スマホで有名なあのファーウェイがゲーミングモニター業界に参入。「MateView GT 34(ZQE-CBA)」は50240円で、3440 x 1440の21 : 9ワイド湾曲モニターかつ最大165 Hzに対応・・・とファーウェイらしくコスパが秀逸です。自腹で買ってレビューしてみた。
(公開:2022/1/25 | 更新:2022/9/27)
「HUAWEI MateView GT 34」の仕様とスペック
HUAWEIMateView GT 34(ZQE-CBA) | |
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画面サイズ | 34インチ 湾曲型(曲率:1500R) |
解像度 | 3440 x 1440 |
パネル | VA |
コントラスト比 | 4000 : 1 |
リフレッシュレート | 165 HzHDMI 2.0 : ~100 Hz / DP 1.4 : ~165 Hz |
応答速度 | 4 ms(G2G) |
光沢 | ノングレア |
VESAマウント | 100 x 100 mm |
エルゴノミクス |
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主な機能 |
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同期技術 | AMD FreeSync Premium ※G-SYNC互換モードに対応 |
スピーカー | なし |
主な付属品 |
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寸法 | 442~552 x 808.6 x 220 mm |
重量 | 9.55 kg |
保証 | 1年 |
参考価格 | 標準:62800 円 クーポン適用時:47100~50240 円 |
スマートフォン市場で一時期世界を席巻していた中国の巨大企業「ファーウェイ」が、アメリカから制裁食らってGSM搭載スマホをまともに出せなくなった後は・・・スマホ以外の製品にも手を出して利益の多角化に力を入れまくってます。
今回、筆者やかもちでわざわざ自腹で買ってきた「MateView GT 34 Standard Etidition(ZQE-CBA)」も、ファーウェイの利益多角化の中から生まれた製品です。
Amazonだと約6.5万円でファーウェイの割には価格が強気ですが、実はファーウェイストア(公式直販)だとかなり安く買えます。サウンドバーを搭載しないStandard Editionが5万~5.5万円で購入できます。
同じ価格帯の湾曲型ゲーミングモニターだと、BenQの「MOBIUZ EX2710R」が強敵だと考えていますがEX2710RはWQHD(2560 x 1440)です。対するMateView GT 34はWQHD(3440 x 1440)で横幅がさらに広いです。
VAパネルを採用した湾曲型ゲーミングモニターとしては、明らかに解像度あたりのコスパでMateView GT 34が勝ってます。残る問題点は、いくらあのファーウェイとはいえ、安かろう悪かろうで終わってしまうリスクです。
というわけで、MateView GT 34は安いなりの価値しかない平凡な製品なのかどうか、あるいは本当にコストパフォーマンスに優れた良品なのか?・・・詳しく検証します。
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HUAWEI MateView GT 34を開封レビュー
開封と付属品のチェック
HUAWEI直販サイトで注文した2日後に到着。茶色のシンプルなパッケージで届きました。箱の大きさはほぼ170サイズです。
2段式の硬い発泡スチロール梱包がぎっしり詰まってます。1段目に付属品、2段目にパネル本体とモニターアームが入ってます。上下逆さまにして引っ張り出すと、中身が地面へこぼれ出すので注意です。
モニタースタンドと茶色の小箱がすっぽりと梱包に収まっています。
小箱の中身は付属品です。
- Display Portケーブル
- 電源アダプター
- 六角レンチ
- 説明書と保証書
付属品は普通の内容です。Display Portケーブルが付属します。
電源アダプターの出力は最大75 Wで、コネクタはUSB Type-Cを採用。
インターフェイス類とモニター本体
モニター本体の裏側から、各種インターフェイスにアクセスできます。
- 電源コネクタ(USB Type-C)
- HDMI 2.0(100 Hz)
- HDMI 2.0(100 Hz)
- Display Port 1.4(165 Hz)
映像出力端子はHDMIとDisplay Portが合計3つです。最大解像度のWQHD(3440 x 1440)で出力する場合、HDMI 2.0は最大100 Hzまで、Display Port 1.4で最大165 Hzに対応します。
