筆者は敬虔なサムスン信者でして、昨今のパフォーマンスリーダーの座から降りているサムスンに嫌気が差しています。
いつまでポッと出の中華勢にボコボコにされているの?・・・と。
ですが、今回レビューするサムスン最新作「990 EVO Plus」は期待に応えられる可能性があります。実際に1 TB版と4 TB版を買って詳しく比較レビューです。
(公開:2024/12/27 | 更新:2024/12/28)
Samsung 990 EVO Plusのスペックと仕様
Samsung 990 EVO Plus (MZ-V9S4T0B) | |||
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容量 | 1 TB (1000 GB) | 2 TB (2000 GB) | 4 TB (4000 GB) |
インターフェイス | PCIe 5.0 x2 / PCIe 4.0 x4 (NVMe 2.0) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | Samsung Piccolo | ||
NAND | Samsung製 236層 3D TLC NAND | ||
DRAM | なし | ||
HMB(DRAMレス)方式 | |||
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 7150 MB/s | 7250 MB/s | |
書込速度 シーケンシャル | 6300 MB/s | ||
読込速度 4KBランダムアクセス | 850K IOPS | 1000K IOPS | 1050K IOPS |
書込速度 4KBランダムアクセス | 1350K IOPS | 1400K IOPS | |
消費電力(最大) | 4.3 W | 4.6 W | 5.5 W |
消費電力(アイドル) | 60 mW | ||
TBW 書き込み耐性 | 600 TB | 1200 TB | 2400 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150 万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
MSRP | $ 85 | $ 138 | $ 240 |
参考価格 2024/12時点 | 16141 円 | 27253 円 | 44980 円 |
GB単価 | 16.1 円 | 13.6 円 | 11.2 円 |
- メーカー仕様表はこちらから
韓国の超大手NAND製造メーカー、サムスン(Samsung)が自ら製造して販売するミドルクラス向けNVMe SSD「990 EVO Plus」です。
従来モデルの「990 EVO」から、搭載するNANDメモリのグレードを大幅に引き上げた完全上位互換に相当します。技術的に説明すると、NANDメモリの積層数が133層 → 236層へ約2倍増です。
日本市場で猛威を振るう中華勢ハイエンドがよく使う、YMTC製 232層NANDメモリをわずかに上回る、コンシューマ向けで最高峰のNANDメモリです。
積層数の増加にともない、SSDの読み出し性能と遅延時間(レスポンス)が改善され、一般的な普段使いやゲームロードの高速化を見込めます。
その代わり、書き込み性能は理屈の上で悪化する見通しですが、実際にどうなるかはSamsungが自社で開発したSSDコントローラ「Samsung Piccolo」の腕の見せ所です。
TBW(書き込み耐性)の比較
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
Samsung 990 EVO Plus | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
書き込み保証値は容量1 TBあたり600 TBです。
一般的なTLC NAND採用SSDと同等クラスの保証値で、上位モデルの990 PROや従来作の990 EVOとまったく同じ保証値を維持します。
ハイエンド中華勢(HIKSEMIやLexar)より控えめな数値です。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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MOVE SPEED Panther (MOVE SPEED Panther:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA PRO (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN5000 (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 600 TBW | 900 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G3 (KIOXIA EXCERIA G3 PLUS:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
