ゲームプレイの快適さと、オフィスワーク時の作業性を両立しやすいと考えている40インチ前後のゲーミングモニターは、ここ2~3年ほどラインナップ自体が少ない状況です。
そんな40インチ不況の中、まさかのBenQから38インチ4Kゲーミングモニター「MOBIUZ EX381U」が登場。想定しているより価格も安かったから、実際に買ってレビューします。
(公開:2025/1/1 | 更新:2025/1/1)
「MOBIUZ EX381U」はどんなゲーミングモニター?
- 4K(3840×2160)で「最大144 Hz」
- 大判な「37.5インチ」パネル採用
- 強力なゲーマー向け機能を搭載
- 便利なリモコンが付属
- PS5で120 Hz(VRR)に対応
「MOBIUZ EX381U」はまだまだ選択肢が非常に少ない、世にも珍しい「37.5インチ(38インチ)」の大判パネルを搭載した4K HDRゲーミングモニターです。
BenQ MOBIUZ EX381U | |
---|---|
パネルタイプ | 4K(3840×2160)で最大144 Hz IPSパネル(37.5インチ) |
応答速度 | 1 ms (G2G) |
主な機能 ゲーマー向け |
|
調整機能 エルゴノミクス |
|
VRR機能 | VESA Adaptive Sync ※G-SYNC互換モード対応 |
参考価格 ※2024/12時点 | |
Amazon 楽天市場 Yahooショッピング |
BenQ MOBIUZ EX381U | |
---|---|
画面サイズ | 37.5インチ |
解像度 | 3840 x 2160 |
パネル | IPS (DCI P3カバー率:98%) |
コントラスト比 | 1000 : 1 |
リフレッシュレート | 144 Hz HDMI 2.1 : ~144 Hz DP 1.4 : ~144 Hz |
応答速度 | 1 ms (G2G) |
光沢 | ノングレア |
VESAマウント | 100 x 100 mm |
エルゴノミクス |
|
主な機能 |
|
HDR対応 |
|
同期技術 | VESA Adaptive Sync ※G-SYNC互換モード対応 |
スピーカー | なし イヤホン(3.5 mm)端子あり |
主な付属品 |
|
寸法 | 667 x 861 x 306 mm |
重量(実測) |
|
保証 | 3年保証 (液晶パネルは1年保証) |
BenQの旗艦ゲーミングブランド「MOBIUZ」シリーズから、37.5インチ版の4K HDRゲーミングモニターがようやく登場した形です。
パネルの種類はシンプルに「IPS」パネルとだけ書いてあるだけですが、スペック表で応答速度:1ミリ秒 / DCI P3:98%カバーと記載があるので、いわゆる「Fast IPS」パネルに分類できます。
テレビ並に大きい約40インチながら、ゲーミングモニター並の応答性能と画質を両立します。
40インチ前後のテレビもゲーミングモニターも、そもそもラインナップが少なすぎて選ぶのが困難な状況が続いているから、BenQから大判モニターが出てきてくれて嬉しい限りです。
もちろんMOBIUZシリーズらしく、暗所補正「Light Tuner」「Shadow Phage」、鮮やかさ補正「Color Vibrance」、残像軽減「ブレ削減」とフル装備の機能。
映像エンジン「AI PixSoul」
加えて最新のMOBIUZから導入が始まった映像エンジン「AI PixSoul」も搭載します。シーンに応じて自動でコントラストや色彩を最適化する、テレビ的な映像エンジンです。
その中で「パネルの均一化」もアピールされており、液晶パネルの課題である色ムラを抑えられる効果も期待できそうです。
【38インチ】大画面で没入感と作業性よし
MOBIUZ EX381Uは38インチの大判パネルです。一般的に大きいと言われる27インチと並べてみても、体感1.6倍くらいの広さに感じます。
4Kモニターで人気が高い32インチよりも、MOBIUZ EX381Uの38インチは一回り大きいです。
ちょっとしたテレビ並のサイズ感でPCモニターとして使うには大きすぎる印象を受けますが、実は・・・ 40インチ前後の4K解像度は20インチ前後のフルHDと同じドット密度です。
- 38インチ(3840 x 2160):約116 ppi
- 21.5インチ(1920 x 1080):約102 ppi
27~32インチ4Kモニターを試して「文字やアイコンが小さすぎて見えないからスケーリング倍率を変えてしまおう」と、なりがちですが、40インチ前後なら等倍スケーリングで違和感なく使えます。
特に、3~4枚のマルチディスプレイ環境のユーザーにとって、大判シングルディスプレイは意外と刺さるかもしません。
少なくとも、筆者はフルHDを4枚並べた環境を1枚で得るために40インチ前後を好んで使っています。
実質マルチディスプレイで得られる高い作業性だけでなく、大画面で視界を占有して得られる「没入感」も大判モニターのメリットです。
「サイレントヒル2(リメイク版)」をMOBIUZ EX381Uで2日がかりでプレイしてみると、没入感がすごすぎて少し気持ち悪くなるほど。
やっぱりフルスクリーンの4Kゲーミングに没入するなら(個人的に)大判モニターが一番しっくり来ます。
では「38インチ」に対するコメントはこれくらいで終わりにして、いつもどおり測定機材も使いながらMOBIUZ EX381Uの画質を評価します。
やや「黄緑」に偏った色合い
初期設定(ファンタジーモード)の画質は微妙です。
全体的に暗めにズレたコントラスト感を重視したチューニングに加えて、妙に黄緑っぽい灰色に偏っています。青白いだけなら日本人好みで良かったのですが、黄緑は歓迎されないです。
測定機も使ってOSD設定を調整
キャリブレーターで測定しながら、モニター側の設定(OSD)を手動で調整しました。
- モード:カスタム
- 明るさ:100
- 色温度:ユーザー
- 赤:100
- 緑:90
- 青:91
- Light Tuner:-3
- Shadow Phage:オフ
- ガンマ:2
以上の設定で、ニュートラルな色温度(白色)である6500Kにおおむね調整できます。
画面の明るさは好みに合わせて調整してください。明るさ100%だとかなり明るいです(個人的な好みで350 cd/m²に合わせているだけ)。
手動で調整後、ニュートラルなグレーに仕上がります。
黒階調が暗くなりすぎたり、中間階調がなぜか明るくなりすぎる変なコントラスト感もかなりマシに改善されています。
やはりBenQの初期チューニングはクセ強め。ASUSなら標準的な色合いをやや派手めに仕上げる程度ですが、BenQだと標準を無視して独自の世界観を展開してくるイメージ。
(三角形の面積が広い = 色域が広い)
- MOBIUZ EX381U(IPS)
- EX-GDQ271JA(AHVA IPS)
- DELL AW3225QF(QD-OLED)
- LDQ271JAB(量子ドットIPS)
- Xiaomi A24i(普通のIPSパネル)
画面から出ている「色の広さ」を、5台のゲーミングモニターを実測して比較しました。
MOBIUZ EX381Uは最近よくあるFast IPSやAHVA IPSパネルに匹敵する面積です。高級モニターで増えてきた量子ドットには届かないものの、並のIPSパネルよりずっと鮮やかな色を出せます。
