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WD Black SN770レビュー:簡素なハードから想像もつかない不気味な性能

SSD製品のオーバーテクノロジーといえば「Intel Optane SSD」を挙げられますが、今回レビューする「WD_BLACK SN770」も同価格帯を圧倒する謎の高性能でオーバーテクノロジー風味が漂うSSDです。

DRAMを搭載しない低価格なSSDながら、DRAMを搭載するSSDを圧倒する性能をじっくりと検証します。

(公開:2023/1/9 | 更新:2023/1/9

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WD Black SN770のスペックと仕様

Western Digital / NAND : KIOXIA製 112層 3D TLC NAND / 性能 : 最大5150 MB秒 / 容量 : 1TB / 耐久性 : 600 TBW / 保証 : 5年
WD_Black SN770
スペックをざっくりと解説
容量500 GB1000 GB2000 GB
インターフェイスPCIe 4.0 x4(NVMe 1.4)
フォームファクタM.2 2280(片面実装)
コントローラWD NVMe Controller(SanDisk)
NANDKIOXIA 112層 3D TLC NAND
DRAMなし
SLCキャッシュ非公開
読込速度
シーケンシャル
5000 MB/s5150 MB/s
書込速度(SLC)
シーケンシャル
4000 MB/s4900 MB/s4850 MB/s
書込速度(TLC)
シーケンシャル
非公開
読込速度
4KBランダムアクセス
460K IOPS740K IOPS650K IOPS
書込速度
4KBランダムアクセス
800K IOPS
消費電力(最大)非公開
消費電力(アイドル)非公開
TBW
書き込み耐性
300 TB600 TB1200 TB
MTBF
平均故障間隔
175万時間
保証5年
MSRP$ 49$ 89$ 159
参考価格
※2023/01時点
8480 円11980 円22980 円
GB単価17.0 円12.0 円11.5 円

「WD_BLACK SN770」は、Western Digitalが販売するDRAMレスNVMe SSDです。かつて販売されていたSN750やSN750 SEの後継モデルにあたるSSDです。

SSDの性能を安定させる効果があるDRAMキャッシュを搭載せず、メインメモリのごく一部(最大64 MB)を拝借してキャッシュに使うHMB(ホストメモリバッファ)方式のNVMe SSDです。

WD Blue SN570やSamsung 980(無印)やCrucial P3 Plusなど、HMB方式のNVMe SSDが増えていますが、WD Black SN770はその中でも際立って性能に特化しています。

Western Digitalが買収したSanDisk由来のSSDコントローラを搭載し、容量密度が高いキオクシア(旧東芝メモリ)製の112層 3D TLC NANDと組み合わせています。

Western DigitalはSanDisk由来のコントローラについて、詳しい情報を一切公開していないため、部品構成を見る限り「SN570」とほとんど同じです。

同じ部品構成にもかかわらず、SN770はSN570より25万時間も長い175万時間のMTBFと、約40%も速い最大5000 MB/s超えのシーケンシャル性能をアピールします。

SSD500 GB1 TB2 TB
WD_BLACK SN770300 TBW600 TBW1200 TBW
KIOXIA EXCERIA PLUS G2
KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー
200 TBW400 TBW800 TBW
KIOXIA EXCERIA G2
KIOXIA EXCERIA G2:レビュー
200 TBW400 TBW800 TBW
WD Blue SN570
WD Blue SN570 NVMe:レビュー
300 TBW600 TBW
Crucial MX500
FireCuda 530:レビュー
180 TBW360 TBW700 TBW
FireCuda 530
FireCuda 530:レビュー
640 TBW1275 TBW2550 TBW
CFD PG4VNZ350 TBW700 TBW1400 TBW
Plextor M10PGN320 TBW640 TBW1280 TBW
Crucial P5 Plus300 TBW600 TBW1200 TBW
Samsung 980 PRO
980 PRO:レビュー
300 TBW600 TBW1200 TBW
WD Black SN850
SN850:レビュー
300 TBW600 TBW1200 TBW

耐久性能評価(TBW)も最近のNVMe SSDと同等レベルです。

1 TBモデルで600 TBWをアピールします。ゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。

600 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると12000日で、耐久値を使い切るのに約33年もかかる計算に。おそらくNANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラが経年劣化で故障する確率のほうが高いです。

