BenQの大人気売れ筋シリーズ「MOBIUZ」から、EX2710Qの後継モデル「EX271Q」が発売されています。
お値段なんと6.4万円・・・と、価格破壊が進むWQHDモニター市場において驚愕の強気価格ですが、BenQ独自の数々のゲーミング機能があるから「この価格で問題ない」とアピールしてます。
――――― 本当にそんな価格で大丈夫ですか?
気になったので1台買ってみて、測定機材も駆使して詳しく比較レビューします。
(公開:2025/2/28 | 更新:2025/2/28)
「MOBIUZ EX271Q」はどんなゲーミングモニター?
- フルHDより約1.8倍広い「WQHD(2560×1440)」対応
- リフレッシュレートが「最大180 Hz」でヌルヌル動く
- ESS Sable搭載で高音質なヘッドホン端子
- PS5で120 Hzに対応
- BenQ独自のゲームに便利な機能に対応
「MOBIUZ EX271Q」は、従来モデルEX2710Qと同じく「エンタメ用途に特化した」WQHDゲーミングモニターです。
内蔵スピーカーシステム「treVolo」が削除されてしまいましたが、代わりに「ESS Sable」DACを搭載した高音質なヘッドホン端子を搭載します。
従来モデルになかった新型の「PixSoul」映像エンジンにより、色ムラを減らす「パネルの均一化」、AI暗所補正「Shadow Phage」などなど。他社にない独自の機能を提供できる様子です。
BenQ MOBIUZ EX271Q | |
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パネルタイプ | WQHD(2560×1440)で最大180 Hz 広色域IPSパネル(27インチ) |
応答速度 | 1 ms (G2G) |
主な機能 ゲーマー向け |
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調整機能 エルゴノミクス |
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VRR機能 | AMD FreeSync Premium ※G-SYNC互換モード対応 |
参考価格 ※2025/2時点 | ![]() |
Amazon 楽天市場 Yahooショッピング |
BenQ MOBIUZ EX271Q | |
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画面サイズ | 27インチ |
解像度 | 2560 x 1440 |
パネル | 広色域IPS (DCI P3カバー率:95%) |
コントラスト比 | 1000 : 1 |
リフレッシュレート | 180 Hz (2560 x 1440) HDMI 2.0 : ~144 Hz DP 1.4 : ~180 Hz |
応答速度 | 0.5 ms (G2G) |
光沢 | ノングレア |
VESAマウント | 100 x 100 mm |
エルゴノミクス |
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主な機能 |
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HDR対応 |
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同期技術 | AMD FreeSync Premium ※G-SYNC互換モード対応 |
スピーカー | なし イヤホン(3.5 mm)端子あり |
主な付属品 |
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寸法(実測) | 546 x 614 x 277 mm |
重量(実測) |
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保証 | 3年保証 ※パネル本体は12ヶ月間のみ |
「MOBIUZ EX271Q」は、BenQの旗艦ゲーミングブランド「MOBIUZ」の最新版WQHDゲーミングモニターです。
DCI P3カバー率95%を出せる鮮やかなIPSパネルに、最大180 Hzのリフレッシュレートを組み合わせて、2~3万円台のWQHDモニターに匹敵する性能に。
・・・もちろん、それだけだったら競争力が無さすぎて話にならないから、BenQが相当の研究開発費(R&D費)を投入して作り上げた独自のゲーマー向け機能をフル装備。
「Shadow Phage」と「Light Tuner」を組み合わせた最高峰の暗所補正に、色域拡張を内蔵する鮮やかさ補正「Color Vibrance」、残像を軽減する黒挿入モード「ブレ削減(Motion Blur Reduction)」機能を備えます。

自信たっぷり「パネルの均一化」を表記
加えて、最新MOBIUZシリーズで導入された「PixSoul」映像エンジンにより、パネルの均一化(色ムラ抑制)も実現したらしいです。

メーカー保証は「3年間」ですが肝心の液晶パネル本体は「1年間」のみ、しかもドット抜け(輝点・黒点)は対象外です。
スペックの割にずいぶん高い値段だから、できればパネル本体も3年保証にして欲しいのが本音。

MOBIUZ EX271Qの画質をレビュー

(初期設定は青くて黒が強い)
MOBIUZ EX271Qの初期設定の画質をチェック。
BenQのエンジニア的に一般受けがいいと考えている、青白くてコントラスト感が高いと感じやすい独自のチューニングです。
悪く言えば黒を潰して白をわずかに飛ばした、標準的な規格を無視した設定ですが、今のところ一般受けは本当に良好でMOBIUZシリーズが売れる理由になっています。
もし、初期設定のまま違和感を感じなかったら、そのまま使って大丈夫です。

筆者は標準規格の白(D65)に慣れているため、キャリブレーター(測定機材)を使いながらモニターの色を調整します。

キャリブレーターで測定しながら、モニター側の設定(OSD)を手動で調整しました。
- モード:カスタム
- 明るさ:100
- 色温度:ユーザー
- 赤:95~96
- 緑:86
- 青:99~100
- Light Tuner:-3
- Color Vibrance:10
- Shadow Phage:オフ
- ガンマ:ガンマ2
以上の設定で、ニュートラルな色温度(白色)である6500Kにおおむね調整できます。
画面の明るさは好みに合わせて調整してください。明るさ100%だとかなり明るいです(個人的な好みで350 cd/m²に合わせているだけ)。

青白いグレースケールを標準どおりに合わせて、黒つぶれと白飛びもかなり改善できました。
相変わらずBenQ MOBIUZシリーズ独自解釈の初期設定はクセが強いです。でも、パッと見の印象はそれほど悪くないし、実際に映像やゲームを流すとけっこう高画質に錯覚します。
標準規格(D65)に慣れている筆者にとって違和感を覚えても、大多数の一般人はふつうに高画質だと感じるはずです。

もっと厳密にキャリブレーション(校正)したいガチな方は、筆者が作成した3D LUTプロファイル(.cube)を試してみてください。
フリーソフト「dwm_lut」を使って3D LUT(.cube)を適用したら、ゲーミングモニターのOSD設定を以下の内容に変更します。
- モード:カスタム
- 明るさ:100
- 色温度:ユーザー
- 赤:96
- 緑:86
- 青:99
- Light Tuner:-3
- Color Vibrance:10
- Shadow Phage:オフ
- ガンマ:ガンマ2
3D LUTの効果を確かめます。

(精度:ΔE = 0.25 / 目標:ΔE < 2.0)
シンプルに約200ポイント測定でプロファイルを作ってみました。ほぼ正確にガンマ2.2に校正されています。

