INNOCN 27M2Vに脳を灼かれたあの日から早2年、Mini LEDゲーミングモニターの性能はもっぱら横ばい気味です。
しかし、今回レビューするゲーミングモニター「32R84」が約2年の停滞に終止符を打ち、新時代の4K HDRゲーミングモニターが何たるかを示します。

(公開:2025/7/13 | 更新:2025/7/13)
「TCL 32R84」はどんなゲーミングモニター?
- 4K(3840×2160)で「最大165 Hz」
- 「Fast HVA + 量子ドット」パネル採用
- Mini LED(1400ゾーン分割)搭載
- Display HDR 1400認証を取得
- PS5で120 Hz(VRR)かつSwitch 2も対応
「TCL 32R84」をざっくり要約するなら、今のところ(記事を書いた時点)、コンシューマ向けで文句なしに最強格の4K HDRゲーミングモニターです。
従来比で約1.3倍も多い1400ゾーン分割のMini LEDバックライトを備え、高いコントラスト比と応答速度を改良したTCL CSOT製「Fast HVA」パネルを合体します。
IPSパネルを凌駕するコントラスト感を目指しつつ、IPSパネル並の応答速度も両立を狙う野心的なパネル構成です。
TCL 32R84 | |
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パネルタイプ | 4K(3840×2160)で最大165 Hz Fast HVA + 量子ドットパネル(32インチ) |
応答速度 | 1 ms (G2G) |
主な機能 ゲーマー向け |
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調整機能 エルゴノミクス |
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VRR機能 | AMD FreeSync Premium ※G-SYNC互換モード対応 |
参考価格 ※2025/7時点 | ![]() |
Amazon |
TCL 32R84 | |
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画面サイズ | 31.5インチ |
解像度 | 3840 x 2160 |
パネル | Fast HVA + 量子ドット (Fast HVA + QD Mini LED) |
コントラスト比 | 3000 : 1 |
リフレッシュレート | 165 Hz (3840 x 2160) HDMI 2.1 : ~165 Hz DP 1.4 : ~165 Hz |
応答速度 | 0.03 ms (G2G) |
光沢 | ノングレア |
VESAマウント | 100 x 100 mm |
エルゴノミクス |
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主な機能 |
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HDR対応 |
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同期技術 | AMD FreeSync Premium ※G-SYNC互換モード対応 |
スピーカー | ステレオ(3W x2) イヤホン(3.5 mm)端子あり |
主な付属品 |
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寸法 | 714 x 596 x 250 mm |
重量(実測) |
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保証 | 3年保証 ※液晶パネルは1年保証 |
「TCL 32R84」は、QLED TVシリーズで知られる中国の巨大家電メーカー「TCL」自ら開発した、超パワフルな4K HDRゲーミングモニターです。


Display HDR 1400認証をクリアできるほど驚異的な明るさと、OLED(有機EL)パネルにも比肩する黒を両立するため、「Fast HVA」パネルと「Mini LED」を合体させています。
加えて、ド派手で鮮烈な色彩表現を可能にする「量子ドット」フィルターも搭載済み。
本当にその世界を体験しているかのような「錯覚」を生み出すために、TCL独自技術をふんだんに投入します。
OLED(有機EL)パネルとまったく方向性の違う、パワフルでダイナミックな映像体験に期待できるゲーミングモニターです。
なお、性能や画質だけでなく、定価10万円オーバーのハイエンド機に求められる「機能性」もきちんと備えています。
無いよりあった方が便利な内蔵スピーカーや、最大90 W(USB PD)とDP Alt Mode対応のUSB Type-Cポートに、複数のパソコンを操作できる「KVM」機能など。
同価格帯の4Kゲーミングモニターと匹敵できる程度の機能性です。

メーカー標準保証は3年間ですが、液晶パネルのみ1年間です。
ドット抜け(黒点や輝点)について業界基準に準ずるとあり、4K解像度にそのまま適用すると最大16ピクセルまで許容されます。
しかし、実際にメーカーサポートがどのような対応をするか不明です。16ピクセル以下のドット抜けでも案外あっさり交換してくれたり、逆に不満な対応をされてAmazonに返品する事例もあります。
返品と返金サポートはAmazonが最強ですので、万が一に備えてAmazonで購入が無難でしょう。

TCL 32R84の画質をレビュー

(初期設定はそこそこ青白いです)
TCL 32R84の初期設定の画質は、黒に近いグラデーションが見分けづらい黒つぶれ気味、かつ素人が見ても分かるレベルに「青白い」色合いに偏っています。
もちろん、メーカーの意図がハッキリと読み取れます。TCLは中国の家電メーカーですが、日本も含めアジア圏では「白 = 青白い」と認識される傾向が強いです。
標準規格に合わせて色作りをしてしまうと、「黄ばんでいる」など逆にクレームの原因になりかねず、テレビ製品と同様の色作りをあえて選んでいる可能性が濃厚です。


なお、筆者は標準規格を好みます。
いつもどおりキャリブレーター(測定機材)を使いながら、モニターの色を標準規格の白(D65)に調整します。

キャリブレーターで測定しながら、モニター側の設定(OSD)を手動で調整しました。
- モード:標準
- Local Dimming:標準
- 明るさ:54~55
- 色温度:ユーザー
- 赤:52
- 緑:48
- 青:45
- 暗部強調:+1
以上の設定で、ニュートラルな色温度(白色)である6500Kにおおむね調整できます。好みに合わせて青色を少し強くしても大丈夫です。
黒つぶれ気味な暗部階調を修正するために、わざと「暗部強調」モードを+1に引き上げて、黒に近いグラデーションを持ち上げます。
画面の明るさは好みに合わせて調整してください。明るさ54~55%だと約350 cd/m²前後に達し、人によっては眩しく感じるレベルです。
手動調整後のガンマカーブとグレースケール(色温度)グラフです。

薄暗く青白い雰囲気を取り除き、標準規格(D65)におおむね一致させました。分かりやすく色鮮やかな画質に仕上がった印象です。
参考写真と比較写真でざっくり画質を見る
(sRGB:ΔE = 4.97 / 色温度:6432K / 輝度:350 cd/m²)
Youtubeやアニメ、FPSゲーム(タルコフやOverwatch 2)、RPGゲーム(原神や崩壊スターレイル)をTCL 32R84で表示した例です。
ゲーミングモニターで主流になりつつある、Fast IPS(AHVA)パネルと比較して、明確にビビットで鮮烈な色彩表現です。

(コントラスト比10万:1のテスト画像)
Mini LED(1400分割)とVAパネルの組み合わせにより、コントラスト比は約6200:1にも達します。IPSパネルより黒がさらに深く見え、わずかながら立体感も感じられます。
もちろん、無限のコントラスト比を持つOLED(有機EL)パネルに勝てないですが、画面の明るさは圧倒的にTCL 32R84が有利です。
明るい色を鮮やかに感じてしまう「ハント効果」も合わさり、(個人的に)OLEDパネルよりエネルギッシュでパンチの効いた映像観を表示できている印象です。

カラフルな色彩を使ったイラスト画像(原神の★5恒常キャラ「刻晴」より)で比較。
量子ドットの効果で色が鮮やかに見え、Mini LEDバックライトの高い明るさ(輝度)も効いて、主観的に見てTCL 32R84が好ましい画質です。
刻晴が身につけている黒い階調だらけのドレスの細かなディティール表現も、TCL 32R84が勝っています。
カルト的な人気を誇るオープンワールド型FPS「Escape from Tarkov(タルコフ)」のワンシーンで比較。
いつもレビューで指摘しているとおり、このような「映えない」「無味乾燥」した映像だと、意外とパネルの性能差が分かりにくいです。
しかし、今回のように高輝度パネルとOLEDパネルの比較であれば、良いか悪いか別として「差」は明らかに感じ取れます。
暗部の潰れ具合(ディティール表現)や、そもそもの明るさがまったく違います。
OLEDパネルは無限のコントラスト比を持っていて、TCL 32R84をはるかに凌駕するものの、コンテンツ側のコントラスト比が低いと効果も薄いです。
コントラスト比の性能差を見やすくするために作成した、黒を大量に使ったスクリーンショット(ヘルタ:崩壊スターレイルより)です。
写真だと少し分かりづらいものの・・・、ほんのわずかにKTC G32P5の方が黒が真っ暗に見えます。
測定機によると、上記シーンでTCL 32R84が約4500:1ほど、KTC G32P5はOLEDだからInf:1(∞)のコントラスト比です。
黒色の深みや白浮きの度合いで、コントラスト比が約180倍以上も高いKTC G32P5がさすがに勝利します。
もっと比較写真を見たい方は↑こちらからどうぞ。
測定機材で「画質」をもっと深堀りしよう

