SN770のリネームモデルに相当する「WD Blue SN5000」は、容量1 ~ 2 TBがTLC NANDモデルで、容量単価がそこそこ安い4 TB版だけ悪名高い「QLC NAND」モデルです。
それでも大手メーカー製の4 TB品として手頃な価格から、意外と人気だったりします。容量4 TBだからQLCの弱点をうまく隠蔽し、思いのほか高性能なのかもしれません。
性能を確かめるために実際に1枚買ってみたので、ライバルSSDと比較しながら詳しくレビューします。
(公開:2025/5/11 | 更新:2025/5/11)
WD Blue SN5000のスペックと仕様
WD Blue SN5000 (WDS000T4B0E) | |||
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容量 | 1 TB (1000 GB) | 2 TB (2000 GB) | 4 TB (4000 GB) |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4 (NVMe 1.4) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | WD Polaris 3 | ||
NAND | KIOXIA製 112層 3D TLC NAND | KIOXIA製 162層 3D QLC NAND | |
DRAM | なし | ||
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 5150 MB/s | 5150 MB/s | 5500 MB/s |
書込速度 シーケンシャル | 4900 MB/s | 4850 MB/s | 5000 MB/s |
読込速度 4KBランダムアクセス | 730K IOPS | 650K IOPS | 690K IOPS |
書込速度 4KBランダムアクセス | 770K IOPS | 770K IOPS | 900K IOPS |
消費電力(最大) | 6.3 W | ||
消費電力(アイドル) | 75 mW | ||
TBW 書き込み耐性 | 600 TB | 900 TB | 1200 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 175 万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
MSRP | $ 63 | $ 125 | $ 250 |
参考価格 2025/5時点 | 10324 円 | 19618 円 | 36646 円 |
GB単価 | 10.3 円 | 9.8 円 | 9.2 円 |
- メーカー仕様表はこちらから
「WD Blue SN5000」は、SanDisk(旧Western Digital)が2024年8月頃に発売した、WD Black SN770のリネームモデルです。
しかし、SN770が最新モデル「SN7100」に置き換わってしまったため、要するにSN5000は型番どおりSN7100の格下モデルに位置づけられます。
特に容量1 ~ 2 TBモデルに目立った価値がありません。唯一売れているのが3万円台から買える容量4 TBモデルです。
SN7100にも4 TBモデルがあるものの、高い価格がネックです。SN5000の4 TB版なら1 TBあたり7000 ~ 8000円で買えて手頃感があります。

TBW(書き込み耐性)の比較
SSD | 500 GB | 1 TB | 4 TB |
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WD Blue SN5000 (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
WD Black SN7100 (WD Black SN7100:レビュー) | – | 600 TBW | 2400 TBW |
書き込み保証値は容量1 TBあたり300 TBです。
QLC NAND採用SSDによくある保証値で、一般的なTLC NANDモデルと比較して50%も減らされています。同社のWD Blackシリーズなら600 TB(2倍)です。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
MOVE SPEED Panther (MOVE SPEED Panther:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA PRO (EXCERIA PRO:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN5000 (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 600 TBW | 900 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G3 (KIOXIA EXCERIA G3 PLUS:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
CFD SFT6000e (CFD SFT6000e:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
でも、冷静に考えると1200 TBW(1.2 PBW)の保証値は何気に大きいです。
- 普通に使った場合:約65.8年
(1日あたり平均50 GBの書き込みを想定) - 毎日AAAゲームをDLする:約32.9年
(1日あたり平均100 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの写真を入れる:約13.2年
(1日あたり平均250 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの4K~8K素材を入れる:約3.3年
(1日あたり平均1000 GBの書き込みを想定)
ワークロード別の想定耐用年数をざっくり試算してみた。
PS5の増設ストレージやゲーミングPCのメインSSDなど。ごく普通の使い方なら約65年以上もかかる計算になり、5年間のメーカー保証をあっさり使い切ります。
仮に1日100 GB書き込んでも、TBWを使い切るのに約33年です。4K~8K RAW写真や動画素材を毎日のようにゴリゴリと書き込む用途ですら5年保証内に使い切れないです。
1日あたり1 TBを書き込むプロの映像作家や写真家にありうる過酷なワークロードで、ようやく5年保証を期間内に消費できる計算です。
プロシューマーを除き、一般的なPCゲーマーからクリエイターにとって十分な保証値です。
写真や動画で業務に使うなら最大4800 TBW(4.8 PBW)を提供するWD Blackシリーズや、Nextorage Gシリーズなど高耐久モデルを検討してください。
WD Blue SN5000 4TBを開封レビュー
パッケージデザインと付属品

