―――Solidigm(ソリダイム)を知っていますか?
おそらくSSDオタクでないと知らない名前だと思われます。インテルが所有していたSSD部門を、大手NANDメーカーSK Hynixが買い取って誕生した新しいSSDブランドです。
今回はSolidigmのフラグシップモデルにあたる「P44 Pro」を実際に詳しくレビューします。
今回のレビューで使用する「Solidigm P44 Pro 2TB」を、直接メーカーから提供いただきました。なお、レビュー内容に関して、提供元から特定キーワードの使用やベンチマーク内容の指定(競合製品の選定)など。レビュー内容に悪影響を及ぼす制限は一切ありませんでした。
いつも通り自腹レビューと同じ条件で各種テストを実行し、Solidigm P44 Proの実力を試します。
(公開:2023/7/25 | 更新:2023/7/25)
Solidigm P44 Proのスペックと仕様
Solidigm P44 Pro スペックをざっくりと解説 | |||
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容量 | 512 GB | 1024 GB | 2048 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 1.4) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | SK Hynix Aries | ||
NAND | SK Hynix 176層 3D TLC NAND | ||
DRAM | SK Hynix LPDDR4 | ||
1024 MB | 2048 MB | ||
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 7000 MB/s | ||
書込速度 シーケンシャル | 4700 MB/s | 6500 MB/s | |
読込速度 4KBランダムアクセス | 960K IOPS | 1400K IOPS | |
書込速度 4KBランダムアクセス | 1000K IOPS | 1300K IOPS | |
消費電力(最大) | 7.5 W | ||
消費電力(アイドル) | 50 mW | ||
TBW 書き込み耐性 | 500 TB | 750 TB | 1200 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
MSRP | $ 49 | $ 79 | $ 144 |
参考価格 2023/7時点 | 8667 円 | 10980 円 | 22680 円 |
GB単価 | 16.9 円 | 10.7 円 | 11.1 円 |
インテルのSSD部門をSK Hynixが買い取って生まれた新ブランドですが、フラグシップモデルの「Solidigm P44 Pro」に関しては実質的にSK Hynix純正モデルです。
NANDメモリに「SK Hynix 176層 3D TLC NAND」を、SSDコントローラに自社設計の「SK Hynix Aries」を組み合わせます。
DRAMキャッシュにSK Hynix製LPDDR4メモリ(2048 MB)を搭載し、SSDコントローラとDRAMキャッシュの合せ技でTLC NAND本来の性能をうまく隠す狙いです。
親会社のハイエンドモデル「SK Hynix P41 Platinum(レビュー)」と同じく、P44 ProもまたSK Hynixが自社で主要部品を製造する完全な垂直統合型モデルです。
主要コンポーネントが自社製造品で統一されており、ちまたに溢れる有象無象のSSDメーカーと別格の高い信頼性をアピールしています。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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Solidigm P44 Pro | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (FireCuda 530:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
書き込み保証値(TBW)は他社の有名ブランド品と同等クラスです。流行りの格安中華ハイエンドと比較すると少なく見えますが、実用上はまったくもって十分。
仮にゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。
1200 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると24000日で、耐久値を使い切るのに約66年もかかる計算に。NANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラまたは使用者本人が経年劣化で故障する確率のほうが高いです。
ライバル製品と価格設定の比較
PCIe 4.0対応のハイエンドNVMe SSDと価格を比較したグラフです。
2023年7月時点、Solidigm P44 Proの 1 TBモデルが約1.1万円前後、2 TBモデルが約2.3万円です。タイムセール時のポイント還元込みで1 TBを1万円切り、2 TBを2万円ちょっとで買えます。
Solidigm P44 Proを開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
バルク品を思わせる茶色のパッケージで届きます。
パカッと開けると、市販品らしいちゃんとしたパッケージが登場。
