2018年6月に、日本で発足したゲーミングブランド「Ray」が第1作目となるゲーミングマウス「Ray PAWN」(RM-3360)を発表。5000円を下回る価格でありながら「PMW3360」を搭載するなど、値段の割にはハイエンドなマウスですが、実際のところはどうなのか?
入手して実機レビューしてみた。
「Ray PAWN」とは日本発のゲーミングマウス
Ray PAWNの仕様(スペック) | |
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タイプ | 有線 / 光学マウス |
搭載センサー | Pixart製「PMW3360」 |
対応DPI | 400 / 800 / 1600 / 2400 / 3200 / 12000 (6段階) |
ポーリングレート | 125 / 500 / 1000 Hz |
トラッキング速度 | 不明 |
加速度 | 不明 |
リフトオブディスタンス | 1mm前後 |
オンボードメモリ | なし |
LED点灯 | 6色(消灯はできない) |
本体サイズ | 66mm 123mm 38mm |
重量 | 約82g / 約128g(ケーブル含む) |
ケーブル長 | 1.8 m |
保証期間 | 1年 |
「Ray PAWN」(RM-3360)は日本で発足した新しいゲーミングブランド「Ray」(レイ)のゲーミングマウス第1作。スペックの割に価格を5000円以下に抑えているのが最大の特徴。
PMW3360搭載のゲーミングマウスを5000円以下で実現できたトリックは、要するに「OEM」※。「Xtrfy(エクストリファイ)」の製造元にPAWNを作ってもらうことで、低価格でハイスペックを実現した。
※ザックリ言うと、そのブランドと実際に作っているメーカーが別ということ。
手短に「Ray PAWN」のレビューまとめ
「使ってみてどうだったのか、結論だけ手短に知りたい。」という人向けに、最初にレビューの結論をまとめます。もっと詳しく見たい人は「開封レビュー」へ進んでください。
「Ray PAWN」の良いところ- 日本発のゲーミングブランド「Ray」の記念すべき第1作
- 入門機として最高のコスパと性能
- 左右対称であまり人を選ばない持ちやすさ
- ハイエンドマウスで多用「PMW3360」搭載
- ソフト不要で設定可能(ドライバレス)
- DPI感度の微調整はできない
- 専用ソフト / ドライバは用意されていない
- 親指ボタンは右利き用
筆者はゲーミングマウスに手を出し始めた頃、Steelseriesの入門マウス「RIVAL 100」を使っていた。RIVAL 100もPAWNと同様、4000円台の価格の割には性能が良く、コスパに優れたマウスです。約1年くらい愛用していました。
しかし、Ray PAWNの評価は1年も使っていたRIVAL 100を軽く上回ってしまった。1年も使っていた…という思い出補正を考慮してもなお、Ray PAWNの性能は体感で分かるほど優秀。
約8000~9000円ほどの「Xtrfy」や「ZOWIE」といったハイエンドマウスで採用実績のある、高性能光学センサー「Pixart PMW3360」で追従性がここまで変わるモノなのか…と、センサーの凄さを体感してしまった。
正直に言って、5000円以下のゲーミングマウスとしては「破格のコスパ」を実現しているのは間違いない。もし、これから初めてゲーミングマウスを買うつもりで、かつ低予算なマウスを探しているなら…、
今のところ「Ray PAWN」ほどピッタリなマウスは他に存在しないかもしれない。価格的に競合するのは「G402」や「RIVAL 110」だが、カーソルの追従性やフィット感など、マウスとしての性能だけを評価すればPAWNは圧巻です。
もちろん、上記2種のマウスは実際に使用済み。ただ、本記事はPAWNのレビュー記事なので、詳しい感想は最低限だけ以下にまとめておく。
G502の低価格版です。G502と比較して明らかにセンサー性能が劣っていることや、プログラム可能なボタンの削減や、オンボードメモリが1スロットしか無いことなど。どうも使い勝手が優れない。
