大手メーカーHP(ヒューレット・パッカード)なのに、定価で約3.2万円の安さで買えるWQHDゲーミングモニター「HP OMEN 27q QHD」を1台買いました。
まったく期待せずに性能を検証した結果、意外にも予想を裏切る性能に・・・?
(公開:2023/11/11 | 更新:2023/11/11)
HP OMEN 27q QHDの仕様とスペック
HP(ヒューレット・パッカード) OMEN 27q QHD | |
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パネルタイプ | WQHD(2560×1440)で最大165 Hz IPSパネル(27インチ) |
応答速度 | 1 ms (G2G) |
主な機能 ゲーマー向け |
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調整機能 エルゴノミクス | 高さ調整:100 mm 前後チルト:+20° ~ -5° 左右スイベル:- ピボット:90° |
VRR機能 | AMD FreeSync Premium ※G-SYNC互換モード対応 |
参考価格 ※2023/11時点 | |
HP DirectPlus直販 |
HP(ヒューレット・パッカード) OMEN 27q QHD | |
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画面サイズ | 27インチ |
解像度 | 2560 x 1440 |
パネル | IPS(DCI P3:95%) |
コントラスト比 | 1000 : 1 |
リフレッシュレート | 165 HzHDMI 2.0 : ~144 Hz DP 1.4 : ~165 Hz |
応答速度 | 1 ms (G2G) |
光沢 | ノングレア |
VESAマウント | 100 x 100 mm |
エルゴノミクス |
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主な機能 |
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同期技術 | AMD FreeSync Premium ※G-SYNC互換モード対応 |
スピーカー | なし イヤホン(3.5 mm)端子あり |
主な付属品 |
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寸法 | 613.6 x 423.7 x 223.3 mm |
重量 | 4.7 kg(パネルのみ) 7.1 kg(スタンド含む) |
保証 | 3年 |
今回レビューする「OMEN 27q QHD」のスペックまとめです。
公式サイトの製品ページをザッと見て受ける印象は・・・、目立った特徴のない広色域IPSパネルを使った、今どきよくある普通のWQHDゲーミングモニターでしょうか。
BenQのようなゲーマー向け機能に言及なし、Display HDR対応も記載なし、対応していて当然のフリッカーフリーやFreeSync Premiumをアピールしている程度です。
本当に値段の安さだけが取り柄のスタンダードなゲーミングにしか見えません。
しかし、実際はまったく期待以上の性能を示してしまい、困惑するばかりです。おそらく個体差が大きいため、性能アピールを控えめに抑えている可能性が考えられます。
HP OMEN 27q QHDを実機レビュー
DCI P3カバー率:95%の「広色域IPS」パネル
HP OMEN 27q QHDは「広色域IPS」パネルを搭載。メーカー公式サイトに搭載パネルに関する情報がまったく無いですが、「DCI P3カバー率:95%」と書いてあるので無条件に広色域パネルです。
ゲーミングモニターオタクから人気がある、定番IPSパネル(Nano IPSなど)とそれほど大差ないレベルの画質です。色がかなり濃く、パッと見ですぐに分かる鮮やかさが出ています。
一方で、コントラスト感も大きな差がなく、Nano IPSと同程度にとどまっている印象です。実測値で890~910:1程度と、並のIPSパネルによくあるコントラスト比です。
(sRGB:ΔE = 3.1 / 色温度:6507K / 輝度:348 cd/m²)
約3万円の安物だけにまったく期待していなかったものの・・・、実際に表示されている画質は4~5万円クラスの広色域IPSパネルに匹敵します。
(量子ドットは赤と緑の発色が良い)
量子ドット(MSI G274QPF-QD)パネルと比較した写真です。量子ドットの方が赤色と緑色がハッキリと出ていて、より鮮やかな色調を表示できます。
どちらが良いかは「好み」の問題です。個人的に約3万円なら、OMEN 27q QHDは十分すぎるほど高画質です。
- モード:Native
- 色温度:Custom
- 明るさ:84
- 色温度:赤255 / 緑243 / 青236
「Native」モードに切り替えて、色温度を「赤255 / 緑243 / 青236」に変更します。色温度が6580K前後(わずかに青み)に調整でき、日本人好みの画質に調整できます。
明るさは好みに合わせて適当に。筆者は350 cd/m²が好みなので「明るさ:84」です。なお、上記の設定をさらに詰めたい方は以下の3D LUTを使ってみてください。
展開(解凍)して出てきた「OMEN 27q SDR 3D + 1D LUT.cube」を、DWM LUT(→ githubでダウンロード)で適用します。
「Native」モードの広い色域と色精度を維持したまま、ガンマを2.2(相対値)に、色温度を6504K前後にピッタリと補正する3D + 1D LUTです。
