第13世代Raptor Lake最上位モデル「Core i9 13900K」を入手しました。過去最大規模のコア(24コア32スレッド)を搭載した最強のCore i9です。
同じ価格帯のライバルCPU「Ryzen 9 7950X」を相手にどこまで戦えるのか、実際にベンチマークで確認します。
(公開:2022/11/4 | 更新:2022/11/4)
今回のレビューで使用する「Core i9 13900K」をインテルから提供いただきました。なお、レビュー内容に関して、提供元からベンチマークの指定や使用機材の要望(例:DDR5-6000メモリの強要等)は一切ありませんでした。従来どおりIntel Z690 + DDR4プラットフォームにてテストを行います。
Core i9 13900Kの仕様とスペック
CPU | Core i9 13900K | Core i9 12900K | Ryzen 9 7950X |
---|---|---|---|
ロゴ | ![]() | ![]() | ![]() |
世代 | 13th Raptor Lake S | 12th Alder Lake S | 5th Zen 4 |
プロセス | 10 nm (Intel 7) | 10 nm (Intel 7) | 5 nm (TSMC N5) |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング |
ソケット | LGA 1700 | LGA 1700 | Socket AM5 |
チップセット | Intel 600 / 700 | Intel 600 / 700 | AMD 600 |
コア数 | 24 | 16 | 16 |
スレッド数 | 32 | 24 | 32 |
ベースクロック | 3.00 GHz | 3.20 GHz | 4.50 GHz |
ブーストクロック | 5.80 GHz | 5.20 GHz | 5.70 GHz |
内蔵GPU | UHD 770 | UHD 770 | Radeon Graphics(2CU) |
GPUクロック | 300 ~ 1650 MHz | 300 ~ 1550 MHz | 2200 MHz |
TDP | 125 W | 125 W | 170 W |
MSRP | $ 599 | $ 599 | $ 699 |
参考価格 | 105680 円 | 79980 円 | 117800 円 |
CPU | Core i9 13900K | Core i9 12900K | Ryzen 9 7950X |
---|---|---|---|
世代 | 13th Raptor Lake S | 12th Alder Lake S | 5th Zen 4 |
プロセス | 10 nm | 10 nm | 5 nm |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く | ソルダリング |
ソケット | LGA 1700 | LGA 1700 | Socket AM5 |
チップセット | Intel 600 / 700 | Intel 600 / 700 | AMD 600 |
コア数 | 24 | 16 | 16 |
スレッド数 | 32 | 24 | 32 |
ベースクロック | 3.00 GHz | 3.20 GHz | 4.50 GHz |
ブーストクロック | 5.80 GHz | 5.20 GHz | 5.70 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 可能 |
L1 Cache | 2176 KB | 1408 KB | 1024 KB |
L2 Cache | 32 MB | 14 MB | 16 MB |
L3 Cache | 36 MB | 30 MB | 64 MB |
対応メモリ | DDR5-5600 DDR4-3200 | DDR5-4800 DDR4-3200 | DDR5-5200 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | 不可 | 不可 | U-DIMMのみ |
PCIeレーン | Gen5 + Gen4 | Gen5 + Gen4 | Gen5 |
16 + 4 | 16 + 4 | 24 | |
レーン構成 | 1×16 + 4 | 1×16 + 4 | 1×16 + 1×4 + 1×4 |
2×8 + 4 | 2×8 + 4 | 2×8 + 1×4 + 1×4 | |
– | – | 1×8 + 2×4 + 1×4 | |
内蔵GPU | UHD 770 | UHD 770 | Radeon Graphics(2CU) |
GPUクロック | 300 ~ 1650 MHz | 300 ~ 1550 MHz | 2200 MHz |
TDP | 125 W | 125 W | 170 W |
MSRP | $ 599 | $ 599 | $ 699 |
参考価格 | 105680 円 | 79980 円 | 117800 円 |
従来世代からチップ面積を257 mm²へ大きくして、16コア24スレッドを24コア32スレッドへ規模を拡大化した過去最強スペックのCPUが「Core i9 13900K」です。
理想的な条件が揃ったときの最大ブーストクロック(Thermal Velocity Boost Frequency)はなんと5.8 GHz・・・。
圧倒的なシングルスレッド性能で体感性能とゲーミング性能を強化しつつ、8個増えて合計32スレッドになったマルチコアでRyzen 9 7950Xに対峙できるほどのマルチスレッド性能も両立します。
なお、従来世代と同じ製造プロセスを使っているため、ブーストクロックの大幅な上昇と8コア増えた分だけ消費電力も跳ね上がっています。最大TDPは241 Wから253 Wへ微増ですが、マザーボード側の初期設定は「実質無制限」の場合が多いです。
前世代をほぼ流用した「Raptor Lake」設計
Core i9 13900Kで採用されているRaptor Lake設計は、基本的には前世代のAlder Lakeから大部分を流用した設計です。
ライバルのZen 4世代のように、フロントエンドの調整や改良、分岐予測精度を高めるためのOpキャッシュ増量など。IPC(= クロックあたりの処理性能)を向上させる設計変更が行われていません。
世代更新で期待されるIPC改善なしに、インテルはRaptor Lake世代においてシングルスレッド性能で15%、マルチスレッド性能で約40%の性能アップを強くアピールしています。
IPC改善を伴わない設計でどうやって大幅な性能アップを実現したのか。以下に挙げるインテルらしい「ゴリ押し」設計が主です。
- ブーストクロックの改善(= 消費電力の増加)
- L2キャッシュの増量(1.25 MB → 2.0 MB)
- リングバスの動作クロックを改善
- 効率コア(Eコア)の増量(面積+17.3 mm²)
- 対応メモリクロックの向上(DDR5-5600)
- ダイ面積は215 mm²から257 mm²に巨大化
IPCを改善せずに性能アップを狙うなら、まずはブーストクロックの底上げです。クロック周波数が上がればシングルスレッドとマルチスレッドどちらも改善できます。
ゲーミング性能対策として、PコアのL2キャッシュを1.25 MB → 2.0 MBへ増量(i9 13900Kの場合、L2キャッシュは合計16 MB)し、実効性能に影響があるリングバスの動作クロック(キャッシュレシオ)も向上させています。
![i9 13900Kのキャッシュレシオ](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/i9-13900k-cache.jpg)
