グラフィックボードの3つのファン仕様:内排気、外排気、そして水冷の違いをまとめて解説

グラフィックボードを冷却する方法は基本的にファンを使うことで一貫している。そして、どのようにグラボの熱を排出するかは大きく3つの仕様(種類)があります。ブロワーとも呼ばれる「外排気」、オリファンモデルで多用される「内排気」、そして「水冷」です。

それぞれメリットとデメリットがあるので、順番に解説してみる。

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3つあるグラボのファン仕様

1. 小型ケースに最適な「外排気」(ブロワー)

グラフィックボードのファン仕様:外排気

NVIDIAのリファレンスモデルで頻繁に見られるファン仕様です。80mm程度の小型ファンを使ってケース内部の空気を吸い込んで、グラボの背面(HDMIやDisplay Portがある側)から排気する

BTOではG-tuneがNEXTGEAR-MICROなど、PCケースが小さめのモデルで外排気仕様のグラフィックボードをよく採用している。外排気は熱をケース内部に垂れ流しにしないので、少ないエアフローで冷却性能を得られるためです。

もちろん、ファンの口径が80mm程度と小さいため、ファンの回転数が上昇すると容易に騒音になってしまうのがデメリット。エアフローが適切でなくても外排気は冷えやすいが、静音性は犠牲になりやすい。

「外排気」のメリット:小型ケースに最適

  • エアフローが少なくても冷える
  • 窒息 / 小型ケースに最適
  • 熱をケース外に排出できる
  • SLI / CrossFireを運用しやすい

主なメリットは以上の通り。

熱をケース内に残さず外気に頼らないため、エアフローが確保されていない窒息ケースでも比較的冷却がしやすい。そして周辺温度への影響が少ないので、グラボを複数枚使うSLI(またはCF)でも、割りと運用しやすい。

熱をケース内部に垂れ流す「内排気」を2枚重ねると、必ず一方のグラフィックボードだけGPU温度がかなり高くなる(10℃以上の場合もある)が、「外排気」なら1~2℃程度に抑えられる。

「外排気」のデメリット:冷却性能と騒音

  • 小型ファンゆえに静音性が悪い
  • オリファンモデルの内排気に冷却性能で負ける
  • 制限されたオーバークロックの伸びしろ

デメリットはこの通り。

オリファンモデルで見られる大口径の「デュアルファン」や「トリプルファン」仕様が稀なので、静音性が悪い。冷却性能にも限界があり、デュアルファン仕様のグラボには負けます。

Founder’s Edition(外排気)MSI Gaming X(内排気)ASUS ROG Strix(内排気)

GTX 1080 Ti / リファレンス VS オリファン (via)

  • Founder’s Edition
    84 ℃
  • MSI Gaming X
    69 ℃
  • ASUS ROG Strix
    67 ℃
  • MSI Gaming X Trio
    68 ℃

外排気仕様のFounder’s Editionと、デュアルファンのMSI Gaming X、トリプルファンのROG Strixを比較するとこの通り。冷却性能において、外排気モデルが内排気モデルに勝つのはほぼ不可能。

…そして冷却性能が制約されるということは、オーバークロックの伸びしろも縮小されることを意味する。結論として初心者向けというよりは、やや中級者向けのファン仕様ですね。

2. 万人向けな「内排気」

グラフィックボードのファン仕様:内排気

リファレンスモデルではなく、オリジナルファンモデル(各社グラボメーカーが独自に開発した冷却機構を備えるグラボのこと)で頻繁に採用されているのが「内排気」仕様。

外排気と違って、内排気はGPUのチップ面からヒートパイプを使って熱を回収し、ヒートシンクにたまった熱を100mm前後の大口径ファンを用いて一気に外部へ排出します。

