ゲーム性能に極振りした特化設計である、RDNA 2世代の3番目のハイエンドモデル「Radeon RX 6800」を、ちもろぐで詳しくレビュー & ベンチマークします。
RTX 3070より約7000円高いだけの「付加価値」があるのかどうか・・・検証です。
(公開:2021/1/6 | 更新:2021/1/6)
「Radeon RX 6800」の仕様とスペック
GPU | RX 6800 | RTX 3070 | RX 6800 XT |
---|---|---|---|
プロセス | 7nm製造 : TSMC | 8nm製造 : Samsung | 7nm製造 : TSMC |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 3840 | 5888 | 4608 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 60 | 46 | 72 |
ブーストクロック | 2105 MHz | 1730 MHz | 2250 MHz |
VRAM | GDDR6 16 GB | GDDR6 8 GB | GDDR6 16 GB |
理論性能(FP32) | 16.17 TFLOPS | 20.31 TFLOPS | 20.74 TFLOPS |
SLI対応 | – | – | – |
PCIe | Gen 4.0 | Gen 4.0 | Gen 4.0 |
TDP | 250 W | 220 W | 300 W |
補助電源 | 8 + 8 pin | 12-pin | 8 + 8 pin |
MSRP | $ 579 | $ 499 | $ 649 |
参考価格 | 76980 円 | 69960 円 | 87980 円 |
発売 | 2020/11/20 | 2020/10/15 | 2020/11/20 |
GPU | RX 6800 | RTX 3070 | RX 6800 XT |
---|---|---|---|
世代 | RDNA 2 | Ampere | RDNA 2 |
プロセス | 7nm製造 : TSMC | 8nm製造 : Samsung | 7nm製造 : TSMC |
トランジスタ数 | 268.0 億 | 174.0 億 | 268.0 億 |
ダイサイズ | 520 mm2 | 392 mm2 | 520 mm2 |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 3840 | 5888 | 4608 |
TMU数Texture Mapping Unitのこと | 240 | 184 | 288 |
ROP数Render Output Unitのこと | 96 | 64 | 128 |
演算ユニット数 | 60 | 46 | 72 |
Tensorコア数機械学習向けの特化コア | 0 | 184 | 0 |
RTコア数レイトレ用の特化コア | 60 | 46 | 72 |
L1キャッシュ演算ユニットあたり | 128 KB | 128 KB | 128 KB |
L2キャッシュコア全体で共有 | 4.0 MB | 4.0 MB | 4.0 MB |
L3キャッシュコア全体で共有 | 128.0 MB | – | 128.0 MB |
クロック周波数 | 1700 MHz | 1500 MHz | 1825 MHz |
ブーストクロック | 2105 MHz | 1730 MHz | 2250 MHz |
VRAM | GDDR6 16 GB | GDDR6 8 GB | GDDR6 16 GB |
VRAMバス | 256 bit | 256 bit | 256 bit |
VRAM帯域幅 | 512.0 GB/s | 448.0 GB/s | 512.0 GB/s |
理論性能(FP32) | 16.17 TFLOPS | 20.31 TFLOPS | 20.74 TFLOPS |
SLI対応 | – | – | – |
PCIe | Gen 4.0 | Gen 4.0 | Gen 4.0 |
TDP | 250 W | 220 W | 300 W |
補助電源 | 8 + 8 pin | 12-pin | 8 + 8 pin |
MSRP | $ 579 | $ 499 | $ 649 |
参考価格 | 76980 円 | 69960 円 | 87980 円 |
発売 | 2020/11/20 | 2020/10/15 | 2020/11/20 |
「RX 6800」のスペックをざっくりと解説します。
RX 6800はゲーマー向けRadeon「Navi」の第2弾(RDNA 2世代)のハイエンドモデル。記事を書いた時点で、上から数えて3番目に位置するハイエンドRadeonです。
MSRPが80ドル安く、価格的に確実なライバルになりうる「RTX 3070」は5888コアもの圧倒的なコア数で存在感を見せます。
