Echo Studioは約3万円の価格ながら、最大330 Wの大出力アンプを内蔵し、合計5つのスピーカーユニットを駆動させてハイレゾ音源から空間オーディオまで対応する多機能スピーカーです。
PCスピーカーとして有効活用できればコスパの良いスピーカーになるのでは?と思い、実際に試してみた。
(公開:2023/2/7 | 更新:2023/2/7)
「Amazon Echo Studio」のスペック
Amazon Echo Studio | |
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タイプ | アクティブDAC + アンプ内蔵スピーカー |
内蔵DAC | Cirrus Logic CS42526 |
内蔵アンプ | クラスDアンプ(最大330 W) |
筐体 | 密閉型※低音を逃がすバスレフポートがない |
ドライバー |
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入力 |
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出力 | なし |
周波数帯域 | 30 ~ 24000 Hz(±???dB) |
対応音源 |
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USB | microUSB有線LANで接続するときに使用 |
無線 | Bluetooth低遅延モード(aptXやaptX HD)非対応 |
寸法 | 206 x 175 x 175 mm |
重量 | 3.5 kg |
参考価格 | 29980 円(単品) |
Echo Studioは音声で操作できるスマートAI「Alexa」を搭載した、AmazonのハイエンドAlexaデバイス、と一般的に紹介されています。
まったくAlexaに関心がない筆者ですが、Echo Studioそのモノは値段の割にハードウェアが豪華で興味があります。
Alexa対応 + 5-wayスピーカー(最大330 W)
Alexaを実装するため、MediaTek製ARM CortexベースのSoC(Amazon Neural Edgeプロセッサー内蔵)や、Micron製のLPDDR4メモリを搭載するだけで割りとコストがかかります。
ただでさえコストがかかっているうえに、Texas Instruments製のクラスDアンプで最大330 Wの出力を供給して、合計で5つもあるスピーカーユニットを駆動する設計です。
低音を出すウーファーユニットが5.25インチ(133 mm)で、筐体の底面に床に向かって配置されてます。
中音域を担当するミッドレンズユニットが2.0インチ(51 mm)で、筐体の左右と天面に配置。高音域を出すツイーターユニットが1.0インチ(25 mm)で、筐体の正面に配置されています。
一般的な予算3万円で買えるスピーカーでは、2つのユニットを搭載するモデルが多いです。Echo Studioはなんと5つもユニットを搭載し、各スピーカーユニットの向きもバラバラ(全方向)です。
各スピーカーユニットを左右上下に向けて配置し、壁からの反響音も利用して包み込むような音質を可能にしています。空間オーディオのDolby AtmosやSony 360 Reality Audioの再生に対応できます。
なお、空間オーディオ対応といってもユニットが1箇所に集まっているので「疑似サラウンドオーディオ」と呼んだ方が実態に近いです。
実際に複数のスピーカーを5~7箇所に置いて構築する、サラウンドオーディオ環境と同等のクオリティを期待しない方がいいでしょう。
Cirrus Logic製DAC「CS42526」
分解レポートによると、Echo Studioの内蔵DACはCirrus Logic製のマルチチャンネルオーディオコーデック「CS42526」です。
Cirrus Logic CS42526 | |
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DAC | 6 ch |
ADC | 2 ch |
ダイナミックレンジ |
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THD+N |
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解像度 |
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周波数 |
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2チャンネルの入力(ADC)、6チャンネルの出力(DAC)変換に対応。ADC・DACどちらも最大114 dBのダイナミックレンジ、最大-100 dBのTHD+Nをアピール。
最大192 kHz / 24 bitの音源に対応します。
Amazon Echo Studioを開封レビュー
パッケージと付属品
Amazonロゴの入った茶色いダンボール箱で届きました。高さ29 cm、横幅が19.5 cmの正方形で合計68 cm(80サイズ)です。
開封するとAlexaブルー色のパッケージがまた出てきました。手提げの付いた袋に入っていて、手提げを引っ張るだけで箱から取り出せる親切な梱包です。