なお、HDR使用時に10 bitカラーを出せるのは120 Hzまで。165 Hzだと8 bitカラーに制限されます。
ハード別にリフレッシュレートを確認します。パソコンはDisplay Portにて最大165 Hzで動作可ですが、次世代ゲーム機「PS5」では残念ながら60 Hzが上限の可能性が高いです。
画面中央の下部に、OSDを操作する5方向ボタンがひとつだけ配置されています。
上下左右の4方向とボタンを押し込む操作で、電源のオンオフや画面の色合いの設定など、すべての操作が完結します。
別売りのモニターアームを固定するのに使う「VESAマウント」は、スタンダードな100 x 100 mm規格です。
パネルの表面加工は、目が疲れにくい「ノングレア」を採用。
ベゼル幅は34インチの大きさに対してわずか8 mmでかなり攻めた薄さです。曲率1500Rの湾曲した34インチと8 mm幅の薄いベゼルの組み合わせで、没入感を得られやすい効果に期待できます。
組み立てはシンプル
MateView GT 34の組み立てはドッキング方式です。他のゲーミングモニターとほぼ同じ組み立て方法ですが、画面がかなり大きいので梱包に収まった状態のまま、組み立てを行ったほうが安全です。
付属のモニタースタンドを画面の背面に挿し込んでドッキングします。
スタンドを取り付けて、ネジを固定します。
ネジの固定は付属の六角レンチでしっかりと締めてください。
MateView GT 34の組み立てが完了。シンプルなドッキング方式で組み立ては簡単です。作業はおよそ3分程度で終わりました。
エルゴノミクスをチェック
リフト(昇降機能)は11 cmです。やや下限が高い気がしますが、必要十分な昇降範囲です。
前後チルト(角度調整)は、上方向へ20°、下方向へ-5°まで対応。
- チルト(前後):+20 ~ -5°
- リフト(昇降):110 mm
- スイベル(首振り):なし
- ピボット(垂直):なし
ピボットとスイベルは対応しませんが、曲率1500Rの湾曲モニターならチルト(前後)とリフト(昇降)の2つで十分です。
曲がっているモニターをわざわざ左右に回転する意味はないし、ピボットも実用上のメリットがありません。いたって自然で適切なコストカットです。
WQHD(3440 x 1440)と曲率1500Rの使用感
今回のモニターはウルトラワイド解像度(3440 x 1440)かつ、曲率1500Rの湾曲タイプです。ふだんレビューしている平面型とは明らかに違う特殊なモニターですので、性能テストの前に筆者が実際に使ってみた主観的な感想・・・を書いておきます。
湾曲タイプは効果を体感しづらいとか思っている筆者ですが、MateView GT 34ではそんな考えが90度くらい変わりました。横幅の暴力といえばいいでしょうか、曲率1500Rと3440 x 1440の解像度は明らかに没入感を得やすいです。
普通のRPGゲームである「原神」ですら相当な没入感を得られてビックリです。以前レビューしたEX2710Rだと没入感を得られるコンテンツを選ぶのに対して、MateView GT 34では比較的動きの少ない原神ですら、そこにいる感覚があります。
正直、湾曲ワイドモニターの存在価値を非常に疑わしく考えていただけに衝撃です。3440 x 1440のMateView GT 34でこれほどなら、横幅が5000を超えているSamsung Odyssayはもっとスゴイんだろうな・・・。
原神で没入感を得られるので、画面の動きがスピーディーなレーシングゲーム、たとえば「Forza Horizon 5」はもっとすごいです。本当に疾走しているような映像体験が可能です。
Forza Horizon 5に関しては、2560 x 1440のEX2710Rで鳥肌が立つほどだったので、3440 x 1440のMateView GT 34ではなおさら余裕で鳥肌が立ちます。
ただし、3440 x 1440はそれなりにハイスペックなゲーミングPCが無いとフレームレートが出ません。RTX 3060だと平均60 fpsすらギリギリで、RTX 3060 Ti以上のグラフィックボードが必要です。
レーシングゲームがRPG以外のゲームでも、横幅の長い湾曲モニターのメリットが光ります。FPSタイトルの代表例「Apex Legends」で試すと、シンプルに視野角が広がってゲームプレイにおいて有利になれる可能性が高いです。
非対称対人ゲーム「Dead by Dailight」もシンプルに表示できる視野角が広がって有利です。ハードウェアチートと呼ばれても仕方がないレベルで、視野角がはっきりと広がります。
3440 x 1440は4K解像度のおよそ60%に相当する表示面積です。4Kほどではないですが、マルチタスクとの相性も良好です。画素ピッチも109.7 ppiでちょうどいいです(※90~110 ppiが一般的な適正値)。
結論として、3440 x 1440(曲率1500R)の使用感は筆者が思っている以上にいいモノでした。