DWM LUTと3D LUTの組み合わせなので、Windows上で動作するすべてのアプリケーションに効果を発揮します。ただし、Escape from Tarkovなど、一部の競技性が問われるゲームではDWM LUTが禁止されているので注意してください。
※パネルの個体差により、↑上記の設定が正しく機能するかどうか正確性を保証できません。あくまでも参考程度に。
モニター測定機材による評価
モニターの色を測定できる専用の機材「X-rite i1 Pro2(分光測色計)」を使って、「HP OMEN 27q QHD」の画質をチェックします。
HP OMEN 27q QHDの色精度はややズレています。広色域IPSパネルの影響で表示できる色がsRGBを超えてしまい、いわゆる「過飽和」が起きるのが原因です。
↑過飽和(Oversaturation)のイメージ
OMEN 27qに限った問題ではなく、Nano IPSやFast IPSなど広色域な液晶パネルを使っているすべてのゲーミングモニターで共通の傾向です。
「広色域 = sRGBを超える」なので、過飽和が起きて色が合わなくなって当然です。ほとんどの人にとって、過飽和によって引き起こされる鮮やかな色合いを好ましく感じます。
Amazonや価格コムの口コミを見ても、鮮やかな色合いに大歓迎ムード。色の精度が高い = 必ずしも高画質を意味しません。
sRGBが必要なら「HP Enhance+(medium)」モードを使ってください。
表示される色域がsRGB:98~99%に制限され、結果的にsRGBに対する精度が大幅に改善されます。実測値でΔE = 0.51に達し、ちょっとしたクリエイター向けモニターに匹敵する精度です。
表示できる色が広いせいで、結果的にsRGB色域からズレてしまう「過飽和」が生じて色精度が下がっていますが、主観的にゲームや映像を楽しむ分には問題ありません。
sRGBの色精度が高い ≠ 主観的に見た高画質です。
HP OMEN 27qのネイティブコントラスト比は890:1前後です。可もなく不可もなく普通のコントラスト比です。
画面の明るさ ※クリックすると画像拡大 |
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100%時で408.6 cd/m²に達し、SDRコンテンツに十分すぎる明るさです。0%時だと46.1 cd/m²まで下げられます。夜間に暗い画面を好む場合も便利です。
目にやさしいらしい120 cd/m²前後は設定値10%でほぼ一致します。
色域カバー率 | ||
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規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 99.7% | 98.7% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 90.4% | 93.0% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 84.7% | 90.9% |
Rec.20204K HDR向けの色域 | 64.9% | 67.9% |
HP OMEN 27q QHDで表示できる色の広さ(色域カバー率)はとても広いです。
もっとも一般的な規格「sRGB」で99.7%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では93.0%カバーします。
印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は90.9%です。
エンタメ用途で重要なDCI P3とRec.2020カバー率の比較は上記リンクから確認してください。
実は、OMEN 27qの色域は使用モードでガラッと変動します。初期設定(Gamingモード)の場合、わざと色域を抑えて「過飽和」の程度をちょうどいい塩梅に調整する意図が見られます。
- Gamingモード:やや過飽和に調整(DCI P3:93%)
- Standardモード:色域をsRGBにクリッピング(DCI P3:77%)
- Cinemaモード:色域をsRGBにクリッピング(DCI P3:77%)
- HP Enhance+:色域をsRGBにクリッピング(DCI P3:77%)
- Nativeモード:やや過飽和に調整(DCI P3:95%)
- HDR有効時:色域を全開放(DCI P3:96%)
各モード別に測定した結果、「Gaming」「Native」以外のモードで色域をsRGBに閉じ込める仕様だと判明。
鮮やかな高画質を求めるなら「Native」モードをおすすめします。なお、WindowsからHDRを有効化すると自動的に「HDR」モードに切り替わり、色域がさらに拡張されます。
IPSパネルによく見られる「IPSグロー」症状が出ています。パネルの四隅に近いほど画面の明るさが下がります。
色ムラの平均値は約7.5%、並のIPSパネルと同等の色ムラです。普通にゲームをプレイしたり、アニメや映画を見る分にはほとんど気にならないでしょう。同じ色を全画面に表示させた時だけ気づきます。
IPSパネルだから視野角が広いです。斜め方向から見ても、画面が白くなったり黄ばんだりする傾向が少ないです(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
ここは液晶パネルオタク向けの解説です。ほとんどの人は興味がないので、読み飛ばしてください。
マクロレンズでパネルの表面を拡大した写真です。一般的なIPSパネルで広く見られる「ストライプRGB配列」を確認できます。
