AMDが開発した最強の内蔵グラフィックス(iGPU)が「RX Vega M」シリーズ。インテルとAMDがコラボして誕生したCPU「Kaby Lake-G」に内蔵されている。この記事では、RX Vega Mの性能が他の外付けGPUや内蔵グラフィックと比較して、どれくらい優秀なのかを解説するよ。
この記事の目次
内蔵GPU「RX Vega M」シリーズ

AMDがインテルのモバイル向けCPU「Kaby Lake-G」に搭載するために作ったのが、「Custom Radeon RX Vega M Graphics」です。AMDの作るGPUが、こうしてIntel CPUの内蔵グラフィックスとして採用され、実際に市場に出回るのは初めてのこと。

ただし、Intel HD GraphicsのようにCPUダイに直接組み込まれている(オンダイチップ)わけではなく、殻(ヒートスプレッダ)の中でいっしょに封入された状態です。
これは…厳密に言えば内蔵GPUではなく外付けGPUといえますが、取り出して交換できるわけではないので実質的には内蔵グラフィックスになる。ちなみにKaby Lake-Gは「RX Vega M」以外に、ちゃっかり「HD Graphics」も搭載済みだったりする。
「RX Vega M」は2種類、スペックはどう違うのか
「RX Vega M」シリーズには、今のところ2種類のラインナップがある。
GPU | Vega M GH | Vega M GL | GTX 1050 Ti |
---|---|---|---|
演算ユニット数 | 24 | 20 | 6 |
シェーダーユニット数 | 1536 | 1280 | 768 |
TMU数 | 96 | 80 | 48 |
ベースクロック | 1063 MHz | 931 MHz | 1291 MHz |
ブーストクロック | 1190 MHz | 1011 MHz | 1392 MHz |
VRAM | 4GB HBM2 | 4GB HBM2 | 4GB GDDR5 |
理論性能(FP32) | 3.7 TFLOPS | 2.6 TFLOPS | 2.1 TFLOPS |
「GH」(Graphics High)が高性能版で、24個の演算ユニットを備え、ピークの理論性能は「3.7 TFLOPS」を実現する。「GL」(Graphics Low)は低性能版で、演算ユニットが4個減って性能は「2.6 TFLOPS」。
参考までにNVIDIAの大人気グラボ「GTX 1050 Ti」のスペックも掲載しておいた。見ての通り、入っているコア数(= シェーダーユニット数)だけを見るとRX Vega Mの方が多い。一方クロック周波数では負けています。
そして驚くのが理論性能(FP32)。Vega M GHは内蔵グラフィックスでありながら、3.7 TFLOPSもの性能を叩き出すという。GTX 1050 Tiが2.1 TFLOPSなので、理論上RX Vega M GHは内蔵GPUなのに外付けGPUのGTX 1050 Tiを上回る可能性がある…ということ。

Radeon RX Vega M GHの驚異的な性能

INTEL NUC8i7HVK
というわけで、RX Vega Mシリーズ最上位の「GH」(Graphics High)が実際にどれくらいのゲーミング性能を持っているのかを確認します。内蔵グラフィックスで果たしてマトモにゲームプレイが可能なのかどうか…重要なのはやっぱりそこですよ。
参照するデータは米PC GAMERより。Intelの最新NUCシリーズ「Hades Canyon」(ハーデス・キャニオン)から、「Core i7 8809G + RX Vega M GH」を搭載したモデル(型番:NUC8I7HVK)を使って、ゲーミング性能の検証が行われました。
Intel’s team-up with AMD produces the fastest integrated graphics ever
Ashes Escalation

Ashes Escalation / 最高 & 中間設定(1920×1080)
中間設定 / 平均fps最高設定 / 平均fps
本当にGTX 1050 Ti超えとは驚き。最高画質だと少し厳しそうですが、設定を落とせばフレームレートはかなり出ます。
Civilization 6

Civilization 6 / 最高 & 中間設定(1920×1080)
Civilization 6は余裕。GTX 1050 Ti以上の性能です。
Dawn of War 3