リングバスの動作クロックは「血の巡り」に近い概念です。同じクロック周波数でも、リングバスのクロックが遅すぎると効率よく性能を出せなかったりゲーミング性能に悪影響です。
Core i9 13900Kの場合、Core i9 12900Kと比較して高負荷時のキャッシュレシオが3.6 GHzから4.5 GHz(+910 MHz)に改善されています。
![i9 13900Kのブーストクロック](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/i9-13900k-bc.jpg)
高クロック耐性も大幅に改善されています。CPUに100%の負荷がかかったときのブーストクロックはCore i9 13900Kが平均5.2 GHzで、Core i9 12900Kは平均4.9 GHz前後です。
![i9 13900Kのコア電圧(Vcore)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/i9-13900k-vc.jpg)
次に高クロック時のCPUコア電圧(Vcore)を見ると、Core i9 13900Kが平均1.280 Vで、Core i9 12900Kは平均1.269 Vもの電圧が入力されています。
わずか0.010 Vの違いですが、Core i9 13900Kが1.28 Vで5.2 GHz前後を維持できるのに対して、Core i9 12900Kは1.27 V使って4.9 GHz前後しか出せていません。
ほぼ同じVcore(CPUコア電圧)で出せるクロックが300 MHzも伸びています。厳選された個体であるCore i9 12900KSでは、1.297 Vで5.1 GHz前後ですから、Core i9 13900Kは既にi9 12900KS以上の電気的特性を実現しています。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/10/raptor-lake-die.jpg)
しかし、ブーストクロックとキャッシュレシオの改善だけでは、ライバルのZen 4世代に対してベンチマークで見劣りする可能性が高いです。
インテルは今回の戦いを制するべく、マルチスレッド性能を効率よく稼げる「Eコア」を8コア増設。ダイ面積にして約17.3 mm²を追加で費やして、8つのEコアと8 MBのL3キャッシュを増築します。
CPU | Core i9 13900K | Core i9 12900K | Ryzen 9 7950X |
---|---|---|---|
対応メモリ | DDR5-5600 DDR4-3200 | DDR5-4800 DDR4-3200 | DDR5-5200 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | 不可 | 不可 | U-DIMMのみ |
対応メモリはDDR5-4800からDDR5-5600に伸びており、より高クロックなDDR5メモリを利用しやすい環境です。
以上のさまざまな改善により、Raptor Lakeのダイ面積は215 mm²から257 mm²に巨大化。Eコアの増量に17.3 mm²(+8コア)、残りの24.7 mm²はおそらくL2キャッシュの増量に費やされています。
Raptor Lakeでは、引き続き従来世代と同じく「Intel 7(Intel 10 nm ESF)」プロセスが使われているため、トランジスタ密度の向上は見込まれません。よって設計規模の肥大化はダイレクトに面積増加に直結します。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
Core i9 13900KのCPU性能:ありったけの電力で7950Xを制する・・・?
テスト環境
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/i9-13900k-test.jpg)
テスト環境 「ちもろぐ専用ベンチ機(2022)」 | ||
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スペック | Raptor Lake / Alder Lake | Zen 4 |
CPU | Core i9 13900K | Ryzen 9 7950X |
冷却 | NZXT Kraken X63 280 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS TUF GAMING Z690-PLUS WIFI D4 | ASUS TUF GAMINGX670E-PLUS |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用モデル「Elite Plus UD-D4 3200」 | DDR5-4800 16GB x2使用モデル「CT2K16G48C40U5」 |
グラボ | RTX 3080 10GB使用モデル「MSI VENTUS 3X OC」 | |
SSD | NVMe 1TB使用モデル「Samsung 970 EVO Plus」 | |
電源ユニットシステム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニットCPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 11 Pro(Build 22000) | |
ドライバ | NVIDIA 517.48 DCH |
今回のCore i9 13900Kにて使用した各バージョンは以下の通り。
- Management Engine Interface:2229.3.2.0
- Intel ME Firmware Version:16.1.25.1885
- BIOS:2103(2022/10/19)
これらのアップデートで、Raptor Lake世代の性能をZ690マザーボードでも問題なく引き出せるように。Intel 600シリーズのマザーボードでRaptor Lakeを使う方は、なるべくUEFIとIntel MEのバージョンを最新版にしたほうが良いかもしれません。
従来どおり、Intel Z690マザーボードとDDR4-3200(ネイティブメモリ)を使って、Core i9 13900Kの性能をベンチマークします。
![DDR4-3200(JEDEC ネイティブメモリ)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/10/jedec-ram-ddr4-3200.jpg)
圧倒的な信頼性を持つ「ネイティブメモリ」を使用
第13世代Raptor LakeもZen 4と同じくDDR5メモリに対応しています。しかし、DDR5メモリと対応マザーボードは比較的に価格が高いです。
Raptor Lakeでは、従来のIntel 600マザーボードとDDR4メモリも利用でき、導入コストをZen 4より抑えられるメリットが強いです。
よって最新のIntel Z790とDDR5メモリを使ってしまうとRaptor Lakeの良さを1つ潰すことになり、面白みに欠けます。Core i9 13900K(DDR4-3200)が、Zen 4(DDR5-4800)にどこまで対抗できるか見ものです。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/10/asus-x670e-tuf.jpg)
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
レンダリング性能
CPUの性能をはかるベンチマークとして、「CPUレンダリング」は定番の方法です。ちもろぐでは、下記3つのソフトを用いてCPUレンダリング性能をテストします。
- Cinebench R15