CFD SFT6000e (CFD SFT6000e:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
競合する中華ハイエンドシリーズより保証値が少ないといっても、大手メーカー製のハイエンド並の数値です。普通の使い方ならまったく心配なし。
- 普通に使った場合:約32.9年
(1日あたり平均50 GBの書き込みを想定) - 毎日AAAゲームをDLする:約16.4年
(1日あたり平均100 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの写真を入れる:約6.6年
(1日あたり平均250 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの4K~8K素材を入れる:約1.6年
(1日あたり平均1000 GBの書き込みを想定)
ワークロード別の想定耐用年数をざっくり試算してみた。
PS5の増設ストレージやゲーミングPCのメインSSDなど。ごく普通の使い方なら約30年以上もかかる計算になり、5年間のメーカー保証が先に切れるでしょう。
仮に1日100 GB書き込んでも、TBWを使い切るのに約16年です。4K~8K RAW写真や動画素材を毎日のようにゴリゴリと書き込む用途だと5年保証内に切れます。
一般的なPCゲーマーにとって十分すぎる保証値です。
写真や動画で業務に使うなら4倍のTBWがある容量4 TBモデルや、Nextorage Gシリーズなど高耐久モデルを検討してください。
Samsung 990 EVO Plusを開封レビュー
パッケージデザインと付属品
容量1 TBモデル(MZ-V9S2T0B-IT)と、容量4 TBモデル(MZ-V9S4T0B-IT)を購入しました。
水深200メートルの海を思わせる青色の淡いグラデーション背景に、ポツンとSamsung 990 EVO Plusが本体が浮かび上がってくる、どことなく清涼感が半端ないパッケージデザインです。
パッケージの裏面に、日本国内でサムスン製品の代理店をやっているITGマーケティング株式会社のサポート情報が記載されています。
- ITGマーケティング株式会社(ITG MARKETING)
- 電話:050-3116-3031
- 公式サイト:https://contact.iodata.jp/sp/samsung/ssd
万が一、5年保証を使う必要が出てしまったときは、購入元か公式サイトのお問い合わせから問い合わせます。
- SSD本体
- 説明書
紙製の頑丈な容器に梱包されたSSD本体と説明書が付属します。
基板コンポーネント
マットブラックに塗装された基板に、メーカーロゴやシリアルナンバーが記載されたラベルシールが貼ってあります。
裏面の厚み0.3 mmのラベルシールは基板の放熱を促す超薄型ヒートシンクを兼ねています。ついでに各国の規制認証ロゴマークがズラッと記載されています。
基板の表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな「片面実装」のNVMe SSDです。
取付スペースが狭いノートパソコンや、PS5の増設ストレージに使いやすいです。
製品ラベルシールを剥がして、Samsung 990 EVO Plusに実装されているコンポーネントを目視で確認します。
- コントローラ:Samsung Piccolo
A3NWW1B S4LY002 ARM PICCOLO H2434 - DRAM:なし
なし - NAND:Samsung 236層 3D TLC NAND
SEC 431 K90VGY8 J5BCCK0
SSDコントローラに「Samsung Piccolo」、NANDメモリにSamsung製「236層 3D TLC NAND(V8)」を搭載します。
SSDコントローラは従来モデルの990 EVO(無印)に引き続き、Samsung製「Piccolo」を続投。Samsung 5 nm製ARM Cortex-R8をベースにした6コア内蔵SoCです。
高負荷時の放熱性を高めるため、無印版になかった薄型ヒートシンクラベルが取り付けられています。
最大4チャネルのNANDメモリに対応、各チャネルごとに最大2400 MT/sの高いスループットで接続できます。中華ハイエンドSSDで有名な「MAP1602A」とほぼ同一の仕様です。
従来モデルと同様に、990 EVO Plusも「PCIe 5.0 x2 / PCIe 4.0 x4」接続に対応します。PCIe 5.0対応プラットフォームなら、わずか2レーンの帯域幅で7000 MB/s台をかんたんに達成できます。
PCIeレーンを2本単位で細かく分割できるマザーボードがまだ珍しいので現時点で役に立つか不透明ですが、将来的に2レーン分割が増えれば「増設のしやすさ」で990 EVO Plusに優位性が生まれる・・・かもしれません。
DRAMは搭載しません。
メインメモリのごく一部をDRAMキャッシュの代わりに使う「HMB(ホストメモリバッファ)」方式のSSDです。
DRAMが無いと書き込み性能が不利になる傾向がある一方、読み込みワークロードで有利になる傾向もあり、一概にDRAMが無いから悪いとも言い切れないので注意。
NANDメモリは「Samsung製 236層 3D TLC NAND(V8)」を採用。刻印は「K90VGY8J5B-CCK0」です。