一方で、RX 6800はたっぷり16 GBのVRAM容量と、128 MBの専用キャッシュ(L3)を搭載。さらに2 GHz超えのブーストクロックによる「効率の良い性能」で、RTX 3070に挑戦状を送ります。
パッと見だとRTX 3070の方が安くて高性能そうに思えるスペック比較ですが、実際のゲーム性能はRX 6800を実際に動かしてベンチマークしなければ何とも言えないのです。
「レイトレ」対応ですが「DLSS」は未対応
RDNA 2(RX 6000)シリーズから、従来のRX 5000シリーズに欠けていた「レイトレ(リアルタイムレイトレーシング)」に対応します。
ゲームによってはRX 6000シリーズでレイトレを有効化できない場合もありますが、Battlefiled VやWatch Dogs Legionなど、RX 6000でレイトレを使えるゲームが用意されています。
ただし、ディープラーニング技術を使って、高画質をなるべく維持したままフレームレートを向上させる機能「DLSS」は未対応。4Kレイトレ時の大幅な性能低下を抑える術が無いため、高画質なレイトレと相性が悪い可能性が高いです。
現時点で具体的なスケジュールは不明ですが、一応AMDは専用ハード(※GeForceはTensorコアを使ってDLSSを実現)を必要としない類似の機能「FidelityFX Super Resolution」を開発中です。
VRAMアクセスを効率化「Smart Access Memory」
RX 6000シリーズはゲーム向けGPUとして初めて、CPUとVRAMのやり取りを効率化する規格「Resizable BAR」を活用した機能「Smart Access Memory(略:SAM)」を導入します。
通常、CPUとVRAM間のやり取りは32 bit OSとの互換性の都合により、256 MBずつに制限されています。VRAM容量が少なく、VRAMの性能もそれほど速くなった時代は問題なかったです。
しかし、2016年頃からVRAMの容量は10 GB以上に大容量化し、性能に至っては1 TB/s以上を出せる製品まで登場。VRAMに256 MBずつアクセスしていては、さすがにボトルネックになる可能性が高いというわけ。
「Smart Access Memory(略:SAM)」は、時代にそぐわない古の256 MB制限をなくし、グラボに搭載されているVRAMの全容量へアクセス可能にします。RX 6800の場合、アクセスできるVRAM範囲は16 GBです。
なお、注意点が1つあります。
現時点でSAMを有効化できる環境は、第4世代Ryzen(Ryzen 5000シリーズ)とAMD 500チップセット搭載のマザーボードのみ。Zen2以前のRyzenや400番台のチップセットは今のところサポートしていません。
PCI Express規格の策定団体「PCI SIG」によると、どうやら2008年の時点で既に「Resizable BAR」は規格として存在しています。256 MBの制限なく、すべてのVRAMへアクセス可能にする規格です。
マザーボードが対応していれば普通に使える機能らしいので、AMDに限らず、Intelプラットフォームも構造上は問題なく使えるでしょう。すでにIntel 400マザーボード向けに、Resizable BAR対応のβ版BIOSを提供しているメーカーも・・・。
RX 6800は強敵RTX 3070を圧倒できるか?
- RTX 3070の強力なライバル
- 2 GHz超えのブーストクロック
- 容量16 GBものVRAM(GDDR6)
- ついに「レイトレ」に対応
- 「Smart Access Memory」対応
- TDPは250 W(5700 XTの1.1倍)
- 見かけのシェーダー数は少ない
- DLSS的な機能は無い
- RTX 3070より80ドルも高い価格設定
RTX 3070より80ドルも高い価格設定は、VRAMの容量で正当化できます。しかし、VRAMが多くてもゲーム性能に貢献しなければ、ハッキリ言ってお金の無駄遣いです。
更に「DLSS」的な強力な付加価値もありませんので、ぼくとしてはRX 6800に対して「RTX 3070を完膚無きに骨抜きにするゲーム性能」を要求します。
以下よりベンチマーク & 実測ゲーミングを行い、RX 6800の性能を詳しく調査します。
RX 6800の性能をベンチマーク
テスト環境(スペック)
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Core i9 10900K | |
CPUクーラー | Corsair H100i Pro RGB240 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROGZ490 Maximus XII Apex | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | Radeon RX 6800 | |
SSD | NVMe 500GB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 | |