- Cinebench R23
- Blender 3.3.0
日本国内だけでなく、国際的にも定番のベンチマークソフトです。なお、CPUレンダリングで調べた性能はあくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。
Core i9 13900Kのマルチスレッド性能は驚愕の40000点オーバー。従来の12900Kから約46%も伸びて、ライバルのRyzen 9 7950Xを超えるスコアに。
体感性能に影響が大きいシングルスレッド性能は約2260点で、i9 12900Kから約15%伸びています。最大5.8 GHzに伸びたブーストクロックがそのままベンチ結果に反映されています。
Ryzen 9 7950Xすら超えて、過去最高のシングルスレッド性能です。
Blender Benchmarkのレンダリングスコアもほぼ同じ傾向です。従来比で約47%の性能アップを果たし、Ryzen 9 7950Xとほぼ同等のレンダリング性能を示します。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
動画エンコード
CPUレンダリングと並んで、動画エンコードはCPUの性能を調べる定番の方法です。
- Handbrake
- Aviutl(rigaya氏の拡張プラグインを使用)
ちもろぐでは、フリー動画エンコードソフト「Handbrake」と、日本国内で人気の動画編集ソフト「Aviutl」における動画エンコード速度をテストします。
動画エンコードは興味深い傾向が見られます。解像度が低い480pエンコードでは、x264 / x265どちらもRyzen 9 7950Xとほぼ同じエンコード速度です。
しかし、解像度が大きい1080pエンコードになると性能差が1割近くまで開いています。DDR5メモリの高スループットが1080pエンコードで効いているのが原因です。
Core i9 12900Kとの性能差は約19~26%です。
Aviutlにて、拡張プラグイン「x264guiEx」「x265guiEx」を使って動画エンコードをしました。
処理が軽い「x264」、処理が重い「x265」どちらも前世代から約15~16%の性能アップ。Ryzen 9 7950Xにあと一歩迫る性能です。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
AI(機械学習)
2022年ごろから、AIでデジタルイラストを生成する「Stable Diffusion」をはじめ、AI(機械学習)を応用した技術が一般人の間でも身近な存在になりました。
ちもろぐのCPUベンチマークも流行に習って、機械学習のベンチマークを試験的に取り入れます。
- TensorFlow(実務で人気のフレームワーク)
- PyTorch(学術研究で人気のフレームワーク)
- 4x BSRGAN(機械学習による画像アップスケール)
- Stable Diffusion(機械学習によるイラスト生成)
新しいCPUレビューで試験的に取り入れたベンチマークは以上4つです。
![Core i9 13900Kのベンチマーク比較:4K動画編集(Davinci Resolve)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-benchmark-12.jpg)
AnacondaプロンプトからTensorFlow 2をロードして、単純な手書き文字の自動認識(MNIST)トレーニングを実行します。
すべてのCPUコアが処理に使われる設定ですが、実際の結果はZen 4世代に届きません。マルチスレッド性能よりも、メモリのスループットが重視される傾向が強いです。
![Core i9 13900Kのベンチマーク比較:4K動画編集(Davinci Resolve Fusion)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-benchmark-13.jpg)
AnacondaプロンプトからPyTorchをロードして、PyTorch公式が提供しているベンチマーク用のコード(torch.utils.benchmark as benchmark)を使って処理性能をテストします。
なお、処理時間を伸ばすためにベンチマークコードに含める乱数行列は10000×8192として、テストの実行回数は250回です。処理1回あたりの時間に250回をかけて、合計処理時間を求めます。
TensorFlowと同じく、PyTorchもいまいちコア数とベンチマーク結果がスケーリングしないです。スコアの傾向を見る限り、メモリのスループットが重要です。
![Core i9 13900Kのベンチマーク比較:動画編集(Adobe Premiere Pro)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-benchmark-14.jpg)
次は4x BSRGANを使って、512 x 512サイズ画像の超解像(アップスケーリング)をテストします。アップスケーリング後のサイズは2048 x 2048(※BSRGANは4倍のみ対応)です。
基本的にコアスレッドの増加に比例して処理時間が縮みますが、DDR5メモリの高いスループットも効果があるように見えます。Core i9 13900Kはトップクラスの性能です。
![Core i9 13900Kのベンチマーク比較:4K動画編集(Davinci Resolve Fusion)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-benchmark-15.jpg)
最後のAIベンチマークは「AI絵師」で話題になっているStable Diffusionです。
初期設定の512×512生成だとグラボでしか処理できないですが、4分の1にあたる256×256生成ならCPUで実行できます。結果はおおむねCPUのマルチスレッド性能に比例しており、Core i9 12900Kより10%速いです。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
動画編集
![Davinci Resolve Studio 18(動画編集)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/10/Davinci_Resolve_Studio_18_Launch.jpg)
「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。
ちもろぐでは、Puget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve Studio 18における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。
Davinci Resolve 18 / 4K動画編集 | |||
---|---|---|---|
テスト内容 | Core i9 13900K | Core i9 12900K | Ryzen 9 7950X |
Standard Overall Score | 2127 /1000 | 2007 /1000 | 2127 /1000 |
4K Media Score | 169 | 141 | 157 |
GPU Effects Score | 134 | 134 | 137 |
Fusion Score | 335 | 327 | 344 |
Davinci Resolveベンチマークの結果は2127点。i9 12900Kから約6%もスコアを伸ばし、DDR5メモリを使っているRyzen 9 7950Xと完全に互角のスコアを叩き出しています。
