Zen 4世代の最上位モデル「Ryzen 9 7950X」を自腹で買ってしまったので、Core i9 13900Kとベンチマーク比較をしながらレビューします。
(公開:2022/11/6 | 更新:2022/11/6)
Ryzen 9 7950Xの仕様とスペック
CPU | Ryzen 9 7950X | Ryzen 9 5950X | Core i9 13900K |
---|---|---|---|
ロゴ | |||
世代 | 5th Zen 4 | 4th Zen 3 | 13th Raptor Lake S |
プロセス | 5 nm (TSMC N5) | 7 nm (TSMC N7) | 10 nm (Intel 7) |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | ソルダリング | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く |
ソケット | Socket AM5 | Socket AM4 | LGA 1700 |
チップセット | AMD 600 | AMD 400 / 500 | Intel 600 / 700 |
コア数 | 16 | 16 | 24 |
スレッド数 | 32 | 32 | 32 |
ベースクロック | 4.50 GHz | 3.40 GHz | 3.00 GHz |
ブーストクロック | 5.70 GHz | 4.90 GHz | 5.80 GHz |
内蔵GPU | Radeon Graphics(2CU) | なし | UHD 770 |
GPUクロック | 2200 MHz | – | 300 ~ 1650 MHz |
TDP | 170 W | 105 W | 125 W |
MSRP | $ 699 | $ 799 | $ 599 |
参考価格 | 117800 円 | 85800 円 | 105800 円 |
CPU | Ryzen 9 7950X | Ryzen 9 5950X | Core i9 13900K |
---|---|---|---|
世代 | 5th Zen 4 | 4th Zen 3 | 13th Raptor Lake S |
プロセス | 5 nm | 7 nm | 10 nm |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | ソルダリング | ソルダリング薄化ダイ & IHSを分厚く |
ソケット | Socket AM5 | Socket AM4 | LGA 1700 |
チップセット | AMD 600 | AMD 400 / 500 | Intel 600 / 700 |
コア数 | 16 | 16 | 24 |
スレッド数 | 32 | 32 | 32 |
ベースクロック | 4.50 GHz | 3.40 GHz | 3.00 GHz |
ブーストクロック | 5.70 GHz | 4.90 GHz | 5.80 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 可能 |
L1 Cache | 1024 KB | 1024 KB | 2176 KB |
L2 Cache | 16 MB | 8 MB | 32 MB |
L3 Cache | 64 MB | 64 MB | 36 MB |
対応メモリ | DDR5-5200 | DDR4-3200 | DDR5-5600 DDR4-3200 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | U-DIMMのみ | U-DIMMのみ | 不可 |
PCIeレーン | Gen5 | Gen4 | Gen5 + Gen4 |
24 | 16 + 4 | 16 + 4 | |
レーン構成 | 1×16 + 1×4 + 1×4 | 1×16 + 1×4 | 1×16 + 4 |
2×8 + 1×4 + 1×4 | 2×8 + 1×4 | 2×8 + 4 | |
1×8 + 2×4 + 1×4 | 1×8 + 2×4 + 1×4 | – | |
内蔵GPU | Radeon Graphics(2CU) | なし | UHD 770 |
GPUクロック | 2200 MHz | – | 300 ~ 1650 MHz |
TDP | 170 W | 105 W | 125 W |
MSRP | $ 699 | $ 799 | $ 599 |
参考価格 | 117800 円 | 85800 円 | 105800 円 |
TSMC 5 nmプロセスで製造される8コア16スレッド搭載「Zen 4 CCD」をぜいたくに2つ組み合わせて、合計16コア32スレッドに拡張したZen 4世代の最上位SKU・・・、それが「Ryzen 9 7950X」です。
スペック自体は従来のRyzen 9 5950Xから据え置きに見えますが、約13%改善されたIPC(= クロックあたりの処理性能)や、最大5.7 GHzの非常に高いブーストクロックでおよそ3割の性能アップを見込みます。