Echo Studio本体がドカーンと描かれたシンプルなパッケージ。対応規格や搭載しているスピーカーユニットなど、各種スペックも箱に記載されています。
パッケージの底面に、Echo StudioのMACアドレスが記載されています。
開封します。Echo Studio本体が黒い不織布でできた手提げバッグに入ってます。
手提げを引っ張るだけで、Echo Studio本体をパッケージから引き出せます。
パッケージの底の方に、付属品が収まっています。
Echo Studioの付属品はスタートガイド(説明書)と、メガネ穴の電源ケーブルの2つだけです。
デザインとインターフェイス
2013年に発売された壺型Mac Proを彷彿とさせる、筒状のフォルムです。今回はチャコールブラックカラーを選んだので、どこに置いてもそれほど目立たず地味な印象です。
ファブリック素材感のある表面素材で包まれています。
口角が上がったニヤケ顔のようなダクトが「低音ダクト」です。このダクトの上に5.25インチウーファーが搭載されています。
ウーファーから床に向かって低音を放ち、置いた場所の振動と反響音を利用して低音を補う狙いがありそうです。なお、筐体そのものに穴が見当たらないため、Echo Studioは一応「密閉型」に分類できます。
本体の底面はEcho Studio本体の揺れを抑えるため、底面のほぼ全面積が制振ゴムです。制振マットやインシュレーターを用意する必要はありません。
Alexaデバイスとしては大きいですが、スピーカーとしては割りと普通なサイズ感。Yamahaの格安スピーカーと同じくらいの高さで、PS5本体と比較すると明らかに小さいです。
- アクションボタン
- 音量を上げる
- 音量を下げる
- マイクのオンオフ
トップパネル(天面)のインターフェイスは4つだけです。
リング部分はLEDライトで光るライトリングです。おもに青色・オレンジ色・紫色を使って、Echo Studioの状態を示します。
全部で7個ある小さな穴が、音声を聞き取るためのマイク穴です。7個もマイク穴があるおかげで聞き取り性能がそこそこ優秀。部屋の端っこ(約8メートル)から声をかけても反応します。
- 3.5 mmステレオミニジャック(AUX)
(3.5 mmに変換すれば光デジタル入力も対応) - microUSB
(もっぱら有線LANアダプター用に使う) - 電源コネクタ
底面の後ろ側にインターフェイスが3つあります。
3.5 mmステレオミニジャックは「AUX」とも呼ばれている、アナログ信号をダイレクトに入力する端子です。
スマホのイヤホンジャック、パソコンのスピーカー端子などから直接Echo Studioにつないで音を出せます。ただし、ステレオミニジャックを使う場合は、空間オーディオ機能が使えません。
端子 | 単体再生 | 2台でステレオ再生 | 空間オーディオ |
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Alexa(Wi-Fi) | 対応 | 対応 | 対応 |
Bluetooth | 対応 | できない | できない |
AUX | 対応 | できない (※DACを使えば可) | できない |
光デジタル | 対応 | できない | できない |
2台のEcho Studioを連携させてステレオ化する機能も、ステレオミニジャック経由だと使えませんので、普通のPCスピーカー的に使うのは(少々)難しいです。
ステレオミニジャックは「S/PDIF(光デジタル)」も兼ねており、光デジタルケーブルの先端を3.5 mmに変換すれば光デジタル入力も対応します。
テレビの光デジタル出力から音声だけ取り出したり、パソコンやAVアンプのS/PDIF端子から音を出したりする場合に重宝します。
Echo StudioのmicroUSBコネクタは、もっぱらAmazon純正のイーサネットアダプタ専用です。Wi-Fiが不安定な環境で使いたい場合に、有線LANが役立ちます。
最大100 Mbpsに制限されていますが、Echo StudioをAlexaでコントロールするだけなら十分すぎる帯域幅です。Amazon Musicで配信されているハイレゾ音源や空間オーディオも問題なく転送できます。
Amazon Echo Studioをセットアップ
スマホのAlexaアプリが必須
Echo Studioを設置して、電源ケーブルを接続します。
スマホにAmazon Alexaアプリをインストールして、AlexaアプリからEcho Studioの各種セットアップを進めます。Echo Studio単体や、パソコンからセットアップはできません。
アプリを起動して「Echo Studio」をタップします。「デバイスはオフラインです」と表示されるはずなので、「次へ」でセットアップに。
Echo Studioのアクションボタンを長押しして、
本体のライトリングがオレンジ色に光ったら次へ進みます。
Echo Studioのオレンジ色を確認して「はい」でセットアップを次へ。
デバイスが見つかります。検出されたEcho Studioをタップして接続します。
Echo Studioを接続するWi-Fiネットワーク(SSID)を選んで接続します。
無事、Echo StudioがWi-Fiにつながり、Alexaを使った音声コントロールができる状態になりました。
Echo Studioで音楽を再生するには?
