北米または中国の通販で販売されている「KTC M27T20S」を個人輸入で入手しました。
約4万円で8万円台のスペックです。WQHDで144 Hz、量子ドットVAパネル、Display HDR 1000(+576分割Mini LEDバックライト)を搭載します。
以前レビューした「INNOCN 27M2V」と同じく、価格破壊の香りがするので実際に検証してみましょう。
(公開:2023/8/23 | 更新:2023/8/23)
KTC M27T20Sの仕様とスペック
KTC M27T20S | |
---|---|
パネルタイプ | WQHD(2560×1440)で最大144 Hz 量子ドットVAパネル(27インチ) |
主な機能 ゲーミング向け |
|
調整機能 エルゴノミクス | 高さ調整:- 前後チルト:+20° ~ -5° 左右スイベル:- ピボット:90° |
VRR機能 | AMD FreeSync Premium※G-SYNC互換も対応 |
参考価格 ※2023/5時点 | |
Amazon 天猫(タオバオ) 京東(jd.com) |
KTC M27T20S | |
---|---|
画面サイズ | 27インチ |
解像度 | 2560 x 1440 |
パネル | Q-dot VA (HVA) |
コントラスト比 | 4000 : 1 |
リフレッシュレート | 144 HzHDMI 2.0 : ~144 Hz / DP 1.4 : ~144 Hz |
応答速度 | 1 ms (MPRT) 3 ms (G2G) |
光沢 | ノングレア |
VESAマウント | 100 x 100 mm |
エルゴノミクス |
|
主な機能 |
|
同期技術 | AMD FreeSync Premium※G-SYNC互換も対応 |
スピーカー | ありイヤホン(3.5 mm)端子あり |
主な付属品 |
|
寸法 | 617.8 x 531.5 x 185 mm |
重量 | 4.4 kg(パネルのみ) 6.9 kg(スタンド含む) |
保証 | 3年 |
(本体:1899人民元 + 送料:330人民元)
中国の通販Taobao(タオバオ)にて2023年4月に購入しました。本体価格と日本への送料をあわせて、当時のレートで約4.3~4.4万円です。
2023年8月現在、タオバオで入手不可に。京東(jd.com)のKTC公式ストアから2199人民元(約4.4~4.5万円)で購入できます。
KTC M27T20Sの画質をレビュー
KTC M27T20Sの液晶パネルは「量子ドットVAパネル(HVA)」を搭載。実測で3000近いコントラスト比と、量子ドットによる広色域化で分かりやすく高画質に見えます。
sRGB色域を無視しているため、かなり色鮮やかに見えますが、エンタメ用途なら問題ないでしょう。
(sRGB:ΔE = 2.7 / 色温度:6508K / 輝度:350 cd/m²)
Nano IPSをやや上回る広い色域と、一般的なIPSパネルの約3倍近い圧倒的なコントラスト比の組み合わせで、ゲームからアニメや映画までほとんどのコンテンツを美しく表示できます。
初期設定は色温度が寒色に偏っています。
- モード:ユーザー設定
- 明るさ:79
- 色温度:赤49 / 緑44 / 青42
以上の設定でちょうどいい色温度に調整して、さらに3D LUTプロファイルを適用して色温度を6500K前後に修正します。
展開して出てきた中身(.cubeファイル)を「DWM LUT GUI(→ 配布ページ)」に入れて有効化すると、色温度が一直線に補正されます。
- 初期の色温度:8900K(激しく寒色)
- 修正後:6508K(ちょうどいい)
※パネルの個体差により、↑上記の設定が正しく機能するかどうか正確性を保証できません。あくまでも参考程度に。
モニター測定機材による評価
モニターの色を測定できる専用の機材「X-rite i1 Pro2(分光測色計)」を使って、「KTC M27T20S」の画質をチェックします。
初期設定は量子ドットらしく非常に色鮮やかな影響で、sRGBプロファイルに対する精度は低いです。
色域が広い量子ドットの液晶パネルによくある現象ですが、KTC M27T20Sで重視されるHDRゲーミングやHDRコンテンツの視聴において気にする必要はありません。
ただ、先に説明したとおり色温度が寒色に大きく偏っています。青と緑を抑えて6500K前後に調整するとちょうど良いです。
sRGBプロファイルに合わせたい場合は、モニターの設定から「sRGBモード」を使うと改善されます。ガンマがほぼ2.2、ΔE < 2.0でおおむね規格通りです。
量子ドットを使った液晶パネルでは、表示できる色が広いパネルは色が外側にズレてしまい、結果的にsRGBの色精度が下がります。