非常に効率が良く、安く作ってもそれなりに高い冷却性能を得られる。ファンの品質(フィンの形状や軸受け)を高めれば、内排気ではまず実現できない静音性も両立できる。

「内排気」のメリット:冷えやすく静か

  • 外排気よりも冷えやすい
  • 優れた静音性を得やすい
  • 多くの一般的なPCケースに最適
  • オリファンモデルは品揃えが幅広い
  • オーバークロック済みであることが多い

主なメリットは以上の通り。

なんと言っても冷えやすいこと。GPUダイから直接ヒートシンクに熱を回収し、ファンで吹き飛ばすため冷えやすい。そしてヒートシンクの大型化や、ファンの仕様改善で更なる冷却性能を得ることも出来る。

そのため、ASUSやMSIといったベンダーからは数多くのオリファンモデルが展開されている。コンパクトなPCでも使えるショート基盤モデルや、全長30cmを超えるトリプルファンモデルまで。

多種多様なラインナップがあり、ユーザーに与えられている選択肢が多いのが嬉しいところ。そしてベンダー側がGPUチップを選別し、オーバークロックを既に施してあるモデルまである。

空冷グラボで屈指の冷却性能と静音性を持つ「MSI Gaming X」

GTX 1080 Ti / 静音性の比較 (via)

  • Founder’s Edition
    41 dBA
  • MSI Gaming X
    38 dBA
  • ASUS ROG Strix
    39 dBA
  • MSI Gaming X Trio
    34 dBA

あと、外排気と比較して静音性に優れることも忘れずに。MSIの「Twin Frozr」ファンなど、優れたファンを採用するグラボは冷却性能だけでなく、ファン回転数毎の静音性にも優れている。

「内排気」のデメリット:エアフローが必要

  • 冷却機構が巨大なボードはPCケースを選ぶことも
  • 適切なエアフローが必要
  • SLI / CrossFireには向かない

デメリットはこの通り。

グラフィックボードによりますが、中にはファンを3つ搭載する大型ボードもあります。こういった大型ボードの全長は30cmに達することも珍しくないので、当然PCケースを選ぶ。

大きいグラボを使う場合は、事前にPCケースの仕様書を確認して「グラフィックボード:全長28cmまで対応」といった記述が無いか確認しよう。

次に注意したいのがエアフロー。外排気の場合は、グラボの熱を直接ケース外に排出するので、エアフローが少なくても比較的冷やしやすい。しかし、内排気は熱気をケース内部に垂れ流しにする。

よって、ケース内部にたまった熱を適切にケース外へ運ぶエアフローが無ければ、ケース内部の温度上昇とともにグラボの温度も上昇してしまう

内排気のグラボはエアフローが重要

少なくとも吸気ファンが1個、排気ファンが1個で空気の流れを揃えていないと、オリファンモデルの持つ冷却性能を引き出すことは難しくなってしまう。

3. 圧倒的に冷える「簡易水冷」

グラフィックボードのファン仕様:簡易水冷

GPUチップ面に簡易水冷ユニットを取り付け、クーラントと呼ばれる冷却液とホースを使って熱をラジエーターに運び、そこでファンによって熱が排出される仕組みです。

価格が非常に高く、オリファンモデルでも十分に冷える現状では売れ行きが良くない様子。実際、水冷化を施したモデルを売っているメーカーは少なく、在庫も極めて限られているのが現状。

「簡易水冷」のメリット:とにかく冷える

  • 抜群に冷える
  • エアフローが無くても冷える
  • ラジエーターが大型なら静音性も期待できる

メリットをまとめた。

液体を使って熱を運ぶわけですから、空冷より圧倒的に効率が良い。しかも熱はラジエーターまで運ばれてから排出されるために、ケース内に熱を垂れ流すわけでもない。

そして140mmを超える大型のラジエーターを使うことで、より少ないファン回転数で高い送風量を得ることが可能になるため、冷却性能と静音性の両立も容易です。

「簡易水冷」のデメリット:省スペース性に劣る

  • ラジエーターを設置するスペースが必要
  • PCケースをかなり選ぶ
  • コストが高い
  • SLI / CrossFireには向かない

デメリットはこの通り。

課題はやはりラジエーターがケース内部の空間をかなり占有してしまうことです。ラジエーターは単に横幅がデカイだけでなく、厚みも結構スゴイ。そこそこ大きいケースじゃないと、組み立ても難しい。

