「i9 9900K」の強み:Ryzen 7 2700Xやi7 7820Xと比較

「i9 9900K」の強み:Ryzen 7 2700Xやi7 7820Xと比較

2018年10月に出る予定の第9世代Intel Coreシリーズ最上位の「Core i9 9900K」。従来のCore i7のポジションを、Core i9に引き上げたので微妙な存在ですが…あえて既存のライバルや先代と比較して「何が強いのか?」を整理しておく。

次の自作でi9 9900Kを採用する可能性が濃厚ですからね。

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Core i9 9900Kのカタログスペック(仕様)

CPUCore i9 9900KRyzen 7 2700XCore i7 7820X
世代Coffee Lake RZen+Skylake-X
プロセス14nm++12nm14nm
TIMソルダリングソルダリングサーマルグリス
ソケットLGA 1151 v2Socket AM4LGA 2066
コア数888
スレッド数161616
ベースクロック3.60 GHz3.70 GHz3.60 GHz
ブーストクロック4.70 GHz3.95 ~ 4.25 GHz4.00 GHz
手動OC可能可能可能
L1 Cache512 KB768 KB512 KB
L2 Cache2 MB4 MB8 MB
L3 Cache16 MB16 MB11 MB
対応メモリDDR4-2666DDR4-2933DDR4-2666
チャネルx2x2x4
最大メモリ64GB64GB128GB
ECC対応不可U-DIMM不可
PCIe162028
構成1×16 + 2×81×16 + 1×41×16 + 1×8 + 1×4
1×8 + 2×43×8 + 1×4
内蔵GPUUHD 630なしなし
GPUクロック350 ~ 1200 MHz
TDP95 W105 W140 W
MSRP$ 450$ 329$ 599
参考価格約49800円約38000円約64800円

Core i9はHEDT向けシリーズでしたが、どうやら今回からメインストリーム向け(一般ユーザー向け)のシリーズとしてリブランドされた感じです。素直にCore i7のままで良いはずだが、基本設計は所詮「Coffee Lake」なので採算的に厳しい部分があったのでしょう。

初心者もち
「Ryzen 7」と値段揃わないんじゃ微妙では?

と…思うのが自然ですが、とりあえずそこは置いておいてシンプルにi9 9900Kの改善点を見つめてみたい。確かにRyzen 7と比較すると見劣りするのは確かですけど、「Ryzen 7が革新的すぎるだけ」です。

もしRyzen 7が存在しなければ、Core i9 9900Kは十分に革新的でした。

ソルダリングが復活し、ブースト時4.70GHzを実現

Core i9 9900Kが従来のIntel製8コアCPUと比較してもっとも優れている点が、TIM(ヒートスプレッダとダイの間にある熱伝導材)が従来のサーマルグリスから「ソルダリング」に変更されたこと。

Core i9 7900XやCore i7 8700Kで使われている方式をザックリとイラスト化するとこんな感じ。グリスへの置き換わりはしばしば改悪と言われがちだが、インテルとしては採算性と商品の信頼性を両立しようとした結果の施策です。

だが、今回から「ソルダリング」を復活。ソルダリングとは「はんだ付け」のことで、ダイの直上に保護層を生成し、その更に上にインジウムを使ってヒートスプレッダと接続します。これにより、グリスと比較して飛躍的に熱伝導性が改善する。

i7 8700Kは全コアに負荷をかけると容易にCPU温度は80℃に達してしまうが、ソルダリングに変更されたことで-10~-20℃くらい抑えられることが期待できる。温度に余裕ができたため、i9 9900Kは全コア時のブーストクロックが「4.70 GHz」に設定された。

ブーストクロックi9 9900Ki7 8700Ki7 7820X
1 コア5.00 GHz4.70 GHz4.30 GHz
2 コア5.00 GHz4.60 GHz4.30 GHz
3 コア4.80 GHz4.50 GHz4.10 GHz
4 コア4.80 GHz4.40 GHz4.10 GHz
5 コア4.70 GHz4.40 GHz4.00 GHz
6 コア4.70 GHz4.30 GHz4.00 GHz
7 コア4.70 GHz4.00 GHz
8 コア4.70 GHz4.00 GHz

グリス仕様のCore i7と、全コア時のブーストクロックを比較するとこの通り。何も設定しなくても4.70 GHzで動作するのは、素直にスゴイと思います。

Ryzen 7 2700XはCPU温度に応じてブースト時のクロックが変動するので固定値で示せないが、ハッキリ言えることは「4.7 GHzになることは絶対にない」です。本格水冷を用いても、2700Xを4.7 GHzで動かすのはほぼ不可能に近い。