2台の測定機材(X-rite i1 Pro 2 + i1 Display Pro Plus)を使って、TCL 32R84の画質を深堀りします。
色域カバー率(CIE1976) | ||
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![]() | ||
規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 100% | 100% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 94.4% | 97.8% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 95.7% | 97.4% |
Rec.20204K HDR向けの色域 | 76.0% | 80.1% |
TCL 32R84で表示できる色の広さ(色域カバー率)を測定したxy色度図です。
もっとも一般的な規格「sRGB」で100%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では97.8%カバーします。
印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は97.4%です。
過去の傾向からして、色の広さは量子ドット液晶 > 量子ドットVA = QD-OLED > 広色域な液晶 = OLED > 普通の高色域パネル > 平凡な液晶パネル > TNパネルの順に並びます。
色の鮮やかさ(色の広さ)を他社のゲーミングモニターと比較してみた。
量子ドット + VAパネルらしく2段目のグループ(Rec.2020:80%台)に入ります。量子ドットIPSパネルや量子ドットOLEDと比較して、約3~7%ほどRec.2020が狭いです。
DCI P3カバー率が100%近いため、ほとんどのコンテンツを正しく表示するのに十分な色域です。
DCI P3カバー率に限った競争であれば、既存のFast IPS系で十分に満たせる現状があるものの、色域をすべて使うゲーミングPC(Windows 11※)なら違いを体感できる可能性あり。
※Windows 11はPCモニター側が対応している色域を把握しません。相手を「sRGB」だと思い込んでそのまま色を出すから、結果的にモニター側の色域をすべて使う仕様です。

ゲーミングモニターの多数を占めるIPSパネルと比較して、Fast HVAパネルは明らかに黒色が深く見える優れたコントラスト感です。
コントラスト比を比較 ※クリックすると画像拡大 |
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![]() |
コントラスト比(実測)は2904:1(ネイティブ)です。Local Dimming:標準モードで約6200:1まで向上します。
平均的な液晶パネルの約3~7倍も高いです。
色が均一の静止画コンテンツを見ている時間が長いオフィスワークで、気にする人が多い「色ムラ」をチェック。
過去レビューの傾向からして、やはりMini LEDバックライトを使った液晶パネルは色ムラが少ない傾向です。四隅に近づくほど輝度が下がる「グロー」現象も多少マシです。
色ムラ(輝度ムラ)の測定結果は平均値で2.57%を叩き出し、姉妹モデル「TCL 27R83U」に並ぶ液晶パネルでトップ記録を更新します。
実際の映像コンテンツやゲームプレイシーンで色ムラに気づく可能性がほとんどなく、画面全体に同じような色を表示するシーンを凝視してようやく色ムラや輝度落ちに気づけるレベル。


TCL 32R84に施されたパネル表面加工は、PC用モニターで定番の「ノングレア加工(アンチグレア)」です。
ぼんやりと背景がしっかり拡散され、周囲が明るくても映り込みをかなり防いでいます。

部屋を暗くすると、映り込みがさらに軽減されます。
透過性(表面粒子の細かさ)に優れた加工が施され、映り込みをうまく防ぎながら光を反射しすぎない、ちょうどいい塩梅に調整されています。
VAパネルが苦手とする視野角は依然としてイマイチです。Fast HVAなら改善されているかと淡い期待を抱いていましたが、ダメでした。
角度を少し変わると画面がうっすらと白浮きし、角度を大きくつけると奥が暗く見えます(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
画面との距離が近すぎると、画面の端にあるコンテンツがやや色褪せて見える傾向も・・・。できれば、奥行き80 cmくらいのデスクで使いたいです。
文字のドット感(見やすさ)はとても鮮明です。
- ドットがRGB配列:テキスト表示に有利
ピクセル配列の拡大写真 - 画素密度が140 ppi前後:やや高密度なドット密度
テキスト表示に有利な縦に一直線の直列RGB配列パネルに、140 ppi前後のやや高い画素密度を備えます。