楽天市場(楽天ビック点)にて容量4 TBモデルを購入しました。約3.6万円(約6000 pt還元)です。

いつものWD Blueシリーズらしく、濃いめのターコイズブルーを多用したパッケージデザインです。
楽天市場で国内正規品を買いましたが、パッケージのどこにも国内代理店のシールが見当たりません。Amazonや楽天で買った場合は、おそらく購入元サポートから問い合わせです。

- SSD本体
- 説明書
プラスチック製の梱包材にSSD本体がすっぽり収まってます。梱包材の裏側に説明書が挟み込まれていました。
基板コンポーネント

マットブラック塗装のプリント基板の上から、コンポーネント(NANDメモリ)を覆い隠すようにラベルシールが貼られています。
容量1 TB版だと基板の空いているスペースにシールが貼ってあったので、NANDメモリが2枚に増えたせいで貼るスペースが無くなり、仕方なく部品の上に貼り付けた様子です。
貼ってあるラベルシールに、保証を受けるときに必要なシリアルナンバーが記載されています。
ラベルをまじまじと凝視すると・・・ 今もWestern Digitalロゴが描かれています。新ブランドの「SanDisk」ロゴにまだ完全に移行できてないです。

裏面にコンポーネントはありません。各国の認証ロゴがズラッと列挙されるのみ。

表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンや、PS5の増設ストレージで問題なく使えます。

製品ラベルシールを剥がして、WD Blue SN5000 4TBに実装されているコンポーネントを目視で確認します。

- コントローラ:SanDisk(WD Polaris 3)
A101-000171-A1 4436P001N53 TAIWAN - DRAM:なし
- NAND:KIOXIA 162層 3D QLC NAND
SanDisk 026226 2T00 MALAYSIA 4275YUEJ508P
SanDisk刻印が入った謎のSSDコントローラと、これもまたSanDisk刻印が入った謎のNANDメモリを搭載します。
それぞれ具体的な内容は不明ですが、Western Digital社の内情からざっくり推測は可能です。

反対側にコンポーネントは一切ありません。

SSDコントローラは、Western Digitalが買収して傘下に収めているSanDiskが開発した「Polaris 3」を搭載。PCIe 4.0(Gen4)対応のDRAMレスコントローラです。
しかし、同じPolaris 3でも従来のSN5000から刻印が入れ替わっています。
- SN5000(容量1 ~ 2 TB):2桁-2桁-5桁-A1S
- SN5000(容量4 TB):A101-6桁-A1
以前レビューした容量1 TB版が古い刻印でした。今回レビューしている容量4 TB版は刻印が新しく変更され、SN7100とほとんど同一の刻印です。
Western Digitalが自社開発のコントローラについて情報を何も開示しないため、技術的な詳細はまったく不明ですが、状況証拠から仕様変更を推測できます。

電源管理コントローラ(PMIC)は不明です。刻印「228060B 426100」とだけ記載があるのみ。・・・PMICもSN7100と同一の最新モデルに切り替わっています。

DRAMは搭載しません。
メインメモリのごく一部をDRAMキャッシュの代わりに使う「HMB(ホストメモリバッファ)」方式のSSDです。
DRAMが無いと書き込み性能が不利になる傾向がある一方、読み込みワークロードで有利になる傾向もあり、一概にDRAMが無いから悪いとも言い切れないので注意。


NANDメモリは「キオクシア製 162層 3D QLC NAND(BiCS 6)」を採用。刻印は「026226 2T00 MALAYSIA 4275YUEJ508P」です。
キオクシア(旧東芝メモリ)が製造する、1世代前※²のNANDメモリです(※²:BiCS 7は破棄されています)。
容量1 ~ 2 TBで採用されていた112層(BiCS 5)から、約1.5倍の162層に増え、記憶密度が512 Gb → 1024 Gb(1 Tb)に倍増します。

