セールで定期的に安くなる売れ筋4Kモニター「BenQ EW2880U」を自腹で買いました。
4万円台で買える4Kゲーミングモニターの中では珍しく、リモコンや高音質なスピーカーが付いている機能性に特化したモデルですが、果たして実際の性能はどうなのか。詳しくレビューします。
(公開:2023/1/7 | 更新:2023/1/7)
「BenQ EW2880U」の仕様とスペック
「EW2880U」は、BenQが販売するコンテンツ消費向けに特化した4Kゲーミングモニターです。
28インチの広色域IPSパネル(DCI P3を90%カバー)を搭載し、最大60 Hzのリフレッシュレートに対応・・・、だけなら他メーカーの4Kモニターで間に合っています。
たとえばDELL S2722QCや、HP U28 4K HDR(レビュー)などが4万円台で買える魅力的な4Kモニターです。
ではEW2880Uの魅力的なスペック差は何かというと、BenQらしい付加価値の付け方です。
明るさセンサーを使って周囲の明るさと色温度を検知し、自動的に画面の明るさと色温度を調整する「B.I.+(Brightness Intelligence Plus)」や、OSD設定がかんたんにできる「リモコン」。
最大60 WのUSB PD(USB給電)とDP Alt Modeによる映像出力に対応する、USB Type-Cコネクタがあり、ケーブル1本で小型パソコンやノートパソコンを動かせたり。
内蔵スピーカーとしては音質の良い「treVolo(3W x2)」スピーカーを搭載するなど。高画質な4Kモニター + 便利な機能やハードウェアスペックがEW2880Uのメリットです。
ただし、Black eQualizerやColor VibranceなどBenQ独自のFPSゲーム機能は非対応で、FPSゲーマーには向いていない仕様です。
BenQ EW2880Uを開封レビュー
開封と付属品のチェック
外箱をプチプチで梱包した厳重なパッケージで到着。たぶん、パソコン工房Web通販の対応です。Amazonで買うとおそらくプチプチはつかないです。
パッケージサイズは奥行き21 cm、高さ50 cm、幅89 cmの合計160 cmでした。
開封しづらい中身を引っ張り出す方式です。2段式の梱包材で、1段目に付属品、2段目にパネル本体とモニターアームが入っています。
付属品を収納する型抜きされた分厚い発泡スチロール梱包や、パネル本体を保護するポリ袋など、かなり厳重な梱包状況で安心です。
付属品は必要十分な内容です。
- USB Type-Cケーブル
- HDMI 2.0ケーブル
- 電源ケーブル
- リモコン
- 保証書(説明書)
映像出力に使えるHDMI 2.0、USB Type-Cケーブルが付属します。USB Type-Cケーブルは最大60 WのUSB給電や、DP-Altモードによる映像出力(最大4K 60 Hz)に対応。
OSD設定や入力切替が手元でポチポチとするだけで終わる「リモコン」が付属します。めちゃくちゃ便利で、EW2880Uが人気になってる理由のひとつです。
組み立てはシンプル
BenQ EW2880Uの組み立ては他のゲーミングモニターと同じく、シンプルで簡単なドッキング方式です。
モニター本体にスタンドを挿し込み、
スタンドを取り付けて土台のネジを固定します。ネジに指で回せるフックが付いているので、プラスドライバーは不要です。
BenQ EW2880Uの組み立てが完了。ツールレス(道具不要)なデザインのおかげで、組み立ては3分くらいで終わります。いつもどおり簡単です。
デザインと外観(写真)
クリックすると拡大します | |
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マットブラック塗装のプラスチック外装と、ゲーミングモニターでは珍しいブロンズカラーをアクセントに使ったデザインが特徴的。シックで落ち着いた雰囲気で設置場所を選ばないです。
別売りのモニターアームを固定するのに使う「VESAマウント」は、スタンダードな100 x 100 mm規格です。
重量は約5.3 kgですので、エルゴトロンOEMのAmazonベーシックモニターアームで軽々と持ち上げられます。
パネルの表面加工は、目が疲れにくい「ノングレア」を採用。
ベゼル幅は8 mmと28インチとしてはスタンダードなベゼル幅です。モニターを横に並べるマルチディスプレイ環境で、問題なく使えるベゼル幅です。
インターフェイス類
モニター本体の裏側から、各種インターフェイスにアクセスできます。
インターフェイスは全部で5個。
- USB Type-C