基本的に、Alexaに対して「結束バンドの曲をかけて」「3Dオーディオをかけて」など、音声でコントロールする形式です。
しかし、曲名の認識精度があまり良くないです。「結束バンドのあのバンド」をかけてと言っても、なぜか結束バンドのアルバム1曲から再生したり・・・。
「原神サントラの烈火の如く」をかけてと言っても、やはり原神サントラの1曲目から再生したり。ハッキリ言って使い物にならない音声コントロールです。
結局、Amazon Musicアプリから「キャスト」機能を使って、Echo Studioに再生して欲しい曲を丸投げする方法が一番確実です。
音楽をかける | 単体再生 | ステレオ再生 | 空間オーディオ |
---|---|---|---|
Alexa(音声認識) | 対応 | 対応 | 対応 |
Amazon Musicアプリ キャスト機能 | 対応 | 対応 | 対応(気がする) |
Bluetooth接続 | 対応 | できない | できない |
キャスト機能はEcho StudioをBluetoothスピーカーとして使う機能ではなく、Echo Studioに音楽の再生を丸投げする機能なので、通常のBluetooth接続で対応できない「2台連携のステレオ再生」も可能です。
空間オーディオ対応の曲をキャストで投げれば、問題なく空間オーディオ(Dolby Atmosや360 Reality Audio)で再生できます。
音声コントロールで360 Reality Audio対応の音楽をかけた場合と、Amazon Musicアプリのキャスト機能でかけた場合、どちらも同じ音が再生されたためキャスト機能で空間オーディオの再生が可能です。
Amazon Musicアプリ | iOS | Android | Windows 10 / 11 |
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キャスト機能 | 対応 | 対応 | なし |
なお、キャスト機能はiOS版 / Android版のAmazon Musicアプリのみに実装されており、Windows版だと使えません。
Windows版のAmazon Musicからダイレクトに音楽をかけられればベストでしたが、現状できないようです。
オフライン環境にある音楽ファイルを、Amazon Musicアプリから再生する方法が無いように見えるので、おそらく無理です。
Echo Studioが対応している他のサブスクアプリ※に、オフライン楽曲を再生できる機能(音楽プレイヤー機能)があれば可能だと思われますが、実際に試していないので判断できず。
※2023年2月時点:Apple Music、Spotify、AWA、TuneIn、dヒッツ、うたパスなどに対応
オフライン環境の楽曲を聴くなら、Bluetooth接続でBTスピーカーとして使うか、3.5 mmステレオミニプラグ(AUX)に直接つないでPCスピーカーとして使うしか無いです。
AUX接続で「ステレオ再生」を試す
ステレオミニプラグ接続だと「2台連携のステレオ再生」に対応できない、と一般的に解説されています。口コミを探したところ、有線接続でEcho Studioのステレオ再生はできないらしいです。
しかし、実際にスピーカーシステムを構築して運用した経験がある人なら「いやいや2台のスピーカーに対して、ケーブルを2本使うだけじゃないの?」と気づくはずです。
というわけで、今回は比較的リーズナブルな価格で買えるオーディオ用のDAC「iFi Audio Zen Air DAC」を用意しました。
RCA端子から3.5 mmミニプラグに変換する、モノラルケーブルも2本用意します。ただの変換ケーブルだと1本で2ch分の音声が流れてしまうため、必ずモノラル(1ch)ケーブルを使いましょう。
ちなみに、スピーカー接続でよく使われるRCAケーブルやスピーカーケーブルはモノラルです。3.5 mmステレオミニケーブルやAUXケーブルは、名前のとおり1本で2ch分の音声が流れるステレオケーブルです。
今回は2台のスピーカーそれぞれに、右側のスピーカーに右チャンネル、左側のスピーカーに左チャンネルの音声信号を送りたいからモノラルケーブルを使っています。
では、有線接続でEcho Studio(2台)をステレオ再生する手順を解説します。
パソコンとDACをUSBで接続します。
DACのRCA端子に、あらかじめ用意したRCA → 3.5 mmミニプラグ変換モノラルケーブルを接続します。
右チャンネルのケーブルを、右側のEcho Studioに接続します。
同じように、左チャンネルのケーブルを左側のEcho Studioに接続します。
3.5 mmステレオミニプラグ(AUX)接続で、Echo Studioをステレオ再生する手順は以上で完了です。あっけなく見えますが、一般的なスピーカーのセットアップ方法とまったく同じです。
パソコンから音楽を再生します。再生デバイスからDAC(今回はiFi Audio Zen Air DAC)を選択するのを忘れずに。デフォルト設定だとマザーボードの内蔵オーディオに信号が行ってしまいます。
以上のセットアップで、アナログ接続でEcho Studioのステレオ再生に成功です。まるで普通のPCスピーカーのように使える状態です。