sRGBの色精度が高い ≠ 主観的に見た高画質です。
黒色が締まりやすいVAパネルの性質により、ネイティブコントラスト比は3000:1前後です。
画面の明るさ ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
100%時で436.5 cd/m²でかなり明るいです。0%時だと46.6 cd/m²まで画面を暗くできます。
目にやさしいらしい120 cd/m²前後は設定値18%くらいでざっくりと一致します。
色域カバー率 | ||
---|---|---|
規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 100% | 99.9% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 93.2% | 96.8% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 98.6% | 98.3% |
Rec.20204K HDR向けの色域 | 77.4% | 80.0% |
量子ドットなので表示できる色の広さ(色域カバー率)が非常に広大です。
もっとも一般的な規格「sRGB」で100%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」を96.8%カバーします。
印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は98.6%です。
4K HDRコンテンツで重要な「Rec.2020」規格は約80%をカバーしており、Nano IPSや一般的なOLEDパネルを上回ります。
それほど期待していなかった色ムラの程度も意外と優秀です。35(7×5)パッチの平均値は約3.9%で、平均的なIPSパネルより抑えられています。
LEDバックライトを使っている都合上、IPSパネルと同じくパネルの四隅に近いほど明るさが沈み込む「グロー」現象は見られますが、実際のゲームプレイやコンテンツでほとんど気にならないです。
VAパネルは視野角が狭いです。少し角度が変わっただけで色褪せて見えてしまいます(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
フリッカーフリーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
製品ページでフリッカーフリーをアピールしていますが、明るさ0~100%すべてで約40000 Hz(40 kHz)のPWMフリッカーが検出されます。
DC調光ではなく、PWM調光を使っているのが原因です。ごく一部の敏感な人間にとってフリッカーが問題になるのは1000 Hz未満からで、たいていの人は300 Hz前後から問題になるリスクがあるとされています。
しかし、現在流通しているOLEDパネルを使ったスマートフォンで60~240 Hz程度のフリッカーが出ているにもかかわらず、さほど問題になっていない状況を見るに・・・。
フリッカーはほとんど認識されていないと言って差し支えないでしょう。KTC M27T20Sで検出された約40000 Hzのフリッカーも「実質フリッカーフリー」です。
ここは液晶パネルオタク向けの解説です。ほとんどの人は興味がないので、読み飛ばしてください。
マクロレンズでパネルの表面を拡大した写真です。
一般的なVAパネルで広く見られる「ストライプRGB配列」を確認できます。スペクトラム分析を見ると、赤・緑・青それぞれの光がキレイに立ち上がる「量子ドット」特有のパターンが見られます。
シンプルなストライプRGB配列なので文字の見やすさ(ドット感)も良好です。
KTC M27T20Sのゲーム性能をレビュー
↑こちらの記事で紹介している方法で、KTC M27T20Sの「応答速度」を測定します。
120 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
120 Hz時(120 HzはPS5で重要)の応答速度です。30パターン測定で、平均3.99ミリ秒でした。
VAパネルの割にかなり速い部類に入ります。「にじみ」や「逆残像」などエラーは見立たず、平均エラー率も1%程度にとどまります。
144 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
144 Hz時の応答速度は平均3.34ミリ秒でした。120 Hz時からさらに高速化しますが、平均エラー率が約7%に上昇します。
