人気が増えているWQHDゲーミングモニター選びで、定番モデルが「IODATA EX-GDQ271JA」ですが、この牙城に挑むライバルが日本市場にやって来ました。
「ASUS ROG STRIX XG27ACS」です。定価4万円台とお高いですが、セール価格なら約3.6~3.8万円です。EX-GDQ271JAに近い価格でスペックもよく似ています。
実際に1台買ってみたので、測定機材も使いつつ詳しくレビューします。
(公開:2024/12/22 | 更新:2024/12/22)
「ASUS ROG XG27ACS」はどんなゲーミングモニター?
- WQHD(2560×1440)で「最大180 Hz」
- 「Fast IPS」パネル採用
- 強力なゲーマー向け機能を搭載
- 出荷時キャリブレーション済み
- PS5で120 Hz(VRR)に対応
「ASUS ROG XG27ACS」はeSportsゲーマーから普段使いユーザーまで。幅広い使い方に対応できるように作られた、ASUSらしい優等生タイプのゲーミングモニターです。
ASUS ROG XG27ACS | |
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パネルタイプ | WQHD(2560×1440)で最大180 Hz Fast IPSパネル(27インチ) |
応答速度 | 0.5 ms (G2G) |
主な機能 ゲーマー向け |
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調整機能 エルゴノミクス |
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VRR機能 | VESA Adaptive Sync ※G-SYNC互換モード対応 |
参考価格 ※2024/12時点 | |
Amazon.co.jp 限定販売 |
ASUS ROG XG27ACS | |
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画面サイズ | 27インチ |
解像度 | 2560 x 1440 |
パネル | Fast IPS (DCI P3カバー率:97%) |
コントラスト比 | 1000 : 1 |
リフレッシュレート | 180 Hz (2560 x 1440) HDMI 2.0 : ~144 Hz DP 1.4 : ~180 Hz |
応答速度 | 1 ms (G2G) |
光沢 | ノングレア |
VESAマウント | 100 x 100 mm |
エルゴノミクス |
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主な機能 |
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HDR対応 | VESA Display HDR 400認証 |
同期技術 | VESA Adaptive Sync ※G-SYNC互換モード対応 |
スピーカー | なし イヤホン(3.5 mm)端子あり |
主な付属品 |
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寸法 | 614.8 x 512.9 x 218.8 mm |
重量(実測) |
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保証 | 3年保証 (ドット抜けも保証対象) |
「ASUS ROG XG27ACS」は、2万円台で採用例が増えている廉価版Fast IPSではなく、昔からある「本物のFast IPS」を搭載します。
本物だからDCI P3カバー率が約97%です。幅広い色を表示でき、素人でも分かるレベルで豊かで明るい色彩表現を可能にします。
加えてASUSが出荷時にキャリブレーション済みです。良いパネルを使っていても個体差で台無しになる可能性は十分にありえるから、ASUSは出荷時キャリブレーションで未然に防ぐ努力をします。
そして、ASUS独自のゲーマー向け機能をほぼ全部乗せです。
暗い部分を補正する「Shadow Boost」、残像を軽減する「ELMB(Extreme Low Motion Blur)」、残像軽減とVRRを同期させる「ELMB Sync」に対応。
メーカーサポートも充実そのもの。3年間の無料保証が付いてきますし、ドット抜けも上記のとおり条件に該当さえすれば保証対象です。
「高性能」「高機能」「充実保証」の3点がそろった、まさに優等生なWQHDゲーミングモニターに仕上がっています。
【Fast IPS】鮮やかで明るい万人受けする高画質
クールな色合いに調整されています
初期設定の画質はそこそこ優秀です。黒つぶれや白飛びがない正確なコントラスト感(ガンマカーブ)に、やや青緑っぽいけどおおむね正確なグレースケールに調整されています。
気に入ったらそのまま使って問題なし、気になるならモニターのOSD設定から色温度と明るさを好みに合わせて調整するくらいで十分です。
キャリブレーターで測定しながら、モニター側の設定(OSD)を手動で調整しました。
- モード:ユーザー
- 明るさ:88
- 色温度:ユーザー
- 赤:99
- 緑:92
- 青:95
以上の設定で、ニュートラルな色温度(白色)である6500Kにおおむね調整できます。
画面の明るさは好みに合わせて調整してください。明るさ88%だとかなり明るいです(個人的な好みで350 cd/m²に合わせているだけ)。
手動で調整後、ニュートラルなグレーに仕上がります。
ASUSがある程度調整しているから、色温度を少し変えるだけで正確な色合いに合わせられます。
(三角形の面積が広い = 色域が広い)
- ASUS ROG XG27ACS(Fast IPS)
- EX-GDQ271JA(AHVA IPS)
- DELL AW3225QF(QD-OLED)
- LDQ271JAB(量子ドットIPS)
- Xiaomi A24i(普通のIPSパネル)
5台のゲーミングモニターを実測して比較しました。
普通の白色IPSパネル(灰色ライン)を超えて、ライバルの「EX-GDQ271JA」に匹敵する面積です。高級モニターで増えてきた量子ドットには届かないものの、並のIPSパネルよりずっと鮮やかな色を出せます。
もっと厳密にキャリブレーション(校正)したいガチな方は、筆者が作成した3D LUTプロファイル(.cube)を試してみてください。
フリーソフト「dwm_lut」を使って3D LUT(.cube)を適用したら、ゲーミングモニターのOSD設定を以下の内容に変更します。
- モード:ユーザー
- 明るさ:91
- 色温度:ユーザー
- 赤:99
- 緑:92
- 青:95
3D LUTの効果を確かめます。