(目視補正:6490~6510K前後)
常用グレースケールで色温度もほぼ6500K前後に一致します。
色の鮮やかさを損なわないように、できるだけ色域を変えないように作ってます。鮮やかさをそのままに、ガンマと色温度を規格どおりに調整する3D LUTプロファイルです。
参考写真と比較写真でざっくり画質を見る
(sRGB:ΔE = 3.19 / 色温度:6503K / 輝度:326 cd/m²)
Youtubeやアニメ、FPSゲーム(タルコフやOverwatch 2)、RPGゲーム(原神や崩壊スターレイル)をMOBIUZ EX271Qで表示した例です。
中身がLG Display製「Nano IPS」パネルなだけあり、さすがの鮮やかさ。色域が狭い古いパネルから乗り換えたら、すぐに画質の差に気づけます。

カラフルな色彩を使ったイラスト画像(原神の★5恒常キャラ「刻晴」より)で比較。
カメラ写りの関係で色味がわずかに違う以外、基本的な色鮮やかさとコントラスト感は同じに見えます。Nano IPSの方がわずかに視野角広い程度ですが、常識的な角度で見る分にはまったく同等です。
カルト的な人気を誇るオープンワールド型FPS「Escape from Tarkov(タルコフ)」のワンシーンで比較。
色数が少ない地味な映像で、パネルの性能差がほとんど出てこないです。どちらもほぼ同じ画質です。
性能差が見えやすい、黒を大量に使ったコンテンツ(タルコフの夜間)です。
MOBIUZ EX271Qがわずかに白浮きしています。2台並べて見て分かる小さな差で、どちらも基本的にIPSパネルだからコントラスト比に大きな違いはありません。
もっと比較写真を見たい方は↑こちらからどうぞ。
測定機材で「画質」をもっと深堀りしよう

2台の測定機材(X-rite i1 Pro 2 + i1 Display Pro Plus)を使って、MOBIUZ EX271Qの画質を深堀りします。
色域カバー率(CIE1976) | ||
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規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 99.6% | 98.3% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 91.5% | 94.2% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 85.0% | 91.5% |
Rec.20204K HDR向けの色域 | 66.5% | 70.3% |
MOBIUZ EX271Qで表示できる色の広さ(色域カバー率)を測定したxy色度図です。
もっとも一般的な規格「sRGB」で99.6%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では94.2%カバーします。
印刷前提の写真編集で重視される「AdobeRGB」規格のカバー率は91.5%です。
過去の傾向からして、色の広さは量子ドット液晶 > 量子ドットVA = QD-OLED > 広色域な液晶 = OLED > 普通の高色域パネル > 平凡な液晶パネル > TNパネルの順に並びます。
色の鮮やかさ(色の広さ)を他社のゲーミングモニターと比較してみた。
Nano IPSパネルの割に思ったほど色域が伸びず、DCI P3カバー率が約94%程度にとどまります。
MOBIUZ EX271Qの半額近いKTC H27E6(約98%)よりも狭く、2万円台で買えるTitan Army 27G2R(約95%)と同じくらいです。
95%前後でも実用上、十分といえばたしかに十分と言える水準ですが、価格が約6万円なら98%台を出してほしかったです。

平凡なコントラスト感です。部屋を暗くすると、黒い部分がうっすらと白浮きします。
コントラスト比を比較 ※クリックすると画像拡大 |
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コントラスト比(実測)は766:1です。平均的なIPSパネルを大きく劣っていますが、Nano IPSに特有の傾向だったりします。
色が均一の静止画コンテンツを見ている時間が長いオフィスワークで、気にする人が多い「色ムラ」をチェック。
BenQの説明によると「PixSoul」映像エンジンが色ムラを抑えるとしていますが、思ったほど効果が出ていません。ごく普通のIPSパネルと同程度の輝度ムラです。
パネルの四隅に近づくほど明るさが下がる「グロー」現象もきっちり出ています。
色ムラ(輝度ムラ)の測定結果は、平均値で5.12%でした。エッジライト方式LEDをバックライトに使う、並の液晶パネルとしては悪くない平均値です。
実際の映像コンテンツやゲームプレイシーンで色ムラに気づく可能性が低く、画面全体に同じような色を表示するシーンで色ムラや輝度落ちに気づけるレベル。


MOBIUZ EX271Qに施されたパネル表面加工は、PC用モニターで定番の「ノングレア加工(アンチグレア)」です。
ぼんやりと背景がしっかり拡散され、周囲が明るくても映り込みをかなり防いでいます。

部屋を暗くすると、映り込みがさらに軽減されます。
透過性(表面粒子の細かさ)も値段の割にけっこう普通で、透過性に優れた高級パネルと比較して反射がやや多め。
IPSパネルの中でトップクラスの視野角です。Nano IPSパネルはコントラスト比が低いですが、そのかわり競合他社のIPSパネルより高い視野角を獲得しています。
といっても、こうして比較して分かる程度。現実的な角度で視野角の違いを実感する可能性はほとんどありません(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
IPSパネルで最高クラスの視野角を持ってしても、OLEDパネルを相手にすると到底かなわないです(→ 参考写真)。
文字のドット感(見やすさ)はそこそこ鮮明です。
- ドットがRGB配列:テキスト表示に有利
ピクセル配列の拡大写真 - 画素密度が100 ppi前後:標準的なドット密度
テキスト表示に有利なRGB配列パネルに、100 ppi前後のスタンダードな画素密度を備えます。

普通の距離感(50~60 cm)で見る分には、ドット感がほとんど目立たない鮮明なテキストです。
画面の明るさは100%設定で約315 cd/m²で、SDRコンテンツを見るのに十分な明るさです。ただし、部屋が明るかったり窓から太陽光が差し込む環境だと若干の不安が残ります。
最低輝度(0%設定)は約39 cd/m²とそこそこ薄暗くできます。眼精疲労などが理由で、夜間に暗い画面を好む人にとって嬉しい仕様です。
目にやさしいらしい120 cd/m²前後は設定値28%でほぼ一致します。
全部で「9個」あるカラーモードを比較
- Sci-fi
- リアル
- ファンタジー(初期設定)
- シネマ
- Display P3
- sRGB
- ゲーマー1
- ゲーマー2
- ゲーマー3

