AMDの第2世代APU「Ryzen 5 3400G」と「Ryzen 3 3200G」をレビューします。CPUとグラフィックスが一緒に詰め込まれた「APU」は、日常的なタスクから軽いゲームまでこなせる、価格の割には万能な性能で人気です。実際にCPU性能や、グラフィックス性能をくわしくベンチマークしました。
All in OneなAPU:単体で普段使いから軽いゲームまで
Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gのスペック
CPU | Ryzen 5 3400G | Ryzen 3 3200G | Ryzen 5 2400G |
---|---|---|---|
ロゴ | |||
世代 | 2nd Zen+ | 2nd Zen+ | 1st Zen |
プロセス | 12 nm | 12 nm | 14 nm |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | ソルダリング | サーマルグリス |
ソケット | Socket AM4 | Socket AM4 | Socket AM4 |
チップセット | AMD 300 / 400 | AMD 300 / 400 | AMD 300 / 400 |
コア数 | 4 | 4 | 4 |
スレッド数 | 8 | 4 | 8 |
ベースクロック | 3.70 GHz | 3.60 GHz | 3.60 GHz |
ブーストクロックシングルコア使用時 | ~ 4.20 GHz | ~ 4.00 GHz | ~ 3.90 GHz |
ブーストクロック全コア使用時 | ~ 4.20 GHz | ~ 4.00 GHz | ~ 3.75 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 可能 |
L1 Cache | 384 KB | 384 KB | 384 KB |
L2 Cache | 2 MB | 2 MB | 2 MB |
L3 Cache | 4 MB | 4 MB | 4 MB |
対応メモリ | DDR4-2933 | DDR4-2933 | DDR4-2933 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | U-DIMMのみ | U-DIMMのみ | U-DIMMのみ |
PCIeレーン | Gen3 | Gen3 | Gen3 |
16 + 4 | 16 + 4 | 12 | |
レーン構成 | 1×16 + 1×4 | 1×16 + 1×4 | 1×8 + 1×4 |
– | – | 2×4 + 1×4 | |
内蔵GPU | Radeon RX Vega 11 | Radeon RX Vega 8 | Radeon RX Vega 11 |
GPUクロック | 1400 MHz | 1250 MHz | 1250 MHz |
TDP | 65 W | 65 W | 65 W |
MSRP | $ 149 | $ 99 | $ 169 |
参考価格国内Amazonの価格 | 20889 円 | 12980 円 | 終売 |
Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gは、いわゆる「APU」と呼ばれる種類のCPUです。APUとはかんたんに言えば、「CPUと高性能グラフィックスが一緒に詰め込まれた」CPUと考えてください。
インテルCPUも内蔵グラフィックスを搭載していますが、APUは軽いゲームもマトモに動いてしまうほど高性能なグラフィックスを搭載しているのが、大きな違いです。APUが1個あれば、(重たいゲームを除き)だいたいのタスクをこなせます。
初代Ryzen APUと何が違うの?
初代Ryzen APU「Ryzen 5 2400G」と「Ryzen 3 2200G」は、現時点ですでに終売扱いになってます。だから気にする必要はないですが、せっかくなので初代と第2世代で何が変わったのかを解説しておきます。
大きな違いは2つです。
- 世代が「Zen(初代)」から「Zen+(第2世代)」に更新
- より高いクロック周波数で動作するように
- CPU内部の熱伝導材を「ソルダリング」に変更
- 内蔵グラフィックスは少しだけ性能アップ
世代が新しくなり、今まで以上に高いクロック周波数で動作可能です。最大3.9 GHzが4.2 GHzまで引き上げられ、シングルスレッド性能(1コアあたりの性能)が改善されます。
内蔵グラフィックスの動作クロックも、1250 MHzから1400 MHzに引き上げられパワフルに。ただ、動作クロックが上がった分だけ、CPUの温度も比例して高くなってしまいます。
よって熱対策として第2世代Ryzen APUでは、CPUの殻の中に使っている熱伝導材を「サーマルグリス」から「ソルダリング(はんだ付け)」に切り替えました。
グリスよりも金属の方が効率よく熱を伝えられるので、CPUをラクに冷却可能です。一般的にサーマルグリスよりソルダリングの方がコストは高いですが、価格は据え置き。AMDは太っ腹でユーザーフレンドリーなCPUメーカーですね。
Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gを実機レビュー
パッケージング & 開封
「Processor with Radeon Graphics」のロゴがデザインされたパッケージ。ひと目見て「APUじゃん。」と分かります。
反対側はシンプルなデザイン。シルバー色の背景に黒色のフォントで「Zen+ Architecture(Zen+設計)」と主張してます。
封を切って、中身を引っ張り出すスタンダードな開封タイプです。
付属品はどちらもAMD純正CPUクーラー、保証書と説明書のみ。ただし、付属するCPUクーラーは違うので紹介します。
Ryzen 3 3200Gは、背の低い「Wraith Stealth」が付属して、Ryzen 5 3400Gには「Wraith Spire」が付属します。どちらもスペック上は最大65 Wの熱に対応しますが、ヒートシンクの高さが違うので冷え方の余裕や、ファンの動作音はWraith Spireが有利です。
ベースプレートには、サーマルグリスが塗布済みです。塗ってある量がかなり多く、取り付け時にグリスがはみ出てこないかが心配ですね。
個人的には、低価格でそこそこ冷却性能が高い「MX-4」に塗り替えてしまっていいと思います。
CPU本体のデザインをチェック。3000番台とはいえ、APUは第2世代のRyzenです。だからデザインも第2世代とまったく同じで、第3世代Ryzenとは細かい部分でデザインが異なってます。
特に大きな違いが、CPUの向きを示すマークです。第2世代Ryzenは左下の三角形マークが大きく印刷されていて、パッと見でCPUの向きが分かります。
Ryzen 5 3400Gをマザーボードに取り付けてみた。Ryzen対応のSocket AM4は、インテルのLGA 1151より固定方法がラクで気に入ってます。レバーも小型でCPUクーラーのマウンティングプレートと干渉しづらく、親切な設計です。
テスト環境の紹介と比較対象
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
PC | ver.AMD | |
CPU | Ryzen 5 3400G | Ryzen 3 3200G |
CPUクーラー | 虎徹Mark II120 mm中型空冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | |
メモリ | DDR4-2666 8GB x2使用メモリ「G.Skill FlareX C14」 | |
グラフィックボード | RTX 2080 Ti使用グラボ「MSI Gaming X Trio」 | |
SSD | NVMe 250GB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 | |
SATA 2TB使用SSD「Micron 1100」 | ||