それに加えて、フォルムが大きいので人を選ぶ点も要注意。
価格は5000円前後。先代RIVAL 100と比較して、サイドラバーとマウスホイールに改良が加えられた結果、非常に持ちやすいマウスに仕上がっています。ただし、センサーは「Pixart PMW3330」で、PAWNと比較すると1ランク下の性能。
純粋な性能ではやはりPAWNに届かないが、RIVALは専用ソフト「Steelseries Engine」が使いやすくて、それなりに高機能。そこそこのマウス性能 + プログラム機能を求めるなら、RIVAL 110の方がしっくり来る人は多いと思われる。
「Ray PAWN」を開封レビュー
シンプルなパッケージデザインで差別化
Ray PAWNのコンセプトは「必要な機能のみを搭載し、マウスの操作に集中できる」というシンプル追求型。そのコンセプトがパッケージデザインにも、しっかりと現れていることがよく分かる。
ホワイト基調だけで構成されたパッケージデザインは、どこかコスメや化粧品のような雰囲気が漂っており、「これがゲーミングマウスの箱なのか。」と新鮮な気持ちになります。
パッケージは見開き式になっているので、ペラリと開いてみた。左側にPAWNのコンセプトが細かく語られており、右側にはPAWN本体が拝めるようになっていました。
PAWNに搭載された最先端のセンサーは、極めて正確な操作性を発揮し、 ユーザーが思い描く操作を可能にします。また、ボタンを押すだけで切り替えが可能な6段階のDPIプリセットを備え、DPIプリセット毎にLEDのカラーが設定されているため、一目で選択されているプリセットを確認することが可能です。 複雑な設定をする手間を省き、シンプルでありながら必要な機能を全て備えることで、よく手に馴染み、プレイヤーのポテンシャルを最大限引き出すことのできるゲーミングマウスに仕上がりました。
「RAY」公式サイト より
付属品も簡素
付属品はほとんど無い。
- Ray PAWN本体
- 保証書(1年間)
- 滑り止めラバー
以上の3つだけです。低価格で性能を追求をした結果、コストカットの影響で付属品はかなり省かれた感がありますね。
左右対称のシンメトリーデザイン
メーカー曰く、PAWNのデザインはSteelseriesの初代Senseiにリスペクトされて制作したモノらしい。そのため、デザインは完全左右対称になっていて、かぶせ / つかみ / つまみ持ちまで幅広くカバーする。
横から見ると、形状は平坦な山ではなく、若干手首側に盛り上がった形になっている。筆者はかぶせ持ちですが、手の大きさは平均より少し小さいため問題なくフィットしてくれる。
親指ボタンの位置も、手前過ぎるわけでもないし、奥過ぎることもない。ちょうどいい位置にあり、両方のボタンを押しやすいです。
反対側から確認。つかみ持ちだと若干、薬指の置き場に悩む部分が出てくるフォルム。手が平均より大きい人(18.3cm以上)だと、薬指とPAWNとのフィット感は少し悩むかもしれない。
かぶせ持ち / つまみ持ちは全く問題なくフィットします。
前方からチェック。キレイに完全左右対称です。親指ボタンは左側にしか無いので、Ray PAWNは一応右利き用ということになる。
なお、ケーブルは布巻きケーブル(ファブリック仕様)です。耐久性が高く絡まりにくいので、個人的には単なるスリーブケーブルより高評価。ただし、クセは取れにくい。
ボタンの位置と機能
Ray PAWNのボタンは全部で5つあり、親指ボタンは中国のkailh製。メインスイッチ(左右クリック)は日本オムロン製で、耐久性は2000万回(公称値)です。
- 親指ボタン(奥)
- 親指ボタン(手前)
- マウスホイール(ホイールクリック可)
- DPI増加
- DPI低下
PAWNには専用ソフトやドライバは一切無いが、パソコン側(Windows側)からは「親指ボタン」という名前でちゃんと認識されるので、ゲームでも問題なく使用可能。
たとえば、PUBGでは「フリールック」(移動しながら周囲を見回す)に親指ボタンを割り当てる人が少なくないけれど、PAWNはちゃんとフリールックに親指ボタンを割り当てできます。