スペクトラム分析では、赤色の中央が凹む「KSF蛍光体(KSF Phosphor LED)」に特徴的なパターンが見られます。
「KSF蛍光体」は液晶パネルを低コストで広色域化する技術です。今回の広色域IPSパネルをはじめ、Nano IPSやFast IPS(AHVA)パネルでも使われている一般的な技術です。
ブルーライト含有量は約27.8%ですが、「Warm」や「Night」モードを有効化すると、TÜV Rheinlandブルーライト認証に必要な25%未満をかんたんに達成できます。
文字のドット感はクリアです。
ストライプRGB配列はテキストの鮮明な表示に有利で、さらに27インチにWQHD(2560 x 1440 = 約370万画素)を詰め込んでいるのでドット密度が高く、クッキリと見えます。
WQHDで165 Hz(PS5で120 Hz)に対応
HP OMEN 27q QHDは最大165 Hz、PS5で最大120 Hzに対応します。実際にPS5とゲーミングPCにモニターをつないでみて、リフレッシュレートの対応状況を確認しましょう。
PS5の対応状況 ※クリックすると画像拡大 | ||
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設定 | 60 Hz | 120 Hz |
フルHD1920 x 1080 | 対応PS5 VRR:- | 対応 PS5 VRR:- |
WQHD2560 x 1440 | 対応 PS5 VRR:- | 対応 PS5 VRR:- |
4K3840 x 2160 | – PS5 VRR:- | –PS5 VRR:- |
PS5でフルHD~WQHD(最大120 Hz)に対応します。4K解像度は対応しません。HDMI 2.1が無いので「PS5 VRR」も対応不可です。
なお、実際に120 Hzで動くかどうかはゲームによって違うので注意です。
たとえばフォートナイトなら120 fpsかつ120 Hz動作ですが、ストリートファイター6は60 fpsで120 Hz動作になるなど、ゲームによって挙動が違います。
対応リフレッシュレート ※クリックすると画像拡大 |
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HP OMEN 27q QHDがパソコンで対応しているリフレッシュレートは以上のとおりです。DisplayPortのみ、最大165 Hzに対応します。
VRR機能(可変リフレッシュレート) ※クリックすると画像拡大 |
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フレームレートとリフレッシュレートを一致させて「ティアリング」を防ぐ効果がある、VRR機能はDisplay Portのみ使用可能です。動作範囲は48~165 Hzです。
ゲーム性能(応答速度)もかなり優秀
ゲーミングモニターで重要なスペックが「応答速度」です。応答速度が速いほど、残像感の少ない映像を表示できます。
HP OMEN 27q QHDの応答速度はメーカー公称値で「1ミリ秒(G2G)」をアピール。
↑こちらの記事で紹介している方法で、HP OMEN 27q QHDの「応答速度」を測定します。
120 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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PS5で重要な120 Hz時(オーバードライブ:Lv2)の応答速度です。30パターン測定で、平均3.84ミリ秒でした。
最近のIPSパネルとしては割りと普通な部類です。
165 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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165 Hz時(オーバードライブ:Lv2)の応答速度です。30パターン測定で、平均3.87ミリ秒を記録します。
平均エラー率はほぼ0%で、「逆残像」や「にじみ」が一切見えないです。
さらに応答速度を高速化できないか、モニターの設定画面からオーバードライブを適用して改善されるかテストします。
OD機能の効果 165 Hz / 5段階をテストした結果 | |||||
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平均値 | 5.25 ms | 3.87 ms | 3.24 ms | 2.37 ms | 1.81 ms |
最速値 | 2.97 ms | 2.67 ms | 2.40 ms | 1.87 ms | 0.51 ms |
最遅値 | 7.44 ms | 5.01 ms | 5.89 ms | 3.51 ms | 3.46 ms |
平均エラー率 | 0.0 % | 0.0 % | 7.1 % | 21.7 % | 72.7 % |
応答速度を高速化するオーバードライブ機能を使ったときの実測値です。
「Lv5」設定で最速値が0.5ミリ秒に到達し、メーカー公称値を満たします。平均エラー率が70%を超えているので、水彩画のように残像が出てしまい実用は不可です。
HP OMEN 27q QHDにおすすめなオーバードライブ設定は「Lv3」です。
他のゲーミングモニターと比較します。
HP OMEN 27q QHDが記録した平均3.24ミリ秒は、ここ最近レビューしたIPSパネルのWQHDゲーミングモニターと横並びです。つまり、Nano IPSやFast IPSと大差ない応答速度です。