ライバル製品と価格設定の比較

WD_BLACK SN770の価格を比較

NAND製造メーカーの純正モデルで、価格の近いNVMe SSD(HMB方式)とSATA SSDの価格を比較してみた。

2023年1月時点、WD_BLACK SN770は1 TB版が約12000円、2 TB版が約26000円でHMB方式としては価格が高いです。

同じHMB方式のSN570は約1万円、Samsung 980は約1.1万円で買えるため、約1.2万円のWD Black SN770は競合製品を上回る価格差以上の性能を要求されます。

特に1TBモデルが8000~9000円台で買えてしまうEXCERIA G2との戦いは要注目です。

やかもち
EXCERIA G2比で約30%の価格差を覆せるのかどうか・・・、見てみましょう。

WD Black SN770を開封レビュー

パッケージデザイン & 開封

WD_BLACK SN770をレビュー(パッケージデザイン)
Western Digital / NAND : KIOXIA製 112層 3D TLC NAND / 性能 : 最大5150 MB秒 / 容量 : 1TB / 耐久性 : 600 TBW / 保証 : 5年

今回レビューで使うサンプルはTsukumo通販(販売ページはこちら)より、約12000円にて1 TBモデルを自腹で購入しました。

WD_BLACK SN770をレビュー(パッケージデザイン)

マットブラックな背景に「WD_BLACK」のフォントが入った、クールなパッケージデザイン。表面に国内正規品5年保証のシールが貼ってあります。

WD_BLACK SN770をレビュー(付属品など)

説明書(保証書)が同封されています。プラスチック製のケースにSSD本体がすっぽりと収まっています。

基板コンポーネント

WD_BLACK SN770をレビュー(基板コンポーネント)

マットブラック塗装の基板上に、SSDを構成するコンポーネントが2つだけ配置されています。

中央部はただ単にシールが貼ってあるだけで、サイズをスタンダードなM.2 2280規格に合わせるために作られた空間にしか見えないです。

WD_BLACK SN770をレビュー(基板コンポーネント)

反対側は各国の認証ロゴや規制ロゴが記載されているだけで、コンポーネントは何もありません。

WD_BLACK SN770をレビュー(基板コンポーネント)

表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。

WD_BLACK SN770をレビュー(基板コンポーネント)

基板のコンポーネントを目視で確認します。

  • コントローラ:SanDisk
    20-82-10081-A1 2312Z6J26XE CHINA
  • DRAM:なし
  • NAND:SanDisk(KIOXIA 3D TLC NAND)
    001398 1T00 MALAYSIA 2442YCEH41XZ
WD_BLACK SN770をレビュー(基板コンポーネント)

SSDコントローラは「SanDisk」ロゴの入ったWD NVMe Controllerを搭載します。Western Digitalが買収したSanDiskが開発したSSDコントローラで、具体的な仕様は不明です。

WD_BLACK SN770をレビュー(基板コンポーネント)

NANDメモリはKIOXIA製「BiCS FLASH」を搭載。WD Black SN770では、たった1枚のNANDメモリで容量1 TBを実現します。

第5世代BiCS 5メモリ(112層3D TLC NAND)の場合、記憶容量は1024 Gbなので、8枚重ねで合計1 TB(= 8192 Gb)と計算できます。

記憶容量が多いほど少ないNANDメモリで大容量にできますが、並列化して性能を稼ぎづらくなるため、書き込み性能に関しては旧世代のBiCSメモリを使っているSN570やEXCERIA PLUS G2に届かない可能性があります。

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WD Black SN770の性能をベンチマーク

テスト環境を紹介

WD_BLACK SN770をレビュー(テストPCスペック)
テスト環境
「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」
CPURyzen 9 5950X16コア32スレッド
CPUクーラーNZXT X63280 mm簡易水冷クーラー
マザーボードASUS ROG STRIXX570-E GAMING
メモリDDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」
グラフィックボードRTX 3070 8GB
SSDWD_BLACK SN770 1TB
電源ユニット1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」
OSWindows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」
ドライバNVIDIA 471.41
ディスプレイ3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V