よってメインストリーム帯において、i9 9900Kは過去類を見ない史上もっとも速い8コアCPUとして君臨する。8コア全部が4.7 GHzで動いて大丈夫なのか…という懸念はあるが、ソルダリングなので心配はないかと。

初心者もち
ソルダリングってそんなにスゴイの?
自作歴23台のやかもち
8700Kの場合、20℃下がった例はたくさんあるからね(※空冷ファンで)

ソケット「LGA 1151 v2」を続投

LGA 1151 v2LGA 1151

てっきりCore i9だから「LGA 2066」になるかと思っていたが、現状の情報を見る限りでは「LGA 1151 v2」で使用できるとのこと。ようやくインテルの8コアを使うハードルが一気に下がった感がありますね。

LGA 2066対応のマザーボードは非常に高価だったので、インテルの8コア(= i7 7820X)を使おうとするとプラットフォームだけで10万は飛ぶ状態でした。

それがIntel 300シリーズとLGA 1151 v2を続投させたので、既にZ370やH370マザーボードを持っている人はBIOS更新で乗り換え可能ですし、持っていなくてもLGA 1151 v2対応マザボは安価なので大きな障害にはならない。

ただ、Ryzen 7 2700Xだと5~6万円くらいで一式揃えられ、i9 9900Kは少なくとも6.5~7万は掛かりそうなのでコストパフォーマンスではまだまだRyzenに劣る。

コスパは負けるがトータル性能の高さは魅力的

ここまでの解説をまとめますと…

  • ソルダリングに変更され、飛躍的に冷えやすいCPUへ進化
  • 定格でも8コア負荷時に「4.7 GHz」で動作可能
  • 従来のLGA 1151 v2 / Intel 300シリーズを続投
  • 5.0 GHz以上のオーバークロックは容易だと推測できる
  • i7 7820Xと比較して多少は安くなった(マザボ含め)
  • Ryzen 7 2700Xと比較すると、コスパはまだまだ劣る

ということでした。

さてさて、インテルにしては頑張った方ですが、やっぱり8コアといえばRyzen 7 2700Xの存在が非常に大きいですよね。しかし決定的に違うのが「i9 9900Kは純粋な8コアCPU」であること

Core i7とRyzen 7のダイ構造の違い
  • Ryzen 7:4コアのCPUを2個組み合わせて8コアを実現
  • Core i9シンプルに1個で8コアを実現

Ryzenの設計思想はある意味革新的で、多コアCPUを超安価で作ることができます。だが、2つの4コアCPUはインフィニティーファブリックというバスで接続されている。

このバスをデータが行き来する際にスループット(遅延)が発生してしまうのがRyzenの設計上の特徴です。そして世の中の多くのソフトウェアがこの遅延を想定して作られていません

  • Adobe系ソフト
  • Aviutlなど古いソフト
  • OBSに代表される配信ソフト
  • ゲーミング性能

インテル独占の時代が長すぎたせいで、多くのソフトがインテルの「シンプルなCPU」を当たり前として設計されている。だから同じ8コアでもRyzenの方が遅い…ということが、しばしば起こっている

ゲーミングでは少しずつ改善されている(実例はCoD : WW2やモンスターハンターワールドなど)が、Adobe系ソフトや動画編集ソフトなどのクリエイティブな分野では驚くほど最適化が進んでいません※

※例外はBlenderやCinema 4Dなどに代表される「レンダリング」です。

もちろん、データに基づいた上で言っている。Ryzenの登場からそろそろ1年半が経過するが、未だに最適化が進まない現状がある。日本で大人気の編集ソフト「Aviutl」も、エンコードは最適化されたがソフト自体の動作は最適化不足ですし…。

結論として、i9 9900Kの強みは「あらゆる使い方で8コアの持つ性能を100%出し切れる」ことにある。この一点がRyzen 7に対して、もっとも明確に勝っている部分です。価格はダメダメですけどね。

初心者もち
歴史が長いCPUはやっぱりそのへんズルイね~。
自作歴23台のやかもち
そうそう。クロック周波数が高いことも相まって、いろいろな用途で性能を出し切れるのが強いんだよ。
筆者が次の自作でi9 9900Kを選んだ理由

次の自作はリア友に依頼されて作るモノで、用途に「Aviutl」があった。エンコーダーはrigaya氏がRyzen対応を進めたおかげで完璧なんですが、プレビューが重たい現状は治っていない。