両方のスピーカーから同じ音が鳴るだけでは?・・・と思うかもしれませんが、DAC側で音声信号を左右に分離しているため、ちゃんと左右別々の音が鳴っています。
楽器ごとに定位がきちんと設定されている「ギターと孤独と蒼い惑星」や「あのバンド」を再生すると、ちゃんと右側のEcho Studioからギターパートが鳴り、左側のEcho Studioからベースパートが鳴ります。
間違いなく左右それぞれ別々の音を再生できています。3.5 mmステレオプラグ接続で、Echo Studioのステレオ再生が出来ないらしい情報は明らかに間違いです。
何度も言いますが、一般的なスピーカーのセットアップと何も変わらない、ごく普通のありふれた手順です。DACから2本のケーブルを伸ばして、2台のスピーカーに接続しているだけです。
残念ながら、3.5 mmステレオミニプラグ接続で空間オーディオ(Dolby Atomsや360 Reality Audio)は対応できないです。
空間オーディオを聴くなら、Alexaに「3Dオーディオをかけて」と言うか、Amazon Musicアプリのキャスト機能を使ってEcho Studioに処理を投げてください。
「ギターと孤独と蒼い惑星」「あのバンド」など、定位がズレが分かりやすい楽曲だと、Echo Studioでステレオ再生時に定位がズレる症状がたまに発生します。
一般的なPCスピーカーは左右どちらもほとんど同じ特性に調整されています。一方、Echo Studioはセットアップ時に自動キャリブレーションが施され、左右でスピーカーの特性にわずかな差が生じます。
Echo Studioの自動キャリブレーションはとても便利なシステムですが、アナログ接続のステレオ再生ではかえって仇になる可能性が高いです。
対策としてはEcho Studioを1台ずつ、まったく同じ位置でセットアップします。同じ位置でセットアップすれば、2台とも同じスピーカー特性に合わせられるため、定位のズレを解消できるはずです。
Amazon Echo Studioの音質をテスト
スピーカーの測定方法について
主観的な感想の次は、測定機材を使って客観的にAmazon Echo Studioの音質、というより音の特徴をチェックします。
- 測定ソフト:Room EQ Wizard
- 測定マイク:Dayton Audio EMM-6
- マイク入力:Focusrite Scarlett Soro 3rd Gen
測定はフリーソフト「Room EQ Wizard」を使いました。無料とは思えない高機能なオーディオ測定ソフトで、周波数応答(音の周波数ごとの音圧)やインパルス応答(スピーカーの箱鳴りなど)を数秒で測定できます。
あくまでも目安程度の測定であって、厳密な測定はできません。本気で測定をするなら無響室でEarthworksのマイクを使ったり、Harmanの論文に基づいて作られたKlippel社の測定器を使う必要があります。
周波数応答を実測でチェック
(※クリックで拡大します)
Echo Studioの周波数応答はメーカー公称値で30~24000 Hzです。
実際の測定結果を見ると、低音域が30 Hzからハッキリと出ており、高音域は22000 Hzまで出ています。測定マイクの仕様上、20000 Hz以上の測定がうまくできないですが、20000 Hz以上も出ていそうです。
周波数応答はおおむねメーカー公称値どおりの結果です。筆者の住んでいる部屋が約30平米と広いため、反響音を利用した音圧補正がうまく機能するか不安でしたが、結果を見る限り杞憂となりました。
部屋が広くても床との距離が近いおかげで、133 mmの小型ウーファーユニットで30 Hzからハッキリと分かる低音を出せる仕組みです。
一方で、壁の方を向いているツイーター(高音域ユニット)は、やはり壁との距離が離れているせいか10000 Hz以上を補正し切れていない様子です。
Alexaアプリのデバイスの設定から、Echo Studioのイコライザーを調整できます。筆者の環境だと、ベース(低音域)をやや下げて、トレブル(高音域)をほぼ最大にすると・・・わずかにフラットな特性に修正されます。
なお、フラットな特性とはいえ上下に10 dBも変動しています。モニタースピーカーなら大問題ですが、Amazon Echo Studioは一般向けのスピーカーゆえ、主観的に高音質だと思う人が多ければ問題ありません。
(※クリックで拡大します)
インパルス応答の結果です。
上下にグラフがゆらゆらと揺れているのが分かります。Echo Studioは小口径のスピーカーユニットで幅広い周波数をカバーするため、壁や床からの反響音だけでなく、スピーカー本体の振動も利用します。
スピーカー本体の振動を利用して低音域の音圧をカバーする手法は、Boseのポータブルスピーカーなどでも使われている割と定番のやり方です。
メリットは低コストで低音を出せますが、スピーカー本体がゆらゆらと振動するため、ボワボワと締りのない低音に仕上がります。
(※クリックで拡大します)
ステップ応答もついでに掲載します。一瞬で跳ね上がってゆっくりと減衰していくのが理想的な形状ですが、Echo Studioのステップ応答はギザギザです。
他のスピーカーと比較すると?