従来モデルの990 EVOで搭載されていた133層 3D TLC NAND(V6P)から、一気に積層数が2倍に増加、インターフェイス速度が1600 MT/s → 2400 MT/sへ1.5倍に向上します。
ようやく中華ハイエンドで使われているYMTC製 232層 3D TLC NANDと同じ速度に並び、実効性能で対抗できる可能性が出てきました。
ただし、記録密度では2つのウェハを重ね合わせて製造するYMTC製に及ばないです。YMTC製が15.03 Gbit/mm²の密度、Samsung製は意外と少ない11.50 Gbit/mm²です。
4 TB:1024 Gb x 16 x 2 = 32786 Gb(4096 GB)
1 TB:1024 Gb x 8 x 1 = 8192 Gb(1024 GB)
990 EVO Plus(1 TB)では、記憶密度が1024 Gb(= 128 GB)のチップを8枚重ねて合計8192 Gb(= 1024 GB)の容量に。
容量4 TBも記録密度は1024 Gb(= 128 GB)で同じですが、チップの積層数を2倍の16枚に増やしてから、全部で2個搭載して合計32786 Gb(= 4096 GB)の容量に。
横からNANDメモリの高さを見てみると、4 TB版が厚み1.48 mm、1 TB版が厚み1.27 mm、4 TB版の方が0.21 mm分厚いです。
Samsung 990 EVO Plusの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | Samsung 990 EVO Plus 1TB Samsung 990 EVO Plus 4TB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9 5950X超えのマルチスレッド性能と、現行最強クラスのシングルスレッド性能で、最大14000 MB/s超えの次世代Gen 5 SSDも難なく処理できます。
原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 5.0 x2
- 対応規格:NVM Express 2.0
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「Samsung 990 EVO Plus」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。きちんと「PCIe 5.0 x2」で接続されています。
PCIe 4.0対応M.2スロットやPCIeスロットなら、「PCIe 4.0 x4」で接続される仕様です。
なお、Samsung 990 EVO Plusは最新規格のNVM Express 2.0規格準拠モデルですが、一般用途だとNVM Express 1.4規格と大差ないです。
フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。
搭載されたNANDメモリのうち約2.3%(約24 GB)を予備領域に割り当てて、長期的な製品寿命を優先する一般的な対応です。
純正ソフト「Samsung Magician」
Samsung公式サイトから無料でダウンロードできる、純正ユーティリティ「Samsung Magician」に対応します。
SSDの基本ステータス(S.M.A.R.T.情報)を見たり、シーケンシャルをベンチマークしたり、不良ブロックの検知するスキャン機能もあります。
一部のSamsung SSDで使える「パフォーマンスモード」です。
SSDを常にアクティブ状態にして応答速度を改善したり、空き容量の一部をキャッシュ化(= オーバープロビジョニング)して全体的な性能を向上させたり、性能に関わる設定に対応します。
WindowsがインストールされたSamsung SSDから、別のSamsung SSDへデータを丸ごとクローンする複製機能も対応。
もちろん、SSD本体の制御ソフトウェア(ファームウェア)の更新も可能です。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込みが約7100 MB/s近く、シーケンシャル書き込みが約5830 MB/s程度です。
わずかにメーカー公称値に届いてないものの、シーケンシャル性能を出しづらいIntel環境なら十分に有り得る状況です。シーケンシャルを得意とするAMD Ryzen環境なら問題なく公称値を出せるでしょう。
テストサイズを64 GiBに変更してもシーケンシャル性能に目立った変化がないですが、ランダムアクセス性能(RND4K Q1T1)が約20%下がってしまう症状が出ます。
DRAMレス(HMB:ホストメモリバッファ)方式のSSDでよく見られる典型的な性能特性であって、実際の利用シーンで問題や不具合は起こっていませんので安心を。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
Samsung 990 EVO Plusは40.6 μsで、他社のハイエンド中華SSD(232層品)と横並びの性能に。
書き込みレイテンシは平均的です。上位勢はPhison系コントローラにほぼ独占されています。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