SATA 2TB使用SSD「Micron 1100」 | ||
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」 | |
ドライバ | NVIDIA 457.51 / AMD 20.12.1 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@60 Hz使用モデル「BenQ EL2870U」 |
RX 6800をテストする、ちもろぐ専用ベンチ機の最新スペックです。
CPUはゲーミング最強クラスの「Core i9 10900K」を採用。マザーボードは「Z490 Maximus XII Apex」、メモリはDDR4-3200で容量16 GBを2枚組(合計32 GB)です。その他のパーツは適当に組み合わせています。
テスト時のグラフィックドライバは、NVIDIA GeForce Driverが457.51、AMD Radeon Driverは20.12.1(RX 6800対応ドライバ)にて検証します。
用意したグラボ
今回のRX 6800ベンチマークで使用するグラボは、ASUS製「ROG STRIX RX 6800 GAMING OC」です。
従来のROG STRIXよりも、更にボード設計が巨大化し、ファンサイズやブレード枚数も大型化しています。300 W級を想定した設計を、そのまま250 WのRX 6800に搭載しているため、冷却性能は驚異的です。
ROG STRIX RX 6800 GAMING OCの詳しいレビューは以下の記事をどうぞ。本記事ではあくまでも、「RX 6800」としてのベンチマークとレビューを行います。
RX 6800のゲーミング性能【RTX 3070を圧倒か?】
今回のちもろぐ版グラフィックボードレビューでは、以下2つのベンチマークと15個のゲームタイトルを使って、「RX 6800」のゲーム性能を詳しくテストしました。
- 3DMark(FireStrike / TimeSpy / Port Royaleを使用)
- VRMark(Orange / Cyan / Blueすべて使用)
- FF14 : 漆黒のヴィランズ
- FINAL FANTASY XV
- Apex Legends(ベンチマークまとめ)
- Battlefield V
- Call of Duty : Black Ops IV
- Rainbow Six Siege(ベンチマークまとめ)
- Fortnite : Battle Royale
- Overwatch
- Assassin’s Creed Odyssey
- ARK Survival Evolve
- Microsoft Flight Simulator(ベンチマークまとめ)
- Shadow of the Tomb Raider
- Watch Dogs Legion(New !!)
- モンスターハンターワールド(ベンチマークまとめ)
- 黒い砂漠(ベンチマークまとめ)
テスト項目に新たに「Watch Dogs Legion」を加えています。
「Cyberpunk 2077」と「Call of Duty : Black Ops COLD WAR」も新たに購入してテスト項目に加えていますが、まだ比較できるデータが少ないので今回は掲載を見送りました。
定番ベンチマーク:3DMark
「3DMark」はグラフィックボード用の定番ベンチマークです。グラボの性能をざっくりとスコア化(Graphics Score)して、性能を分かりやすく比較できます。
DX11で動作するフルHD向けベンチマーク「FireStrike」では、RX 6800はなんとRTX 3070どころか・・・RTX 3080すら上回るスコアを叩き出します。
DX12で動作する、WQHD向けかつ比較的新しいゲーム向けの「TimeSpy」だと、RTX 3080は超えられませんがRTX 3070はしっかりと抑えるスコアです。
他のグラフィックボードとベンチマークスコアの比較をしたい方は、↑こちらのグラボ性能まとめ表も参考にどうぞ。
VRゲーム性能:VRMark
日本はヨーロッパ圏を超えるVRゲーム大国でして、VRゲームのためにグラボを求める人も少しずつ増えています。VRゲーム向けの定番ベンチマーク「VRMark」を使って、RX 6800 XTのVRゲーム性能を検証します。
「Orange Room」はVRMarkで一番軽い(HTC ViveまたはOculus Riftの動作チェック的な)テストです。RX 6800は13800点前後ですが、他のライバルグラボと同様のスコア上限に届きません。
「Cyan Room」はDX12で動作するVRベンチマークで、2番目に重たいです。負荷が重たいベンチマークだと、グラボの性能差がハッキリと出ます。
Orange Roomでイマイチ性能を出しきれなかったRX 6800は、Cyan Roomでは一気に性能を発揮してRTX 3080とほぼ同等の性能を見せました。
