筆者としては珍しく商社系のSSD「CFD SFT6000e」を買ってレビューします。個人的にCFD販売のSSDに対していい印象を持っていませんが、某インタビュー記事で興味を持ったので、実際に検証して確かめます。
(公開:2023/8/31 | 更新:2023/8/31)
CFD SFT6000eのスペックと仕様
CFD SFT6000e スペックをざっくりと解説 | |||
---|---|---|---|
容量 | 1024 GB | 2048 GB | 4096 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 2.0) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | Realtek RTS5772DL | ||
NAND #1 レビュー時点 | Micron 176層 3D TLC NAND(B47R) | ||
NAND #2 今後の変更先 | Micron 232層 3D TLC NAND(B58R) | ||
DRAM | なし | ||
– | – | – | |
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 6000 MB/s | ||
書込速度 シーケンシャル | 6000 MB/s | 5000 MB/s | |
読込速度 4KBランダムアクセス | 1000K IOPS | ||
書込速度 4KBランダムアクセス | 800K IOPS | 600K IOPS | |
消費電力(最大) | 5.3 W | ||
消費電力(アイドル) | 非公開 | ||
TBW 書き込み耐性 | 600 TB | 1200 TB | 2400 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 200万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
参考価格 2023/9時点 | 9980 円 | 14980 円 | 33980 円 |
GB単価 | 9.7 円 | 7.3 円 | 8.3 円 |
CFD販売が安定性と低発熱にこだわり、LANチップで有名なSoCメーカーRealtekとタッグを組んで開発したNVMe SSDが「SFT6000e」です。
省電力性に優れたSSDコントローラ「RTS5772DL」に、NANDメモリ「Micron B47R(176層 3D TLC NAND)」を組み合わせています。
DRAMキャッシュを搭載せず、HMB(ホストメモリバッファ)方式を採用するため書き込み性能に懸念があるものの、176層 3D TLC NANDであれば大きな心配はいらないでしょう。
なお、SFT6000eは商社系SSDですが製品ページで搭載コンポーネントを明記している比較的信頼できる製品です。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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CFD SFT6000e | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
書き込み保証値(TBW)は他社の有名ブランド品と同等クラスです。
仮にゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。
600 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると12000日で、耐久値を使い切るのに約33年もかかる計算に。NANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラが経年劣化で故障する確率のほうが高いです。
ライバル製品と価格設定の比較
PCIe 4.0対応のハイエンドNVMe SSDと価格を比較したグラフです。
2023年9月時点、CFD SFT6000eの 1 TBモデルが1万円切り、2 TBモデルが約1.5万円です。PCIe 4.0対応(PS5対応)SSDとしてはかなり手頃な価格設定で、ここ最近猛威を振るう中華ハイエンド勢に対する競合と見なせます。
CFD SFT6000eを開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
どこかSK Hynixに雰囲気が似ている、シャンパンゴールド調のパッケージデザインで到着。
今回レビューで使うサンプルはAmazonにて9980円で購入しました。
パッケージの裏面にCFD販売のロゴと、保証書(5年間)が印刷されています。箱は捨てずに保管する必要がありそうです。
付属品なし。プラスチック製のケースにSSD本体がすっぽりと収まっています。
基板コンポーネント
マットブラック塗装のプリント基板上に、SSDを構成するコンポーネントを覆い隠すように製品ラベルシールが貼られています。
ラベルシールを剥がすと5年間の製品保証が無効になるリスクが高いため、別途M.2ヒートシンクを取り付ける場合はシールを剥がさずにそのまま取り付けましょう。
裏面にコンポーネントはありません。SFT6000eはどうやら完全な日本国内向け製品らしく、グローバル製品でありがちな各国の認証ロゴがまったく記載されていません。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。
銅箔製のヒートシンクを兼ねている実測0.4 mmの分厚いラベルシールが貼ってあります。