筆者が愛用している「Yamaha NS-1000M(アンプ:Teac AP-505)」の周波数応答です。30 Hzから音が鳴り始め、その後60~16000 Hzまでかなりフラットな特性です。
30 cm近い大型ウーファーを、ダンピングファクターの高いアンプで駆動させ、筆者的に好みなタイトな低音を出せています。
アンプやDACを含めてEcho Studioを20台は買えるコストがかかっているため、比較対象として完全に不適切ですが、やはり・・・NS-1000Mシステムが今のところ最高峰です。
一般向けで根強い人気のある「DALI MENUET」の周波数応答です。一般向けのスピーカーでありながら、非常にモニタースピーカー的なフラットな特性に仕上がっています。
Echo Studioとの比較ですが、当然MENUETが格上です。
2000~3000円で買える格安USBスピーカー「Creative Pebble V2」の周波数応答です。小型筐体をブルブルと震わせながら70 Hzから音が出始め、100~20000 Hzまで派手に上下しながら出し切ります。
締りのないだらしない低音に、全体的にスカスカで痩せた音・・・、ゲーミングモニターやノートパソコンの内蔵スピーカーよりいくぶんマシな程度です。
Echo Studioの方がはるかに低音から高音域まで安定して出ており、反響音を利用した包まれるような音質で主観的に高音質だと感じやすいです。
Echo Studioより約5000~1万円ほど高い「Tannoy Reveal 402」の周波数応答です。
さすがモニタースピーカーらしく、フラットな応答が特徴的。50 Hzくらいから低音が出始めて、80~18000 Hzまで安定した特性を維持します。
ただし、ユニットの材質が影響しているのか、内蔵アンプの影響なのか。Reveal 402はややこもった感じがあり、微妙に評価が割れそうな音質だったりします。
Echo Studio単品と比較するとReveal 402にやや軍配ありですが、ステレオ化したEcho Studioが相手だと、Echo Studioの方が良いと答える方が多いかもしれません。
Echo Studioより約7000~12000円ほど高い「Audioengine A2+」の周波数応答です。
一般向けスピーカーの割にまるでモニタースピーカーを思わせるフラットな特性。200 Hz前後が意図的にややブーストされており、大衆向けにウケやすい音質を明らかに意識した設計です。
Reveal 402より低音が出づらく量感がやや劣るものの、全体的なバランスはA2+の方が優秀で、こもった感じも少ないクリアな音質が持ち味です。
Echo Studioと比較すると、かなりいい勝負だと思います。A2+はたしかにフラットな特性で音質もクリアなかわりに、低音の量感はハッキリとEcho Studioに劣っています。
さらに、A2+では小型筐体に小型ユニットを採用しているゆえに、設置した位置や角度で大きく特性が変化します。セットアップの難易度もやや高いです。
一方Echo Studioは設置した場所に応じて、自動的に音質を最適化してくれる機能があるため、セットアップの難易度がとてもかんたんです。
低音が出ているかどうかは割りと主観的な音質評価に影響が大きいので、Echo Studioの方にやや軍配あり。ステレオ化するとEcho Studioの方が上です。
Echo Studioより2000円ほど安い、Boseのポータブルスピーカー「Bose SoundLink Mini II」の周波数応答です。
小さな筐体をブルブルに震わせ、壁からの反響音も駆使してBoseらしい低音を感じさせる音質を出そうと努力している設計に、ちょっと感動します。
残念ながらポータブルスピーカーとしては優秀な部類にとどまり、5つのスピーカーユニットを搭載するEcho Studioが相手だと話にならないです。
オーディオ出力の遅延をテスト
今回は120 fps撮影に対応したデジカメを使って、スタートからマイクに音が入るまでの遅延を測定するシンプルな方法を採用します。
3.5 mmステレオプラグ(AUX)で接続時のオーディオ遅延は、120 fps撮影でおよそ6~7フレームの遅延です。50~58ミリ秒の遅延で、人によっては若干気になる遅延かもしれません。
アニメや映画を見たり、対人要素のないオフラインゲーム(原神やデスストランディングなど)をプレイする分には、まったく気にならない遅延でした。
音ゲーをプレイする場合はゲーム側でタイミングを調整すれば、音ズレを解消できるはずです。