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1903」 | |
ドライバ | NVIDIA 445.87 | |
Adrenalin 2020 Edition 20.4.2 |
Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200GをテストするPCスペックをまとめました。CPU本体の比較を行うので、基本的にCPUとマザーボード以外はほぼ同じパーツで揃えています。
CPUクーラーはBTOメーカーでも採用例が多い「虎徹Mark II」、メモリは容量16 GB(クロックは一般的なDDR4-2666)です。
グラフィックボードはレビュー時点で最強性能の「RTX 2080 Ti」を使用しました。CPUのゲーミング性能を計測するのが目的なので、検証に使うグラフィックボードはなるべく高性能な方が良いです。
システムストレージはどちらもSSDで揃え、アプリケーションやベンチマークはSATA接続の2TB SSDから起動しています。おおむね、CPU本体の性能差をテストできるスペック環境です。
CPU性能をチェック
レンダリング性能
「Cinebench R15」は日本国内だけでなく、国際的にもCPU用の定番ベンチマークソフトです。内容はレンダリングで、CPUが持っている理論上の性能がハッキリと反映されやすいです。
CPUのすべてのコアを100%使用した場合の性能を叩き出すため、理論上の目安になります。ただし、あくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。
Cinebench R15 / マルチスレッド性能
すべてのコアを使用する「マルチスレッド性能」は、Ryzen 5 3400Gが3~4年前のCore i7並、Ryzen 3 3200Gは3~4年前のCore i5並です。と言うと聞こえは良いですが、比較に掲載したCore i3 9100Fは9000円台、Ryzen 5 3500は1.7万円ほど。
単純なコスパで考えると、第2世代Ryzen APUはややパワフルさに欠ける性能です。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能
シングルスレッド性能は、やはり第2世代Ryzenだけあってスピード感がありません。マルチスレッドに最適化されていないソフトだと、もっさり感が出てくる可能性は否定できないです。
Cinebench R15の後継バージョン「Cinebench R20」も検証しておきました。
Cinebench R20 / マルチスレッド性能
傾向はCinebench R15とほぼ同じ、と思いきや、よく見るとRyzen 5 3500との差はさらに開いています。
Cinebench R20 / シングルスレッド性能
シングルスレッド性能も同様に、第2世代Ryzenである以上、それほど速くないです。
Cinebenchだけでなく、実際に「Blender」というレンダリングソフトを使って処理速度を計測。内容はスポーツカー「BMW」を生成するのにかかった時間で比較します。
Blender 2.79.7 / 「BMW」の生成時間
レンダリング時間はRyzen 5 3400Gが7分超え、Ryzen 3 3200Gは10分超えです。Ryzen 3 3200Gに至っては、同じ4コア4スレッドCPUであるCore i3 9100Fに、2分近くも引き離されています。
計算速度
Geekbench 4.1はマルチプラットフォーム対応のベンチマークソフトです。内容は多種多様なテストのパッケージで、AESなど暗号処理系の計算速度が問われています。主にCPUの計算速度をスコア化することになります。
Geekbench 4.1 / シングルスレッド性能
シングルスレッドは第2世代Ryzenの不得意ジャンル。当然、第3世代RyzenのRyzen 5 3500には届かないし、Core i3 9100Fにもまったく太刀打ちできません。
Geekbench 4.1 / マルチスレッド性能
マルチスレッドの計算速度だと差は縮小しますが、4コア8スレッドのRyzen 5 3400Gが、4コア4スレッドのCore i3 9100Fにわずかに超えられるという結果です。
動画エンコード
「動画エンコードにかかる時間」は、CPUの性能を知るうえで分かりやすい指標のひとつです。
まずは定番のフリー動画エンコードソフト「Handbrake」を使ってエンコード性能を検証します。約1 GBのフルHD動画(.mkv)を、Handbrakeの標準プリセットを使ってエンコードして、ログに表示される「平均処理速度」で性能比較します。
Handbrake / Fast 480p(x264)
とにかく「第2世代」であるゆえの足かせのせいで、スペックの割にはイマイチ振るわない性能になりがち。
Handbrake / Fast 1080p(x264)
フルHDからフルHDへの動画エンコードも、基本的な傾向は同じです。
Handbrake / Fast 480p(x265)
同じプリセットのまま、エンコード形式をH.265(x265)に変更してテストすると、8スレッドあるRyzen 5 3400Gが4スレッドのCore i3 9100Fに負けてしまいます。
第2世代のRyzenは、動画エンコードの処理のやり方があまり効率的ではないのが原因です。最新の第3世代では効率よく改善されていて、同じスレッド数ならインテルCPU相手に負けないレベルになっています。
動画エンコードソフトは「AVX2」と呼ばれる命令セットを使って、動画のエンコードを爆発的に高速化しています。しかし、従来のRyzenはこのAVX2という命令を半分ずつしか処理できませんでした。毎回データを半分に切り分けて、幅が128 bitしかない細いベルトコンベアに乗せて処理していたのです。
だから従来のRyzenは、多くの動画エンコードソフトで本来の処理性能を発揮できないという弱点を抱えていました(※一部のソフトは、開発者が最適化することでRyzenでの高速処理を可能にしていた)。
この弱点を解消するべく、第3世代のRyzenではAVX2を処理するために使うベルトコンベアの幅を2倍の256 bit幅に拡張し、一度に処理できるデータ量を2倍に改善。
インテルCPUと同様のベルトコンベアを装備したため、きちんとCPUのコア数に見合ったエンコード処理速度を発揮できるように進化しました。
Handbrake / Fast 1080p(x265)
フルHDからフルHDへH.265形式でエンコードした結果も、傾向はほぼ同じです。
- x264guiExをダウンロード(rigaya氏の公式サイト)
日本では大人気の動画編集ソフト「Aviutl」も検証します。rigaya氏が開発した拡張プラグイン「x264guiEx」と「x265guiEx」を使って、2400フレームの動画をエンコード。
Aviutl / x264guiExエンコード
x264guiExは比較的Ryzenでも性能が出やすい傾向がありますが、それでもRyzen 5 3400GがCore i3 9100Fに追いつかない状況。
Aviutl / x265guiExエンコード
x265エンコードでは性能差が少しだけ狭まります。
動画編集
「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。
今回の検証ではPuget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve 16における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。
Davinci Resolve / 4K動画編集
スコアは1000点満点なので、どのCPUもそこまで高速な処理はできていません。Ryzen 5 3400Gは、きちんと8スレッドらしくCore i3 9100Fよりは速い性能です。Ryzen 3 3200Gは残念ながら、同じ4スレッドのCore i3 9100Fに届かずです。