理由は単純で、Aviutlの開発者がもう開発していないから。2013年以降、更新は止まっているため当然Ryzenへの最適化も行われていない。

  • レイヤーが重なるとプレビューが激重

この一点さえ無ければ、次の自作でもRyzen 7にGOサインを出したが、残念ながらそうではないので保留です。コスパ的には明らかにRyzen 7が魅力的なのに、このように局所的な弱点が残っているのが本当に惜しい。

i9 9900Kの最大の弱点は「品薄で値段が高い」

MSRPは450ドルで、Ryzen 7 2700Xより120ドルも高い。この時点で既にコスパが悪いというのに、ここに来てインテルCPUの供給力不足が原因で品薄が発生中。

米国Amazonでの価格は「582.5ドル」

そのため、Amazon.comの価格はまさかの「582.50ドル」です。日本円に換算すると少なくとも63000~65000円で、ご祝儀価格を想定すると7万円はザラに超えるでしょう。

ただでさえ高いのに、MSRPより更に100ドルも高い価格設定で来るとは。

14nmプロセスのままラインナップを変更して6コアを投入し、それが馬鹿売れしてしまった。結果として14nmを製造する現行の設備では需要に追いつけなくなってしまった。といったところですね。

初心者もち
性能上がるのは良いことなんだけどさ、値段全然下がんないね。自作erには受難な時代だわ。
自作歴23台のやかもち
RTX 2080 Tiといい、今回のi9 9900Kといい。本当その通り。値下がりしてるのはSSDくらいか。

Core i9 9900Kは「史上最速の8コアCPU」になるのは間違いないが、価格は今のまま行けば2700Xの倍額になるでしょう。いくら最速といっても倍額は高すぎる、というのが率直な感想。

しかし、世のソフト屋のRyzen対応の遅さが異常なせいで、Ryzenを取りたくても取れないのが悲しい。無料のAviutlはともかく、超大手のAdobeは何やっているんだ…という感じ。

というわけで、以上「i9 9900Kの強み:Ryzen 7 2700Xやi7 7820Xと比較」でした。


RTX 2080 Tiのレビュー

値段がバカ高いといえば、NVIDIAの最新GPU「Turing」も同様。こちらは供給力不足ではなく、NVIDIAの最新機能に対応するための特殊コアを導入したせいで割高になりました。

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32 件のコメント

  • FX9590みたいに特定のマザーボードじゃないと動かせないとかありそう、消費電力は凄まじいだろうし

    • 定格でもAVXを使えば200W超えそうですよね。

      • i7 7700K:約115W
      • i7 8700K:約160W
      • i9 9900K:約205W(?)

      こんな感じ。
      手動オーバークロックまでしっかり使うなら、Z390搭載の新設計のマザーボードを使ったほうが良いのか?…といろいろ思うところはあります。

  • ソルダリングになったので殻割りというリスキーなことをせずに冷えるようになったのは良いですね

  • Ryzen7がシングルダイでないような書き方ですがRyzen7もシングルダイのはずではないですかね?
    4つのコアの塊2つを1つのダイに乗せたものという説明なら正しいはずです
    https://pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/1047/507/html/01.png.html
    スリッパは間違いなくマルチダイですが。
    あと9900Kがソルダリングって確定なんですかね?自分の調べた範囲ではそうなる可能性は非常に高いが確定とまでは行っていないというレベルなのですが。

    話は変わりますが正直IntelがCPUの供給不足に陥るなんて少し前までは考えられませんでしたね。
    14nmから進めず止まってしまっているのが一番大きいのは確実でしょうがRyzen及びEpycでより大きなダイのCPUを作る必要に迫られているのも大きいでしょう。
    これで28コアのCoreXをコンシューマー向けに投入したら更に供給量が苦しくなりそうです。
    価格もこの有様では28コアは$5000とかになりそうです。安くても$3000程度よりは安くはならないでしょうね

  • 全コア4.7Ghzでも6.5万円もしてMeltdown対策もロクにされてないんだったら2700x買って差額で一緒に高クロックメモリ買ったほうが幸せかな?