980 PROのレビュー以降、SSDをテストするベンチマーク機を更新しました。PCIe 4.0に対応するプラットフォーム「Ryzen 5000」と「AMD X570」をベースに、適当なパーツを組み合わせます。

CPUは16コア32スレッドの「Ryzen 9 5950X」です。16コア32スレッドの圧倒的なCPU性能があれば、最大7000 MB/s超のSSDが相手でもボトルネックになる可能性はほぼ皆無です。

マザーボードはASUS製「ROG STRIX X570-E GAMING」を採用。テスト対象のNVMe SSDをCPU直結レーンのM.2スロット、またはPCIeスロットに挿し込んで各ベンチマークを行います。

SSDの冷却について

SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。

  • マザーボード付属のヒートシンクを装着
  • ケースファンを使ってヒートシンクを冷やす

SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。5分間の発熱テストのみ、ヒートシンクを外してケースファンも使いません。

WD_BLACK SN770をベンチマーク(Crystal Disk Info)
  • インターフェース:NVM Express
  • 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
  • 対応規格:NVM Express 1.4
  • 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache

「WD_BLACK SN770」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題なし。

ただし、規格がNVM Express 1.4です。互換性の問題が生じる可能性は低いですが、古いマザーボードだとSSDを認識しないなど、問題が発生するリスクがあります。

たとえばASRock製の一部B350 / B450マザーボードでは、SN770を認識しない可能性があるとメーカー側から警告文が出ています。

フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。

Crystal Disk Mark 8

「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。

Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します
WD_BLACK SN770をベンチマーク(Crystal Disk Mark 8)WD_BLACK SN770をベンチマーク(Crystal Disk Mark 8)
テストサイズ:1 GiB(MB/s)テストサイズ:64 GiB(MB/s)
WD_BLACK SN770をベンチマーク(Crystal Disk Mark 8)WD_BLACK SN770をベンチマーク(Crystal Disk Mark 8)
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ)テストサイズ:64 GiB(レイテンシ)

読み込み速度が約5230 MB/sで、書き込み速度は約4990 MB/sを記録。読み書きともにメーカー公称値どおりの性能が出ています。

テストサイズを64 GiBまで引き上げても、読み込みと書き込みどちらもおおむねメーカー公称値どおりです。なお、読み込みレイテンシ(4K)は悪化が見られます。

WD_BLACK SN770(Crystal Disk Mark 8で応答時間を比較)

体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。

WD Black SN770は46.82 μsで、ライバルのSamsung 980やEXCERIA G2をあっさりと追い抜かす性能です。価格が2倍近いハイエンド級と肩を並べる応答速度を見せます。

WD_BLACK SN770(Crystal Disk Mark 8で応答時間を比較)

書き込みレイテンシもかなり良好で、WD Blue SN570やSamsung 980をあっさり打ち負かしてしまいました。

ATTO Disk Benchmark

WD_BLACK SN770をベンチマーク(ATTO Disk Benchmark)

ATTO Disk Benchmarkは、512 B~64 MB(合計21パターン)のテストサイズでスループットを測定し、SSDの性能が安定しているかどうかを視覚的に示してくれるベンチマークソフトです。

ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。

WD_BLACK SN770をベンチマーク(ATTO Disk Benchmark)

読み込み速度は5000 MB/s前後でピークに達したあと、安定した性能を維持します。キャッシュに収まる範囲なら、シーケンシャル公称値どおりの性能です。

WD_BLACK SN770をベンチマーク(ATTO Disk Benchmark)

書き込み速度は4700 MB/s前後に達したあと、安定した性能を維持します。キャッシュの範囲内なら、おおむねスペック通りの性能を示しており、特に問題ありません。

注意事項:ATTO Disk Benchmarkのテストは基本的にキャッシュ範囲内に収まる内容ゆえに、上記のテスト結果だけでは本当の性能をまったく判断できないので注意が必要です。

HD Tune Pro

HD Tune Proは有料のSSDベンチマークソフトです。SSDの容量全域に渡ってテストを実行して、SSDの性能変化(SLCキャッシュの有無や、キャッシュが剥がれた後の性能など)を手軽に調べられます。

HD Tune Proの結果※クリックで画像拡大します
WD_BLACK SN770をベンチマーク(HD Tune Pro)
  • 読み込み速度:2054.6 MB/s
  • アクセスタイム:0.078 ms
WD_BLACK SN770をベンチマーク(HD Tune Pro)
  • 書き込み速度:1963.3 MB/s
  • アクセスタイム:0.014 ms
WD_BLACK SN770をベンチマーク(HD Tune Pro)
  • 読み込み速度:4886 MB/s
  • 書き込み速度:3912 MB/s
  • SLCキャッシュ:250 GB~(?)