「入力遅延(Input Lag)」は、映像ソースやマウス・キーボードからの入力信号を、ゲーミングモニターが実際に認識するまでにかかる時間です。
一般人は気にする必要はありません。競技性が重視される格ゲーやFPSゲームをガチでプレイする、競技ゲーマーが気にするべき指標です。
「Raspberry Pi 4」を使ったカスタム入力遅延テスターで入力遅延を測定した結果、60 Hz時で3.3ミリ秒、120 Hz時で2.5ミリ秒でした。
他のゲーミングモニターと比較します。ほとんどのゲーミングモニターは16ミリ秒を下回ります。入力遅延3.3ミリ秒は、まったく問題ありません。
ゲームで便利な「暗所補正」
HP OMEN 27q QHDはFPSゲームで便利な「Black Stretch(暗所補正)」に対応。BenQ Zowieシリーズの「Black eQualizer」に相当する機能です。なお、鮮やかさを補正する機能は搭載していません。
では比較写真で効果を確認します。
Black Stretchは意外と効果が大きいです。暗いエリアが明るく見やすく補正され、視認性がたしかに改善されます。
特に、画面が全体的に暗い傾向のホラーゲーム(Dead by Daylightなど)で効果的です。
「MPRT」機能で残像を軽減
HP OMEN 27q QHDは公式サイトのどこにも「残像を軽減する機能」について、一切の言及が見られません。
OSD設定を開いて初めて、バックライトを点滅させてモーションブラー(残像)を軽減する機能「MPRT」の存在に気づきます。
MPRTもいわゆる黒挿入機能にあたり、BenQ「DyAc+」やASUS「ELMB」と基本的に同じ仕組みです。
残像軽減モード 「MPRT」 ※クリックすると画像拡大 |
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MPRTを有効化すると、残像感が軽減されて映像のクッキリ感が増します。
フレーム切替時に真っ暗なフレームを1枚挟む「黒挿入」が行われ、結果的にホールドボケ現象が軽減されて残像感が減ったように見える仕組みです。
MPRT有効時、165 Hz時で約3.64ミリ秒(約60%)が黒フレームです。設定値を1段階あげると、黒挿入時間が約5%ずつ伸びます。
最大値の「Lv5」だと約4.87ミリ秒(約80%)が黒フレームになり、ASUSの「ELMB」に相当する黒挿入時間です。
- なし:約408 cd/m²
- MPRT(Lv1):約215 cd/m²
- MPRT(Lv2):約189 cd/m²
- MPRT(Lv3):約163 cd/m²
- MPRT(Lv4):約136 cd/m²
- MPRT(Lv5):約109 cd/m²
- DyAc+(プレミアム):約310 cd/m²
MPRTを有効化すると画面の明るさがやや下がります。個人的に200 cd/m²台はやや暗いと感じますが、FPSゲーム用途なら十分な明るさです。
Lv3以上だと暗すぎて実用的かどうか怪しいライン。
自由に位置を調整できる「エルゴノミクス」機能
HP OMEN 27q QHDは左右スイベル以外のエルゴノミクス機能に対応します。目立った引っかかりなく、スムーズに動く調整しやすいエルゴノミクス機能です。
VESAマウント ※クリックすると画像拡大 |
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別売りモニターアームを取り付けるのに便利なVESAマウントは「100 x 100 mm」に対応します。パネル本体の重量は約4.7 kgで普通のモニターアームで持ち上げられます。
100 x 100 mm対応のモニターアームを取り付ける場合、すでに取り付けてある銀色のフレームを取り外します。
フレームを取り外したら、Amazonベーシック(エルゴトロンOEM)のモニターアームを干渉なく取り付けられます。
モニター側に付いていたネジ(4本)を使って固定できます。
目が疲れにくい「フリッカーフリー」動作
HP OMEN 27q QHDは「フリッカーフリー」動作に対応し、TÜV Rheinland(eyesafe)認証も取得していると、公式サイトでアピールしています。
フリッカーフリーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
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実際にオシロスコープを使ってフリッカーの有無をテストした結果、明るさ0~100%までフリッカーが一切検出されません。
過去のレビュー傾向的に、TÜV Rheinland認証をアピールしていれば基本的に完全なフリッカーフリーに対応していると考えて良さそうです。HP OMEN 27q QHDも完全なフリッカーフリーに対応します。
機能性と各インターフェイスをチェック
モニター本体の右裏にある「ボタン」を使って、OSD設定を操作できます。
ASUSやBenQのようなジョイスティック方式ではなく、単なるボタンです。何度もボタンを押す必要があり、正直かなり面倒くさい操作性です。
OSDメニューの動作もわずかにワンテンポ遅れています。
面倒なので、WindowsからOSDをコントロールできる純正ソフト「OMEN Gaming Hub」をおすすめします。マウスでクリックして画面の明るさやモードを変更可能です。
- Gaming(初期設定)
- Standard
- Cinema
- Warm
- Cool
- Night
- Native
- HP Enhance+
(Low / Medium / High)