今回レビューで使うサンプルは楽天市場ドスパラ店(販売ページはこちら)より、約1.1万円(ポイント還元込で約9800円)にて1 TBモデルを自腹で購入しました。
2 TBモデルは最初に説明したように、Solidigmから直接提供してもらったサンプルです。
パープルとブラックの二色で統一されたシンプルなパッケージデザインです。パッケージ裏側に「5 Year Limited Warannty(5年保証)」の記載があります。
国内代理店のシールがどこにも見当たりませんが、Solidigmいわく保証(RMA)を受けたいときは購入したショップ、またはSolidigmサポートに問い合わせてくださいとのこと。
- Solidigmサポートに問い合わせる(日本語版)
説明書のみ付属します。プラスチック製のケースにSSD本体がすっぽりと収まっています。
基板コンポーネント
マットブラック塗装のプリント基板上に、SSDを構成するコンポーネントを覆い隠すように製品ラベルシールが貼られています。
ラベルシールを剥がすと5年間の製品保証が無効になるリスクが高いため、別途M.2ヒートシンクを取り付ける場合はシールを剥がさずにそのまま取り付けましょう。
裏面にコンポーネントはありません。各国の認証ロゴや、交換保証(RMA)申請時に必要となるシリアルナンバー(S/N)が記載されたラベルシールが貼られています。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。
貼ってあるラベルシールはほぼ厚みがない単なるシールです。シール本体にヒートシンク的な効果は期待できません。
ラベルシールを剥がして、基板のコンポーネントを目視で確認します(※5年間の製品保証が切れる行為ですので、真似しない方が安全)。
- コントローラ:SK Hynix Aries
ACNS075 PRG736.00S-1 2228 ARIES - DRAM:SK Hynix LPDDR4 2048 MB
H9HCNNNBKUML XRNEE 236A - NAND:SK Hynix 176層 3D TLC NAND
H25T3TCG8C X590 301Y
SSDコントローラ、DRAM、NANDメモリすべてSK Hynix自社製です。
電源供給を管理するPMICは、テキサス・インスツルメンツ製のロードスイッチ(TPS22954)を複数使って実装されています。
SSDコントローラはSK Hynixが自社で開発するARM Cortexベースの「Aries」を搭載。17 x 17 mmパッケージで、SM2264(15 x 15 mm)やSamsung Elpis(16.5 x 16.5 mm)より大きいです。
AriesコントローラについてSK Hynix(Solidigm)が詳しい情報を何も開示していないため推測になりますが、おそらく他社のPCIe 4.0コントローラと同じくAMR Cortex R5クラスのSoC(4コア)を搭載します。
AMR Cortexベースとなると、TSMC 12 nmプロセスを使って製造されています。SK Hynixは10 nm級のDRAMを製造できるファブを所有するものの、CPUやSoC向けの10 nm級ファブを持っているかどうか不明です。
SK Hynix向けのみTSMC以外のプロセスでARM Cortexを製造するとも思えないので、消去法でTSMC 12 nmプロセスでしょう。
Solidigm P44 Proの仕様上、Ariesコントローラは最大8チャネルのNANDメモリを束ねられ、対応する最大スループットは1600 MT/sです。
DRAMはSK Hynix製LPDDR4メモリを2048 MB搭載します。
残念ながらSK Hynixは型番検索サービスを提供していません。「H9HCNNNBKUML XRNEE」に関する情報は皆無に近く、動作クロック等は不明です。
NANDメモリはSK Hynix製176層 3D TLC NANDです。
他社と同じく2デッキ方式で176層(88 + 88層)まで積み上げ、512 Gbの記憶密度と最大1600 MT/sのスループットを実現します。
ビット密度は10.80 Gb/mm²に達し、Samsung製176層の8.5 Gb/m²やMicron製176層(B47R)の10.27 Gb/mm²よりも高密度です。
Solidigm P44 Pro 2TB | Samsung 980 PRO 2TB |
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= 2個使って容量2 TB (512 x 16 x 2 = 16384 Gb) | = 2個使って容量2 TB (256 x 32 x 2 = 16384 Gb) |
Solidigm P44 Proでは、記憶密度が512 Gb(= 64 GB)のチップを16枚重ねにして、合計16384 Gb(= 2048 GB)の容量に仕上げます。
ちなみに・・・、親会社のSK Hynixが販売中のフラグシップモデル「P41 Platinum」と並べてみると、瓜二つのコンポーネント構成を確認できます。
名前が違うだけで中身はまったく同一と考えて間違いないです。
- Solidigm P44 Pro SSD Review(StorageReview.com)
北米のStorageReview.comによる調査で、ファームウェアに差がある可能性が示唆されています。
VMWare上で動作するベンチマークをSolidigm P44 Proは完走できる一方、SK Hynix P41 Platinumでは動作しなかったとのこと。