テスト内容 | Ryzen 5 3400G | Ryzen 3 3200G | Ryzen 5 3500 | Core i3 9100F | 単位 | |
---|---|---|---|---|---|---|
4K | Overall Score | 616 | 502 | 684 | 567 | Score |
4K Test Average | Basic Grade | 46.1 | 34.7 | 54.3 | 37.6 | Score |
4K Test Average | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 68.6 | 57.7 | 77.1 | 62.7 | Score |
4K Test Average | Temporal NR – Better 2 Frames | 68 | 55 | 73.2 | 65.5 | Score |
4K Test Average | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 82.3 | 73.9 | 87.1 | 84.6 | Score |
4K Test Average | Optimized Media | 42.7 | 29.5 | 50.5 | 33.3 | Score |
4K CinemaRAW Light | Codec Average | 63 | 50.7 | 67.7 | 58.1 | Score |
4K H264 150Mbps 8bit | Codec Average | 62.7 | 56.5 | 71.9 | 62.7 | Score |
4K ProRes 422 | Codec Average | 65.1 | 56.4 | 73.4 | 63 | Score |
4K ProRes 4444 | Codec Average | 56.2 | 45.4 | 63.8 | 49.9 | Score |
4K RED | Codec Average | 60.8 | 41.9 | 65.4 | 50 | Score |
4K CinemaRAW Light | Basic Grade | 20.66 | 15.71 | 23.74 | 17.11 | FPS |
4K CinemaRAW Light | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 14.02 | 11.82 | 15.29 | 13.29 | FPS |
4K CinemaRAW Light | Temporal NR – Better 2 Frames | 10.68 | 8.68 | 10.02 | 10.85 | FPS |
4K CinemaRAW Light | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 6.49 | 5.65 | 6.91 | 6.33 | FPS |
4K CinemaRAW Light | Optimized Media | 38.85 | 25.31 | 47.75 | 28.2 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | Basic Grade | 22.57 | 17.72 | 27.82 | 19.14 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 14.01 | 13.74 | 16.25 | 14.31 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | Temporal NR – Better 2 Frames | 14.57 | 12.88 | 16.43 | 15.05 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 6.94 | 6.65 | 7.41 | 7.56 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | Optimized Media | 28.58 | 22.21 | 35.28 | 24.71 | FPS |
4K ProRes 422 | Basic Grade | 22.56 | 17.19 | 27.28 | 18.38 | FPS |
4K ProRes 422 | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 14.42 | 13 | 16.43 | 13.63 | FPS |
4K ProRes 422 | Temporal NR – Better 2 Frames | 14.88 | 13 | 16.43 | 15.37 | FPS |
4K ProRes 422 | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.04 | 6.9 | 7.48 | 7.76 | FPS |
4K ProRes 422 | Optimized Media | 64.31 | 44.53 | 76.59 | 51.79 | FPS |
4K ProRes 4444 | Basic Grade | 11.97 | 9.4 | 14.16 | 9.71 | FPS |
4K ProRes 4444 | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 10.23 | 7.84 | 11.94 | 8.75 | FPS |
4K ProRes 4444 | Temporal NR – Better 2 Frames | 8.85 | 6.8 | 10.17 | 7.52 | FPS |
4K ProRes 4444 | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 6.24 | 5.84 | 6.78 | 6.62 | FPS |
4K ProRes 4444 | Optimized Media | 48.21 | 33.62 | 53.76 | 36.18 | FPS |
4K RED | Basic Grade | 11.97 | 8.04 | 13.37 | 9.34 | FPS |
4K RED | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 9.65 | 6.55 | 10.3 | 7.43 | FPS |
4K RED | Temporal NR – Better 2 Frames | 8.74 | 5.96 | 9.5 | 7.4 | FPS |
4K RED | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 5.34 | 3.95 | 5.4 | 4.84 | FPS |
4K RED | Optimized Media | 17.26 | 11.09 | 19.92 | 13.12 | FPS |
ゲーム実況配信
ゲーム配信ソフトで特に有名な「OBS(略:Open Broadcaster Software)」を使って、CPUの配信性能を検証します。
なお、あくまでもCPUの性能評価としてOBSを使うだけであって、現時点では「ゲーム配信するならNVEncが有利。」と考えてます。Turing世代のNVEncならかなり高画質ですし、ゲーム中のフレームレートの下落も少ないです。
では、CPUを使ったゲーム配信の性能を検証しましょう。
FF14ベンチマーク(紅蓮のリベレーター)を最高設定で実行中に、OBSで録画と配信を同時に行います。配信設定は60 fpsのフルHDで、プリセットは標準よりもやや軽い「veryfast」です。
統計タブに表示されるドロップフレーム率で「コマ落ちしたフレーム数」を記録し、配信した総フレーム数で割り算して割合を求めました。0%がベストで、5%を超えたらイライラする配信になります。