  • >ゲーミングでは少しずつ改善されている

    BFVやCoD:BO4、Assassin’s creed Odyssey等、マルチコアを有効活用できるタイトルや、The Crew 2やForza Horizon 4などそもそもCPU負荷が相当軽いタイトルといった2700Xが8700Kと遜色ないフレームレートを出せるビッグタイトルが今年に入ってから急速に増えているので、少しずつどころかかなりのレベルでRyzenのゲーム性能がCore iシリーズに引けを取らなくなってきていると言っていいでしょう
    (最近のタイトルで2700Xが明確に負けたのはShadow of the Tombraider位か?)
    ※いずれもソースは露GameGPUの検証より
    https://gamegpu.com

    故にRyzenはむしろエンコード・配信に弱くゲーム用CPUとしては比較的優秀という当初の評価とは真逆のそれになりつつあると言えるかもしれません…………

    • 意外とRyzen 2700xが配信とエンコの実態で劣っていたのでそうかもしれないですね・・・
      ゲームもまあ劣っているのも確かなので現状選択肢としてはお求めやすい8コアという価格設定につきますね。中途半端ではありますが。

  • よほどな理由がない限り8700kで十分なきがしますね
    通常ユーザであれば6コア以上活かせる場面は限定的でしょう

    6コアでも十分いい仕事をしてくれるはず

    ただ、エンコードするなら最上位CPUより値段的に手を出しやすいというのがまた悩まさせるポイントでもありますね
    実質8700kの後継者なのにcore i9とかに位置づけさせて付与価値をつけてやろうという魂胆が透けて見えて気に入りませんね

    一番いいのはRYZENが最適化してくれることなんですがクリエイティブ面ではまだまだインテルには及ばないですね
    残念です

    • 大手のソフト屋は何かしらの方法で、ユーザーのハードウェア情報を取得しているはずなので、Ryzenを使ってるユーザー比率が無視できないレベルになったら重い腰を上げてくれるかも…と期待です。どこまでRyzenが今の勢いを維持して、インテルを圧倒できるかがすべてですね。

  • メインストリーム最速なのは確実ですけど如何せん高いっぽいですねぇ
    まあゲーミングなら9700Kあたりが有力になりそうですけども

  • Ryzenでaviutlが重いというのは初めて知ったのですが
    レイヤー等は使わず録画エンコードのみの用途でも問題有るのでしょうか?

    • Aviutlのx264エンコードはちゃんと速いです(※エンコーダーの作者がRyzenに詳しいようで)。
      録画はOBSで試したところ、i7 8700の方がなぜかドロップフレームが少なかった。Veryfast品質まで落とせば、全く問題ないです。

    • Blenderが完走するかどうかはともかくとして、120mm空冷でもそれなりに出せると思います。
      ソルダリングが本当であれば、効果は劇的。10~20℃も余裕が出ると、4.7GHzまでクロックアップするのは容易いです。
      5.0GHzなら240mm~簡易水冷があったほうが良いと思いますが。

    • i7 8700無印とRyzen 7 2700Xの比較で、エンコードや配信や絵描き関係はCore i9はもう凌駕しているのは予想できます。
      OC同士ではもっと差がつくでしょうし、ゲームではより大差が予想できます。
      ただ問題はRyzen 7 2700X比ではなく、i7 8700K比だと思われます。

    • 普通の使い方なら、そうですよね。
      i9 9900Kは、GTX 1080 TiやRTX 2080 Tiを使う人や、Adobe系ソフトをゴリゴリ使うような人向けって感じです。

  • Intelの周波数とamdの周波数の基準同じなわけ無いだろwwww
    そんなんryzen5ghzで回したらcpuクーラー溶けとるわwwwww

  • どおも正式発表されたらしいですな。
    https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1146759.html
    同時に第8世代すっ飛ばして第9世代X系も新発売らしい。
    https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1146760.html
    しかしお値段がi9-9900Kが65,980円、i7-9700Kが51,980円とか高すぎますな…。しかし第8世代も入荷僅少で値上がり傾向なので、あんまり安くない現実orz
    https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/news/news/1146873.html

    第10世代になったら型番どうなるのかなぁ(遠い目

  • 結局ゲームしかやらないから買い替え迷う。。。
    現在8086K使ってるので、シングル能力大差ないし。。。

  • Ryzenに最適化しないアプリが悪いというよりは、そんな特殊な設計を選んだAMDが悪いんだと思う。シンプルにすればいいのに。

    • レイテンシと最適化面ではどうしても壁にはなりそうですが、iGPUがないことも含めてコスト勝負な設計で競争力は確保できることが商売として分かりやすいので売り下手のAMDとしてはベストかなと。

  • Aviutl が重いというのは Threadripper でも同じなのでしょうか?
    2920X を買ってみようかと思ってたんですけど。

    • CCXによる分割構造が原因とみられているので変わらないかと
      でもAviutlなら拡張プラグインにメモリエンコードをやってくれるものがあるので、通常のプレビュー再生ではタイミング合わせが厳しいシーンなどはそれで代用できます
      普段の編集でレイヤーを読み込んで重いのは我慢するしかないですがね……

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