チップセット : AMD 400~500 / 付属クーラー : Wraith Prism with RGB
Intel / コア : 10 / スレッド : 20 / ソケット : LGA 1200 / チップセット : Intel 400 Series / 付属クーラー : なし / 内蔵GPU : Intel UHD 630 / 備考 : i9 10900Kの廉価版(選別落ち)
やかもち
コスパのインテル、ワッパのRyzen(Zen3)という棲み分けになった感がある。

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54 件のコメント

    • intelを駆逐してからこの価格設定ならともかく、まだintelが生き残ってる状態で殿様商売やったら一番購入者が多いであろうロー~ミドルをintelに食われるだけ

    • まだ何とも言えないですね・・・Zen2と同じく、無印版や下位モデルを出すなら、殿様商売とは言えない。
      それに、Zen3のラインナップで3.5万円以下がガラ空きな状況を、AMDが放置するとも思えません。多分、11th Coreが出てから何かしらアクションを起こす可能性が高いです。

    • 最も真価を発揮するのはamd自身が言ってた通りラデオン6000シリーズがきてからではないかと・・・
      今でもゲーミング以外ではintelと互角以上な性能を有してると思いますが
      ラデオンとの連携機能でゲーミングでnvidiaにすら上に立てるかもしれません

  • このくらいの値上がりで殿様商売扱いしてる人がいるのにはちょっと笑うが
    3300xが潤沢だったらローエンド向けも十分戦えたんでしょうけど
    現状枯渇してるからなぁ…

  • レビューお疲れ様です、いつも参考にさせてもらってます
    感覚的にRyzenのレベルを1段階上げた(ryzen7がi9相当に)代わりに、値段も1段階上げた感じですよね、某所では調子づいてきてると言われてますがこれが吉とでるか凶とでるか・・あとCCXの作り的に3300xみたいに速攻で品薄になる気もする・・w

  • MSRPでなら普通に買えるから、日本円が頭おかしいだけ、在庫あるけど今は時期が悪いとしか。どうしても今CPU買うなら3700x10700kにクーラーつけた方が安いし、Zen4まで繋げばいい。今金を注ぎ込むべきはグラボ

  • うーん、今の価格で考えると3DCG用途では3900Xの方がよさそうなんでしょうか?
    もちろん最善が5900Xなのは分かるのですが、スペックと価格と在庫を考えると手を出しずらくて。

    それとも10900シリーズの方がいいのでしょうか?

    • 3DCG / レンダリング用途だと、Ryzen 9 3900Xはコスパ良いと思います。何より、レンダリング用途だとRyzen 9 3900Xはワッパも圧勝です。ゲームを優先しないならRyzen 9ですね。

      ※もちろん、余裕があるならRyzen 9 5900Xがベストなのは間違いないです。

      • ゲームの優先度は極めて低いのでとにかくCPUはRyzen9で決めようと思います!
        記事に加えて早速のレスありがとうございます!

  • 某氏が言ってましたが、「8コアでインテル10コアを潰す」ことに命をかけて選別した結果、高くなったのかもしれませんね

    5700が待ち遠しい

  • レイテンシのグラフの横軸をはじめとして、グラフの軸の単位が書いてないところがあるのは資料としての信頼性を損なうので入れた方が良いと思います

  • 必要コストにさえ納得できれば、2020年現在、全局面において最も隙のないCPUが5800Xなのかなとは思います。
    10850Kとは、各々の強みと弱みを総合すれば、非常に拮抗した良きライバル関係になれてるのも面白い。

    それにしても3.8GHz@0.875V動作時のワッパがエグいですね。低負荷の作業は全部これでいいんじゃないかと思えるほどです。

  • うーーむ、結構期待ハズレですね。
    Sky-lakeを圧倒するシングルスレットを持っているのにゲーム性能がイマイチ奮いませんね。
    これから最適化が進めば良くなるのでしょうがガガガ….
    結局ゲームはintelですね。rocket-lakeを素直に待ちます

  • 8コアに6万円も出すような「コスパなんかどーでもいいんだよ」って層は
    スリッパとか5950Xとか買うんじゃない?