4K Mediaスコアは169点で、i9 12900Kから約1.2倍へ大幅な性能アップ。Ryzen 9 7950Xのスコア(157点)も超えています。現行最高の4K動画編集性能を持つCPUです。
しかもDDR5メモリを使ってさらに高い性能を狙える余地があります。
「Premiere Pro」は言わずもがな、超有名な動画編集ソフトです。Ryzenが登場した頃はマルチコアが効きづらい残念ソフトでしたが、2020年以降よりマルチコアが効きやすく最適化されています。
Core i9 13900KのPremiereスコアは1137点で、i9 12900Kから約12%高いスコアです。プレビュー性能は121.3点を記録し、ライバルのRyzen 9 7950Xと互角の水準に。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。
圧縮スピードは約87230 MIPSと、24コア32スレッドの割に冴えない結果に。一方で、DDR5メモリを使っているRyzen 9 7950Xは約159600 MIPSを叩き出し、DDR4-3200がボトルネックになっているのは明らかです。
解凍は従来比で約53%も高い約218900 MIPSを記録し、Ryzen 9 5950X以上の解凍スピード。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
ブラウザの処理速度
PCMark 10 Professional版の「Microsoft Edgeテスト」と、ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUのブラウザ処理性能をテストします。
![Core i9 13900Kのベンチマーク比較:Microsoft Edge(Chromiumブラウザの処理速度)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-benchmark-22.jpg)
Edgeブラウザ(Chromium)の処理速度は非常に高いシングルスレッド性能が効いて、Core i9 13900Kが最高のスコアです。
![Core i9 13900Kのベンチマーク比較:mozilla kraken(ブラウザの処理速度)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-benchmark-23.jpg)
krakenテストもシングルスレッド性能が反映されやすいです。Core i9 13900Kはわずか362 ミリ秒、Ryzen 9 7950Xよりも速いです。
デスクトップ向けCPUでトップクラスの処理速度です。400 ミリ秒前後の性能は、TSMC 5 nmで製造されているApple M2やApple A16 Bionicよりも高速。
なお、mozilla krakenは1000 ミリ秒が大きな目標のひとつで、ここでテストしたCPUはすべて1000 ミリ秒を下回っています。つまり、どれを選んでも実用上はまったく問題ない性能です。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Adobe Photoshop CC」の処理速度をテストします。Puget Systems社のプリセットを用いて、Photoshopを実際に動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出する仕組みです。
![Core i9 13900Kのベンチマーク比較:Photoshop CCの処理速度](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-benchmark-24.jpg)
Core i9 13900KのPhotoshop総合スコアは「1517点」です。
高解像度な写真素材を多用するベンチマーク内容ゆえに、高帯域幅のDDR5メモリを使っているRyzen 9 7950Xに負けるかなと思いきや、強烈なシングルスレッド性能のおかげで最高のスコアを出せました。
Microsoft Office
パソコンの一般的なワークロードといえば、Microsoftの「Office」ソフトが代表例です。しかし、Microsoft Officeにベンチマークモードはありませんので、ちもろぐでは「PCMark 10 Professional版」を使います。
単なる再現テストではなく、PCMark 10が実際にMicrosoft Office(Word / Excel / PowerPoint)を動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出します。
Core i9 13900Kのオフィス性能はすべての分野(Word / Excel / PowerPoint)で最高のスコアです。
なお、スコア自体はPCMark 10の目安である4500点をはるかに超えており、どのCPUを使ってもOfficeは極めて快適な動作です。
「IPC」でCPUの真の進化をチェック
![IPC(クロックあたりの処理性能)をCinebench R15でテスト](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2020/05/ipc-test-by-cr15-3500mhz.jpg)
最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。
方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz
これでIPCの違いをキレイに抽出できます。グラフを見ての通り、Core i9 13900K(Raptor Lake世代)のIPCはAlder Lakeからまったく変化が見られません。
インテルが言うように、Raptor Lake世代ではブーストクロックの向上とEコアの増量で性能を稼いでいます。設計そのものの改良が少なく、クロックあたりの処理性能を改善できません。
IPCの改善については、Intel 4(7 nm)プロセスで製造される第14世代Meteor Lakeに期待です。
Core i9 13900Kのゲーミング性能
昨今のグラフィックボードの急激な高性能化にともない、CPU側の性能不足がフレームレートを引っ張る「CPUボトルネック」が分かりやすく出やすい環境になっています。
![CPUボトルネック(ゲーミング性能)をテスト](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2020/11/ryzen-7-5800x-gpu-10.jpg)
CPUボトルネックの分かりやすい実例
特にRTX 3080以上のグラフィックボードでは、CPUボトルネックが無視できないほど大きいです。平均100 fps超えのフレームレートでゲームをプレイするなら、8コアかつシングルスレッド性能の高いCPUが重要です。
Core i9 13900Kはゲーム用途に最適な8コア16スレッドを備えており、さらに最大5.8 GHzの非常に高いブーストクロックと900 MHz増えたキャッシュレシオが付いてきます。
ゲーミングCPUとして申し分ない性能に期待できますが、果たして実際は・・・。
新しいCPUレビューでは、「よりCPUボトルネックが出やすい」テスト内容に変更しています。以前のレビューではグラフィックボードに負荷がかかりすぎていて、CPUボトルネックが出づらく比較として意味がうすい状態でした。
- Apex Legends(ベンチマークまとめ)
- フォートナイト(ベンチマークまとめ)
- Overwatch 2
- VALORANT
- サイバーパンク2077(ベンチマークまとめ)
- Forza Horizon 5
- Microsoft Flight Simulator 2021(ベンチマークまとめ)