配信中のドロップフレーム率設定は「veryfast」で固定 | ||||
---|---|---|---|---|
上限 | CPU | レンダリングラグ | エンコードラグ | 平均fps |
144 fps | Ryzen 5 3400G | 0.0% | 64.0% | 59.6 fps |
Ryzen 3 3200G | 0.0% | 93.0% | 83.0 fps | |
Ryzen 5 3500 | 0.5% | 5.2% | 74.5 fps | |
Core i3 9100F | 0.4% | 78.3% | 110.2 fps | |
60 fps | Ryzen 5 3400G | 2.1% | 4.4% | 57.6 fps |
Ryzen 3 3200G | 0.0% | 85.2% | 57.0 fps | |
Ryzen 5 3500 | 0.4% | 13.5% | 60.0 fps | |
Core i3 9100F | 0.0% | 74.1% | 57.8 fps |
4コア4スレッドはほぼ全部コマ落ちでまったく配信できません。4コア8スレッド以上でギリギリ5%未満で安定しますが、シーンによってはすぐにコマ落ちする可能性が高いです。4コアCPUでゲーム配信は厳しいです。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。
7-Zip Benchmark / 圧縮
「圧縮」は第2世代Ryzenにとって不得意で、結果からも性能がうまく出せていない様子が伝わってきます。
7-Zip Benchmark / 解凍
逆に「解凍」は初代からRyzenの得意とする処理で、きちんとマルチスレッド性能どおりの結果です。
ブラウザの処理速度
ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUがブラウザ上のWebアプリをどれだけ速く処理できるかを検証する。単位はミリ秒なので、短いほど処理が速いです。
Mozilla Kraken 1.1 / ブラウザの処理速度
Ryzen 5 3400Gはギリギリ1000 ミリ秒をクリア、Ryzen 3 3200Gは1000 ミリ秒にすら届かず、お世辞にも速いとは言えない結果です。おおむね、シングルスレッド性能の遅さが原因ですね。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Photoshop CC」を検証。バッチファイルを使って実際にPhotoshopを動かして、それぞれの処理に掛かった時間からスコアを算出します。
Photoshop CC / 総合的な処理性能
Ryzen 5 3400G、Ryzen 3 3200GともにPhotoshopの処理は速くないです。遅いシングルスレッド性能が災いして、4コア4スレッドのCore i3 9100Fにすら劣る結果に。
CPU | Ryzen 5 3400G | Ryzen 3 3200G | Ryzen 5 3500 | Core i3 9100F |
---|---|---|---|---|
総合スコア | 689.8 | 668.8 | 809.6 | 748 |
一般処理のスコア | 61.4 | 60.6 | 71.9 | 69.4 |
フィルタ系のスコア | 72.7 | 68.5 | 82.8 | 75 |
Photomergeのスコア | 76.7 | 76.2 | 95.4 | 85.2 |
GPUスコア | 75.9 | 73.6 | 88.5 | 82.5 |
テストの詳細結果 | ||||
RAW画像の展開 | 4.35 | 4.3 | 2.87 | 3 |
500MBへのリサイズ | 1.6 | 1.5 | 1.3 | 1.29 |
回転 | 1.88 | 1.76 | 1.29 | 1.24 |
自動選択 | 18.75 | 18.61 | 16.41 | 18.16 |
マスク | 5.88 | 5.86 | 5.11 | 4.66 |
バケツ | 3.08 | 3.12 | 2.64 | 2.92 |
グラデーション | 0.47 | 0.55 | 0.52 | 0.56 |
塗りつぶし | 17.27 | 18.45 | 14.36 | 17.65 |
PSD保存 | 9.48 | 9.45 | 8.78 | 9.36 |
PSD展開 | 3.55 | 3.66 | 3.09 | 2.98 |
Camera Raw フィルタ | 8.91 | 8.92 | 6.78 | 8.03 |
レンズ補正フィルター | 18.11 | 18.78 | 16.59 | 16.92 |
ノイズ除去 | 21.57 | 24.81 | 21.84 | 25.02 |
スマートシャーペン | 33.08 | 38.83 | 26.92 | 31.89 |
フィールドぼかし | 18.6 | 18.61 | 16.5 | 17.23 |
チルトシフトぼかし | 18.82 | 19.54 | 16.48 | 18.08 |
虹彩絞りぼかし | 20.49 | 22.15 | 18.59 | 20.56 |
広角補正フィルター | 24.68 | 25.55 | 20.61 | 23.77 |
ゆがみツール(Liquify) | 13.15 | 13.81 | 11.26 | 11.97 |
Photomerge(2200万画素) | 102.11 | 104.57 | 85.9 | 91.02 |
Photomerge(4500万画素) | 140.47 | 138.95 | 108.09 | 127.89 |
※「Puget Systems Adobe Photoshop CC Benchmark」を使用しました。
Microsoft Office
PCMark 8を使って、Microsoft Officeの処理速度を計測します。オフィスソフトはマルチスレッドよりシングルスレッド依存のタスクになるため、傾向として第2世代RyzenであるRyzen 5 3400G / Ryzen 3 3200Gと相性が悪いです。
Microsoft Word / 平均処理時間
予想通り、シングルスレッドが遅いRyzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gは、Core i3 9100Fに対して20%もWordの処理が遅いです。
Microsoft Excel / 平均処理時間
Excelではさらに差が開きます。
Microsoft PowerPoint / 平均処理時間
PowerPointでは、若干マルチスレッド性能が効いているのか、全体的に性能差は縮小しました。
ビデオチャット(VC)の処理性能
コロナウイルスの流行によって、テレワーク(在宅勤務)の導入が進んでいます。ビデオ会議に使われるビデオチャット(VC)ソフトも出番が増えてきたため、前回のCPUレビューより「ビデオチャットの性能」を検証に加えています。
検証方法は「PCMark 10」のビデオチャットテストを使います。内容はビデオチャットを再生したときのフレームレート、顔認識の処理速度、エンコード(アバター着用など)の処理速度などが含まれ、総合スコアを算出できます。
PCMark 10 / ビデオチャットの性能
ビデオチャットの総合的な性能は、マルチスレッド性能にそった結果です。テストの中で顔認識はもっともマルチスレッド性能が重視され、8スレッドのRyzen 5 3400Gが割と健闘しています。
PCMark 10 / ビデオチャットの快適度
顔認識やアバター着用など複雑なタスクをせず、ただ再生するだけなら性能は頭打ちです。
「IPC」でCPUの真の進化をチェック
最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。
方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz
グラフを見て分かるとおり、IPC(クロックあたりの処理性能)は新しい世代のCPUほど高速化します。Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gが、シングルスレッド依存のタスクで効率よく処理できないのは、このIPCの低さも大きな原因のひとつです。
汎用性の高い性能を求めるなら、現在もっともIPCが高い第3世代Ryzen(Zen2)を選んだほうが無難でしょうね。
内蔵グラフィックスの性能
搭載されている内蔵グラフィックスチップはそれぞれ、Ryzen 5 3400Gが「Radeon RX Vega 11」、Ryzen 3 3200Gは「Radeon RX Vega 8」です。後ろの数字が大きいほど、シェーダーユニット(コア)数と動作クロック周波数が高く、より高性能に。
GPU | Radeon RX Vega 11 | Radeon RX Vega 8 | GeForce GT 1030 |
---|---|---|---|
コア数 | 704 | 512 | 384 |
GPUクロック | 1400 MHz | 1250 MHz | 1468 MHz |
VRAM | メインメモリと共有 | GDDR5 2GB | |
理論性能 | 1.971 TFLOPS | 1.280 TFLOPS | 1.127 TFLOPS |
外付けグラボで格安な「GT 1030」と比較すると、Radeon RX Vegaの性能はスペック上ではGT 1030を上回っています。ただし、メモリはGT 1030が専用のGDDR5を2 GB搭載するのに対し、Radeon RX Vegaはメインメモリを共有する仕様です。
だからメインメモリ側の性能次第で、グラフィックス性能は大きく左右されます。今回は性能差を分かりやすく出すため、定格でそのまま使った場合と、GPUクロックとメモリクロックをオーバークロックした場合の性能をテストしました。
- メモリ:DDR4-2666 → DDR4-3200(CL14)
- RX Vega 11:1400 → 1645 MHz(1200 mV)
- RX Vega 8:1250 → 1668 MHz(1200 mV)
オーバークロックの設定は以上のとおり。検証に使ったRadeonドライバは「Adrenalin 2020 Edition 20.4.2」です。
3DMark FireStrike
3DMark FireStrike 1920 x 1080 / Graphics Score |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
3DMarkのフルHD向けベンチマーク「FireStrike」で、グラボの性能をスコア化して、ざっくりした傾向を確認します。すると、意外と内蔵グラフィックスである「Radeon RX Vega」のパワフルさにビックリさせられます。
内蔵グラフィックスでありながら、性能はGT 1030に匹敵するほどで、オーバークロックを施すとGT 1030を明確に超えるスコアです。では実際のゲームでどうなるのか、軽めのゲームでチェックします。
CS : GO
Counter Strike : Global Offensive1920 x 1080 / 最高設定 / Dust II |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
CS:GOはマップ「Dust II」にて検証です。最高画質でも平均60 fpsは余裕でクリアしていて、内蔵グラフィックスでFPSゲームがプレイできてしまいます。
FF14
FF14 : 漆黒のヴィランズ 1920 x 1080 / 標準設定(デスクトップPC) |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
FF14(漆黒の反逆者)ベンチマークは、GT 1030が圧倒的です。
Minecraft
Minecraft 1.14.4 1920 x 1080 / 描画チャンク : 12 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
マインクラフト1.14.4を、建築物が盛りだくさんな「MAIKURA CITY 2.0」にて検証。バニラ + Optifineなら、余裕で100 fps超えでスムーズに動きます。
Minecraft 1.14.4 & SEUS Renew 1920 x 1080 / 描画チャンク : 12 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
高画質な影MOD「SEUS Renew」を入れると、一気に重たい動作に。カクカクとして酔いやすい動作で、GT 1030ですらマトモに動きません。
平均パフォーマンス
平均フレームレート 1920 x 1080 / 内蔵グラフィックスの性能 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Ryzen APUに搭載されている「Radeon RX Vega」は、内蔵グラフィックスとしてはトップクラスの性能です。CS:GOやマイクラなど、軽いゲームならフルHDで60 fps以上は問題ありません。
一方で、FF14くらいのグラフィックだとフルHDで動作するのは困難で、HD(1280 x 720)に落とす必要があります。そして、メモリクロックに大きく性能を左右されるので、可能であればDDR4-2933以上が欲しいです。
ただ、高クロックで動作するメモリほど値段も張るため、ハイエンドなOCメモリにお金を掛けるくらいならグラフィックボードにコストを掛けたほうが・・・コスパは良いでしょう。
ゲーミング性能の違いを検証
ゲーミングで高いフレームレートを出すためには、グラフィックボードが一番重要。ですが、グラフィックボードが高性能であればあるほど、CPUに求められる性能も高くなります。
現時点で最強のグラボである「RTX 2080 Ti」を使って、FF14:漆黒の反逆者ベンチマークを実行してみると、同じグラボなのに実際の性能はかなり違っているのが分かります。
これが「CPUボトルネック」と呼ばれる現象です。では、Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gが、RTX 2080 Tiの性能をどこまで引き出せるのかを検証していく。
Apex Legend
Apex Legends1920 x 1080 / 最高設定 / 射撃訓練 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Apex Legendは比較的ボトルネックの出づらいゲーム、ですが出てきた結果を見る限り第2世代RyzenだとRTX 2080 Tiの足を引っ張ってますね。
Battlefield V
Battlefield V 1920 x 1080 / 最高設定(DX11) / 最後の虎 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Battlefiled VはCPU負荷がかなり大きいゲームです。そもそも4コアだと厳しいのに、シングルスレッド性能の不足が性能低下にさらに拍車を掛けてしまいます。
CS : GO
Counter Strike : Global Offensive1920 x 1080 / 最高設定 / Dust II |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
CS:GOのような動作の軽いゲームでも、ボトルネックの存在はハッキリと確認できます。
Call of Duty : Black Ops IV
Call of Duty : Black Ops IV1920 x 1080 / 最高設定 / Contraband |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
コールオブデューティーはマップ「Contraband」で計測。尋常ならざる異様なCPU負荷を誇るゲームで、マルチスレッド性能もそれなりに必要です。4コア4スレッドのRyzen 3 3200Gは完全にヘタってしまい、8スレッドのRyzen 5 3400Gでようやくいい感じ。
