Amazonタイムセールでかなりの頻度で安くなる「INNOCN 27C1U-D」を購入。
セール時に3万円を切る激安ながら、DCI P3:98%の広色域IPSパネル(Display HDR 400対応)を搭載する妙にハイスペックな4Kモニターです。本当に価格破壊かどうかレビューします。
(公開:2023/12/7 | 更新:2023/12/7)
INNOCN 27C1U-Dの仕様とスペック
INNOCN(イノクン) 27C1U-D | |
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パネルタイプ | 4K(3840×2160)で最大60 Hz IPSパネル(27インチ) |
応答速度 | 非公開 |
主な機能 クリエイター向け |
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調整機能 エルゴノミクス | 高さ調整:120 mm 前後チルト:+20° ~ -5° 左右スイベル:45° ピボット:90° |
VRR機能 | なし ※G-SYNCも非対応 |
参考価格 ※2023/11時点 | |
Amazon |
INNOCN(イノクン) 27C1U-D | |
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画面サイズ | 27インチ |
解像度 | 3840 x 2160 |
パネル | IPS(DCI P3:98%) |
コントラスト比 | 1000 : 1 |
リフレッシュレート | 60 HzHDMI 2.0 : ~60 Hz DP 1.4 : ~60 Hz |
応答速度 | 非公開 |
光沢 | ノングレア |
VESAマウント | 75 x 75 mm |
エルゴノミクス |
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主な機能 |
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同期技術 | なし ※G-SYNC互換モード非対応 |
スピーカー | 3 W(ステレオ) イヤホン(3.5 mm)端子あり |
主な付属品 |
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寸法 | 610 x 540 x 190 mm |
重量 | 4.0 kg(パネルのみ) 5.9 kg(スタンド含む) |
保証 | 1年 |
「INNOCN 27C1U-D」は値段の割にまっとうなスペックを備えた、見るからにコスパの高い4Kモニターです。
DCI P3:98%カバーを主張する広色域なIPSパネル、Display HDR 400認証、最大65 WのUSB Type-Cポートを備えます。定価で4万円を超える「DELL S2722QC」や「HP U28 4K HDR」とほぼ同等のスペックです。
色域の公称値ではS2722QC(sRGB:99%)や、HP U28 4K HDR(DCI P3:93%)を超えています。
クリエイター向けに嬉しい「sRGBモード」「Adobe RGBモード」に加えて、輝度に制限をかけて色ムラを抑制する「Uniformityモード」まで実装。
ただし、USB Type-Aポートが1つも無いです。PCモニター側にUSBハブ機能が欲しい方はS2722QCの方が良いかもしれません。製品保証が1年しか無いので保証を重視する場合も避けた方がいいでしょう。
INNOCN 27C1U-Dを実機レビュー
DCI P3カバー率:98%の「広色域IPS」パネル
INNOCN 27C1U-Dはメーカー公称値でDCI P3カバー率:98%をアピールする「広色域IPS」パネルを搭載。セール時に3万円以下で買える4Kモニターとしてトップクラスの色域です。
実際にゲームや映像コンテンツを表示させてみた。主観的に見て、すぐに分かるレベルで色がとても鮮やかで発色良好です。
今まで普通のフルHDモニター(sRGB:95%程度)を使っている人なら、27C1U-Dの分かりやすく鮮やかな発色に驚くと思います。ゲーミングモニターで定番のNano IPSパネルなどと大差ないです。
コントラスト感は普通のIPSパネルと大差ない印象を受けます。実測値で1000~1100:1程度しかなく、並のIPSパネルよりわずかにコントラスト比が高い程度ですが、劇的な差を感じるのは不可能です。
(sRGB:ΔE = 3.3 / 色温度:6517K / 輝度:349 cd/m²)
さすがDCI P3色域を98%カバーしているだけあって、見事な画質です。
基本的に色域が広いほど「過飽和」と呼ばれる症状が発生し、一般人にとって色鮮やかで好ましい表示になります。もちろん、正しい表示ではないものの、口コミ評価から統計的に鮮やかな発色が好まれています。