小さいファイル領域(2 KB ~ 16 KB)で、読み込み速度が遅い傾向です。従来モデルからまったく改善されていません。
NANDメモリを133層 → 236層に倍増させても読み出し性能が改善しないなら、単純にSSDコントローラ側の問題だと予想できます。
書き込み性能は最初から最後までトップスピードを駆け抜け、中華ハイエンドの代表「HIKSEMI」に迫ります。
Samsung 990 EVO Plusを実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
Samsung 990 EVO Plus(1 TB)のロード時間は「6.33秒」、4 TB版で「6.04秒」とやや残念な性能。
中華ハイエンドシリーズはすでに5秒台の領域に足を踏み入れています。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストした3タイトルすべてで、Samsung 990 EVO Plusは競合する中華ハイエンド品(232層)に近いゲームロード性能です。
かなり健闘していますが、990 EVO Plusより価格が約4000円も安いCrucial T500に勝ててないのが、納得いかないです。
DirectStorageのロード時間を比較
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
Samsung 990 EVO Plusは0.24~25秒(17.18~17.22 GB/s)程度にとどまり、シーケンシャル性能の割に平凡なオチでした。
当然ながら中華ハイエンドシリーズに対して後塵を拝する状況は変わっていません。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → Samsung 990 EVO Plus)のコピペ時間です。
Zipファイルのコピーは保守的なpSLCキャッシュ制御に足を引っ張られ、2世代前の970 EVO Plusから性能がそれほど伸びなかったです。
写真フォルダー、ゲームファイルは目立って早くもない平均的な性能を示します。
次は読み込み(Samsung 990 EVO Plus → Optane P5810X)のコピペ時間です。
可も不可もなく・・・全体的に平凡な読み込み性能に終わります。中華ハイエンドシリーズやCrucial T500に対して明確に遅れを取ります。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。
4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約14.3~14.5%です。
コメントに困ってしまうレベルで平均的な性能ですが、Optane DC SSDを前提に制作した高難易度ベンチマークなので、10%前半台でもそれなりに耐えているクラスです。
TLC NANDを使っていながら10%を割ってしまう中華ハイエンドシリーズが異質に優秀なだけです。Samsung 990 EVO Plusは決してそこまで悪くな・・・いえ、価格を考えるともう少し頑張って欲しかったです。
4K動画プレビューのドロップフレーム率は0%で見事に完封。
DRAMキャッシュを搭載する980 PROや990 PROで突破できなかった0%の壁を、DRAMレス型の990 EVO Plusでようやく超えられました。
ちなみに、DRAMキャッシュ搭載型で0%に到達したSSDは「Crucial T700」ただ1枚のみ。それほどDRAMキャッシュは読み出しワークロードを阻害します。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
Samsung 990 EVO Plus(1 TB)のストレージスコア(空き容量10%時)は「3028点」です。空き容量100%なら4380点です。
空き容量による性能低下は約31%に達しており、価格を考えるとまったく褒められない派手な性能下落幅・・・。
なお、容量4 TBモデルなら下落幅をわずか2%に抑えられます。サムスンらしい保守的なpSLCキャッシュ制御が仇になっている雰囲気です。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
Samsung 990 EVO Plus(1 TB)は、ファイルコピー評価で大きくスコアを落としています。ファイルコピー以外のスコアなら、中華ハイエンドといい勝負です。
それにしても、どのスコアを見ても「Crucial T500」に勝ててないのが悲しい。コストパフォーマンスが高い・・・ とは言い難い戦況です。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
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Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
1 TB版はテスト開始からすぐにpSLCキャッシュが切れて、平均1000 MB/s程度まで下がります。
4 TB版ならpSLCキャッシュの範囲が大幅に拡大され、4500 MB/s前後の凄まじい速度をなんと2分強も維持します。キャッシュが枯渇したあとも平均2000 MB/s近い猛スピードです。