QLC = Quad Level Cell(4-bit MLC)方式
しかし、せっかく新しい世代のNANDメモリを採用したのに、WD Blue SN5000 4TBに搭載されたNANDメモリの記録方式は悪名高い「QLC」方式です。
QLC方式は1つのメモリセルに4ビットずつデータを記録します。4ビット = 16段階のきめ細やかな電圧制御が求められ、もっぱら定番のTLC方式(3ビット = 8段階)より動作が遅いです。
キオクシア製BiCS 6メモリの場合、TLCからQLC方式で読み出し性能が30%程度も下がり、書き込み性能は4~5分の1まで悪化します。
大きなペナルティを支払った割に、容量密度は約33%(4 / 3ビット)しか増やせず、想定より製造コストも安くならない傾向が続いています。
今のところ一般ユーザーにとって旨味が少なく、メーカー側にとっても多分それほど旨味が大きくない・・・なんとも微妙な記録方式が「QLC」です。


4 TB:1024 Gb x 16 x 2 = 32768 Gb(4096 GB)
NANDメモリの構成をチェックします。
WD Blue SN5000(容量4 TB)では、記憶密度が1024 Gb(= 128 GB)のチップを16枚重ねたNANDメモリを、全部で2個実装して合計32768 Gb(= 4096 GB)の容量に仕上げます。
162層まで積み上げたBiCS 6メモリなら、チップ1枚で容量2 TBを実現可能です。

デジタルノギスで基板の厚みを測定します。
プリント基板が約0.86 mmで、NANDメモリと合わせて約1.99 ~ 2.01 mmです。差し引くとNANDメモリの厚みを約1.13 ~ 1.15 mmと計算できます。
過去にレビューしたキオクシア製NANDメモリの場合、厚みが1.0 mmを超えていれば、かなりの確率で「16枚スタック版」です。
- 厚み0.9 mm前後:8枚スタック版
- 厚み1.1 mm前後:16枚スタック版
日本メーカーのキオクシア(旧東芝メモリ)は、NANDメモリの積層数争いで遅れを取っているものの、肝心の記憶密度(mm²あたりの容量)で他社の追随を許さないNo.1に君臨しています。

WD Blue SN5000 4TBの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介

テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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![]() | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
![]() | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
![]() | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
![]() | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
![]() | RTX 4060 Ti | |
![]() | WD Blue SN5000 4TB | |
![]() | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
![]() | 1000 WCorsair RM1000x ATX 3.1 | |
![]() | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「TCL 27R83U」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9000シリーズなど最新プラットフォームと比較して、絶対的な性能ですでに型落ち気味ですが、SSDに対する遅延の少なさで依然として最高峰です。

原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
そのほか、「BitLocker」と呼ばれるWindows環境で使えるハードウェア暗号化機能も無効化済みです。BitLockerを有効化すると、SSDのランダムアクセス性能が最大50%も下がります。
正確なベンチマークを取るならBitLockerを必ず無効化しましょう。

SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量

- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 2.0
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「WD Blue SN5000 4TB」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。「PCIe 4.0 x4」で接続されています。
対応規格は容量1 ~ 2 BモデルがNVM Express 1.4だったはずですが、今回買った4 TB版だと最新のNVM Express 2.0に切り替わってました。
なお、NVMe 2.0に切り替わっても、一般用途だと目立った違いが無いです。SSDコントローラの仕様にわずかな変更が加えられた状況証拠が増えただけです。

フォーマット時の初期容量は「3.63 TB」でした。
実際に搭載されているNANDメモリ全体の約2.3%(4 TB = 96 GB)を予備領域に割り当てる一般的な対応です。
だから、ユーザー側が実際に使える容量が4096 → 4000 GBに目減りします。AAAゲームタイトルを丸1本くらいは保存できる容量が予備領域に使われています。
約100 GB近い容量が持っていかれると少し辛いですが、QLC NANDの性質上、予備領域は多めに確保したほうがいいでしょう。pSLCキャッシュのスムーズな展開にも好影響です。

純正ソフト「SanDisk Dashboard」

- SanDisk Dashboard(support-en.sandisk.com)
SanDisk公式サイトから無料でダウンロードできる、純正ユーティリティ「SanDisk Dashboard」に対応します。
SSDの基本ステータス(S.M.A.R.T.情報)を見たり、書き込みキャッシュを有効 / 無効化したり、健康状態のレポートを出力する機能もあります。
ただし、Samsung SSDのようにOP領域(オーバープロビジョニング容量)を任意で指定する設定は見当たりませんでした。