幸い、一部のパターンだけでエラーが出ているため、実際にゲームをしていて気になるほどの「にじみ」「逆残像」はまったく見られないです。
他のゲーミングモニターと比較します。
KTC M27T20SはVAパネルとして非常に速いです。平均3ミリ秒の前半だと、Nano IPSやIGZO IPSに匹敵する応答速度です。
「入力遅延(Input Lag)」は、映像ソースやマウス・キーボードからの入力信号を、ゲーミングモニターが実際に認識するまでにかかる時間です。
一般人は気にする必要はありません。競技性が重視される格ゲーやFPSゲームをガチでプレイする、競技ゲーマーが気にするべき指標です。
「Raspberry Pi 4」を使ったカスタム入力遅延テスターで入力遅延を測定した結果、60 Hz時で3.9ミリ秒でした。120 Hz時で2.6ミリ秒です。
他のゲーミングモニターと比較します。ほとんどのゲーミングモニターは16ミリ秒を下回ります。入力遅延3.9ミリ秒は、まったく問題ありません。
KTC M27T20Sの機能性をレビュー
エルゴノミクスは前後チルトとピボットに対応しますが、高さ調整ができずピボットをしようとするとデスクに接触して90°まで回転できません。
モニターをいったん横に倒してから回転する手間が面倒くさいです。
VESAマウント ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
別売りモニターアームを取り付けるのに便利なVESAマウントは「100 x 100 mm」に対応します。パネル本体の重量は約4.4 kgで普通のモニターアームで持ち上げられます。
Amazonベーシック(エルゴトロンOEM)のモニターアームに付属する4本のネジを使って、干渉なく取り付けられます。
モニター本体の右側裏面にある「5方向ボタン」でOSD画面をコントロールできます。ASUSやBenQと同じく、左に倒すと「戻る・キャンセル」、右に倒すと「進む・決定」ができる直感的な設計です。
レスポンスはやや悪いものの、スムーズに操作しやすいOSDです。中国向け製品ながら日本語UIも対応します。
- スタンダード(初期設定)
- Movie
- Photo
- RTS
- FPS1
- FPS2
- sRGB
KTC M27T20Sは全7種のプロファイルに切り替え可能です。設定ごとに色温度やコントラスト感が変わります。
sRGBモード以外は色温度がやや寒色に偏り気味でそのままでは使いづらいです。
- モード:ユーザー設定
- 明るさ:79
- 色温度:赤49 / 緑44 / 青42
ユーザー設定モードで、明るさと色温度を調整して使うと個人的に好みな色合いでした。色温度もほぼ6500K前後に一致します。
残像軽減モード「MPRT」 ※クリックすると画像拡大 |
---|
KTC M27T20Sはしれっと残像を軽減するゲーミング機能「MPRT」に対応しています。
KTCの「MPRT」を有効化すると、フレーム切替時に真っ暗なフレームを1枚挟む「黒挿入」が行われ、結果的にホールドボケ現象が軽減されて残像感が減ったように見える仕組みです。
144 Hz時で約5.64ミリ秒(約81.3%)が黒フレームです。BenQのDyAc+や、ASUSのELMB Syncに匹敵する黒挿入時間で効き目は抜群。
価格から考えられない充実のインターフェイスを備えます。映像出力が全4ポート、内1つがUSB Type-Cで最大15 Wの給電に対応します。
HDMI 2.0、Display Port 1.4、USB Type-Cどのポートを使ってもWQHDで最大144 Hzまで対応です。Display Port経由でAdaptive Sync(G-SYNC互換モード)も使用可能です。
PS5の対応状況 ※クリックすると画像拡大 | ||
---|---|---|
設定 | 60 Hz | 120 Hz |
フルHD1920 x 1080 | 対応PS5 VRR:- | 対応PS5 VRR:- |
WQHD2560 x 1440 | 対応PS5 VRR:- | 対応PS5 VRR:- |
4K3840 x 2160 | 対応PS5 VRR:- | –PS5 VRR:- |
HDMI 2.0でPS5につなぐと、フルHDからWQHDまで最大120 Hzで使えます。4K解像度で表示する機能も対応します。
HDMI 2.1以上が必要な「PS5 VRR」は当然ながら非対応です。
VRR機能(可変リフレッシュレート) ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
ゲーム側のフレームレートと、モニター側のリフレッシュレートを揃えてティアリング現象を防ぐ「VRR」機能は、定番のAdaptive SyncやG-SYNC互換モードに対応します。