目標の基準値:sRGB(Gamma 2.2)
ガンマカーブはいわゆる「コントラスト感」に関わる数値です。
数字が大きいほど実際よりも暗く(黒く)、数字が小さいほど実際よりも明るく(白く)表示されます。
BenQ MOBIUZシリーズに収録されているカラープロファイルは、ガンマカーブをS字型にグニャッと変形させた、独自のチューニングを採用しています。
たとえば「シネマ」モード。黒に近い階調を高ガンマ(= 暗い)、明るい階調を標準に戻して、白に近づくほどどんどんガンマを上げていきます。
白飛びを抑制しつつ、画面全体のコントラスト感を強く演出でき、パネルの実測コントラスト比が変わっていないのにコントラスト感が上がったように錯覚させる狙いです。
初期設定の「ファンタジー」や「Sci-fi」モードも似たような構造のガンマカーブを使って、コントラスト感の強調を狙っています。
クリエイター向けの「sRGB」と「Display P3」モードのみ、標準カーブ(Gamma 2.2)に準拠した設定です。
モード | 色域 (sRGB) | 色域 (DCI-P3) | 明るさ | グレーの正確さ | 色の正確さ | ガンマ | 色温度 | コントラスト比 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Sci-fi | 98.3% | 94.2% | 306.6 cd/m² | ΔE = 5.24 | ΔE = 4.78 | 2.48 | 7470K | 748:1 |
リアル | 98.3% | 94.2% | 279.3 cd/m² | ΔE = 5.62 | ΔE = 4.95 | 2.24 | 8438K | 681:1 |
ファンタジー(初期設定) | 98.3% | 94.2% | 313.9 cd/m² | ΔE = 4.32 | ΔE = 3.85 | 2.48 | 7179K | 766:1 |
シネマ | 98.4% | 94.8% | 316.3 cd/m² | ΔE = 6.11 | ΔE = 4.17 | 2.58 | 7315K | 772:1 |
Display P3 | 97.9% | 90.9% | 348.9 cd/m² | ΔE = 1.54 | ΔE = 1.72 | 2.20 | 6458K | 851:1 |
sRGB | 93.3% | 75.3% | 270.2 cd/m² | ΔE = 6.25 | ΔE = 2.72 | 2.20 | 6499K | 871:1 |
ゲーマー1 | 98.3% | 94.2% | 307.0 cd/m² | ΔE = 5.02 | ΔE = 4.79 | 2.48 | 7477K | 748:1 |
ゲーマー2 | 98.3% | 94.2% | 279.3 cd/m² | ΔE = 6.02 | ΔE = 4.94 | 2.24 | 8438K | 682:1 |
ゲーマー3 | 98.3% | 94.2% | 314.1 cd/m² | ΔE = 4.53 | ΔE = 3.85 | 2.48 | 7176K | 766:1 |
「S字型」ガンマカーブは一般受けする可能性が高いから、気にならないならそのまま「ファンタジー」や「シネマ」モードを使うといいでしょう。
黒つぶれが気になる場合は「リアル」モードを使うか、筆者が紹介した手動OSD(ユーザー)設定をおすすめします。
MOBIUZ EX271Qは、全部で9個の「カラーモード」が用意されています。
「Sci-fi」「ファンタジー」「シネマ」モードなどに、「S字型」ガンマカーブと呼ばれる、明暗のメリハリを過剰に強調するBenQ独自のスタイルが使われています。
モードごとに程度の差はあれど(基本的に)白飛びを抑制しつつ、暗い部分をより暗く、明るい部分はフワッと明るく見えるシステムです。
規格を無視したクセの強いカラープロファイルですが、もし気に入ったなら使い続けて大丈夫。好みに合わない場合は、記事の序盤で紹介した「ユーザー」モードの調整ががおすすめです。

「MOBIUZ EX271Q」の規格測定レポートはこちら↓をクリックして確認できます。クリエイター向けのマニア情報だから、一般人は無視して飛ばしてください。
モニターの色を測定する機材「X-rite i1 Pro2(分光測色計)」と「ColorChecker Display Plus(比色計)」を使って、「MOBIUZ EX271Q」の色精度をチェックします。
色の正確さ ※クリックすると画像拡大 | ||
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比較グラフ | グレーの正確さ | カラーの正確さ |
![]() | ![]() | |
使用モード | ファンタジー | sRGB |
明るさ | 313.9 cd/m² | 270.2 cd/m² |
グレーの正確さ (dE2000) | ΔE = 4.32 | ΔE = 6.25 |
色の正確さ (dE2000) | ΔE = 3.85 | ΔE = 2.72 |
ガンマ | 2.48 | 2.2 |
色温度 | 7179K | 6499K |
コントラスト比 | 766 : 1 | 871 : 1 |
MOBIUZ EX271Qの「sRGBモード」はやや厄介です。測定値が6500K前後を表示していても、実際に見えているグレースケールは全体的に緑がかっていて、とても6500Kに見えないです。
つまり、sRGBモードの有無で目視補正ポイントがズレます。ファンタジーモードなら6500Kあたりで一致するのに、sRGBモードは6750~6800K前後に目に見える6500Kが存在します。
どうやらメーカーの出荷時校正では、目視補正ポイントのズレが見過ごされ、測定機(Konica Minolta)の言うままに機械的なキャリブレーションをやってしまった様子です。
というわけで、グレーの正確さが2.0超(基準値オーバー)、色の正確さも2.0超(基準値オーバー)でまったくダメ。
一方で「Display P3」モードはグレーの正確さが「1.54(ΔE < 2.0)」、色の正確さが「1.72(ΔE < 2.0)」でよく合っています。色域が拡張され、結果的に目視補正ポイントが6500Kに近づいたおかげで出荷時校正が一致するようです。
ちなみにDisplay P3とsRGBモード、どちらも「色温度」を変更できないです。キャリブレーターを使って別途LUTを作成しない限り、グレースケールのズレを修正できません。
マクロレンズでパネルの表面を拡大した写真です。
Fast IPS系で広く見られる「くの字型」の画素レイアウトと違って、シンプルな直列型の画素が見られます。RGBストライプ配列で、赤・緑・青の順にキレイに並んでいます。
細い直線やテキストの表示と相性がいい、PCモニター向けの画素レイアウトです。
表面加工は透過率がやや悪いノングレア加工がかかっていて、画素ドットのりんかく線がぼんやり不明瞭に見えてしまいます。
光を分析する「分光測色計」を使って、画面から出ている三原色の鋭さ(波長)を調べました。専門用語でスペクトラム分析と呼ぶそうです。
グラフを見てみると、なだらかな緑色と、中央が凹む赤色の波長パターンが出ています。「KSF蛍光体(KSF Phosphor)」に特有の波長パターンです。
Nano IPSシリーズはほぼ例外なくKSFタイプで占められています。2025年の今となっては、安物のIPSパネルでもそうめずらしくないです。
ついでにブルーライト含有量を調べたところ約32%でした。OSD設定からブルーライトカット:Lv1以上を有効化すると、すぐに25%未満(TÜV Rheinlandブルーライト認証)を達成できます。
MOBIUZ EX271Qのゲーム性能は?