なお、27C1U-Dのライバルになりうる「S2722QC」がDCI P3カバー率:83%、「HP U28 4K HDR」がDCI P3カバー率:91%程度です。発色の良さに関して27C1U-Dがトップクラスです。
(鮮烈な赤色が過飽和した広色域の特徴です)
以前レビューしたDELL G2724D(DCI P3:89%)とほぼ同じ条件で比較した写真です。DCI P3が広いと赤色が鮮やかになるため、このような赤色の多いシーンで見る主観的な鮮烈さ(鮮やかさ)に差が生じます。
- モード:Standard
- 色温度:User CT
- 明るさ:79
- 色温度:赤47 / 緑49 / 青48
出荷設定のまま、色温度を「赤47 / 緑49 / 青48」に変更します。色温度が6600K前後(わずかに青み)に調整でき、日本人好みの画質に調整できます。
明るさは好みに合わせて適当に。筆者は350 cd/m²が好みなので「明るさ:79」です。
残念ながら27C1U-Dはグレースケールごとに色温度がズレていて、ガンマ(明るさ)も大きくズレていて、しかもOSD設定の調整だけでうまく合わせられません。
「3D LUT」キャリブレーションの出番です。ズレているなら適切な補正を掛ければ問題なし。
展開(解凍)して出てきた「27C1U-D SDR 3D + 1D LUT.cube」を、DWM LUT(→ githubでダウンロード)で適用します。
- モード:Standard
- 色温度:User CT
- 明るさ:79
- 色温度:赤47 / 緑49 / 青48
OSD設定も変更します。
出荷設定時の鮮やかな発色(色域)を維持したまま、ガンマを2.2(相対値)に、色温度を6504K前後(平均6517K)にピッタリと補正する3D + 1D LUTです。
DWM LUTと3D LUTの組み合わせなので、Windows上で動作するすべてのアプリケーションに効果を発揮します。ただし、Escape from Tarkovなど、一部の競技性が問われるゲームではDWM LUTが禁止されているので注意してください。
※パネルの個体差により、↑上記の設定が正しく機能するかどうか正確性を保証できません。あくまでも参考程度に。
モニター測定機材による評価
モニターの色を測定できる専用の機材「X-rite i1 Pro2(分光測色計)」を使って、「INNOCN 27C1U-D」の画質をチェックします。
INNOCN 27C1U-Dの色精度はややズレています。DCI P3を98%もカバーする広色域IPSパネルの影響で表示できる色がsRGBを超えてしまい、いわゆる「過飽和」が起きるのが原因です。
↑過飽和(Oversaturation)のイメージ
INNOCN 27C1U-Dだけでなく、広色域なパネル(OLEDやNano IPSなど)を使っているすべてのPCモニターで共通の傾向です。
広色域は「sRGBを超える」を意味します。過飽和が起きて色が合わなくなって当然です。過去のレビューで何度も書いているとおり、ほとんどの人にとって、過飽和によって引き起こされる鮮やかな色合いを好ましく感じます。
Amazonや価格コムの口コミを見ても、鮮やかな色合いに大歓迎ムード。色の正確さが高い → 必ずしも高画質を意味しません。
sRGBが必要なら「sRGB」モードを使ってください。
表示される色域がsRGB:98~99%に制限され、結果的にsRGBに対する精度が大幅に改善されます。実測値でΔE = 1.06(2.0未満)に達し、クリエイター向けモニターに迫る精度です。
表示できる色が広いせいで、結果的にsRGB色域からズレてしまう「過飽和」が生じて色精度が下がっていますが、主観的にゲームや映像を楽しむ分には問題ありません。
sRGBの色精度が高い ≠ 主観的に見た高画質です。
INNOCN 27C1U-Dのネイティブコントラスト比は1070:1前後です。可もなく不可もなく普通のコントラスト比です。
画面の明るさ ※クリックすると画像拡大 |
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標準のStandardモードとMovieモードで明るさが違います。
Movieモードの場合、100%時で428 cd/m²に達し、SDRコンテンツに十分すぎる明るさです。0%時だと25.7 cd/m²まで下げられます。夜間に暗い画面を好む場合も便利です。
目にやさしいらしい120 cd/m²前後は設定値20%でほぼ一致します。
色域カバー率 | ||
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規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 100% | 100% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 97.0% | 98.5% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 88.7% | 93.6% |