ラベルシールを剥がして、基板のコンポーネントを目視で確認します(※5年間の製品保証が切れる行為ですので、真似しない方が安全)。
- コントローラ:Realtek RTS5772DL
N5206P5 GN23AA TAIWAN - DRAM:なし
- NAND:Micron 176層 3D TLC NAND
ATTMB122C0GGAA 2327B983338
CFDが製品ページに記載しているとおり、SSDコントローラがRealtek製、NANDメモリはMicron製です。DRAMキャッシュは搭載せず、最大64 MBのHMB(ホストメモリバッファ)方式※で代用します。
※ホストメモリバッファ方式:メインメモリのごく一部を拝借してDRAMキャッシュの代わりに使う技術
SSDコントローラはRealtekが開発する「RTS5772DL」を搭載。詳細不明ですがARM系SoCをベースにしたSSDコントローラで、仕様上は232層のハイエンド級3D NANDメモリに対応できます。
最大8チャネルのNANDメモリを束ねられ、各チャネルの最大スループットは電圧0.9 Vモード時に1066 MT/s、電圧0.8 V(Ecoモード)時で800 MT/sで動作可能です。
格安中華ハイエンドで定番のMaxioコントローラ(MAP1602A)が最大2000 MT/sに対応して爆速フルドライブする中、RTS5772DLがアピールする1066 MT/sはほぼ半分に過ぎず、パフォーマンスの絶対値は貧弱に映ってしまいます。
SFT6000eを開発したCFD販売によると
「RTS5772DL」は読込・書込ともに最大6,000MB/sになります。これは発熱を抑えるとともに、232層TLC NANDフラッシュでも問題ないようにテストを繰り返しエラーを最小限に抑えた設計にしているためで、結果的に他社のSSDよりも耐久性や信頼性が向上しています。必ずしも最速ではないですが、発熱を抑えつつ常に5,000~6,000MB/sの転送速度を安定して維持できるのが最大のポイントです。
あえて性能を抑えて発熱も抑え、信頼性と耐久性を確保したそうです。連続負荷でも温度が上昇しづらく、サーマルスロットリングによる性能低下も防げる設計をアピールしています。
今回のレビューで行う10分間の熱負荷テストに耐えられるかどうか、楽しみです。
NANDメモリは米国の大手NANDメーカー、Micronが製造する「B47R」です。
- Fw Str : [REALTEK_RL6817 ] []
- Bank00: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank01: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank08: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank09: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank16: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank17: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank24: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank25: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank32: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank33: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank40: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank41: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank48: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank49: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank56: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
- Bank57: 0x2c,0xc3,0x8,0x32,0xea,0x34,0x0,0x0 – Micron 176L(B47R) TLC 512Gb/CE 512Gb/die
Flash IDによる照合結果で「Micron 176L(B47R)」と表示されます。
176層まで積み上げた3D TLC NANDで、他社の同等クラスと同じく2デッキ方式(88 + 88層)を用いて製造。512 Gbの記憶密度、10.27 Gb/mm²のビット密度でかなり高密度なNANDメモリです。
密度が高い分、平均スループットは130 MB/s前後で他社の170層クラスと比較してワーストに近い遅さです。
NANDフラッシュはMicronの176層3D TLC(B47R)で将来的に232層のB58Rに変更予定です。
Realtek&CFDのタッグでSSD市場に本格参入。その開発のこだわりに迫る より引用
CFD SFT6000eの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | CFD SFT6000e 1TB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9 5950X超えのマルチスレッド性能と、現行最強クラスのシングルスレッド性能で、最大14000 MB/s超えの次世代Gen 5 SSDも難なく処理できます。