MOBIUZ EX271Qのゲーム性能をレビューします。

- 応答速度
- 入力遅延
- ゲーム向け機能
おもに「応答速度」「入力遅延」「ゲーム向け機能」の3つです。測定機材を使って調べてみます。
MOBIUZ EX271Qの応答速度と入力遅延
↑こちらの記事で紹介している方法で、MOBIUZ EX271Qの「応答速度」を測定します。
60 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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ニンテンドースイッチやPS4など、最大60 Hz対応のゲーム機で使う場合、60 Hz時の応答速度を気にします。
30パターン測定で、平均4.07ミリ秒を記録します。60 Hzに十分な応答速度ですが、オーバードライブが強く効きすぎていて「にじみ」がハッキリと見えています。
OSD設定から「AMA:0」に切り替えると、応答速度が平均5.7ミリ秒に下がるかわりに、にじみを完全に除去できます。
120 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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PS5やXbox Series Xで重要視される120 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均3.63ミリ秒でした。
わずかに「にじみ」が見えますが、気にならないなら大丈夫です。気になったらOSD設定から「AMA:0」で修正可能です。
144 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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144 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均3.60ミリ秒でした。
180 Hz時の応答速度 ※クリックすると画像拡大 |
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180 Hz時の応答速度です。30パターン測定で、平均3.67ミリ秒でした。
モニターのオーバードライブ機能を使って、応答速度を改善できないかチェックします。
OD機能の効果 180 Hz / 3段階をテストした結果 | |||
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平均値 | 3.67 ms | 2.84 ms | 2.21 ms |
最速値 | 2.67 ms | 1.72 ms | 0.95 ms |
最遅値 | 4.61 ms | 3.71 ms | 3.70 ms |
平均エラー率 | 1.0 % | 10.0 % | 34.1 % |
MOBIUZ EX271Qのオーバードライブ機能「BenQ AMA」は3段階で調整できます。
すべてのモードを検証したところ、「AMA:Lv1」モードが一番バランスがよかったです。エラー率がほぼなく、応答速度は平均3.67ミリ秒です。
「AMA Lv2」以上を設定すると平均3ミリ秒を下回るものの、目に見えるレベルの「にじみ」が発生してしまって実用性に欠けます。
MOBIUZ EX271Qにおすすめなオーバードライブ設定は「AMA:Lv1」で決まりです。

他のゲーミングモニター(120 Hz以上)と比較します。
・・・約6万円の定価を考慮すると、やや物足りない性能です。3~4万円台の定番モデル「GDQ271JA」に勝ててないし、同じ価格帯の売れ筋モニター「LDQ271JAB」にも届かないです。
そもそも従来モデルの「EX2710Q」と比較しても悪化しています。

60 Hzモード時の応答速度も掲載します。60 Hz時なら平均より優秀な応答性能です。
入力遅延(Input Lag)はどれくらいある?

2024年7月より「入力遅延(Input Lag)」の新しい測定機材を導入しました。
クリック遅延がわずか0.1ミリ秒しかないゲーミングマウス「Razer Deathadder V3」から左クリックの信号を送り、画面上に左クリックが実際に反映されるまでにかかった時間を測定します。

- マウスから左クリック
- CPUが信号を受信
- CPUからグラフィックボードへ命令
- グラフィックボードがフレームを描画
- ゲーミングモニターがフレーム描画の命令を受ける
- 実際にフレームを表示する(ここは応答速度の領域)
新しい機材は1~6の区間をそれぞれ別々に記録して、1~4区間を「システム処理遅延」、4~5区間を「モニターの表示遅延(入力遅延)」として出力可能です。
なお、5~6区間は「応答速度」に該当するから入力遅延に含めません。応答速度と入力遅延は似ているようでまったく別の概念です。
左クリックしてから画面に反映されるまでにかかった時間を測定し、左クリック100回分の平均値を求めます。

MOBIUZ EX271Qの入力遅延はまったく問題なし。
180 Hz時(G-SYNC互換モード)で平均3.1ミリ秒、120 Hz時(G-SYNC互換モード)で平均4.7ミリ秒の入力遅延です。
どちらも16ミリ秒を大幅に下回っていて、ほとんどすべての人が入力遅延を体感できません。
価格に見合う豪華なゲーム向け機能
MOBIUZ EX271Qは4つある主要なゲーマー向け機能のうち、4つすべて対応します。MOBIUZシリーズの真髄が「ゲーム向け機能」に詰まっています。
- 暗所補正
暗い部分を明るく補正する機能 - 鮮やかさ補正
色の付いた部分を強調する機能 - 残像軽減
残像をクリアに除去する機能 - カクツキ防止
可変リフレッシュレート機能
順番にチェックします。

暗所補正「Light Tuner」モード
暗い部分を明るく補正できる「Light Tuner」モードです。
- オフ
- -10 ~ +10(刻み:1ずつ)
全20段階で細かく調整できます。

Light Tuner「-3」「-2」が割とニュートラルな補正に落ち着く中間値で、「-4」以下で黒つぶれ & 高コントラスト路線です。
「-1」以上でいわゆる暗所補正モードに該当する補正がかかり始め、黒に近い中間エリアを明るく持ち上げて、白に近いエリアは急速に明るさを下げて白飛びを抑制します。
一般的なメーカーの暗所補正だと、そのまま明るく補正し続けるからどこかで白飛びが大量発生して実用性を失います。
一方、MOBIUZ「Light Tuner」は白飛びも抑制する強烈なネガティブカーブがセットになっていて、他社よりも高い暗所補正効果が可能です。

暗所補正「Shadow Phage」モード
さらに強力な暗所補正「Shadow Phage」モードも併用します。
- オフ
- オン
Shadow Phageは「PixSoul」映像エンジンによって、シーンのコントラスト感に応じて自動的に暗所補正が適用される機能です。
Light Tuner単体で暗部のディテールを表現できないシーンでも、Shadow Phageとの合せ技で見事に補正できます。ハッキリ言って、頭ひとつ抜けて優秀な暗所補正モードです。
鮮やかさ補正「Color Vibrance」モード
BenQを人気メーカーに押し上げる要因となった、強力な鮮やかさ補正「Color Vibrance」モードを検証。
- オフ
- 0 ~ 20(刻み:1ずつ)
全20段階で細かく調整できます。
Color Vibranceは「10」あたりがニュートラルな中間値で、「11」以上から色のついた部分を派手に目立たせる効果があります。
「9」以下から色域エミュレート効果も始まり、「0」に近づくほど色域がどんどん狭くなって白黒(モノクロ)映像へ切り替わります。

違いが分かりやすい比較写真です。色のある部分だけが、極端に鮮やかになって目立ちます。
画面全体がどこもかしこも鮮やかなゲームだと効果が半減しますが、一部の色だけが目立ちやすいゲーム(例:Dead by Daylightなど)なら、かなり役立つ補正機能です。
残像軽減「ブレ削減」モード
「ブレ削減(BenQ MBR)」は、BenQがあまり積極的に推していませんが、その中身は黒フレーム挿入を利用した残像を軽減するモード「DyAc」に相当します。
残像軽減モード 「ブレ削減」 ※クリックすると画像拡大 |
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「ブレ削減」を有効化すると、残像感が軽減されて映像のクッキリ感が増します。
フレーム切替時に真っ暗なフレームを1枚挟む「黒挿入」が行われ、結果的にホールドボケ現象が軽減されて残像感が減ったように見える仕組みです。
ただし、リフレッシュレートが最大180 Hzだから二重フレーム現象(クロストーク)が少し出ています。
画面の明るさは下がる? |
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使える範囲は? |
|
「黒フレーム挿入」の影響で画面の明るさが下がります。
180 Hz時だと210 cd/m²台です。目標最低ラインの200 cd/m²台を維持できており、実用に足る黒挿入モードです。