Rec.20204K HDR向けの色域 | 72.1% | 77.1% |
INNOCN 27C1U-Dで表示できる色の広さ(色域カバー率)はとても広いです。
もっとも一般的な規格「sRGB」で100%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では98.5%カバーします。
印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は93.6%です。
エンタメ用途で重要なDCI P3とRec.2020カバー率の比較は上記リンクから確認してください。
なお、27C1U-Dで表示できる色域はOSD設定から変更できるプリセットによって変わります。
- Standardモード:色域を全開放(DCI P3:99%)
- Movieモード:色域を全開放(DCI P3:99%)
- sRGBモード:色域をsRGBにクリッピング(DCI P3:77%)
- Adobeモード:色域をAdobe RGBにクリッピング(DCI P3:88%)
- HDR有効時:色域を全開放(DCI P3:99%)
各プリセット別に測定した結果、「sRGB」「Adobe」モードのみ色域に制限がかかる仕様だと判明。
鮮やかな高画質を求めるなら「Standard」モードをおすすめします。逆にsRGBが必要なら「sRGB」モードを、Adobe RGBが必要であれば「Adobe」モードを使うといいでしょう。
IPSパネルによく見られる「IPSグロー」症状が出ています。パネルの四隅に近いほど画面の明るさが下がります。
色ムラの平均値はなんと約3.5%、当ブログでレビューしてきた4Kモニターで(OLEDを除いて)最高の記録です。
それでもわずかな不均一は残されていて、同じ色を全画面に表示させると色ムラに気づきます。普通にゲームをプレイしたり、アニメや映画を見る分にはほとんど気にならないでしょう。
IPSパネルだから視野角が広いです。斜め方向から見ても、画面が白くなったり黄ばんだりする傾向が少ないです(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
ここは液晶パネルオタク向けの解説です。ほとんどの人は興味がないので、読み飛ばしてください。
マクロレンズでパネルの表面を拡大した写真です。一般的なIPSパネルで広く見られる「ストライプRGB配列」を確認できます。
スペクトラム分析では、赤色の中央が凹む「KSF蛍光体(KSF Phosphor LED)」に特徴的なパターンが見られます。
「KSF蛍光体」は液晶パネルを低コストで広色域化する技術です。今回の広色域IPSパネルをはじめ、Nano IPSやFast IPS(AHVA)パネルでも使われている一般的な技術です。
ブルーライト含有量は約30.8%ですが、「Reading」や「Night」モードを有効化すると、TÜV Rheinlandブルーライト認証に必要な25%未満をかんたんに達成できます。
文字のドット感は非常にクリアです。
ストライプRGB配列はテキストの鮮明な表示に有利で、さらに27インチに4K(3840 x 2160 = 約829万画素)を詰め込んでいるので極めてドット密度が高く、文字がクッキリ明瞭に見えます。
4Kで60 Hz(PS5も60 Hz)に対応
INNOCN 27C1U-Dは最大60 Hz、PS5で最大60 Hzに対応します。実際にPS5とゲーミングPCにモニターをつないでみて、リフレッシュレートの対応状況を確認しましょう。
PS5の対応状況 ※クリックすると画像拡大 | ||
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設定 | 60 Hz | 120 Hz |
フルHD1920 x 1080 | (50 Hz)PS5 VRR:- | –PS5 VRR:- |
WQHD2560 x 1440 | 対応 PS5 VRR:- | –PS5 VRR:- |
4K3840 x 2160 | 対応 PS5 VRR:- | –PS5 VRR:- |
PS5でWQHD~4K(最大60 Hz)に対応します。フルHDだとなぜか最大50 Hzでした。HDMI 2.1が無いので「PS5 VRR」も対応不可です。
対応リフレッシュレート ※クリックすると画像拡大 |
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INNOCN 27C1U-Dがパソコンで対応しているリフレッシュレートは以上のとおりです。HDMIとDisplayPortどちらを使っても、60 Hzと59 Hzしか選べません。