HD Tune Proで注目するのは「書き込み速度の変化」です。

3枚目のファイルベンチマーク(250 GB分)を見ると、なんと250 GBいっぱい書き込んでも書き込み性能にまったく変化が見られず、平均3900 MB/s前後を叩き出しています。

250 GB以上の巨大なSLCキャッシュを確保しているとも考えられますが、HD Tune Proは割りと対策されている傾向のあるベンチマークです。

HD Tune Proの結果だけではなんとも評価できないため、実運用ベンチマークへ進みましょう。

やかもち
基本的なベンチマークは以上です。次は実戦テストでWD Black SN770の実力を確かめます。

WD Black SN770を実運用で試す

ゲームのロード時間を比較

FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。

WD_BLACK SN770をベンチマーク(FF14のゲームロード時間)

WD Black SN770のロード時間は「7.23 秒」で、ハイエンドNVMe SSDに匹敵する性能です。

DRAMキャッシュを搭載しないHMB方式のSSDとしては、過去最高のロード時間を記録します。

基本的に、ゲームロード時間はランダムアクセス速度(読み込みの応答時間)に比例して早くなる傾向があるため、読み込み応答時間がハイエンド製品並みに速いSN770なら違和感のない結果です。

ファイルコピーの完了時間

Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。

  • ゲームフォルダ(容量62 GB / 76892個)
  • 写真ファイル(容量113 GB / 6000枚)
  • 圧縮データ(容量128 GB / zip形式)

ファイルコピーに使う素材は以上の3つ。ファイルコピーの基準となるストレージは、PCIe 4.0対応かつ書き込み性能が高速なSamsung 980 PRO(1 TB)です。

WD_BLACK SN770をベンチマーク(ファイルコピーに掛かった時間)
WD BLACK SN770をベンチマーク(ファイルコピーに掛かった時間)
WD BLACK SN770をベンチマーク(ファイルコピーに掛かった時間)

書き込み(980 PRO → WD Black SN770)速度はシーケンシャル性能に沿った結果です。

ゲームフォルダ、写真フォルダ、ZipファイルすべてのテストでSN770がSamsung 980やEXCERIA G2を大幅に上回るスピードで書き込みを終えています。

特に写真フォルダとZipファイルの書き込みは凄まじく、平均2.2~2.9 GB/sもの書き込み速度を叩き出します。

WD BLACK SN770をベンチマーク(ファイルコピーに掛かった時間)
WD BLACK SN770をベンチマーク(ファイルコピーに掛かった時間)
WD BLACK SN770をベンチマーク(ファイルコピーに掛かった時間)

次は読み込み(WD Black SN770 → 980 PRO)のコピペ時間です。

ゲームフォルダの読み出しはランダムアクセス速度の割には苦戦気味。写真フォルダとZipファイルの読み出しは猛烈に速く、過去に比較したすべてのSSDで最高の記録です。

やかもち
同価格帯のHMB方式SSDを圧倒するどころか、価格が2倍も高いハイエンドSSDに匹敵するファイルコピー性能を発揮します。ハードウェア仕様から想像もつかない性能です。

Premiere Pro:4K素材プレビュー

動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」で、1秒あたり448 MBの4K動画素材をプレビューします。Premiere Proのプレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。

コマ落ちしたフレーム数はPremiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で3回測定して平均値を出し、動画素材の総フレーム数で割り算してドロップフレーム率を計算します。

WD_BLACK SN770をベンチマーク(Premiere Pro 4Kプレビュー)