HP OMEN 27q QHDは全10種のプロファイルに切り替え可能です。設定ごとに色温度やコントラスト感が変わります。
個人的に「Native」モードに切り替えて、自分で調整したほうが一番良かったです。
「Gaming」「Native」以外のモードは色域がsRGBにクリッピング(制限)されるので、広色域パネルの鮮やかな画質を求めているなら使わないでください。
各種インターフェイス ※クリックすると画像拡大 |
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全部で3つの映像出力端子があり、DisplayPort 1.4で最大165 Hz(2560×1440)、HDMI 2.0で最大144 Hz(2560×1440)に対応します。
USB Type-Cポートや内蔵スピーカーは非搭載です。
HDR認証がないのに「HDR 500」相当の性能
HP OMEN 27q QHDはDisplay HDR非対応モニターです。要するに、HDR10信号を受け入れて(一応)表示できるだけ。
あまり期待せずに、Youtubeで公開されている「Morocco 8K HDR」と「すずめの戸締まり(4K Ultra BD盤)」を再生して検証します。
妙です。
メーカー公式サイトを見る限り、HP OMEN 27q QHDはたしかにDisplay HDR認証を取っていないはず。しかし実際に表示されている映像は少なくともHDR 400と同等の画質です。
色温度が赤くなりすぎたり青すぎるシーンも少なく、明暗のメリハリも値段の割に良好な印象を受けます。
(EX-GDQ271JAのほうがメリハリは良い・・・)
以前レビューした「IODATA EX-GDQ271JA」と比較した写真です。
並べて比較すると、明暗のメリハリでGDQ271JAにやや及ばないですが、HDR 400認証を取っていない割にHP OMEN 27q QHDが健闘しています。
参考程度に、Display HDR 1000認証に対応するゲーミングモニターと比較した写真を置いておきます。
モニター測定機材でHDR性能を評価
モニターの色や明るさを測定できる機材を使って、「HP OMEN 27q QHD」のHDR性能をテストします。
VESA Display HDR HDR性能のテスト結果 | ||
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比較 | テスト対象 HP OMEN 27q QHD | VESA Display HDR 400 |
画面の明るさ |
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黒色輝度 |
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コントラスト比 |
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色域 |
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色深度 |
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ローカル調光 |
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製品ページにDisplay HDR認証が無いものの・・・、実際にテストするとDisplay HDR 400認証を軽々と超えてDisplay HDR 500認証に合格できる性能です。
HDR 500はともかく、HDR 400程度なら個体差を考慮しても余裕でクリアできる性能がありそうですが、HPはあえてDisplay HDR認証を取らない選択を取っています。
考えられる理由は2つです。
- 個体差が大きすぎてHDR 400すら取れない個体が出てくる可能性
- ただ単にライセンス料を節約するため、あえて取得しなかった
たいていの場合、後者です。
そもそもDisplay HDR 400認証は合格できて当然の最低グレードに過ぎず、その程度の性能をアピールするために追加コストを払うのは割に合わないと考えても違和感ないでしょう。
HDRモードで画面全体に白色を表示したときの明るさを、他のモニターと比較したグラフです。
Display HDR 400を取得している他のライバルをすべてゴボウ抜きにして、なんとDisplay HDR 600認証をとっている「EX3210U(定価16万円)」に迫ります。
HDR時のコントラスト比(理論値)は約9322:1で、ローカルディミングを搭載するゲーミングモニターとしては「LG 32GQ950-B」を上回る理論値です。
HDRコントラスト比i1 Pro 2で測定した結果 | |
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全画面 | 9257 : 1 |
10%枠 | 868 : 1 |
3×3分割 | 868 : 1 |
5×5分割 | 868 : 1 |
7×7分割 | 868 : 1 |
9×9分割 | 867 : 1 |
テストパターン別にHDRコントラスト比を測定、ワーストケースで867:1です。
ローカルディミングが単純な全画面方式(= 全画面が真っ黒な時だけバックライトを消灯)なので、1ドットでも明るいエリアがあると普通のIPSパネルと同等のコントラスト比にとどまります。
HDR規格どおりの明るさを表示できるかチェックする「PQ EOTF」グラフです。
極端に暗い部分(0.001~0.1 cd/m²)はIPSパネルの性能限界でうまく表示できません。