- ELDEN RING(ベンチマークまとめ)
- 原神(ベンチマークまとめ)
- FF14:暁月のフィナーレ
テストに使用するゲームタイトルは以上10個です。海外のAAA洋ゲーの方がベンチマーク機能は充実していますが、残念ながら日本国内でほとんどプレイされていないゲームが多いです。
筆者は「国内でプレイされているゲームのベンチマーク結果」を見たくて仕方がないため、あえて上記のようなベンチマークに向かないタイトルを多めに入れています。
フルHDゲーミング(10個)のテスト結果
ひとつずつグラフを掲載するとムダに長文になるので、テストした結果を以下のスライドにまとめました。
平均フレームレート最低フレームレート(1%)
最大5.8 GHzの圧倒的なシングルスレッドパワーと、実質8コア16スレッドのおかげでCore i9 13900Kは極めて高いゲーミング性能を示します。
DDR5より遅いDDR4-3200ネイティブメモリを使っていながら、16コア32スレッドのRyzen 9 7950Xや前任者のi9 12900Kを上回るゲーミング性能です。
DDR5メモリが機能しやすいゲームタイトル(エルデンリングや原神など)でもCore i9 13900Kは互角のパフォーマンスを出しており、シンプルに高すぎる動作クロックでハンディキャップを埋めています。
![Core i5 13600Kの平均ゲーミング性能を比較](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-gpu-benchmark-11.jpg)
Core i9 13900Kの平均ゲーミング性能は、1世代前のハイエンドCore i9 12900Kはもちろん、ライバルのRyzen 9 7950Xを抑えてのトップ。Core i7 13700Kとほぼ同等の性能です。
ハイコストなDDR5メモリを使わずに、Zen 4以上のゲーミング性能です。安価なOCメモリ(DDR4-3200 CL16等)なら、性能差はさらに開くでしょう。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
4Kゲーミング(5個)のテスト結果
GPU負荷が大きく、CPUボトルネックが出づらい4Kゲーミング(3840 x 2160)の結果も参考程度に調査しました。
平均フレームレート最低フレームレート(1%)
やはり4Kゲーミングだと、CPUボトルネックはほとんど発生しません。
![Core i7 13700Kの平均4Kゲーミング性能を比較](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-gpu-benchmark-17.jpg)
平均値だとまったく差がつかないです。
4Kゲーミングの場合、CPUボトルネックを気にするよりも、グラフィックボードにお金をかけた方が良い結果を得られるでしょう。
消費電力とCPU温度
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/10/cpu-powert-test.jpg)
ちもろぐのCPUレビューでは、電力ロガー機能が付いた電源ユニットを2台使って、CPU単体の消費電力を実際に測定します。
テスト環境 | ||
---|---|---|
![]() | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
![]() | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
電源ユニットを2台に分けて電力供給を分割しているため、CPUに電力供給している電源ユニットの計測値(+12V Power)を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。
ゲーミング時の消費電力と温度
FF14:暁月のフィナーレ(最高設定)をテスト中に、CPUの消費電力を測定したグラフです。
Core i9 13900Kの消費電力は平均109 W(ピーク156 W)で、i9 12900Kから16 Wも増えています。大幅に上昇したブーストクロックと8コアも増えたEコアが消費電力の増加にダイレクトに効いています。
とはいえ、ライバルのRyzen 9 7950Xも平均107 Wを消費しており、ゲーミング消費電力は意外と大差ない結果です。
ゲーム中のCPU温度は平均55℃(ピーク69℃)です。消費電力が増え、第12世代よりも冷えづらい傾向も加わり、Core i9 12900Kから10℃近くも温度が上がっています。
なお、ライバルのRyzen 9 7950Xはなんと61℃でゲーム中も発熱が大きいです。
100%負荷時の消費電力と温度
CPU使用率が常時100%に達するCinebench R23(ストレステストモード)にて、Core i9 13900Kの消費電力を測定したグラフです。
Core i9 13900Kの消費電力はなんと平均319 W(ピーク388 W)に達します。100℃のサーマルリミットが掛かる以前に絞ると、平均353 Wもの電力を消費しています。
サーマルリミット前で従来比+100 W、サーマルリミット発動後は従来比+50 Wと、どちらにせよCore i9 12900Kから大幅に消費電力が増加します。
CPU | i9 13900K (サーマルリミット前) | i9 13900K (サーマルリミット後) | i9 12900K |
---|---|---|---|
Pコア | 5.35 GHz (+0.45 GHz) | 5.21 GHz (+0.31 GHz) | 4.9 GHz |
Eコア | 4.28 GHz (+0.58 GHz) | 4.13 GHz (+0.43 GHz) | 3.7 GHz |
リングバス | 4.51 GHz (+0.91 GHz) | 4.5 GHz (+0.9 GHz) | 3.6 GHz |
100%負荷時のブーストクロックはこの通り、Pコア / Eコア / リングバスまで、すべての動作クロックが大幅な上昇です。
Alder Lake世代と比較して電気的な特性はかなり改善されているものの、インテルは改善されて増えたマージンをそのまま使ってブーストクロックをさらに伸ばす選択をしたようです。
加えてEコアが8個も増えているため、消費電力の増加に拍車がかかります。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
100%負荷時のCPU温度は平均93℃(ピーク100℃)で、Ryzen 9 7950X並みに熱いです。サーマルリミット前に絞ると平均98℃、サーマルリミット後で平均90℃です。
消費電力の増加がそのままCPU温度の増加に貢献します。しかも、Raptor Lake世代は同じ消費電力でもなぜかAlder Lake世代より冷えづらい傾向が見られ、なおさら温度が高くなりやすいです。
Raptor Lake世代のヒートスプレッダー(IHS)は従来のAlder Lakeと同じく、金メッキIHSを採用しています。従来と比較してIHSが劣化した話も(今のところ)見かけないので、正確な原因は不明です。
同様の傾向がCore i7 13700KやCore i5 13600Kでも確認できていて、同じ消費電力だとRaptor Lakeの方が熱くなりやすいのは確かです。
完全に憶測ですが、ほぼ2倍に増えたL2キャッシュとEコアの増量に伴って増えたL3キャッシュが発熱のしやすさに影響しているかもしれません。L3キャッシュを大増量したRyzen 7 5800X3Dも発熱が増加した例です。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
ワットパフォーマンス