原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「CFD SFT6000e」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題なし。型番「CSSD-M2L1KSFT6KE」と表示されています。
フォーマット時の初期容量は「953 GB」でした。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
---|---|
テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込みが約6500 MB/sでメーカー公称値を軽くオーバー、シーケンシャル書き込み速度は約5980 MB/sで、こちらもメーカー公称値とほぼ一致する性能です。
テストサイズを64 GiBに変更すると、シーケンシャル読み込みが若干下がり、ランダムアクセス性能(RND4K Q1T1)が大きく下がる挙動が見られます。DRAMキャッシュのSSDで見られる症状で実用上の問題は未確認です。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
CFD SFT6000eは51.36 μsを記録しますが、最近のNVMe SSDが軒並み40 μs台に並んでいる状況を見るに50 μsは平凡な水準です。
書き込みレイテンシも普通です。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
512 Bから512 KBまでSFT6000eがワースト1位を突っ走ります。1 MBあたりでようやくスピードが出始め、WD Black SN770を上回ります。
残念な読み込み速度と対照的に、書き込み速度は8 MBまで一貫してトップ争いを繰り広げます。
CFD SFT6000eを実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
CFD SFT6000eのロード時間は「6.87秒」でした。現時点で揃っているデータの中で文句なしのワースト1位です。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストした3タイトルすべてで、CFD SFT6000eが一貫して最下位につけます。Realtek製SSDコントローラはどうやら読み込みが不得意な様子です。
「原神」のロード時間を比較
大人気RPGタイトル「原神」のロード時間を実際にテストします。
- 初回ロード(データロード0%からクリック可能になるまで)
- 初回ロード(クリックしてから操作可能になるまで)
- モンドから千尋の砂漠へワープ
- 千尋の砂漠からスメールシティへワープ
- スメールシティから稲妻城へワープ
- 稲妻城からモンドへワープ
上記6パターンを録画ソフト(120 fps)を使って記録し、動画編集ソフトに取り込んでフレーム単位でロード時間を比較しました。
CFD SFT6000eは「48.12秒」でした。過去テストされたSSDの中で群を抜いて原神のロード時間が遅いです。
各シーン別のロード時間(※グラフの左から順番にパターン1~6並び)です。
初回ロードタイムの遅さに加えて、マップからマップへのロードタイムの遅さも目立ちます。パターン1~5までまんべんなく遅いです。
パターン6(稲妻城からモンドへワープ)は、すでに読み込んだマップが大量に含まれるため、基本的に大きな時間差はつきません。
DirectStorageのロード時間を比較
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
CFD SFT6000eは0.26秒(16.28 GB/s)で、おおむねシーケンシャル性能に比例する傾向です。とはいえ、すでに十分すぎるほどロード時間が速いため、絶対値で見るとコンマ秒レベルの差しかつかないです。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → CFD SFT6000e)のコピペ時間です。
テストに使ったすべてのコピー素材(Zipファイルやゲームフォルダ)で、CFD SFT6000eが意外と健闘する結果に。後で詳しく解説しますが、CFD SFT6000eは約350 GB前後の巨大なpSLCキャッシュを展開できる仕様です。
テストで使ったもっとも大きいZipファイル(256 GB)ですら、SFT6000eが展開する巨大なpSLCキャッシュにすべて吸収されてしまい、平均4000 MB/sもの爆速スピードでファイルのコピーが完了します。
次は読み込み(CFD SFT6000e → Optane P5810X)のコピペ時間です。
単純なファイルの読み出しが速く、複雑なファイル構造だと若干遅くなる傾向が見られます。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。
4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約18.9%です。もっと遅くなると予想したものの、思ったよりは耐えています。
ただ、同じ価格帯で競合しやすいハイエンドDRAMレス組(Lexar NM790など)と比較してしまうと、かなり見劣りする性能です。
4K動画プレビューでは約13.4%で、性能差がなぜか開きます。ハイエンドDRAMレス組なら4Kプレビューを0%で完封しており、CFD SFT6000eの渋い性能が際立ちます。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