「Blue Room」は将来のハードウェアを前提として用意された、5K解像度の重量級VRベンチマークです。RTX 2080 TiとRTX 3070のちょうど間に位置するスコアです。
【1920 x 1080】フルHDゲーミングの性能
15個のゲームの検証データを平均化して、RX 6800のフルHD(1920 x 1080)における平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
RX 6800のフルHDゲーム性能は「平均162.7 fps(下位3%:126.3 fps)」です。どうやらRadeon Driverの完成度がイマイチで、ゲームによってGPU使用率がフラフラとまったく安定しません。
上手く機能するとRTX 3070を軽く超えるゲーム性能を見せる一方で、GPU使用率が不安定なゲームではRTX 3070にすら劣る性能です。ゲーム別のフレームレートは以下のグラフを確認してください。
RX 6800平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
フルHDゲーム(1920 x 1080)における、検証したそれぞれのデータをまとめた↑スライドです。
ゲームによって結果は大きくばらつき、RTX 3070やRTX 3060 Tiに劣るシーンも・・・。一方で、Apex Legends、レインボーシックスシージ、ウォッチドッグスではRTX 3070を抑えています。
【2560 x 1440】WQHDゲーミングの性能
15個のゲームの検証データを平均化して、RX 6800のWQHD(2560 x 1440)における平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
RX 6800のWQHDゲーム性能は「平均127.1 fps(下位3%:102.4 fps)」です。RTX 2070 Superより約38%高性能、RTX 3070を約7%ほど上回る性能です。
WQHDではGPU使用率が安定しやすく、ライバルのRTX 3070を抑えられる性能を発揮できます。しかし価格差は約17%ですので、依然としてコストパフォーマンスはイマイチです。
RX 6800平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
WQHDゲーミング(2560 x 1440)における、検証したそれぞれのデータはこちら↑のスライドをじっくり見てください。
フォートナイトやFF14:漆黒のヴィランズを除けば、テストしたほぼすべてのゲームでRX 6800はRTX 3070を上回る性能を見せています。
RX 6800の579ドル(約7.7万円~)を考慮すると、これほどの性能でもコスパ的には素直に高評価は難しい。ですが、一応RTX 3070をきっちり抑えており、ライバルとしての存在感はなかなかのモノ。
【3840 x 2160】4Kゲーミングの性能
15個のゲームの検証データを平均化して、RX 6800の4K(3840 x 2160)における平均パフォーマンスをグラフにまとめました。
RX 6800の4Kゲーム性能は「平均71.2 fps(下位3%:61.3 fps)」です。上位のRX 6800 XTと同様に、RX 6800も4Kゲーミングをマトモに動かせるハイエンドRadeonです。
ライバルのRTX 3070もそれなりに4Kゲーミングを動作可能とはいえ、さすがに今回のRX 6800には届きません。ただし、RTXシリーズは「DLSS」に対応するため、ゲーム次第で立場は激変します。
RX 6800平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
4Kゲーミング(3840 x 2160)における、検証したそれぞれのデータはこちら↑のスライドをじっくり見てください。
一部の超重量級タイトル(ARK Survival EvolvedやFlight Simulator 2020など)だと、さすがにRX 6800では平均60 fps以上は厳しいです。
ライバルのRTX 3070は素の性能こそRX 6800に敗北を喫するものの、「DLSS」対応ゲームなら簡単にRX 6800を追い抜かせるため、RX 6000シリーズにDLSSが無いのは大きな痛手でしょう。
RDNA 2独自の強み:レイトレとSAMを試す
レイトレーシング(DXR)の性能
RX 6000シリーズはRadeon初のレイトレ(DirectX Raytracing)対応グラボです。RX 6800の場合、レイトレーシングを高速処理する専用コア「レイ・アクセラレータ」を60基も搭載します。
ライバルのRTX 3070は第2世代のRTコアを46基搭載しており、RTコアの数ではRX 6800(60基)が有利です。第2世代RTコアに対して競争力のあるレイトレ性能を発揮できるのかどうか。
RX 6800のレイトレ性能を手加減なくテストしました。
レイトレーシングの性能をスコア化する定番ベンチマーク「3DMark Port Royal」の結果がこちら。