WQHDで180 Hz(PS5で120 Hz)に対応
MOBIUZ EX271Qは最大180 Hzまで、PS5で最大120 Hzに対応します。実際にPS5とゲーミングPCにモニターをつないでみて、リフレッシュレートの対応状況を確認しましょう。
PS5の対応状況 ※クリックすると画像拡大 | ||
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設定 | 60 Hz | 120 Hz |
フルHD1920 x 1080 | 対応PS5 VRR:- | 対応PS5 VRR:- |
WQHD2560 x 1440 | 対応PS5 VRR:- | 対応PS5 VRR:- |
4K3840 x 2160 | 対応PS5 VRR:- | –PS5 VRR:- |
PS5でフルHD~WQHD(最大120 Hz)に対応し、4Kダウンコンバート(最大60 Hz)も対応します。
しかし、MOBIUZ EX271Qは平凡なHDMI 2.0端子を備えているせいで「PS5 VRR」に非対応です。モニターの設定からFreeSyncを有効化しても、PS5 VRRは非対応です。
定価が6万円を超えているWQHDゲーミングモニターとして致命的かもしれません。
実際にゲームが120 Hzで動くかどうかは、ゲームによって対応状況が違うので注意です。
たとえばフォートナイトなら120 fpsかつ120 Hz動作ですが、ストリートファイター6は60 fpsで120 Hz動作になるなど、ゲームによって挙動が違います。
対応リフレッシュレート ※クリックすると画像拡大 | |
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HDMI 2.0 (18 Gbps) | Display Port 1.4 |
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MOBIUZ EX271Qがパソコンで対応しているリフレッシュレートは以上のとおりです。
HDMI 2.0で最大144 Hzまで、DisplayPortで最大180 Hzに対応します。
レトロなゲーム機で役に立ちそうな23.98 ~ 24 Hz範囲はどちらも非対応で、最低60 Hzにとどまります。
VRR機能(可変リフレッシュレート) ※クリックすると画像拡大 |
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フレームレートとリフレッシュレートを一致させて「ティアリング」を防ぐ効果がある、VRR機能はDisplay Portで使用可能です。動作範囲は48~180 Hzです。
LFC(低フレームレート補正)対応ハードウェアの場合は、48 Hzを下回ってもVRRが機能します。
MOBIUZ EX271Qの機能性を調査
「ESS Sable」DACチップを内蔵した高音質なヘッドホン端子や、照度センサーによる自動調光「B.I.+ Gen2」など。価格が高いだけあって、値段に見合ってそうな「機能性」を取り揃えています。
- エルゴノミクス
高さや角度を調整する機能 - インターフェイス
映像入力端子やUSBポートについて - ヘッドホン端子
「ESS Sable」DAC内蔵3.5 mmアナログ端子 - フリッカーフリー
眼精疲労持ちなら重要かもしれない - 自動調光(B.I.+ Gen2)
周囲の明るさに応じて輝度を自動調整 - OSD
On Screen Display(設定画面)
順番にチェックします。
自由に位置を調整できる「エルゴノミクス」機能
MOBIUZ EX271Qはフル装備のエルゴノミクス機能を備えます。スムーズに動いて調整しやすいエルゴノミクスです。
高さ調整の動かし始めがやや硬いくらいで、何度も動かしているうちに馴染んで滑らかに。角度やピボットは最初からかんたんに動かせます。
なお、画面の水平(0°)が非常に取りづらい・・・どころか、何度やっても取れないです。上位モデル「EX381U」もそうですが、MOBIUZの新しい筐体は水平(0°)をマトモに取れないです。
VESAマウント ※クリックすると画像拡大 |
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別売りモニターアームを取り付けるのに便利なVESAマウントは「100 x 100 mm」に対応します。

パネル本体の重量は約5.20 kgで普通のモニターアームで持ち上げられます。

モニター側に最初から付いている小ネジ(4本)を使って、そのまま「エルゴトロンLX」アームを取り付けられます。
「ヘッドホン端子」の音質をテスト
非常に優れたオーディオ特性を持つ「RME ADI-2 Pro」を用いて、MOBIUZ EX271Qのオーディオ性能をテストします。
SN比を比較 ※クリックすると画像拡大 |
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さすが「ESS Sable」DACチップを搭載しているだけあって、出力がかなり高いです。高ゲインモードを入れるとさらに出力が上昇し、「シネマモード」時に約98 dBを記録します。
過去レビューしてきたゲーミングモニターでNo.1記録です。

周波数特性グラフです。
- サラウンドモード:フラット
- シネマモード:低音域と高音域をカット
- 標準モード:フラット
モードごとに特性が変わります。標準モードがもっとも聞きやすい素直な音質で、シネマモードは音がスッカスカで人物の音声を強調するモードでした。
サラウンドモードはあくまでもサラウンド感だけを演出していて、解像度や濃さが悪く、正直イマイチな音質です。
比較的鳴らしにくい「Sennheiser HD650」をつないで聴いてみた(※標準モード + 高ゲインモードでテスト)。
なかなか高音質です。こもった傾向が非常に少なく、明るくクリアな音が出てきます。解像度も良好で、低音域の駆動もゲーミングモニター内蔵のイヤホン端子として過去最高のクオリティ。
こだわりの強い人でもない限り、十分に満足できる音質です。
音にこだわる方、音質に不満を覚えてしまった沼の素質がある人は、素直に別売りのポータブルDACを買ってください。
対応するインターフェイスをチェック
映像端子はUSB Type-Cを含めて全部で4つもあり、Display Portのみ最大180 Hz(2560×1440)に対応します。
付属のUSB Type-C to Aケーブルでパソコンにつないで、USBポート間で接続されたパソコン同士を同じマウス(キーボード)で操作できる「KVM」機能も使えます。

- 15 W(5.0 V x 3.0 A)
- 27 W(9.0 V x 3.0 A)
- 36 W(12.0 V x 3.0 A)
- 45 W(15.0 V x 3.0 A)
- 65 W(20.0 V x 3.25 A)
USB Type-Cポートで最大65 WのUSB給電(USB PD)に対応します。

電力負荷シミュレーターで実際に負荷をかけて、最大65 Wの充電速度を確認できます。

対応するUSB Type-Cケーブル1本で、ノートパソコン(ASUS Vivobook 15)を充電しながら、外部ディスプレイ(最大WQHD 180 Hz / 10 bitまで認識)として使えました。
「フリッカーフリー」対応ですか?