どうやら既存の手法だと、4 TB版のキャッシュ構造を完全に把握し切れない様子です。もっと強制的な手法でキャッシュ構造を深堀りします。
キャッシュ構造 | 平均書込速度 |
---|---|
1段階 pSLCキャッシュ | 3181 MB/s |
2段階 pSLC + TLC | 2136 MB/s |
3段階 TLCネイティブ | 1073 MB/s |
ブロックファイルを約3800 GB書き込むと、ざっくり3段階のキャッシュ構造が浮かび上がります。
pSLCキャッシュをフルに展開する平均3181 MB/sの爆速モードから始まり、およそ600 GBの書き込みでpSLCとTLCネイティブの混合モードへ移行します。
混合モードからさらに約1500 GBほど書き込み、ようやくpSLCキャッシュが完全に切れてTLC NAND本来(TLCネイティブ)の性能が出現します。それでも平均1073 MB/s台を維持しており十分な速度です。
Samsung 990 EVO PlusのpSLCキャッシュは「Intelligent TurboWrite 2.0」によって制御され、固定値 + 変動値でpSLCキャッシュの範囲を決定します。
容量1 TBなら6 GB + 108 GB前後の範囲で、容量4 TB版は理論上24 GB + 432 GBの範囲になるはずですが、今回の検証だと約600 GBに達します。
1 TB版はともかく、4 TB版ならほとんどのシーンでpSLCキャッシュを展開でき、常に爆速モードでファイルコピーが可能です。
pSLCキャッシュの再展開もスピーディーです。テスト終了直後でも平均4000 MB/s近い爆速pSLCキャッシュを約6~24 GBほども展開でき、普通に使っているとまったく不便を感じません。
もちろん、TRIM/GCコマンド※を送ると即時にpSLCキャッシュが全回復します。
※TRIM/GCコマンド:WindowsにSSDの空き容量を「再確認」させるコマンド。空き容量を正確に把握できるから、空き容量の割合にもとづいて変動する「pSLCキャッシュ」を高確率で復活させられます。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
Samsung 990 EVO Plus(1 TB)は15分で約1027 GBを書き込みます。中華ハイエンドの代表例、HIKSEMIに400 GBも遅れを取っています。
4 TB版は大幅に改善されて約1864 GBを書き込めますが、残念ながら中華ハイエンドの容量4 TBモデルに勝ててないです。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度3:NANDメモリの温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つですが、内2つが常に同じ温度を表示します。実質的に2つのセンサーです。
ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
容量1 TB版の場合、テスト開始直後からSSD温度が急上昇をつづけ、そのまま100℃を超えてしまいます。幸い、サーマルスロットリングらしき性能の乱高下は見られません。
一方で容量4 TB版は、センサー読みで100℃を超えるとサーマルスロットリングが疑われる挙動が入り、110℃付近ではっきりとサーマルスロットリングが発動している様子が分かります。
それでも平均1700 MB/s程度の書き込み性能を出せており、実用上はまったく不便なく使えます。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から約8~9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使ってSSDの表面温度(容量1 TBモデル)を撮影します。
- NANDメモリ(左):79 ~ 80℃
- DRAMキャッシュ(中央):なし
- SSDコントローラ(右):95 ~ 96℃
NANDメモリの表面温度はHWiNFOが表示するセンサー読み温度に非常に近い温度です。コントローラ側は10℃も上振れするものの、サーマルスロットリングの制御に問題なかったです。
同じ手順で容量4 TBモデルも確認します。
- NANDメモリ(左):81 ~ 82℃
- DRAMキャッシュ(中央):なし
- SSDコントローラ(右):98 ~ 100℃
1 TB版と同じく、NANDメモリ側はかなり正確で、SSDコントローラ側はやはり10℃上振れする傾向です。
温度の表示がやや不正確でも、サーマルスロットリングさえ正常に機能していれば実用上の問題は生じません。むしろセンサー側をあえて高めにして、トリガーに掛かりやすいように設定した可能性もあります。
なお、一般的によく使われるソフト「Crystal Disk Info」だとセンサー1(NAND側)が表示されるので注意。
別売りのM.2ヒートシンクが必要かどうかは好みによります。
温度の高さそのものより、サーマルスロットリングによる性能低下を回避する意味合いが大きいです。
何もつけずにケースファンで風を当てるか、マザーボード付属のM.2ヒートシンクがあったら取り付けるくらいで大丈夫。
まとめ:信頼性を取るか、絶対性能を重視するか?