RX 6800は7786点です。RTX 3070を超えられず、RTX 2080 Superより1割高いレイトレスコアにとどまっています。やはり第2世代RTコアには遅れをとっているようです。
次は実際のゲームでレイトレを使ってみて、実用に耐えるフレームレートを出せるかチェック。
「Battlefiled V」でレイトレを有効化すると、かなり残念な結果に・・・。フルHDだとRTX 2070 Superに負け、WQHD以上はRTX 2070 Superとほとんど変わらない性能です。
性能だけでなく、肝心の画質もBattlefield Vではイマイチ。どうも反射の映り込みが「細かなブロックノイズ」的な描写になっていて、個人的にあまり美しい表現とは思えないです。
「Watch Dogs Legion」では、フルHDとWQHDでRTX 2080 Super相当の性能、4K解像度だとRTX 3060 Tiをわずかに上回るレイトレ性能です。
RX 6800のレイトレ性能は、現時点ではお世辞にも優秀とは言えません。RTX 3070どころか、RTX 3060 Tiにすら負けてしまう性能です。
「Smart Access Memory」の効果
次はRX 6000シリーズ独自機能「Smart Access Memory(SAM)」について検証します。その前に、マザーボードのBIOS画面からSAMを有効化する手順をさらっと解説します。
パソコン起動時にDelを連打して、マザーボードのBIOS画面へアクセス。BIOS画面のレイアウトはメーカーによって違いますが、SAMの有効化は3つの手順を踏む必要があります。
- Above 4G Decoding:Enabled
- Re-Size BAR Support:Enabled(またはAuto)
- CSM(Compatibility Support Module):Disabled
Adove 4G DecodingとRe-Size BAR Supportを有効化に切り替え、CSMを無効化して再起動すると、SAMが有効化した状態に切り替わります。
Re-Size BAR Supportの項目がどこにも見当たらない場合は、使っているマザーボードのBIOSをアップデートしてください。
- CPUがRyzen 5000(Zen3世代)シリーズ
- グラボはRadeon RX 6000シリーズ
- マザーボードはAMD 500チップセット※AGESA 1.1.0.0以降にもとづくBIOSが必要
- Radeonドライバは20.11.2以降のバージョン
2020年12月時点で、SAMを有効化できる条件は以上の通りです。基本的に最新のAMD製ハードウェアがなければ、SAMは一切使えません。
なお、SAMのベースとなっているRe-Size BAR自体はCPUやグラボの制限はなく、マザーボードが対応さえすればインテルCPUやNVIDIA製GPUでも使用できます。
今後のAMD次第で、Zen2世代やAMD 400チップセットでSAMが使えるようになる可能性は十分にありえます。
長い前置きは以上で終わり、ここから「Smart Access Memory(SAM)」の肝心の効果について、詳しく見ていきましょう。
Cyberpunk 2077はSAMがよく効くゲームです。フルHDで約12%、WQHDで約8%もフレームレートが改善します。4K解像度は誤差レベルの変化です。
Call of Duty : Black Ops COLD WARは、RX 6800 XTと同じくSAMの効果抜群です。SAMはDirectX12ベースの最新ゲームと相性がとても良いです。
トゥームレイダーをDirectX12でベンチマークすると、若干SAMの効果が出ました。フルHDで約5%、WQHDは約6%の性能アップです。
SAMの効果を平均してまとめます。今回テストした3つのゲームでは、フルHDで11%、WQHDで9%の性能アップです。4K解像度は5%しか変わらず、体感が難しい性能差にとどまります。
4KよりフルHDやWQHDの方が効果が大きい理由は、4KだとVRAMアクセスの制約よりも先に、GPUの性能自体がボトルネックになる・・・とぼくは予想しています。
Microsoft Flight Simulator 2020は「RX 6800 XT」のベンチマークにて、ほとんど効果が無いと判明したため、今回はテストを省略しました。SAMはDirectX12(またはVulkan API)で高い効果を発揮し、DirectX11だとまったく効果を期待できないです。
RX 6800のクリエイティブ性能
ゲーミング性能だけでなく、クリエイティブ性能も検証します。GPUレンダリングの定番「Blender」に加え、OpenCL系の「LuxMark」。それとOpenGL系の「SPECviewperf 13」を使った検証を行います。
GPUレンダリング
Blenderの公式サイトで無料配布されているCycles Render向けのベンチマーク「Blender Benchmark」を使って、GPUのみ使用する設定でレンダリングを行います。描画に掛かった時間が短いほど高性能です。