VRR機能(可変リフレッシュレート) ※クリックすると画像拡大 |
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フレームレートとリフレッシュレートを一致させて「ティアリング」を防ぐ効果がある、VRR機能は非対応です。G-SYNC互換モードも当然使えません。
普通の60 Hzらしくゲーム性能は平凡そのもの
PCモニターで割りと重要視されているスペックが「応答速度」です。応答速度が速いほど、残像感の少ない映像を表示できます。
INNOCN 27C1U-Dの応答速度は非公開です。・・・つまり、メーカー的にアピールできるほど数値が良くないと考えられます。
↑こちらの記事で紹介している方法で、INNOCN 27C1U-Dの「応答速度」を測定します。
60 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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60 Hz時(オーバードライブ:なし)の応答速度です。30パターン測定で、平均9.47ミリ秒でした。
速いか遅いかと聞かれれば「遅い」ですが、60 HzのIPSパネルだと割りと普通な性能だったりします。他の60 Hzモニターと比較してみましょう。
60~75 HzのPCモニターと応答速度を比較したグラフです。
INNOCN 27C1U-Dが記録した平均9.47ミリ秒は遅い部類です。他の4K(60 Hz)モニターと比較しても遅いですが、そもそもリフレッシュレートが60 Hzだと残像感の差は少ないです。
「入力遅延(Input Lag)」は、映像ソースやマウス・キーボードからの入力信号を、ゲーミングモニターが実際に認識するまでにかかる時間です。
一般人は気にする必要はありません。競技性が重視される格ゲーやFPSゲームをガチでプレイする、競技ゲーマーが気にするべき指標です。
「Raspberry Pi 4」を使ったカスタム入力遅延テスターで入力遅延を測定した結果、60 Hz時で5.1ミリ秒でした。
他のゲーミングモニターと比較します。ほとんどのゲーミングモニターは16ミリ秒を下回ります。入力遅延5.1ミリ秒は、まったく問題ありません。
ゲームで便利な「暗所補正」に一応対応
INNOCN 27C1U-Dはゲームプレイや暗いシーンの多いコンテンツで便利な「Shadow Balance(暗所補正)」に対応。ただし、鮮やかさを補正する機能は搭載していません。
では比較写真で効果を確認します。
Shadow Balanceを上げていくと確かに画面が明るく補正されますが、画面全体が明るく傾向が強く実用性に欠けます。
FPSゲームで使うには厳しいです。画面が全体的に暗い傾向のホラー映画やホラーゲーム(Dead by Daylightなど)を、やや見やすくする程度でしょうか。
自由に位置を調整できる「エルゴノミクス」機能
INNOCN 27C1U-Dはフル装備のエルゴノミクス機能に対応。とても安物と思えないレベルでスムーズに動き、かなり調整しやすいエルゴノミクス機能です。
モニタースタンドの側面に、高さ調整しやすいように「目盛り」がデザインされています。
スタンドの中央に「角度計」もデザインされていて地味に便利です。
VESAマウント ※クリックすると画像拡大 |
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別売りモニターアームを取り付けるのに便利なVESAマウントは「75 x 75 mm」に対応します。パネル本体の重量は約4.0 kgで普通のモニターアームで持ち上げられます。
Amazonベーシック(エルゴトロンOEM)のモニターアームをそのまま干渉なく取り付けられます。モニター側に付いていたネジ(4本)を使って固定できます。
目が疲れにくい「フリッカーフリー」動作
INNOCN 27C1U-Dは「フリッカーフリー」動作を一切アピールしていません。
フリッカーフリーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
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しかし、オシロスコープでフリッカーをチェックすると明るさ0~100%までフリッカーがまったく検出されません。
Amazon販売ページのどこにもフリッカーについてひとことも言及が無いので心配しましたが杞憂でした。INNOCN 27C1U-Dは間違いなく完全なフリッカーフリーに対応します。
機能性と各インターフェイスをチェック
モニター本体の右下にある「5つのボタン」を使って、OSD設定を操作できます。