海外で大人気の湾曲モニター「Samsung Odyssey」が毎年のように新製品がでる程度には売れている理由も、ようやく理解できました。適度な曲率と圧倒的な横幅の広さは明らかに没入感を得やすく、普通の4K平面モニターとは違った映像体験ができます。
ゲーミング、コンテンツ視聴、動画編集など。画面が湾曲していても特にデメリットがない用途において、3440 x 1440(曲率1500R)は十分アリです。逆に、イラストや製図はおそらく相性が悪いです。
HUAWEI MateView GT 34の性能を検証
X-riteのプロ向けキャリブレーションツールに付属する分光測色計「i1 Pro 2」を使って、MateView GT 34(ZQE-CBA)のパネル品質や液晶モニターとしての性能を検証します。
ゲーミングモニターのレビューでは「目で見て色がキレイ。」など、とにかく主観的な感想が目立つので、ちもろぐでは実際に計測を行い客観的な評価を行います(※色の見え方は個人差あるので計測あるのみです)。
BenQグループの傘下企業である、台湾AU Optronicsが製造するAMVA(VA)パネルを使用します。型番は「M340QVR01.0」です。
WQHD(3440 x 1440)、曲率1500R、最大165 Hzに対応するVAパネルです。パネルメーカーによる応答速度や明るさの公称値は非公開となっています。HUAWEIのメーカー公称値が平均4 ミリ秒と控えめなので、高速性能はあまり期待できないでしょう。
色の正確さとコントラスト比
モニターの性能でかなりの人が気にしているのが「パネルの発色」です。発色の良さは正しくは「色の正確さ」と呼ばれ、規格どおりの色が出ているかどうかを「色差(ΔE)」という単位で表現します。
ΔEが平均値で2.0以下なら「正確」です。
色の正確さ(発色の良さ)※クリックで画像拡大します | |
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グレースケール | カラー |
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コントラスト比 | |
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MateView GT 34は「色精度 < 2.0」を公称値に挙げています。デフォルト設定(P3モード)では、カラーの正確さが3.0を超えて公称値オーバーですが、sRGBモードでテストすると正確さが1.15にまで改善され公称値どおりの性能です。
色温度はどちらも6400K前後でおおむね合っています。色の正確さを重視するなら「sRGBモード」を使えばOKです。
「P3モード(デフォルト設定)」は表示できる色域を大幅に広めたHDRコンテンツ向けのモードで、色も若干あざやかに調整されています。万人ウケする色合いはおそらくデフォルト設定です。
画面の明るさ(輝度)
「P3(初期設定)」モードでOSDからモニターの明るさを10%ずつズラしながら、画面の明るさ(輝度)を計測しました。
一番暗い状態(0%設定)で「34.7 cd/m2」、最大設定(100%設定)で「452.4 cd/m2」、カタログスペックの最大350 cd/m2を大幅に超える非常に明るい画面です。
設定値33%で目にちょうど良いとされる「120 cd/m2」です。
色域カバー率
色域カバー率※クリックで拡大します | |
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sRGBもっとも一般的な色域 | 99.9% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 89.2% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 84.4% |
表示できる色の広さを「色域カバー率」と呼び、モニターの品質をあらわす指標として使われています。
MateView GT 34の色域カバー率は、もっとも一般的な規格「sRGB」で99.9%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では89.2%をカバーします。
ゲーミングはもちろん、趣味のイラストや写真編集くらいなら余裕です。DCI P3色域がほぼ90%もあるのでHDRコンテンツの表示性能も相当に高いです(※DCI P3:90%はDisplay HDR 600認証の条件のひとつ)。
パネルの均一性
「均一性」は要するに同じ色を表示したときの「色ムラ」の程度です。
グレー(5%)の均一性は問題なし。ごくわずかにパネルの上の方が明るいですが、実際の使用シーンでまったく目立たないです。
もっと明るいグレー(50%)の均一性は、パネルの端っこになるほど輝度が若干下がる輝度ムラが発生します。VAパネルやIPSパネルの輝度ムラは基本的に仕様のようなもので、実際の使用シーンで気になる可能性はほぼないです。