SSD本体の制御ソフトウェア(ファームウェア)の更新も可能です。
クローンソフト「Acronis True Image」

- Acronis True Image for Western Digital(support-en.sandisk.com)
WD Blue SN5000 4TBを購入したユーザー限定で、SSDクローンソフト「Acronis True Image for WD」を5年間使えます。
ソースディスク(クローン元)と、ターゲットディスク(クローン先)を選んで、「ブータブルOSを含むクローンを作成」でSSDのクローンがあっさり完成です。
最後のオプション画面から、クローンしない領域(フォルダやファイル)を任意で選ぶ「除外設定」もできます。

Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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![]() | ![]() |
テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
![]() | ![]() |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込みが約5500 MB/s、シーケンシャル書き込みが約5080 MB/s前後です。読み込みと書き込みどちらもメーカー公称値に達します。
テストサイズを64 GiBに変更して性能の変化をチェックすると、シーケンシャル書き込み性能がわずかに下がり、ランダムアクセス性能(RND4K Q1T1)も3割くらい下がる傾向です。
DRAMレスSSDによくある典型的な症状です。実際のパフォーマンスや使用感にまったく影響しないため、気にする必要はありません。

体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
WD Blue SN5000 4TBは40.35 μsほどで、過去レビューしてきたQLC NAND型SSDとして最高のスコアを記録します。
おそらく同じSSDコントローラを使っている最新モデル「WD Black SN7100」は前人未到30 μs台の世界に到達しており、NANDメモリの性能差が反映されています。

一方、書き込みレイテンシは平凡です。上位勢はPhison系コントローラに独占されています。
ATTO Disk Benchmark

ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
小さいファイル領域から中程度のファイル領域(1 KB ~ 256 KB)で、容量1 TB版と比較して遅いです。QLC化で読み込み性能が悪化した影響です。
書き込み性能はさらに性能が悪く、容量1 TB版と4 TB版は完全に別物。大きいサイズ(16 MB以上)から同じ性能に並びます。

WD Blue SN5000 4TBを実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。

WD Blue SN5000 4TBのロード時間は「6.42秒」でした。特に遅くも速くもない・・・なんとも普通なロード時間です。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
Battlefield V、Call of Dutyで平均以下のロード時間、Overwatch 2は平均的なロード時間です。
DirectStorageのロード時間を比較

Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
WD Blue SN5000 4TBは0.22秒(18.86 GB/s)前後で、シーケンシャル性能が最大5500 MB/sの割に速いです。7000 MB/s級のNVMe SSDに匹敵します。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → WD Blue SN5000 4TB)のコピペ時間です。
Zipファイル(256 GB)の書き込みが目立って遅いです。容量4 TBもあるから256 GBくらい余裕でこなすと予想しましたが、若干pSLCキャッシュの展開がふらつく様子。
写真フォルダとゲームフォルダは平均をやや下回ります。

次は読み込み(WD Blue SN5000 4TB → Optane P5810X)のコピペ時間です。
Zipファイルの読み出しが平均的、写真フォルダとゲームフォルダの読み出しが遅い傾向です。
小さなファイル領域がバラバラに含まれていると、かなり遅くなる傾向が見られます。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。

4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約14.6%です。
SSDコントローラが高性能だからQLC NANDのハンデを抱えていても、10%台に到達できて違和感なかったですが、残念ながら平凡な結果に終わります。

4K動画プレビューのドロップフレーム率は1.7%で完封まであと一歩です。
ちなみに、見事に完封(率0%)させたSSDの大多数をDRAMレス型が占めています。

ComfyUI:画像生成AIモデルの読み込み

画像生成AIの定番ソフト「ComfyUI」を使って、「.safetensors」形式モデルの読み込みにかかった時間を比較します。
テキストエンコーダーやVAEの読み込み時間は一切含まないです。有志制作のカスタムノード「ComfyUI-Dev-Utils」で、読み込み時間を記録して比較しました。

現時点でもっとも主流なAI生成モデル「SDXL 1.0(約6.46 GB)」の読み込み時間です。
VRAM容量に入り切るサイズだから、基本的にシーケンシャル性能に比例する処理ですが、実際のベンチマーク結果はどうも直感に反する不可解な内容です。
公称値で5500 MB/sのWD Blue SN5000が、なぜか10000 MB/sのEXCERIA PLUS G4に並んでいます。