普通の距離感(50~60 cm)で見る分には、ドット感がほとんど目立たない鮮明なテキストです。
画面の明るさは100%設定で約800 cd/m²超、とんでもない明るさです。SDRコンテンツを見るのに十分すぎる明るさで、安価なHDR 400~600モニターすら超えています。
最低輝度(0%設定)は約13 cd/m²とかなり暗くできます。眼精疲労などが理由で、夜間に暗い画面を好む人にとって嬉しい仕様です。
目にやさしいらしい120 cd/m²前後は設定値20~21%でほぼ一致します。
全部で「12個」あるカラーモードを比較
- 標準(初期設定)
- オフィス
- FPS
- RPG
- RCG
- 映画
- 長時間視聴
- テキスト表示
- 標準(色域:sRGB)
- 標準(色域:Rec.709)
- 標準(色域:DCI-P3)
- 標準(色域:AdobeRGB)
目標の基準値:sRGB(Gamma 2.2)
ガンマカーブはいわゆる「コントラスト感」に関わる数値です。
数字が大きいほど実際よりも暗く(黒く)、数字が小さいほど実際よりも明るく(白く)表示されます。ガンマカーブを見れば、カラーモードごとの「意図」がざっくり見えてきます。
たとえば、「RPG」モードは高ガンマから一気に低ガンマへ下がり続けるカーブで、コントラスト感が過剰に演出されます。黒を潰して白を飛ばす破綻した設定です。
「オフィス」モードは高ガンマを推移し、全体的に色が暗く見えます。眩しさを抑えて、目への負担を下げる目的でしょうか。
モード | 色域 (sRGB) | 色域 (DCI-P3) | 明るさ | グレーの正確さ | 色の正確さ | ガンマ | 色温度 | コントラスト比 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
標準 | 99.9% | 97.7% | 271.9 cd/m² | ΔE = 5.37 | ΔE = 5.05 | 2.28 | 7381K | 22658:1 |
オフィス | 99.5% | 97.1% | 146.8 cd/m² | ΔE = 6.00 | ΔE = 5.47 | 2.54 | 7268K | 2899:1 |
FPS | 99.5% | 97.0% | 603.5 cd/m² | ΔE = 8.29 | ΔE = 6.06 | 2.35 | 9070K | 2456:1 |
RPG | 99.5% | 97.0% | 795.5 cd/m² | ΔE = 4.11 | ΔE = 5.54 | 2.15 | 6351K | 23395:1 |
RCG | 99.5% | 97.0% | 575.8 cd/m² | ΔE = 5.15 | ΔE = 4.99 | 2.31 | 7409K | 2807:1 |
映画 | 99.8% | 97.7% | 263.1 cd/m² | ΔE = 2.97 | ΔE = 5.70 | 2.44 | 6382K | 26641:1 |
長時間視聴 | 100.0% | 97.8% | 203.2 cd/m² | ΔE = 11.34 | ΔE = 10.58 | 2.29 | 4324K | 2522:1 |
テキスト表示 | 0.0% | 0.0% | 204.7 cd/m² | ΔE = 11.13 | ΔE = 31.62 | 2.30 | 4431K | 2525:1 |
標準(sRGB) | 97.5% | 77.8% | 276.3 cd/m² | ΔE = 1.82 | ΔE = 1.34 | 2.35 | 6373K | 2930:1 |
標準(Rec.709) | 97.4% | 77.7% | 276.7 cd/m² | ΔE = 3.59 | ΔE = 2.58 | 2.53 | 6370K | 2923:1 |
標準(DCI-P3) | 99.6% | 92.6% | 276.9 cd/m² | ΔE = 3.14 | ΔE = 2.47 | 2.35 | 6366K | 2918:1 |
標準(AdobeRGB) | 94.8% | 82.5% | 276.9 cd/m² | ΔE = 2.21 | ΔE = 1.39 | 2.35 | 6371K | 2905:1 |
各モードごとの色域や正確さ(dE2000)をまとめました。
TCL 32R84は、全部で12個の「カラーモード(シナリオモード)」が用意されています。
モードごとに見た目と印象がそこそこ変わります。色温度と明るさだけが違う、ほぼ似たようなモードもありますが、それなりに性格分けがされていて悪くないです。
そのまま使うなら「RPG」モードがけっこう使えそうですが、少しコントラスト感を過剰演出しすぎて逆に見づらい場面もあります。
基本的に「標準」モードを好みに合わせて調整がおすすめです。
「TCL 32R84」の規格測定レポートはこちら↓をクリックして確認できます。クリエイター向けのマニア情報だから、一般人は無視して飛ばしてください。
モニターの色を測定する機材「X-rite i1 Pro2(分光測色計)」と「ColorChecker Display Plus(比色計)」を使って、「TCL 32R84」の色精度をチェックします。
色の正確さ ※クリックすると画像拡大 | ||
---|---|---|
比較グラフ | グレーの正確さ | カラーの正確さ |
![]() | ![]() | |
使用モード | 標準 | 標準 (色域:sRGB) |
明るさ | 271.9 cd/m² | 276.3 cd/m² |
グレーの正確さ (dE2000) | ΔE = 5.37 | ΔE = 1.82 |
色の正確さ (dE2000) | ΔE = 5.05 | ΔE = 1.34 |
ガンマ | 2.28 | 2.35 |
色温度 | 7381K | 6373K |
コントラスト比 | 22658 : 1 | 2930 : 1 |
TCL 32R84の「sRGBモード」は、なぜか6500Kより少し低い6380~6400K前後にグレースケールが整っています。
実は、筆者が目視補正を行った数値が6420K前後です。どうやらTCLは目視補正を加えてから、出荷時校正(キャリブレーション)を施している可能性が高いです。
色域はsRGBにほぼ一致するラインまで制限され、色の精度が2.0未満(ΔE < 2.0)、グレースケールの精度も2.0未満(ΔE < 2.0)を達成します。
「見事な仕事」でした。目視でロクに確認せず、ただ数字だけを合わせている大多数のメーカーが、TCLの出荷時校正を見習うべきです。
色の正確さ ※クリックすると画像拡大 | ||
---|---|---|
使用モード | 標準 (色域:DCI-P3) | 標準 (色域:AdobeRGB) |
明るさ | 276.9 cd/m² | 276.9 cd/m² |
グレーの正確さ(dE2000) | ΔE = 3.14 | ΔE = 2.21 |
色の正確さ(dE2000) | ΔE = 2.47 | ΔE = 1.39 |
ガンマ | 2.35 | 2.35 |
色温度 | 6366K | 6371K |
コントラスト比 | 2918 : 1 | 2905 : 1 |
TCL 32R84は「DCI-P3」と「AdobeRGB」モードも対応します。
こちらも「sRGB」モードと同じく、メタメリズム障害を考慮したオフセット値をターゲットに校正済みです。
しかし、DCI-P3モードのガンマが合っていません。Gamma 2.6(Absolute)が本来のターゲットなのに、なぜかsRGB Gamma 2.2(Relative)に校正されています。
ガンマが合っていれば、グレーカラーどちらもΔE < 2.0を達成できたはず。
AdobeRGBモードはそこそこ正確です。グレースケールがギリギリ2.0超えで、色の正確さは2.0未満(ΔE < 2.0)です。ガンマカーブがあと0.1~0.15下がれば完璧でした。
マクロレンズでパネルの表面を拡大した写真です。
TCL CSOT社が作るFast HVAパネルの画素レイアウトは、まるでテレビ向けパネルをそのまま小型化したかのような構造をしています。
4つの画素を1つにまとめた歯型かつ直列RGBストライプ配列で、赤・緑・青の順に理路整然と並んでいます。
細い直線やテキストの表示と相性がいい、PCモニター向けの画素レイアウトです。
表面加工は透過率がかなり高いノングレア加工がかかっていて、画素ドットのりんかく線をハッキリと見て取れます。
光を分析する「分光測色計」を使って、画面から出ている三原色の鋭さ(波長)を調べました。専門用語でスペクトラム分析と呼ぶそうです。
グラフを見て分かるとおり、すべての山がピンッと突き立つ「量子ドット(Quantum Dots)」に特有の波長パターンを確認できます。
TCL CSOT社は量子ドットフィルターを一部の色だけに使う廉価版を販売した実績があるから、てっきりPCモニターも廉価版だと邪推したくなりますが、疑いが杞憂に終わって良かったです。
ついでにブルーライト含有量を調べたところ約29%でした。「色温度:暖色(Warm)」設定で、TÜV Rheinlandブルーライト認証に必要な25%未満を達成できます。
TCL 32R84のゲーム性能は?

TCL 32R84のゲーム性能をレビューします。

- 応答速度
- 入力遅延
- ゲーム向け機能
おもに「応答速度」「入力遅延」「ゲーム向け機能」の3つです。測定機材を使って調べてみます。
TCL 32R84の応答速度と入力遅延
↑こちらの記事で紹介している方法で、TCL 32R84の「応答速度」を測定します。
60 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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ニンテンドースイッチやPS4など、最大60 Hz対応のゲーム機で使う場合、60 Hz時の応答速度を気にします。
30パターン測定で、平均5.63ミリ秒を記録します。60 Hzに必要十分な応答速度を満たしますが、写真を見てのとおり「残像」がまだ残っています。
どれだけ応答速度が速くても、リフレッシュレートが60 Hz程度だと「ホールドボケ現象」が発生してしまい残像感が見えます。60 Hzで応答速度にこだわるメリットが少ないです。
120 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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PS5やNintendo Switch 2で重要視される120 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均5.24ミリ秒でした。
応答速度が遅いとされるVAパネルの割に、残像感がそこそこ抑えられていて驚きました。
165 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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165 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均5.11ミリ秒でした。120 Hz時よりホールドボケが軽減され、残像感がさらに減っています。
OD機能の効果 165 Hz / 3段階をテストした結果 | |||
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平均値 | 5.11 ms | 3.27 ms | 2.01 ms |
最速値 | 1.31 ms | 0.86 ms | 0.58 ms |
最遅値 | 14.10 ms | 12.89 ms | 9.19 ms |
平均エラー率 | 0.0 % | 0.0 % | 15.5 % |
累積遷移 (電圧 x 面積) | 24.8 mVs | 17.8 mVs | 20.0 mVs |
TCL 32R84のオーバードライブ機能は、3段階だけ調整できます。
「高速」「最速」ODモードのうち、最速モードは目に見えるレベルのひどい「にじみ」が発生してしまい、まったく使い物にならなかったです。
一方で高速モードなら、エラーをまったく出さずに応答速度を平均3ミリ秒台に抑えています。
TCL 27R83Uのおすすめオーバードライブ設定は「高速」モードで決まりです。
Fast HVA vs Fast IPS(残像感) ※クリックすると画像拡大 |
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スペックが近い他社の4K HDRゲーミングモニターと、残像感を比較しました。
応答速度の平均値が同程度(3ミリ秒台)でも、UFOの後をつける「黒い影」にわずかな差が出ています。
実際のゲームプレイでまったく気にならない微妙な差ですが、技術的に、IPSパネルとVAパネルの3ミリ秒台はまだ隔たりがあるようです。

他のゲーミングモニター(120 Hz以上)と比較します。
ゲーミングモニターで主流のFast IPS系に匹敵する速さです。

60 Hzモード時の応答速度も掲載します。
姉妹モデル「TCL 27R83U」より約1.2ミリ秒も改善され、Fast IPS系に並ぶ速さです。

入力遅延(Input Lag)はどれくらいある?

