インテルの新チップセット「Z370」「H370」「B360」の違いを徹底解説




インテルは長らくCoffee Lake向けのチップセットとして「Z370」しか解禁していなかったが、PentiumやCeleronの投入に合わせて廉価版の「H370」「B360」など。Coffee Lake向けのチップセット(Intel 300シリーズ)がようやく登場しました。

H370やB360は、Z370と比較して何が違うのか。まとめてみたいと思います。

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Intel 300シリーズの仕様表

「Coffee Lake世代」向けのチップセットは「Intel 300」シリーズです。当初はZ370の1種類だけだったが、2018年4月3日に残りの4種類が市場に投入された。

  • Z370:ハイエンド仕様、ゲーマー向け
  • H370:ミドルクラス仕様、一般向け
  • B360:廉価版、コスパ重視モデル
  • Q370:エンタープライズ仕様、サーバー向け
  • H310:組み込み機器向け

一般向けに流通するCoffee Lake対応マザーボードのほぼ全てが「Z370」「H370」「B360」の3種類になる。

Intel Chipset 「300」シリーズ
チップセットZ370Q370H370B360H310
バス速度8GT/s DMI35GT/s DMI2
TDP6W
価格※$ 47不明
オーバークロック可能不可
メモリOC可能不可
組み込み機器非対応対応非対応対応
メモリチャネルx2x1
出力ディスプレイ最大3枚最大2枚
汎用PCIe Ver3.02.0
PCIe構成x1 / x2 / x4
汎用PCIe24レーン20レーン12レーン6レーン
最大USB数14個12個10個
USB 3.1 Gen 26個まで4個まで
USB 3.1 Gen 110個まで8個まで6個まで4個まで
USB 3.010個まで
USB 2.014個まで12個まで10個まで
SATAポートx6
対応RAIDPCIe 0 / 1 / 5PCIe 0 / 1 / 5
SATA 0 / 1 / 5 / 10SATA 0 / 1 / 5 / 10
LAN内蔵
WiFiなし内蔵
PCIe VerPCIe 3.0
PCIe構成1×161×16
2×8
1×8 + 2×4
Optane対応非対応
IRST対応
IRST PCIe対応

※1000単位ごとの販売価格。希望小売価格ではない。

インテルのデータシート(Intel ARK)より、ザックリと仕様をまとめた。

前提としてチップセットが違うくらいで、パソコンの処理性能が変わることはほとんど無いです。世代違いならバス帯域幅が違うため、ストレージの転送速度が理論通りのスピードに達しないなどの性能差はあるかもしれません。

しかし、基本的に同じ世代のチップセット間なら体感できるほどの性能差はまず出ない。もっとも大きな違いは「機能」です。例えばZ370は「USB 3.1 Gen2」をサポートしていないけれど、H370ならネイティブサポートしている…という具合に。

というわけで、仕様表を見ても違いが分かりにくいと思うので、以下に「要点」をザーッと挙げていきますね。

違いその1:オーバークロックの対応

インテルのCPUは「倍率ロックフリー版」(いわゆるK付きやX版)なら、簡単にオーバークロックが可能です。しかし、マザーボードに搭載されているチップセットが対応していなければ使えない。

  • Z370:オーバークロック可能
  • H370:不可能
  • B360:不可能

中間に位置するH370ですら、オーバークロックはサポートされていないので注意が必要です。基本的にオーバークロックは「Z」の付いたチップセットじゃないと出来ないと覚えておけばいいかと。

H97という例外

Haswell世代の頃は、ASUSとASRockが独自に「H97」でもオーバークロックが可能なマザーボードを販売していました。しかしIntel 100シリーズ以降は、そのようなマザーボードの存在を見ていない。

まぁ…インテル側から見ると、「OC可能なチップセット」という住み分けをしているのに、マザーボードメーカーにそれを台無しにされては面白くない…といったところでしょうか。

追記1:メモリのオーバークロック対応

チップセットZ370H370B360
メモリOC対応不可
サポート周波数4000 MHz以上2666 MHz

コメントより「メモリのオーバークロックも仕様が違う。」と指摘されて、各社マザーボードのスペック表を確認したところ…。確かにサポートされているメモリのクロック周波数が違ったのでまとめました。

「Z370」は4000 MHzを超えるメモリのオーバークロックに対応していますが、H370 / B360は最大2666 MHzが上限。Intel XMPを使った定格範囲内の変更しか効かず、自由度の高いオーバークロックは不可能。

追記2:「Multicore Enhancement」の有無

同様にコメントより指摘を受けて調べました。MultiCore Enhancement(略:MCE)は、チップセット側に依存する機能ではなく、マザーボード側が用意している機能のようでした。

H370 / B360のマザーボードにはMCE(All Core Sync)を有効化できず、逆にZ370マザーボードでは利用可能。という違い。オーバークロックを利用した機能なので、OCが封印されているH370 / B360は使用不可能です。