パッケージに「TÜV Rheinland」認証のロゴマークが貼ってあります。
フリッカーフリーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
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実際にオシロスコープを使ってフリッカーの有無をテストした結果、明るさ0~100%までフリッカーが一切検出されません。
フリッカーの基準 | 結果 |
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一般的な基準 0 Hz または 300 Hz以上 | 問題なし (= 0 Hz) |
![]() 0 Hz または 3000 Hz以上 | 問題なし (= 0 Hz) |
完全なフリッカーフリーを可能にする「DC調光」方式のゲーミングモニターです。
目を酷使する長時間のオフィスワークもなんとなく安心な(気が)します。
VRRフリッカーを検証 ※クリックすると画像拡大 |
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VRR(G-SYNC互換モードなど)有効時の「VRRフリッカー」も一切なし(※上記グラフはPWMフィルタリング後のデータ)。
自動で明るさ調整「B.I.+ Gen2」を検証
「B.I.+ Gen2(Brightness Intelligence Plus Gen2)」は、いわゆる自動調光です。
従来モデルのEX2710Qに「Gen1」、新モデルのEX271Qは最新世代の「Gen2」を搭載します。
画面のベゼル中央にある大きな照度センサーで、周囲の明るさと色温度を測定し、リアルタイムに画面の明るさと色温度を調整する目に優しい(らしい)機能です。
部屋が明るいと、画面の明るさと色温度を自動的にプラスします。部屋が暗くなってくると、画面の明るさと色温度をゆっくりと下げます。
「Gen2」版は調光スピードが穏やかに改善され、画面をぼんやり見ていると変化に気づきにくいです。従来版だといきなり変化してイラッとしたから嬉しい改善です。

モニターの設定画面(OSD)

モニター本体の中央底面にある「5方向ボタン」を使って、OSD設定をスムーズに操作できます。

付属の「リモコン」でもOSD設定を自由にコントロールできます。リモコンが便利すぎて、5方向ボタンをまったく使わなかったです。
BenQのOSDレイアウトは見やすく整理された、お手本のようなフォルダ階層型で、後追いの他社メーカーからよく参考にされています。
5方向ボタンを右に倒して進む、左に倒して戻る・キャンセル、上下で項目の調整ができます。項目の決定も、右に倒して確定できて便利です。
ただ、ASUSと比較してOSDのレスポンスがやや遅く感じます。リモコンの快適性にOSD側のスピードが追いつかず、設定したつもりが設定できてなかったシーンに何度か遭いました。

ユーザー側で任意の設定を保存できる、カスタムプロファイルは全3スロットあります。他のカラーモードから、ダイレクトに任意のスロットへコピペする機能もあり、利便性が素晴らしいです。

ショートカット機能も充実しています。
全部で4スロット(ALPHA / BRAVO / CHARLIE / DELTA)のパターンを登録でき、入力ポートごとにスロットを割り当てる機能まで。
たとえば、USB Type-CならBRAVOスロットを割り当て、HDMIポートにALPHAスロットを割り当てるなど。使うハードに合わせた柔軟なショートカット設定が可能です。

MOBIUZ EX271QのHDR性能をテスト
MOBIUZ EX271Qは、もっともグレードが低いHDR規格「Display HDR 400」認証を取得したモニターです。
全部で5つあるHDRグレードで一番下にあたります。Youtubeで公開されている「Morocco 8K HDR」や、HDR対応ゲームを使って検証します。
(HDR映像を収めた写真はSDRです。掲載した写真は参考程度に見てください。)
HDRモード時の色合いがだいぶ変です。画面にレモン果汁をうっすらと塗ったような「青くて緑」な感じにズレていて、違和感があります。
幸い、MOBIUZ EX271QのHDRモードは全部で5種類あり、HDR標準規格に準拠した「Display HDR」モードもきちんと用意されています。
- Sci-fi HDR
- リアルHDR
- ファンタジーHDR
- Display HDR
- シネマHDR
全部で5種類のHDRモードが用意され、その中でも「Display HDR」モードが優秀です。逆にいえば、5種類もHDRモードがあるのに内4つがほぼ使い物になりません。
一応、明るさや色温度、Light TunerやShadow Phageなど。HDRモードにもかかわらずすべての設定が解禁されているのは、さすがBenQクオリティですが、色合わせは普通に難しいです。
「Display HDR」モードをそのまま使うのが一番しっくり来るHDR画質です。
青いラインがHDR規格(PQ EOTF)のターゲットラインで、ターゲットの周囲を追いかけているラインが実測値です。
Display HDRモードが比較的、ターゲットに追従していてマトモだと分かります。他のモードはLight TunerやShadow Phageの影響で「白浮き」が顕著で、あまり使えないです。
HDR 1400モニターと比較※画像はクリックで拡大 | |
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MOBIUZ EX271QDisplay HDR 400 (CTS 1.1) | TITAN ARMY M27E6V-PRODisplay HDR 1400 (CTS 1.1) |
参考程度に、Display HDR 1400対応ゲーミングモニターと比較した写真です。
そもそもの明るさがまったく違うし、3枚目の白飛びも顕著な差が出ています。
MOBIUZ EX271QはシングルLED(1枚)だから、コントラスト比を向上させる「ローカル調光」を使えず、黒が白っぽく「白浮き」します。
- TCL 27R83U(1152分割):約3600~15300:1
- M27E6V-PRO(5088分割):約1800~10500:1
- P32A6V-PRO(2304分割):約1700~8000:1
- KTC M27P6(1152分割):約1300~4300:1
- EX-LDQ271JAB(576分割):約1400~6700:1
- MOBIUZ EX271Q(1枚):約760~980:1
MOBIUZ EX271Qと同じ価格帯(5~6万円台)で増えてきた「Mini LED」搭載モデルと、実効コントラスト比を比較すると・・・ 絶望的な性能差です。
ほぼ同じ定価の「EX-LDQ271JAB」と比較して、ワースト値で約2倍、ベスト値なら約6.8倍も開いてます。

実際のHDRコンテンツによる輝度測定

Youtubeで配信されている「Dune Part 2」のHDR版トレーラーを再生しました。
400 cd/m²すら超えられず、普通のSDR版トレーラーを見ているような感覚です。リアリティ(現実感)を体験できる明るさに達してません。

ネイティブHDRモード対応の「サイバーパンク2077」です。まったく明るさが出ません。

RTX HDRで原神をHDR化してテスト。400 cd/m²前後で頭打ちになってしまい、400 cd/m²以上を使うエリアがすべて白飛びします。
過去のレビューで何度も書いてきたように、Display HDR 400は必要最低限のHDRグレードに過ぎず、実際に映像を体験しているかのような現実感を得られません。
モニター測定機材でHDR性能を評価

モニターの色と明るさを超高速かつ正確に測定できる機材を使って、「MOBIUZ EX271Q」のHDR性能をテストします。
測定結果(レポート)はこちら↓からどうぞ。専門用語が多いので・・・、興味がなければ読まなくていいです。
VESA Display HDR HDR性能のテスト結果 | ||
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比較 | テスト対象 MOBIUZ EX271Q | VESA Display HDR 400 |
画面の明るさ |
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黒色輝度 |
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コントラスト比 |
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色域 |
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色深度 |
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ローカル調光 |
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Display HDR 400認証で要求されるすべての項目で合格です。最近の液晶パネルなら、HDR 400認証は合格できて当然です。