もっと厳密にキャリブレーション(校正)したいガチな方は、筆者が作成した3D LUTプロファイル(.cube)を試してみてください。
フリーソフト「dwm_lut」を使って3D LUT(.cube)を適用したら、ゲーミングモニターのOSD設定を以下の内容に変更します。
- モード:カスタム
- 明るさ:100
- 色温度:ユーザー
- 赤:99
- 緑:90
- 青:92
- Light Tuner:-3
- Shadow Phage:オフ
- ガンマ:2
3D LUTの効果を確かめます。
シンプルに約200ポイント測定でプロファイルを作ってみました。ほぼ正確にガンマ2.2に校正されています。
常用グレースケールで色温度もほぼ6500K前後に一致します。
色の鮮やかさを損なわないように、できるだけ色域を変えないように作ってます。鮮やかさをそのままに、ガンマと色温度を規格どおりに調整する3D LUTプロファイルです。
DCI P3:98%パネルの画質をじっくり見てみる
MOBIUZ EX381Uの液晶パネルは単に「IPSパネル」とだけ記載されているだけですが、実測値でDCI P3:98%を超える色の広さがあり、シンプルに鮮やかです。
年式の古い液晶パネルや、視野角が狭くて画質が変色しやすいTNパネルのゲーミングモニターから乗り換えたなら、MOBIUZ EX381Uの高画質っぷりをすぐに体感できます。
コントラスト感はごく普通です。実測で900~1000:1程度しかないから、黒色がほんのり白く見えます。
(sRGB:ΔE = 4.1 / 色温度:6904K / 輝度:332 cd/m²)
Youtubeやアニメ、FPSゲーム(タルコフやOverwatch 2)、RPGゲーム(原神や崩壊スターレイル)をMOBIUZ EX381Uで表示した例です。
画面の明るさと色の鮮やかさ、どちらも十分に表示できていて分かりやすく高画質に見えます。
IPSパネルの弱点である低いコントラスト比を除けば、おおむね不満のない画質に仕上がっています。
カラフルな色彩を使ったイラスト画像(原神の★5恒常キャラ「刻晴」より)で比較。
パッと見た印象なら思ったより良い勝負ですが、赤色のビビットさで量子ドット(P32A6V-PRO)がMOBIUZ EX381Uを上回ります。
カルト的な人気を誇るオープンワールド型FPS「Escape from Tarkov(タルコフ)」のワンシーンで比較。
悪く言えば「映えない」「無味乾燥」した映像だと、量子ドットと普通のIPSパネルの性能差は分かりにくいです。
中央のLED看板や左上の赤いポスターに注目すれば量子ドットの差が見えてくるものの、普通にゲームをプレイしていて気づくのは難しいです。
もっと比較写真を見たい方は↑こちらからどうぞ。
MOBIUZ EX381Uに施されたパネル表面加工は、PC用モニターで定番の「ノングレア加工(アンチグレア)」です。
ぼんやりと背景がしっかり拡散され、周囲が明るくても映り込みをかなり防いでいます。
部屋を暗くすると、映り込みがさらに軽減されます。
表面粒子が少し細かくて、透過性が高いです。周囲の映り込みを防ぎつつ、色の純度やテキストの見やすさも損なわない、ちょうどいい塩梅のアンチグレア加工が施されています。
ごく普通のIPSパネルだから視野角が広いです。
斜め方向から見ても、画面が白くなったり黄ばんだりする傾向が少なめ(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。なお、OLEDパネルには到底勝てません(→ 参考写真)。
文字のドット感(見やすさ)はそこそこ鮮明です。
- ドットがRGB配列:テキスト表示に有利
ピクセル配列の拡大写真 - 画素密度が116 ppi前後:標準的なドット密度
テキスト表示に有利なRGB配列のIPSパネルに、100 ppi前後のスタンダードな画素密度を備えます。
普通の距離感(50~60 cm)で見る分には、ドット感がほとんど目立たない鮮明なテキストです。
40インチ前後の画角だと、70~80 cm前後の距離を取って使うから、なおさらドット感は目立たないです(※視力による)。
全部で「6個」あるカラーモードを比較
- Sci-Fi
- リアル
- ファンタジー(初期設定)
- シネマ
- Display P3
- sRGB
MOBIUZ EX381Uは、全部で6個の「MOBIUZカラーモード」が用意されています。それぞれテーマに合わせた独自の調整機能です。
たとえば「シネマ」モードなら、暗い階調を実際よりも大幅に黒く強調して、コントラスト比を高めます(実測で200:1くらい上昇)。
「Sci-Fi」は青白く全体的にかなり派手な色合いに調整され、「リアル」は逆にコントラスト感の過剰演出を抑えて標準画質に寄せた調整など。
カラーモードごとにメーカー側の意図があります。
「Display P3」と「sRGB」モードは名前のとおり、色域を制限して色の精度を高める(実測ΔE < 1.0)、クリエイター向けのカラーモードです。
ただし、クリエイターモードを有効化するとコントラスト比が500:1程度まで悪化するので少し使いづらいです。
モードごとの詳しいデータは ↓以下の測定レポートをどうぞ。
目標の基準値:sRGB(Gamma 2.2)
モード | 色域 (sRGB) | 色域 (DCI-P3) | 明るさ | グレーの正確さ | 色の正確さ | ガンマ | 色温度 | コントラスト比 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Sci-Fi | 100.0% | 99.0% | 307.8 cd/m² | ΔE = 3.16 | ΔE = 4.92 | 2.48 | 7721K | 863:1 |
リアル | 100.0% | 99.0% | 296.2 cd/m² | ΔE = 0.98 | ΔE = 4.15 | 2.26 | 8219K | 830:1 |
ファンタジー | 100.0% | 99.0% | 323.0 cd/m² | ΔE = 3.35 | ΔE = 4.25 | 2.50 | 7141K | 926:1 |
シネマ | 100.0% | 99.0% | 379.7 cd/m² | ΔE = 4.03 | ΔE = 4.67 | 2.65 | 7312K | 1082:1 |
Display P3 (ガンマ2.2) | 100.0% | 98.6% | 189.7 cd/m² | ΔE = 1.02 | ΔE = 0.79 | 2.23 | 6601K | 505:1 |
sRGB (ガンマ2.2) | 99.1% | 79.6% | 194.0 cd/m² | ΔE = 0.56 | ΔE = 0.38 | 2.23 | 6506K | 514:1 |
カスタム | 100.0% | 99.4% | 403.8 cd/m² | ΔE = 2.86 | ΔE = 5.09 | 2.26 | 7586K | 1134:1 |
MOBIUZカラーモードごとに、色温度やコントラスト比がかなり変わります。モードごとに色精度とガンマを任意に調整できるから、好みの画質に合わせるのは難しくないです。
なお、「Display P3」と「sRGB」モードの色精度とガンマカーブがかなり正確に調整されているものの、色温度がかなり黄ばんでしまっていて惜しいです。コントラスト比が500:1に下がる謎の挙動も残念でした。