Dawn of War 3 / 最高 & 中間設定(1920×1080)
中間設定、最高画質ともにGTX 1050 Tiよりも優秀。
DeusEX : Mankind Divided

DeusEX : Mankind Divided / 最高 & 中間設定(1920×1080)
比較的重たいDXMDですが、以外なことにウルトラ設定でも平均40fpsも出ているのは驚異的。それまでトップクラスだったRX Vega 11がわずか平均15fpsであることを考えると、最強クラスの内蔵GPUなのは間違いないかも。
Dishonored 2

Dishonored 2 / 最高 & 中間設定(1920×1080)
Dishonored 2ではGTX 1050 Tiとほぼ互角の結果。
Fallout 4

Fallout 4 / 最高 & 中間設定(1920×1080)
Fallout 4は問題なくGTX 1050 Ti超え。Vega M GHは最高設定でも平均60fpsを叩き出しており、ついに内蔵GPUでマトモなゲーミングが可能になった感。
Grand Theft Auto V

Grand Theft Auto V / 最高 & 中間設定(1920×1080)
GTA Vはやや苦戦気味で、GTX 1050や1050 Tiに抜かれてしまいます。それでもウルトラ設定で平均44fpsも出ているのは驚きでしかない。
Hitman

Hitman / 最高 & 中間設定(1920×1080)
HitmanではGTX 1050 Ti以上。ウルトラ設定だとGTX 1060 3GBすら超えるフレームレートを叩き出しているのがスゴイ。
Shadow of War

Shadow of War / 最高 & 中間設定(1920×1080)
シャドウ・オブ・ウォーはGTX 1050 Tiと互角。
Rise of the Tomb Raider
/ 最高 & 中間設定(1920×1080)
Rise of the Tomb Raiderでは、中間設定で平均60fps超え、ウルトラ設定で平均37fpsでした。どちらもGTX 1050 Tiを超えるパフォーマンスです。
平均パフォーマンス

平均パフォーマンス / 最高 & 中間設定(1920×1080)
中間設定 / 平均fps最高設定 / 平均fps
平均パフォーマンスでおおまかな傾向を確認。GTX 1050 Tiが中間設定で「平均71.6fps」、最高設定で「平均38.8fps」に対して、Vega M GHは中間設定で約16.4%高い「平均79.9fps」、最高設定で約11.6%高い「平均45.2fps」でした。
今までRyzen APUに搭載されていた「Radeon RX Vega 11」が内蔵GPUとしてトップの座についていた。それを同じくAMDが「RX Vega M GH」によって、2.5倍も性能を塗り替えてしまいました。
外付けグラフィックボードであるGTX 1050 Tiすら超える性能を持つ「内蔵GPU」は過去に例がなく、ぶっちぎりの性能差をつけて「最強の内蔵グラフィックス」としてのポジションを獲得したことになります。
まとめ:「内蔵GPUは軽いゲームが限界」を覆す
「RX Vega M GH」以前の内蔵グラフィックスでは、CS:GOやOverwatch、フォートナイトといった「軽いゲーム」なら問題ない。というのが常識でした。
こちらの記事にもまとめてあるとおり、従来の内蔵GPUは決して満足にゲームができるようなモノではなかった。Ryzen APUが登場したおかげで、最近やっと内蔵GPUの性能が急上昇を始めたばかりです。
そのRyzen APUで、だいたいNVIDIA GT 1030(ローエンドグラボ)と互角レベルというところまで来たと思ったら、「RX Vega M GH」はGT 1030なんて余裕で飛び越して、一気にGTX 1050 Ti超えですからね。
「RX Vega M GH」の性能は素直にスゴイが…

というわけで、グラフィック性能だけを見れば「Sランク」の出来栄えですが。残念ながらi7 8809Gはモバイル向けCPUとなっているため自作PCで活用することはできず、コスパが今ひとつなのがマイナス点。
i7 8809Gを搭載するIntel NUCは本体だけで約10万円もかかるため、最近紹介した「予算10万の自作ゲーミングPCの自作プラン」のように、同じ予算でもっと高性能なマシンも選択肢に入ってくる。
「Core i3 + Vega M GH」が25000円~28000円くらいなら革新的な存在になった可能性はとても高いが、現状はNUCや超小型PCそして薄型ノートPCの性能限界を高めた程度で、インパクトが薄いのは否定できませんね。
「RX Vega M」搭載のPCまとめ
最後に、「RX Vega M」を搭載しているNUCやノートパソコンをまとめておきます。