HDRモードで画面全体に白色を表示したときの明るさを、他のモニターと比較したグラフです。他のHDR 400認証モデルと並びます。

HDR時のコントラスト比(理論値)は、4923:1です。
全画面のみ、バックライトの明るさを下げる「1D型 ローカル調光」が発動し、約5000:1のコントラスト比に達します。
もちろん、どこか1ドットでも光っていれば解除されてしまい、すぐに元のコントラスト比に戻ります。実用上まったく意味のない数字です。
HDRコントラスト比Colorimetry Research CR-100で測定した結果 | |
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全画面 | 4923 : 1 |
10%枠 | 975 : 1 |
3×3パッチ | 973 : 1 |
5×5パッチ | 973 : 1 |
7×7パッチ | 972 : 1 |
9×9パッチ | 765 : 1 |
テストパターン別にHDRコントラスト比を測定した結果、ワーストケースで765 : 1です。

HDR規格どおりの明るさを表示できるかチェックする「PQ EOTF」グラフです。
- Display HDRモード
(※ローカル調光:有効)
グラフを見て分かるとおり、1~380 cd/m²くらいまで良好な追従性です。パネルの性能的に不可能な0.5 cd/m²以下から、1D型ローカル調光を使って無理やり黒を拡張します。

面積比による明るさの変動は皆無です。
すべての面積で一貫して425 cd/m²前後を維持します。

HDRモード時の持続輝度をチェック。
すべての面積比で安定した持続輝度です。
HDR時の色精度(Rec.2020)は最大ΔE = 9.80、平均Δ = 5.57でした。
HDRモード時の色温度は、低輝度側で寒色に偏りが大きいです。1D型ローカル調光が切れる1 cd/m²以上から、測定値でおおむね6500K前後で、かなり正確な色合いに見えます。
MOBIUZ EX271Qの開封と組み立て

従来モデルの高級感あるパッケージから、ずいぶんとコストカット感が漂う簡素な段ボール茶箱にデザインが変更されました。
サイズは81 x 47 x 19 cm(160サイズ)です。

「TOP」の矢印を天井に向けてから、箱を開封して中身の梱包材を丸ごと引っ張り出します。
上の段に付属品、下の段にゲーミングモニター本体が収まってます。
付属品 (写真の左から順番に) |
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各映像出力ケーブルと、USB Type-Cケーブルが付属します。

便利なリモコンが付属します。ボタン電池(CR2032)式です。
参考までに、付属のリモコンは赤外線センサーを備えるMOBIUZシリーズなら共通して使えます。
同じ部屋で使っている「EX381U」が1台のリモコンから同時に反応してしまい、複数台のMOBIUZを運用するうえで不便な仕様です。センサーの至近距離から操作すれば何とかなります。

一般的な0.75 mm径を使った電源ケーブルです。最大700 W(電流:7 A)まで対応。
組み立て工程 ※クリックすると画像拡大 | |
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ゲーミングモニターで定番のドッキング方式です。プラスドライバーが不要なツールレス設計でかんたんに組み立てられます。

外観デザインを写真でチェック
SF的なデザインを取り入れています。曲線美が多いDELL Alienwareシリーズを、直線的なデザインで再構築したようなイメージです。
本体表面にザラザラと微粒子状の粉体塗装が施され、そのまま触っても指紋がつきづらい工夫もグッド。相変わらず「見た目」の良さはBenQ MOBIUZの強みです。

コンセントに仕込んだ電力ロガーを使って消費電力を1秒ごとに記録したグラフです。
消費電力 MOBIUZ EX271Q | |||
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テスト内容 | SDR | HDR | USB Type-C |
中央値 | 26.4 W | 41.3 W | 75.9 W |
ピーク値 | 36.7 W | 41.6 W | 108.1 W |
上位25% | 33.9 W | 41.5 W | 106.0 W |
下位25% | 22.1 W | 32.1 W | 53.8 W |
SDRモード時、最大の明るさで37 W前後、最小の明るさで16 W前後です。USB Type-C充電を使うと最大65 Wほど追加されます。
HDRモード時は40 Wくらいを維持します。
まとめ:最高峰のソフト + 詰めが甘いハード

「MOBIUZ EX271Q」の微妙なとこ
- 平凡なコントラスト比
- パネルの均一性はやや並
- 内蔵スピーカーなし
- sRGBモードがやや不正確
- 初期設定の色温度がズレてる
(かんたんに修正できます) - 「PS5 VRR」非対応(HDMI 2.0)
- 「ブレ削減」を使うと画面が暗い
- プレミアムな価格
「MOBIUZ EX271Q」の良いところ
- 27インチでWQHD(ちょうどいい)
- 最大180 Hzに対応
- PS5で120 Hz対応
- 入力遅延が非常に少ない
- Nano IPSで色域が広い(DCI P3:95%)
- 強力なゲーマー向け機能に対応
- 残像軽減「ブレ削減」
- Display HDR 400認証
- 扱いやすいOSD設定画面
- 便利な「リモコン」が付属します
- USB Type-C(最大65 W)
- 高音質なイヤホン端子(ESS Sabre)
- フル装備のエルゴノミクス機能
- メーカー3年保証
「MOBIUZ EX271Q」は、最高峰のゲーマー向け機能を備えたWQHDゲーミングモニターです。
大手メーカーより頭ひとつ抜けて優秀な暗所補正、「Light Tuner」と「Shadow Phage」の合せ技や、鮮やかさを強調する「Color Vibrance」など。
実用性の高い補正機能をフル装備。DyAc相当の残像軽減「ブレ削減(BenQ MBR)」も対応し、残像を少しでも減らしたいeSports用途もそこそこ使えそうです。
こだわりがなければ十分に高音質なESS Sable内蔵のヘッドホン端子に、モニター本体に触らずOSDを設定できる「リモコン」などなど、相変わらず機能性の充実度が凄いです。
しかし、パネル本体の性能面で時代遅れと言わざるを得ず、単純な映像美だけなら同じ価格帯にもっと魅力的なWQHDゲーミングモニターがいくつかあります。
積極的にMOBIUZ EX271Qを選ぶかどうか聞かれると返答に困ってしまう程度に、コストパフォーマンスに優れてません。

「MOBIUZ EX271Q」の用途別【評価】
使い方 | 評価※ |
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FPSやeSports(競技ゲーミング) 最大180 Hz対応で、応答速度もそこそこ速いです。 | ![]() |
ソロプレイゲーム(RPGなど) 色鮮やかで黒も締まる映像でソロプレイゲームに没入できます。 | ![]() |
一般的なオフィスワーク 文字がそれなりにクッキリと見え、完全なフリッカーフリーに対応。「sRGB」モードはグレースケールがズレていますが、色温度の調整でかんたんに修正できます。 | ![]() |
プロの写真編集・動画編集 プロの写真編集で求められる「DCI-P3」色域をそこそこ満たすものの、写真編集で重要な「Adobe RGB」色域が不足しています。規格ごとの出荷時校正モードもなく、自分でキャリブレーションが必要です。 | ![]() |
HDRコンテンツの再現性 Display HDR 400認証を取得しますが、最低限のHDR性能です。明るさ(PQ EOTF)の精度が高くても肝心の明るさが不足していると効果が薄まり、HDRコンテンツの再現性に乏しいです。 | ![]() |
※用途別評価は「価格」を考慮しません。用途に対する性能や適性だけを評価します。
参考価格 ※2025/2時点 | ![]() |
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Amazon 楽天市場 Yahooショッピング |
2025年2月時点、MOBIUZ EX271Qの実売価格は約6.0万円です。タイムセール時に5%割引で約5.7万円から買えます。