「MOBIUZ EX381U」の測定レポートはこちら↓をクリックして確認できます。
なるべくシンプルな言い回しに置き換える努力をしていますが、やはり専門用語が多く難解に思われるかもしれないです。あまり興味がなければ飛ばしてもらって構いません。
モニターの色を測定する機材「X-rite i1 Pro2(分光測色計)」と「ColorChecker Display Plus(比色計)」を使って、「MOBIUZ EX381U」の画質をチェックします。
色の正確さ ※クリックすると画像拡大 | ||
---|---|---|
比較グラフ | グレーの正確さ | カラーの正確さ |
テスト | 初期設定のまま | sRGBモード |
使用モード | 標準 | sRGB |
明るさ | 323.0 cd/m² | 194.0 cd/m² |
グレーの正確さ(dE2000) | ΔE = 0.69 | ΔE = 0.55 |
色の正確さ(dE2000) | ΔE = 2.96 | ΔE = 0.38 |
ガンマ | 2.5 | 2.23 |
色温度 | 7141K | 6506K |
コントラスト比 | 926 : 1 | 514 : 1 |
初期設定のグレースケールがやや黄緑に(寒色気味)に偏っています。日本人の好みに合う「青白い」とも明らかに違う色合いだから、好みに合わせて調整をおすすめします。
色の正確さは・・・「広色域IPS」パネルの影響で色域が広くなりすぎて当然ズレます。普通にゲームやエンタメ用途で使うなら、色域が広い → 色が鮮やかに見えるので問題ないです。
- 今日は疲れてるから地味な色合いで見たい
- 「sRGB」色域じゃないと不具合が出るソフト
(※ペイントツールSAIが割と有名)
など、sRGB色域が必要であれば「sRGB」モードを使います。
と言いたいですが、sRGBモードを入れるとコントラスト比が半減してしまう上に、色温度も合ってないです。たしかに測定値でなら6500K前後にぴったり一致しますが、人間の目で見るとあまりにも黄ばんでズレています。
MOBIUZ EX381Uの目に見える6500Kは、ざっくり6850~6900K前後です。つまり、BenQは数値だけ合わせただけで、肝心の目視補正※をまったくやっていません。
通常のカラーモード(ファンタジーモードなど)状態で、フリーソフト「novideo_sRGB」を使ってsRGB色域に制限したほうがまだマシです。
※専門的に説明:測定値と肉眼で見えてるグレースケールがズレてしまう症状「メタメリック障害」を回避するために、sRGBリファレンスモニターを併用した知覚的なカラーマッチングが必要です。ちなみに数百万円する業務向けの測定機でも、メタメリック障害から逃れられません。必ず、人間の目で色合わせが必須です。
比較グラフはsRGBに対する正確さを求めているので、表示できる色が広いパネルほど不利です。
広色域IPSを採用するMOBIUZ EX381Uはもちろん不利だし、高画質な量子ドットパネルやOLEDパネルも不利になります。
「色の正確さ」が優れているからといって、エンタメ用途に楽しい画質かどうかは判断できません。sRGBの色精度が高い ≠ 主観的に見た高画質です。
コントラスト比を比較 ※クリックすると画像拡大 |
---|
MOBIUZ EX381Uのネイティブコントラスト比は926:1です。平均的なIPSパネルと大差なし。
画面の明るさ ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
画面の明るさを測定したグラフです。
100%時で323 cd/m²に達し、SDRコンテンツを見るのに不足ない明るさです。0%時だと65 cd/m²まで下げられます。夜間に暗い画面を好む人にとって、あともう一歩暗さが欲しいです。
目にやさしいらしい120 cd/m²前後は設定値20%でほぼ一致します。
色域カバー率(CIE1976) | ||
---|---|---|
規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 100.0% | 100.0% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 98.2% | 99.4% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 89.1% | 94.8% |
Rec.20204K HDR向けの色域 | 71.9% | 76.8% |
MOBIUZ EX381Uで表示できる色の広さ(色域カバー率)を測定したxy色度図です。
もっとも一般的な規格「sRGB」で100%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では99.4%カバーします。
印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は94.8%です。
エンタメ用途で重要なDCI P3とRec.2020カバー率の比較は上記リンクから確認してみてください。
広色域IPSパネルは、平均的なOLED(有機EL)パネル並に色域が広いです。
傾向的に、量子ドット液晶 > QD-OLED > 広色域な液晶 = OLED > 普通の高色域パネル > 平凡な液晶パネル > TNパネルの順に並びます。
色ムラの程度を測定。
一般的な液晶パネルと同じく、パネルの左右や四隅に近いほど明るさがやや落ち込みます。IPSパネルによくある「IPSグロー」と呼ばれる症状で、程度の差はあれど共通の症状です。
MOBIUZ EX381Uの色ムラは平均値で8.0%で、過去にレビューしてきた液晶パネルとして平均をやや下回る色ムラです。
実際の映像コンテンツやゲームプレイシーンで色ムラに気づく可能性が低いですが、画面全体に同じような色を表示するシーンなら色ムラや輝度落ちに気づきます。
たとえば、背景が一色になりやすいオフィスワーク(ブラウザやOfficeソフト)だと、四隅がうっすら暗くなっている傾向に気づくはず。
マクロレンズでパネルの表面を拡大した写真です。
テレビ向けの液晶パネルでよくある「逆くの字型」画素ドットでした。画素レイアウトは「RGB」配列で、赤・緑・青の順に並んでいます。
細い直線やテキストの表示と相性がいい、PCモニター向けの画素レイアウトです。
表面加工は透過率がやや高い丁寧なノングレア加工がかかっていて、画素ドットのりんかくがクッキリ見て取れるほどに透過率が高い様子。
光を分析する「分光測色計」を使って、画面から出ている三原色の鋭さ(波長)を調べました。専門用語でスペクトラム分析と呼ぶそうです。
グラフを見て分かるとおり、緑色がやや低めでなだらか、赤色に3つの山が出現します。特徴的な凹みが見られる波長パターンから、「KSF蛍光体(KSF Phosphor)」と判別できます。
KSF蛍光体のおかげで安物IPSパネルより赤色の波長が鋭くなり、赤色の純度が高まります。
ついでにブルーライト含有量を調べたところ約31.3%でした。
モニターの設定から「ブルーライト軽減:Lv1」モードを入れると、TÜV Rheinlandブルーライト認証に必要な25%未満を達成できます。
MOBIUZ EX381Uのゲーム性能は?
