コンシューマ向けのNVMe SSDでしばしば圧倒的なスピードを発揮してきた「970 EVO」に、後継モデルとして「970 EVO Plus」が登場。90層以上の3D NANDを使うことで改善を図ったSSDですが、実際のところはどうなのか。
検証レビューです。
この記事の目次
Samsung 970 EVO Plusの仕様とスペック
一般ユーザー向けのNVMe SSDとして、トップクラスの速度を実現してきたSamsungのSSD「970 EVO」に、2018年7月から製造が始まった最新世代のV-NANDを使った「970 EVO Plus」が登場です。
ベースはほとんど970 EVOなのでブランド名は単に「Plus」が追加されただけですが、まずはスペック面で「何がPlusされたのか?」を確認してみましょう。
スペック | Samsung 970 EVO Plus | |||
---|---|---|---|---|
容量 | 250 GB | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | |||
コントローラ | Samsung Phoenix | |||
NANDフラッシュ | Samsung 3D-TLC NAND※積層数は「90層以上」であって、96層かどうかは不明です | |||
DRAMキャッシュ | Samsung DDR4 | |||
512 MB | 1 GB | – | ||
SLCキャッシュ | 4 GB | 4 GB | 6 GB | – |
13 GB | 22 GB | 42 GB | – | |
読み込みシーケンシャル | 3500 MB/s | – | ||
書き込みシーケンシャル | 2300 MB/s | 3200 MB/s | 3300 MB/s | – |
書き込みキャッシュ無し | 400 MB/s | 900 MB/s | 1700 MB/s | – |
読み込みランダム(QD1) | 17000 IOPS | 19000 IOPS | – | |
読み込みランダム(QD128) | 250000 IOPS | 480000 IOPS | 600000 IOPS | – |
書き込みランダム(QD1) | 60000 IOPS | – | ||
書き込みランダム(QD128) | 100000 IOPS | 200000 IOPS | 400000 IOPS | – |
消費電力高負荷時 | 5.0 W | 5.8 W | 6.0 W | – |
消費電力アイドル時 | 30 mW | |||
消費電力スリープ時 | 5 mW | |||
保証 | 5年 | |||
TBW書き込み耐性 | 150 TB | 300 TB | 600 TB | – |
MSRP希望小売価格 | $ 89.99 | $ 129.99 | $ 249.99 | – |
参考価格国内Amazon | 10980 円 | 18980 円 | 29980 円 | – |
GB単価 | 44 円 | 38 円 | 30 円 | – |
最大の違いはやはり最新世代のV-NANDを投入したことです。従来の970 EVOには「64層」のTLC NANDが使われていましたが、970 EVO Plusには「90層以上」のNANDが採用されました。

一般的に3D NANDのメリットは無理なく大容量を実現できることですが、実は書き換え速度が速いという性質もあります。970 EVOとPlus版のスペックを比較してみると、
- 250 GB版:300 MB/s → 400 MB/s(+33%)
- 500 GB版:600 MB/s → 900 MB/s(+50%)
- 1 TB版:1200 MB/s → 1700 MB/s(+42%)
この通り。書き込み速度は30~50%もスピードアップに成功。

世界初の「Toggle DDR4」実装NAND
更に最新世代のV-NANDは積層数を90台に載せただけでなく、SSD業界では初めてNANDフラッシュとSSDコントローラを接続するインターフェイスに「Toggle DDR4」を実装しました。
NANDとコントローラ間の転送速度は800 Mbpsから1400 Mbpsにまで高速化し、定格電圧を1.8 Vから1.2 Vに押し下げることに成功。より少ない電力で、より速い転送速度を実現です。
ちなみに90層を超えるNANDは東芝やSanDiskが先に製品化しているものの、Toggle DDR4を実装したのはSamsungの最新世代V-NANDが初のこと。
SLCキャッシュの増量で速度をブースト
SLCキャッシュ | 970 EVO | 970 EVO Plus | 増量 |
---|---|---|---|
250 GB版 | 最大9 GB | 最大13 GB | 44% |
500 GB版 | 最大18 GB | 最大22 GB | 22% |
1 TB版 | 最大36 GB | 最大42 GB | 17% |
970 EVO PlusはTLCタイプのNANDを使っているので、原理的に書き込み速度の低下を避けられない。そこで使われるのがDRAMキャッシュと、SSDの一部をキャッシュとして使う「SLCキャッシュ」です。
970 EVO PlusはそのSLCキャッシュを更に増やして、NANDの積層数を90層以上にすることで速くなった書き込み速度を、もっと高い次元にまで向上させています。
キャッシュ有効時の書き込み速度は、MLC NANDを採用するプロ向けのSSD「970 Pro」すら上回るほどです。キャッシュが切れれば下回りますが、コスパを考えれば凄まじいです。
ライバルに引けを取らない「耐久性能」