2.5 cd/m²あたり(かなり暗い部分)までやや明るめに表示して黒を浮かせて、100 cd/m²から実際より暗めに表示される意図的なチューニングが施されている様子です。
もう少し明るい部分のPQ EOTFが一致している方が明暗のメリハリが付いて良いのですが、HP OMEN 27q QHDの性能的にメーカー側がわざとやっているフシがあります。
それでも明るさ1000 cd/m²までの追従指数は約0.196で、値段の割に悪くないです。
- HP OMEN 27q QHD(約3万円):0.196
- EX-GDQ271JA(約4万円):0.139
- MSI G274QPF-QD(約4.5万円):0.359
時間経過や面積比による明るさの変動も、一切検知されませんでした。一貫して535 cd/m²前後の明るさを維持します。
HDR時の色精度(Rec.2020)は最大ΔE = 8.9、平均Δ = 2.01で非常に正確です。HDR時の色温度も常用シーンの多くで6550K前後と、Rec.2020で求められるD65(6504K)に近いです。
HDRモード時の消費電力電力ロガーコンセントで測定 | |
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白枠面積 | 消費電力 |
1 % | 51 W |
2.5 % | 51 W |
5 % | 51 W |
10 % | 51 W |
25 % | 51 W |
50 % | 51 W |
75 % | 51 W |
100 % | 51 W |
全白フラッシュ (※持続時間は2~3秒) | 51 W |
電源コンセント経由でHDRモード時の消費電力を測定しました。シーンを問わず51 W前後ほどで、普通のワットパフォーマンスです。
開封と組み立てを写真であっさり紹介
白い背景にOMENのロゴと製品がでかでかと印刷された、ゲーミングらしいパッケージで到着。サイズは70 x 45 x 16 cm(140サイズ)です。
環境に配慮をアピールするHP(ヒューレット・パッカード)らしく、紙製の分厚い梱包材が使われています。梱包状態は万全で問題ないです。
付属品 |
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映像出力用のDisplay Portケーブルが付属します。必要最低限の内容です。
組み立て工程 ※クリックすると画像拡大 | |
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最近のゲーミングモニターで定番のドッキング方式で、スラスラと組み立てられます。プラスドライバーすら要らないツールレス設計です。
まとめ:低予算WQHDゲーミングモニターの覇権かも
「HP OMEN 27q QHD」の微妙なとこ
- パネルの均一性は平凡
- コントラスト比も平凡
- 初期設定の色温度がズレてる
(かんたんに修正できます) - 「MPRT」を使うと画面が暗い
- OSD設定の操作性が悪い
- 内蔵スピーカーなし
- 搭載パネルは2種類あります
「HP OMEN 27q QHD」の良いところ
- 27インチでWQHD(ちょうどいい)
- 最大165 Hzに対応
- PS5で120 Hzに対応
- 応答速度が速い(IPSパネルで)
- 色域が広い(DCI P3で96%)
- 入力遅延が非常に少ない
- 実用的なゲーマー向け機能
- HDR 500相当のHDR性能
- 残像軽減「MPRT」
- 高精度なsRGBモード対応
- OSDソフトウェア対応
(OMEN Gaming Hub) - 必要十分なエルゴノミクス
- メーカー3年保証
- 圧巻のコストパフォーマンス
表情筋がひりつきそうな価格と性能です。「大手外資メーカーの激安品」だから、てっきりボッタクリだと踏んで突撃したわけですが、まさかの返り討ちに会いました。
特に不満はありません。粗探しのため100時間ほどHP OMEN 27q QHDを使い込みましたが、ローカルディミングの特殊挙動が(個人的に)気に入らない程度です。
定価およそ3万円でこの性能を出されると、なかなか厳しい競争です。勝負になりそうな候補は「INNOCN 27G1S」くらいですが、240 Hzが不要ならHP OMEN 27q QHDで良いでしょうし・・・。
参考価格 ※2023/11時点 | |
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HP DirectPlus直販 |
2023年11月時点、HP OMEN 27q QHDの実売価格は31900円です。「楽天リーベイツ」で還元率が高いときを狙えば、実質2.9万円で買えます。
- 筆者やかもちの招待リンクだと500ポイントもらえます
(楽天リーベイツ公式サイトへ)
たとえば10%還元のときに買うと、31900円の税抜き価格29000円に10%がかかって2900ポイントが還元されます。実質2.9万円です。
以上「HP OMEN 27q QHDレビュー:定価31900円が適正だとは思えない」でした。
注意点:OMEN 27qはパネルガチャあり
箱に張ってあるラベルに「Rev」が記載されています。
- L0IT:LG製パネル
- B0BT:BOE製パネル
先頭4文字でLG Display製か、BOE Technology製か見分けられるようです。今回レビュー用に買ったOMEN 27qは「L0IT1121」で、サービスメニューを見ると「LGD LM270WQA SSB3」でした。
BOE製パネルは海外の口コミで「BOE MV270QHM-NF5」との報告あり。
- LG Display LM270WQA-SSA2