シンプルに約800ポイント測定でプロファイルを作ってみました。ほぼ正確にガンマ2.2に校正されています。
常用グレースケールで色温度もほぼ6500K前後に一致します。
色の鮮やかさを損なわないように、できるだけ色域を変えないように作ってます。鮮やかさをそのままに、ガンマと色温度を規格どおりに調整する3D LUTプロファイルです。
本物の「Fast IPS」の画質をじっくり見てみる
本物のFast IPSパネル = 台湾AU Optronics(AUO)社がつくる「AHVA」パネルを指しますが、ASUS ROG XG27ACSが本当にAHVAパネルを使っているかどうかは不明・・・です。
しかし、画面に表示されている色合いや、このあと紹介する実測値(性能)を見る限り。AHVAパネルを採用するライバル「EX-GDQ271JA」にほとんど匹敵しています。
年式の古い液晶パネルや、視野角が狭くて画質が変色しやすいTNパネルのゲーミングモニターから乗り換えたなら、ASUS ROG XG27ACSの高画質っぷりをすぐに体感できます。
コントラスト感はごく普通です。実測で1000:1ちょっとしか無いから当然の結果に。
(sRGB:ΔE = 3.3 / 色温度:6551K / 輝度:352 cd/m²)
Youtubeやアニメ、FPSゲーム(タルコフやOverwatch 2)、RPGゲーム(原神や崩壊スターレイル)をASUS ROG XG27ACSで表示した例です。
さすがDCI P3カバー率が97%もあるだけあって、色が飽和してシンプルに鮮やかです。画面の明るさも十分で、パンチの効いたゲーム映像を楽しめます。
IPSパネルの弱点である低いコントラスト比を除けば、おおむね不満のない画質に仕上がっています。
カラフルな色彩を使ったイラスト画像(原神の★5恒常キャラ「刻晴」より)で比較。
値段が2倍以上も違うOLEDモニターと並べてみても、けっこう健闘している様子が分かります。OLEDパネルは原理的に画面をあまり明るくできないから、少しパンチが弱いです。
「ハント効果(Hunt Effects)」と呼ばれる、明るい色をカラフルに感じやすい人間の感覚も影響しています。
カルト的な人気を誇るオープンワールド型FPS「Escape from Tarkov(タルコフ)」のワンシーンで比較。
OLEDパネルのモニターは黒色を強く見せようとするあまり、暗部階調のディテール崩れが気になります。
もちろん、液晶パネルも製品によって暗部階調が潰れていたりします。ASUS ROG XG27ACSは初期設定の時点でグレースケールがだいたい合っているうえに、画面も明るいから暗部が潰れません。
もっと比較写真を見たい方は↑こちらからどうぞ。
ASUS ROG XG27ACSに施されたパネル表面加工は、PC用モニターで定番の「ノングレア加工(アンチグレア)」です。
ぼんやりと背景がしっかり拡散され、周囲が明るくても映り込みをかなり防いでいます。
部屋を暗くすると、映り込みがさらに軽減されます。
ただし、表面粒子がやや粗めで至近距離から見ると小さなテキスト(文字)がわずかに滲んで見える場合があります。eSports用途を重視して、アンチグレア加工を強くした弊害です。
Fast IPS(AHVA)パネルは基本的にIPSパネルと同じなので、並のIPSパネルと同程度に視野角が広いです。
斜め方向から見ても、画面が白くなったり黄ばんだりする傾向が少なめ(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。なお、OLEDパネルには到底勝てません(→ 参考写真)。
文字のドット感(見やすさ)はそこそこ鮮明です。
- ドットがRGB配列:テキスト表示に有利
ピクセル配列の拡大写真 - 画素密度が109 ppi前後:標準的なドット密度
テキスト表示に有利なRGB配列のIPSパネルに、100 ppi前後のスタンダードな画素密度を備えます。
普通の距離感(50~60 cm)で見る分には、ドット感がほとんど目立たない鮮明なテキストです。
全部で「10個」あるGame Visualを比較
- シーン
- レース(初期設定)
- 映画
- RTS / RPG
- FPS
- sRGB
- MOBA
- ナイトビジョン
- ユーザー
- ユーザー(DCI-P3)
ASUS ROG XG27ACSは、全部で10個の「Game Visual」モードが用意されています。
どのモードも個性が激しく、何を目的に用意されたかが分かりやすく差別化されていて使いやすいです。「MOBA」と「ナイトビジョン」モードがその最たる例です。
ぶなんにおすすめは「ユーザーモード」を好みに合わせて調整ですが、クリエイターの場合は「sRGB」モードも有用です。ちゃんとsRGB色域に制限されて、色の精度も高め(ΔE < 1.0)に調整されています。
モードごとの詳しいデータは ↓以下の測定レポートをどうぞ。
目標の基準値:sRGB(Gamma 2.2)
モード | 色域 (sRGB) | 色域 (DCI-P3) | 明るさ | グレーの正確さ | 色の正確さ | ガンマ | 色温度 | コントラスト比 |
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シーン | 100.0% | 97.0% | 438.9 cd/m² | ΔE = 2.31 | ΔE = 5.15 | 2.25 | 7058K | 1094:1 |
レース | 100.0% | 97.0% | 285.7 cd/m² | ΔE = 0.61 | ΔE = 2.96 | 2.18 | 6339K | 1023:1 |
映画 | 100.0% | 97.0% | 377.2 cd/m² | ΔE = 3.49 | ΔE = 5.09 | 2.48 | 7370K | 1029:1 |
RTS / RPG | 100.0% | 97.0% | 398.8 cd/m² | ΔE = 3.53 | ΔE = 5.43 | 2.42 | 7033K | 1087:1 |
FPS | 100.0% | 97.0% | 411.8 cd/m² | ΔE = 4.53 | ΔE = 6.45 | 1.95 | 6402K | 1020:1 |
sRGB | 98.6% | 74.5% | 130.8 cd/m² | ΔE = 0.46 | ΔE = 0.47 | 2.19 | 6360K | 1028:1 |
MOBA | 26.7% | 24.5% | 398.4 cd/m² | ΔE = 0.57 | ΔE = 22.02 | 2.18 | 7045K | 1084:1 |
ナイトビジョン | 0.0% | 0.0% | 25.9 cd/m² | ΔE = 10.93 | ΔE = 28.89 | 2.13 | 6425K | 172:1 |