(最大60 WのUSB給電に対応) - HDMI 2.0(4K@60 Hz)
- HDMI 2.0(4K@60 Hz)
- Display Port 1.4(4K@60 Hz)
- ヘッドホン端子(3.5 mm)
映像出力端子はHDMI 2.0(4K@60 Hz)が2つ、Display Port 1.4(4K@60 Hz)が1つです。
USB Type-Cポートが対応しているUSB PD(Power Delivery)を確認すると、4つのプロファイルに対応しているようです。
- 5.0 V @ 3.0A(15 W)
- 9.0 V @ 3.0 A(27 W)
- 15.0 V @ 3.0 A(45 W)
- 20.0 V @ 3.0 A(60 W)
最大20.0 V @ 3.0 Aで、60 WのUSB給電に対応可能です。
画面右側の下部にボタンが配置されています。
- カスタムキー#1
- カスタムキー#2
- 5方向ボタン
- 電源ボタン
以上です。
5方向ボタンは直感的に操作できて画面設定がラクですが、EW2880Uには便利な「リモコン」が付属するため、ボタンの出番が皆無です。
エルゴノミクスをチェック
リフト(昇降機能)は10 cmです。下の方までグイグイと下げられるので、目がラクな見下ろす角度に調整できます。
左右スイベル(首振り)は15°対応で、左右あわせて30°の首振りが可能です。
前後チルト(角度調整)は、上方向へ15°、下方向へ-5°まで対応。
- チルト(前後):+15 ~ -15°
- リフト(昇降):120 mm
- スイベル(首振り):左右15°
- ピボット(垂直):-
解像度とリフレッシュレート
HDMIまたはDisplayPortでパソコンに接続すると、3840 x 2160(4K)で最大60 Hzまで対応。
ゲーム機「PS5」では4K@60 Hzを表示できます。HDR表示も対応。ただし、PS5 VRRは対応しません(※対応にはHDMI 2.1が必要)。
BenQ EW2880Uの画質をテスト
BenQ EW2880Uの画質を、専用の機材を使ってくわしくテストします。
色の見え方は個人差が大きいです。だから、ちもろぐのゲーミングモニターレビューでは、ちゃんとした機材で測定して客観的に性能をチェックしてます。
パネルタイプは「IPS」です。
スペクトラムグラフを見ると、青色と赤色がするどく緑色の山が低いです。赤色は途中で凹みが入る形状で、KSF蛍光体を使った広色域IPSパネルによく見られる特徴です。
Innolux製の「AAS IPS」パネルがスペック的に近いですが、確定はできません。
色の正確さとコントラスト比
モニターの性能でかなりの人が気にしているのが「パネルの発色」です。発色の良さは正しくは「色の正確さ」と呼ばれ、規格どおりの色が出ているかどうかを「色差(ΔE)」という単位で表現します。
ΔEが平均値で2.0以下なら「正確」です。
色の正確さ(発色の良さ)※クリックで画像拡大します | |
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グレースケール | カラー |
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コントラスト比 | ガンマ |
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EW2880Uの色は不正確です。BenQのMOBIUZシリーズと同じく、全体的にやや鮮やかさを強調した色設定になっていて、パッと見たときに映像美を感じやすいチューニングです。
しかし、色温度が6160Kで暖色に偏っているため、日本人の目だと尿液晶のように見えるリスクが高いです。ガンマカーブも約2.6とかなりズレており、グレースケールが若干暗めに表示されます。
とりあえず使ってみて「ふつうに映像がキレイだな」と感じるなら、そのままでいいですが・・・「尿液晶っぽいのは好みに合わない」と思ってしまったら以下の設定で調整を試してください。
- モード:ユーザー
- 画面の明るさ:33
- 色温度:ユーザー
- 赤:93
- 緑:92
- 青:96
- 彩度:49
- ガンマ:2.0
上記の手動設定で、sRGBプロファイルにおおむね一致する明るさと色精度が出ます。
画面の明るさが人間の目に優しいとされる120 cd/m²前後に一致し、色温度がニュートラルな6500K前後に修正されます。
グレーの正確さはΔE = 0.78でほぼ正確、カラーの正確さはΔE = 2.23で標準設定よりマシに改善されます。そのかわり、鮮やかさも全体的にやや落ち着き、良くも悪くもsRGB準拠のカラーです。