Solidigm P44 Proの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | Solidigm P44 Pro 1TB Solidigm P44 Pro 2TB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9 5950X超えのマルチスレッド性能と、現行最強クラスのシングルスレッド性能で、最大14000 MB/s超えの次世代Gen 5 SSDも難なく処理できます。
原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「Solidigm P44 Pro」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題が見当たりません。
フォーマット時の初期容量は「1.86 TB」でした。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
読み込み速度が約7170 MB/sで、書き込み速度は約6700 MB/sを記録。読み込みで約200 MB/s近く、書き込みも約200 MB/sほどメーカー公称値を上回ります。
テストサイズを64 GiBに変更しても、シーケンシャル性能とランダム性能に大きな変化が見られません。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
Solidigm P44 Proは43.02 μsを記録し、競合するライバル製品と肩を並べる位置に。
書き込みレイテンシは9.49 μsでテストしたNAND型SSDとしてはトップクラスです。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
読み込み速度は512 KBから他のライバルSSDより速いスタートダッシュを切り、2 MBでピークに達します。拡大グラフを見ると、小さいファイルサイズでもかなりの性能が出ています。
書き込み速度は全体的にライバル製品よりやや遅め、8 MBにピークに達したあと若干ブレます。
Solidigm P44 Proを実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
Solidigm P44 Proのロード時間は「5.67秒」でした。
980 PROやCrucial P5 Plusなど名だたるハイエンドSSDを打ち負かし、HIKSEMI FUTUREに並ぶ最速クラスです。SK Hynix P41 Platinumと同様に、読み込みが得意な傾向です。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストした3タイトルすべてで、Solidigm P44 Proがライバルを押しのけてトップにつけます。TLC NAND型SSDとして過去最速のロードタイムです。
「原神」のロード時間を比較
大人気RPGタイトル「原神」のロード時間を実際にテストします。
- 初回ロード(データロード0%からクリック可能になるまで)
- 初回ロード(クリックしてから操作可能になるまで)
- モンドから千尋の砂漠へワープ
- 千尋の砂漠からスメールシティへワープ
- スメールシティから稲妻城へワープ
- 稲妻城からモンドへワープ
上記6パターンを録画ソフト(120 fps)を使って記録し、動画編集ソフトに取り込んでフレーム単位でロード時間を比較しました。
Solidigm P44 Proは「36.66秒」でした。ハイエンドDRAMレス組(Lexar NM790など)に一歩及びませんが、P44 Proも相当に速いです。
各シーン別のロード時間(※グラフの左から順番にパターン1~6並び)です。
初回ロードで大きく差がつきやすい傾向が見られます。Solidigm P44 Proの場合、一番最初のロードがやや遅い傾向です。
DirectStorageのロード時間を比較
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
と言ってもロード時間があまりにも速すぎて、絶対値で見るとわずか0.1~0.2秒の差です。Solidigm P44 Proなど、現行トップクラスのPCIe 4.0世代同士の比較では、コンマ秒レベルの差しかつかないです。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → Solidigm P44 Pro)のコピペ時間です。
写真フォルダとゲームフォルダは、Solidigm P44 Proが展開するSLCキャッシュの範囲内に収まるため、他のハイエンドSSDとほとんど横並びの性能です。
Zipファイル(256 GB)のみ、1 TB版と2 TB版で約40秒の差が開いています。大容量の単一ファイルの書き込みだとCrucial P5 Plusに首位を譲る結果に。
次は読み込み(Solidigm P44 Pro → Optane P5810X)のコピペ時間です。
読み込みは全体的にとても優秀です。Zipファイル、写真フォルダ、ゲームフォルダどれをとってもSolidigm P44 Proがトップクラスの読み出し性能を記録します。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。
4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約17.7%です。
Solidigm P44 Proは読み出しがかなり速い傾向が見られたため、Premiere Proプレビューも健闘するかと思いきや、他のハイエンドSSDと横並びにとどまりました。