ユーザー | 100.0% | 97.0% | 360.8 cd/m² | ΔE = 0.49 | ΔE = 2.61 | 2.19 | 7055K | 1092:1 |
ユーザー(DCI-P3) | 98.6% | 81.1% | 337.7 cd/m² | ΔE = 0.36 | ΔE = 3.40 | 2.18 | 6394K | 1022:1 |
Game Visualプリセットごとに、グレースケール(ガンマカーブ)や色の広さがガラッと変わります。
「シーン」や「映画」はコントラスト感を過剰に演出するS字カーブ型で、「FPS」は全体的に白く明るく見せる低ガンマカーブです。
「レース」や「ユーザー」は意外と規格どおりに沿ったカーブに調整されていて、たいていのコンテンツでそつなく使えます。「sRGB」モードも当然ながら規格どおりです。
「ASUS ROG XG27ACS」の測定レポートはこちら↓をクリックして確認できます。
なるべくシンプルな言い回しに置き換える努力をしていますが、やはり専門用語が多く難解に思われるかもしれないです。あまり興味がなければ飛ばしてもらって構いません。
モニターの色を測定する機材「X-rite i1 Pro2(分光測色計)」と「ColorChecker Display Plus(比色計)」を使って、「ASUS ROG XG27ACS」の画質をチェックします。
初期設定のグレースケールはほんのわずかに寒色(青緑気味)に偏っていますが、日本人の好みに合いそうな画質だから違和感なければそのまま使って大丈夫です。
色の正確さは・・・Fast IPSの影響で色域が広くなりすぎて当然ズレます。普通にゲームやエンタメ用途で使うなら、色域が広い → 色が鮮やかに見えるので問題ないです。
- 今日は疲れてるから地味な色合いで見たい
- 「sRGB」色域じゃないと不具合が出るソフト
(※ペイントツールSAIが割と有名)
など、sRGB色域が必要であれば「sRGB」モードを使います。
ASUS ROG XG27ACSのsRGBモードは、ガンマ(コントラスト感)、色の正確さが高い精度で調整されていますが、色温度がやや青緑に偏っていて惜しいです。
比較グラフはsRGBに対する正確さを求めているので、表示できる色が広いパネルほど不利です。
Fast IPSを採用するASUS ROG XG27ACSはもちろん不利だし、高画質な量子ドットパネルやOLEDパネルも不利になります。
「色の正確さ」が優れているからといって、エンタメ用途に楽しい画質かどうかは判断できません。sRGBの色精度が高い ≠ 主観的に見た高画質です。
コントラスト比を比較 ※クリックすると画像拡大 |
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ASUS ROG XG27ACSのネイティブコントラスト比は1023:1です。平均的なIPSパネルと大差なし。
画面の明るさ ※クリックすると画像拡大 |
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画面の明るさを測定したグラフです。
100%時で416 cd/m²に達し、SDRコンテンツを見るのに十分な明るさです。0%時だと38 cd/m²まで下げられます。夜間に暗い画面を好む人にとって、あともう一歩暗さが欲しいです。
目にやさしいらしい120 cd/m²前後は設定値21%でほぼ一致します。
色域カバー率(CIE1976) | ||
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規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 100.0% | 100.0% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 91.5% | 97.0% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 84.9% | 92.8% |
Rec.20204K HDR向けの色域 | 67.3% | 75.3% |
ASUS ROG XG27ACSで表示できる色の広さ(色域カバー率)を測定したxy色度図です。
もっとも一般的な規格「sRGB」で100%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では約97%カバーします。
印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は92.8%です。
エンタメ用途で重要なDCI P3とRec.2020カバー率の比較は上記リンクから確認してみてください。
本物のFast IPSパネルは、平均的なOLED(有機EL)パネル並に色域が広いです。
傾向的に、量子ドット液晶 > QD-OLED > 広色域な液晶 = OLED > 普通の高色域パネル > 平凡な液晶パネル > TNパネルの順に並びます。
色ムラの程度を測定。
一般的な液晶パネルと同じく、パネルの左右や四隅に近いほど明るさがやや落ち込みます。IPSパネルによくある「IPSグロー」と呼ばれる症状で、程度の差はあれど共通の症状です。
ASUS ROG XG27ACSの色ムラは平均値で9.6%で、過去にレビューしてきた液晶パネルとして平均をやや下回る色ムラです。
実際の映像コンテンツやゲームプレイシーンで色ムラに気づく可能性が低いですが、画面全体に同じような色を表示するシーンなら色ムラや輝度落ちに気づきます。
たとえば、背景が一色になりやすいオフィスワーク(ブラウザやOfficeソフト)だと、四隅がうっすら暗くなっている傾向に気づくはず。
マクロレンズでパネルの表面を拡大した写真です。
AHVAパネルでよく見られる「くの字型」画素ドット・・・ではなく、シンプルな直線型ドットでした。画素レイアウトは「RGB」配列で、赤・緑・青の順に並んでいます。
細い直線やテキストの表示と相性がいい、PCモニター向けの画素レイアウトです。
表面加工は強めのノングレア加工がかかっていて、画素ドットのりんかくが見えないほどに透過率が抑えられています。
光を分析する「分光測色計」を使って、画面から出ている三原色の鋭さ(波長)を調べました。専門用語でスペクトラム分析と呼ぶそうです。
グラフを見て分かるとおり、緑色がやや低めでなだらか、赤色に3つの山が出現します。特徴的な凹みが見られる波長パターンから、「KSF蛍光体(KSF Phosphor)」と判別できます。
KSF蛍光体のおかげで安物IPSパネルより赤色の波長が鋭くなり、赤色の純度が高まります。
ついでにブルーライト含有量を調べたところ約28.1%でした。
モニターの設定から「ブルーライト低減:Lv1」モードを入れると、TÜV Rheinlandブルーライト認証に必要な25%未満を達成できます。
ASUS ROG XG27ACSのゲーム性能は?