VRAMに入り切らない巨大生成モデル「HiDream(約31.8 GB)」の読み込み時間です。
VRAMから溢れたデータがメインメモリに移動し、それでも収まりきらず共有メモリにまで波及する複雑なI/O処理が連続的に発生します。
内部処理が複雑化すると、SSDのシーケンシャル性能から結果を予測するのが難しいです。全体を俯瞰して見る限り、シーケンシャル性能とランダム性能どちらも重要そうに見えます。

PCMark 10:SSDの実用性能

PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
WD Blue SN5000 4TBのストレージスコア(空き容量10%時)は「3209点」です。空き容量100%なら3781点です。
空き容量による性能低下は約15%に達します。
容量4 TBの空き容量10%は約360 GBです。十分な余裕を確保できているはずですが、それでもQLC NANDのハンデは非常に大きく、性能が下がりやすい傾向です。

PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
てっきりファイルコピー評価で大きく点を落としたかと思いきや、ファイルコピー評価は微動だにしません。
むしろ読み込みワークロードが占めるAdobe評価やゲームロード評価で下落幅が大きいです。QLC NANDは空き容量が少ないと書き込みだけでなく、読み込みも悪化する傾向です。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
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Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
テスト開始から約900 GBまで、約4000 MB/s前後の猛スピードで推移し、pSLCキャッシュが枯渇するとTLC NANDとの混合モードに切り替わり、平均700 MB/s程度を維持しつづけます。


キャッシュ構造 | 平均書込速度 (Average) |
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1段階 pSLCキャッシュ | 3631 MB/s |
2段階 pSLC + QLC | 667 MB/s |
3段階 TLCネイティブ | 519 MB/s |
ブロックファイルを約3600 GB書き込んで、キャッシュ構造をさらに深堀りします。
pSLCキャッシュによる平均3600 MB/s近い爆速モードから始まり、約800 GB書き込んだあたりで混合モード(pSLC + QLC)に移行します。
混合モードはあまり長続きせず、約500 GBほどでQLCネイティブモードへ移行します。その後、混合モードに一瞬戻ったりを繰り返しながら、平均520 MB/s前後でテストを終えました。

(空き容量:10%時)
空き容量が十分にある状態なら、最大で1000 GB近い広大なpSLCキャッシュを展開でき、QLC NANDの割にストレスの少ないスピーディーな動作感です。
一方で、空き容量が10%くらいまで減っていると、pSLCキャッシュの爆速モードが短時間で終わります。連続40 ~ 50 GB程度しか続かず、すぐに混合モードに戻ってしまいます。
混合モードでも平均500 MB/s程度を維持でき、高品質なSATA SSDに相当する性能です。
つまり、混合モード時に(QLC NANDとしては)高い性能を出すためにpSLCキャッシュを酷使する構造上、爆速モードを長く持続できないと推測できます。


時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
WD Blue SN5000 4TBは15分で約1200 GBを書き込みます。容量1 TB版と比較して、容量が4倍なのに書き込み量はたった1.5倍、つまり約38%の書き込み性能です。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度

- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度3:NANDメモリの温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つです。

ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。

(110℃がトリガーでした)
テスト開始から急速に温度が上昇し続け、センサー読みで110℃に達したあたりでサーマルスロットリングが発動します。
pSLCキャッシュの爆速モードが終わり、性能がやや遅くなる混合モードですら、激しい乱高下が持続的に続いています。
その後ふたたび爆速モードが復活すると、SSDコントローラ温度が115℃に達します。そのかわりNANDメモリへの書き込みが激減し、一部のNANDメモリ温度が下がる様子も見られます。
サーモグラフィーで表面温度を確認

テスト開始から約8~9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使ってSSDの表面温度を撮影します。
- NANDメモリ(左):80 ~ 81℃
- NANDメモリ(中央):84 ~ 85℃
- SSDコントローラ(右):105 ~ 109℃
SSDコントローラの表面温度は、HWiNFOが表示するセンサー読みから6~10℃ほどズレてます。実際の温度よりも高い温度を表示するセンサー仕様です。
個人的に低くズレているとサーマルスロットリングの判定が甘くなりそうで怖いですが、WD Blue SN5000 4TBは高めにズレているから特に問題ないでしょう。
センサー読みで115℃に達しても、本体は109℃程度です。サーマルスロットリングも適切に発動するから過度な心配は不要です。
別売りのM.2ヒートシンクを付けるかどうかは好みの問題です。冷やせば高負荷時の乱高下が抑えられ、パフォーマンスが安定します。
または、SSDに直接ケースファンで風を当てるか、マザーボード付属のM.2ヒートシンクを取り付けても効果抜群です。
【おまけ】SN5000(4TB)の消費電力