Cinebench R15 / マルチスレッド性能

  • i7 8700 + B360
    1312
  • i7 8700 + Z370
    1311
  • i5 8400 + B360
    870
  • i5 8400 + Z370
    868

なお、MCEの有無で性能が大きく変化することはありません。最初からAll Core Syncが有効化されているマザーボードなら性能に違いが出ると思いますが、基本的に初期設定では無効化されているので性能差は出ない。

違いその2:汎用PCI Expressレーン数

PCIeを4レーン消費する「NVMe SSD」

グラフィックボード以外のPCI Expressを経由するハードウェアを使う場合に必要。たとえば、SATA SSDの約4~5倍も高速な転送速度で知られるNVMe SSDは、この汎用PCIeレーンを4本占有する。

  • Z370:24レーン
  • H370:20レーン
  • B360:12レーン

NVMe SSDや、キャプチャボード、サウンドカード、インターフェイス類の拡張ボード(USB 3.0やSATAコネクタ)を大量に接続するつもりなら、この汎用レーン数は気にしたほうが良い。

PCIeを1レーン消費する「Elgato Game Capture HD60 Pro

逆にNVMe SSDを1枚とサウンドカード1枚くらいしか使う予定がないなら、B360の12レーンで十分事足りますし、H370の20レーンなら不足することはほとんど無いだろう。

参考:拡張ボードが消費するレーン数の例

  • LANカード(10Gbps対応):4レーン
  • LANカード(1Gbps対応):1レーン
  • RAIDカード(12Gbps対応):8レーン
  • SASカード(最大256 SAS/SATA):8レーン
  • HBA(最大1024 SAS/SATA):16レーン
  • USB 3.0カード:1レーン
  • サウンドカード:1レーン
  • キャプチャボード(1080p):1レーン
  • キャプチャボード(4K):4レーン

インテルの一般向けチップセット環境で「SASカード」やら「HBA」を使う人は、恐らくいないと思いますが。一応載せておきました。

というわけで、普通の使い方やゲーミング程度を想定するならB360の12レーンで問題ないですね。

違いその3:使えるUSBポートの数

チップセットZ370H370B360
最大USBポート数14個14個12個
USB 3.1 Gen 24個まで4個まで
USB 3.1 Gen 1※8個まで6個まで
USB 3.0※10個まで
USB 2.014個まで14個まで12個まで

※ USB 3.0はUSB 3.1 Gen 1とほぼ同義。

実際に搭載されるUSBポートはマザーボードによって変わってくるが、チップセットが対応しているUSBポートの種類と数はこの表の通り。Z370は最大14個のUSBポートを搭載可能で、USB 3.0を最大で10個、USB 2.0を最大14個。

MSI Z370 GAMING PLUSのスペック表

MSI Z370 GAMING PLUSの場合は「USB 3.0を8個」「USB 2.0を6個」で、合計14個のUSBポートを備える。

H370も同様に、最大14個まで。しかし内容が若干アップグレードされています。Z370はUSB 3.1 Gen 2(Gen 1の2倍の速度)をサポートしていないが、H370やB360はしっかりとサポートしている。

ASRockは「ASMedia」製のUSB 3.1 Gen 2を多用する。

Z370のマザーボードでUSB 3.1 Gen 2を使うには、マザーボードメーカーが別のチップを取り付けたり(例:ASMediaなど)、ユーザー側がUSB 3.1 Gen 2対応の拡張カードを使う必要がありました。

しかしH370 / B360は最初からサポートしているので、そういった手間を必要とせずにUSB 3.1 Gen 2が使えるように。

USBの転送速度

  • USB 2.0:最大640 Mbps
  • USB 3.0:最大5 Gbps
  • USB 3.1 Gen 1:最大5 Gbps
  • USB 3.1 Gen 2:最大10 Gbps

今のところUSB 3.1 Gen 2が必要になりそうな、USBデバイスはまだまだ少なそうです。USB 3.1 Gen 1でも、SATA 3(6Gbps)に近い帯域があるので、十分間に合っている感はある。

違いその4:PCIe構成とマルチGPU機能

チップセットZ370H370B360
対応PCIe構成1×161×16
2×8
1×8 + 2×4

Z370は、CPU側に搭載されているPCI Express 3.0レーンを「分割」できるようになっています。しかし廉価版のH370 / B360は分割できず、16レーン1本としか認識できない。

よってグラフィックボードを2枚挿すような使い方は、Z370じゃないと無理。H370やB360では「NVIDIA SLI」や「AMD Cross Fire」を原則として使えないということです。

違いその5:Intel Rapid Storage Technology

チップセットZ370H370B360
RST対応
SATAストレージ可能
PCIeストレージ可能不可

インテルラピッドスピードテクノロジー、略してIRSTはキャッシュを利用することでストレージの読み書き速度を高速化する技術。Z370 / H370はPCI Expressを経由するストレージにも適用可能で、B360は適用できない。