2024年7月より「入力遅延(Input Lag)」の新しい測定機材を導入しました。
クリック遅延がわずか0.1ミリ秒しかないゲーミングマウス「Razer Deathadder V3」から左クリックの信号を送り、画面上に左クリックが実際に反映されるまでにかかった時間を測定します。

- マウスから左クリック
- CPUが信号を受信
- CPUからグラフィックボードへ命令
- グラフィックボードがフレームを描画
- ゲーミングモニターがフレーム描画の命令を受ける
- 実際にフレームを表示する(ここは応答速度の領域)
新しい機材は1~6の区間をそれぞれ別々に記録して、1~4区間を「システム処理遅延」、4~5区間を「モニターの表示遅延(入力遅延)」として出力可能です。
なお、5~6区間は「応答速度」に該当するから入力遅延に含めません。応答速度と入力遅延は似ているようでまったく別の概念です。
左クリックしてから画面に反映されるまでにかかった時間を測定し、左クリック100回分の平均値を求めます。

TCL 32R84の入力遅延はまったく問題なし。
165 Hz時(G-SYNC互換モード)で平均3.1ミリ秒、120 Hz時(G-SYNC互換モード)で平均4.5ミリ秒の入力遅延です。
どちらも16ミリ秒を大幅に下回っていて、ほとんどすべての人が入力遅延を体感できません。
ゲーム向け機能はやや乏しい
TCL 32R84は4つある主要なゲーマー向け機能のうち、2つだけ対応します。
- 暗所補正
暗い部分を明るく補正する機能 - 鮮やかさ補正
色の付いた部分を強調する機能 - 残像軽減
残像をクリアに除去する機能 - カクツキ防止
可変リフレッシュレート機能
順番にチェックします。
暗所補正「暗部強調」モード
暗い部分を明るく補正できる「暗部強調」モードです。
- オフ
- -10 ~ 10(刻み:1ずつ)
全20段階で細かく調整できます。
設定値+1くらいがニュートラルな明るさで、+2以上から明るく補正、-10~0の範囲で暗め(黒を潰す)に補正されます。
肝心の補正効果はかなり渋い・・・です。画面全体がうっすら暗いホラーゲームを明るく見やすくする程度なら使えるかも。

4Kで165 Hz(PS5で120 Hz)に対応
TCL 32R84は最大165 Hzまで、PS5で最大120 Hzに対応します。実際にPS5とゲーミングPCにモニターをつないでみて、リフレッシュレートの対応状況を確認しましょう。
PS5の対応状況 ※クリックすると画像拡大 | ||
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![]() | ![]() | |
設定 | 60 Hz | 120 Hz |
フルHD1920 x 1080 | 対応PS5 VRR:対応 | 対応PS5 VRR:対応 |
WQHD2560 x 1440 | 対応PS5 VRR:対応 | 対応PS5 VRR:対応 |
4K3840 x 2160 | 対応PS5 VRR:対応 | 対応PS5 VRR:対応 |
PS5でフルHD~4K(最大120 Hz)に対応します。HDMI VRR機能により「PS5 VRR」も対応です。
Switch 2の対応状況 ※クリックすると画像拡大 | ||
---|---|---|
![]() | ![]() | |
設定 | 60 Hz | 120 Hz |
フルHD1920 x 1080 | 対応HDR:対応 | 対応HDR:対応 |
WQHD2560 x 1440 | 対応HDR:対応 | 対応HDR:対応 |
4K3840 x 2160 | 対応HDR:対応 | Switch 2は非対応 |
Nintendo Switch 2(ドックモード)で、フルHD~WQHD(最大120 Hz)または4K(最大60 Hz)に対応します。HDR(10 bit)出力も問題なし。
PS5 / PS5 Pro / Nintendo Switch 2など。120 Hz対応ゲーム機で、実際にゲーム側が120 Hz(120 fps)で動くかどうかは、もっぱらゲーム次第です。
ゲーム側が120 Hzをサポートしていなかったら意味がありません。プレイする予定のゲームが120 Hzに対応しているか、事前によく調べてください。
対応リフレッシュレート ※クリックすると画像拡大 | |
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HDMI 2.1 (48 Gbps) | Display Port 1.4 (25.92 Gbps) |
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TCL 32R84がパソコンで対応しているリフレッシュレートは以上のとおりです。
HDMI 2.1で最大165 Hzまで、Display Port 1.4も最大165 Hzに対応します。
レトロなゲーム機で役に立ちそうな23.98 ~ 24 Hz範囲は非対応です。
VRR機能(可変リフレッシュレート) ※クリックすると画像拡大 |
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フレームレートとリフレッシュレートを一致させて「ティアリング」を防ぐ効果がある、VRR機能はHDMIとDisplay Portどちらも使用可能です。動作範囲は48~165 Hzです。
LFC(低フレームレート補正)対応ハードウェアの場合は、48 Hzを下回ってもVRRが機能します。
TCL 32R84の機能性を調査
最近トレンドな「デュアルモード」など、キャッチーでギミック的な機能は一切ありません。USB Type-Cポートなど、インターフェイス類の機能性にとどまります。
- エルゴノミクス
高さや角度を調整する機能 - インターフェイス
映像入力端子やUSBポートについて - ヘッドホン端子
とりあえず付いている3.5 mmアナログ端子 - フリッカーフリー
眼精疲労持ちなら重要かもしれない - OSD
On Screen Display(設定画面)
順番にチェックします。
自由に位置を調整できる「エルゴノミクス」機能
TCL 32R84はフル装備のエルゴノミクス機能を備えます。
ヌルヌルと滑らかに動いて調整しやすい、ていねいな作りのエルゴノミクス機能です
高さ調整の動かし始めがちょっと硬いくらいで、角度やピボットはかんたんに動かせます。画面の水平(0°)も取りやすいです。
VESAマウント ※クリックすると画像拡大 |
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別売りモニターアームを取り付けるのに便利なVESAマウントは「100 x 100 mm」に対応します。

パネル本体の重量は約6.08 kgで普通のモニターアームで持ち上げられます。

モニター側に最初から付いている小ネジ(4本)を使って、そのまま「エルゴトロンLX」アームを取り付けられます。
「ヘッドホン端子」の音質をテスト

非常に優れたオーディオ特性を持つ「RME ADI-2 Pro」を用いて、TCL 32R84のオーディオ性能をテストします。
SN比を比較 ※クリックすると画像拡大 |
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Sennheiser HD650でもまったく不足しない、大きな音量を取り出せます。SN比もそこそこ優秀です。