MOBIUZ EX381Uのゲーム性能をレビューします。
- 応答速度
- 入力遅延
- ゲーム向け機能
おもに「応答速度」「入力遅延」「ゲーム向け機能」の3つです。測定機材を使って調べてみます。
MOBIUZ EX381Uの応答速度と入力遅延
↑こちらの記事で紹介している方法で、MOBIUZ EX381Uの「応答速度」を測定します。
60 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
ニンテンドースイッチやPS4など、最大60 Hz対応のゲーム機で使う場合、60 Hz時の応答速度を気にします。
30パターン測定で、過去レビューで最速クラスに入る平均3.5ミリ秒を記録します。60 Hzに十分な応答速度です。
120 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
PS5やXbox Series Xで重要な120 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均3.16ミリ秒でした。
120 Hzに十分な応答速度が確保されています。PS5 / PS5 Pro / Xbox Series Xで残像感の少ないヌルヌルとしたゲームプレイが可能です。
144 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
144 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均3.18ミリ秒でした。
IPSパネルのゲーミングモニターとしてはかなり速いクラスです。
すでに十分な応答速度ですがオーバードライブ機能「BenQ AMA」を使って、さらに応答速度を改善できないかチェックします。
OD機能の効果 144 Hz / 4段階をテストした結果 | |||||
---|---|---|---|---|---|
平均値 | 4.24 ms | 3.18 ms | 2.76 ms | 1.82 ms | |
最速値 | 2.29 ms | 1.87 ms | 1.57 ms | 1.23 ms | |
最遅値 | 7.50 ms | 5.06 ms | 3.99 ms | 2.56 ms | |
平均エラー率 | 3.2 % | 6.7 % | 10.2 % | 31.8 % |
MOBIUZ EX381Uのオーバードライブ機能「BenQ AMA」は、4段階の細かさで調整できます。
「Lv2」以上で目に見える「にじみ」が出てしまい、「Lv3」ではっきりと「逆残像」が出ます。初期設定の「Lv1」時点で十分にオーバードライブが効いているようです。
結論、MOBIUZ EX381Uのおすすめオーバードライブ設定は「AMA:Lv1」モードで決まりです。
他のゲーミングモニター(120 Hz以上)と比較します。
平均3ミリ秒前後はIPSパネルとしてかなり速いです。
参考までに、60 Hzモード時の応答速度も掲載します。
オーバードライブ技術が進歩したおかげで、60 Hz時でもTNパネル並の性能です。
入力遅延(Input Lag)はどれくらいある?
2024年7月より「入力遅延(Input Lag)」の新しい測定機材を導入しました。
クリック遅延がわずか0.1ミリ秒しかないゲーミングマウス「Razer Deathadder V3」から左クリックの信号を送り、画面上に左クリックが実際に反映されるまでにかかった時間を測定します。
- マウスから左クリック
- CPUが信号を受信
- CPUからグラフィックボードへ命令
- グラフィックボードがフレームを描画
- ゲーミングモニターがフレーム描画の命令を受ける
- 実際にフレームを表示する(ここは応答速度の領域)
新しい機材は1~6の区間をそれぞれ別々に記録して、1~4区間を「システム処理遅延」、4~5区間を「モニターの表示遅延(入力遅延)」として出力可能です。
なお、5~6区間は「応答速度」に該当するから入力遅延に含めません。応答速度と入力遅延は似ているようでまったく別の概念です。
左クリックしてから画面に反映されるまでにかかった時間を測定し、左クリック100回分の平均値を求めます。
MOBIUZ EX381Uの入力遅延はまったく問題なし。
14 Hz時(G-SYNC互換モード)で平均3.8ミリ秒、120 Hz時(G-SYNC互換モード)で平均4.3ミリ秒の入力遅延です。
どちらも16ミリ秒を大幅に下回っていて、ほとんどすべての人が入力遅延を体感できません。
MOBIUZだからフル装備のゲーム向け機能
MOBIUZ EX381Uは4つある主要なゲーマー向け機能のうち、4つすべてに対応します。
- 暗所補正
暗い部分を明るく補正する機能 - 鮮やかさ補正
色の付いた部分を強調する機能 - 残像軽減
残像をクリアに除去する機能 - カクツキ防止
可変リフレッシュレート機能
順番にチェックします。
暗所補正「Light Tuner」モード
暗い部分を明るく補正できる「Light Tuner」モードです。
- 20段階(-10 ~ +10)
- オフ
全20段階でそこそこ細かく効果を調整できます。
さすがBenQはこの手の技術の先駆者だけあって、暗所補正の掛け方が自然です。最高設定(+10)でもほとんど白飛びせず、暗いエリアをうまく明るく補正して見せます。
画面全体が薄暗いホラーゲームから、視認性を向上させたいeSportsタイトルまで。幅広いゲームで効果が期待できる「やっぱりBenQ」といえるハイクオリティな暗所補正です。
暗所補正「Shadow Phage」モード
コンテンツの状況に応じて自動で暗所補正を行う、AI暗所補正エンジン「Shadow Phage」を比較写真です。
Shadow Phageはデフォルト設定で有効化されていて、「Light Tuner」と同時に掛かり強力な暗所補正効果を発揮します。
鮮やかさ補正「Color Vibrance」モード
色の鮮やかさを強調補正する「Color Vibrance」モードです。
- 20段階(-10 ~ +10)
- オフ
全20段階でそこそこ細かく効果を調整できます。
ReShadeエフェクトのように、色を見やすく強調して視認性を向上するBenQの人気機能です。
残像軽減「ブレ削減」モード
BenQさんは公式サイトであまり推していないようですが、「ブレ削減」と名付けられた残像を軽減するモードに対応します。
残像軽減モード 「ブレ削減」 ※クリックすると画像拡大 |
---|
「ブレ削減」を有効化すると、残像感が軽減されて映像のクッキリ感が増します。
フレーム切替時に真っ暗なフレームを1枚挟む「黒挿入」が行われ、結果的にホールドボケ現象が軽減されて残像感が減ったように見える仕組みです。
画面の明るさは下がる? |
---|
|
使える範囲は? |
|
一般的に残像を軽減する機能は「黒挿入」を使っているから、画面の明るさは下がります。
しかし、MOBIUZ EX381Uのブレ削減はどうやら従来モデルと性能が違っているようで、有効化しても画面がほとんど暗くならないです。
従来のブレ削減なら画面が暗くなっていたのに、いつのまにか「DyAc+」に匹敵する性能に進化していました。
4Kで144 Hz(PS5で120 Hz)に対応