価格が相応に高くなる、と思いきやMSRPは799ドルから100ドル値下がり699ドルです。TSMCで製造されるRyzen最上位グレードとしては過去もっとも安い設定※で、CPU単体のコストパフォーマンスはほぼ確実に改善されます。
※Ryzen 9 3950X(TSMC N7)が749ドル、Ryzen 9 5950X(TSMC N7)が799ドル、今回のRyzen 9 7950X(TSMC N5)は699ドル。ちなみにRyzen TR 2950X(GF 12 nm)は899ドルでした。
ただし、最大5.0 GHz超えの高いブーストクロックを可能にするため、標準パッケージ電力(PPT)が大幅に引き上げられています。5950Xの標準PPTは142 Wでしたが、7950Xはなんと230 Wに跳ね上がっています。
TSMC 5 nmプロセスによる既存設計の改良
プロセス | トランジスタ密度 |
---|---|
TSMC 5 nm | 137.6 MTr / mm2 |
Intel 7 nm | 200~ MTr / mm2 |
TSMC 7 nm | 91.2 MTr / mm2 |
Intel 10 nm | 100.76 MTr / mm2 |
TSMC 10 nm | 60.3 MTr / mm2 |
Zen 4世代はZen 3世代と比較して、目立って大きな設計変更が施されていません。
既存設計の大部分を流用し、TSMC 5 nmプロセスによって(TSMC 7 nm比で)約1.5倍に増えたトランジスタ密度をふんだんに使って、キャッシュ周りやフロントエンドの改善を行いました。
たとえば1コアあたりのL2キャッシュ容量が512 KB → 1024 KB(1 MB)へ倍増してメモリレイテンシを軽減し、分岐予測の精度に影響があるOpキャッシュを約1.7倍に増量。
他にも、これもまた分岐予測の性能に影響するL1分岐先バッファーを1.5倍に増量、L2分岐先バッファーを約8%増量(2x 6.5K → 2x 7.0K)するなど。
地味ながらも確実に同じクロックで処理回数を増やせる効果がある設計改善を、AMDはZen 4世代にこれでもかと投入しています。
細かな設計改良の積み重ねで、Zen 4世代のIPC(= クロックあたりの性能)はZen 3世代と比較して平均13%の改善を実現。「13%」と聞くと地味ですが、Zen 2で15%、Zen 3では19%のIPC改善です。
世代ごとに確実にIPCが改善されています。1世代の更新できちんと13%もIPCを改善しているのは見事です。
とはいえ、13%程度のIPC改善ではライバルの13th Raptor Lake(Intel 13000シリーズ)に勝てない可能性が残ります。AMDはSocket AM5で大幅に増えた電力供給能力をフルに活用して、5.0 GHzを軽く超えるブーストクロックを加えました。
Ryzen 7000 | 最大ブーストクロック(前世代比) |
---|---|
Ryzen 9 7950X | 5.7 GHz(+0.7 GHz) |
Ryzen 9 7900X | 5.6 GHz(+0.8 GHz) |
Ryzen 7 7700X | 5.4 GHz(+0.7 GHz) |
Ryzen 5 7600X | 5.3 GHz(+0.7 GHz) |
今回レビューするRyzen 9 7950Xですら、従来比で700 MHz増えて最大5.7 GHzのブーストクロックです。
CPUに100%の負荷を掛けて動作クロックを確認すると、Ryzen 9 7950Xが平均5.12 GHzで、Ryzen 9 5950Xは平均3.86 GHzでした(7950Xの方が約33%も動作クロックが高い)。
142 Wから230 Wに拡張されたPPT(パッケージ電力)とTSMC 5 nmプロセスの特性に助けられ、動作クロックが飛躍的に改善されているのが分かります。
TSMC 5 nmプロセスは高い電力効率だけでなく、高クロック耐性も優れています。同じ傾向はGeForce RTX40シリーズ(Ada Lovelace世代)でも確認されており、高クロック向けの設計を用意せずとも高いクロックを出せるようです。
IPC:+13% x 最大クロック:+16% = 合計31%
13%のIPC改善と、15~17%のクロックアップにより、Zen 4はおよそ1.3倍の性能を提供します。雑に計算すると、Zen 4の8コアはZen 3の10コア相当に近い性能を示すはずです。
Socket AM5による新しい電力仕様
Socket AM5の電力仕様 | |||
---|---|---|---|
TDP(CPU) | 65 W | 105 W | 170 W |
ソケット電力(PPT) | 88 W | 142 W | 230 W |
ピーク電流(EDC) | 150 A | 170 A | 225 A |
持続電流(TDC) | 75 A | 110 A | 160 A |
第5世代RyzenからついにCPUソケットが「Socket AM4」から「Socket AM5」に更新されました。
Zen 4(第5世代Ryzen)から、CPUソケットが従来の「Socket AM4」から、まったく新しい「Socket AM5」に更新。物理的にも電気的にも、従来世代との互換性を完全に失います。