周波数特性グラフです。おおむねフラットな特性で問題なし。
そこそこ悪くない音質です。安物のモニターにありがちなカーテンを2~3枚通したような「こもった」傾向がかなり軽度に抑えられていて、思いのほかクリアな音質。
解像度もそれなり。低音域の不足は相変わらずですが、ゲーミングモニター内蔵のイヤホン端子として悪くないクラスです。
安物のヘッドホンやイヤホンなら案外十分な性能かもしれません。
音にこだわる方、音質に不満を覚えてしまった沼の素質がある人は、素直に別売りのポータブルDACを買ってください。
対応するインターフェイスをチェック
映像端子は全部で4つあり、どれを使っても最大165 Hz(3840×2160)に対応します。
USB Type-Bポートはパソコンと接続して、USBハブ機能として使ったり、複数のパソコン間で1つのマウスとキーボードを使う「KVM」機能を使えます。
USB Type-C ※クリックすると画像拡大 |
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USB Type-CポートはUSB PD給電(最大90 W)や、DP Alt Modeに対応します。
USB Type-C ※クリックすると画像拡大 |
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USB Type-Cポートに対応するノートパソコン「ASUS Vivobook OLED 15」にて、ケーブル1本で充電しながら外部ディスプレイ(最大4K 165 Hz)として認識可能です。
USB PDの給電能力は電力負荷テスターで実際に負荷をかけて、最大90 Wまで引き出せます。USB Type-Cポートの実装に問題ないです。
「フリッカーフリー」対応ですか?
製品スペックのイメージ画像に「TÜV Rheinland」認証ロゴが記載されています。
フリッカーフリーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
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実際にオシロスコープを使ってフリッカーの有無をテストした結果、明るさ0~100%までフリッカーが一切検出されません。

TCL 32R84は「PWM調光」を採用します。1秒に数万回もの変動で明るさを調整するシステムです。
Mini LEDバックライトを使うハイエンドなゲーミングモニターで、割と見かける傾向です。
フリッカーの基準 | 結果 |
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一般的な基準 0 Hz または 300 Hz以上 | 問題なし (> 300 Hz) |
![]() 0 Hz または 3000 Hz以上 | 問題なし (> 3000 Hz) |
検出された約10000 HzのPWMフリッカーは、一般的な基準と、TÜV Rheinland基準どちらも合格できます。
実質的にフリッカーフリーです。

VRRフリッカー(VRR Flicker)は、画面が暗いシーンでフレームレートが激しく変動すると発生する確率が大幅に跳ね上がります。
ちもろぐでは、アクションRPG「鳴潮」にてフレームレートを10 fpsからモニター側の最大fpsまで動かします。
モニターの至近距離に設置された光学センサーを経由して、オシロスコープが明るさの変化をマイクロ秒(10万分の1秒)単位で記録する仕組みです。
記録されたグラフが乱高下していれば「VRRフリッカー」の検出に成功です。逆に、何もなく平坦で一直線なグラフが記録されればフリッカーは皆無と判断できます。
VRR(G-SYNC互換モードなど)有効時に発生する「VRRフリッカー」もテストします。
VRRフリッカーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
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残念ながら、VAパネルはVRRフリッカーがものすごく発生しやすいパネル方式です。
フレームレートが大きく急激に下がったり、LFC(低フレームレート補正)が発動する48 Hz前後をまたぐと、目視でハッキリ分かる「ちらつき」が頻発しました。
VAパネルやOLEDパネル特有のVRRフリッカーを解消するには、高性能なPCスペックを用意してフレームレートを上限に張り付かせるか、VRRの使用を諦めるのどちらかです。

モニターの設定画面(OSD)

モニター本体の中央底面にある「5方向ボタン」を使って、OSD設定をスムーズに操作できます。
TCLは先駆者メーカー(ASUSやMSI)をかなり研究してOSDレイアウトを作っています。項目ごとに分かりやすく整理されたフォルダ階層型です。
5方向ボタンを右に倒して進む、左に倒して戻る・キャンセル、上下で項目の調整ができます。項目の決定も、右に倒して確定できて便利です。
姉妹モデル「TCL 27R83U」で問題だったワンテンポ遅れるレスポンスもかなり解消されていて、スムーズにOSD画面をコントロールできます。
- ショートカット:変更できます(最大2個まで)
- プリセットごとに調整:標準など一部のモードのみ
5方向ボタンを倒してアクセスできるクイックメニューは初期設定から変更できますが、選べる項目が少ないです。暗所補正くらい登録できていいのでは?
プリセットモード(シナリオモード)ごとの設定値はそれぞれ最後の数値が記憶されます。この性質を逆手にとれば、実質的に自分好みの設定を保存して使い分ける運用が可能です。
たとえば、FPSモードにまったく別の設定を入れておいて、「暗いゲーム向けの設定(その1)」的な使い方ができます。

ただし、SDR → HDRモードに切り替えたとき、たまに「色温度」など一部の設定がHDRモードにも反映される場合があります。
OSD設定値のメモリー機能に若干の不具合がありそうです。

TCL 32R84のHDR性能をテスト

(displayhdr.org/certified-products/で確認)
TCL 32R84は、最高グレードのHDR規格「Display HDR 1400」認証を取得したモニターです。
全部で5つあるHDRグレードで最上位にあたります。コンシューマー向けHDRグレードを超える、業務向けのランクです。
Youtubeで公開されている「Morocco 8K HDR」や、HDR対応ゲームを使って検証します。
(HDR映像を収めた写真はSDRです。掲載した写真は参考程度に見てください。)
OLEDパネルのHDR映像を「CG的な美しさ」とするなら、TCL 32R84(Mini LED液晶)が放つHDR映像は「本物志向の映像アトラクション」です。
たとえば、15枚目の「フェニックス(FF16)」が分かりやすいです。画面中央の燃え盛る飛鳥から、なんと1600 cd/m²程度の途方もない明るさが出力されます。
仮にOLEDパネルで1600 cd/m²を出させると自身の熱に耐えきれず故障します※が、あくまでも液晶パネルなTCL 32R84に故障するリスクは皆無です。
容赦なく1000 cd/m²を超える圧巻の輝度をぜいたくに活用し、真にダイナミックなコントラスト感(= High Dynamic Range → HDR)を表現できます。
※故障しないよう事前に明るさ制限がかかります。つまり、もっと明るく表示されるべきシーンで、いきなり画面が暗くなります。

よって、OLEDとMini LED・・・ 両者のHDR観はまったく方向性が違います。
正直もはや好みの問題ですが、筆者やかもちはMini LED液晶による「体験」を重視する世界観が好きです。
OLEDパネルに到底不可能な、凄まじい輝度がもたらすコントラスト感によってド派手にメリハリが付いた、まるで本当に画面の中の世界に迷い込んだかのような錯覚的「体験」に脳を灼かれています。
なお、HDRモード(初期設定:Display HDRモード)時の色合いはやや暖かみが強い、暖色傾向に偏った色合いです(※実測5800~6200Kでオフセット値からズレてます)。
幸いにも、TCL 32R84のHDRモードは「明るさ」「色温度(RGBバランス)」「暗部強調」を、それぞれ個別にコントロール可能です。
青白いHDR映像に調整したり、ニュートラル(目視でD65)な調整もできます。必ずしもHDR10規格に準拠せず、あえて自分の好みにマッチさせたHDR映像も楽しめます。
- Display HDR
- テーブルHDR
- 映画HDR
- ゲームHDR
全部で4種類のHDRモードがあり、それぞれ明るさ・色温度・暗部強調を自由に調整できます。
HDRモードごとに明るさを制御するPQ EOTFグラフがガラッと変わり、HDRコンテンツの見え方が激変します。
青いラインがHDR規格(PQ EOTF)のターゲットラインで、ターゲットの周囲をウニョウニョと追従しているラインが実測値です。
「Display HDR」と「映画HDR」モードがもっとも規格に近いです。
「テーブルHDR」は白浮きがひどく、全体的に薄暗い残念な画質で使い物になりません。「ゲームHDR」はメーカー独自解釈のS字カーブ型で、白飛びが頻発して使いづらいです。
おすすめの設定は「Display HDRモード」で「色温度:ユーザー」に切り替え、「赤52 / 緑48 / 青45」くらいでちょうどいい色合いに一致します。
ちなみに、筆者おすすめ設定時の色精度はΔE = 1.98(ΔE < 2.0)です。
ゲーミングモニターのOSD設定だけで、とても優れたHDR色精度を実現できます。専用のキャリブレーションファイル(例:3D LUT)はもう不要です。
きちんと明るく制作されている4K UHD盤「デューン Part 2」で動作チェック。アラキスの乾いた砂漠の再現度が高いです。本当に砂漠が目の前にあるみたい。
妙なちらつき、ローカル調光エラーは皆無でした。
それほど明るくはないけれど、ジェット機のブースト噴射や日中の空戦シーンはかなりの明るさが収録されている4K UHD盤「マーヴェリック」も動作チェック。
明るさはまったく不足なし。序盤の作戦会議シーンにおける、ちらつきやローカル調光エラーも難なくクリアします。ちなみにSony INZONE M9(定価15万円)はパスできないテストです。