MOBIUZ EX381Uは最大144 Hzまで、PS5で最大120 Hzに対応します。実際にPS5とゲーミングPCにモニターをつないでみて、リフレッシュレートの対応状況を確認しましょう。
PS5の対応状況 ※クリックすると画像拡大 | ||
---|---|---|
設定 | 60 Hz | 120 Hz |
フルHD1920 x 1080 | 対応PS5 VRR:対応 | 対応 PS5 VRR:対応 |
WQHD2560 x 1440 | 対応PS5 VRR:対応 | 対応PS5 VRR:対応 |
4K3840 x 2160 | 対応PS5 VRR:対応 | 対応PS5 VRR:対応 |
PS5でフルHD~4K(最大120 Hz)に対応します。もちろん、HDMI 2.1 VRR搭載だから「PS5 VRR」も対応。
実際にゲームが120 Hzで動くかどうかは、ゲームによって対応状況が違うので注意です。
たとえばフォートナイトなら120 fpsかつ120 Hz動作ですが、ストリートファイター6は60 fpsで120 Hz動作になるなど、ゲームによって挙動が違います。
対応リフレッシュレート ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
MOBIUZ EX381Uがパソコンで対応しているリフレッシュレートは以上のとおりです。
HDMI 2.1で最大144 Hzまで、DisplayPortも最大144 Hzに対応します。60~23.98 Hzの範囲で細かく選べる、古いゲーム機やレコーダーを便利そうなHzも用意されています。
VRR機能(可変リフレッシュレート) ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
フレームレートとリフレッシュレートを一致させて「ティアリング」を防ぐ効果がある、VRR機能はHDMIとDisplay Portどちらでも使用可能です。動作範囲は48~180 Hzです。
LFC(低フレームレート補正)対応ハードウェアの場合は、48 Hzを下回ってもVRRが機能します。ちなみにPS5はLFC非対応だから48 Hzまでです。
MOBIUZ EX381Uの機能性を調査
BenQの旗艦ブランド「MOBIUZ」の名に恥じない、充実した機能性を備えます。
- エルゴノミクス
高さや角度を調整する機能 - インターフェイス
映像入力端子やUSBポートについて - ヘッドホン端子
ESS Sabre DAC搭載の3.5 mmアナログ端子 - フリッカーフリー
眼精疲労持ちなら重要かもしれない - ブルーライトカット
エビデンスは無いけれど気にする人はどうぞ - 自動調光
周囲の明るさに応じて画面の明るさを調整 - OSD + リモコン
On Screen Display(設定画面)
順番にチェックします。
自由に位置を調整できる「エルゴノミクス」機能
MOBIUZ EX381Uは必要十分なエルゴノミクス機能を備えます。
しかし、定価14万円の値段を考えるとスムーズさに不満がありました。高さ調整や左右スイベルが微妙に硬くて、動き出すまでにタイムラグが少しあるイメージです。
ピボットは非対応ですが実際には1~3°程度の「あそび」がなぜか実装されていて、絶妙に水平に揃えられない変な設計も気になります。
頑張って水平に揃えたつもりでも左右どちらかに0.1~0.2°ほど傾いていて、完全な水平(0°)に出来ないです。
38インチの大判モニターにエルゴノミクス機能があるだけでもマシかもしれないですが、定価14万円ならもう少しスムーズで、ズレの少ない設計にして欲しいです。
VESAマウント ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
別売りモニターアームを取り付けるのに便利なVESAマウントは「100 x 100 mm」に対応します。
パネル本体の重量は約8.83 kgで普通のモニターアームで持ち上げられます。
モニターアームに付属する小ネジ(4本)を使って、そのまま「エルゴトロンLX」アームを取り付けられます。
「ヘッドホン端子」の音質をテスト
非常に優れたオーディオ特性を持つ「RME ADI-2 Pro」を用いて、MOBIUZ EX381Uのオーディオ性能をテストします。
SN比を比較 ※クリックすると画像拡大 |
---|
さすが「ESS Sabre DAC」搭載をアピールするだけあって、ゲーミングモニターのイヤホン端子で過去最高のオーディオ特性を記録します。
低価格なオーディオデバイスに迫る性能ですが、ポータブルタイプの専用DAC機材には勝てません。
周波数特性グラフです。
- サラウンドモード:フラット
- シネマモード:中音域をブースト(低音域と高音域を減衰)
- 標準モード:フラット
3種類のサウンドモードごとに、周波数特性が味付けされています。標準モードが一番フラットな特性です。
比較的鳴らしにくい「Sennheiser HD650」をつないで聴いてみた。
・・・普通に聴けるレベルの音質でびっくり。安物のゲーミングモニターによくある「こもった」感じが大幅に軽減されていて、低音域もきちんと鳴っています。
OSD設定から「ハイゲインモード」を有効化すれば、鳴らしにくいSennheiserHD 650でも十分に大きい音量を取れます。
音にそこまでこだわりがない人なら満足できる音質です。
対応するインターフェイスをチェック
モニター本体の底面に操作系のボタンが、本体の右側に映像端子が配置されています。
パソコン本体を左側に置く配置だと、ちょっと長めのHDMIケーブルやUSB Type-Cケーブルが必要になりそうです。
映像端子はUSB Type-Cを含めて全部で5つもあり、5つすべての端子が最大144 Hz(3840×2160)に対応します。
- 15 W(5.0 V x 3.0 A)
- 27 W(9.0 V x 3.0 A)
- 36 W(12.0 V x 3.0 A)
- 45 W(15.0 V x 3.0 A)
- 90 W(20.0 V x 4.5 A)
USB Type-Cポートで最大90 WのUSB給電(USB PD)に対応します。
ノートパソコンに接続して、平均58 W(最大70 W)の充電速度を確認できます。
対応するUSB Type-Cケーブル1本で、ノートパソコン(ASUS Vivobook 15)を充電しながら、外部ディスプレイ(最大4K 144 Hz / 10 bitまで認識)として使えました。
eARC対応スピーカーのHDMI端子と、ゲーミングモニター側のeARC対応HDMI端子を接続します。
(KEF Connect アプリから入力切替)
ゲーミングモニター側の音声出力を「HDMI eARC」に切り替え、スピーカー側の音声入力を「TV(HDMI eARC)」に切り替えて設定完了です。
これだけで、HDMIケーブルを経由してスピーカーから音出しが・・・ なぜか音がどうやっても出ないです。ゲーミングPC、PlayStation 5で動作検証して、KEF LSX II LTから音が一切出ないと確認済み。
1000円未満で買える安価なHDMI 2.0ケーブルで動作確認をしています。音声を送るだけですから、高帯域幅(48 Gbps)なHDMI 2.1ケーブルは不要です。
「フリッカーフリー」対応ですか?