![Core i9 13900Kのワットパフォーマンスを比較](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-temp-power-9.jpg)
消費電力1ワットあたりの性能(ワットパフォーマンス)は126.7 cb/Wです。しかし、この数値はサーマルリミット前後を含めて平均化しているため、若干正確ではありません。
- サーマルリミット前:353 Wで40384 cb(=114.4 cb/W)
- サーマルリミット後:303 Wで38848 cb(=128.0 cb/W)
リミット前の過度なブーストクロックが効いた状態では、前世代のAlder Lakeから約4.9%の改善です。
リミット後の(比較的に)落ち着いた状態だと、前世代から約17.3%もワッパが改善されており、Raptor Lake世代らしいワットパフォーマンスを出せています。
しかし、ライバルのRyzen 9 7950Xは159.8 cb/Wを叩き出し、Core i9 13900Kより約25%も効率的です。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
お手軽な「TDP制限」でワッパの改善を狙う
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/10/i7-13700k-pl-set.jpg)
マザーボードのBIOS画面から、Core i9 13900Kの消費電力に制限をかけてみて、ワットパフォーマンスや温度がどれほど改善されるかを試します。
「Long Duration Package Power Limit」と「Short Duration Package Power Limit」の両方に、同じ数値を入力すると消費電力にリミッターを掛けられます。
たとえば「190」と入力すると、原則としてCPUは190 W以上の電力を消費しない範囲で動作します(※Pコア、Eコア、キャッシュレシオそれぞれのブーストクロックを自動調整)。
ではさっそくTDP制限を施した状態で、Core i9 13900Kの性能がどれくらい変化したかを見てみましょう。
![Core i9 13900Kの電力制限をチェック:Cinebench R23](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-temp-power-10.jpg)
マザーボードによって違いはありますが、ASUS TUF GAMING Z690-PLUS WIFI D4の標準設定だと、Core i9 13900Kの電力設定が実質無制限(4095 W)でした。
CPUクーラーの冷却性能に応じて、できる限り大量の電力を投じて出せる限りの性能を出そうとします。その結果が350 Wもの消費電力と、40000点台のスコアです。
Core i9 13900Kの標準MTPである253 Wに制限すると、マルチスレッドスコアは約4.7%下がります。100 Wも消費電力をカットして、下がった性能はわずか4.7%、つまり300 W超えは明らかに電力の無駄遣いといえそうです。
次は従来のCore i7で使われている190 W制限では、消費電力が60 W下がってマルチスレッドスコアは約7.3%の損失で済みます。250 Wもの電力を使っているRyzen 9 7950Xに対して、5%の性能差です。
さらに下げて142 W制限(= Ryzen 7 7700X)だと約32500点で、Core i9 12900KやCore i7 13700Kを上回る性能を維持します。
Core i9 13900K本来のTDPである125 W制限でも、約31000点で3万点台をキープ。Ryzen 9 5950Xと同じ消費電力で20%も性能が高く、Core i7 13700Kとほぼ同等です。
電力を制限すればするほどワットパフォーマンスを改善できます。しかし、効率よく下げられるのは88 W設定までで、65 W設定まで下がると一気に性能が急落します。
なお、TDP制限によるゲーミング性能への影響は非常にわずかです。65 Wに制限しても、FF14ベンチマークの結果は誤差レベル(-1.6%)。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
![Core i9 13900Kの電力制限をチェック:消費電力](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-temp-power-11.jpg)
TDP制限時の消費電力がこちらのグラフ。指定した消費電力の約1.2倍の消費電力が出ています。
![Core i9 13900Kの電力制限をチェック:CPU温度](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-temp-power-12.jpg)
TDP制限時のCPU温度はこの通り、消費電力が下がれば下がるほど発熱が減って、CPU温度がぐんぐんと下がります。
実質無制限で100℃に達するCPU温度が、253 Wに制限するだけで平均85℃前後に抑えられます。85℃は決して低い温度とは言いづらいですが、常時95℃に張り付くRyzen 9 7950Xより10℃も低いです。
190 Wまで下げると平均70℃前後です。240~280 mm水冷式クーラーを使っている場合は、190~253 Wの範囲でちょうど良い性能と温度を探してみるといいでしょう。
性能を維持しつつ消費電力と温度を抑えたい方は、パワーリミットに250 W制限をかけて、VFカーブ(クロック別のコア電圧カーブ)にネガティブオフセットを設定する低電圧化も選択肢の一つです。
ただし、低電圧化は実質的にはオーバークロックと同等の行為ですので、設定する際は自己責任となります。よく分からない場合はパワーリミット(電力制限)にとどめておくのが無難です。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
![Core i9 13900Kの電力制限をチェック:クロック周波数](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/core-i9-13900k-temp-power-13.jpg)
TDP制限時のクロック周波数(Pコア)です。
Core i9 12900Kと同じ253 W設定で、Core i9 13900Kは約300 MHz高い5.2 GHz前後のブーストクロックを維持しています。レビューの最初で説明した通り、Raptor Lake世代の電気的特性に著しい改善が見られます。
しかし、Eコアが16個に増えた影響で若干Pコアのクロックを維持しづらい傾向もあり。
同じRaptor Lake世代のCore i7 13700Kは190 W設定で5.1 GHzを維持できましたが、i9 13900Kでは4.76 GHzに下がっています。とはいえ、Eコアが増えた分だけマルチスレッド性能を格段に維持しやすいため、性能面でデメリットはありません。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
まとめ:ピーキーですが「最高の性能」を奪取【7 nmで】
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/13900k-7nm-5nm.jpg)
「Core i9 13900K」のデメリットと弱点
- 従来比で大幅に増えた消費電力(+100 W)
- 12世代より若干冷えづらい傾向
- 性能を引き出すには水冷式クーラーが欲しい
- ワットパフォーマンスの改善が地味
- 付属クーラーなし
- 国内販売価格が高い(10.5万円から)
「Core i9 13900K」のメリットと強み
- 全コア5.2 GHzの高いクロック耐性
- 最強のシングルスレッド性能 !!