次に問題なのが、CPUにも簡易水冷を使っている場合です。どこにグラボ用のラジエーターを置けば良いのか、ケースは複数のラジエーターに対応しているのか、ホースの長さは足りるのか。

などなど、複数の簡易水冷ユニットを使おうとすると、何かとスペースの問題が発生します。空冷ファンモデルと比較して、使えるPCケースは大幅に制限されるだろう。

こうしたスペースの問題から、SLI / CrossFireにも向いていない。G-tuneやサイコムは、ホースを途中で合流させて同じラジエーターに熱を送る「ダブル水冷」で、この問題を解決しているが…。

個人レベルでホースを分岐させたり合流させたりするのは、かなり難易度が高いので現実的な選択肢ではない。

最後にコスト。MSIやGigabyteなどのベンダーが販売しているハイブリッドモデル(水冷化済みモデル)は、オリファンモデルと比較して30%以上も値段が高いです。

解決策としては、NZXTが販売している「Kraken G12」のようなグラボを水冷化できるキットを使う方法。しかし、これでも+2~3万円のコスト増になるので、決して安いとは言えない

ハイエンドGPUのSLI構築では「本格水冷」も選択肢

GTX 1080 Tiを3枚、Titan Vを4枚など。弩級のSLI環境を構築するなら、本格水冷(DIY水冷)が選択肢になる。簡易水冷と違って、GPUダイにクーラントが直に触れるようにするため、冷却性能は遥かに高い。

もちろん、DIY水冷は非常に難易度が高い上に、コストもバカにならないので至高のハイエンドマシンを予算度外視で組みたいという人以外にはオススメしません。

技術は無いけどどうしても本格水冷を施したマシンが欲しい…場合は、オリオスペックというBTOメーカーが「カスタム水冷PC」を販売している(特注限定)ので、見積もりを送ってみると良いかも。

→ オリオスペックのカスタム水冷PC

結論、特に理由がないなら「内排気」でOK

ここまで、現在のグラフィックボードで採用されている3つのファン仕様(冷却方法)について解説してきた。結論を言うと、よほどの理由が無いならスタンダードな「内排気」モデルでOKです。

筆者自身も、手持ちのグラボのほとんどすべてが内排気のファンを持つオリファンモデルだらけ。外排気や簡易水冷のグラボは一切持っていません。

内排気、外排気、簡易水冷の違いまとめ

冷却方法内排気外排気簡易水冷
代表例MSI Gaming XELSA STMSI Sea Hawk X
冷却性能優秀普通極めて優秀
静音性良い悪い良い
OC耐性高い普通高い
バリエーション豊富限定的限定的
省スペース性ショートモデル有普通悪い
エアフロー必須不要不要
コスパ良い普通悪い
おすすめ万人向け窒息ケースならアリコアゲーマー向け

エアフローを確保しにくい窒息ケースを使いたい場合は、エアフローの影響を受けずにグラボを冷やせる「外排気」モデルを。

グラボをオーバークロックして可能な限り性能を引き出したいと考える、コアゲーマーなら圧倒的な冷却性能を持つ「簡易水冷」モデルを。

もし、どちらにも該当しないのであれば普通の「内排気」モデルのグラボで十分。最近はケースファン付属のPCケースも多いため、エアフローの確保はさほど難しくない。

BTOでゲーミングPCを選ぶ場合は?