メーカー公式サイトに「フリッカーフリー(Flicker-free Technology:Yes)」の記載あり。
フリッカーフリーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
実際にオシロスコープを使ってフリッカーの有無をテストした結果、明るさ0~100%までフリッカーが一切検出されません。
フリッカーの基準 | 結果 |
---|---|
一般的な基準 0 Hz または 300 Hz以上 | 問題なし (= 0 Hz) |
TÜV Rheinland認証 0 Hz または 3000 Hz以上 | 問題なし (= 0 Hz) |
完全なフリッカーフリーを可能にする「DC調光」方式のゲーミングモニターです。
目を酷使する長時間のオフィスワークもなんとなく安心な(気が)します。
VRRフリッカーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
VRR(G-SYNC互換モードなど)有効時の「VRRフリッカー」は、残念ながら目に見えるレベルの「ちらつき」が出てます(※上記グラフはPWMフィルタリング後のデータ)。
少し明るめのグレー階調でちらつきが出やすく、明るいエリアや真っ暗なシーンはまったくフリッカーが出ないです。
「サイレントヒル2(リメイク版)」を2日くらい延々とプレイしていても、ちらつきに気付けなかったため、実際のゲームプレイでVRR時のちらつきが気になる可能性は低いです。
「ブルーライトカット」機能をチェック
- レベル1~4
- オフ
OSD設定 → Eye-Care → 「ブルーライト軽減」モードでブルーライトカット効果を適用できます。
オフの時点で青色の含有量が約31%でかなり低く、ブルーライト軽減:レベル1以上でブルーライト含有量が25%(TÜV Rheinland基準)を切ります。
穏やかに変化する自動調光「B.I.+ Gen 2」
(部屋の電気を消して実験した様子)
モニター下部中央の大きな出っ張りに「照度センサー」が内蔵されています。照度センサーで周囲の明るさや色温度(暖色~寒色)を認識して、自動的に画面の明るさと色温度を調整する機能です。
従来の「B.I.+」は、周囲の変化に対して反応速度がかなり速く、ゲーム中に色の変化に気づいてしまって若干イライラする仕様でした。
今作の「B.I.+ Gen 2」から反応速度に大幅な調整が入り、明るさの変化に30秒~1分ほど、色温度の変化に至っては1分くらいかかる仕様です。
色温度の変化幅(レンジ)も従来よりやや狭めに調整されているようで、普通にゲームをプレイしていると・・・リアルタイムに色温度の変化に気づくのは難しかったです。
どれくらい速く周囲の変化に適応させるかは、OSD設定の「感度センサー」から0~100(10段階)で設定できます。最大値の100が、従来のB.I.+と同じくらいの適応速度です。
最低値の0だと非常にゆっくり変化します。アハ体験を見抜くのが得意でなければ、リアルタイムに気付けないと思います。
モニターの設定画面(OSD)
モニター本体の中央底面にある「5方向ボタン」を使って、OSD設定をスムーズに操作できます。
または付属の「リモコン」でOSDを手元からポチポチと設定できます。
ASUSやMSIと同様に、BenQも項目ごとに分かりやすく整理されたフォルダ階層型のOSDレイアウトを採用。レスポンスも良好でとても快適。
やや項目が多いものの5方向ボタンのおかげでストレスなく操作できます。右に倒して決定・進む、左に倒して戻る・キャンセル、上下で項目の調整ができます。
5方向ボタンの中央を押し込む操作がほとんどなく、レバーを左右に倒すだけで設定できる快適な操作性を実現しています。
- クイックメニュー(3項目)
- プリセットごとに調整(設定値の保存も可能)
クイックメニューに最短2回の操作で任意の項目を開けるショートカットを最大3個まで登録できます。
「Light Tuner」や「Shadow Phage」、「輝度」や「Color Vibrance」など。ゲーマー向け機能や画質の調整に関係する項目をほとんど登録可能です。
全部で4スロットあるMOBIUZカラーモードごとに好みの設定値を保存して、用途に使い分ける運用も可能(※sRGBモードなど一部モードは非対応)。
MOBIUZ EX381UのHDR性能をテスト
MOBIUZ EX381Uは、「Display HDR 600」認証したモニターです。
Display HDR 600認証は全部で4つあるHDRグレードで下から数えて2番目に位置するエントリーグレードにあたり、HDR 400より明るいHDR性能を保証します。
Youtubeで公開されている「Morocco 8K HDR」や、HDR対応ゲームを使って検証します。
(HDR映像を収めた写真はSDRです。掲載した写真は参考程度に見てください。)
MOBIUZ EX381UのHDRモードはやや問題があります。
まず、コントラスト「感」が低いです。本来もっと暗く表示されるべき色が妙に浮き上がっていて、結果的に明るいシーンが相対的に目立たず、メリハリに欠ける映像観に仕上がっています。
加えて、色温度が全体的に黄緑に偏っているのも残念ポイント。・・・OSD設定から色温度を調整できますが、浮き上がったコントラスト感は直せないから、メリハリの無さはそのままです。
- Sci-Fi HDR
- Real HDR
- Fantasy HDR(初期設定)
- Cinema HDR
- Display HDR(おすすめ)
全5つのHDRモードがあり、「Display HDR」が比較的マトモな色合いです。
HDRモード時の明るさが正しいか測定したグラフです。
Display HDRモードがもっとも規格に忠実で、コントラスト感も優秀。Fantasy HDRやCinema HDRはなぜか暗い階調を実際よりも明るく浮きあげてしまい、コントラスト感を大きく損ないます。
もし、HDRモードを使うなら「Display HDR」一択です。Display HDRモード時は色温度の設定など一切できないですが、コントラスト感の改善が大きなメリットです。
HDR 1400モニターと比較※画像はクリックで拡大 | |
---|---|
MOBIUZ EX381UDisplay HDR 600 (CTS 1.1) | TITAN ARMY M27E6V-PRODisplay HDR 1400 (CTS 1.1) |
参考程度に、Display HDR 1400対応ゲーミングモニターと比較した写真です。
参考程度に、OLEDパネルとコントラスト感を比較した写真も置いておきます。
MOBIUZ EX381UはエッジライトLED(16分割)です。パネルの端っこに配置された16個のLEDバックライトを点灯させて、コントラスト比を稼ぎます。
しかし、分割数が少なすぎてコントラスト比が向上するシーンはごくわずか。画面全体が暗いシーンだと、バックライトが敏感に反応するせいで「ちらつき」に感じる場面も・・・。
- 画面が真っ暗 → 約6000:1くらい
- 一部が明るい → 約1000:1に低下
ほとんどのシーンでコントラスト比はせいぜい1000:1程度です。画面全体が真っ暗なシーンだけ6000:1前後を出せますが、実用上まったく意味のないコントラスト比です。
コントラスト比が低くなる問題を解決するには、OLED(自発光型)にするか、LEDバックライトを細かく分割したMini LED方式を選ぶしかないです。