(※クリックでスクリーンショット拡大)
HDR対応ゲームの代表例「サイバーパンク2077」で動作チェック。グラフィック設定から適切な最大輝度(ピーク輝度)を割り当てると、ピカピカと明るいHDRゲーム映像の出来上がり。
おすすめの最大輝度は「1000 ~ 1600 nits」です。自分の好みに合わせて、1000 ~ 1600の範囲で設定します。1650を大幅に超えると階調エラー(白飛び)の原因になります。

(※クリックでスクリーンショット拡大)
HDR非対応のゲームでは「NVIDIA App(オーバーレイ画面)」から、「RTX HDR」フィルタを使います。
- ディスプレイの設定 > HDRを使用する:オン
- NVIDIA App > グラフィックス > グローバル設定 > RTX HDR:オン
- HDR化したいゲームを起動 > Alt + Z でオーバーレイ起動
- ゲームフィルタ > RTX HDRを有効化
オーバーレイ画面からリアルタイムにRTX HDRを適用できます。すぐに反映されるから、好みの調整がしやすいです。
各パラメータの内容は以下のとおり。
RTX HDR(設定値) | |
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最大の明るさ | ピーク輝度 ※EDID最大値が上限 |
中間の暗さ | グレー50%時の明るさ ※主観的なコントラスト感に影響 |
コントラスト | ガンマカーブ ※25%ごとにガンマが0.2変動(高いほど明暗ハッキリ) |
彩度 | 色域クリッピング ※0%が「sRGB」で100%が「BT.2020」相当 |
・・・専門用語を深く理解する必要はありません。
RTX HDRはリアルタイムに反映されるから、自分の好みになるようにスライダーを動かして好きに調整してください。
個人的に中間の暗さを50~70%にして、コントラストと彩度を高めに設定が好きです。ピーク輝度が高くてピカピカ明暗ハッキリ、彩度が高く色あざやか、「一般人がイメージするHDR」に仕上げてくれます。
実際のHDRコンテンツによる輝度測定

Youtubeで配信されている「Dune Part 2」のHDR版トレーラーを再生しました。
ピーク時に1600 cd/m²超、明るいシーンで600~1400 cd/m²を使います。リアリティ(現実感)を十分に体験できる明るさをきっちり出せています。

ネイティブHDRモード対応の「サイバーパンク2077」です。
太陽光や反射光に設定した最大値(1400 cd/m²)近くまで出ています。明暗のメリハリがくっきり付いて、映えるゲーム映像を楽しめるはず。

RTX HDRで原神をHDR化してテスト。EDIDの最大値(1405 cd/m²)を受け取って、RTX 5070 Tiがゲーム映像をHDR化します。
スメール砂漠の乾いた青空に600~1050 cd/m²ほど、太陽に至っては1100 cd/m²近い明るさが割り当てられ、本当に砂漠に足を踏み入れたかのような錯覚に陥ります。

(250~280秒が地獄の火炎)
ネイティブHDR対応のファイナルファンタジー16(イフリート戦)をテスト。
フェニックスやイフリートが放つ火炎エフェクトにビカビカと1000 cd/m²を超えて1200 ~ 1950 cd/m²もの強烈な明るさを割り当てられます。
本当に目の前でイフリート戦を見ているかのような映像体験です。画面全体が燃え盛る「地獄の火炎」ですら、TCL 32R84はほとんど明るさを維持して見事に耐えていました。
「イフリート戦」開幕時※画像はクリックで拡大 | |
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TCL 32R84Display HDR 1400 (CTS 1.1) | KTC G32P5Display HDR True Black 400 (CTS 1.1) |
手持ちのOLEDゲーミングモニターだと途中でABL(保護機能)が働いてしまい、シュンッと暗く抑えられますが、高輝度に強いMini LEDなら難なく維持して見せます。
おまけにVAパネルだからコントラスト感も向上していて、OLEDパネルより良いゲーム体験が可能です。

「1400ゾーン分割Mini LED」で見え方はどう変わる?

液晶パネルは、自発的に光らない素材です。だから液晶パネルのすぐ裏側に、光らせるための部品「LEDバックライト」を使います。
一般的なゲーミングモニターなら、LEDバックライトは1枚だけです。画面全体を一律で光らせてしまい、コントラスト比はそのまま液晶パネルに依存する形式です。

一方でTCL 32R84は、1400ゾーンに分割した「Mini LEDバックライト」を使います。

光っている部分だけバックライトを点灯させ、暗い部分はバックライトを暗くしたり消灯して、液晶パネルの問題だったコントラスト比を大幅に改善する技術です。

目分量で1400ゾーンをざっくりイメージ化した写真です。

「横に50個 x 縦に28個(※推定)」のMini LEDを敷き詰め、1ゾーンあたり約14.0 x 13.9 mmに相当します。
ざっくりマウスカーソル24~25個分の面積です。マウスカーソルより遥かに大きいため、オフィスワーク用途で困った挙動に陥る可能性が高いです。

(マウスカーソルに注目)
1400ゾーンまで分割数を増やしたVAパネルでも、マウスカーソルよりMini LEDが大きいから、マウスカーソルが暗くなって見失いやすくなる傾向がやや見られます。
ウィンドウの四隅がMini LEDバックライトの消灯に巻き込まれてうっすら暗く見える傾向も未だ健在です。
一方で、IPSパネルを使う競合モデル(TITAN ARMYやKTC Monitorなど)よりバックライトの追従性能が素早く、カーソルやウィンドウを動かしたときに見える「ちらつき」のような症状を大きく改善できています。

OSD設定から「Local Dimming:標準」に切り替えると、マウスカーソルが暗くなる症状がほぼ消滅します。
コントラスト比が約22000:1 → 約6200:1に下がってしまいますが、オフィスワーク的な静止画コンテンツにとって十分なはずです。