なお、AMDはSocket AM5を2025年まで使う予定と発表しており、Socket AM4と同程度の期間※にわたってサポートし続ける予定です。
※Zen世代が2017年に登場し、Zen 3世代は2020年に登場。Socket AM4対応CPUが登場した期間は3年です。
Socket AM5最大の特徴が、物理的な仕様の変更です。
CPUとソケットの接触面がPGA(ピングリッドアレイ)から、インテルと同様のLGA(ランドグリッドアレイ)に変更され、同じソケット面積のまま大量の接点(ピン)を配置できます。
従来のSocket AM4が1331本の接点に対し、Socket AM5では1718本の接点に増加。現行のインテルCPUで採用されているLGA 1700より18本も多い接点です。
接点の大幅な増加にともない、ソケットの給電能力も大きく改善されています。Socket AM4では最大142 Wのソケット電力(PTT)を前提に設計されています。
実際には142 W以上の電力供給が可能ですが、ハード的に想定されている限界を超えている状況が慢性化しているのは好ましい状況とは言えません。
今回のSocket AM5では最大142 Wから最大230 Wのソケット電力に拡張し、より高い消費電力のCPUに耐えられる設計です。たとえばTDP:170 WのCPUだと、ソケット電力は最大230 Wまで対応できます。
PGAからLGAへの移行で得られるメリットは給電能力の改善だけでなく、今まで以上に安全なCPUの取り付け・取り外し(いわゆるスッポンと呼ばれる事故を防止)が可能に。
なお、Socket AM5のベースプレートはマザーボード本体から取り外しができません。
ベースプレートを交換するタイプのCPUクーラーは(一部の水冷式や大型空冷によくある)、メーカーからAM5対応リテンションキットが同封されるのを待ちましょう。
既に持っていてAM5対応テンションキットが付属していなかった場合、メーカーまたは販売代理店の対応を待つほか無いでしょう。
- 「Socket AM5」対応のCPUクーラー製品について(株式会社アスク)
筆者も代理店にお願いして「NZXT Kraken X63」のAM5リテンションキットを取り寄せました。AmazonでNZXTクーラーを購入した方は、サポートに購入明細とシリアルナンバーを送ると対応してくれるはず。
DDR5メモリのみ対応(DDR4は対応しない)
世代 | DDR4 | DDR5 |
---|---|---|
Ryzen 7000(Zen 4) | 対応しない | DDR5-5200 |
Ryzen 5000(Zen 3) | DDR4-3200 | 対応しない |
Intel 13000(Raptor Lake) | DDR4-3200 | DDR5-5600 |
Intel 12000(Alder Lake) | DDR4-3200 | DDR5-4800 |
Ryzen 7000(Zen 4)シリーズは標準でDDR5-5200メモリに対応します。DDR4メモリとの互換性は完全に失われます。
Zen 4に真っ向からぶつかり合う予定のライバル第13世代Raptor Lakeは、DDR5とDDR4どちらも対応しており、マザーボードメーカーが好きな方を選んでラインナップできる状況です。
DDR5メモリが登場してから1年ほど経過した今も、DDR5メモリの価格はDDR4と比較して1.5~1.9倍とかなり高額で、同じ価格でより高性能なDDR4メモリ(OCメモリ)を購入できます。
動画編集やエンコードにおいてDDR5メモリはたしかに有利ですが、レイテンシが問われるゲーミングや単純なシングルタスクでは依然としてDDR4メモリの方が高性能です。
現状のDDR5メモリは価格に見合った性能をまだ提供できてません。DDR5対応マザーボードの価格も、DDR4対応モデルより高い傾向があり、なおさら価格差が開きます。
メモリとマザーボードを含めたコストパフォーマンスを考慮すると、DDR4メモリを選べる余地のあるRaptor Lake / Alder Lakeの方がやや有利と言わざるをえない環境です。
なお、AMDがZen 4で推奨するメモリクロックはなんと「DDR5-6000」です。ネイティブメモリで流通しているDDR5-4800を大幅に上回るクロックを推奨しています。
AMDいわく、Zen 4ではDDR5-6000までなら1:1同期モード(IFクロック = 2000 MHz)を維持できるとのこと。つまり、もっとも高い実効性能を得られるのはDDR5-6000メモリです。
DDR5-4800ネイティブメモリなら容量32 GBが1.5~1.8万円から買えますが、DDR5-6000(OC)メモリは安くても3万円を超えます。
RDNA 2世代の内蔵グラフィックスを搭載
モバイル向けのRyzen 6000シリーズ(Rembrandt)で既に導入されている、RDNA 2世代の内蔵グラフィックスがついにデスクトップ版のRyzen 7000に搭載されます。
ただし、TSMC 6 nmプロセスで製造されるIOダイの内部に設置されます。シェーダー規模はわずか2 CU(128シェーダー)で、せいぜい画面が映る程度の内蔵GPUです。
Rembrandt世代に搭載された最大12 CU(768シェーダー)規模なら、GTX 1650に相当する性能に期待できましたが、シェーダー規模が6分の1ではIntel UHD 730と同等レベルにとどまります。