モニター測定機材でHDR性能を評価
モニターの色や明るさを測定できる機材を使って、「MOBIUZ EX381U」のHDR性能をテストします。
測定結果(レポート)はこちら↓からどうぞ。専門用語が多いので・・・、興味がなければ読まなくていいです。
VESA Display HDR HDR性能のテスト結果 | ||
---|---|---|
比較 | テスト対象 MOBIUZ EX381U | VESA Display HDR 600 |
画面の明るさ |
|
|
黒色輝度 |
|
|
コントラスト比 |
|
|
色域 |
|
|
色深度 |
|
|
ローカル調光 |
|
|
Display HDR 600認証(CTS 1.1)で要求されるすべての項目で合格です。
HDRモード時の明るさ、コントラスト比、色の広さ。どれをとっても基準値を上回ります。ただし、最新基準「CTS 1.2」から追加要求される8000:1のコントラスト比はクリアできなかった※です。
※MOBIUZ EX381UはCTS 1.1で認証を取っているから問題なし。
HDRモードで画面全体に白色を表示したときの明るさを、他のモニターと比較したグラフです。他社のHDR 600認証モデルと横並びに。
HDR時のコントラスト比(理論値)は、6871:1です。
HDRコントラスト比i1 Display Pro Plusで測定した結果 | |
---|---|
全画面 | 6870.6 : 1 |
10%枠 | 949.1 : 1 |
3×3パッチ | 950.8 : 1 |
5×5パッチ | 949.3 : 1 |
7×7パッチ | 948.1 : 1 |
9×9パッチ | 947.7 : 1 |
テストパターン別にHDRコントラスト比を測定した結果、ワーストケースで948 : 1です。
16×1分割のエッジライト方式でできるローカル調光は、あくまでもDisplay HDR 600(CTS 1.1)基準をクリアするための苦し紛れの技術的な対策で、人間の目で見て得られる実用上のメリットは非常に限られています。
Mini LEDとまでは言わないから、せめて直下型LEDバックライトを100分割くらい入れてくれたら別次元に良いHDR映像になったはずです。
HDR規格どおりの明るさを表示できるかチェックする「PQ EOTF」グラフです。
- Display HDR
(※モード以外は何も設定できません)
「Display HDR」モードを初期設定のまま測定しました。
グラフを見て分かるとおり、上から下までPQ EOTF規格にキレイに追従する傾向が非常に強く、そこそこ精度の高いHDRモードです。
暗部階調がやや明るく表示されるものの、そもそもコントラスト比が1000:1程度しかない普通のIPSパネルだから、大した問題に見えませんでした。
おおむね精度が高めに整っており、キャリブレーションができないゲーム機(PS5)でも問題なく使える性能に仕上がっています。
面積比による明るさの変動はまったくありません。
小さいハイライトから全画面まで、一貫して650~660 cd/m²前後の明るさを維持します。
HDRモード時の持続輝度をチェック。
すべての面積比で安定した持続輝度です。明るさが途中で変わったりしません。
HDR時の色精度(Rec.2020)は最大ΔE = 9.0、平均Δ = 4.42でした。初期設定としては精度が高いです。
HDRモード時の色温度は測定値でおおむね6300~6400K前後で、やや黄緑がかった色合いに見えます。
試験的に導入を始めたICtCp規格による「カラーボリューム(Gamut Volume)」の評価です。
白い枠線がターゲット色域で、内側のカラフルな枠線が実際に表示できた色の広さです。白い枠線が埋まっているほどHDR表示に理想的と考えられます。
MOBIUZ EX381Uの開封と組み立て
真っ白な背景にEX381U本体がデザインされた、見るからにゲーミングなパッケージデザインで到着。サイズは114 x 60 x 19 cm(200サイズ)です。
「◯マーク」を天井に向けて置いて、下からめくり上げるように開封する見開き式の梱包です。
上の段に付属品、下の段にゲーミングモニター本体が収まってます。
付属品 (写真の左から順番に) |
---|
|
HDMI 2.1ケーブルが付属します。
付属の出荷時キャリブレーションレポートは「sRGB」規格に対して調整した、と書いてありますが、メーカーが目視補正をしていないから実際に見える色温度が合ってなかったです。
MOBIUZを選ぶ大きな理由になる「リモコン」も付属します。
リモコンはボタン電池(CR2032)で動きます。
ゲーミングモニターで定番のドッキング方式です。プラスドライバーが不要なツールレス設計でかんたんに組み立てられます。
外観デザインを写真でチェック
SF的なデザインを取り入れています。曲線美が多いDELL Alienwareシリーズを、直線的なデザインで再構築したようなイメージです。
本体表面にザラザラと微粒子状の粉体塗装が施され、そのまま触っても指紋がつきづらい工夫もグッド。相変わらず「見た目」の良さはBenQ MOBIUZの強みです。
コンセントに仕込んだ電力ロガーを使って消費電力を1秒ずつ記録したグラフです。数~数十時間のゲーミングモニター検証中に記録しています。
消費電力 MOBIUZ EX381U | |
---|---|
中央値 | 102.4 W |
ピーク値 | 138.9 W |
上位25% | 108.1 W |
下位25% | 52.2 W |
おおむね100 W前後です。最大の明るさで瞬間的に108 W前後、最小の明るさで30 W前後です。
SDRゲーミング時で80 W前後、HDRゲーミング時に100 W前後をイメージすると近いです。USB Type-C充電を使うと5~90 W追加されます。
面積の大きい38インチ大判パネルを採用しているうえ、複数のUSB端子やESS Sabre DACなどを搭載しているため、一般的なゲーミングモニターより消費電力が多めです。
まとめ:BenQらしい全部盛り「38インチ」モニター
「MOBIUZ EX381U」の微妙なとこ
- 平凡なコントラスト比
- パネルの均一性は普通
- 内蔵スピーカーなし
- クリエイターモード時に
なぜかコントラスト比が半減 - 初期設定の色温度がズレてる
(かんたんに修正できます) - HDRモードの調整がイマイチ
- HDRモード時に画面がちらつく
(バックライト操作:オフで解消) - HDMI eARCの相性問題
「MOBIUZ EX381U」の良いところ
- 37.5インチで4K(作業効率が高い)
- 最大144 Hzに対応
- PS5で120 Hz(VRR)対応
- 応答速度が速い(IPSパネルとして)
- 入力遅延が非常に少ない
- 色域がとても広い(DCI P3:98%)
- とても正確なsRGBモード(ΔE < 1.0)
- Display HDR 600認証
- 強力なゲーマー向け機能に対応
- 扱いやすいOSD設定画面
- 便利な「リモコン」が付属します
- USB Type-C(最大90 W)
- イヤホン端子の音質(ESS Sabre)
- 必要十分なエルゴノミクス機能
- 38インチモニターで最安値クラス
- メーカー3年保証
「MOBIUZ EX381U」は、38インチで最安値クラスの4Kゲーミングモニターです。