なお、色温度を6500Kほぼぴったりに修正したものの、日本人の網膜は青白い色を「白」と感じやすい傾向があります。上記の設定を試しても白が尿液晶に見える場合は、青色を1~2増やしてください。
(sRGB:ΔE = 3.8 / 色温度:6160K / 輝度:250 cd/m²)
画面の明るさ(輝度)
初期設定のまま、OSDからモニターの明るさを10%ずつズラして画面の明るさ(輝度)を測定しました。
一番暗い状態(0%設定)で「54.3 cd/m2」、最大設定(100%設定)で「298.9 cd/m2」、カタログスペックの最大300 cd/m2(SDR輝度)と同じ明るさが出ています。
設定値20%で目にちょうど良いとされる「120 cd/m2」です。
色域カバー率
色域カバー率 | ||
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規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 100% | 100% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 86.9% | 94.3% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 81.8% | 91.3% |
表示できる色の広さを「色域カバー率」と呼び、ゲーミングモニターの画質をあらわす指標として使われています。
BenQ EW2880Uの色域カバー率は、もっとも一般的な規格「sRGB」で100%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」を94.3%カバーします。
印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は91.3%です。
メーカー公称値のDCI P3:90%を上回る公称値通りの性能です。
パネルの均一性
「均一性」は要するに同じ色を表示したときの「色ムラ」の程度です。
グレー(5%)の均一性は問題なし。パネルの四隅がわずかに明るいですが、実際の使用シーンでまったく目立たないです。
もっと明るいグレー(50%)の均一性も普通です。パネルの四隅に近いほど明るさが下がってしまう典型的な症状「IPSグロー」が出ています。
実際のシーンで気になるほどの色ムラではありません。単一色を表示したときだけ分かりやすいだけで、普通にゲームやアニメを見ている分にはまったく気にならないです。
IPSパネルで視野角は広い
IPSパネルは視野角が広いです。角度がズレても色はあまり変化しません。(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
フリッカーフリーの動作検証
画面の明るさを25%ずつ変更しながら、オシロスコープを使ってフリッカーの有無を測定したグラフです。
グラフを見ての通り、画面の明るさが横一直線にほとんど変化しません。DC調光を用いた完全なフリッカーフリー動作です。さすがテュフラインランド(TÜV Rheinland)認証です。
BenQ EW2880Uの応答速度をテスト
↑こちらの記事で紹介している方法で、BenQ EW2880Uの「応答速度」を測定します。
ゲーミングモニターの公称値はまったくアテにならないので、測定機材できちんと測らないと本当の応答速度は分かりません。
60 Hz時の応答速度
EW2880Uの応答速度60 Hz / オーバードライブ:Fast | |
---|---|
平均値 | 7.78 ms |
最速値 | 4.12 ms |
最遅値 | 11.32 ms |
明るく | 8.51 ms |
暗く | 7.04 ms |
応答速度 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 9.08 ms | 8.99 ms | 11.32 ms | 10.54 ms | 7.05 ms |
50 | 4.22 ms | – | 7.55 ms | 10.68 ms | 10.04 ms | 6.52 ms |
100 | 4.12 ms | 5.56 ms | – | 9.33 ms | 9.41 ms | 6.49 ms |
150 | 4.42 ms | 6.87 ms | 7.83 ms | – | 8.59 ms | 6.08 ms |
200 | 5.51 ms | 7.45 ms | 8.91 ms | 8.90 ms | – | 5.95 ms |