「BMW」のレンダリングは44.7秒で完了。RTX 2080 Tiより1割遅いです。ライバルのRTX 3070より遅いレンダリングです。
もう少し複雑な「Koro」レンダリングだと85.5秒で処理を終え、RTX 3070の98.9秒を打ち負かします。KoroはOpen CLと相性が良いようです。
LuxMarkはレンダリングソフト「LuxRender」のパフォーマンスを評価できるベンチマークソフト。Cycles Renderと違って、NVIDIA / AMDのどちらでも「OpenCL」を使ってテストが実行されます。
結果はシェーダー数の割には健闘していて、LuxBallとNeumannはRTX 3070とほぼ同等の性能。Hotel LobbyだけはRX 5700 XTの頃から変わらず、思ったより振るわない傾向です。
3DCG / CAD(OpenGL処理)
ワークステーション向けのベンチマークソフト「SPECviewperf 13」を使って、有名な3DCG / 3DCAD系ソフト「3ds Max」「Maya」「Solidworks」の性能を検証します。
SolidworksはRX 6800が圧倒的です。Mayaと3ds Maxは、ライバルのRTX 3070に届きません。
RX 6800の温度と消費電力
消費電力を実際に計測
FF15ベンチマーク(設定:高品質)を実行中に、グラフィックボード本体の消費電力を計測します。なお、消費電力の比較は最大値ではなく「中央値」を使います。
フルHDで約204 Wほど、4K解像度でも約220 Wに収まっており、扱いやすい消費電力です。おおむねRTX 3070と同じ消費電力です。
電力ロガー機能のついた電源ユニットを2台使って、CPUとマザーボード(CPU以外)に電力供給を分割します。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
FF14:漆黒のヴィランズのテスト中に、CPU以外の消費電力をロガー機能で測定した後、グラフィックボードを取り外した状態で再び同じテストを実行して測定を行います。
- A:グラボを取り付けた状態で消費電力を測定
- B:グラボを外した状態で消費電力を測定
以上2つのデータを取得したら、「AをBで引き算」でグラフィックボード本体の消費電力を抽出できる仕組みです。
グラボの消費電力はソフト読み(HWiNFO)で確認は可能ですが、グラフィックボードのモデルやメーカーによって表示される数値に差が生じる可能性があるので、ロガー機能のついた電源ユニットを使って測定しています。
少々手間は掛かるものの、ただのソフト読みよりは正確です。
ワットパフォーマンスは?
FF15ベンチマークの平均フレームレートを、先ほど実際に測定した消費電力で割り算して、ワットパフォーマンス(= 消費電力1 Wあたりのフレームレート)を求めます。
RX 6800のワットパフォーマンスは文句なしに優秀です。
4Kゲーミング時のワッパはRTX 3070と同格で、フルHDではRTX 3070よりも効率的です。RX 5700 XTのほぼ2倍近いワットパフォーマンスに改善されています。
グラボの温度をチェック
FF15ベンチマーク(3840 x 2160)を実行中に、HWiNFOを使ってGPUコア温度を計測します。
なお、グラフィックボードの温度はテストに使用したオリファンモデルの出来によって完全に左右されるため、各GPUの比較は参考程度に見てください。
GPU温度は最大54℃(平均50.5℃)です。RX 6800がスゴイわけではなく、今回テストに使用した「ROG STRIX RX 6800 GAMING OC」の冷却性能が驚異的です。
もともと300 Wを想定したデザインを、そのまま下位モデルのRX 6800(TDP : 250 W)に流用しているため、最大わずか54℃まで抑えられています。
なお、動作音(騒音レベル)の詳しいデータや、ブーストクロックの挙動については「ROG STRIX RX 6800 GAMING OC」の個別レビューを見てみてください。
まとめ:DLSSの不在とドライバの甘さが目立つ
「RX 6800」のデメリットと弱点
- 1世代遅れのレイトレ性能
- 「DLSS」的な機能はまだ無い
- フルHDでGPU使用率が伸びにくい
- 「SAM」の使用条件がケチくさい
- 入手性が極めて悪い
- RTX 3070を圧倒できない
RX 6800の問題点は「DLSS」に相当する機能はまだ実装されていない上に、80ドルも安価でそれなりに入手しやすいRTX 3070を、性能面で圧倒できないことです。
最初に書いたとおり、RTX 3070よりも設定価格が高価である以上、せめて(DLSSやレイトレを含まない)純粋なゲーム性能だけでもRTX 3070を圧倒して欲しい。
しかしRX 6800はRTX 3070を完膚無きに打ちのめす性能を・・・提供しません。特にモンスターハンターワールドや黒い砂漠で見られる、フルHD時のGPU使用率の不安定さは残念です。