従来の4K動画プレビューでは約7.9%でした。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
Solidigm P44 Proのストレージスコア(空き容量10%時)は「3480点」です。空き容量100%なら4476点で、空き容量による性能低下は約19.9%と大きいです。
性能の変化幅が思っていたより高いですが、空き容量10%時スコアで比較すると他のハイエンドSSDとほとんど横並びの状況です。
特にP44 Proの1 TB版は10%時スコアが3708点に達しており、TLC NAND型SSDで最高の実用スコアを記録しています。空き容量に余裕がある状態ならSamsung 983 ZETにすら迫る性能です。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
Adobeスコア、ゲームロードスコア、Officeスコアは他のハイエンドNVMe SSDと同等の性能です。
ファイルコピースコアのみ、WD Black SN770やNM790などDRAMレス系SSDに届かず・・・。最近のDRAMレスSSDはSLCキャッシュの展開が非常に賢いせいで、PCMark 10のコピーテスト※だとうまく吸収されてしまいます。
キャッシュ範囲を超過する大容量コピーテストなら、P44 Proの方が有利になるでしょう。
※PCMark 10 Proのコピーテストは基本的にキャッシュの範囲内に収まるため。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
(1枚目:比較グラフ / 2枚目:強調グラフ)
テスト開始時に6600 MB/s前後を叩き出し、約320 GB書き込んだあたりで1750 MB/s前後に下がります。テスト開始から約1560 GB経過したあたりで、唐突にSLCキャッシュが復活し6600 MB/sに戻った後、すぐにまた1750 MB/s前後に戻ります。
各段階ごとのざっくりとした内訳は・・・
- SLCキャッシュで爆速
- SLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動モードに変化
(= おそらくTLC NAND本来の性能) - SLCキャッシュが瞬時に復活して再び爆速
- すぐにTLC NANDへのデータ移動モードに戻る
「Aries」コントローラの詳細は不明ですが、空き容量の一部をSLCキャッシュとして利用する最近のハイエンドNVMe SSDによくある挙動です。
Solidigm P44 Proの場合、おそらく空き容量の3分の1、または最大320 GBをSLCキャッシュとして利用する仕様だと推測できます。
Samsung SSDの「Intelligent TurboWrite 2.0」などと似たようなシステムです。
1 TB版だと空き容量の3分の1、または最大215 GBをSLCキャッシュとして使っています。平均書き込み速度は2 TB版と大差ないです。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
1 TB版より2 TB版の方が展開できるSLCキャッシュサイズに約100 GBの差がある分だけ、最初の5分区間で2 TB版がリードしています。
しかし、SLCキャッシュを使い切ってTLCモードに移行した後はそれほど大きな性能差が出ません。15分で1 TB版が約1.8 TB、2 TB版が約1.9 TBを書き込んで終了です。
トップのLexar NM790 2TBに約60 GBほど追いつけませんでした・・・が、実用上は十分な書き込み性能と評価できます。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つです。
- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:NANDメモリの温度
- ドライブ温度3:SSDコントローラの温度
やや低めの温度が表示される1と2がNANDメモリ、もっとも高い温度を表示する3がおそらくSSDコントローラの温度です。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
テスト開始すぐに温度が急上昇し、わずか1分30秒でサーマルスロットリングが発生します。
SSDコントローラが90℃に達するとサーマルスロットリングで温度を下げ、性能がもとに戻ると即座にまたサーマルスロットリングが発生する繰り返しです。
Solidigm P44 Pro(1 TB)も、同じく90℃でサーマルスロットリングに陥りますが、温度の抑制スピードが2 TB版よりも高速ですぐに復活します。
- P44 Pro(1 TB):平均1725 MB/s
- P44 Pro(2 TB):平均1255 MB/s
復活スピードが速い分、平均書き込み速度も大きく差がついています。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使って撮影。
- SSDコントローラ:90 ~ 91℃
- DRAM:72 ~ 73℃
- NANDメモリ(左):75 ~ 76℃
SSDコントローラ周辺は90℃近くまで上昇します。DRAMチップは70℃前半、NANDメモリが75℃後半まで温度が上がります。
HWiNFOに表示されるセンサー温度とおおむね一致しており、温度センサーの信頼性が高いです。NAND側のセンサーは実際より高い温度を示しますが、低く表示するよりマシです。
Solidigm P44 Proは高負荷時の発熱がやや大きく、サーマルスロットリングも頻発します。過酷なワークロードを想定している方は、M.2ヒートシンクの装着を強くおすすめします。