湾曲型で視野角は広い
VAパネルの視野角はIPSパネルより狭いですが、湾曲しているおかげで視野角の狭さはほとんど気にならないです。視野角を気にせずに済むのは湾曲型ならではのメリット。(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
入力遅延をチェック
「Input Lag Tester」を使って、MateView GT 34の入力遅延をテスト。
60 Hz時の入力遅延はわずか10.2 ミリ秒。目標の16 ミリ秒を余裕で下回ります。120 ~ 165 Hz時の入力遅延はさらに短くなるので、体感できるほどのラグは存在しません。
他のゲーミングモニターと比較します。ほとんどのゲーミングモニターと同じような入力遅延です。
フリッカーフリーの動作検証
画面の明るさを25%ごとに、オシロスコープを使ってフリッカーの有無を測定した結果です。常にグラフは横に一直線で、フリッカーはまったく検出されません。MateView GT 34は「フリッカーフリー」です。
HUAWEI MateView GT 34の応答速度を検証
こちらの記事で詳しく解説している通り、光の明るさをμs(マイクロ秒 = 1000分の1 ミリ秒)単位の細かさで検出する「光ディテクター」と、ミリ秒単位の計測には間に合う「USBオシロスコープ」を使ってモニターの応答速度を実測します。
個人差によってかんたんに左右されてしまう主観的な評価を徹底的に排除し、客観的な測定を行うことで、ゲーミングモニターの一貫した性能評価とレビューが可能です。
165 / 120 Hzの動作チェック
応答速度の前に、リフレッシュレートがちゃんと出ているかどうか「UFO Test」を撮影してチェック。
UFOを定点撮影した写真です。リフレッシュレートが高いほどUFOの残像が増えていていて、リフレッシュレートが正しく機能しています。
スライダーショット(追尾撮影)で残像を撮影すると、リフレッシュレートが高いほどUFOのりんかくがハッキリと映りますが、120 Hzと165 Hzの差はあまり大きくはないです。
120 Hz時の応答速度
MateView GT 34はPS5の120 Hz出力に対応していないですが、一応リフレッシュレートを120 Hz、オーバードライブ「OD : 2(初期設定)」に設定して応答速度を計測します。
残像感がやや目立っています。
MateView GT 34の応答速度120 Hz / オーバードライブ:2 | |
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平均値 | 5.85 ms |
最速値 | 2.58 ms |
最遅値 | 11.20 ms |
明るく | 6.08 ms |
暗く | 5.62 ms |
応答速度 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
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0 | – | 2.58 ms | 11.20 ms | 10.57 ms | 7.95 ms | 6.49 ms |
50 | 4.88 ms | – | 6.52 ms | 7.14 ms | 7.30 ms | 5.01 ms |
100 | 3.38 ms | 4.50 ms | – | 5.86 ms | 6.35 ms | 3.81 ms |
150 | 3.83 ms | 8.25 ms | 4.48 ms | – | 4.70 ms | 2.75 ms |
200 | 4.72 ms | 8.10 ms | 5.76 ms | 4.66 ms | – | 2.99 ms |
255 | 5.10 ms | 9.84 ms | 6.72 ms | 5.58 ms | 4.57 ms | – |
120 Hz(オーバードライブ:2)の応答速度は、平均「5.85 ミリ秒」です。メーカー公称値が4 ミリ秒なだけあって、実際の応答速度もかなり平凡な結果です。
165 Hz時の応答速度
リフレッシュレートを165 Hz、オーバードライブ「OD:2」で応答速度を計測します。
リフレッシュレートが上がった分だけ、残像感がややクリアに見えます。
MateView GT 34の応答速度165 Hz / オーバードライブ:2 | |
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平均値 | 5.81 ms |
最速値 | 2.56 ms |
最遅値 | 11.56 ms |
明るく | 6.07 ms |
暗く | 5.56 ms |
応答速度 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 4.47 ms | 11.56 ms | 11.12 ms | 9.04 ms | 5.00 ms |