PS5 VRRがあればコンソール向けに推せたのに・・・

以上「MOBIUZ EX271Q 買ったレビュー:強烈なBenQ独自機能をフル搭載だけど・・・【価格が高い】」でした。
MOBIUZ EX271Qの代替案(他の選択肢)
MOBIUZ独自のゲーマー機能を再現できる代替案はほとんどないです。
しかし、同じ価格でもっと高画質な代替案なら、いくつか挙げられます。
5万円台から買える「EX-LDQ271JAB」が魅力的な代替案です。
EX271Qと同じ価格帯なのに、量子ドットIPSパネル + 直下型Mini LED(576ゾーン分割)を搭載します。従来のIPSパネルを超える鮮やかな画質と、驚異的なコントラスト比(ピーク時7000:1)を実現しました。
機能性よりもシンプルに画質を追求したいゲーマーにおすすめです。
機能性が強い代替案が「ASUS XG27ACS」です。明るさをそこそこ維持しつつ、VRR(G-Sync等)と同期できる黒挿入モード「ELMB Sync」に対応します。
Light Tunerの次くらいに優秀な暗所補正「Shadow Boost」機能も使えます。
定番モデルで知られる「IODATA EX-GDQ271JA」も依然として強力なオプションです。
本家Fast IPS(AUO製AHVA)パネル搭載で色がとてもキレイ、最大180 Hz(PS5で最大120 HzかつPS5 VRRまで対応)、各種ゲーミング機能をフル装備、リモコンでOSDをらくらくコントロールなどなど。
ほぼ全部盛りの優等生WQHDゲーミングモニターです。それでいて定価が4万円台、セール時に3万円台でコスパも抜群。
WQHDでおすすめなゲーミングモニター
最新のおすすめWQHDゲーミングモニター解説は↑こちらのガイドを参考に。
WQHDでおすすめなゲーミングPC【解説】
予算に余裕があれば「RTX 4070 Ti SUPER」を搭載したゲーミングPCがおすすめです。
できれば、CPUはRyzen 7 9800X3Dが欲しいです。180 Hz程度ならともかくとして、320 Hzを目指すならCPUボトルネックを可能な限り排除したいです。
ゲームのグラフィック設定を妥協するつもりで、予算をもっと絞るなら「RTX 4060 Ti」がコスパ良し。
おすすめなゲーミングモニター【まとめ解説】
サービスメニュー(5方向ボタンを右に倒したまま + 電源ボタンをオン)から、搭載パネルを確認できます。
今回レビューで使ったEX271Qのパネルは「LGD LM270WQA-SSA5」です。LG Display製Nano IPSパネルに該当します。
Nano IPSだとメーカー公称値1000:1のコントラスト比を満たせないため、従来モデル「EX2710Q」と同じく、コントラスト比が高いInnolux AASパネル版が存在する可能性があります。
U32G4ZMN結構良さそうです
MSRP:1329 シンガポールドル = 約156000円(消費税込み)
AOC Japanは高級モデルを日本市場に持ち込む気がないので、15万円超となると望み薄ですね。VA + Mini LED自体は「TCL 27R83U」がすでにあるし、こちらはHDR 1400対応。AOCはHDR 1000どまりで値段が1.5倍・・・ 厳しいかも。
32インチ4KminiLEDの選択肢がもっと増えるといいんですけどね
値段の割に中途半端な商品、まず買わないな
最近見始めて凄く参考になってます。GRAPHTのGRgrt044-2724ml-bkのレビューお願い致します!
ほぼ同じスペックで3~5年保証(ドット抜け含む)が付属する「IO-DATA LDQ271JAB」はダメですか?
https://chimolog.co/iodata-ldq271jab/
GRAPHT版は最大240 Hzが目立ったスペック差ですが、個人的に180 → 240 Hzの差はけっこう微妙です。2倍(320 ~ 360 Hz)くらいまで上がらないと実感として性能差を得づらいかと。
なら、確実に意味がある「3年保証」を取りたいかなと。Mini LEDは原理的にパネル本体の発熱も多いですし、保証は長いに越したことないです。
そちらの検証も拝見させてもらいつつ迷ってたんです。なるほどありがとうございます!
ben qはちょっと爪が甘いところがありますね。
なんなんでしょうね。
モンハンが発売された今REGZA RM-G276Nどうなんでしょうね
QWHDとしてはなかなか良さげに見えてしまうのですが、
ディスプレイガチ勢から見るとどう映っているのか気になります。
気になっていたのでレビューありがとうございます。
27インチのWQHDだともっと安かったり、Mini LEDのモニターだったりを各社出してきてる中で、モニター自体の性能が高くない本製品はこの価格では厳しい戦いを強いられそうですね…(IO-DATA LDQ271JABが強すぎです笑)
ソフト面ではさすがBenQと言えるものを持っているので、このサイズでMini LED製品を出してほしいですね
これのUがほしいんだけどなんで2710UがHDR600だったのに
271UはHDR400にしたして感じでポチれない
271Uのレビューはありませんよね?…
このモニター気になってたから、レビュー助かりました!
しかしまあ、最近のBenQは、チグハグなモニターばかりな感じがするのは気の所為だろうか
いつもレビュー参考にさせていただいています。
本記事のPS5のところで解説されている部分について質問があるのですが、Titan ArmyのP275MSについているsPXモードとやらも4Kダウンコンバート機能に当たるのでしょうか。
ここ最近、日本版の説明だと何一つアピールされてないのに4K60Hz+VRR+ALLM表示が出来てビックリしたのですが、パネル自体はWQHD性能のはずなのでどういう見せ方になっているのか断定できません。
ダウンコンバートだとしても27型だとWQHD表示で十分というのは概ね事実ではありますし、WQHDのネイティブだとPS5はVRRが有効化されないようなので、場合によってはPS5用途としてはP275MSが最良のコスパ品とも言える気がします。
上で質問があったGRAPHTのモニターだったり、IO-DATAの競合品と比較しても、地味ながら大きな差別点だと思います。
今月下旬の土日ならヤフショでクーポン込み実質4万円ちょいくらいで買えそうですし(私は年末に似たようなキャンペーンで買いました)。
中華が強すぎるので大手メーカーにも頑張ってもらいたいところです
EX271Uもレビューして欲しいです!
タルコフ用に考えてるので暗所関連部分がすごく助かります。
暗所補正の比較記事って画面撮影必要になるから見つけにくくて。