OSD設定からAdaptive Syncを有効化して、Display Portで接続するとG-SYNC互換モードを有効化できます。動作範囲は48~144 Hzです。
対応リフレッシュレート ※クリックすると画像拡大 |
---|
|
KTC M27T20Sが対応しているリフレッシュレートは以上のとおりです。
最大144 Hzまで、Display Port 1.4だと100 Hzを選べます。
KTC M27T20SのHDR性能をレビュー
KTC M27T20SのHDR性能をテストします。Youtubeで公開されている「Morocco 8K HDR」と、「天気の子(4K Ultra BD盤)」を再生します。
圧倒的な明るさとほどほどに締まった黒色の両立が素晴らしいです。
ただし、全体的に色温度が寒色にズレています。鮮やかさも過度に強調されて表示されており、HDR規格※に対する精度はまったくキャリブレーションされていないようです。
※ちもろぐの場合、ガンマカーブ「SMPTE ST 2084(PQ方式)」かつ色域「Rec.2020」をHDR規格の基準として扱います。基準が変動するHLG方式やDolby Visionは考慮しません。
ローカル調光 ※クリックすると画像拡大 | |
---|---|
コントラスト感 | ゾーン分割数 |
|
コントラスト比を大幅に向上させて、Display HDR 1000認証に合格しやすくする「FALD(フルアレイローカル調光)」は576ゾーンの分割数です。
OLED TV用のデモ映像など、意図的に黒色が多いコンテンツであれば、実測で9000~10000:1程度のコントラスト比を記録します。
OLEDモニターと並べて見ると「ハロー」現象はやや目立つものの、真正面から見る分にはそれほど気にならないですし、明るいシーンの多いHDRコンテンツではまったく目立たなくなります。
MLA OLEDパネルの「27GR95QE-B」と、同じシーンを比較した写真です(※肉眼で見たときと似た印象になるようにカメラの露出を調整しています)。
明るさはM27T20Sの圧勝です。黒色の深さや、HDR規格に対する色精度は27GR95QE-Bの方が上手です。
1152ゾーン分割のFALDを搭載する「INNOCN 27M2V」と同じシーンで比較写真を作ってみました。カメラの設定は肉眼で見たときに近いように露出を調整しています。
暗い部分や明るい部分の階調表現でKTC M27T20Sに軍配が上がり、OLED TV用のデモ映像によるコントラスト感もVAパネルであるM27T20Sがやはり有利です。
ネイティブコントラスト比が高いほど、同じコントラスト効果を得るのに必要なゾーン数を少なく抑えられるため、HDRをエンタメとして楽しむ分にはMini LEDとVAパネルの相性が良いと思います。
プロのクリエイターが必要とするリファレンス用途だとIPSパネルの方が良いらしいですが、筆者はHDRリファレンスモニター(BVM-HX310など)を持っていないのでノーコメントで。
モニター測定機材でHDR性能を評価
モニターの色や明るさを測定できる機材を使って、「KTC M27T20S」がきちんとDisplay HDR 1000認証に合格できているかどうかテストします。
VESA Display HDR HDR性能のテスト結果 | ||
---|---|---|
比較 | テスト対象 KTC M27T20S | VESA Display HDR 1000 |
画面の明るさ |
|
|
黒色輝度 |
|
|
コントラスト比 |
|
|
色域 |
|
|
色深度 |
|
|
ローカル調光 |
|
|
Display HDR 1000認証で求められるすべての基準に合格できる性能です。1000 cd/m²近い全白持続輝度は驚異的です。
HDRモードで画面全体に白色を表示したときの明るさを、他のモニターと比較したグラフです。
KTC M27T20Sは、過去レビューしてきたHDRゲーミングモニターでぶっちぎりのトップです。
HDR輝度の変化を比較したグラフです。
なぜか面積50%時のみ800 cd/m²まで下がりますが、50%以外の面積なら1000 cd/m²以上の輝度を維持します。ピークハイライト(面積10%未満)も過去最高の数値です。
HDR時のコントラスト比(理論値)は約804000:1で、実質的にOLEDパネルと同等です。
HDRコントラスト比i1 Pro 2で測定した結果 | |
---|---|
全画面 | 804345 : 1 |
10%枠 | 9018 : 1 |
3×3分割 | 9013 : 1 |
5×5分割 | 4249 : 1 |
7×7分割 | 3002 : 1 |