ASUS ROG XG27ACSのゲーム性能をレビューします。
- 応答速度
- 入力遅延
- ゲーム向け機能
おもに「応答速度」「入力遅延」「ゲーム向け機能」の3つです。測定機材を使って調べてみます。
ASUS ROG XG27ACSの応答速度と入力遅延
↑こちらの記事で紹介している方法で、ASUS ROG XG27ACSの「応答速度」を測定します。
60 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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ニンテンドースイッチやPS4など、最大60 Hz対応のゲーム機で使う場合、60 Hz時の応答速度を気にします。
30パターン測定で、過去レビューで最速クラスに入る平均4.4ミリ秒を記録します。60 Hzに十分な応答速度です。
120 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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PS5やXbox Series Xで重要な120 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均3.78ミリ秒でした。
120 Hzに十分な応答速度が確保されています。PS5 / PS5 Pro / Xbox Series Xで残像感の少ないヌルヌルとしたゲームプレイが可能です。
144 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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144 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均3.68ミリ秒でした。
160 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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180 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均3.05ミリ秒でした。
IPSパネルのゲーミングモニターとして非常に速いものの、わずかに目に見える程度の「にじみ」が出ているから、オーバードライブ機能の調整が必要です。
では、そのオーバードライブ機能を使って、さらに応答速度を改善できないかチェックします。
OD機能の効果 180 Hz / 5段階をテストした結果 | |||||
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平均値 | 3.18 ms | 3.05 ms | 2.82 ms | 2.65 ms | 2.51 ms |
最速値 | 2.70 ms | 2.44 ms | 2.20 ms | 1.85 ms | 1.55 ms |
最遅値 | 3.91 ms | 3.60 ms | 3.47 ms | 3.42 ms | 3.46 ms |
平均エラー率 | 3.1 % | 5.4 % | 9.4 % | 13.8 % | 18.1 % |
ASUS ROG XG27ACSのオーバードライブ機能「Variable OD(可変OD)」は、なんと20段階のきめ細かさで調整できます。
初期設定の「Lv10」だと動きの早いシーンで「にじみ」が出ていて微妙です。「Lv8」まで下げると目に見えるエラーをほぼ解消しつつ、平均3.18ミリ秒の応答速度を維持できます。
「Lv9」以上から、逆残像やにじみが生じ始めて、「Lv12」以上からたいていのシーンでエラーが目に付く状態です。
結論、ASUS ROG XG27ACSのおすすめオーバードライブ設定は「Lv8」モードで決まりです。
他のゲーミングモニター(120 Hz以上)と比較します。
ライバル製品「EX-GDQ271JA」とほぼ同じ応答速度で、Fast IPSシリーズの中でもトップクラスに位置する性能です。
参考までに、60 Hzモード時の応答速度も掲載します。
オーバードライブ技術が進歩したおかげで、60 Hz時でもTNパネル並の性能です。
入力遅延(Input Lag)はどれくらいある?
2024年7月より「入力遅延(Input Lag)」の新しい測定機材を導入しました。
クリック遅延がわずか0.1ミリ秒しかないゲーミングマウス「Razer Deathadder V3」から左クリックの信号を送り、画面上に左クリックが実際に反映されるまでにかかった時間を測定します。
- マウスから左クリック
- CPUが信号を受信
- CPUからグラフィックボードへ命令
- グラフィックボードがフレームを描画
- ゲーミングモニターがフレーム描画の命令を受ける
- 実際にフレームを表示する(ここは応答速度の領域)
新しい機材は1~6の区間をそれぞれ別々に記録して、1~4区間を「システム処理遅延」、4~5区間を「モニターの表示遅延(入力遅延)」として出力可能です。
なお、5~6区間は「応答速度」に該当するから入力遅延に含めません。応答速度と入力遅延は似ているようでまったく別の概念です。
左クリックしてから画面に反映されるまでにかかった時間を測定し、左クリック100回分の平均値を求めます。
ASUS ROG XG27ACSの入力遅延はまったく問題なし。
180 Hz時(G-SYNC互換モード)で平均2.8ミリ秒、120 Hz時(G-SYNC互換モード)で平均4.3ミリ秒の入力遅延です。
どちらも16ミリ秒を大幅に下回っていて、ほとんどすべての人が入力遅延を体感できません。
そこそこ充実しているゲーム向け機能
ASUS ROG XG27ACSは4つある主要なゲーマー向け機能のうち、3つ対応します。
- 暗所補正
暗い部分を明るく補正する機能 - 鮮やかさ補正
色の付いた部分を強調する機能 - 残像軽減
残像をクリアに除去する機能 - カクツキ防止
可変リフレッシュレート機能
順番にチェックします。
暗所補正「Shadow Boost」モード
暗い部分を明るく補正できる「Shadow Boost」モードです。
- ダイナミック調整(最大設定)
- レベル3
- レベル2
- レベル1
- オフ
全5段階でざっくり大雑把に効果を調整できます。
まず感心したのが白飛びの少なさ。競合メーカーの似た機能は効果を上げていくと、明るい階調が白飛びしてTNパネルのように白っぽい画質になりがちです。
一方、ASUS Shadow Boostは暗部階調をうまく拾い上げながら、明るい階調を飛ばさないように調整しています。
画面全体が薄暗いホラーゲームから、視認性を向上させたいeSportsタイトルまで。幅広いゲームで効果が期待できる「さすがASUS」といえるレベルの暗所補正です。
残像軽減「ELMB」モード
ASUSが公式サイトでも推している残像軽減「ELMB」を試します。ちなみに、ELMBは「Extreme Low Motion Blur(訳:超低残像感)」をアルファベット頭文字で略したキーワードです。
残像軽減モード 「ブレ削減」 ※クリックすると画像拡大 |
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「ELMB」を有効化すると、残像感が軽減されて映像のクッキリ感が増します。
フレーム切替時に真っ暗なフレームを1枚挟む「黒挿入」が行われ、結果的にホールドボケ現象が軽減されて残像感が減ったように見える仕組みです。
画面の明るさは下がる? |
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使える範囲は? |
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黒挿入だから、画面の明るさが下がります。
ELMB Lv3から明るさ200 cd/m²を割ってしまうから、ELMB Lv2が実用上の上限です。Lv1で初代DyAc(BenQ Dynamic Accuracy)、Lv2でDyAc+相当の効果があります。