無音状態(無信号の状態)から再生したときの遅延は、120 fps撮影で96フレームでした。800ミリ秒、つまり0.8秒の遅延です。
Echo Studioが発売されたころの口コミを見る限り、無信号から音出しすると3~4秒も遅延(= 音楽の出だし3~4秒がカットされる)する症状があったらしいですが、2023年版だと解消されているように見えます。
試しに30分ほど無信号のまま放置してから音出しすると、やはり96フレームの遅延で出だしのカットは0.8秒で済んでいます。
Amazon Echo Studioを聴いた感想
Amazon Echo Studioの視聴環境 | |
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再生ソース | 自作パソコン (Amazon Music Unlimited) |
DAC | iFi Audio Zen Air DAC |
接続 | 3.5 mmステレオミニプラグ |
スピーカー | Echo Studio(2台) |
自作パソコン(Amazon Music Unlimited)から、USB DACを経由してEcho Studioにアナログ接続してステレオ再生します。
なお、ここからの解説は基本的に「感想」で、主観的な評価がたぶんに含まれるのであくまでも参考程度に見てください。
参考までに、筆者がふだん音楽やBGMを再生するために使っているPCオーディオ環境を以下にまとめておきます。
筆者やかもちのPCオーディオ環境 | |
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再生ソース | 自作パソコン (Amazon Music UnlimtiedやFoobar 2000) |
DAC | 逢瀬オーディオ AK4499カスタムDAC |
アンプ | Teac AP-505 (Ncoreアンプ搭載) |
スピーカー | Yamaha NS-1000M |
ケーブル | Van Den Hul The D-352 Hybrid |
30 cmウーファーを搭載する3-way密閉型スピーカー「NS-1000M」と、Ncoreモジュール搭載でダンピングファクターが300を超える高出力D級アンプ「Teac AP-505」を組み合わせて、ドッと出てパッと止まる締りの効いたタイトな低音を実現します。
USB DACは逢瀬オーディオの特注生産品「AK4499カスタムDAC」を使っています。旭化成の最上位モデルAK4499を1chにつき1個搭載するぜいたくな設計を採用するハイエンドDACです。解像度の高い精緻な表現力と低音域の駆動力が好みです。
高音域:歌声が響きますが解像度は不足
- Death Stranding(CHVRCHES)
ゲーム「Death Stranding」のエンディング曲 - トライアングラー(坂本真綾)
アニメ「マクロスF」のオープニング曲 - Apparition Re-Mix(SoundTeMP)
MMORPG「テイルズウィーバー」勇者の墓BGM
筐体の揺れに由来するボワつきが感じられ、Death Stranding特有の透明感を表現するには解像度が不足しています。低音域は意外と出ているため空気感はよし。
トライアングラーはかなり良いです。のびのびと歌声が高く伸び、Tannoy Reveal 402ほどこもった感じもなく、普通に聞きやすいです。
Apparition Re-Mixでは、音量を盛らないと音にカーテンがかかる傾向が感じられます。高音域の沈み込みがおそらく原因です。低域から高音域まで入っている音源を再生する場合は音量を大きめにすると良いでしょう。
全体的な評価としては、解像度と透明感はAudioengine A2+に劣っています。一方、Echo Studioは低域が豊富に出るおかげで全体的にバランスがよく、空気感の表現もよくできています。
中音域:フワッと包まれるような音質が意外と
- 烈火の如く(Yu-Peng Chen)
MMORPG「原神」璃月の戦闘曲 - あのバンド(結束バンド)
ぼっち・ざ・ろっく第8話 ぼっち覚醒ライブ曲 - 残酷な天使のテーゼ(高橋洋子)
新世紀エヴァンゲリオンOP曲(高橋洋子シングル盤)
原神サントラの名曲「烈火の如く」はなぜかイマイチパッとしない印象です。NS-1000Mと聴き比べして原因を探ると、個人的にEcho Studioの解像度が悪いようです。複数の楽器が入り乱れる部分で顕著です。