(https://www.panelook.com/LM270WQA-SSA2__27.0__overview_45671.html) - BOE MV270QHM-NF5
(https://www.panelook.com/MV270QHM-NF5_BOE_27.0_LCM_overview_59131.html)
製造メーカーによる公称値に大きな差はないため、どちらのパネルが入っていても似たような画質と性能に期待できるはずです。
HP OMEN 27q QHDの代替案(他の選択肢)
セール時に3.2~3.5万円くらいで買える「グリーンハウス」が有力な候補です。Sharp製IGZO IPSパネル搭載で、4万円クラス(EX-GDQ271JA)に匹敵する画質と応答速度を両立します。
セール時に3.9万円まで値下がる「IODATA EX-GDQ271JA」も魅力的です。
AUO製AHVA(Fast IPS)パネル搭載、最大180 Hz(PS5で最大120 HzかつPS5 VRRまで対応)、各種ゲーミング機能をフル装備、リモコンでOSDをらくらくコントロールなどなど。
ほぼ全部盛りの優等生WQHDゲーミングモニターです。
最近めっきり在庫を見かけないですが、約2.5万円から買える「KEIAN KPGM270」は低予算WQHDの隠れた名作でしょう。激安ながらSharp製IGZO IPSパネル搭載で、4~5万円クラスに劣らない画質が手に入ります。
価格が安い分、機能性に目をつむる必要はありますが・・・。
WQHDでおすすめなゲーミングモニター
最新のおすすめWQHDゲーミングモニター解説は↑こちらのガイドを参考に。
WQHDでおすすめなゲーミングPC【解説】
予算に余裕があれば「RTX 4070 Ti」や「RX 7800 XT」を搭載したゲーミングPCがおすすめです。
予算20万円前後なら「RTX 4070」が無難です。
ゲームのグラフィック設定を妥協するつもりで、予算をもっと絞るなら「RTX 3060 Ti」がコスパ良し。
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
omen のスペックPDF(https://jp.ext.hp.com/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/ec/lib/products/monitors/personal/spec_pdf/omen_2023_monitor.pdf)
を見てみると表示色が1677万色でおそらく8bitだったのですが、ちもろぐさんが測定したところ10bitとの結果を得ていました。
これはそもそも意味が異なるのでしょうか?
測定が正しいのであればどちらのほうを重視するべきですか?
G2723Hってコスパがいいように思えるんですが、なんであまり売れてないんでしょうか?
wqhdモニター欲しくてIODATA EX-GDQ271JAを買おうと考えてたけどこれも良さそうでどっち買おうか悩む
現状同じ脳内なのですが、結局どちらを購入しました?購入後の感想も教えていただけると嬉しいです!
バックライトの調光がエリア単位ではなく全画面単位なら、
ローカルディミングではなくグローバルディミングなのでは?
もしよかったら240Hz版のhp omen 27qsもよろしくお願いします
HPのサイトやNVIDIAのサイトにおいて、27qがg-sync互換モードに対応する旨の情報が見つけられなかったのですが、間違いではありませんか?
amazonのレビューではg-sync有効にできてるみたいですよ
ただ認定を受けてないみたいです
これは失礼しました(特にやかもちさんに)。記事中でも画像付きで触れられていますね、私の確認不足でした。
ご指摘ありがとうございます。
海外レビューでOMEN 27qとDELL G2724Dで悩みまくってDELLにしたのですが、
OMEN 27qのsRGBモード(HP Enhance+ (Low))がそんなに精度が高いとなるとOMENでも良かったかなぁ・・・あと2週間早く知っていれば・・・
DELL G2724DはOMEN27qと比べ、同等のゲーミング性能でSDR時のコントラストが高く、色の正確性が少しだけ良いみたいですが、MPRT(BFI)がないという問題があり、ゲーミングとしては27qに軍配が上がりそうですね。
OMEN 27qやDELL G2724Dにはローカルディミングが搭載されていますが、分割数が少なく発光のON/OFFで発光の滲みが出るようで、下手なローカルディミングはないほうがマシみたいです。
参考
OMEN 27q
https://www.rtings.com/monitor/reviews/hp/omen-27q
OMEN 27qs
https://www.rtings.com/monitor/reviews/hp/omen-27qs
DELL G2724D
https://www.rtings.com/monitor/reviews/dell/g2724d
OMEN 27qの場合、ローカルディミングは1分割(1×1 = 全画面)しかないうえに、低輝度域での制御にやや難ありですが値段を考えると致し方ないか・・・と思います。
sRGB色精度に関してはメーカー(HP)が特に何もアピールしていないため、おそらく個体差が大きい可能性が高いです。貼っていただいたRTINGSさんの検証だとΔE = 2.0超で、ぼくの今回の検証機だとΔE = 0.51と、かなり差が出ています。ただ、表示色域をsRGBにクリッピングすればある程度の精度が得られるのも事実です。
あれ?27qってローカルディミングだっけ?27uはそうだけどソフトウェアロックだけでハード一緒なのかな?