Intel純正のNUC(ベアボーン)の最新シリーズ「Hades Canyon」には搭載済み。ベアボーンなので、DDR4メモリー・SSD・OSを別途用意する必要があるので注意。買ったままの状態では使えない。

HP Spectre 360はアナウンスのみで詳細は不明。重量は約2kgと、特別軽いわけではないのが何とも微妙。2kgで良いなら、他にも同じ性能のゲーミングノートがあるからね。

Dellの2 in 1版、XPS 15もKaby Lake-G搭載が決定。ただし、どれも「Vega M GL」で「GH」モデルはないみたいです。どのモデルも重量が1.98kgなので、しっくり来ない。
今のところKaby Lake-G搭載のマシンはどれもコストパフォーマンスがかなりイマイチですね。
- AMDとIntelが初めて共同で作ったCPU
- 圧倒的に最強な内蔵グラフィックス
この2点において大きな意義があるけれど、それ以上の価値は現状見いだせない。インテルとしてはマジメにこのCPUを普及させるつもりはなく、マーケティングと市場調査的な意味合いのほうが強そうな感じ。

以上、「最強の内蔵グラフィックスがAMDから登場、果たして性能は?」について解説でした。
HBM2自体が高価なのもあってコスト面では不利なんですよね
IntelとしてはEMIBを利用した製品を世に送り出すのを優先したと言う形なんでしょうね
ただ4Kの動画を見るだけだったら、
Raven Ridgeで十分ですかね?
あとRX Vega Mの高負荷時の温度が気になります
実際にLenovo Ideapad 720S(Ryzen 5 2500U)で、MKV形式の4K動画を再生したところ特に問題なく動いたので大丈夫ですよ。
※追記:電源オプションは「省電力プラン」で試したので、「高パフォーマンス」にすればもっと余裕です。
温度は筐体デザインで大きく変わるので何とも…、NUCのように分厚い筐体なら大した問題はないと思います。
内臓GPUだからやっぱメモリ速度で結構性能変わるのかなー
しかしAMDのAPU見たいな+GPUで性能あがるとかなんらかの面白技術あったらいいのになぁ
内蔵とは言え、専用の「4GB HBM2」をVRAMに据えているので、DRAMを共有するRyzen APUと比較すればメモリークロックの影響はかなり少ないと思います。
あぁスペックの表よく見てなかったHBM2ってなんだろって思ってた
しかしそうなると本当に外付けGPUだなぁ・・・
要は
CPU&GPUの抱き合わせ商法
って事で良いのかな?
1536SP 96TMU HBM2でGTX 1050Tiと比較されてしまうくらいならグラボとして売ることは難しいでしょうからこの形になったのでしょうね。
https://www.pcworld.com/article/3267169/computers/intel-kaby-lake-g-with-radeon-vega-m-may-be-more-polaris-than-vega.html
これを読む限り、Kaby Lake-GのGPUの中身は「Polaris 22」のようですね。
もちろん、HBM2を載せているのでRadeon RX 500シリーズとは別物ですが。
>Kaby Lake-G搭載のマシンはどれもコストパフォーマンスがかなりイマイチ
魅力はあるけど搭載機種が高すぎて買う気になれない
値下げも可能なんだろうけ戦略的に
これを搭載するマシンを7、8万の普及帯で出すと
今度は他のCPUが売れなくなる。とオレは推察している
悩ましいCPUですよ
GPUの性能がもっと上がれば
ゲーマーを中心に価値を見出す人も増えるとは思いますね
グラの性能が悪いわけではないけど
中途半端な印象はある
良い石だけに残念
一発目だからこれから続いてくれる と期待したい。