価格的に競合するTLC NAND採用のNVMe SSDと、TBW(書き込み耐性)を比較してグラフにまとめました。
250 GB版はWD Black SN750が一歩上を行きますが、500 GB以上になると全く引けを取らないTBWを実現しています。容量に対して600倍ものTBWですので、普通に使っていれば…まず使い切れない。
Samsung 970 EVO Plusのスペックまとめ
- 圧倒的な読み書き速度
- ライバルに引けを取らない耐久性能
- コストパフォーマンスは悪くない
- 5年保証
90層以上の3D TLC NANDを採用するNVMe SSDの中では、現行トップクラスSSDです。それでは実際に970 EVO Plusと、先代970 EVOを比較しながらレビューを進めていきます。
Samsung 970 EVO Plusを開封レビュー
動画版あります。サクッと見たい人は動画で。詳しく見ていきたい人は以下のブログ版に進んでください。
先代を踏襲するパッケージデザイン

パッケージデザインは先代「970 EVO」をほぼほぼ踏襲しています。全体的にオレンジっぽい色合いになり、「Plus」が増えた分だけフォントサイズを縮小しているようです。

パッケージには基板コンポーネントをしっかりと映した970 EVO Plusが「ドンっ」と構えたデザインなのが印象的。よくみると、部品にもしっかりとSamsungと刻印されていますね。
つまり、Samsungはそれだけ「自社製の部品だけを搭載しました。」ということを、パッケージデザインで暗にアピールしてるということです。

裏面のデザインは全く同じです。ラインを何本も使ったデザインは、間違いなく3D NAND(SamsungはV-NANDと呼ぶ)を表現したものですね。

スライドして引き出す感じで開封します。

梱包はいつも通りですね。
基板コンポーネントをチェック
Samsungのスペックシートは極めて信頼性が高いので、そのまま信用してもかまわないですが念のため実際にコンポーネントを確認してみようと思います。

先代970 EVOと970 EVO Plusを並べてみた。目視でわかるほどの差は無く、本当に使っているNANDを最新世代に置き換えただけのようです。

デザインが施されたシールが貼り付けてあります。これだと中身が見えないので、シールを剥がすしか無いですね。ちなみにシールを剥がす行為は自己責任でお願いします※。
※ シールを剥がすと「保証」が切れる可能性アリ。

コンポーネントはこの通りです。左から順番に確認していく。

SSDの性能やデータの信頼性に大きく関わる「SSDコントローラ」は、先代970 EVOから引き続き、5コア搭載のハイエンドコントローラ「Samsung Phoenix」を続投しています。
上位品のSamsung 970 Proや、BTOなどの法人向けに出荷しているSamsung PM981にも採用されている高性能なSSDコントローラです。それを惜しげもなく一般向けのSSDに投入するのがSamsungらしいやり方。
あのIntelですら、一般向けのSSDには自社ではなくSilicon Motion製のコントローラを使ってますから(とはいえIntel向けの特注仕様らしいが)。

DRAMキャッシュはDDR4規格で容量は512 MBです。メーカーは「SEC」という刻印があるので、Samsung製で間違いない。

NANDフラッシュも「SEC」刻印で、Samsung製。90層以上の3D TLC NAND(第5世代のV-NAND)を採用です。1枚で128 GB、2枚搭載して合計256 GBになります。

裏面にコンポーネントはない。片面実装のM.2 2280規格のSSDです。Key M対応のM.2ソケットを備えるマザーボードなら、ほとんどの場合は問題なく挿し込み可能。

970 EVO Plusの性能を検証(ベンチマーク)
Crystal Disk Mark 6
国内だけでなく、国際的にも定番のSSDベンチマークである「Crystal Disk Mark 6」を使って、970 EVO Plusのシーケンシャル速度や、SSDの質が出やすいランダムアクセス速度を検証する。
性能に一貫性があるかどうかを確かめるため、複数のテストサイズも実行しておいた。
50 MB

50 MBサイズはキャッシュに収まるサイズなので、読み込み・書き込みともに爆発的なスピードを記録しました。ランダムアクセス速度(4KiB Q1T1)はTLC NANDのSSDとして十分な水準です。
NANDの積層数を増やすことで、シーケンシャル書き込み速度は970 EVOと比較して約900 MB/sも速くなった。一般ユーザー向けのNVMe SSDでは、現行トップクラスかもしれない。
1 GB

標準的な1 GBサイズでテストすると、やや読み込み速度が遅くなった。それでも極めて速い速度を維持していて余裕を感じさせる結果です。
4 GB

やや大きい4 GBサイズになっても結果はほとんど変わらない。依然として書き込み速度は2400 MB/s台をキープしています。
16 GB

もっと大きい16 GBサイズをテストすると、ついに書き込み速度が1080 MB/sにまで急落。スペック編で解説した通り、SLCキャッシュは最大13 GBなので16 GBテストだとこうなります。
32 GB