以前まで販売されてたOMEN27iはnano IPSである代わりに機能性をコストカットしたみたいな機種でしたがバランス良くなってますね
まとめのとこのディスプレイに写ってる血しぶき浴びてるアニメの画像の詳細気になる
画像検索してみた結果『地獄楽』みたいだよ
カカクコム経由だと1000円だけ安い・・・
価格.COMで、B0BT1121が届きました。
追記、こういうやつがパネルが違ったりするのかなって思った
直販でもBOBT1121あるので
完全ガチャよ
NanoIPSとか量子ドットって最近の流行りだけどSDRだとみんな飽和させて色がおかしくなってるのが残念…
HDRだと公色域が必要だから不要とは言えないけど…
いつも役に立つ記事をありがとうございます。
この記事とは関係がなく申し訳ないのですが、Dell G2422HSというフルhd、165hzのモニターの購入を検討しています。
少し古いモニターですが、レビューしていただけるとありがたいです。
よろしくおねがいします。
価格コムで今一番人気にもなってるDell G3223Dとどっち買うか迷う
こっちはあんまりちゃんとしたレビューがないのよね
sRGBの色域を「過飽和」と呼ぶのは一般的な呼び方ではないと思います。なにも「飽和」してないので
似た仕様で対抗馬のDell G2724Dもブラックフライデー価格で3万切ってますね
仕様がそっくりというか寄せてきているというか
ドット欠け交換保証とかあるDellにしようか、レビューで全容が判っているこっちにしようか迷う…
OMEN 27qとG2724Dの違いはヘッドホン端子の有無と、HDMI2.0x2かHDMI2.1×2の違いぐらいだったけど
WQHD144HzはHDMI2.0で十分だからHDMI2.1意味ない気がした
老眼のため文字サイズが大きい32インチWQHDとして本製品の32インチ版と思われる OMEN 32q を検討しています。本製品、27インチとスペックを見比べて画面サイズ以外はほぼ同等と思うのですがご意見を賜われると幸いです。
WQHDモニターはパソコン側の必要スペックや映像体験などの諸々のバランスが好きなのでWQHDモニターのレビューを多くしていただき助かります
ところでALIENWAREのAW2724DMというHDR600認証のモニターのレビューをよければ検討してみて欲しいです。直販サイト価格で7万弱でusbハブ機能もついて600認証のスペックはコスパいいんじゃないかと思って気になっちゃってるのでレビューしていただけると嬉しいです
直販サイト:https://www.dell.com/ja-jp/shop/accessories/apd/210-BHGH?gacd=9688831-23732672-5785552-266269630-127760219&dgc=af&VEN1=/Vv6e0WKODg-qitK5UWEJEX/jAbnmnQmwg&dclid=CP_EgNrO4IIDFS7dFgUdhY0BcQ
このモニターに限った話か、全モニターに共通なのかは分からんけど、
MPRTオンにしたら、lv1の時点でマウス動かしたら、
マウスの動き始めに暖色っぽいチラつきが発生する・・・
見た目気持ち悪くて、とてもじゃないけど常用出来そうになかったけど、
MPRTオンにしたらフリッカーフリーって機能が使えないみたいだし、
MPRTは切るのが妥当かも(確証は無い
2024/6/30現在、HP25周年キャンペーンで29,800円に!!
BOBT1121でした。
主様のレビューはあくまで「LGの」と考えると、
なんかモヤモヤしますねえ。
LOIT1121でした。パネル鳴きが激しいので交換してもらいましたが、届いたのもLGでやはりパネル鳴きがありました。
音を出していなければ気にならないレベルですが、地味にストレス。
パネル鳴き報告は多いモニターですので、安いとはいえオススメできる代物ではないです。