VRRとELMBを同時に使える「ELMB Sync」も対応。効果はLv1固定ですが、VRR(G-SYNC互換モードやAMD FreeSync)と同時に使える黒挿入は非常に珍しい※です。
※競合他社だとGIGABYTEの「Aim Stabilizer Sync」くらいで、BenQやMSIは同様の機能を搭載していません。ライバルの「EX-GDQ271JA」もVRRと同期した黒挿入は不可能です。
ELMBモード限定で、黒フレーム挿入のタイミングを調整する「明瞭度の位置(ELMB Position)」機能もあります。
左から右へ移動するオブジェクトの場合
- 上部:UFOの左側に残像が出現
- 中:UFOのやや左側に残像が出現
- 下部:UFOの左右に残像が出現
といった具合に、残像が出現する位置を調整可能です。好みに合わせて調整してください。
ELMB(ELMB Sync)を有効にしたとき、180 Hz時で約3.88ミリ秒(約70%)が黒フレームです。
- ELMB Lv1:約3.88ミリ秒(約70%)
- ELMB Lv2:約4.16ミリ秒(約75%)
- ELMB Lv3:約4.44ミリ秒(約80%)
- ELMB Lv4:約4.71ミリ秒(約85%)
- ELMB Lv5:約5.00ミリ秒(約90%)
- ELMB Sync:約3.88ミリ秒(約70%)
レベルごとの黒フレーム時間は以上のとおり。ELMB Lv1とELMB Syncがほぼ同じ制御でした。
ELMB Lv4以上から、BenQ Zowie「DyAc+」や「DyAc 2」に並びますが、画面の明るさで3~4倍も負けているから最強の座はとても更新できないです。
WQHDで180 Hz(PS5で120 Hz)に対応
ASUS ROG XG27ACSは最大180 Hzまで、PS5で最大120 Hzに対応します。実際にPS5とゲーミングPCにモニターをつないでみて、リフレッシュレートの対応状況を確認しましょう。
PS5の対応状況 ※クリックすると画像拡大 | ||
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設定 | 60 Hz | 120 Hz |
フルHD1920 x 1080 | 対応PS5 VRR:対応 | 対応 PS5 VRR:対応 |
WQHD2560 x 1440 | 対応PS5 VRR:対応 | 対応PS5 VRR:対応 |
4K3840 x 2160 | 対応PS5 VRR:対応 | –PS5 VRR:- |
PS5でフルHD~WQHD(最大120 Hz)または4K(最大60 Hz)に対応します。もちろん、HDMI 2.1 VRR搭載だから「PS5 VRR」も対応。
実際にゲームが120 Hzで動くかどうかは、ゲームによって対応状況が違うので注意です。
たとえばフォートナイトなら120 fpsかつ120 Hz動作ですが、ストリートファイター6は60 fpsで120 Hz動作になるなど、ゲームによって挙動が違います。
対応リフレッシュレート ※クリックすると画像拡大 |
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ASUS ROG XG27ACSがパソコンで対応しているリフレッシュレートは以上のとおりです。
HDMI 2.0で最大144 Hzまで、DisplayPortは最大180 Hzに対応するうえ、165~120 Hzの範囲も細かく選べます。
VRR機能(可変リフレッシュレート) ※クリックすると画像拡大 |
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フレームレートとリフレッシュレートを一致させて「ティアリング」を防ぐ効果がある、VRR機能はHDMIとDisplay Portどちらでも使用可能です。動作範囲は48~180 Hzです。
LFC(低フレームレート補正)対応ハードウェアの場合は、48 Hzを下回ってもVRRが機能します。ちなみにPS5はLFC非対応だから48 Hzまでです。
ASUS ROG XG27ACSの機能性を調査
ASUSブランドの定価4万円クラスらしく、ちゃんと充実した機能性を備えています。
- エルゴノミクス
高さや角度を調整する機能 - インターフェイス
映像入力端子やUSBポートについて - ヘッドホン端子
付いてるだけの平凡な3.5 mmアナログ端子 - フリッカーフリー
眼精疲労持ちなら重要かもしれない - ブルーライトカット
エビデンスは無いけれど気にする人はどうぞ - OSD
On Screen Display(設定画面)
順番にチェックします。
自由に位置を調整できる「エルゴノミクス」機能
ASUS ROG XG27ACSはフル装備のエルゴノミクス機能を備えます。
高さ調整から左右スイベルまで、どれもスムーズに動いて気持ちいいです。軸の混ざりもほとんどなく、動かしたい方向や角度だけに動いてくれます。
定価4万円に見合うクオリティのエルゴノミクス設計です。
そのほか、EX-GDQ271JAに無かったASUS独自のユニークなエルゴノミクス設計が導入されています。
付属スタンドに彫り込まれた「溝」に、薄型のスマホやタブレットを立てられる地味に便利な造形です。
スタンドの頂上には、なんと「1/4規格」のネジ穴(メス)が空いていて、WebカメラやLED照明機材を設置できます。明らかにゲーム配信者を意識した独特の設計です。
VESAマウント ※クリックすると画像拡大 |
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別売りモニターアームを取り付けるのに便利なVESAマウントは「100 x 100 mm」に対応します。
パネル本体の重量は約3.97 kgで普通のモニターアームで持ち上げられます。
モニターアームに付属する小ネジ(4本)を使って、そのまま「エルゴトロンLX」アームを取り付けられます。
「ヘッドホン端子」の音質をテスト
非常に優れたオーディオ特性を持つ「RME ADI-2 Pro」を用いて、ASUS ROG XG27ACSのオーディオ性能をテストします。
SN比を比較 ※クリックすると画像拡大 |
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他のゲーミングモニターを少し下回るオーディオ特性です。当然ながらポータブルタイプの専用DAC機材に勝てません。
周波数特性グラフです。30 Hz以下でわずかに落ち込んでいますが、全体的にほぼフラットな特性です。
比較的鳴らしにくい「Sennheiser HD650」をつないで聴いてみた。
SN比が低い割に悪くない音質です。安物のモニターにありがちなカーテンを2~3枚通したような「こもった」傾向がかなり軽度に抑えられていて、思いのほかクリアな音質。
音の解像度と低音域のパワフルさは相変わらずですが、ゲーミングモニター内蔵のイヤホン端子として悪くないクラスです。
安物のヘッドホンやイヤホンなら案外十分な性能かもしれません。
音にこだわる方、音質に不満を覚えてしまった沼の素質がある人は、素直に別売りのポータブルDACを買ってください。
対応するインターフェイスをチェック
各種インターフェイス ※クリックすると画像拡大 |
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全部で3つの映像端子があり、DisplayPort 1.4で最大180 Hz(2560×1440)、HDMI 2.0は最大144 Hz(2560×1440)に対応します。
- 7.5 W(5.0 V x 1.5 A)
USB Type-Cポートで最大7.5 WのUSB給電(USB PD)に対応します。ノートパソコンに接続して、平均5.1 Wの充電速度を確認できます。
対応するUSB Type-Cケーブル1本で、ノートパソコン(ASUS Vivobook 15)を充電しながら、外部ディスプレイ(最大WQHD 180 Hz / 10 bitまで認識)として使えました。
「フリッカーフリー」対応ですか?