Fortnite : Battle Royale
Fortnite : Battle Royale1920 x 1080 / 最高設定 / ミスティ・メドウズ |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
フォートナイトは「ミスティ・メドウズ」にて計測。シングルスレッド性能の差が面白いほど分かりやすく出てます。
Overwatch
Overwatch 1920 x 1080 / エピック設定(100%) / 練習場 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
オーバーウォッチはそれほど重たいゲームではないですが、高フレームレートになるとCPUの性能差が出ています。
PUBG
PUBG1920 x 1080 / ウルトラ設定 / 練習場 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
PUBGもインテルCPUや第3世代Ryzenが有利です。エイムを激しくふった時のフレームレートの急落も体感できるほどで、ガチゲーマーにオススメ不可です。
Rainbow Six Siege
Rainbow Six Siege 1920 x 1080 / 最高設定 / ファベーラ |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
レインボーシックスシージは「ファベーラ」にて計測しました。データが集まってきて判明してきた事実ですが、レインボーシックスシージはRyzenでも意外と性能が出やすいゲームですね。
ARK Survival Evolve
ARK Survival Evolve 1920 x 1080 / 高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
じわじわと日本国内でも人気が出てきたARK Survival Evolveをテスト。最高設定はあまりにも重たすぎて非現実的なので、ひとつ下の高設定でテストします。
結果はかなりのインテル有利で、Core i3 9100FがRyzen 5 3400Gに対して2倍近い性能差を叩き出しました。
FF14
FF14 : 漆黒のヴィランズ 1920 x 1080 / 最高品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
FF14(漆黒の反逆者)ベンチマークもARK Survival Evolveと同じで、インテルCPUが伸びやすいです。平均ではRyzen 5 3500すら超えて、Core i3 9100Fが首位に。
Shadow of the Tomb Raider
Shadow of the Tomb Raider 1920 x 1080 / 最高設定(SMAA / DX11) |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
FF14と同じくスクエニが制作した「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」も、傾向はそれほど変わりません。第3世代RyzenのRyzen 5 3500ですら苦戦しているので、性能の問題以上に「最適化の壁」が大きいです。
モンスターハンターワールド
Monster Hunter World1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
モンスターハンターワールドはRyzen 5 3400Gがギリギリ60 fps、Ryzen 3 3200Gは60 fpsすら超えられない結果に。
黒い砂漠
黒い砂漠 1920 x 1080 / リマスター品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
黒い砂漠は、無料MMORPGとして世界最高峰のグラフィックを誇るタイトルです。その割には、ソフトの最適化は依然としてイマイチなまま。
平均パフォーマンス
平均フレームレート 1920 x 1080 / RTX 2080 Tiに対して |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
ここまでの検証結果を平均パフォーマンスとしてまとめました。
平均パフォーマンスを見ると、思った以上にCore i3 9100F(4コア)が大活躍です。Ryzen 5 3400Gと比較して約24%、Ryzen 3 3200Gに対しては約35%も高いフレームレートを、RTX 2080 Tiから引き出しました。
ただし、Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gは、内蔵グラフィックスが統合された「APU」です。想定されているユーザーのニーズや用途がかなり違うため、一概にRyzen APUがダメというわけではありません。
外付けグラボを使ったゲーミングPCを組むなら「Core i3 9100F」や「Ryzen 5 3500」が向いていて、普段使いやちょっとしたゲームができる小型パソコンに使うなら「Ryzen 5 3400G」と「Ryzen 3 3200G」が有利です。
消費電力とオーバークロック
CPUの消費電力といえば、まず頭に浮かぶのは「TDP」です。しかし、TDPはあくまでも「これくらいの発熱量があるから、発熱量に対応したCPUクーラーを使ってね。」という意味合いの方が強く、イコール消費電力ではない※。
よって本レビューでは電力ロガー機能のついた電源ユニットを使って、CPU本体の実際の消費電力を計測します。たとえば、電源ユニットから100 Wの電力が供給されていれば、CPUの消費電力は約100 Wと判断できます。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
電源ユニットを2台使ってCPUとそれ以外のパーツで供給を完全に分割しているため、CPUに給電している電源ユニットの計測値を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。
※半導体の場合は、TDPと消費電力は一致しやすいので「だいたい同じ」と思ってもOKですが、最近はマザーボードによって消費電力が大きく変わることも少なくないので注意。
消費電力とワットパフォーマンス
消費電力は、Handbrakeで「Fast 1080p(x264)」プリセットでエンコードしながら測定します。10コア20スレッドCPUまでなら、この方法でCPU使用率は常時100%に張り付き、CPU本体の消費電力をほぼフルに引き出せます。
消費電力(+12Vレールの実測値)
消費電力はRyzen 5 3400Gで平均76 W、Ryzen 3 3200Gは平均59 Wです。Ryzen 5 3500が約59 Wで間に合っているので、第2世代Ryzenの電力効率は今となってはイマイチな感が否定できません。
ワットパフォーマンス(動画エンコード時)
1ワットあたりの動画エンコード速度(= ワットパフォーマンス)を求めると、Ryzen 5 3500に勝てないのは当然としても、Core i3 9100Fにも劣るのは意外です。
とはいえ、AMD製品の傾向は電圧のマージンが大きすぎる※こと。後ほど紹介する「低電圧化」でどこまで消費電力を効率化できるのか、検証します。
※初期設定だとしばしば「そんな電圧掛けてて大丈夫か?」と、心配になるほど高い電圧が設定されている場合がものすごく多い。
CPU温度はそこそこ大人しい
CPU温度(中央値)
消費電力が高いので、CPU温度もそれなりに高くなりました。Ryzen 5 3400Gは中央値で65.7℃、Ryzen 3 3200Gは65℃です。虎徹Mark IIで65℃前後だと、AMD付属の純正CPUクーラーだとちょっと心配かも。
オーバークロックと「低電圧化」
Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gは、手動オーバークロックに対応しています。
- オーバークロック:クロック周波数を引き上げて性能アップを目指す
- 低電圧化:性能はそのままに、電圧だけを下げて消費電力(温度)を下げる
自分で好きなクロック周波数、CPUコア電圧を設定できるので、オーバークロックと低電圧化を検証してみます。
Ryzen 5 3400Gの検証結果※クリックで拡大します | |
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一番上が4.15 GHzにオーバークロックした場合で、一番下が3.75 GHz(電圧は1.100 V)に低電圧化した場合の結果です。分かりやすく表にまとめます。
クロック | コア電圧 | 最大温度 | 消費電力 | エンコード速度Handbrake Fast 1080p | 効率ワットパフォーマンス |
---|---|---|---|---|---|
Auto | Auto | 66.1 ℃ | 75.7 W | 29.8 fps | 0.39 fps |
4.15 GHz | 1.550 V | 78.9 ℃ | 105.3 W | 32.8 fps | 0.31 fps |
3.85 GHz | 1.300 V | 60.8 ℃ | 67.6 W | 30.6 fps | 0.45 fps |
3.80 GHz | 1.225 V | 56.6 ℃ | 60.1 W | 30.4 fps | 0.51 fps |
3.75 GHz | 1.100 V | 50.5 ℃ | 48.4 W | 29.9 fps | 0.62 fps |
オーバークロックは4.15 GHzまで行けましたが、ハッキリ言って消費電力の割に性能の伸びが悪いので、メリットは薄いです。一方で「低電圧化」は温度も消費電力もグングン下がるのに、性能は定格クロックとほとんど変わりません。
約76 Wあった消費電力は約48 Wにまで抑えられ、熱の処理が難しい小型PCケースでも安全に使えるように改善。やはりRyzenは低電圧化が美味しいですね。同様の流れでRyzen 3 3200Gもテストしましょう。
Ryzen 3 3200Gの検証結果※クリックで拡大します | |
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一番上が4.15 GHzにオーバークロックした場合で、一番下が3.75 GHz(電圧は1.100 V)に低電圧化した場合の結果です。こちらも表にまとめます。
クロック | コア電圧 | 最大温度 | 消費電力 | エンコード速度Handbrake Fast 1080p | 効率ワットパフォーマンス |
---|---|---|---|---|---|
Auto | Auto | 65.0 ℃ | 58.6 W | 22.4 fps | 0.38 fps |
4.15 GHz | 1.550 V | 89.5 ℃ | 81.5 W | 25.1 fps | 0.31 fps |
3.80 GHz | 1.225 V | 58.9 ℃ | 41.0 W | 22.5 fps | 0.55 fps |
3.75 GHz | 1.100 V | 55.5 ℃ | 36.4 W | 22.5 fps | 0.62 fps |
オーバークロックは同じですね、ほとんどメリットがないです。低電圧化も同じで、やはり効果てきめん。約59 Wあった消費電力を、わずか36 Wに鎮めることに成功。36 WならAMD付属クーラーで余裕で冷やせます。
他のメーカーが販売している薄型で小型なCPUクーラーも大丈夫です。
内蔵グラフィックス使用時の消費電力
FF14(漆黒のヴィランズ)ベンチマークを、内蔵グラフィックスでテストした時のCPU温度と消費電力です。
内蔵GPU | CPU温度最大値 | CPU温度中央値 | 消費電力平均値 |
---|---|---|---|
RX Vega 111645 MHz @1.2V | 65.8 ℃ | 51.9 ℃ | 75.0 W |
RX Vega 11 | 51.9 ℃ | 43.4 ℃ | 52.7 W |
RX Vega 81668 MHz @1.2V | 69.8 ℃ | 58.8 ℃ | 68.7 W |
RX Vega 8 | 54.5 ℃ | 49.6 ℃ | 46.3 W |
定格だとせいぜい50 W前後で、特に問題ありません。GPUクロックを大幅にオーバークロックすると、75 Wまで跳ね上がり、CPU温度は15℃くらい上昇します。虎徹Mark IIなら、まだ余裕の範囲ですがAMD付属クーラーだと苦しいかも。
まとめ:パワフルな超小型PCに組むならアリ
正直に言うと、CPUの性能には第3世代Ryzenに慣れたせいで少々ガッカリです。一方で、内蔵グラフィックスの性能には素直に驚きました。思わず「最高設定のCSGOが余裕で動くじゃんコレ・・・」と、感想が口から溢れる程度にはビックリです。
しかし、やはりCPU性能には不足を感じざるを得ないので、普通の自作パソコンだと使いにくいです。逆に、グラフィックボードすら入らないほどの超小型パソコンで使うなら、これほどの適任者は無いでしょう。
「Ryzen 5 3400G & 3 3200G」のデメリットと弱点
- 限定的で効率の悪いオーバークロック
- 内蔵GPUの性能はメモリクロックの影響大
- ゲーミング性能が低い
- デフォルト設定だと消費電力がやや大きい
3000番台とはいえ、中身は第2世代です。デフォルト設定だとCPU電圧がやたらと高く、ムダに消費電力が出ています。「低電圧化」を施すと一気に改善はするものの、低電圧化も一応はオーバークロックの一種です。
オーバークロックといえば、メモリもそうです。Ryzen APUの内蔵グラフィックスは、VRAMをメインメモリと共有するので、メモリクロックの影響をモロに受けます。GPU本体のオーバークロックより、メモリのオーバークロックの方が効果は大きいほどです。
かといって、高品質なオーバークロックメモリは決しては安くはないです。必然的にコストパフォーマンスは悪化するため、どこまでメモリクロックを引っ張るか、引き際が重要です。
「Ryzen 5 3400G & 3 3200G」のメリットと強み
- 普段使いには行けるCPU性能
- 「低電圧化」で化けるワットパフォーマンス
- そこそこ大人しいCPU温度
- 極めて高性能な内蔵グラフィックス
- 超小型パソコンと相性よし
- コストパフォーマンスはいい
第3世代Ryzenと比較すると見劣りするとはいえ、3~4年前のCore i5 / i7クラスに近いCPU性能です。オフィスソフト、ブラウジング、軽いブラウザゲームや3Dゲーム程度ならAPU単体で難なくこなしてしまいます。
内蔵グラフィックスはデスクトップ向けCPUの中では、今でも最高クラスの性能で、これ以上の内蔵GPUを求めるのはほぼ不可能です(※過去RX Vega MなんてGPUはあったが)。CSGOを軽々と動かし、フォートナイトやPUBGは、720p(低画質)ならプレイできます。
とにかくRyzen APU最大のメリットは、CPU(APU)単体で割となんでも出来てしまう、万能な性能です。低電圧化で消費電力を大幅にカットも可能なので、グラボすら入らない「超小型」なPCケースで、そこそこの性能のパソコンを組むのにベストです。
逆にグラボが入る程度のPCケース(Mini-ITXなど)なら、Core i3 + GT 1030など。もっと効率よく高性能を目指せるので、わざわざRyzen APUを選ぶメリットがなくなってしまいます。
というわけで、筆者の個人的な評価は「Aランク」で決まり。
超小型なPCケースで使うなら、ベアボーンキットに搭載するなら・・・などなど条件付きで一気に魅力が増すタイプのCPUなので、万人向けを意味する「A+」以上は厳しいです。
以上「Ryzen 5 3400G & Ryzen 3 3200Gをレビュー:超小型PCで魅力が爆発するAPU」でした。
Ryzen APU採用おすすめBTOは?