50 | 5.42 ms | – | 5.10 ms | 7.53 ms | 6.95 ms | 4.04 ms |
100 | 3.64 ms | 5.06 ms | – | 5.82 ms | 6.21 ms | 3.43 ms |
150 | 4.49 ms | 7.93 ms | 4.71 ms | – | 5.11 ms | 3.05 ms |
200 | 4.41 ms | 7.91 ms | 5.44 ms | 4.15 ms | – | 2.56 ms |
255 | 5.05 ms | 8.40 ms | 6.54 ms | 5.55 ms | 4.74 ms | – |
165 Hz(オーバードライブ:2)の応答速度は、平均「5.81 ミリ秒」です。デフォルト設定だと平均応答速度は6 ミリ秒近いままで、残像感を感じやすいです。
次はオーバードライブ別に、応答速度をチェックします。
オーバードライブのおすすめ設定
OD機能の効果165 Hz / 3段階をテストした結果 | |||
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平均値 | 5.81 ms | 5.39 ms | 3.38 ms |
最速値 | 2.56 ms | 2.66 ms | 2.16 ms |
最遅値 | 11.56 ms | 12.33 ms | 5.34 ms |
明るく | 6.07 ms | 5.69 ms | 3.28 ms |
暗く | 5.56 ms | 5.09 ms | 3.48 ms |
平均エラー率 | 0.0 % | 0.0 % | 15.0 % |
MateView GT 34のオーバードライブ設定は4段階(1~4)から選べます。デフォルト設定が「2」なので、1ずつあげて「3~4」を検証した結果、最大設定の4だと誰の目にも明らかな深刻な逆残像を確認できます。
応答速度が平均3.4 ミリ秒に短縮される代わりに、平均エラー率は15%です。暗いシーンで特に逆残像が目立つので実用性はかなり低いです。
よっておすすめのオーバードライブ設定は「OD:3」です。エラー率を0%に抑えたまま、応答速度を0.4 ミリ秒も減らせます。
参考例として、平均エラー率25%のUFO画像を掲載します。画像を見ての通り、UFOのりんかくが「滲む」ように見えます。このにじみが「逆残像(英語ではCorona、artifactsなど)」と呼ばれる現象です。
本来、残像感を軽減するためのオーバードライブ機能なのに、エラーが発生すると逆に残像が発生します。パネル本体の品質、メーカーのパネル制御技術の実力差など。エラーが発生する原因はいろいろとあります。
応答速度の比較
ちもろぐで検証した他のゲーミングモニターとの比較をまとめます。比較できるデータはかなり増えていて、MateView GT 34の応答速度がどれくらいの位置づけなのかが、客観的に分かりやすいです。
120 ~ 165 Hzのゲーミングモニターで比較しました。
比較グラフを見ると、MateView GT 34の応答速度はあまり速いほうでは無いです。2~3年前のVAパネルより確実に応答速度は改善されているものの、AHVAやNano IPSなど最新の高速IPSパネルから一歩劣る性能です。
MateView GT 34のパネル製造元は台湾AU Optronicsで、以前レビューした「EX2710R」と同じメーカー。しかし2ミリ秒もの性能差が開いており、AU OptronicsのウルトラワイドVAパネルはまだ発展途上のように見えます。
HUAWEI MateView GT 34の機能性をチェック
OSD(On Screen Display)の内容
モニター中央の下部にある5方向ボタンを使って、On Screen Display(OSD)からモニターの設定を変更できます。順番に紹介します。
5方向ボタンだけですべての操作が完結しますが、4方向(上下左右)それぞれにショートカットが設定されているため、直感的な操作の妨げになっています。
筆者がBenQのOSD画面に慣れすぎている影響もありますが、個人的にHUWAEIのOSDレイアウトは直感的に使いづらいです。ショートカットは2方向(左右)だけにして、残りの上下は普通に設定が開くようにしてほしいですね。
なお、もう1点ケチをつけたい問題があります。「AMD FreeSync Premium」が隠しメニューに入っています。FreeSync Premiumを出現させる方法は以下の通り。
- モニターの電源を消します
- 5方向ボタンを押して電源を入れます
- 10秒間、上方向に押したままにします
- 「Picture」に「AMD FreeSync Premium」が出現
ハッキリ言って意味不明な仕様なので、改善する余地があります。