最安値クラスなのに、MOBIUZブランド独自の強力なゲーマー機能をフル装備し、扱いやすいOSD画面と便利なリモコンが付いてきます。
高音質なESS Sabre DAC内蔵のイヤホン端子や、最大90 W対応のUSB Type-C(DP Alt Mode対応)、HDMI eARCに対応するHDMI 2.1ポートなど。
インターフェイス周りも全部盛りのMOBIUZらしい設計です。
文句なしに40インチ前後の大判ゲーミングモニターでベストバイ、と評価したかったですが、細かい点で詰めの甘さが残っている惜しいゲーミングモニターです。
HDMI eARCは相性問題があって音が出ない場合があるし、HDRモードの作りがイマイチで使わないほうがマシ程度だし、付属のスタンドは水平(0°)を取るのが困難。
定価14万円かつBenQの旗艦ブランド「MOBIUZ」の製品だと考えると・・・、ちょっと抜けてる部分が多いような。
「MOBIUZ EX381U」の用途別【評価】
使い方 | 評価※ |
---|---|
FPSやeSports(競技ゲーミング) 最大144 Hz対応で、応答速度もそこそこ速いです。 | |
ソロプレイゲーム(RPGなど) 色鮮やかな映像でソロプレイゲームに没入できます。 | |
一般的なオフィスワーク 38インチの4K解像度で作業性に優れ、100%表示でも文字がクッキリ見えます。完全なフリッカーフリーや自動調光「B.I.+ Gen2」機能に、透過性の高いノングレア加工も評価点。ただし「sRGB」モード時にコントラスト比が半減する謎仕様が惜しい。 | |
プロの写真編集・動画編集 動画編集で求められる「DCI P3」色域と、写真編集に求められる「Adobe RGB」色域を満たしていますが、出荷時校正がありません。動画はともかく、プロ用途の写真編集では不適切です。自分でキャリブレーションが必要です。 | |
HDRコンテンツの再現性 Display HDR 600認証をクリアできるHDR性能でそこそこ明るく、輝度の安定性も良好です。しかし、エッジライト方式のLEDバックライトを使っており「ちらつき」が生じます。色温度が黄色に歪んでおり「映えない」映像です。全体的にHDRコンテンツの再現性はイマイチ。 |
※用途別評価は「価格」を考慮しません。用途に対する性能や適性だけを評価します。
HDRモードは最初から無かったものとして扱い、あくまでもSDRゲーミングモニターと考えるべきでしょう。
参考価格 ※2024/12時点 | |
---|---|
Amazon 楽天市場 Yahooショッピング |
2024年12月時点、MOBIUZ EX381Uの実売価格は約14万円(定価14万円)です。
Amazon公式や楽天市場など、ポイント還元が少し付与されるショップなら実質13.5万円~から買えます。37.5インチ(38インチ)の4Kゲーミングモニターとして、これでも最安値クラスです。
ニッチな需要を満たす「大判」ゲーミングモニター
以上「MOBIUZ EX381U 購入レビュー:世にも珍しい「38インチ」の4Kゲーミングモニター」でした。
MOBIUZ EX381Uの代替案(他の選択肢)
同じ価格帯の魅力的な代替案が「Sharp AQUOS XLED GP2」です。
コントラスト比が高いVAパネル(5000:1)に、量子ドット + Mini LED(約400ゾーン分割)を組み込み、液晶なのに「白浮き」が目立たないメリハリ抜群のHDR映像を可能にします。
ゲームや映像の画質だけならEX381Uの上位互換です。しかし、テキストベースの静止画面と映像エンジンの相性がたまに悪いので、オフィスワーク的な用途で使いにくいです。
ゲーミングモニターとして悪くないけど、PCモニターとしては難ありでした。
4Kでおすすめなゲーミングモニター
最新のおすすめ4Kゲーミングモニター解説は↑こちらのガイドを参考に。
4KでおすすめなゲーミングPC【解説】
予算に余裕があれば「RTX 4090」や「RTX 4080」を搭載したゲーミングPCがおすすめです。
コスパ重視なら「RTX 4070 Ti SUPER」がおすすめ。グラフィック設定の妥協と、DLSS 3(フレーム生成)と合わせて4K 144 fps超を目指せます。
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
eARCの件ですが、HDMI2.1から登場した規格という認識ですが2.0でも動作するのでしょうか。
AW3225QFのインターフェースには「eARC/ARC」と表記されていますが、ARCモードで動作していただけという可能性はありませんか。
EX381UがeARCでのみ動作するという可能性はないのですか。
AW〜と同様ファームウェアアップデートで後々解決するのかもしれませんが、、、
HDMIライセンス認証モデルClub3D製「CAC-1373」ケーブルを使って検証しましたが、やはり音が出ないです。
eARC対応はDELLの方が今のところ上手ですね。
これの解像度が下がっただけの27インチ(Ex271q)持ってますが、感想は
量子ドットはあるか?= X
Mini Led はあるか? = X
価格は安いか? = X
スピーカーはあるか?= X
コントラスはいいか?= X
Ai機能はいいか? = X
はい、6万以上の予算がある場合は迷いなく量子+Miniled もしくわ Qd-oled 買うべきだと思いました。Ai機能を押してたので試しに買った所、やはり所詮はIPSのみのパネルだなって感じでした、時代は 量子ドット+MiniLed 、Qd-oled ですね
その「EX271Q」も購入済みでレビューする予定ですが、おっしゃるとおりパネルの性能を覆す可能性は低そうですね。
それにしてもBenQがアピールする「AI PixSoul Engine」による「パネルの均一化」、これがマトモに機能しているように見えないので、優良誤認にならないのかな?
EIZOのユニフォミティ回路をイメージさせる謳い文句なのに、実際は何も機能していない・・・。
今まではPHILIPSの43インチ4Kを使ってましたが人に譲ってしまい、公式HPで調べたら数年前なのに製造中止で、PHILIPS自体40インチクラスの4Kモニターをもう出してない。
低価格大型4Kモニターの先駆けとして注目されましたが今は大分大人しいのが残念。
低価格路線はJAPANNEXTに移行してるのかなと思うと少し残念です。(以前は品質的にあまり良い評判を聞かないので)
4Kは最低でも40インチからと決めてるのでこの商品は少し気になってましたが、37と43では結構サイズが変わるので悩みどころです。(PHILIPSは低価格故にHDR非対応なのがネックではありましたが)
因みに、PS5は量子ドットとミニLEDのTVがあるのでそちらにしてますが、PCは専用モニターでと思ってるので、40インチ以上の4Kで、HDR10対応とVRR対応、144も要らないけど120位は欲しくて検討する中の上位には本製品も含まれてます。
DFLLの5K2Kの湾曲が一番興味ありつつも値段が…。
6〜7年位前にNvidiaが提唱してたBGFDとかいう360hzを謳う大型4Kモニター規格も全然音沙汰無くなったし。
HPが発表だけしてた65インチのOMEN X by HP 65 BFGDとか、技術を後継に何かしら引き継いで残ってるんだろうか?(G-SYNCでは無く)
値段は恐ろしそうだったけど、アレを楽しみにしてたんですけどね。