CFD SFT6000eのストレージスコア(空き容量10%時)は「1912点」です。空き容量100%なら2261点で、空き容量による性能低下は約15%に達します。
「低価格なDRAMレスの割に頑張っている性能では?」と思うかもしれません。残念ながら、価格で競合しやすいSN770やHIKSEMI FUTUREは空き容量による性能低下が少なく、スコアも1.7~2倍近い大差です。
同じDRAMレス型SSDでも、SRAM内蔵の高性能コントローラを搭載するSSDが相手だと・・・苦戦します。
特にSN770はSFT6000eより技術的に劣る112層3D TLC NANDを使っていながら、データシート非公開の謎の高性能コントローラでハイエンド級の性能を引き出すオーパーツです。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
ファイルコピースコア※のみ、巨大なSLCキャッシュで吸収してハイエンド級の性能です。一方、コントローラの性能が出やすいAdobeスコア、ゲームロードスコア、Officeスコアはほぼワーストでした。
※PCMark 10 Proのコピーテストは基本的にキャッシュの範囲内に収まるため、SLCキャッシュが狭いSSDでもハイスコアを出しやすいです。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
(1枚目:比較グラフ / 2枚目:強調グラフ)
約379 GBを書き込んだ後、一気に書き込み性能が悪化します。その後15分のテストが終わるまで、一度使い切ったキャッシュが復活することもなく終了です。一時的に0 MB/sをつける瞬間も多いです。
では、グラフの中身をざっくりと解説します。
- SLCキャッシュで爆速(約380 GBまで)
- SLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動モードに変化
(= おそらくTLC NAND本来の性能) - テスト終了までSLCキャッシュが復活せず遅いまま
容量1 TBモデルで約380 GBのSLCキャッシュを展開できるため、SFT6000eに搭載されたRTS5772DLは空き容量の3分の1をまるごとSLCキャッシュとして利用できる仕様だと予想できます。
SLCキャッシュが効いている状態なら平均6000 MB/s前後、いったんキャッシュが切れると平均317 MB/sまで下がってしまい、SATA SSDと何ら変わらない状態です。
なお、空き容量が150 GBの状態で容量128 GBのZipファイルをコピペすると、約77 GBまで平均4000 MB/sを維持します。
連続書き込みだとキャッシュをまったく再展開できないものの、一区切りおいてから書き込むとSLCキャッシュが割りとすぐに復活する傾向です(※TRIM GCコマンドを送らなくても復活が速い)。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
最初の5分間だけ爆速で、残りの10分間はずっと遅いまま。15分間の書き込み容量は、SFT6000eよりずっと価格が安いEXCERIA G2と大差ないです。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは1つです。
- ドライブ温度:SSDコントローラの温度
おそらくSSDコントローラの温度を表示しています。NANDメモリであれば、ピーク時に90℃近くまで上昇しません。SSDコントローラなら90℃近い温度がありえます。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
テストを開始してしばらくすると、SLCキャッシュが切れて書き込み性能が大きく下がります。
発熱を抑えつつ常に5,000~6,000MB/sの転送速度を安定して維持できるのが最大のポイントです。
Realtek&CFDのタッグでSSD市場に本格参入。その開発のこだわりに迫る より引用
キャッシュ切れにより性能が下がって結果的に温度の上昇がゆるやかになり、CFD販売がインタビューで語っていたとおり「低発熱」が実現しますが、5000~6000 MB/sの転送速度を常に維持するのは不可能です。
サーモグラフィーで表面温度を確認
今回はHWiNFOに表示されるセンサーがどこの温度を示しているのかを確認したかったので、加熱テストを10分追加し、HWiNFOで90℃前後に迫ったあたりでサーモグラフィーカメラを使って撮影。
- SSDコントローラ:91 ~ 92℃
- NANDメモリ(右):80 ~ 81℃
- NANDメモリ(左):73 ~ 74℃
SSDコントローラ周辺は90℃超えまで、NANDメモリ側は70~80℃まで温度が上昇します。
よって温度センサーを信頼するなら、HWiNFOに表示される温度はSSDコントローラ側で、センサーの精度も良好です。
SFT6000eに別途M.2ヒートシンクは不要です。サーマルスロットリングが発動する前に、SLCキャッシュが切れて性能が下がって結果的に温度の上昇が穏やかになります。
マザーボードにM.2ヒートシンクが付属しているなら取り付ける程度で大丈夫でしょう。
まとめ:Realtek製コントローラは他と比較すると地雷かも
「CFD SFT6000e」のデメリットと弱点
- DRAMキャッシュなし
- 高負荷時の温度が高い
- ゲームロード時間が遅い
- 書き込み性能が遅い
- 空き容量による性能低下あり
- 性能に対して価格が割高
- 今後232層3D TLC NANDに置き換え予定
(置き換え予定を公表するメリットある?)