メーカー公式サイトに「フリッカーフリー」の記載あり。
フリッカーフリーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
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実際にオシロスコープを使ってフリッカーの有無をテストした結果、明るさ0~100%までフリッカーが一切検出されません。
フリッカーの基準 | 結果 |
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一般的な基準 0 Hz または 300 Hz以上 | 問題なし (= 0 Hz) |
TÜV Rheinland認証 0 Hz または 3000 Hz以上 | 問題なし (= 0 Hz) |
完全なフリッカーフリーを可能にする「DC調光」方式のゲーミングモニターです。
目を酷使する長時間のオフィスワークもなんとなく安心な(気が)します。
VRRフリッカーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
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VRR(G-SYNC互換モードなど)有効時の「VRRフリッカー」も一切検出されないです(※上記グラフはPWMフィルタリング後のデータ)。
「ブルーライトカット」機能をチェック
- レベル1~4
- オフ
OSD設定 → 画像 → 「ブルーライト低減」モードでブルーライトカット効果を適用できます。
オフの時点で青色の含有量がたった28%でかなり低く、ブルーライト低減:レベル1以上でブルーライト含有量が25%(TÜV Rheinland基準)を切ります。
モニターの設定画面(OSD)
モニター本体の右側裏面に「5方向ボタン」と「物理ボタン(4個)」を使って、OSD設定をスムーズに操作できます。
BenQやMSIと同様に、ASUSも項目ごとに分かりやすく整理されたフォルダ階層型のOSDレイアウトを採用。レスポンスも良好でとても快適。
やや項目が多いものの5方向ボタンのおかげでストレスなく操作できます。右に倒して決定・進む、左に倒して戻る・キャンセル、上下で項目の調整ができます。
5方向ボタンの中央を押し込む操作がほとんどなく、レバーを左右に倒すだけで設定できる快適な操作性を実現しています。
- ショートカットボタン(2個)
- プリセットごとに調整(設定値の保存も可能)
最短1回の操作で任意の項目を開けるショートカットボタンを最大2個まで登録できます。「輝度」や「入力切り替え」、「Shadow Boost」や「Game Visual」など、9割くらいの項目を登録可能です。
プリセットごとに好みの設定値を保存して、用途に使い分ける運用も可能(※sRGBモードなど一部モードは非対応)。
OSDソフト「ASUS DisplayWidget」
公式サイトから無料でダウンロードできる、ASUS謹製OSDソフトウェア「ASUS DisplayWidget」を使えば、パソコンの画面からダイレクトにOSDを設定可能です。
- Game Visualの設定と保存
- 設定の出力とインポート
- ウィンドウを自動で整理「MultiScreen」
- ショートカットキーで設定「HotKey」
- アプリごとに設定を適用「App Tweaker」
など、OSDソフトウェアに求められる基本的な機能の多くを備えます。
一部表示されない項目(色域モードなど)がそこそこあって、全体の8割にしかアクセスできない詰めの甘さは気になりますが、無いよりあった方がやっぱり便利です。
ちなみに、接続されたデバイスを表示(Connected Device Info)して右クリックで校正レポートを表示でき、レポートをPDF形式で保存可能です。
ASUS ROG XG27ACSのHDR性能をテスト
ASUS ROG XG27ACSは、「Display HDR 400」認証したモニターです。
Display HDR 400認証は全部で4つあるHDRグレードで一番下にある基本グレードにあたり、必要最低限のHDR性能を保証します。
Youtubeで公開されている「Morocco 8K HDR」や、HDR対応ゲームを使って検証します。
(HDR映像を収めた写真はSDRです。掲載した写真は参考程度に見てください。)
SDRモード(明るさ100%)と、HDRモードの差があまり無いです。
なぜなら明るさがSDRモード(明るさ100%)とだいたい同じで変わっていないから、感じられる映像も大差ないです。
コントラスト感も普通の液晶パネルとまったく変わりなく、ただただ普通。明るいSDRモードと言ったほうが良いでしょう。
- Gaming HDR
- Cinema HDR
- Console HDR
全3つのHDRモードがあり、「Gaming HDR」が一番良かったです。
Cinema HDRは途中から規格に対してロールオフするから、やや暗めに見えます。
Gaming HDRとConsole HDRは全体的に規格どおり追従していて、ライバルのEX-GDQ271JAに匹敵するほど精度が高いです。
ASUS ROG XG27ACSは珍しく「HDRモードの明るさ調整」に対応します。
規格グラフに対してそのままネガティブオフセット(下方シフト)するため、HDR的にまったく無意味な行為です。どうしてもHDRモードで明るさを調整したい人にとって・・・ 便利かもしれません。
HDR 1400モニターと比較※画像はクリックで拡大 | |
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ASUS ROG XG27ACSDisplay HDR 400 (CTS 1.1) | TITAN ARMY M27E6V-PRODisplay HDR 1400 (CTS 1.1) |
参考程度に、Display HDR 1400対応ゲーミングモニターと比較した写真です。
ピークハイライトの眩しさ、明るい階調の白飛び具合に顕著な性能差が出ます。
参考程度に、OLEDパネルとコントラスト感を比較した写真も置いておきます。
ASUS ROG XG27ACSはシングルLEDモデルです。LEDバックライトを1枚しか搭載していないから、画面のどこか一部がちょっと明るいだけで、コントラスト比が大幅に下がります。
- 画面が真っ暗 → 約5000:1くらい
- 一部が明るい → 約1000:1に低下
コントラスト比が低くなる問題を解決するには、OLED(自発光型)にするか、LEDバックライトを細かく分割したMini LED方式を選ぶしかないです。
モニター測定機材でHDR性能を評価
モニターの色や明るさを測定できる機材を使って、「ASUS ROG XG27ACS」のHDR性能をテストします。
測定結果(レポート)はこちら↓からどうぞ。専門用語が多いので・・・、興味がなければ読まなくていいです。
VESA Display HDR HDR性能のテスト結果 | ||
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比較 | テスト対象 ASUS ROG XG27ACS | VESA Display HDR 400 |
画面の明るさ |
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黒色輝度 |
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コントラスト比 |
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色域 |