CDMでテストできる最大サイズの32 GBでは、書き込み速度はなんとか1000 MB/s以上を維持しました。970 EVOだと700 MB/s台になってしまうので、性能は確かに改善されています。

サムスン製のSSDと1 GBテスト時の結果をグラフで比較してみる。読み込み速度とランダムアクセス速度はおおむね似た傾向ですが、シーケンシャル書き込み速度は大幅な性能アップです。
AS SSD Benchmark 2.0
非圧縮データをテストに用いる「AS SSD Benchmark」もチェック。読み込み速度はほとんど同じように見えて、アクセスタイム(レイテンシ)が2倍以上にまで高速化しているのが興味深い。
AS SSD Benchmark 2.0
書き込み速度は約50%ほど速くなっています。よってスコアは3263点から4051点まで、大幅なアップとなりました。改善版として非常に優秀です。
ATTO Disk Benchmark
様々なテストサイズで一括テストができるATTO Disk Benchmark。SSDの良し悪しが分かりやすいソフトです。
読み込み、書き込みともにスピードの立ち上がりは970 EVOと比較してほとんど変わりません。全体的に速度は底上げされている分だけ、ピーク速度に達するのに掛かる時間は少し伸びました。

読み込み速度は先代970 EVOをしっかりと抑える結果に。

書き込み速度も970 EVO Plusが圧倒的なスピードを記録している。
HD Tune Pro
約3500円するシェアウェアのストレージベンチマークです。ディスク全体に渡って書き込みを実行するテストがあるので、キャッシュの挙動(=下駄の履かされ具合)を確認しやすい。
読み込み速度
読み込み速度は全体的に改善され、平均値で970 EVO Plusは970 EVOより約50 MB/sほど高速です。アクセスタイム(レイテンシ)は微妙に改善していますが、誤差レベルですね。
書き込み速度
書き込み速度はここまでの傾向を引き継ぎ、大幅に高速化しています。平均値で約90 MB/sも高速化し、64層から90層台になった恩恵がしっかりと出ていることが分かりました。
ゲームのローディング時間

ロード時間 | 970 EVO Plus250 GB版 | 970 EVO250 GB版 | 860 EVO250 GB版 | 比較 |
---|---|---|---|---|
シーン#1 | 1.376 秒 | 1.991 秒 | 1.837 秒 | -30.9% |
シーン#2 | 1.843 秒 | 2.086 秒 | 2.351 秒 | -11.6% |
シーン#3 | 1.546 秒 | 1.679 秒 | 1.945 秒 | -7.9% |
シーン#4 | 2.062 秒 | 2.147 秒 | 2.528 秒 | -4.0% |
シーン#5 | 3.967 秒 | 4.092 秒 | 4.815 秒 | -3.1% |
シーン#6 | 0.881 秒 | 0.92 秒 | 1.003 秒 | -4.2% |
合計 | 11.676 秒 | 12.916 秒 | 14.479 秒 | -9.6% |
FF14:紅蓮のリベレーターのベンチマークを使って、各セクションごとにロード時間を計測した。結果は意外と大きく、すべてのシーンで970 EVO Plusの方が速い結果になりました。
合計1.3秒も速くなり、約10%のスピードアップを実現したようです。
ゲームファイルのコピー速度

容量が98.7 GBある、巨大なゲームファイルをコピーします。コピーが完了するのに掛かった時間で、SSDの性能を検証する。
- Samsung 970 EVO Plus:10分17秒
- Samsung 970 EVO:10分23秒
結果はわずか6秒(約1%)しか変わらなかった。確かに970 EVO Plusは書き込み速度を大幅に改善していますが、ランダムアクセス速度はほぼ同じです。だから大小様々なファイルの移動はそれほど変わらない。
Premiere Proでプレビューの「コマ落ち」を検証

ドロップ率 | 970 EVO Plus250 GB版 | 970 EVO250 GB版 |
---|---|---|
6K @238MB/s | 75.11% | 76.69% |
5K @136MB/s | 30.72% | 32.10% |
5K @115MB/s | 21.47% | 19.90% |
5K @72MB/s | 0.00% | 0.00% |
4K @38MB/s | 0.00% | 0.00% |
Premiere Proに4K~6Kの高解像度ファイルを入れて、フル画質でプレビューを実行。コマ落ちインジケータを使い、ドロップしたフレーム数を計測する。計測は5回行って平均を取ります。
結果は見ての通りで、わずかですが970 EVO Plusの方がコマ落ちを抑えられるようです。
SSDの動作温度を確認
ベンチマーク時のセンサー温度を計測