- 非常にすぐれたゲーミング性能
- 汎用性の高いCPU性能
- PCIe 5.0と4.0をサポート
- DDR5 / DDR4メモリの両対応
- Intel 600マザーボードを流用できます
- 内蔵GPU「Xe Graphics」搭載
- 「Intel 7」プロセス採用
- TDPを調整すると扱いやすい
- コスパは悪くはない(7950X比較で)
Core i9 13900Kは100℃近い温度と300 W超えの消費電力がしばしばネタにされがちですが、いつも通りマザーボード側の過度な標準設定(実質無制限)が原因です。
Core i9 12900Kと同じMTP:253 W設定でも、マルチスレッド性能で約40%の性能アップ(= インテルの主張)を実現しており、従来世代やライバルのZen 4を凌駕する最強のシングルスレッド性能も両立します。
実質7 nmの「Intel 7」プロセスを使いながら、TSMC 5 nmを使うRyzen 9 7950Xを相手にほぼ互角の戦いをして見せます。しかも今回のレビューではDDR4メモリでハンデを負った状態で。
よって価格と性能に大きな問題はなく、Core i9 12900K以上に完成度が高いCPUと評価できます。
唯一の弱点はワットパフォーマンスのみ。Core i9 13900Kはたしかに性能とコスパでRyzen 9 7950Xから最強の座を奪取しますが、絶対的なワットパフォーマンスだけは取り返せていません。
![Core i9 13900K(評価まとめ)](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2022/11/i9-13900k-score.jpg)
というわけで、ちもろぐの評価は「A+ランク」で決まりです。
正直「Aランク」にするかかなり悩みましたが、今回の戦いは前回(12900K vs 5950X)ほど圧倒的な差が無いのでA+としました。
急激な円安の影響で実売価格が10万円を超えてしまったのは残念ですが、ライバルのRyzen 9 7950Xは11万円超えですし、高額なB650 or X670マザーボードとDDR5メモリが必要です。
Core i9 13900Kなら、比較的安いIntel 600マザーボードとDDR4メモリを引き続き利用できます。導入コストも含めて考慮すると、Core i9 13900Kのコスパは決して悪くないです。
以上「Core i9 13900Kベンチマーク&レビュー:24コアと300W超で7950Xに挑戦するインテル」でした。
![](https://chimolog.co/wp-content/uploads/2018/08/mochi-pro-icon.png)
Core i9 13900Kに良いマザーボード
200~250 Wで制限をかけて運用するなら、2万円ちょっとで買える「Z690 Pro RS」で大丈夫。200 W台の負荷に問題なく耐えられるVRMフェーズを搭載した、手頃な価格のZ690マザーボードです。
予算に余裕があれば、Z690 TomahawkやZ690 Extreme WiFi 6Eもおすすめ。筆者の個人的なイチオシはExtreme WiFi 6Eですが、今のトレンドに合っているマザーボードはTomahawkです。
どうせ13900Kを導入するなら最新のチップセットで・・・、ならZ790 LiveMixerが革新的です。
レビューで使用したパーツはこちら【おすすめです】
前も言ったけどワッパの出し方が無意味
多コアでクロックを程々に絞った方が有利なんだから8コアなんかが上位に来るわけない
MTP142Wの13900Kのスコアは32535ptsでしょ
5950Xより上じゃないw
それは本当にそのとおりで、海外のレビューも含め、ぼくも常々思っていることですがワッパの「正しい求め方」は存在しないと思います。
本記事のように、Cinebench R23のマルチスレッドスコアでワッパを計算すると、基本的に多コアが有利ですし、ダイ面積あたりのマルチスレッド効率に秀でている「Eコア(Gracemont)」があればあるほど有利です。
仮に本記事に掲載したデータでゲーミング性能のワッパを評価すると、逆に少コアCPUが有利になります。同様にシングルスレッド性能でワッパを計算すると、これは設計規模の小さい(= コア全体を稼働させるのに必要な最低電力が少ない)CPUほど有利になります。
結局、「正しいワッパ」の求め方は存在せず、どのような見方をしても「その角度から見たワッパ」以上の情報はないんですよね・・・。
まとめに[7nmで]とありますが、intel 7はマーケティング上の名前で、プロセスルールとしては10nmではないでしょうか?