筆者は熱心なアンチ分離型ボタンです。今どき複数のボタンをポチポチと何度も往復させて押させる、あまりにも面倒くさい仕様は理解に苦しみます。
OSDメニューの動作もほんのわずかにワンテンポ遅れてくるため、なおさら面倒な使用感でした。ASUSやBenQのようなジョイスティック方式にして欲しいです。
- Standard(初期設定)
- sRGB
- Adobe
- Uniformity
- Movie
- Reading
- Night
- Care eyes
INNOCN 27C1U-Dは全8種のプロファイルに切り替え可能です。設定ごとに色温度やコントラスト感が変わります。
個人的に「Standard」モードのまま、明るさや色温度を自分で調整したほうが一番良かったです。
「Movie」モードは明るさと彩度が限界まで引き上げられる特殊なプロファイルですが、わざと彩度を強調しすぎて赤色がピンクに見えるなど違和感が目立ちます。
各種インターフェイス ※クリックすると画像拡大 |
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全部で3つの映像出力端子があり、USB Type-Cポートも含めて最大60 Hz(3840×2160)に対応します。
実際にノートパソコン(ASUS Vivobook OLED 15)にUSB Type-Cケーブルで接続すると、ノートパソコンを充電しながらINNOCN 27C1U-Dを外部ディスプレイとして使えます。
USB Type-Cポートが対応しているUSB Power Delivery規格を確認します。
- 5.0V x 3.0A(15 W)
- 9.0V x 3.0A(27 W)
- 12.0V x 3.0A(36 W)
- 15.0V x 3.0A(45 W)
- 20.0V x 3.25A(65 W)
全部で5つのUSB PDプロファイルを確認でき、対応するデバイスに接続すると最大65 WのUSB給電が可能です。
「Uniformity」モードで色ムラが減る?
色ムラを改善できそうな名前をしている「Uniformity」モードですが、期待外れでした。Uniformityモードなしで平均3.5%だった色ムラが、Uniformityモード有効時で平均6.2%まで悪化します。
・・・色ムラを抑制、ではなく四隅の明るさを底上げして「IPSグロー」を緩和する狙いがあるように見えます。
ただし、写真を見てわかるとおり多少IPSグローがマシになる程度です。画面の明るさが290 cd/m²程度まで制限され、設定の自由度にやや制限がかかります。
得られる効果とデメリットが見合っているかどうか非常に微妙ですし、そもそも色ムラの平均値は悪化しているため、Uniformityモードに過度な期待は禁物です。
Display HDR 400認証かつ精度が高い
INNOCN 27C1U-DはDisplay HDR 400認証モニターです。Display HDR規格で最低グレード、今どきのIPSパネルモニターなら合格できて当然のHDR規格だったりします。
それほど期待せずに、Youtubeで公開されている「Morocco 8K HDR」と「すずめの戸締まり(4K Ultra BD盤)」を再生して検証します。
普通にキレイです。
格安品にありがちな、とりあえずDisplay HDR 400認証に合格しただけで色温度や明るさは破綻しているパターンを想定しましたが、実際の画質は至ってマトモです。
赤かぶれや青すぎるシーンがなく、明暗のメリハリも好印象。
(EX-GDQ271JAとほぼ同等のHDR品質)
Display HDR 400認証モニターでかなり精度の高い「IODATA EX-GDQ271JA」と比較した写真です。
並べて比較すると、明暗のメリハリでほぼ互角に見えます。暗部のディティールはわずかにINNOCN 27C1U-Dが良いように見えますが、両者ともに互角のHDR品質と評価します。
参考程度に、Display HDR 1000認証に対応するゲーミングモニターと比較した写真を置いておきます。
モニター測定機材でHDR性能を評価
モニターの色や明るさを測定できる機材を使って、「INNOCN 27C1U-D」のHDR性能をテストします。
VESA Display HDR HDR性能のテスト結果 | ||
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比較 | テスト対象 INNOCN 27C1U-D | VESA Display HDR 400 |
画面の明るさ |
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黒色輝度 |
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コントラスト比 |