ただし、576ゾーンのローカル調光によるもので条件次第でコントラスト比が変動します。
ワーストケースで576ゾーンすべてのMini LEDが点灯するため、VAパネル本来のネイティブコントラスト比まで下がります。
HDR規格どおりの明るさを表示できるかチェックする「PQ EOTF」グラフです。暗い部分が明るく見える白浮きに加え、高輝度では実際よりもかなり明るく表示されてしまいます。
HDR規格の色域(Rec.2020)に対する色精度はダメです。最大ΔE = 18.6、平均ΔE = 11.3でまったく色が合っていません。
色温度も完全にズレています。6500K(D65)が基準値で、KTC M27T20Sはグレースケールによって9000~7000Kまで常に寒色よりです。
PQ EOTFグラフをほぼ規格通りに校正できました。
Rec.2020に対する色精度は最大ΔE = 8.4、平均ΔE = 3.5に修正でき、色温度も平均値でほぼ6500K前後に一致します。
青すぎる色温度がニュートラルに見え、過度に強調された彩度も落ち着きを取り戻します。
上記のリンクから、筆者が作成した3D LUT(.cube)ファイルをダウンロードできます。「DWM LUT」で3D LUTをHDRモードに適用してください。
i1 Pro 2を使ってMatrix補正を施したi1 Display Pro Plusを用いて、約3600パッチのプロファイルをベースに3D LUTを生成、Davinci Resolveでさらに補正をかける1D LUTマージを追加で3回も加えて校正用の3D LUTの完成です。
HDRモード時の消費電力電力ロガーコンセントで測定 | |
---|---|
白枠面積 | 消費電力 |
1 % | 22 W |
2.5 % | 29 W |
5 % | 34 W |
10 % | 41 W |
25 % | 53 W |
50 % | 54 W |
75 % | 98 W |
100 % | 94 W |
全白フラッシュ (※持続時間は2~3秒) | 117 W |
電源コンセント経由でHDRモード時の消費電力を測定しました。遮光性の高いVAパネルゆえに、消費電力が全体的に高いです。
KTC M27T20Sの開封と組み立て
ゲーミング感ある遊び心が見られる独特のパッケージデザインで到着。
分厚い梱包材でぎっしり、安心できる梱包状態です。
付属品 |
---|
|
普通の付属品です。映像出力用のDisplay PortケーブルとHDMIケーブルが付属します。ACアダプタは最大168 W(24 V x 7 A)まで給電できます。
個人輸入なのでPSE取得がありません。自己責任で使うか、PSEを取得した別のACアダプタを使います。
最近のゲーミングモニターらしい、ツールレスフリーの組み立て工程です。付属品のプラスドライバーで固定ネジを回せます。
まとめ:ハードは優秀ですがファームウェアが微妙
「KTC M27T20S」の微妙なとこ
- 日本国内で入手できない
- パネルの均一性は普通
- 内蔵スピーカーなし
- 初期設定の色温度がズレてる
(かんたんに修正できます) - 最低限のエルゴノミクス機能
- ローカル調光の応答がやや遅い
- HDR規格とのズレが大きい
(一般人に3D LUT校正は困難です)
「KTC M27T20S」の良いところ
- 27インチでWQHD(ちょうどいい)
- 最大144 Hzに対応
- PS5で120 Hzに対応
- VAパネルとしては応答速度が速い
- 量子ドットで色が広い(DCI P3で96%)
- コントラスト比が高い
- とても明るいHDRを表示可能
- Mini LED(576ゾーン)搭載
- 充実のゲーマー向け機能
- sRGBモードが正確(ΔE < 2.0)
- 入力遅延が非常に少ない
- USB 3.0ハブ機能
- USB Type-C(最大15 W)
- 価格が安い(2199人民元)
- コストパフォーマンスが良い
- メーカー3年保証
(個人輸入だとおそらく無効)
「KTC M27T20S」は、(日本国内で買えない入手性の悪さに目を瞑れば)コスパの良いHDR 1000ゲーミングモニターです。
しかし、肝心のHDR 1000に問題があります。出荷時に最低限のキャリブレーションが施されておらず、明るさの精度と色域の精度どちらも大きく規格からズレており、主観的に見ても色がオカシイです。
キャリブレーターを使って校正は可能ですが、HDRモニターを校正するのに必要な機材だけで約30万円近くもかかってしまうため、一般人がマトモな校正をするのは不可能でしょう。
ピーク輝度1400 cd/m²超え(全白で1000 cd/m²近い)、VAパネルでネイティブコントラスト比も優秀、応答速度が平均3ミリ秒台とVAパネルでトップクラス。