この場合も「内排気」モデルのグラボが入っているゲーミングPCを選ぶようにしよう。

ガレリアXV」で採用されていたPalit製のグラボ

ドスパラのガレリアシリーズは、Palit社製のデュアルファンモデルを多用しているため万人向けです。安いくせに、そこそこ冷えて、それなりに静かなグラボですよ。

以上「グラフィックボードの3つのファン仕様:内排気、外排気、そして水冷の違いをまとめて解説」でした。

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9 件のコメント

  • 本日おそらくM.2が故障しました。
    ブルースクリーンが出てもゴリ押しでしばらく使っていたのですがエラーが出すぎて再インストールしようとしても最後にやはりエラーが出てしまいます。
    これはもうM.2が逝ってしまわれたということでしょうか?
    管理人さんはこういった経験ありますか?

    • Windowsが起動しない…ということでしょうか?

      原因としてはWindowsをブートさせるために必要な「MBR」と呼ばれるデータが破損してしまったことにあります。
      AOMEIなどのソフトでMBRは修復できるらしいですが、有料なので試していません。筆者の場合は、Windowsのインストールメディアからスタートアップ修復を使って治しています。
      それで治らない場合は、コマンドプロンプトからbootrec /fixbootを実行して対処しています。これでもダメな場合は、他のPCにつないで大事なデータだけ回収し、フォーマットして再インストールですね。

      参考:コマンドプロンプトからWindowsを復旧する4つの方法

      < これはもうM.2が逝ってしまわれたということでしょうか?

      壊れたかどうかは、BIOSから確認すれば分かります。M.2 SSDをちゃんと挿し込んでいるのに、BIOSから全く認識されないのであれば…残念ながら故障の可能性が高いです。

  • 各冷却の特徴が非常にわかりやすく纏められていて有難い良い記事ですねっ!
    大きなファンとヒートパイプを用いた外排気タイプがあればどんなケースにも適合しそうですが無いのですね…。
    最近のグラボやCPUの発熱が増えてる気がしますし之からは簡易水冷タイプが増えるのかなぁ
    簡易水冷タイプは中の水が干からびちゃうかどうかが気になります。(万が一干からびたらGPU即死するんじゃ)

    • < 簡易水冷タイプは中の水が干からびちゃうかどうかが気になります。
      簡易水冷ユニットはAseteckというメーカーが作っていて、そのメーカー曰く「クーラントの蒸発には細心の注意を払って制作している」とのこと。

      ホースの材質を改善した結果、5年くらいはほとんどのクーラント液が残っている状態を目指していると。
      不良品を引かない限りは、最低でも3年はマトモに使えると考えて大丈夫。
      月日が経って「最近あんまり冷えないな…」となったら、それが交換時期になります。
      一夜にしてクーラント液が蒸発することは無いので、突然壊れる心配は少ないですね。

      • 3年から5年ですか ありがとうございます。
        温度は常にチェックする必要があるんですね。警告音とかないとなると少々怖いですね

      • 横からですけど漏水の心配や電蝕?の方のリスクはどれくらい考えたらいいと思いますか?
        最近空冷クーラー良いのに換えたばかりなのもありますがどうにも簡易水冷には懐疑的な意識が抜けなくて…

        • 空冷で間に合っていて、かつ簡易水冷に対してリスクを感じているなら、空冷で良いと思いますよ。
          何百万と金が掛かるワークステーションを作っているメーカーでも、万が一、水冷が故障した時のリスクを想定して爆音の空冷をあえて採用するくらいですし。

          とはいえ、クーラント液が漏れる可能性は非常に低くて、価格コムのレビューを調査しても液漏れ被害はめったに見つかりません。
          パソコンの掃除中にうっかりホースを強く引っ張ったりしない限りは、液漏れはかなりレアな事象かと…。

  • 水冷のデメリットに
    液漏れとそれの影響でショートする。
    を追加した方が良いと思います。
    配線充填済みでも漏れるときは漏れる、という話ですね。

  • 最近はNVMe M.2 SSD拡張ボードやAIC NVMe SSDなどPCIeに刺すものも増えてきており,スロット間がギュウギュウになることもある思うのでスロットにカードをたくさん刺す人は内排気ではなく外排気を使うべきだと思うのですがどうでしょうか?

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