4Kプレビューのドロップフレーム率は約15.5%です。

過去レビューしたHMB方式のNVMe SSDをぶっちぎりで圧倒する驚異的な性能です。写真フォルダやZipファイルの読み出しが非常に速い傾向と一致します。

やかもち
3K動画素材(@251 MB/s)以下は、ドロップフレーム率「0%」で問題なし。比較グラフは省略します。

PCMark 10:SSDの実用性能

WD_BLACK SN770の実用性能(PCMark 10 ストレージスコア)

PCMark 10 Professional Editionの「Storage Test」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。

Storage Testには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。

なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を80%埋めた場合(= 空き容量20%)のテストも行いました(※2回:約2時間)

WD_BLACK SN770の実用性能(PCMark 10 ストレージスコア)
WD BLACK SN770の実用性能(PCMark 10 ストレージスコア)
WD BLACK SN770の実用性能(PCMark 10 ストレージスコア)

WD Black SN770のストレージスコアは「3260点(空き容量20%時)」です。空き容量100%なら3458点で、空き容量による性能低下が約6%に抑えられています。

空き容量20%のスコアはライバルのSN570やEXCERIA G2やSamsung 980を約67%も上回り、旧モデルのSN750 SEから約2.9倍もの性能アップです。

過去レビューしてきたHMB方式のどのSSDよりもはるかに高いスコアで、ハイエンドクラスのNVMe SSDとすら肩を並べる驚異的な性能を発揮します。

SSDコントローラと1枚のNANDメモリだけを搭載した、簡素なパッケージ内容からは想像もできないようなスコアを叩き出しており、SanDisk由来のSSDコントローラに対する謎が深まるばかりです。

やかもち
PCMark 10はOptane SSDやSLC NANDに近いSSDほどハイスコアを出せる傾向が強いため、おそらくSN770は使用状況に応じてSLCキャッシュをリアルタイムに再構築できる独自の性能特性を持っているかも・・・(※推測)。
WD BLACK SN770の実用性能(PCMark 10 Adobeソフト)
WD BLACK SN770の実用性能(PCMark 10 ゲームロード時間)
WD BLACK SN770の実用性能(PCMark 10 ファイルコピー)
WD BLACK SN770の実用性能(PCMark 10 Microsoft Office)

PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。

Adobeスコア、ゲームロードスコア、ファイルコピースコア、Officeスコア。すべての分野でSN770はライバル製品をかんたんに打ち負かし、SN850やP41 PlatinumなどハイエンドSSDに匹敵するスコアを記録します。

実用スコアの内訳
Full System Drive Benchmark
Adobe ScoreAdobe Acorbatの起動
Adobe After Effectsの起動
Adobe Illustratorの起動
Adobe Premiere Proの起動
Adobe Lightroomの起動
Adobe Photoshopの起動
Adobe After Effets
Adobe Illustrator
Adobe InDesign
Adobe Photoshop(重たい設定)
Adobe Photoshop(軽量設定)
Game ScoreBattlefield Vの起動(メインメニューまで)
Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで)
Overwatchの起動(メインメニューまで)
Copy Score合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み)
ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み)
ISOファイルをコピー(読み込み)
合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み)
JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み)
JPEGファイルをコピー(読み込み)
Office ScoreWindows 10の起動
Microsoft Excel
Microsoft PowerPoint

15分間の連続書き込みテスト

約1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら書き込み続ける過酷な検証方法です。

一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。

15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。

WD_BLACK SN770の連続書き込み性能(15分)をテスト

WD Black SN770と競合する代表的なNVMe SSDと比較しました。テストを開始して数秒で、書き込み性能が1610 MB/s前後まで下がります。

その後も1610 MB/s前後の性能を維持し、空き容量が4分の1に近づくとTLC NAND本来の性能に近い483 MB/s前後に下がります。

WD_BLACK SN770の連続書き込み性能(15分)をテスト

時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。

15分間の書き込み量で比較すると、HMB方式の中でSN770がトップです(EXCERIA PLUS G2はDRAMキャッシュ搭載モデル)。10分と5分の期間でもSN770がトップの成績です。