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色域 |
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色深度 |
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ローカル調光 |
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INNOCN 27C1U-DはDisplay HDR 400認証で求められるすべての項目に合格です。
HDRモードで画面全体に白色を表示したときの明るさを、他のモニターと比較したグラフです。
Display HDR 400を取得している他のライバルと同等の明るさです。
HDR時のコントラスト比(理論値)は約1106:1で、Display HDR 400モニターとして違和感ない結果に。
HDRコントラスト比i1 Pro 2で測定した結果 | |
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全画面 | 1105 : 1 |
10%枠 | 1096 : 1 |
3×3分割 | 1096 : 1 |
5×5分割 | 1099 : 1 |
7×7分割 | 1096 : 1 |
9×9分割 | 1097 : 1 |
テストパターン別にHDRコントラスト比を測定、ワーストケースで1096:1です。
HDR規格どおりの明るさを表示できるかチェックする「PQ EOTF」グラフです。
極端に暗い部分(0.001~0.1 cd/m²)はIPSパネルの性能限界でうまく表示できません。
5 cd/m²あたり(やや暗い部分)までやや明るめに表示して黒を浮かせて、6 cd/m²から440 cd/m²まで規格どおりピッタリの明るさで表示されます。
高輝度側のPQ EOTFがかなり正確に一致しているため、主観的にHDR映像を見たときに明暗のメリハリを感じやすいです。
明るさ1000 cd/m²までの追従指数は約0.245で、調整なしの状態としてそこそこ優秀です。
- JOLED Glancy(約6.2万円):0.111
- EX-GDQ271JA(約4万円):0.139
- HP OMEN 27q QHD(約3万円):0.196
- INNOCN 27C1U-D(約3万円):0.245
- MSI G274QPF-QD(約4.5万円):0.359
- DELL G2724D(約3万円):0.722
時間経過や面積比による明るさの変動も、一切検知されませんでした。一貫して440 cd/m²前後の明るさを維持します。
HDR時の色精度(Rec.2020)は最大ΔE = 8.2、平均Δ = 2.81でかなり正確です。HDR時の色温度も常用シーンの多くで6500K前後と、Rec.2020で求められるD65(6504K)にほぼ一致します。
出荷設定の時点で、ここまで正確に明るさと色温度が合っている4Kモニターはめったに無いです。
HDRモード時の消費電力電力ロガーコンセントで測定 | |
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白枠面積 | 消費電力 |
1 % | 39 W |
2.5 % | 39 W |
5 % | 39 W |
10 % | 39 W |
25 % | 39 W |
50 % | 39 W |
75 % | 39 W |
100 % | 40 W |
全白フラッシュ (※持続時間は2~3秒) | 40 W |
電源コンセント経由でHDRモード時の消費電力を測定しました。シーンを問わず40 W前後ほどで、普通のワットパフォーマンスです。
開封と組み立てを写真であっさり紹介
ダンボール風な簡素なパッケージで到着。サイズは69 x 45 x 18 cm(140サイズ)です。
中身は発泡スチロール製の分厚い梱包材でぎっしりと梱包されています。万全の梱包状態です。
付属品 |
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映像出力用のHDMIケーブルとUSB Type-Cケーブルが付属します。必要最低限の内容です。
添付のキャリブレーションレポートにsRGBとAdobe RGBの色精度がΔE < 2.0に調整済みと書いてあり、実際に測定した結果、本当にキャリブレーションされています。格安品では異例の対応です。
最近のゲーミングモニターで定番のドッキング方式で、スラスラと組み立てられます。プラスドライバーすら要らないツールレス設計です。
まとめ:有名ブランドの4万円級が3万円切りで買えます
「INNOCN 27C1U-D」の微妙なとこ
- 応答速度が遅い
- 平凡なコントラスト比
- 初期設定の色温度がズレてる
(かんたんに修正できます) - ゲーマー向け機能が少ない