拡張カード型のOptane SSDや、NVM Expressを使うM.2規格の超高速SSDに対してIRSTを適用するつもりなら、Z370 / H370を選ぶこと。

なお、Intel Optane TechnologyはZ370 / H370 / B360の全てで使えるので「Optane Memory」を使ってHDDを高速化する場合は、どのチップセットを選んでもほとんど問題にならない。

「Z370」「H370」「B360」の違いまとめ

チップセットZ370H370B360
OC可能不可能
メモリOC可能不可能
最大PCIe24レーン20レーン12レーン
対応USB最大14最大12
3.1 Gen 2x4
3.1 Gen 1x8x6
3.0x10
2.0x14
PCIe構成1×161×16
2×8
1×8 + 2×4
マルチGPU対応不可能
IRST対応
対SATAOK
対PCIeOKNG

ここまで解説してきた要点だけを、表にまとめました。Z370とH370 / B360の選ぶ時のポイントは…

  • オーバークロックするか、しないか
  • グラフィックボードを2枚以上使うかどうか
  • NVMe SSDなど、PCIeを経由するハードウェアを大量に使うかどうか

この3つです。特にオーバークロックするかしないかが、一番重要だと思います。せっかく倍率ロックフリー版(K付き)を買っても、H370やB360ではオーバークロックが出来ませんからね。

自作歴20台のやかもち
細かい点を抜きにすれば、OCするなら「Z370」。しないなら「B360」でOKだな。

以上「インテルの新チップセット「Z370」「H370」「B360」の違いを徹底解説」でした。

他にもある「チップセット」な記事

AMDのチップセットはインテルと違って、廉価版のB350でもオーバークロック可能な点が優秀。インテルもそろそろ変な意地を張らずに、せめてH370でオーバークロック解禁はして欲しいところ。

実質的に、Z370とZ270はほとんど何も変わらない…というオチが待っている記事。

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10 件のコメント

  • B360はIntel ARKを見る限り
    ラピッド ス タ ー ト テクノロジーはありますが
    ラピッド ス ト レージ テクノロジーは表記がありません。

  • やかもちはムーアの法則や収穫加速の法則についてどのような展望や未来予想がありうると考えていますか?

    半導体やGPUなどの情報を日ごろから追っているやかもちの考えを聞かせてほしいです。

    • うーん…ムーアの法則は年々維持するのが厳しくなってきた印象は拭えず、プロセスをひたすら微細化するだけの手法は、次元の違う技術革新がないと持続不可能だと思ってます。
      SSDのNANDフラッシュメモリがプロセス微細化の限界に到達し、3D NANDという「多層化技術」で性能を伸ばす方向に舵を切ったように。CPUも「ダイの多層化」で性能を伸ばす時代が来るのではないか~、となんとなく考えていますね。

      プロセスが微細化すればするほど、ダイサイズが大きいCPUを作るのが困難になる事情(=メニーコアなCPUを作りにくい & 歩留まりの悪化)もあるので、ダイを重ね合わせて性能アップを目指す路線は悪くないはずです。
      あのAMD(というよりリサ・スー氏)も最終的には「ワンチップマイコン」を目指す壮大な構想を持っているため、いずれは3Dダイの技術を発展させてCPUに、GPUもメモリもNICもオンダイ化して詰め込むと思うんですよね。

  • 2666MHz超級メモリが力を出し切れない、全コアMAXブースト不可となると、K付きでなくてもZ370との格差がありそうで悩ましいですね。

    • インテルCPUの場合、メモリクロックにこだわる必要性が薄いのと、ターボ・ブースト・テクノロジーはZ370じゃなくてもしっかりと機能するので、定格運用ならH370以下で良いと思います。
      全コアMAXブーストはマザーボード独自の「MCE」という機能によるもので、これは手動オーバークロックに分類されます。だからZ370でしか使えないのですが、割りといい加減な機能だったりするので自分でVIDを調整しながらOCした方が安全。

  • いつも詳しくかつ分かりやすい記事をありがとうございます。

    ここ数年自作していないのですが、以前はHx70がスタンダード、Hx10が廉価版、Bx50がビジネス向け(廉価版の更に廉価版)と言われていた気がします。いつの間にか位置づけが変わったのでしょうか?

    4月に出た新製品を価格.comでチェックしましたが、私の知っている頃よりもB360のラインナップがかなり増えていて、逆にH310はほとんどなかったのであれ?と思いました。性能面でもB360のメモリスロットが4に増えていて驚きました。H310は2スロットのままですね。

    総じてHx10とBx50のポジションが入れ替わったように思いました。また、メモリスロットが4になったことによってHx70をあえて選ぶ理由が薄くなった気がします。やかもちさんは今後Hx70への機能追加などで差別化がされると思われますか?

  • 単位の大文字/小文字の表記間違いが目につきました。
    Mhz ×、MHz ○
    Bps ×、bps○

    細かいとこですが、特に”B”はByteとbitで致命的な間違いになるので
    修正したほうがいいかと。

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