FreeSync Premiumを有効化すると、Display Port接続時に限って「G-SYNC Compatible(互換モード)」も使えます。
暗いところを明るくする「Dark Field Control」
MateView GT 34はゲーミングモニターらしく、暗い部分を明るくする暗所補正機能「Dark Field Control(暗視野補正)」に対応します。0~2の3段階で調整でき、そこそこ効果も高いです。
暗いシーンの多いDead by Daylightも、Dark Field Controlを使うと暗い部分のディティールが若干浮かび上がって視認性が改善します。
HUAWEIはモニターメーカーとしてはまだ新興勢力なので期待していなかったですが、意外とちゃんとした暗所補正をいきなり実装していて驚きました。BenQの「Black eQualizer」ほどではないにしろ、機能として使えるレベルです。
Apex LegendsでもDark Field Controlの効果はそこそこ良好です。
一部のゲームで便利な「照準線」
画面上に「照準線(クロスヘア)」を表示する機能です。Dead by Daylightなど、クロスヘアが表示されないゲームで有利ですが、ハードウェアチートな感じを否定できません。
「ブルーライトカット」はやはり尿液晶
医学的根拠のないブルーライトカット機能を使うと、画面が見事に「尿液晶」と化します。色温度が著しく暖色に偏るので、使うメリットは皆無です。
7個ある「プリセットモード」をチェック
「プリセットモード」はモニター側に最初から保存されているプロファイルです。MateView GT 34には、全7種類のプリセットモードが用意されています。
7種類あるプリセットモード | |
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P3 | DCI P3色域を90%近くまで拡張するHDRに適した設定 |
Scenery | 寒色よりの色温度と高コントラスト比 |
Movie | Sceneryよりさらにコントラスト比を高めた映画向けの設定 |
sRGB | sRGB規格に準拠した設定(ΔE < 2.0) |
MOBA | 彩度を著しくカットしたMOBA向けの色設定 |
RTS | RTSゲーム向けの色設定 |
FPS | 暗所を明るく見せるFPS向けの色設定 |
デフォルト設定の「P3」モードが無難におすすめです。sRGBより鮮やかで万人向けな色設定と広い色域(DCI P3が90%近い)、ほぼ6500Kのちょうどよい色温度で全体的にバランスの取れたプロファイルです。
他のモードは用途に合わせて使ってください。色の正確さを重視するなら「sRGB」モードがベストです。sRGBに対する正確さはΔE < 2.0を実現しており、とても正確です。
「HDR」機能と性能
MateView GT 34の基本的なHDR性能を測定しました。
MateView GT 34のHDR性能i1 Pro 2で測定した結果 | |
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全画面輝度 | 457.8 cd/m2 |
ピーク輝度 | 461.4 cd/m2 |
黒色輝度 | 0.16 cd/m2 |
コントラスト比 | 2883.8 : 1 |
DCI P3色域 | 89.2 % |
色深度 | 8 bit(165 Hz) 10 bit(120 Hz)Display Port 1.4使用時 |
「優れたHDR性能」を初心者さんに分かりやすく説明すると
- 明るさ:明るいほど良い(超ハイエンド機なら1000 cd/m2超)
- 黒色:無点灯に近いほど良い(0.1 cd/m2以下なら実用上は十分)
- コントラスト比:高いほど良い(5000 : 1以上で実用上は十分)
- 広色域:DCI P3が広いほど良い(DCI P3なら90%以上は欲しい)
めちゃくちゃ明るくて、暗い部分はちゃんと真っ暗。さらに表示できる色も広い。これらの条件を満たしているなら「高性能なHDR」で、高性能なHDR性能を持つモニターは基本的にDisplay HDR規格を取得しています。
HDR 600以上なら、まずハズレなし。HDR 1000やHDR 1400を取得しているモニターは超ハイエンド機です。
なお、有機ELパネルは特性上、HDR性能を伸ばせないので注意してください(※有機ELは画面を明るくするほどパネルの故障率が上昇するため、画面が明るくなりすぎないように制御されています)。
MateView GT 34のHDR性能はかなり良いです。
Display HDR 400認証をとっていないですが、ピーク輝度と全画面輝度ともに400 cd/m2を軽くオーバーしているうえに、DCI P3色域はほぼ90%に達します。VAパネルの性質で締まった黒色も出力でき、へたにHDR 400認証をとっただけのモニターよりHDR性能が高いです。