少なくとも、マザーボードの付属M.2ヒートシンクにケースファンで風を当ててあげると安心です。
M.2スロットの場所が悪ければ、別売りのヒートシンクで高さを稼いでケースのエアフローが当たりやすいように配置するといいでしょう。
まとめ:メーカー純正PCIe 4.0世代の最強格
「Solidigm P44 Pro」のデメリットと弱点
- 空き容量による性能変化あり
- 高負荷時の温度が高い
「Solidigm P44 Pro」のメリットと強み
- 最大7000 MB/sのシーケンシャル性能
- DRAMキャッシュ搭載
- PCIe 4.0で最高峰の実用性能
- 大容量ファイルの書き込みが速い
- トップクラスのゲームロード時間
- 広大かつ迅速なSLCキャッシュ
- かなり速いランダムアクセス速度
- 十分な耐久性(500 ~ 1200 TBW)
- 大容量モデルあり(最大2 TB)
- Solidigm(SK Hynix)による
完全自社製造モデル - 専用ソフトでファームウェア更新に対応
- コストパフォーマンスが良い
- 5年保証
Solidigm P44 Proは、完全なメーカー純正品のPCIe 4.0世代としては(現時点で)最強格のNVMe SSDです。
特に1 TB版の性能は強烈で、新ベンチ環境で過去テストされたハイエンドNVMe SSDの中で最高のスコアを記録します。空き容量がある状態なら、SLC NAND採用の983 ZETに迫るほどの凄まじい性能を見せます。
1世代遅れの176層 3D TLC NANDでこれほどの性能を引き出す、SK Hynix「Aries」コントローラの優秀さは素直に感心せざるを得ません。
書き込み性能もさすがDRAMキャッシュを搭載しているだけあり、書き込みを得意とするSamsung 980 PROに匹敵する水準です。
空き容量の3分の1(または最大320 GB前後、1 TB版は最大210 GB前後)をSLCキャッシュとして利用でき、キャッシュの再展開もスピーディーでほとんどの用途に耐えられます。
Solidigm P44 Proを強くおすすめできます。
ハードウェア的にSK Hynix P41 Platinumと同等品ですが、StorageReview.comが示唆したように、より多様な用途に対応できるファームウェアが導入されている可能性があります。
オールマイティーな性能と幅広い用途に対応できるファームウェアにより、P41 Platinumよりもおすすめ度が高いハイエンドNVMe SSDです。
以上「Solidigm P44 Proレビュー:エンプラ級SSDにも迫る驚異的な性能【元インテルSSD】」でした。
(NANDメーカー純正ハイエンドモデルだからガチャ要素なし)
Solidigm P44 Proを入手する
2023年7月時点、Solidigm P44 Proの1 TB版が約1.1万円、2 TB版は約2.3万円から買えます。
タイムセール価格や、ポイント還元キャンペーン時のポイント込みで、1 TB版を実質1万円以下で買えそうです。2 TB版はまだ高いですが、P41 Platinumの値下がりぶりを見る限り・・・時間の問題だと思われます。
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使用者本体が経年劣化…
2TB購入を考えていますが、
FireCuda 530と比較してどちらがオススメできますか。
Solidigm自体が実質SK Hynixみたいなもんだから中身もSK Hynixなわけだけど、わざわざ別ブランド立ち上げるってことはブランド戦略的には「元インテル!」っていうのはやっぱり強いのかなぁ
レビューお疲れ様でした。
ビジネス界ではIntelの不良債権を押し付けられたSK Hynixオワコンと莫迦にされまくってましたね。
実際発売当初は案件出しまくっていましたし。
SK Hynixはこれからどうするのやら。
それはさておき、P44 ProはP41 Platinumを超えましたか。
下位モデルのP41 Plusの検証もお願いいたします。
Crucial信者の私としてはP3 Plusをフルボッコして貰いたい。笑
>Intelの不良債権を押し付けられた
買収後にNAND市場が供給過多になったという結果であって
不良債権を買わされたというのは言い過ぎな気がする。
ビジネス界では結果が全てで、莫迦にされても仕方のないことですが。
制裁の関係で完全にお荷物というか役ネタになった中国工場のことだと思います
同じモデルの別容量を買いそろえることは滅多にないので、せっかく1TBと2TBを用意されたのなら、基盤写真も並べた比較が見てみたかった
表では1GBとなっていますが、
512GBモデルのDRAMキャッシュは512MBという情報もありました。
https://theoverclockingpage.com/2023/04/26/review-solidigm-p44-pro-2tb-a-new-king-in-the-horizon/
実物を買ってみないと分からないですね…
ソリダイムは独自のドライバをインストールして使用することを勧めていますが、今回は使用されていないのでしょうか。
仕様表の512GB版のDRAMキャッシュが1GBになっていますが
>1MB per GigaByte
http://www.pcworld.com/article/2040455/solidigm-p44-pro-nvme-ssd-review.html
との情報があるので、512MBのようですよ
速度が大幅に低下する不具合が報告されている製品です。
買う人はよく考えてから買いましょう。