255 | 6.37 ms | 7.87 ms | 8.84 ms | 9.70 ms | 9.08 ms | – |
エラー率 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
50 | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
100 | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
150 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % |
200 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % |
255 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – |
BenQ EW2880Uの60 Hz時の応答速度は平均「7.8ミリ秒」でした。
UFOのりんかく線はぼんやりとしか見えず、ディティールも良くないです。30パターン中6パターンで5ミリ秒前後を出せているため、公称スペックの5ミリ秒は一応正しいです。
FPSゲーム用途に向かないです。オフィスワークやウェブ閲覧、動画編集やイラスト制作、MMORPGやソロプレイゲームなら普通に使えます。
応答速度の比較
ちもろぐで検証した他のゲーミングモニターとの比較をまとめます。比較できるデータはかなり増えていて、BenQ EW2880Uの応答速度がどれくらいの位置づけなのかが、客観的に分かりやすいです。
60~75 Hzのゲーミングモニターで比較しました。
BenQ EW2880Uが記録した平均7.78ミリ秒は、60 HzのIPSパネルとして意外にもトップクラスです。EW2880Uより速いパネルはTNとOLED(有機EL)で、IPSパネルだと原理的に勝てません。
絶対値で見ると8ミリ秒近い応答速度は決して速いといえないものの、他と比較すると相対的に速い方だと分かりました。
入力遅延をチェック
「Raspberry Pi 4」を使ったカスタム入力遅延テスターを使って、BenQ EW2880Uの入力遅延をテストします。
60 Hz時の入力遅延は10.4ミリ秒で、目標の16ミリ秒を下回ります。
他のゲーミングモニターと比較します。ほとんどのゲーミングモニターは16 ミリ秒を下回ります。16 ミリ秒を超えるモニターはまれです。
BenQ EW2880Uの60 Hz時の入力遅延は10.4ミリ秒でまったく問題なし。
BenQ EW2880Uの機能性をチェック
OSD(On Screen Display)の内容
付属のリモコンを使ってサクサクとモニターの設定(On Screen Display)を変更できます。順番に紹介します。
BenQならではの分かりやすいフォルダ階層型のOSDメニューです。右ボタンで設定の奥に進み、設定を確定して、左ボタンで戻っていく直感的に扱いやすい挙動です。
「カラーモード」の違いをチェック
- 標準(初期設定)
- ブルーライト軽減
- レーシング
- RPG
- FPS
- Rec.709
- M-book
- Color Weakness
カラーモードの設定から全部で8個あるプロファイルを切替可能です。初期設定はやや黄色みがあり、色温度から赤と緑を少し下げないと色味が合わないと思います。
「Rec.709」モードはいわゆるsRGB向けのプロファイルですが、色精度は特に変わらないし、色域も飽和したままですのでクリエイターが期待するsRGBモードとは別物です。
「M-book」がクッキリとした色彩で、黄色っぽさも消えて日本人好みの色合いだと思いますが、やはり色精度はほとんど改善されないし色温度が8400Kで青すぎます。
初期設定の色温度を少し調整して使うか、筆者が作成したカスタム設定※を使うのが無難です。
- モード:ユーザー
- 画面の明るさ:33
- 色温度:ユーザー
- 赤:93
- 緑:92
- 青:96
- 彩度:49
- ガンマ:2.0
※モニターの個体差によって、カスタム設定が必ずぴったり一致する保証はありません。
「ブルーライト軽減」を試してみる
BenQのブルーライト軽減は比較的、尿液晶っぽくない色が特徴ですが、やはり色温度が確実に暖色(=6500K未満)へ偏っていくのは避けられません。
ウェブサーフィンモードまでなら気休め程度に使ってもいいレベルで、オフィスモード以降は暖色に偏りすぎて実用性に乏しいです。