動的なSLCキャッシュ生成能力のおかげで、NANDメモリ本来の性能をうまく隠して高いパフォーマンスを維持して見せます。

SSDの動作温度をテスト

高負荷時のセンサー温度

WD_BLACK SN770で表示される温度センサー

モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは2つです。

  • ドライブ温度:NANDメモリの温度
  • ドライブ温度2:NANDメモリの温度

温度センサーはメーカーによって違います。一般的にセンサーを1つだけ搭載するメーカーが多いですが、SN770は珍しくセンサーを2つ搭載します。

ただし、どちらの温度センサーも似たような数値が表示されるため、おそらくNANDメモリの温度を表示しています。

参考までに、NANDメモリとSSDコントローラそれぞれにセンサーを搭載するメーカーは(筆者の知る限り)サムスンとSK Hynixの2社に限られます。

WD_BLACK SN770のSSD温度をテスト(高負荷時)

ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を5分間実行しました。

テスト開始直後に1500 MB/s前後に書き込み性能が下がり、その後ずっと1500 MB/s前後の性能を維持します。

HWiNFOに表示される温度は72℃にとどまりますが、性能が乱高下するなどサーマルスロットリングらしき症状は特に確認できませんでした。

次はサーモグラフィーカメラを使って、実際の温度を確認します。

サーモグラフィーで表面温度を確認

WD_BLACK SN770の表面温度(サーモグラフィー)

テスト開始から5分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使って撮影。

  • SSDコントローラ:81 ~ 82
  • NANDメモリ:71 ~ 72℃

NANDメモリの表面温度が70℃台で、SSDコントローラの表面温度は80℃台です。

よって、HWiNFOに表示される温度はNANDメモリ側で、SSDコントローラの温度を表示しないと考えたほうが自然です。

長尾製作所 / 規格 : M.2 2280 / 型番 : SS-M2S-HS01

別売りのM.2ヒートシンクは必要ないです。エアフローを与えない環境で使っても、サーマルスロットリングらしい症状が見られません。

マザーボードにヒートシンクが付属しているなら装着するくらいでOKです。ただし、マザーボード付属のヒートシンクはネジの締めすぎに要注意。締めすぎると基板に圧力がかかりすぎてSSDの故障につながります。

まとめ:値段はエントリー、性能はハイエンド

WD_BLACK SN770の評価まとめ

「WD Black SN770」のデメリットと弱点

  • DRAMキャッシュなし
  • SLCキャッシュが限定的(わずか数秒)
    ※書き込み4000 MB/s以上を維持できる範囲
  • 素の書き込み性能は平凡

「WD Black SN770」のメリットと強み

  • 最大5150 MB/sのシーケンシャル性能
  • ハイエンドNVMe SSD並の性能
  • 同価格帯を凌駕する実用性能
  • 空き容量による性能低下が少ない
  • 高速なランダムアクセス速度
  • ゲームロード時間
  • 十分な耐久性(300 ~ 1200 TBW)
  • 大容量モデルあり(最大2 TB)
  • 極めて高いコストパフォーマンス
  • 5年保証

WD Black SN770は、SanDisk由来のSSDコントローラによる動的かつ柔軟なSLCキャッシュ生成能力を駆使し、WD Black SN7xxシリーズ最高の性能を発揮します。

キオクシア(旧東芝メモリ)製の112層 3D TLC NANDをポツンと1枚だけ搭載したハード構成からは、とても想像がつかない(いい意味で)理解に苦しむすさまじいパフォーマンスです。

SLCキャッシュを剥がしきった素の書き込み性能こそ、TLC NANDらしい平凡な性能ですが、いわゆる普段使いで100 GBを超えるファイルのやり取りはそれほど多くないです。

Windowsの普段使いで日常的に使われるワークロードに対して、SN770は極めて最適化された性能特性をもち、空き容量を80%埋めた状態でもハイエンド並みの性能を維持します。

WD_BLACK SN770の評価まとめ

ちもろぐの個人的な評価は「A+ランク」で、1万前半で買えるSSDの中では限りなく「Sランク」に近い評価です。

「どのSSDを選べばいいか分からない?」・・・なら、WD Black SN770を選びましょう。ハイエンド級の性能で、95%くらいの自作PCユーザーにとって満足できる性能だと思われます。

予算1万円未満で買う場合は「EXCERIA G2」が選択肢ですが、予算1万円を少しでも超えていいならSN770を強く推したいです。

WD_BLACK SN770をレビュー(パッケージデザイン)