「RX 6800」のメリットと強み
- フルHDで200 fps台が可能
- WQHDと4KはRTX 3070以上
- Radeon初の「レイトレ」対応
- VRAMの制約を解除する「SAM」機能
- RTX 3070相当のレンダリング性能
- 優れたワッパ(RX 5700 XTの約2倍)
RX 6800のメリットはRTX 3070以上の性能※1です。
※1 : DLSSとレイトレを考慮せず、フルHDゲーミングを含まなければ、という条件付き。
最新ゲーム(DirectX12またはVulkan APIベース)では、Smart Access Memory機能でフレームレートを1割ほど底上げできるので、RTX 3070以上のゲーム性能が必要なら選択肢に入れていいでしょう。
新品価格を検証で求めた「平均フレームレート」で割り算して、平均1 fpsあたりの価格を求めます。1 fpsを得るのに必要なコストが安いグラボほど、コスパが高いです。ただし、性能が違うグラボ同士でコスパを比較するのは要注意。
単純にコスパだけを見てしまうと、目的・用途に合わないグラボを選んでしまうリスクがあります。必ず、自分の求めている要件(予算や欲しいフレームレート)にある程度一致しているグラボ同士で、コスパを比較するようにしてください。
新品価格でコスパを計算してグラフにまとめました。やはりRTX 3070よりも、コスパは悪いです。よく見ると上位モデルのRX 6800 XTよりもコスパが悪いです。
RX 6800は、ターゲット層が難しいです。あえて言えばRTX 3070では性能が不足するFPSゲーマー向けですが、少々狙っているターゲットが狭すぎると思います。
声を大にして「RX 6800はおすすめです。」とは言いづらいのが・・・正直な感想です。
以上「Radeon RX 6800ベンチマーク & レビュー:RTX 3070より高性能?」でした。
RX 6800を入手する
RX 6800を搭載するグラフィックボードは、記事を書いた時点で7.9~10万円の価格帯で購入できます。リファレンスモデルを含め、ほぼすべてのモデルがトリプルファン仕様です。
RX 6800でおすすめなグラボは、やはり価格が安価なリファレンスモデルです。約7.7~8.4万円の幅がありますが、どれを買っても性能は同じ。コスパで選ぶならリファレンス一択でしょう。
オリファンモデルでおすすめは、今回実際に使ってみて普通に良かった「ROG STRIX RX 6800 GAMING OC」です。60~65℃まで温度上昇を許せば「ほぼ無音」で運用できます。
RX 6800を搭載するBTO
レビューを書いた時点で、RX 6800を搭載するBTOパソコンはほとんど見当たりません。RX 6800 XTの品薄は自作PC市場だけでなく、BTO向けでも相当に厳しい様子です。
とりあえず無難にマトモなツクモ「G-GEAR」を掲載しておきます。Ryzen 7 5800X(8コア) + RX 6800 + X570マザーボードの組み合わせで、ちゃんと「Smart Access Memory(SAM)」を使えるスペック構成です。
売ってないんですよ
このモデル3070よりMSRPの80ドル差のプラス約7千円で買えたの?為替や消費税や+αは?という疑問はさておき。
最上位の6900XTであっても3070より上と同じく言い切れないので仕方ないですね。
3070が6.6万円から買える、かなり下のモデルと比較されても渋さが見えてくる状況では、価格相応のA評価を与えられるかと問われると厳しい完成度かなと。
3070がSSSとか特別高いならば別ですが、ロマンだけではAは厳しい。
6800はNAVI21をお安くするためのモデルという立ち位置でしょうけど、売りの128MBキャッシュと16GBはそのままなせいか、まだ3070らと比べると割高かなと。
ただ安定性はともかく基本性能は6800の時点で十分高いのと、どうせ上位でもレイトレ性能は大きく劣り期待できない大差ないようなのとでお安くなっているだけマシでもあるかなとは思います、かつ上位よりは入手性が良い方でしょうか。その2点の意味では上位比でA評価ですね。
5700XTのレビューで低電圧化されてましたが、6800では低電圧化を試されたりしないのでしょうか?
漸く入手したので実際にサイパンをプレイしながら電圧を詰めていった結果、うちの個体ではブースト2125MHz設定で0.93vが常用の下限でした
WQHD最高設定60fps張り付きでGPU Chip Power Draw平均120w程なのでRTX2060並の消費電力で遊べますよ
GPU温度は4℃程下がりましたが、元々発熱が低いのでパフォーマンスの伸びは無いですね
ありがとうございます。
載せ換えたいと思うところではありますが、入手性が悪いのが残念です。
RAM12GBぐらにして値段3070同等ぐらいにできればって感じかなぁ。
まあほぼ売ってないから3070のほうでいいよねってなっちゃう
6800XTの方がバランスが良いように思える
何か中途半端
どんな検証したら正反対な結果になるんだ?