などなど、ハードウェア面の性能は価格に対して非常に優秀なのに、HDR時に色がまったく合っていないファームウェアで残念な評価に。
フルアレイローカル調光の応答性もやや遅いため、ゲームや映像以外の使い方(オフィスワークなど)ではMini LEDが役に立たないです(※これは他のMini LEDモニターと同じ傾向)。
以上「KTC M27T20Sをレビュー:VAパネルで激安な中華HDR 1000ゲーミングモニターを検証」でした。
KTC M27T20Sの代替案(他の選択肢)
最大の代替案はやはりIODATAの「EX-LDQ271JAB」です。
色があざやかな「量子ドットIPSパネル」とコントラスト比が高まるMini LED(576ゾーン分割)バックライトを搭載します。
M27T20Sと同じくDisplay HDR 1000認証も取っており、トップクラスの明るさを放ちます。そのうえ価格は5万円台で、ポイント還元が大きいセール時に4万円台から買えます。
Mini LED搭載のWQHDゲーミングモニターで最高のコスパです。国内メーカーによる3年保証も大きなメリット。
WQHDでおすすめなゲーミングモニター
最新のおすすめWQHDゲーミングモニター解説は↑こちらのガイドを参考に。
WQHDでおすすめなゲーミングPC【解説】
予算に余裕があれば「RTX 4070 Ti SUPER」を搭載したゲーミングPCがおすすめです。
予算20万円前後なら「RTX 4070 SUPER」が無難です。
ゲームのグラフィック設定を妥協するつもりで、予算をもっと絞るなら「RTX 4060 Ti」がコスパ良し。
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
高性能なパネルを使っていれば良いモニターって訳では無いのか…
モニター選びって難しいな
かなり期待していた製品だったのでレビューが出て嬉しいです。
hdrでも色精度が悪いのが最大のデメリットみたいですが、sdr環境下ならかなり優秀な映像美を楽しめるのでしょうか?
色域は広いみたいですが、量子ドットvaは高級ipsに太刀打ちできるのでしょうか?
ファームウェアの重要性って普段はほとんど意識しないから、ある意味勉強になるモニターだな
DellがHDRモード時の色度マッピングがめっちゃくちゃで修正ファームで対応した事例があるのでそれに期待したい
このモニター、レビューにもあるようにローカル調光の応答がかなり気になるレベルで遅いです。静止画なら良いですが、正直映像やゲームだと切った方がましだと感じました。
また、
・ローカル調光をAutoに設定してもHDRのONOFF切り替え時にローカル調光のみ残ることがある
・HDR切り替え時に60FPSになることがある
など、製品としてストレスを感じる場面がいくつかありました。
コスパは異次元ですが、それはあくまでHDR1000込みのコスパです。通常の用途でも利用することを考えている人には、そもそもローカル調光付きのHDRモニターの持つHDRオンオフの切り替えの面倒さも覚えておいて欲しいです。(ローカル調光ONでwebブラウジングすると痣みたいな模様が浮き出ます。)HDRさえ要らなければよいモニターは沢山あります。
あとACアダプタにつなげるコンセントは中国仕様のものが付属するので、自分でそろえる必要があることと、モニターがこの夏超えられないくらい爆熱であることも記載しておきます!
高いモニターはファームウェアの開発費とか掛ってるんですかね、パネル自体は大分下がってきてるようですし大手に期待です。
引っ越す時にモニター処分したから新居用にKPGM270を考えてたけど、これを個人輸入してみようかな、と思う様になりました。
でもたぶん、他の機種にも目移りして、ずっと決められない気がする。
IPS並みの発色を確保できるなら黒の表現が有利なVAパネルはやっぱりHDRと相性がいいんですね、何で今までこういう製品出なかったんだろうか。
VAパネルは近年になって進化した出来の良いものがでてきてはいるのですが、その進化型VAパネルは寧ろIPSパネルより高価なためか一部の高級湾曲タイプにしか使われなかったので時間の問題でしょう。
発色もIPSより特に四方の発色は上回るほど綺麗で細かく階調もしっかりしているので、TVではもうハイエンドでIPSからVAに変わっている流れ。
多分IPS並の発色を確保したVAが難しいって事だと思うんですけど(凡推理)
SDR静止画用としてならかなり良さそうですが・・・
評価A+グループではなくAに留まったことから、HDRがダメダメなせいかローカル調光そのものの欠点をフォローできるほどの良い製品ではなさそうなのが伺えますね。