逆に「残酷な天使のテーゼ」はズーンと沈むようなギター音の再現度や、ドコドコドンッといった打楽器の乾いた音を再現していて、非常に好印象でした。定位も良好です(※合うように何度か調整しているから当たり前ではある)。
「あのバンド」も悪くないです。どうやらEcho Studioとギターやドラムとの相性が良いのかもしれません。定位の再現度もNS-1000Mほどではないものの、おおむね良好だと感じます。
ただ、先の2曲と比較してセットアップのわずかな差で定位がズレやすいです。何度か調整して合わせていますが、面倒だと感じたらAlexaアプリやAmazon Musicアプリ経由で音出ししたほうが確実です。
低音域:サブウーファー不要な低音です
- Your Voice So… (PSYQUI)
低音域がさらにブーストされたM-Project Remix版より - Teahouse(Juno Reactor)
マトリックスでネオとセラフが茶屋でカンフーをするシーン - FACE OFF(やまだ豊)
キングダム・オリジナル・サウンドトラックより
低音域のテスト音源は以上3曲です。
人間の可聴域スレスレの20 Hzまで収録された、真の低音を出せる音源を選びました。低音域を出せるスピーカーの性能差が顕著に分かりやすい3曲です。
結論から、Echo Studioは30 Hzくらいまでガッツリ低音を鳴らせています。小型スピーカーだと無理な領域をEcho Studioはあっさりと鳴らしてしまい、驚愕の音響設計だなと驚きました。
床からの反響音と筐体の揺れを駆使して低音域を大きく補強しているせいで、ボワつきの多いゆるゆるとした低音ですが、サブウーファーが不要なレベルの低音です。
Boseの小型スピーカーが出す低音を「低音だと思って聴いている」大多数の人からすると、Echo Studioが叩き出す30 Hz台の低音はおそらく未知の領域でしょう。
サブウーファーを必要としない低音域を、2.5~3万円の価格で提供するEcho Studioはやや衝撃的です。
まとめ:性能と価格的に「赤字」スピーカーかも
「Amazon Echo Studio」の微妙なとこ
- セットアップにWi-Fiとアプリが必須
- アナログ接続でステレオ再生は
別途DACが必要です - 音声認識の精度がやや悪い
- 低音域がしっかり出るため隣人に注意
- ややボワついた低音域(好みによる)
- 空間オーディオ対応の楽曲が少ない
- Bluetoothの遅延あり
- アナログ接続もわずかに遅延
「Amazon Echo Studio」の良いところ
- Alexa対応ハードウェア
- すぐに使えるアクティブスピーカー
- PS5より小さいコンパクトな設計
- 自動キャリブレーション対応
- 空間オーディオ(Dolby Atmosなど)対応
- 2台で連携してステレオ再生も可能
- ウーファーいらずの低音性能(30 Hz~)
- アプリでイコライザー(EQ)調整
- 臨場感のある包まれるような音質
- 最大出力330 Wで大音量(爆音)もOK
- 有線・無線接続どちらも対応
- カラーリングは2色(白・黒)
- コストパフォーマンスがいい
Echo Studioは期待以上の音質です。
Wi-Fi接続しないとセットアップができない、音声認識がイマイチで再生したい曲がズレるなど。弱点もあるものの、1台あたり2.5~3万円の価格を考えると、コストパフォーマンスの良い音質だと感じます。
上下にブレが激しい周波数応答ですが、基本的にフラットな特性になるよう自動キャリブレーションが施され、普通のスピーカーよりセットアップしやすい点もメリット。
特に、低音域で非常に不利な小型な筐体なのに、30 Hzあたりからズンズン低音を出せる設計がすごいです。2台組み合わせたステレオ連携時だとさらに低音域が補強され、サブウーファー不要の臨場感ある音質に仕上がります。
- コスパよく高音質なPCスピーカーがほしい
- 音のいいAlexaハードがほしい
- Amazonのサブスクを楽しみたい
音のいいAlexaハードがほしい人はもちろん、コストパフォーマンスの良い高音質なPCスピーカーを探している人にとっても、Echo Studioが魅力的なスピーカーです。
なお、完全に余談になりますがEcho Studioはおそらく赤字採算のハードかもしれないです。
Alexaを動かすためのSoCやDRAM、6 ch対応のDACと330 W出力のデジタルアンプ、全部で5つのスピーカーユニットを搭載しながら1台2.5~3万円はいいスペックです。