- 貧弱な内蔵スピーカー
- OSD設定の操作性が悪い
- 1年保証
「INNOCN 27C1U-D」の良いところ
- ドット感が少ないピクセル密度
- 色ムラがかなり少ない
- 色域がとても広い(DCI P3で98%)
- 入力遅延が少ない
- 精度の高いDisplay HDR 400
- 正確なsRGBモード対応
(Adobe RGBモードも対応) - フル装備のエルゴノミクス
- 親切なデザインのモニタースタンド
- USB Type-Cで最大65 W給電
- コストパフォーマンスがいい
HDR 1000モニターで有名なINNOCNですが、どうやら普通のSDR向け4Kモニターでも価格破壊を起こしつつあるようです。
27C1U-Dは3万円を切る低価格な4Kモニターとして申し分ない性能と機能でした。ただ単に画面が映るだけでなく、きちんと規格に準じたプリセットモードやHDRモードが用意されています。
鮮やかな画質が好みなら、出荷設定のまま色温度を調整して使えばいいですし、sRGBが必要なら「sRGB」モードを使うと解決します。出荷時点でΔE < 2.0にキャリブレーション済みです。
ほとんどの4Kモニターで規格通りに合っていないHDRモードも、27C1U-Dは優等生の部類です。明るさが一致していて明暗のメリハリがつき、色温度も常用シーンで違和感なく安定しています。
おおむね、お値段以上の性能です。ただし国内保証が1年しかないのが玉に瑕・・・。
INNOCN(イノクン) 27C1U-D | |
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参考価格 ※2023/11時点 | |
Amazon |
2023年11月時点、INNOCN 27C1U-Dの定価が約4.3万円で、Amazonタイムセール時に約3.0万円くらいです。
セール価格を考慮しても、大手有名ブランド(DELLやLG)に27C1U-Dと真っ向にやり合えるスペックを持った4Kモニターがまだ存在しません。
以上「INNOCN 27C1U-Dレビュー:3万円切りで最高の4Kモニター【恐るべし中華市場】」でした。
INNOCN 27C1U-Dの代替案(他の選択肢)
27C1U-Dと真っ向勝負とできるスペックと価格を兼ね備えた他社の4Kモニターが見つかりませんでした。予算が上がってしまいますが、代替案になりそうなモニターをいくつか紹介しておきます。
性能よりも使いやすさを重視したい場合、定番の「BenQ EW2880U」が魅力的です。DCI P3を94%カバーする広色域なIPSパネルに、便利なリモコンや音質の良いtreVoloスピーカーを組み合わせたエンタメモデルです。
価格が一段と高いものの、27C1U-DにUSB Type-Aハブ機能を追加したようなモニターが「HP U28 4K HDR」です。モニター側にUSBハブ機能がどうしても必要なら選択肢に入ってきます。
27C1U-Dのほぼ2倍の価格ですが、SDRコンテンツ向けで最高峰の画質を誇るのが「JOLED Glancy」です。今は失われたJOLED製の印刷式OLEDパネルを搭載します。
安くて高性能という意味で共通点があります(値段が2倍違いますが)。
4Kでおすすめなゲーミングモニター
最新のおすすめ4Kゲーミングモニター解説は↑こちらのガイドを参考に。
4KでおすすめなゲーミングPC【解説】
予算に余裕があれば「RTX 4090」や「RTX 4080」を搭載したゲーミングPCがおすすめです。
コスパ重視なら「RTX 4070 Ti」がおすすめ。
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
イノクンさん比較的新しい筐体だと何故か分離式なんですよね。過去のWHDやFHDモニターだと背面ジョイスティックなので慣れるとほんと楽ですね。側の外注が別なのでその影響でしょうけどできれば統一していただきたい部分。しかし価格ぶっ壊れですねAmazonでクーポン出てる時だとトンデモ価格だと思います。過去に27G1GWQHDモニターを1.5万で入手しましたが快適でした。
これの32インチ版とかないかなぁ
個人的に4K60Hzなら32インチであって欲しいんだけどなかなか安くて良い感じなのが無い…
この前買ったスピーカーレビュー楽しみに待ってます
他所の27C1Uのレビューでどでがいアダプタがついてたからスルーしたんだけど、27C1U-Dはついてないんですね。
というか、amazonの商品タイトルだと27C1U表記だから、27C1U-Dの存在すら認識してませんでした。
アダプタついてないとわかってたら購入したのに。
Amazonレビューを読んでいたら、途中で商品ページが「-D版」に切り替わったみたいですね。
商品説明や画像に嘘は書いてないから良いんですけど、いわゆるレビュー引き継ぎなので印象は悪いかも?