以上「WD Black SN770レビュー:簡素なハードから想像もつかない不気味な性能」でした。

やかもち
あまりにも性能が良すぎて、予備を買うくらいにはお気に入りです。

WD Black SN770を入手する

Western Digital / NAND : KIOXIA製 112層 3D TLC NAND / 性能 : 最大5150 MB秒 / 容量 : 1TB / 耐久性 : 600 TBW / 保証 : 5年

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19 件のコメント

  • NANDの多積層とDRAMレスから想定してたよりはランダムもイケてる…万能やん…

    こういう最新のいかにもシーケンシャルだけは速いです的で簡素なPCIe 4.0 SSDと、逆に3.0世代で速度は頭打ちだけど64層程度の積層でチップが(両面とか)多数実装されててDRAMキャッシュもありますという並列ヤレそうな古いの
    あまりOS以外入れたくないC:ドライブはどっちが向くんだろう

    • OS用途ですが、最新のフラッシュメモリはランダムアクセスが高速なので、ロード時間の短縮に寄与できるでしょうから新しいSSDがいいんじゃないでしょうか。とはいえMX500みたく、ほとんどの従来品のSSDも最近のロットから順次新しいフラッシュメモリに変更されているみたいですね。

  • うわあ後3か早く欲しかった!!!!!!!!

    ちょうどセールでcrucialの2TBポチって取り付けた所でした……………

  • いつも楽しく拝見しております。
    WD Dashboardのゲームモードも試されましたでしょうか。
    ゲームモードをONにして計測した場合、苦戦気味だったゲームフォルダの読み出しも改善されたりするのかも……?と可能性を感じました。

    これからの記事投稿も楽しみに、応援しております。

  • SN850のレビューでも書かれてたけど、Sandisk由来のコントローラーorファームウェアが優秀すぎるのか

  • WD SN系のコントローラーなんですが
    確証はないのですがSandisk系ではなくHGST系な気がします
    始祖たるSN100~200はHGSTの製品なので…
    Sandisk買収はたぶん東芝NANDライセンス絡みかと

  • このSSDメインメモリをキャッシュとして使用してない?
    だから本体にDRAM搭載してなくても早いんじゃないかと・・・

  • 価格が下がってきてSN770と近い価格帯でかつDRAMキャッシュ搭載のCrucialのP5 Plusをレビューしてくれませんか?

  • ドスパラwebのGWセール(4月21日 11:00 ~ 4月28日 10:59まで)にて2TBモデルがクーポンで2万円だったので即ポチりました!

  • ごくたまに一か月に一回くらいですがゲームストレージ専用で使っていてゲーム中に落ちる時があります
    そうなるとドライブごとPCから認識が消えてしまいます、再起動で治りますが謎です、ゲームモードを使用するとなりやすい気がします

    あとWD Dashboardを起動すると挿してあるUSBメモリの認識が飛びます、起動している限りそのUSBメモリはエラーで認識しません、これも謎です
    おま環にしてはきついので皆さんの見識があれば聞きたいです

    • 私も不思議な現象に悩んでました。
      このSSDをメインストレージに使っていて、スリープから復帰して数十秒経つと、たまに、SSDではなく倉庫用の内蔵HDD(Toshiba)が消えます。
      デバイスマネージャーの更新では認識できず、OS再起動が必要になります。
      他の内臓SSDは消えません。

      HDDをいくら調べても問題が見つからず、内蔵ディスク数を減らしたり、HDDをSATA増設ボード経由で接続するように変えてもダメでした。
      OSの更新、OSの変更(10⇔11)、ドライバの更新、UEFIのリセット、…etc 全てダメ。
      しかし、そのHDDを他のPCに接続しても何の問題も生じません。

      結局HDDをSeegate製に替えたら症状が治まりましたが、結局のところ明確な原因はわからないままで、モヤモヤしています。

  • この製品ですがヒートシンクは付けた方がよいと思います。
    ヒートシンク無しの場合、10月の室温25度の環境で連続書き込み後にTrimすると温度が上限の85度を超えて、S.M.A.R.Tのクリティカルワーニングが発生しました。
    ヒートシンクを取り付ける際は、NANDメモリよりもコントローラのチップの方が高さが低いので工夫してください。

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