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色深度 |
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ローカル調光 |
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Display HDR 400認証で要求されるすべての項目で合格です。
最新基準「CTS 1.2」から追加要求される1300:1のコントラスト比も、シングルローカル調光を使ってゴリ押しでクリアしています。
完全にDisplay HDR 400をクリアするゲーミングモニターです。
HDRモードで画面全体に白色を表示したときの明るさを、他のモニターと比較したグラフです。他社のHDR 400認証モデルと横並びに。
HDR時のコントラスト比(理論値)は、5044:1です。
HDRコントラスト比i1 Display Pro Plusで測定した結果 | |
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全画面 | 5043.8 : 1 |
10%枠 | 1035.6 : 1 |
3×3パッチ | 1034.9 : 1 |
5×5パッチ | 1033.0 : 1 |
7×7パッチ | 1032.6 : 1 |
9×9パッチ | 1031.6 : 1 |
テストパターン別にHDRコントラスト比を測定した結果、ワーストケースで1032 : 1です。
シングルLED方式のローカル調光はあくまでも、Display HDR 400(CTS 1.2)基準をクリアするための苦し紛れの技術的な対策で、人間の目で見て得られる実用上のメリットは皆無に等しいです。
HDR規格どおりの明るさを表示できるかチェックする「PQ EOTF」グラフです。
- Gaming HDR
(※モード以外は何も設定できません)
「Gaming HDR」モードを初期設定のまま測定しました。
グラフを見て分かるとおり、上から下までPQ EOTF規格にキレイに追従する傾向が非常に強く、精度の高いHDRモードです。
暗部階調がやや明るく表示されるものの、そもそもコントラスト比が1000:1程度しかない普通のIPSパネルだから、大した問題に見えませんでした。
おおむね精度が高めに整っており、キャリブレーションができないゲーム機(PS5)でも問題なく使える性能に仕上がっています。
面積比による明るさの変動はまったくありません。
小さいハイライトから全画面まで、一貫して450 cd/m²前後の明るさを維持します。
HDRモード時の持続輝度をチェック。
すべての面積比で安定した持続輝度です。明るさが途中で変わったりしません。
HDR時の色精度(Rec.2020)は最大ΔE = 9.0、平均Δ = 4.11でした。初期設定としては精度が高いです。
HDRモード時の色温度は測定値でおおむね6450K前後、ほんの少しだけ暖色(黄緑)に偏った色合いに見えます。
試験的に導入を始めたICtCp規格による「カラーボリューム(Gamut Volume)」の評価です。
白い枠線がターゲット色域で、内側のカラフルな枠線が実際に表示できた色の広さです。白い枠線が埋まっているほどHDR表示に理想的と考えられます。
ASUS ROG XG27ACSの開封と組み立て
ASUSフォントで製品名が描かれた段ボール風パッケージで到着。サイズは77 x 51 x 22 cm(160サイズ)です。
「FRONT」と書いてある面を床に向けてから開封して、梱包材まるごと全部引っ張り出します。
分厚い発泡スチロール製の梱包材でがっちり挟まれています。上の段に付属品、下の段にゲーミングモニター本体が収まってます。
付属品 (写真の左から順番に) |
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Display Portケーブルが付属します。
「ASUS ROG」ステッカーも付属します。
ゲーミングモニターで定番のドッキング方式です。プラスドライバーが不要なツールレス設計でかんたんに組み立てられます。
外観デザインを写真でチェック
直線と曲線的なフォルムをうまく使い分けつつ、プリント基板の配線パターンをイメージさせる模様加工やROGロゴマークのおかげで、クールなデザインに見えます。
しかし、外装の大部分がプラスチック製だから、定価4万円台の割に質感がやや安っぽいです。
コンセントに仕込んだ電力ロガーを使って消費電力を1秒ずつ記録したグラフです。数~数十時間のゲーミングモニター検証中に記録しています。
消費電力 ASUS ROG XG27ACS | |
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中央値 | 39.2 W |
ピーク値 | 46.1 W |
上位25% | 41.2 W |
下位25% | 29.1 W |
おおむね39 W前後です。最大の明るさで瞬間的に42 W前後、最小の明るさで13 W前後です。
SDRゲーミング時で35 W前後、HDRゲーミング時に40 W前後をイメージすると近いです。USB Type-C充電を使うと5~8 W追加されます。
たった42 W程度で450 cd/m²も明るさを出せるなんて、やはり液晶パネルは明るさあたりの消費電力(省電力性)に優れています。
まとめ:ASUSが送るEX-GDQ271JAに対する「刺客」
「ASUS ROG XG27ACS」の微妙なとこ
- 平凡なコントラスト比
- パネルの均一性は普通
- 内蔵スピーカーなし
- 初期設定の色温度がズレてる
(かんたんに修正できます) - 「ELMB」を使うと画面が暗い
- 定価の割にリモコンなし
- 定価がちょっと高め(4万円台)
「ASUS ROG XG27ACS」の良いところ
- 27インチでWQHD(ちょうどいい)
- 最大180 Hzに対応
- PS5で120 Hz(VRR)対応
- 応答速度が速い(IPSパネルとして)
- 入力遅延が非常に少ない
- 色域がとても広い(DCI P3:97%)
- とても正確なsRGBモード(ΔE < 1.0)
- Display HDR 400認証
- 高性能なゲーマー向け機能
- VRR + 黒挿入「ELMB Sync」
- USB Type-C(最大7.5 W)
- フル装備のエルゴノミクス機能
- 独自設計あり(スマホスタンドや1/4ネジ)
- OSDソフト「ASUS DisplayWidget」
- コストパフォーマンスが高い
- メーカー3年保証(ドット抜け対応)
「ASUS ROG XG27ACS」は、PCゲーマー向けに強く推せるWQHDゲーミングモニターです。
とにかくASUS独自のゲーミング機能の作り込みが素晴らしいと感じます。残像を軽減する「ELMB」モードは60 Hzから有効化でき、VRR(G-Syncなど)と同期する「ELMB Sync」まで備えます。
残像を軽減する効果を5段階から選べて、残像の見え方もある程度コントロール可能です。BenQ Zowieの次くらいによくできた黒挿入モードに見えます。
画質もEX-GDQ271JAに匹敵していて、あまり文句ないです。出荷時に調整されているらしく最初から色がけっこう合っているし、「Game Visual」プリセットで好みに合わせた調整もかんたん。
色域を正確に制限する「sRGBモード(ΔE < 1.0)」まで用意されていて、イラストレーターやWebクリエイターにとっても嬉しい仕様です。
総じて、ASUSらしい優等生タイプに仕上がった本当によくできたゲーミングモニターです。定価がやや高い、定価が高いわりにリモコンが無いくらいが目立った弱点で、全体的な完成度はよく出来てます。