白い背景に黒ウィンドウは違和感ない表示です。黒い背景で白いテキストがつられて暗くなる症状もほとんど出なかったです。
過去のMini LEDモニターでたびたび問題に挙げられていた、SDRモードでオフィスワーク用途との相性の悪さはだいぶマシになった感があります。
Local Dimming:高モードだとまだ気になるレベルですが、Local Dimming:標準モードなら普通に使えます。実効コントラスト比が約6200:1もあり、IPSパネルの約5~6倍です。
Mini LEDバックライトの「ハロー現象(光漏れ)」を写真でチェック。分かりやすいように斜め(45°)から撮影し、光漏れがまったくないOLEDパネルとの比較も掲載します。
VAパネルに特有の視野角の狭さが原因で、実際よりも白っぽさが目立ちます。正面から見る分には非常に光漏れが少なく見え、1400分割のMini LEDより黒が締まって見えます。
しかし、VA + 1400ゾーンでも光源がぽつぽつと粉々に分布しているパターン(4枚目)は少し苦手な傾向です。
せっかくなので、5088ゾーン分割の「TITAN ARMY M27E6V-PRO」も比較に掲載。
写真を拡大して、映っているオブジェクトの外周(りんかく)付近をよく見てください。
ゾーン数が4倍も違うのに、漏れ出ている光の量を少なく抑えられる傾向が明らかです。2枚目も同じ傾向がつづき、ゾーン数が4分の1しかないTCL 32R84が勝っています。
VAパネル + Mini LEDの組み合わせはやはり強力です。実効コントラスト比を比較します。
- TCL 32R84(1400分割):約5500~18800:1
- KTC M27T6(1152分割):約5200~17700:1
- TCL 27R83U(1152分割):約3600~15300:1
- M27E6V-PRO(5088分割):約1800~10500:1
- P32A6V-PRO(2304分割):約1700~8000:1
- KTC M27P6(1152分割):約1300~4300:1
- EX-LDQ271JAB(576分割):約1400~6700:1
悪条件のコントラスト比を太字で強調しました。
ゾーン数が4~5倍違っていても、VAパネルとIPSパネルで約3倍もの性能差が開いてしまいます。IPSパネルにどれだけ大量のMini LEDを詰めても効果は極めて限定的です。
Mini LEDでコントラスト比を重視するなら、やはりVAパネルと組み合わせた方がはるかに効率的です。
どれだけ分割数を増やしてもIPSパネルは構造的に光漏れを防げず、ワーストケースのコントラスト比が悪化します。もともと黒が締まっているVAパネルはワースト時でも3倍の性能差です。
OLEDモニターと比較※画像はクリックで拡大 | |
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TCL 32R84Display HDR 1400 (CTS 1.1) | KTC G32P5Display HDR True Black 400 (CTS 1.1) |
最後に、OLED(有機EL)ゲーミングモニターと比較した写真です。
明るさが間に合っているシーン(1枚目と4枚目)なら、両者ともに互角の画質を出せています。しかし、輝度を要求されるシーン(2枚目と3枚目)になった途端、OLEDパネルが脱落します。
2枚目の「青空」を見てみましょう。モロッコの晴天ならカラッと乾ききっていて、もっと白っぽさが残る色合いが表示されるべきですが、OLEDパネルは普通の青空として表示します。
3枚目の「空」も確認します。TCL 32R84は見事に空と雲を描き分けていますが、OLEDパネルはまとめて白飛びして見分けがつかない状態です。
HDRコンテンツの再現性において、OLEDパネルはMini LEDに届きません。輝度の高さと安定性で、依然として隔絶された差があります。

モニター測定機材でHDR性能を評価

モニターの色と明るさを超高速かつ正確に測定できる機材を使って、「TCL 32R84」のHDR性能をテストします。
測定結果(レポート)はこちら↓からどうぞ。専門用語が多いので・・・、興味がなければ読まなくていいです。
VESA Display HDR HDR性能のテスト結果 | ||
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比較 | テスト対象 TCL 32R84 | VESA Display HDR 1400 |
画面の明るさ |
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黒色輝度 |
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コントラスト比 |
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色域 |
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色深度 |
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ローカル調光 |
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Display HDR 1400認証で要求されるすべての項目で合格です。明るさ、黒色、バックライト方式まで。見事にオールクリアなHDR 1400対応です。

HDRモードで画面全体に白色を表示したときの明るさを、他のモニターと比較したグラフです。
当然ながら、HDR 1400グループ(900 cd/m²以上を維持)の仲間入りを果たします。

HDR時のコントラスト比(理論値)は、Infinity:1(∞)です。
HDRコントラスト比Colorimetry Research CR-100で測定した結果 | |
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全画面 | Inf : 1 |
10%枠 | 18109 : 1 |
3×3パッチ | 18828 : 1 |
5×5パッチ | 10554 : 1 |
7×7パッチ | 7289 : 1 |
9×9パッチ | 5525 : 1 |
テストパターン別にHDRコントラスト比を測定した結果、ワーストケースで5525 : 1、一般的なMini LED + IPSパネルによくある実効コントラスト比の約3~4倍も高いです。

HDR規格どおりの明るさを表示できるかチェックする「PQ EOTF」グラフです。
- Display HDRモード
暗部階調(1 cd/m²未満)がほんの少しだけ実際より暗い、いわゆる黒を攻めた制御が入っています。ローカルディミング(Mini LED)有効時に、コントラスト比を稼ぐために使われる手法です。
その後1 cd/m²以上からピークに達するまで、一貫して規格どおりに追従します。

APL(表示エリア面積)ごとのPQ EOTFグラフです。
暗部階調をわずかに黒くしてコントラスト感を向上させる挙動が、狭い範囲から広い範囲まで入っています。
特にAPL:1%時はバックライトの消灯に引っ張られて、少し暗くなりがちです。それでもピーク時に800 cd/m²を叩き出すから、実用上は十分な明るさです。
APL:2.5%以上はおおむね良好な追従を示し、すべての面積で「カットオフ」処理が入ります。実際のHDRコンテンツで、しっかり明るさを感じられます。

面積比による明るさの変動はやや少ないです。
非常に小さなハイライトですら800 cd/m²程度、面積比3~75%の広い範囲で1000~1800 cd/m²もの明るさを維持しつづけ、100%時ですら900 cd/m²台にとどまります。
姉妹モデル「TCL 27R83U」と比較して少し明るさが減っているものの、実用上は27インチ → 32インチに大判化した影響で、大差ないどころかより明るく見えます。
破格の安さで知られる「KTC M27P6」には、APL:75%以上で差をつけられていますが、実際のHDRコンテンツで多い50%未満の広さならTCL 32R84が明るいです。
「AW3225QF」や「LG 32GS95UE」など、OLEDパネル勢はまったく勝負になっていません。

HDRモード時の持続輝度をチェック。
すべての面積比でおおむね安定した持続輝度です。75%以上は約15秒で輝度が下がりますが、実用上、全白フラッシュは10秒も維持できれば十分でしょう。
Display HDRモード(色温度:ユーザー設定)で、色とグレースケールの精度をチェック。
HDR時の色精度(Rec.2020)は最大ΔE = 6.7、平均Δ = 1.98でした。色温度がそこそこ一致していて、PQ EOTFグラフもかなり正確だったため、歴代No.1の色精度を記録できました。
HDRモード時の色温度は測定値でおおむね6750~6900K前後で、目視補正後のD65ポイントから多少ズレています。
TCL 32R84の開封と組み立て

10万円超えのハイエンドモデルの割に、ずいぶんと簡素なパッケージで到着。なぜか「ハヤブサ」が描かれていますが、正式名称が「FFALCON 32U8(R32U81)」だからです。
サイズは94 x 56 x 23 cm(180サイズ)です。

「CARTON FRONT FACE AVANT」と書いてある面を床に向けてから、箱を開封して中身の梱包材を丸ごと引っ張り出します。
上の段に付属品、下の段にゲーミングモニター本体が収まってます。
付属品 (写真の左から順番に) |
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各映像出力ケーブルと、USB Type-Bケーブルが付属します。

出荷時に「sRGB」規格にキャリブレーション済みと書いてあるレポートです。
「6500Kをターゲットに校正済み」と記載がありますが、実際は6380K前後に校正されています。目視補正を考慮した見事なキャリブレーションにより、ΔE < 2.0を達成します。

ACアダプターは最大260 W(19.0 V x 13.69 A)対応。株式会社TCL JAPAN ELECTRONICS名義でPSE認証マークも取得済み。
コイル鳴きを抑制するフェライトコアが付いています。
ゲーミングモニターで定番のドッキング方式です。プラスドライバーが不要なツールレス設計でかんたんに組み立てられます。
外観デザインを写真でチェック
姉妹モデルと同じく、パネル部分の外装からスタンドまで、ほとんど全体がプラスチック製です。正直それほど高級感のないプラスティッキーなデザインです。
白と黒のモノトーンカラーと曲線美を多少していた、姉妹モデル(TCL 27R83U)の方がデザイン的に優れています。
ベゼル中央にメーカーロゴ「TCL」が控えめに入っています。付属スタンドはシンプルな台座型で、占有スペースを節約するデザインです。