SonyのPlayStationと同じく、ハード本体ではなくソフトやサービスで回収を見込む製品でしょう。Echo Studioの場合は、やはりサブスク系(Amazon Music UnlimitedやAudible)の加入を見込んで、安く売っているのだと思います。
以上「Echo Studio(2台)レビュー:AUX接続でPCスピーカーとして使ってみた【測定あり】」でした。
Echo StudioをAUX接続でステレオ再生したい人へ
RCA端子が2つ付いているUSB DACなら、何を使っても大丈夫です。モノによって音質や音量に差がありますが、Echo StudioをAUX接続でステレオ再生できます。
左右チャンネルに分かれた2つのRCA端子と、音量を調整できるボリュームノブがついた格安USB DACです。お値段わずか3700円ほど。搭載DACチップこそ不明ですが、十分に目的を果たしてくれるスペックです。
ESS社のエントリーグレードDACを搭載した、約4000円で買える格安USB DACです。左右チャンネルに分かれた2つのRCA端子があります。ハイレゾ対応は最大24 bit / 96 kHzです。
もう少し音質にこだわりたい方には、旭化成のエントリーグレードDACチップAK4493Sを搭載した、Topping DX1が候補です。
左右チャンネルに分かれた2つのRCA端子と、音量を調整できるボリュームノブが付いています。Toppingはとにかく性能に特化した製品づくりですので、比較的ハズレづらい・・・はずです。
USB DAC(RCA端子)とEcho Studio(AUX)をつなぐケーブルは、3.5 mmステレオミニプラグからRCAに変換するモノラルケーブルをおすすめします。
元オーディオマニアとして大変興味深い記事でしたので、そちらの観点からお邪魔させて頂きます。
オーディオ製品は職人的な手工業で作られるものと、大量生産的な機械工業で作られるものが真っ二つみたいなところがあります。価格が上がれば上がるほど、大量生産では買えない「作り手の個性」を買うようなところがありますね。
逆に、個性なんて付加価値が求められていない低価格帯であれば、いかに大規模生産でコストダウンを図れるか(正確には、他社と同じ販売価格でありながら他社以上の部品を投入できるか)が最大の争点になるように思います。グレードが下がれば下がるほど、設計よりも物量が効いてくるんですよね。
その意味では、世界規模の販売網をもち、桁違いのスケールメリットを誇るメーカーが圧倒的に強いです。これまでだとB&WとかJBLとかBOSEとか。その世界にいよいよAmazonが本格参入してきたんだなあって印象を受けました。こりゃ、従来のメーカーではまず勝てません。
そのことを顕著に感じられるのが、先端技術を存分に駆使した多機能性、330WものハイパワーD級アンプ、サイズと価格からは出し得ないはずの低域でしょうか。スペックだけ見れば断トツですもんね。びっくりしました。
じゃあ欲しいかと問われると、別に欲しくはならないのですけど。オーディオの世界では、潔く切り捨てて見なかったことにする方が幸せになれることも、多々あります。特に低域はその類。まあ、Amazonは別にオーディオの世界に食い込もうとしているのではないと思いますが(主様のご指摘通りサービス等での回収を見込んだビジネスモデルだと思います)、競合にしてみれば黒船来襲くらいのインパクトがあったのでは。レビューを拝見した限りですが、このサイズでの低域の在り方に一石を投じたかもしれない商品だと思いました。
Live stream end screen design
スピーカーなんて聴く人の好みで評価はいくらでも変わるから難しいところ
Cirrus Logic ってまだあったんだ…PC98のビデオチップもこの会社のチップが乗ってたなぁ…
PCからステレオで再生する方法がわかりやすくて助かりました。
PCのalexaアプリからキャストできれば最高なんですが、ひとまず有線でステレオ化できました。
アップデート対応がくることをこころまちにしてます。
studioの有線接続に興味あり本文読ませてもらいました。
配線等買おうかと思ってたのですが何となく下記を試したらやりたいことできてしまったので報告。
Echo CubeにPCをHDMI接続しEchoCubeからモニタに出力。
studio*2+Echosubをcubeシアター設定する。
cubeをHDMIに切り替えで
youtube再生でもステレオとサブウーハー再生が可能でした。
遅延等は不明ですが動画やアニメ、RPGなどなら十分使いものになりそうです。
このスピーカーに音質求めてる人なんかいないだろ