項目 | アイドル時 | 書き込み | 読み込み |
---|---|---|---|
消費電力 中央値 | 1.07 W | 4.11 W | 3.92 W |
性能 平均レート | – | 3298 MB/s | 3153 MB/s |
電力効率 1ワットあたり性能 | – | 803 MBs/W | 805 MBs/W |
WD Blue SN5000 4TBの消費電力が、書き込み時に平均4.1 Wで、読み込み時は平均3.9 Wでした。
消費電力1ワットあたりの平均転送レートを求めると、それぞれのワットパフォーマンスが800 MB/s(1 Wあたり)前後と計算できます。
- WD Black SN850X(8 TB):約600 ~ 900 MBs/W
- WD Black SN770(1 TB):約820 ~ 840 MBs/W
- WD Black SN7100(1 TB):約1300 ~ 1500 MBs/W
平凡なワットパフォーマンスです。
やはり、最新世代のコントローラとNANDメモリ(BiCS 8 / 218層)を使う「SN7100」には到底届きそうもないです。
まとめ:今まで見てきた「QLC NAND」で最高の性能

(実質3万円台なら候補になるか?)
「WD Blue SN5000 4TB」のデメリットと弱点
- QLC NANDメモリ採用
- DRAMキャッシュなし
- 素の書き込み性能が遅い
- 高負荷時の温度が高い
- サーマルスロットリングしやすい
- 空き容量による性能低下あり
「WD Blue SN5000 4TB」のメリットと強み
- 最大5500 MB/sのシーケンシャル性能
- 速いランダムアクセス速度
- ゲームロード時間が速い
- 広大なpSLCキャッシュ(約900 GB)
- 書き込みに強いキャッシュ構造
- 十分な耐久性(1200 TBW)
- 片面実装で扱いやすい
- SanDisk純正ソフトウェアに対応
- ファームウェア更新に対応
- 「Acronis True Image (5年)」
- 5年保証
- 価格が安い
「WD Blue SN5000」4 TB版は、今までレビューしてきたQLC NAND採用のNVMe SSDでもっとも高性能です。
予備領域から展開する静的キャッシュ(約48 GB)と、空き容量の比率から展開する動的キャッシュ(最大900 GB程度)を巧みに組み合わせた「ハイブリッド構造」が強い理由です。
キャッシュが枯渇したあとでも平均500 MB/s前後の書き込み速度を維持します。
平均500 MB/sはかつて高品質で人気だったSamsung 870 EVOなど、定番SATA SSDに匹敵する性能です。500 MB/sあれば、割と満足できる人が多いかもしれません。
読み込みワークロードは最新NAND搭載のSN7100や中華ハイエンドに及ばないものの、実質3万円ちょっとの安さを考えれば決して悪くもないでしょう。
SanDisk(Western Digital)純正モデルならではの充実したソフトウェアサポートも付属します。
「SanDisk Dashboard」でファームウェアの更新が可能ですし、「Acronis True Image for WD(5年間)」でSSDのバックアップやクローンもできます。

定価で買う気はあまり起きないですが、ポイント還元で実質3万円ちょっとなら・・・購入候補に入れていいSSDです。
以上「WD Blue SN5000 4TBレビュー:大容量ならQLC NANDは許される・・・?【ギリ行けそう】」でした。

「WD Blue SN5000 4TB」を入手する
レビュー時点の価格は約3.6~3.7万円です。Yahooショッピングや楽天市場で、実質3.0~3.1万円になったスキに買うのがおすすめ。
「WD Blue SN5000 4TB」の代替案
定価比較なら、やはり中華ハイエンドシリーズが主な代替案です。
YMTC製232層TLC NANDに、SRAM内蔵型の超高速コントローラ「MAP1602A」を組み合わせたテンプレート品です。
トップクラスの読み込み性能と優れた書き込み性能を両立します。pSLCキャッシュ制御も巧みで高速、ストレスの少ない使用感です。
おすすめなSSDを解説
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
4TBの大容量でも、HMBは64MBのまんまなんですね
990proとかは容量に合わせてRAMも増やしてるので、そこを据え置きにしている理由はなんでしょうね