コンセントに仕込んだ電力ロガーを使って消費電力を1秒ごとに記録したグラフです。
消費電力 TCL 32R84 | |||
---|---|---|---|
テスト内容 | SDR | HDR | USB Type-C |
中央値 | 65.5 W | 41.0 W | 157.2 W |
ピーク値 | 107.0 W | 178.9 W | 210.4 W |
上位25% | 96.9 W | 114.8 W | 207.5 W |
下位25% | 44.8 W | 23.6 W | 138.0 W |
SDRモード時、最大の明るさで107 W前後、最小の明るさで29 W前後です。
Mini LED(ローカルディミング)を有効化するHDRモード時だと、最小21 W前後まで減りますが、ピーク時の明るさは大きく増えて約180 Wに到達します。
USB Type-CポートでUSB PD(最大90 W)を使うと、約210 Wまで跳ね上がります。
まとめ:「32R84」と比較して・・・と言われる時代の到来

「TCL 32R84」の微妙なとこ
- 視野角が狭い
- VRRフリッカーが発生しやすい
- 内蔵スピーカーの音質
- 初期設定の色温度がズレてる
(かんたんに修正できます) - HDRモードがやや暖色強め
(色温度:ユーザーで修正できます) - 貧弱なゲーマー向け機能
- 定価がちょっと高い
「TCL 32R84」の良いところ
- 32インチで4K(ちょうどいい)
- 最大165 Hzに対応
- PS5で120 Hz(VRR)対応
- VAパネルと思えない応答速度(3ミリ秒)
- 入力遅延が非常に少ない
- パネルの均一性が高い
- コントラスト比が高い
- 色域が広い(DCI P3:98%)
- sRGBモードがかなり正確(ΔE < 2.0)
- Display HDR 1400認証
- 実質フリッカーフリー
- 扱いやすいOSD設定画面
- USB Type-C(最大90 W)
- フル装備のエルゴノミクス機能
- メーカー3年保証
- コストパフォーマンスが高い
(セール価格で買った場合)
「TCL 32R84」は、おおむね4K HDRゲーミングモニターの「新たな基準点」であり、「ベンチマーク」です。
姉妹モデル「TCL 27R83U」を上回る、HDRゲーミングモニター最強の一角でありながら、過去レビューに前例がない「神速のVA」パネルを兼ね備えます。
平均5ミリ秒台でFast IPSに大きく遅れをとる状況から、32R84で一気に3ミリ秒台まで進みました。しかも平均エラー率0%! 無理なく3ミリ秒台です。
VA + Mini LEDモデルを選ぶうえで最大の障害が取り除かれ、IPSパネル版との明確な差はもう視野角くらい。
HDRモード時の実効コントラスト比(約5500~19000)、Mini LEDバックライトの桁違いに高速な追従性、HDRモード時でも設定を調整できる柔軟性の高さ。
どこをとっても「TCL 32R84」は、4K HDRゲーミングモニターとして格上の存在です。
今後「HDRにおすすめなゲーミングモニターは?」と聞かれれば、真っ先に32R84を最有力候補に挙げます。
「TCL 32R84」の用途別【評価】
使い方 | 評価※ |
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FPSやeSports(競技ゲーミング) 最大165 Hz対応で、応答速度もそこそこ速いです。 | ![]() |
ソロプレイゲーム(RPGなど) 色鮮やかで黒も締まる映像でソロプレイゲームに没入できます。 | ![]() |
一般的なオフィスワーク 32インチ4Kで作業性に優れ、実質フリッカーフリーに対応し、透過性の高いノングレア加工も評価点。「sRGB」モードは出荷時に目視補正まで施され、良好な精度(ΔE < 2.0)です。 | ![]() |
プロの写真編集・動画編集 プロの写真編集や動画編集に耐えうる広大な色域と輝度を備え、「AdobeRGB」モードがそこそこ良い精度です。しかし、「DCI-P3」モードはガンマがズレていて、「BT2020」モードは未実装。やはり自分でキャリブレーションが必要です。 | ![]() |
HDRコンテンツの再現性 Display HDR 1400認証を突破できる超強力なHDR性能です。Mini LEDモニターとしても非常に明るく、輝度の安定性に優れます。明るさ(PQ EOTF)がややズレてるものの、全体的にHDRコンテンツの再現性が高いです。 | ![]() |
※用途別評価は「価格」を考慮しません。用途に対する性能や適性だけを評価します。
参考価格 ※2025/7時点 | ![]() |
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Amazon |
2025年7月時点、TCL 32R84の実売価格は約14.9~万円です。Amazon大型セールにて、約11.8万円まで値下がりを確認しています。
楽天市場やYahooショッピングで取り扱ってないため、Amazonセールを狙うのがおすすめ。

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以上「TCL 32R84レビュー:これが4K HDRゲーミングモニターの「新たな基準」【神速のVAパネル】」でした。
TCL 32R84の代替案(他の選択肢)
「エラー率0%で平均3ミリ秒」なんてトンデモを出せるVAパネルを、TCL 32R84以外に知らないです。つまり、32R84を置き換える代替案は存在しません。
有力な候補として「TCL 27R83U」を挙げられますが、応答速度で及ばないですし、HDRモードの実装(PQ EOTFなど)も32R84に少し遅れを取っています。
32R84が単なる27R83Uの32インチ版ではなく、旧世代にきちんと改良を加えた後継モデルだとハッキリ理解できます。
5088ゾーン分割を備える「M27E6V-PRO」も候補ですが、レビューで紹介したように約4倍ものMini LEDを持ってしても、実効コントラスト比はワースト値で3~4倍も離されます。
HDR「体験」を重視する場合、それほど魅力的と言えないです。
しいて言えば、破格の安さで知られる「KTC M27P6」がギリギリ代替案です。
量子ドットFast IPS + Mini LED(1152ゾーン分割)搭載で、Display HDR 1400規格に合格。色の精度がやや悪いものの、ある程度は自分で調整できる機能があって便利です。
応答速度は平均3ミリ秒台(160 Hz)、デュアルモード(320 Hz)時なら3ミリ秒を下回る猛スピードです。
予算10万円を超えていいなら32R84を、10万円以下から選ぶならM27P6がやはり有力です。
4Kでおすすめなゲーミングモニター
最新のおすすめ4Kゲーミングモニター解説は↑こちらのガイドを参考に。
4KでおすすめなゲーミングPC【解説】
予算に余裕があれば「RTX 4090」や「RTX 4080」を搭載したゲーミングPCがおすすめです。
コスパ重視なら「RTX 4070 Ti SUPER」がおすすめ。グラフィック設定の妥協と、DLSS 3(フレーム生成)と合わせて4K 144 fps超を目指せます。
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
「各種インターフェイス」の画像に割り振られている番号がずれています
3が3&4で残りを1ずらす
コメントありがとうございます。
番号を修正しました。
ファームウェアアップデートには対応してますか?
初期ファームウェアのバージョンは分かりますか?
ファームウェア更新はおそらく非対応です。
レビューした個体のバージョンは「V8-T801T04-LF1V012」です。初期バージョンに該当するかどうかは分かりません。
TitanArmy P32A6Vとの比較にあまり言及がありませんが
応答速度 TCL>=Titan
コントラスト TCL>Titan
バックライト追従性 TCL>Titan
画質 TCL=Titan
で圧勝ということでしょうか?
5088ゾーン分割でも、1400ゾーンのTCL 32R84に光漏れ(ハローやブルーミング)で負けてしまっているので、2304ゾーンのP32A6Vも当然勝てないです。
残されたVA+Mini LEDの弱点は、視野角による変色のしやすさ、VRRフリッカーの頻度、ですね。
返信ありがとうございます。
決して安くない買い物ですが、ちもろぐさんがそこまでおっしゃるなら購入してみようと思います。
VAは暗いゲーム画面で視点を動かしたり黒背景に白文字でスクロールしたときに黒が滲むのが気になってしまうのですが、この最新のVAはその点も解消されてますか?
レビューありがとうございます。
うちには8月はじめに届く予定で楽しみです。
「KTC G32P5」の詳細なスペック表 の 応答速度 が0.03ms になってます。
現状最高のHDRを体験できるモニターってことですね。
レビューありがとうございます。