  • 米ドルでの希望小売価格だと 5800Xが449ドル、10850Kが464ドル
    一方で日本での今の販売価格は 5800Xが58,828円、10850Kが53,990円
    ドル→日本円で逆転現象が起きてるんすね

    今は出たばかりの5800Xがご祝儀価格で高くなってるだけで、いずれ10850Kより安く買えるようになったりするんだろうか…

    • 10850Kが464ドルではなくて449ドルではないかと。
      どちらにしても北米でもない日本でしかもMSRPは絶対ではないのとで比較は同族の同タイミングでしか意味がないかもしれない。

  • 消費電力の線グラフですが、色が似すぎててどれがどれか流石にわかんねっす…
    破線や線の太さ等を組み合わせて、判別できるようにしていただきたいです
    青intelオレンジAMDで分けてると思いきやRyzen5 3600XTだけ青いし…

    • 例えIntelが性能の劣るクソCPUしか作れなくても、営業能力だけでどうにかできちゃうのが現状
      企業規模を考えたら、殿様AMDだなんてとんでもない

  • 電力消費の色が当たり前のように複数おんなじ色で構成されてるように見えたから不安になって色盲チェックしちゃったわ…
    単にそっくりな配色使ってるだけで安心したが

    • 当面5950Xと5900Xと5800Xと5600Xしか用意できそうにない状況に追加したりすると価格体系も含めて崩壊しそうな懸念はある・・・

  • $→円相場おかしすぎない……?
    今だと47150円程よ?
    関税入るだろうからこの値段では売れないだろうけど流石にちと高いなぁ
    買うのはご祝儀価格が落ち着いてからかな

  • AMDが殿様商売というのもあるかもしれないが、サムスンが7nmプロセス製造にコケたことでTSMCが足元見た製造価格設定にしている可能性もあるんでなんとも。

    • 殿様商売というのは競合不在をいいことに法外な値段をふっかける商法のこと。
      競合に拮抗しうる商品があり、様々な側面から判断して妥当と思われる値付けがなされているなら、それに当てはまらない。
      5800Xに関しても殿様商売ではなく、ただ妥当な価格で販売されてるだけで、だから買う人もちゃんと存在する。
      割安感が無いのは確かだけど、だからといって即殿様商売という脊髄反射的な言葉を使うのはやめた方がいいよ。

  • ryzenを詰んだRTX3000番台シリーズとラデオン6000シリーズの比較楽しみにしてます!
    本当にいつもありがとうございます。
    大変参考になりました!

  • intel時代の停滞を思えば数千円の値上げなんてモノの数じゃない
    個人的にはエンコがどのくらい速くなったか気になるので5900x、5950xのレビュー楽しみにしてます

  • 高負荷時は10900kより温度が高くなるんですねー。。
    ecoモード(TDP65W)動作での温度なんかも見てみたいです。
    5800x(ecoモード)と5600xの比較なんかも気になったり

  • ZEN2から5800X乗り換えした俺。5800Xの価格は激安設定だった。マサボはそのまま、ZEN2売って差額4万で最強CPUが手に入った

  • AMDが値上がりしたってのもあるけどINTELが10thかなり下げて売ってる(下げないと売れない)状況ですからねぇ
    あとかなりの方が指摘してるけど3万以下が無いのはきつい
    APUはZen2だしなぁ

  • ゲーミングに限ればAMD内でも5600Xと言う強力な存在がいますし
    中位帯以下だとIntel製CPUも侮れない性能とCPを持ちますからね
    MSRPが50ドル上がってしまったのが痛いですね

  • 10世代インテルが出たばかりの頃の値段と比べるとそこまで殿様でもない気がします。ただゼン2が優秀すぎてお得感が薄いですね。5700x 5600に期待です。

  • 冷静に見ると、性能UPより5900x以上の在庫激薄と予想以上の高値でイメージダウンですな、3000番が徐々に値下げされつつあるから、ここで飛びつくより5nmのZen4を虎視眈々と待つ方が賢明かな。グラボも世代交代で色々と忙しいからそっちが優先

  • お値段に文句を言いたくなる気持ちは分かるけど、今回はコロナの影響で世界中が混乱してたから仕方ないのかなと思います。

  • 値段のことを言い出すならマザボが安く人によっては300番台の流用すら可能なRyzenに対し、
    最新かつZナンバーでないと性能発揮が許されないIntelの比較であることに留意すべきでは。
    5000円程度の差なら前者に分があるのは明らか。

  • 6コアだから、8コアだから値段がこのぐらいだとは言いたくはないが、それでもやっぱたけーよ・・・
    5700Xが出るとして果たしてそれがどれくらいかってところだな
    あと6コアのほうはがまぁ割高感凄い、もちろん性能が上がったのはわかるが
    せめて、初値4の落ち着て3.5マソぐらいなら良かったな

    • 8コアは低音化が一番難しいから、余計に割高に感じる
      クーラーの付属は8コア以上はおまけレベルになるが、無しゆえ3700Xからその追加分コスト増にもなる

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