「ASUS ROG XG27ACS」の用途別【評価】
使い方 | 評価※ |
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FPSやeSports(競技ゲーミング) 最大180 Hz対応で、応答速度もそこそこ速いです。 | |
ソロプレイゲーム(RPGなど) 色鮮やかな映像でソロプレイゲームに没入できます。 | |
一般的なオフィスワーク 文字がそれなりにクッキリと見え、完全なフリッカーフリーと正確な「sRGB」モードに対応。 | |
プロの写真編集・動画編集 写真編集に求められるAdobe RGB色域が不足しています。「DCI P3」「Adobe RGB」モードがなく、出荷時校正も無いです。プロ用途に不適切です。 | |
HDRコンテンツの再現性 Display HDR 400認証を突破できますが、それでも最低限のHDR性能です。明るさ(PQ EOTF)の精度がとても高くても肝心の明るさが不足していると効果が薄まり、HDRコンテンツの再現性に乏しいです。 |
※用途別評価は「価格」を考慮しません。用途に対する性能や適性だけを評価します。
参考価格 ※2024/12時点 | |
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Amazon.co.jp 限定販売 |
2024年12月時点、ASUS ROG XG27ACSの実売価格は約4.3万円です。
Amazon限定販売だから、ポイント還元が大きいYahooショッピングや楽天で安く買う手法が使えません。「Amazon欲しい物リスト」に入れてセール価格になるのを待ちましょう。
セール時なら実質3.6~3.8万円くらいで買えて非常にコスパが高いです。
PCゲーマー向け「Sランク」級モニター
以上「ASUS ROG XG27ACSレビュー:弱点が少ない優等生WQHDゲーミングモニター」でした。
ASUS ROG XG27ACSの代替案(他の選択肢)
XG27ACS最大の代替案が、ライバルモデルの「IODATA EX-GDQ271JA」です。
AUO製AHVA(Fast IPS)パネル搭載、最大180 Hz(PS5で最大120 HzかつPS5 VRRまで対応)、各種ゲーミング機能をフル装備、リモコンでOSDをらくらくコントロールなどなど。
ほぼ全部盛りの優等生WQHDゲーミングモニターです。ただし、XG27ACSのように60 Hzで黒挿入を使ったり、VRRと同期する機能はありません。機能のクオリティ(作り込み)ならASUSが一枚上手です。
値段が1.5倍もするから代替案にならないですが、性能と機能性を高いクオリティで融合しているのが「MOBIUZ EX2710Q」でしょう。
EX-GDQ271JAと同じく、フル装備のゲーミング機能を備え、それぞれ機能の作り込みもMOBIUZブランドらしく優秀です。お金が余っているゲーマーなら選択肢に入ってきます。
WQHDでおすすめなゲーミングモニター
最新のおすすめWQHDゲーミングモニター解説は↑こちらのガイドを参考に。
WQHDでおすすめなゲーミングPC【解説】
予算に余裕があれば「RTX 4070 Ti SUPER」を搭載したゲーミングPCがおすすめです。
予算20万円前後なら「RTX 4070 SUPER」が無難です。
ゲームのグラフィック設定を妥協するつもりで、予算をもっと絞るなら「RTX 4060 Ti」がコスパ良し。
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
IODATA EX-GDQ271JAだとWeb系とゲーム系での画面モード切り替え時には、暗転して再点灯(再起動)かかるせいで、デスクトップがズレる、Webブラウザがサイズ変わる、位置も変わる、PC負荷が一時的に上昇する、など嫌な部分ありましたけど
ASUS ROG XG27ACSだとスムーズに切り替わりますかね?あとノングレアではありますがパネルの反射度合いとか、実使用感もうちょい知りたいのでお願いします
フルスクリーンゲームからデスクトップ画面への切り替え(Alt + Tab)はスピーディーです。配置したウィンドウの崩れや初期化も発生しません。
テキストのぼやけ具合は記事中に写真を貼ってあるのでそちらを参考にどうぞ。XG27ACSでデータの集計やExcelグラフの作成作業を50 cmの距離で3時間ほどやっていましたが、主観的に特に気にならないです。
回答ありがとうございます。
「メニュー>メインメニュー>映像>画面モード>Standard↔️Game」での切り替えの話でした。
EX-GDQ271JAと同じく10bitだとDisplayPortで120Hzに制限されますね
(クリックで画像拡大)
Display Port 2.1ケーブルをRTX 4090に接続して、WQHD(2560 x 1440) / 180 Hz / 10 bit(10 bpc)出力を設定可能です。
Native 10 bitではなく、8 bit + FRCだから厳密には違う・・・という指摘であればそのとおりですが、コンシューマ向けモニターの大多数が8 bit + FRC方式です。
うちのGPUが古いのが悪かったのかもしれないですね。そこまで考えてませんでした。
ちなみに付属のDPケーブルは2.1なんでしょうか?
こちらのケーブルを使っています。4K 240 Hz(10 bit)、フルHD 480 Hz(10 bit)まで動作確認が取れています。かなりコスパ良いDPケーブルです。
記事内容とは異なるんですがROG Strix OLED XG27AQDMGもHDMI2.0 なんですが、こちらの機種と同じようにPS5でVRR対応なのでしょうか?
HPの仕様表のどこで判断すればいいのかがわかりません。
グレアパネルの有機ELパネルが欲しくてポイント込みで7.7万なので購入したいのですが、そこだけが引っかかっているので。
ご教示いただけますと幸いです。
説明書によると
「可変リフレッシュレートは、次の範囲内でのみアクティブにできます。
– HDMI ソース: 40Hz ~ 144Hz
– DisplayPort ソース: 40Hz ~ 240Hz」
と書いてあるから、HDMI VRR(PS5 VRR)が使えそうです。
このモニター色精度が素晴らしいから気になってはいるんだけど、マットコーティングが特殊で変な滲み方をするというレビューがかなりあるんですよねー
上で数時間の作業で特に気にならないと言われていますが、普通のマットコーティングと比べるとやはり少し何か違うなという感じはありますか?
同じASUSのTUF Gaming VG27AQL3A と迷っているのですが
TUFとROGでスペック表には載っていない、例えばパネルの見え方の違いとかありますか?
一番上のコメントと似た事象なんですが、DP接続のEX-GDQ271JAとその他HDMI接続モニターのマルチモニター環境だとDisplay Portのプラグアンドプレイという仕様によりモニターがスリープするとPC側はDP接続されたモニターが切断されたと認識して復帰時にウィンドウ配置がバラバラになることが多々あります
メーカーによってはプラグアンドプレイ対策されてる製品があるそうなのですが、こちらはどうなのでしょう?
EX-GDQ271JAのプロファイルを切り替えるとモニターに再起動かかるの、一生気になってましたし記事に書いたりはしてなかったのでお聞きします。こちらは画面プロファイル(記事のgame visual)を切り替えてくとモニターが暗転する、またはモニターが再起動する、など『途切れる』ことはありむすでしょうか?