ここで定番メーカーのドスパラを紹介しても面白くないので、Ryzen APUの魅力がフルに活用された「超小型」なBTOモデルをいくつか紹介します。
Ryzen 5 3400GのTDP 35ワット版「Ryzen 5 PRO 3400GE」を搭載する、もっとも興味深いBTOモデルが「ThinkCentre M75q-1 Tiny」です。
TDPが35 Wに抑えられているため、性能は少し控えめ。それでも容量たった1.1リットルの超小型な筐体に、35ワット版とはいえRyzen 5 3400Gを詰め込んでるのは面白いです。
カスタマイズから、WiFiモジュール、M.2 SSD(NVMe)、メモリの増設等も可能です。
カスタマイズ表を見ていくと割とボッタクリ価格な部分が多いので、削れそうなところを削って、あとから自分で増設する形にするとコスパがすごいです。たとえばSSDを128 GBに減らすと、いきなり12000円も浮くので、差額で1 TBのSSDをセルフ増設できます。
価格が安い「特価版」をレビューしました。約3.2万円で、Ryzen 5 3400Gとほぼ同等の「Ryzen 5 Pro 3400GE」を搭載する、極めてコストパフォーマンスの高いモデルです。
ドスパラを紹介しないと言いつつも、ふと商品ページを見ているとASRockのベアボーンキット「DeskMini A300」を使ったBTOモデルを見つけたので、掲載しておきます。コストパフォーマンスは正直、妥当なラインですね。
DeskMini A300がベースなら、自分でベアボーンキットとRyzen APUを購入して組み上げた方がいいかもしれません。
APUが9100Fより低いアイドル消費電力を記録しているのは素晴らしい
同じVegaでも、APU単体とAPU+単体Vegaだと発色が違います。
いわゆるRadeonらしい色は単体Vegaのほうで、
APUのほうは気持ち色味が白けています。これは興味深い差です。
次期APUとしては8C16T +Vega20のRyzen7 APUの噂もありますし、
SoCに目を向ければAMDとSamsunの協業でRadeon内蔵SoC開発の噂もあります。
どちらも楽しみです。
> 同じVegaでも、APU単体とAPU+単体Vegaだと発色が違います。
この手の話ではGeForceとRadeonでも「色の鮮やかさ」が違う、とよく言われているので、近いうちに「分光測色計」を使って測定してみようと思います。
Ryzen 3 3300X・3100どころか、Zen2アーキテクチャのデスクトップAPU、Ryzen4000Gシリーズが控えているので尚更勧めにくいと思います。
Renoirは最大8コアのZen2を搭載ですからね・・・現行のRyzen APUは、ホントに超小型パソコン向けなCPUだと思ってます。
APUでも古井戸動くのかな?
ThinkCentre M75q-1に搭載されているのは、「Ryzen 5 (Pro) 3400GE」と少し型番が違い、TDPも3400Gは65Wなのに対し3400GEは35Wと低いものが搭載されていますが、この記事の書き方だと誤解を招くような…
実際このLenovoのBTO機を使用しているんですが、上記の3400Gでのベンチマーク結果より少し劣る結果を出しています。(当方の環境はCinebench R15 マルチコアで750cbです)
M75q-1付属のACアダプタは65Wですが
135WのACアダプタにすると、まるでリミッタが解除されたかのように性能UPします
ただそれでも3500Gには及ばないかと思いますが
ホントですね・・・スペック表をよく見ると、3400GEですね。追記しておきます。
なお、ThinkCentre M75q-1は自分で買ってしまったので、Comet LakeとZ490のレビューが落ち着いたら記事を出す予定です。
3400G値下がりしないよなー
2400Gが一萬以下で買えてたから4000代きたら3400も一万きるかな
でも、4000代は古井戸切られるだろうし、3400は貴重になるかもしれない
古井戸はいよいよ終わりそうなので、「madVR」の出番ですね・・・。
4000番台だとやっぱ古井戸切られるのかぁ
Radeon唯一の利点なのに
Navi積めはずだから切られるかと
https://www.techpowerup.com/266877/amd-ryzen-7-4700g-is-renoir-desktop-am4-processor-8-core-16-thread-with-vega-igpu
この情報だと「The iGPU is a hybrid between “Vega” and “Navi.”」
って書いてますね
元々2200Gと2400Gとの差が誤差の置き換え製品ですからね~
というか何故今頃という感もw
ブル系APUにdGPU載せるよりはまだグラボの性能引き出せるだけいいですよ(;^ω^)
あれはほんと酷かった…
> というか何故今頃という感もw
Zen2のAPUが出るらしいので、それに向けて比較用のデータを用意しておいた。という感じです。
9千円で買えるi3よりマルチもシングルもゲームもぱっとしないので割り切って使う感じですね。
Zen2ベース化が必須ですね。
ベアボーンで3400G考えてた自分には丁度いい記事です
ただタイミング的にさっさと買うべきか4400Gを待って値下がりを狙うか、4400Gを買うべきか悩ましい所
3400Gでベアボーン狙いなら
LenovoのThinkCenter M75q-1 Tynyも検討すべきかと
https://www.lenovo.com/jp/ja/kakaku/desktops/thinkcentre/m-series-tiny/ThinkCentre-M75q-1/p/11TC1MTM73Q?vc_lpp=MSY0ZDcxN2RhOTZhJjVlYzU0ODJiJmRhJjVmMTQ2MjJiJkFBQUJjaktoNk9FYlVqTHl5dHFvR05XQSY0CUFBQUJjaktoNk9FYlVqTHl5dHFvR05XQQkwODc4ODc5MDgwMDIwOTYwNjAyMDA1MjAxNTA5MzEJCQk&cid=jp%3Aaffiliate%3Ag2ospo
直販モデルの価格.com限定パフォーマンスモデル
価格が気が狂ったように安いです(笑
ryzen 3 3200Gを使ったdavinchi resolve使おうと思いましたがキツそうですね。
素直にそこそこのCPUとグラボの組み合わせが無難でしょうか。
ryzen4000シリーズが出たら「完全にいらない子」。
これからどれだけ値崩れするのか楽しみなCPUですね。