そもそもブルーライトが目に悪い事実を示す医学的根拠が一切無いので、気休め以上の効果を期待するのは禁物です。
自動調光「B.I.+」を試してみる
OSD設定 > Eye Care > B.I.+ > オンにして、光量メーターもオンにすると、明るさセンサーを使った自動調光が有効化されます。
明るさセンサーのすぐ目の前に、LEDライティングバーを置いて自動調光の挙動を実験した比較写真です。
LEDライトの明るさを最大にすると、モニターの明るさも自動的に引き上げられ、逆にLEDライトを無点灯にするとモニター側の明るさも自動的に下がります。
周囲の明るさに適応して、自動的に画面の明るさを上げ下げしている様子が分かります。写真では分かりづらいですが、周囲の色温度に対する自動適応も対応しています。
BenQ EW2880Uの「HDR」をテスト
実際にHDRコンテンツを見てみよう
「Morocco 8K HDR」と、4K HDR対応の「天気の子(4K Ultra BD)」にて、BenQ EW2880UのHDR映像を見てみます。
残念ながら、EW2880UのHDR表示性能は「HDRコンテンツを表示しているだけ」のレベルで、SDRモードと比較して目立った性能差がありません。
画面の輝度がまったく足りていないです。ローカル調光を使っていないため、黒色もが締まらず灰色っぽいグレーで、ダイナミックレンジも普通のSDRモードと同じです。
EW2880UのHDR性能に期待しない方がいいでしょう。EW2880UはHDR10信号を認識して、HDRコンテンツを表示できるだけにとどまります。
ちゃんとしたHDR映像を見たい方は、Display HDR 1000認証を取得している「INNOCN 27M2V」を強くおすすめします。筆者が現在ゲーム用とHDR用に使っているゲーミングモニターです。
10万円以内でまともなHDRゲーミングモニターは「DELL G3223Q」です。最新版のファームウェアでHDR時の色味が調整され、万人向けにおすすめできるHDRゲーミングモニターです。
HDR性能の測定と比較
BenQ EW2880UのHDR性能i1 Pro 2で測定した結果 | |
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全画面輝度 | 331.0 cd/m2 |
ピーク輝度 | 331.1 cd/m2 |
黒色輝度 | 0.28 cd/m2 |
コントラスト比 | 1182.5 : 1 |
DCI P3色域 | 94.3 % |
色深度 | 10 bit(60 Hz)DP 1.4 |
「優れたHDR性能」を初心者さんに分かりやすく説明すると
- 明るさ:明るいほど良い(超ハイエンド機なら1000 cd/m2超)
- 黒色:無点灯に近いほど良い(0.1 cd/m2以下なら実用上は十分)
- コントラスト比:高いほど良い(5000 : 1以上で実用上は十分)
- 広色域:DCI P3が広いほど良い(DCI P3なら90%以上は欲しい)
めちゃくちゃ明るくて、暗い部分はちゃんと真っ暗。さらに表示できる色も広い。これらの条件を満たしているなら「高性能なHDR」で、高性能なHDR性能を持つモニターは基本的にDisplay HDR規格を取得しています。
HDR 600以上なら、まずハズレなし。HDR 1000やHDR 1400を取得しているモニターは超ハイエンド機です。
なお、有機ELパネルは特性上、HDR性能を伸ばせないので注意してください(※有機ELは画面を明るくするほどパネルの故障率が上昇するため、画面が明るくなりすぎないように制御されています)。
BenQ EW2880UのHDR性能をチェックしました。ピーク輝度ですら、わずか331 cd/m²しか出ていないです。
HDR認証で一番グレードが低いDisplay HDR 400認証に必要な400 cd/m²すら届かない、暗いHDR画面です。
HDRモードで画面全体に白色を表示したときの明るさを、他のモニターと比較したグラフです。
並の4Kモニターと比較しても、EW2880Uの明るさは劣っています。
HDR時のコントラスト比(理論値)も低いです。
「EOTF」グラフは全体的に明るめに出力され、途中から輝度が不足して追従できません。HDR時の色精度(DCI P3)もズレてます。最大ΔE = 17、平均ΔE = 12.8で大きくズレてます。
まとめ:4万円台で機能性に秀でた4Kモニター
「BenQ EW2880U」の微妙なとこ
- 28インチで4Kは若干狭い
- パネルの均一性は普通
- 応答速度が遅い
- ゲーマー向け機能が少ない
- おまけレベルのHDRモード
- やや黄色っぽい初期設定(ΔEは3以上)