(単純な性能では出遅れ気味)
「Samsung 990 EVO Plus」のデメリットと弱点
- DRAMキャッシュなし
- 素の書き込み性能は平凡
- 高負荷時の温度が高い
- 空き容量による性能変化が大きい(1 TB版)
- 保守的なpSLCキャッシュ(1 TB版)
- 価格設定がやや高い
「Samsung 990 EVO Plus」のメリットと強み
- 高速なシーケンシャル性能(7000 MB/s超)
- 空き容量による性能変化が少ない(4 TB版)
- 速いランダムアクセス速度
- ゲームロード時間が速い
- 広大かつ迅速なpSLCキャッシュ(4 TB版)
- 書き込みに強いキャッシュ構造
- 十分な耐久性(600 ~ 2400 TBW)
- 大容量モデルあり(最大4 TB)
- 4 TBモデルでも片面実装
- 非常にまれなPCIe 5.0 x2対応
- 純正ソフト「Samsung Magician」
- 完全な「Samsung自社製造」モデル
- 5年保証
以前レビューしたSamsung 990 EVO(無印)の改良版です。
NANDメモリの2世代ジャンプ(133層 → 236層)で読み出しワークロードが改善され、中華ハイエンドシリーズに対してそこそこ戦える性能に仕上がっています。
特に容量4 TBモデルは高性能です。pSLCキャッシュが広大かつスピーディーでストレス無く使えますし、空き容量が減っても高い性能を維持しています。
そのほか忘れがちですが、中華SSDと大きく差別化できている強みもあります。
マトモに使える純正ソフトが整備され、当たり前のようにオーバープロビジョニングを設定したり、ファームウェアの更新が可能です。
搭載コンポーネントの信頼性もサムスンSSDの強みでしょう。中華SSDよりガチャ要素が極めて低く、いつ購入してもデータシートどおりのコンポーネント内容に期待できます。
過去に何度かリビジョン変更をした事例はあるものの、消費者にとってデメリットの少ない、新型NANDメモリへの更新がほとんどです。
全体的に性能の割に価格設定がやや強気すぎる印象を拭えないですが、提供される無料ソフトウェアの充実ぶりや、コンポーネントの信頼性で一定の優位性があります。
なお、容量4 TBモデルは性能面でも十分な競争力があり、予算が許すならふつうに推せる久々のSamsung SSDです。・・・容量1 TBモデルは見なかったことにしましょう。
以上「Samsung 990 EVO Plusレビュー:敬虔なサムスン信者も推せる傑作の誕生?」でした。
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レビュー(2024年12月)時点の定価がおよそ4.5万円ほど、ポイント還元が大きいYahooショッピングや楽天市場なら、実質4万円切りを狙えるときがあります。
筆者はAmazonのキャンペーンポイント(7%還元)時に買いました。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
おすすめなSSDを解説
CrucialT500はDRAM搭載だと思います!
すみません、T500はDRAM搭載でしたね。もう自分の脳内でT500が完全にDRAMレス扱いになっていて、無意識にそう書いてしまうのが辛い。(記事は修正しました)
実売価格がT500の方が安いので比較対象として合ってるのでは
書き忘れました。1TB限定ですが
4TBだと価格的にも悪くないですね
メインストレージに中華SSDは若干抵抗があったので、こちらを候補にしようと思います
いわゆる定価だと+5000円で990 PRO 4TBが候補に入ってくるからちょっと立場が厳しいかな、と思ったけど、下のコメントでYahooショッピングなら実質3.4万円で買える瞬間もあるらしく。その値段だったら断然990 EVO Plusで良いですね。
ブラフラでモニター買ったばっかみたいですけど、12月に新発売したIO-dataのADSパネルで240HzのEX-GD242UDWのレビュー予定ってありますか?
今さらADSかぁ・・・と思ったものの、定価3万円なら悪くはなさそう(ウォッチリストに入れてみた)
一番上のスペック比較表、製品名下の型番は4TBのもので、TBWや価格では1、2、4TBで別れてるけど容量の記載がないですね
追記しました
ヤフショ、クリスマスセールだと4TBは実質34kぐらいでしたね
実質3.4万円なら文句なしのコストパフォーマンスです。ぼくはブラックフライデーで実質4.1~4.2万円くらい。これでも容量あたり1万円近いから悪くはないと思ってます(中華ならもっと安いけど品薄傾向が酷いですし)。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事のCrucial T700レビュー:秒速12 GBのモンスターNVMe SSD【Gen5世代】のリンク先がSamsung 990 EVO Plusレビューになってるッス
NANDメモリの厚みが誤ってると思います。とんでもなく分厚いw
むしろ本当なら興味本位に買ってみたいと思ってしまう…。
小数点が左に1つズレてました・・・ 正しい画像に修正しました
いつもレビューありがとうございます。過去の記事も見ているのですが、SSDの消費電力の実測はしていないのでしょうか?どれを選んでも誤差程度の差しか出ないということでしょうか。モバイルノートPC用のSSDを検討しているため気になった次第です。今のところ電力効率が100%向上したと謳われているSN7100に期待をしています。