「CFD SFT6000e」のメリットと強み
- 最大6000 MB/sのシーケンシャル性能
- 広大かつ迅速なSLCキャッシュ
- 十分な耐久性(600 ~ 2400 TBW)
- 大容量モデルあり(最大4 TB)
- メーカーが搭載パーツを公表済み
- 5年保証
残念ながらCFD SFT6000eはコスパの良いSSDと評価できません。ハッキリ言って、同価格帯のDRAMレスSSDが強すぎです。
ほぼ同じ価格のWD Black SN770はSFT6000eに対して1.5~1.7倍ほど高性能かつ、ゲームロードも優秀。少しの差額で手が届くHIKSEMI FUTUREやLexar NM790になると、ダブルスコアの性能差かつ最速級のゲームロードが付いてきます。
より魅力的な選択肢がある中で、あえてCFD SFT6000eを選ぶ理由を(筆者は)見つけられません・・・でした。
以上「CFD SFT6000eレビュー:CFD激推しRealtek製SSDコントローラは地雷ですか?」でした。
CFD SFT6000eを入手する
レビュー(2023年9月)時点で、CFD SFT6000eは1 TB版が約1万円、2 TB版が約1.5万円で買えます。それぞれあと2000~3000円下がったらコスパ的に買う価値ありですが、現状の価格ならライバルが強いです。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
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ちょうどこの価格帯はライバルが多いせいで各社、価格競争と性能競争が同時に発生していて
Realtekコントローラは後出しの有利よりも新参の不利が強く出てるっぽいですね。
気になってたので助かります
購入は・・・B58Rを見てからにしときます
申し訳ありません。SLCキャッシュの以下の文章ですがなにか勘違いされて
いるのではないでしょうか。
>連続書き込みだとキャッシュをまったく再展開できないものの、
>一区切りおいてから書き込むとSLCキャッシュが割りとすぐに復
>活する傾向です(※TRIM GCコマンドを送らなくても復活が速い)。
TRIMコマンドは御存知の通り存在していますが、GCを手動実行させる
コマンドは、NVMe/SATA/SASなどの標準コマンドセットには規定され
ていません。なので、あったとしてもベンダーユニークコマンドという
ことになります。ベンダーユニークコマンドは、その名の通り、ベンダ
ーが勝手に作ったコマンドなのでOSは当然ですが知りません。なので、
仮にGCを手動実行させるようなコマンドがあったとしても、OS側から
SSDに対してベンダーユニークコマンドが送られることは通常はありま
せん。
ということで、一区切りをおいてからのSLCキャッシュの復活は、最終ライ
トコマンドの処理後またはSyncCacheコマンド受信後に自動的にSLCキャッ
シュからTLC領域にデータを移動するようにドライブが設計されているか、
SLCキャッシュの容量が閾値を超えて少なくなったため自動的に適当な量
を移動させているかしかないと思います(今回のケースでは、SLCの速度
で約77GB記録できたようにみえるので、記録データの全量がTLC領域に
移動しているように見えます)。
ちなみに、TRIM/UNMAPコマンドの受信を起点にドライブがSLCキャッ
シュのフラッシュを実行する可能性は否定しません。
>Realtek RTS5772DL
他の所で下位モデルのRTS5766DL(PCI Express 3.0×4)とRTS5735DLT(SATA)の
記事も読んできたんですが、なんというか「貶すほどに悪くないが、褒めるほどに良くもない」という感じで
発熱にも配慮はしてるけどそれなりに熱くなるという、ほどほどの立ち位置を極めたモデルでしたね…。
内部のエラー耐性とか外からわかりにくいところで改良されてるんでしょうか
>キャッシュ切れにより性能が下がって結果的に温度の上昇がゆるやかになり、CFD販売がインタビューで語っていたとおり「低発熱」が実現しますが、5000~6000 MB/sの転送速度を常に維持するのは不可能です。
草。
こんなゴミを売るとは…。
やかもち氏のお陰で騙されずに済みました。
初めてのコントローラにファームだしこんなもんかと
ファームアップデートの伸びしろに期待したいところ
Arc7x0もそうだけどドライバ等の進化で伸びる余地ある方が楽しめる
そういうもんじゃない?
実用したいなら素直にSN850X行けばいいし
別の検証系の人はファームウェア更新をするって話を受けたって話してましたね、実際どの程度変わるのかは知らないですけど
ランダムアクセスの数値が他のDRAMレスに比べてもあまりに遅いので、確かにこれはチューニング不足に見えますね
FWアプデがあればいいのですが、果たして
基盤実装周りの記述がKIOXIAに乗っ取られているのは何故…?
公式に以下の文が乗ってますね
※ Eco Modeには、Windows専用 SSD管理ツールで設定が必要です。SSD管理ツールは下記からダウンロードしてください。
記事中にDLして設定したという話が見当たらないんですが、ちゃんと行いましたか?
製品コンポーネントの記事がキオクシアのものになっちゃってますね。。。(笑)
あとは公式のソフト入れいてみてどんなもんかってとこですね(SSDでソフト制御が必要ってのもなんだかなぁってカンジですが)
円高の今となってはキオクシアG2を超えるコスパになってんね
結局ファームアップの話は聞かないから
現行品でも性能が改善されてはいないんだろうけど