- sRGBモードがあまり機能しない
「BenQ EW2880U」の良いところ
- ドット感の少ないきめ細やかな画質
- 4K@60 Hzに対応
- 広色域IPSパネルで色が広い(DCI P3で94%)
- 入力遅延が少ない
- 自動調光「B.I.+」対応
- USB Type-Cで最大60 W給電
- 充実のエルゴノミクス機能
- 平均以上の内蔵スピーカー
- 便利なリモコン
- コストパフォーマンスが高い
- 3年保証
4万円台の4Kモニターでもっとも機能性に力が入ったモデルです。
EIZOやInnocnなど、ごく一部のメーカーしか対応していない照度センサーを使った自動調光機能「B.I.+」は、長時間の使用で目にやさしいモニターを使いたい場合に重宝します。
ノートパソコンを充電しながら使うのに便利な最大60 WのUSB Type-Cポートや、平均以上の音質を出せる「treVolo」スピーカー、音量調整や入力切替がパパッと終わる「リモコン」など。
とにかく利便性にこだわったハードウェア機能がEW2880Uの魅力です。
画質もそこそこに良い方です。4Kモニターの中では平均的なレベルですが、DCI P3を約94%カバーしているし、色温度とガンマのズレもかんたんに修正できます。
ただし、HDR対応だけは評価できないです。ピーク輝度がわずか330 cd/m²程度です。必要最低限(HDR 400相当)の水準にすら達しておらず、低価格なりに手を抜いている部分だと感じます。
NETFLIXやPrime Videoなどコンテンツ視聴や、オフィス作業や動画編集、競技性を必要としないMMORPGやソロプレイゲームを楽しむのに(低価格帯で)おすすめしやすい4Kモニターです。
なお、イラストレーターが使うにはsRGBモードの不正確さが足を引っ張る可能性があるので注意。
カラーマネジメント機能に対応しているPhotoshopやCLIP STUDIO PAINTならたぶん大丈夫ですが、非対応のペイントツールSAIだと色がズレて表示されます。
以上「BenQ EW2880Uレビュー:4万円台で機能性が特にすごい4Kモニター」でした。
BenQ EW2880Uの代替案
EW2880Uのような便利な機能性は必要ないから、同じ価格帯でもっと精度の高い色や明るい画面を必要とする方は「HP U28 4K HDR」が代替案です。
EW2880Uよりはるかに高画質で、HDR性能も優れた4Kモニターなら「INNOCN 27M2U」が適任です。定価が約7万円ですが、セール時に5.7~5.9万円くらいで買えればコスパよし。
4KでおすすめなゲーミングPC【解説】
他にもある4Kゲーミングモニターのレビュー記事
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
LGから出る4k 240fps 27インチのOLED 27GR95QE-B必見です
Macユーザー的にはRetinaに慣れすぎて4K・27インチくらいのdpiじゃないと違和感が大きいです。(もちろん100%表示だと小さすぎるのでWQHD程度に拡大しますが、macOSはスケーリングが優秀なので4K解像度のメリットは大きい)
また、クラムシェルモードはケーブル1本で使えてこそだと思うのでUSB給電は個人的に必須です。
でもそれらをクリアするには無駄にハイエンドなモデルしかないと思っていたのですが、今回の機種はまさかの4万円台で必要十分な機能を備えていますね〜!
ゲームは全くしませんし、まさしく自分にピッタリです。また安くなったタイミングでぜひ購入しようと思います。
あと、いつも分かりやすい記事を書いていただきありがとうございます。1点だけ、インターフェース類の説明の番号と画像の番号がずれているのでご報告しておきます。
どうせ拡大するなら4Kとか不要だろって思ってたけどなるほどね〜
しかしまあスマホにしろタブレットにしろ、HiDPIに慣れすぎてるってのも難儀やなあ
4Kゲーミング環境のサブモニタにちょうど良さそうな機種でいいですね。
インターフェイス類の説明ですが
1&2 -hdmi 3-DP 4-usb-cでないでしょうか?
2月4日までにやっていたAmazonのセールで購入しました。
65,456円から46,800円に値下げされており、そこからさらに12000円オフのクーポンまで配られていて、たったの34,800円で購入することができました。
HDRの性能が低すぎることが個人的には一番ネックではありますが、ここまで安くなるとさすがにコスパが高すぎるので満足しています。
ある程度使ってみて問題なさそうならもう一台買っても良いかなと考えています。