ソフト不要でDPIとポーリングレートを調節可能
DPIボタンは、PAWNのDPI感度を6段階で調整する。自分がどのDPIを適用しているかどうかは、PAWN本体のLEDカラーで判別できる。
- 赤:400 DPI
- 青:800 DPI
- 黄:1600 DPI
- 橙:2400 DPI
- 緑:3200 DPI
- 紫:12000 DPI
この通り。PAWNは価格の割にはものすごく高性能なのが強みですが、このDPI設定値はPAWNの限られた弱点になるかもしれない。
既にPAWN以外のゲーミングマウスを使っていて、自分にとってピッタリなちょうどよいDPI感度を見つけているゲーマーにとっては、800~3200までが800刻みで飛ぶのは微妙。
マウスの底面にはポーリングレートを調節するスライド式のボタンが取り付けられている。対応レートはPAWN本体に印字されている通り、125 Hz / 500 Hz / 1000 Hzの3段階。
物理ボタンでポーリングレートを調節できる点は、据え置き機(PS4など)でゲーミングマウスを使っているユーザーにとっては地味に嬉しいところかも。パソコン不要でレートを調節できるわけですから。
特にマウスコンバーター(XIM APEXなど)と呼ばれる機器を使っている据え置き機ゲーマーには重宝しそうな機能。
- おおむね万人向けの持ちやすいデザイン
- 布巻きケーブルで絡まりにくい
- 親指ボタンはゲームに割り当て可能
- DPIの刻み値は大きい
- 右利き用の親指ボタン
「Ray PAWN」のマウス性能を検証
カーソルの追従性とポインタ飛び
体感で分かるほど、5000円のゲーミングマウスとしてはカーソルの追従性は抜群に良い部類。ただ、体感だけだと客観性が少し足りないか…と考え、Mouse Testerで追従性の計測を行った。
400~1600 DPIまでは、ポインタはほとんど飛ぶことなく至って安定した動作を実現していることが分かる。2400~3200 DPIにすると、カーソルの減速時に若干だがカーソルが飛んでいるようです。
DPI別にカーソルの精度を計測
「精度」はカーソルの追従性とは別のもので、主に「ジッタ」と「手ぶれ補正」がある。
ジッタとは、マウスに搭載されている光学センサーが本来ないはずの挙動を検出して、カーソルの動きを不規則にしてしまう現象のこと。センサーの性能が悪い、またはDPIが高すぎると発生率が高まる傾向。
手ぶれ補正とは、名称の通りSAIなどのイラストソフトに搭載されている手ブレを補正する機能。キレイな直線や折れ線を引けるが、ゲーミング時には自分の意図した動きにならない原因になるため、補正が入っているマウスは好まれない。
400 DPIジッタなし / 補正ゼロ | |
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800 DPIジッタなし / 補正ゼロ | |
1600 DPIジッタなし / 補正ゼロ | |
2400 DPIジッタなし / 補正ゼロ | |
3200 DPIジッタなし / 補正ゼロ | |
12000 DPIジッタなし / 補正ゼロ |
12000 dpiまで設定を引き上げても、ジッタは全く観測されなかった。妙なカーソル揺れも無いし、ピッタリと止まる際に変な動きは入っていない。補正の方も、妙な矯正感は特に感じられなかったので問題なし。
製造元のチューニングは優秀ですね。
リフトオフディスタンスは1mm前後
物差しで計測するという…かなりアナログな手法を取ったが、マウスパッド上(Steelseries QcK Mini)だと約1mmくらいでした。基本的に1mmくらいなら、使っていて不便に感じることはないはず。
2mmくらいになると「今ので反応するのか。うっとうしい。」となりがち。まぁ…超ハイセンシ使いで、マウスをあまりサッサッと動かさない人には、さほど関係のない話かもしれない。
- 優秀なカーソル追従性
- ジッタは皆無、補正もほぼ無し
- リフトオフディスタンスは1mm前後
- 「PMW3360」と製造元のチューニングは優秀
専用ソフトは無いので無評価