- Samsung 970 EVO Plus:89.4℃
- Samsung 970 EVO:89.7℃
負荷の大きいCrystal Disk Mark 6の32 GBサイズテスト実行時に、SSDのセンサー温度を計測した。テスト中の平均温度は両方ともほとんど同じです。同じコントローラを使っているので、当たり前の結果ですね。

コントローラの温度が80℃を超えたあたりから、若干のサーマルスロットリングのような性能の揺れが確認できますが、温度を下げても挙動は変わらなかったので仕様です。
書き込み速度はもっと分かりやすく乱高下していますが、こちらは温度が原因ではなく、単にキャッシュ切れの影響で乱高下しているようでした。
実用上のサーマルスロットリングは深刻ではないものの、心配な人はSSD用ヒートシンクを取り付けたほうが良い。最近はマザーボードに付属するヒートシンクもありますし、1000円くらいで買うことも出来る。
追記:ヒートシンク + エアフローで非常に冷える

マザーボード付属のM.2ヒートシンクを取り付けて、140mmのケースファン(Noctua NF-A15 PWM)を使って冷却をすると、高負荷時でもコントローラ温度を45℃前後に抑えられました。
性能は冷やしていない時と比較して特段変わったわけではありませんが、精神衛生的にはやはり良いと思いますし安心できますね。
SSD自体の発熱をサーモグラフィーで見る
サーモグラフィーカメラで、SSDを撮影しました。やはりコントローラの発熱が激しく、サーモグラフィーではピーク時に92℃くらいを記録。指で触ると「アチッ」と反射するほどです。
エアフローがあれば10℃くらいは温度が低下したので、PCケース内部にエアフローが無い人は、「M.2ヒートシンクの取付」「ケースファンの増設」などを検討したいですね。
まとめ:「Plus」を冠するに相応しい改善版です

「970 EVO」の後継モデルとして登場した「970 EVO Plus」は、書き込み速度を大幅に向上させることで先代よりもずっと魅力的なNVMe SSDに仕上がってます。
TLC NANDを採用するNVMe SSDの中では、現状もっとも書き込み速度が速いSSDです。ただし、ランダムアクセス速度はそれほど変化していないため、各自「用途」と相談です。
「970 EVO Plus」の良いところ
- TLC NAND製品ではトップクラスの速度
- 特に書き込み速度については最高クラス
- 競合に引けを取らない耐久性能
- 相対的なコストパフォーマンスは妥当な設定
他社のライバルNVMe SSDと比較して、実売価格にそれほど差はありません。その中でも読み書き速度はトップ級ですし、耐久性能も970 EVOから変わらず維持しています。
よって相対的なコストパフォーマンス(=性能あたりのコスパ)は妥当なので、とにかくシーケンシャルな速さを(現実的な予算の中で)追求したいユーザーに最適なSSDです。
「970 EVO Plus」の微妙なとこ
- 熱対策しなければ「発熱」が大きい
- ランダムアクセス速度に変化なし
注意点は「熱」。M.2スロットの近くにグラフィックボードが位置し、更にエアフローを確保していない環境だと容易にコントローラが90℃を超えてしまいます。
激しいサーマルスロットリングは見られなかったが、もっと長時間の使用になれば可能性は出てくる。少なくともエアフローを確保し、無い場合は「M.2ヒートシンク」の取り付けをオススメします。
結論として、「970 EVO Plus」は安価に購入できるTLC NANDのSSDでトップスピードを狙いたい人に、非常におすすめなNVMe SSDです。
以上「Samsung 970 EVO Plusをレビュー:90層以上のNANDで書込速度を改善」でした。
SATA SSDでおすすめなのは「860 EVO」。Crucial MX500とほぼ同じ価格ですが、耐久性能は6~7割も強いのがメリット。
radeon viiのレビューも見たいです!
youtubeの動画ですが、やはりというか韓国というだけで
ネトウヨおじさん集団がヘイトコメントを投稿していて非常に空気が悪くなっています。
ああいったコメントは早めに削除したほうがいいと思いますよ。
ネトウヨコメントは新たなネトウヨを呼び寄せますから・・・。
なんなんでしょうかね…
在日メディアのステマとか何を根拠に言ってんのだか… もう名誉毀損レベル…
レビューお疲れ様です!
動画の方も楽しいです!
「読み書き速度の比較」で、テスト種別が横軸なのに折れ線グラフなのはどう考えてもおかしいですし見づらいです。
せめて棒グラフで表示し直してもらえないでしょうか
指摘ですが、PCBを表す日本語は「基盤」ではなく「基板」です。
基盤だとプラットフォーム的な意味になるのでこの記事には不適です。
よろしくお願いします
ご指摘ありがとうございます。確かに意味の違うキーワードですので、すべての記事で使っていた「基盤」を「基板」に一括置換しました。