TSMCが7nmの部分がまったくないのに7nmとして売り出してるのに業を煮やして「じゃーうちも10nmをIntel7で売ります」ってなったんだよ
Intel7(10nm)って律儀につけるのはうちは嘘ついてないぞってインテルのプライドみたいなもん
Intel 10 nm ESFプロセスを「10 nm」と呼ぶと「いや7 nmだぞ?インテルだってIntel 7って呼んでるし、技術的にもTSMCの1世代遅れだろう?」などなど、半導体業界に詳しい方たちからツッコミが入ったので、今回は配慮して「Intel 7(Intel 10 nm ESF)」と表記しました。
なお、他の方もコメントしている通り、現在のプロセスノードの呼び方はほとんど意味がないです。技術的に正しい比較するには「transistor density(MTr/mm2)」を見る必要があります。
たとえば、Intel 7(Intel 10 nm ESF)は推定100 MTr/mm2(1mm2あたり1億トランジスタ)の密度です。
Zen 4で採用されているTSMC N5(TSMC 5 nm)は推定138 MTr/mm2(1mm2あたり1.4億トランジスタ)です。
よって、密度比較だとIntel 7はTSMC 5 nmの1世代遅れと言えそうです。
ちなみにSamsung 8 nmは推定44.6 MTr/mm2(1mm2あたり4460万トランジスタ)しか詰め込めないです。Intel 10 nmより2 nmも進んでいるように見えて、その実態は2世代遅れだったりします。
中国は既に7 nmプロセスの量産に成功したらしい報道がありますが、こちらは密度について一切言及していませんので、実態はたかが知れているでしょう。
つまり、プロセスノード名は実質ブランドネームに過ぎず、中身(実態)をまったく正しく表現していないので注意が必要です。
トランジスタ密度的にはRaptorのintel7+はTSMC N6やSamsung 5nmと同じくらいですよ。
100nm切ったあたりでプロセス名と物理的な長さが一致しなくなりただのブランド名になっていて、特にFinFETで3次元化したあたりから乖離が密度と物理幅なんてまったく一致しなくなるんですが、Intelが14nmでモタモタしてる間に同業他社がサバを読みまくって、Samsung 5nmはIntel 10nm SuperFinと大して密度が変わらないというおかしなことになっていました。
業界全体のプロセスノードのより正確な見解
で検索ww
名称として説明が乖離してるのはナニヤッテルインテル
テスト環境では280mmの水冷ファンを利用しているようですが、性能的には意外と360mmと大差無いのでしょうか?
製品によりますが、ぼくが使っている第6世代Asetek OEM(NZXT X63)の場合、ラジエーターサイズよりも、水冷ポンプの性能が先にボトルネックになるようで・・・360 mmにしても1~2℃しか変わらないんですよね。
Asetek OEMを使っていないオリジナルモデルだと、もっとうまく冷やせている例(Liquid Freezer II 420やEK AIO Elite 360など)があります。i9 13900Kのように300W級の負荷なら、5~7℃の差が付く可能性があると思います。
同じプロセスの中間ノードをN6とか言い出してる時点でお察し
偏見だが、中華が絡むとこういうおかしなルールを作り出すよね
それに比べれば今までIntelは割と正直だった
その中華のおかげで今のコンピュータ業界が大きく成長したんだけど、どんな気持ちかな?
本当に偏見野郎で流石に草
比較にある7950Xのレビューはまだ無いですが、近日中に公開される予定ですか?
あちらのほうもみてみたいです
もちろん公開する予定で、現在制作中です。
12世代はDDR5を使うと消費電力だけが上がり、
ゲーム性能や動画エンコードがDDR4より低下する特性がありましたけど
13世代はどうなんでしょうか?
ゲームテストで原神が60Hz以上になっていますが、外部ツールでフレーム上限を開放しているのでしょうか?
このブログでは13900KがECCメモリ非対応となっていますが、intelのサイトでは対応となっています。このブログとintelのECCはまた違うものなのでしょうか?
CPU自体は13世代からECC対応になってますね。
ただ、z790のチップセットは非対応なので、現状は気にしてないのではないでしょうか。
オンダイ(On-die) ECCはすべてのDDR5メモリが搭載しており、またメモリ単体の機能なので、CPUやチップセットに特別な機能は必要ありません。一方でU-DIMM ECCのようなものは、CPUやチップセットの対応が必須で、intel XeonかAMD系のみ対応しています。
intelのCPU仕様のECCがどちらのECCを指しているのか不明確ですが、後者だとすると、これまでの実績からしてC系チップセットとの組み合わせ時のみ対応だと思います。これまでもi3はC系チップセットとの組み合わせだとECC対応でした。
W680チップセットを使うとECCが利用でき、対応するW680マザーボードもASUSやgigabyteなどから発売されていることからしても、記事が誤記と言えますね。正しくは、CPUとしてはU-DIMM ECC対応(ただしW680チップセット使用時に限る)
比較グラフで他のCPUの値は、電力設定は定格値での測定値ですか? マザー独自設定だとあまり比較にならない気がしますが
ここ最近電気代が高いので電力制限かけた場合のベンチ比較とてもありがたいです…!
(i9に制限かけるのは少し抵抗ありますがランニングコストも大事だよね…)
最近のCPUは電気バカ食いだなぁって思ってたんですが、意外と制限かけても1世代前よりは全然省エネになってるんですね!勉強になりますw