序盤の手短レビューにも記載したとおり、Ray PAWNはコストカットの影響で「ドライバレス」になっています。そのため、Logicool Gaming Softwareのような、専用ソフトウェアは何も用意されていない。
だから、各種ボタンにマクロキーや他のキーボードキーを割り当てたり、DPIを細かく設定して段階ごとに自分の好きな感度を入れておく。といった使い方は一切できない。
FPSやTPSなど、いわゆるeSport市場向けにシンプルさを追求して作られただけのことはあり、どちらかといえばMOBA※やMMORPG向けに便利とされているソフトウェア制御は捨てた…というコンセプトなんでしょうね。
※ MOBAはeSportに含まれると思うが、今は他のマウスに譲るということだろう。
ドライバレス仕様は「マウサー」には有利かも
ソフトウェア制御をガッツリ使うユーザーにとって、ドライバレスは欠点でしか無い。しかし、PS4やXBOX ONEでマウスコンバーターを駆使する「マウサー」と呼ばれるユーザーにとって、ドライバレスは重宝する一面もある。
たとえば、マウスのポーリングレートを1000 Hzに設定するとコンバーターが不具合を起こすから、予め下げておきたい…という場合。Ray PAWNはソフトを使わずに、底面の物理ボタンでレートの調節ができてしまう。
今、どのポーリングレートに設定しているかがパッと見で分かるように、それぞれのレートが印字されているデザインもGoodですね。この画像だとポーリングレートは500 Hzになっています。
- 専用ソフト / ドライバは無い
- 物理ボタンでポーリングレートを調節可能は便利(かも)
「Ray PAWN」レビューまとめ
- 日本発のゲーミングブランド「Ray」の記念すべき第1作
- 5000円以下で恐らく最高のマウス性能(PMW3360)
- あまり人を選ばない左右対称のデザイン
- ドライバレスでカンタンに動作する
- ゲーミングマウスの入門機として最高のコスパ
- 専用ソフトが無いので細かい設定はできない
- 親指ボタンの位置は右利き用
- MOBA / RPGにはボタンが少ない
レビューをまとめると、「これから初めてゲーミングマウスを買う。」「ゲーミングマウスデビューを考えている。」という初心者にピッタリなゲーミングマウスです。Ray PAWNは、5000円以下の入門機として最高のコストパフォーマンスとマウス性能を兼ね備えている貴重な存在。
もちろん、5000円以下で「PMW3360」搭載というハイスペックを実現するために、ソフトウェアが省かれているなどコストカットの影響はある。だからこそ、キー割り当てやマクロキー、小刻みなDPI設定など、細かいこだわりがまだ無いであろう初心者さんには、特にオススメというわけ。
なお、レビュー執筆時点で「PMW3360」を搭載する5000円以下のゲーミングマウスは「Ray PAWN」ただ一つ。ゲーミングマウスデビューを考えているなら「イチオシ」です。
以上「Ray PAWNを実機レビュー:入門機として最高のコスパと性能」でした。
Ray PAWNはこちらの記事でも、ゲーミングマウスデビューに一押しのマウスとして紹介しています。他にも色々と検証してベストマウスを選定しているので、まだ決めかねているなら読んでみて。
amazonのレビューの低評価の内容が軒並みマウスホイールの軽さのことを書いてありますがそんなに軽いんでしょうか?
ゲーム中に勝手にマウスホイールが動いて武器が切り替わってしまうくらい柔らかいとのこと
マウスホイールの押し込みの操作があるゲームだとなかなか厳しいかもしれません
高評価の人たちはそのことに触れていないので単なる品質の当たり外れの問題なのかそういう特性なのかちょいと気になります
< ゲーム中に勝手にマウスホイールが動いて武器が切り替わってしまう 自分のRay PAWNはそんなこと無いですね。ごく普通のコリコリとした感触で、勝手にホイールが回るほど軽いなんてことはないです。 恐らく個体差があるのかもしれません。
自分もそんな軽くないですね
12000 DPIが幼稚園児の落書きレベルで草