ただ… ASUSみたく、致命的な嘘を記載するよりは全然マシですけどね(※DCI P3:100% → 嘘でしたsRGB:99%、2.5G LAN → ないです、量子ドットです → スペクトラム測定するとKSFでした(未だ訂正なし)。)
絶対粗大ごみだと思ってたのにまさかの
中国市場だと発売時点(2022年Q1)では非常に高評価でしたが、すでにもっと安くて高性能(3万円を切って1世代落ちのNano IPS搭載など)な4Kモニターが登場しており、27C1U-Dほどの性能ですら「競争力は少ない」と判断とされる過剰な競争市場だったり・・・。
広色域に対応させると過飽和で不自然な色になる、sRGBを正確な色で表示させると色域が制限される…MacみたいにsRGBはそのままで広色域にも対応できるような仕様もっと広まらないかなぁ…
「sRGBはそのままで広色域にも対応」
これはソフト側が表示している色域に応じて、そのエリアのみモニター側の表示色域を切り替えるという意味でしょうか。
Windows 11の場合、HDRモードならSDRエリアのみSDR(sRGB / G2.2 Relative / 100 cd/m²)で、HDRエリアのみHDR(Rec.2020 / ST 2084 (PQ EOTF) / Max CLL cd/m²)みたいな動作をしているので、近い将来SDRモード時の切り替え機能も実装されるかも?
たぶん、23H2あたりでSDR版のACM APIが降りてくる予感。
アマゾンのレビューで27C1U-Dは27C1Uの廉価版という位置づけのモデルと書いてあったのですが、今Amazonで売っている 27C1U-L というモデルはなにか違いがあるのでしょうか?ネットで調べてもAmazonで売っているということしか出てこず、他のモデルとの違いが分からないのですが、サンプル写真を見た感じモニタースタンドを固定、簡素化してコスト削減したモデルなのでしょうか?
VESAに対応しているみたいなので、モニター自体の性能に違いがないのなら購入しようと考えているのですが・・・・・
タイムセールだったので覗いてみたら、こちらもやかもちさん好きそうかなと思ったので紹介?報告です。
https://www.amazon.co.jp/PC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%BF%E3%83%BC-IPS%E9%9D%9E%E5%85%89%E6%B2%A2-VESA75x75mm-%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E8%BB%BD%E6%B8%9B-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E5%8F%96%E6%89%B1%E8%AA%AC%E6%98%8E%E6%9B%B8%E4%BB%98%E3%81%8D/dp/B0BPGG369F?ref_=ast_sto_dp&th=1&psc=1
(既にご存知かもですが)
今更なんですが「INNOCN 27M2V」と比較のところ、画像はしっかり「27C1U」なのにテキストが「HP OMEN 27q QHD」なのはなんでなんでしょうか…
27C1Uをps5をつなげても
「現在出力している映像信号」が
2560×1440-60Hzになって
4K出力が出来ません
何か方法はありませんか?
ちなみにHDMIケーブルは
本体に付属のものを使用しています
ps5は新型です