HDR 400を余裕で取れる性能なのに、なぜ認証ロゴが無いのか。おそらくライセンス料を節約して少しでも販売価格を抑える狙いがあるかもしれません。
HDR対応コンテンツ「Morocco 8K HDR」と、4K HDR対応の「君の名は(Ultra BD)」にて、ざっくりとMateView GT 34のHDR映像をテストします。
3000近いコントラスト比と460 cd/m2に達する高いピーク輝度のおかげで、割といい感じのHDR映像を出力できます。
もちろん、ローカル調光を使っているハイエンドHDR機(HDR 600以上)と比較したらまったく勝てないですが、並のHDR 400モニターよりリアルな映像が出ています。
MateView GT 34は低価格ながら、それなりのHDR性能も両立するコスパに優れたゲーミングモニターです。
まとめ:湾曲型ゲーミングモニターのベスト入門機
「MateView GT(ZQE-CBA)」の微妙なとこ
- パネルの均一性は普通
- 応答速度は平凡
- やや派手な色づくり(ΔEは3以上)
- HDRのピーク輝度は控えめ
- ゲーマー向け機能が少ない
- 湾曲型はやや用途を選ぶ
- PS5で最大60 Hz
(4Kダウンコンバートも不可) - 内蔵スピーカーなし
「MateView GT(ZQE-CBA)」の良いところ
- 「3440 x 1440」で没入感を得やすい
- 34インチで21 : 9のWQHD(万人向け)
- 最大「165 Hz」に対応
- 高いコントラスト比
- 「sRGB」モードで色が正確(ΔEは2未満)
- 暗所補正に対応
- 入力遅延が少ない
- そこそこのHDR性能
- 必要十分なエルゴノミクス
- 1年保証
- コスパが非常に高い
「3440 x 1440」かつ「165 Hz」に対応したゲーミングモニターとして、MateView GT 34はぶっちぎりで安いですが、性能はおおむね優秀で価格以上の内容です。
数ある湾曲型モニターの中で、一番「入門機」にふさわしいです。普通の16 : 9で湾曲型だと没入感を得られるコンテンツをかなり選ぶ問題がありますが、21 : 9のWQHDなら割とどんなゲームでも没入感を得られやすいです。
最大165 Hzの高リフレッシュレートも没入感を得るために一役買っています。内蔵スピーカーの省略や、ゲーマー向け機能の少なさなどコストカットの影響はたしかに感じられますが、5万円で買えるなら十分に魅力的なモニターです。
- 湾曲型ゲーミングモニターがほしい
- 競技性より映像美を重視したい
- 没入感のあるPCゲーム体験をしたい
没入感のあるPCゲーム体験をしたい、映像美を重視するゲーマーにおすすめです。
FPSゲーマーにとっては21 : 9のアスペクト比で視野角が広がるので一定のメリットを得られます。が、応答速度と機能性でガチのFPS向けモニター(例:Zowie XL2546Kなど)に劣っている点は忘れずに。
以上「MateView GT 34(ZQE-CBA)レビュー:湾曲型ゲーミングモニターのベスト入門機」でした。
(25%OFFクーポン:A825OFF)
※有効期限は2022年10月3日まで
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
仕様表記 パネルの部分がIPSになってます
ありがとうございます。VAパネルに修正しました。
サウンドバーを搭載している方のモデルはアマゾンのセールで5万円まで時々値下がるので、急ぎじゃなければセール待ちで買ったほうがお得?
プライムデーとかサイバーマンデー級の大型セールなら5.5~5.8万円が見られそうですね。
メーカーサイトでは電源アダプタは135Wと記載されていますが、本記事では75Wになっています。
どちらが正しいのでしょうか。
サウンドバー付きモデルが135Wで、スピーカーなしのStandard Editionが75Wだと思われます。
これ買いました。正月セールの時はバカみたいなコスパ(42k)でめちゃ性能よかったのでかなりあたりでしたね。
コスパってワードが合ういいモニターだった。
自分の用途にあわなかったのですぐ手放したけど
16:9でゲーム・映画見たい人は素直にWQHDモニターのほうがいい
細かいところですが…
記事の初めの方に書いてある、GSMはGMS(Google)(Mobile)(Services)ではないでしょうか?(ちなみに最近のHUAWEI製スマホはHMS(Huawei)(Mobile)(Services)が搭載されてます。)
一々すみませんm(*_ _)m
BenQが出す予定の34インチウルトラワイドの曲率1000Rのモニタも出たらレビューしてもらいたいです
PS5で60HzなのはPS5が悪いだろ
あとブルーライトカットは夜にするなら意味ある
PS5 4kダウンコンバート不可とのことですが、WQHD表示にはならずフルHDになってしまうということでしょうか?
今Hauwei直販サイトで30%オフクーポンになっているようです。43,800円は安いと思われる。