- AV1デコード(Intel UHD 770も対応済み)
- H.264 & HEVCデコードとエンコード
- HDMI 2.1とDisplayPort 2.0に対応
- USB Type-C(DP Alt Mode)も対応
- 4K 60 fpsで出力可能(最大4画面)
2 CUのRDNA 2はGPU性能こそ非常に貧弱ですが、AV1デコードやHDMI 2.1など、最新世代のGPUに求められる機能に一通り対応しています。
グラフィックボードを必要としない用途や、グラボが故障したときのトラブルシューティングに役立つのが主なメリットでしょう。本格的な性能面ではZen 4世代のAPU(Raphael)に期待です。
Ryzen 9 7950XのCPU性能:i9 13900Kと頂上決戦
テスト環境
テスト環境 「ちもろぐ専用ベンチ機(2022)」 | |||
---|---|---|---|
スペック | Zen 4 | Zen 3 | Raptor Lake |
CPU | Ryzen 9 7950X | Ryzen 9 5950X | Core i9 13900K |
冷却 | NZXT Kraken X63 280 mm簡易水冷クーラー | ||
マザーボード | ASUS TUF GAMINGX670E-PLUS | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | ASUS TUF GAMINGZ690-PLUS WIFI D4 |
メモリ | DDR5-4800 16GB x2使用モデル「CT2K16G48C40U5」 | DDR4-3200 16GB x2使用モデル「Elite Plus UD-D4 3200」 | |
グラボ | RTX 3080 10GB使用モデル「MSI VENTUS 3X OC」 | ||
SSD | NVMe 1TB使用モデル「Samsung 970 EVO Plus」 | ||
電源ユニットシステム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | ||
電源ユニットCPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | ||
OS | Windows 11 Pro(Build 22000) | ||
ドライバ | NVIDIA 517.48 DCH |
Ryzen 9 7950Xのレビューで使用した、各ベンチマーク環境は以上の通りです。
テストに使用するメモリはDDR5とDDR4プラットフォーム、どちらも「JEDEC準拠のネイティブメモリ」です。
過去のレビューではOCメモリを使っていましたが、自作PC初心者はそもそもOCを適用し忘れる可能性や、OC適用後にトラブルに遭遇するリスクもあります。
JEDEC規格のネイティブメモリなら、対応しているCPUとマザーボードをセットで使えば自動的に記載のメモリクロックが適用されて便利です。設定ミスをおかすリスクを大幅に下げられ、結果的にベンチマークの再現性も優れます。
なお、OCメモリを使う問題はまだあって、「どの程度のOCメモリを使うか?」に対する明確な答えを出せません。
誰にでも再現しやすく、決まった基準(= JEDEC規格でクロックとレイテンシが規定されています)があり、多様な設定値を持つOCメモリを使うより公平性に優れています。
メモリ以外のスペックは同じパーツです。
マザーボードはASUS製のTUF GAMNGシリーズまたはROG E-GAMINGシリーズで揃えています。価格が非常に高いZ690とX670はTUF GAMINGシリーズを採用しました。
レンダリング性能
CPUの性能をはかるベンチマークとして、「CPUレンダリング」は定番の方法です。ちもろぐでは、下記3つのソフトを用いてCPUレンダリング性能をテストします。
- Cinebench R15
- Cinebench R23
- Blender 3.3.0
日本国内だけでなく、国際的にも定番のベンチマークソフトです。なお、CPUレンダリングで調べた性能はあくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。
Ryzen 9 7950Xのレンダリング性能は、Core i9 13900Kに並ぶ最強格です。
マルチスレッド性能で約37600 cbを記録し、従来比でおよそ48%もの改善に。IPCの向上と100%負荷時の高い動作クロックに支えられた結果です。
体感性能に影響が大きいシングルスレッド性能ではRaptor Lakeと並ぶ2000 cb台に突入。従来比で約25%も伸びています。しかし、最大5.8 GHzに達するi9 13900Kには一歩届かないようです。
Blender Benchmarkのレンダリングスコアもほぼ同じ傾向です。従来比で約45%の性能アップを果たし、Core i9 13900Kを若干上回る最強のレンダリング性能を発揮します。
純粋な16コア32スレッドCPUとして過去最高のパフォーマンスです。特にシングルスレッド性能で、ライバルとほぼ同等の性能を提供できている点は称賛すべきでしょう。
動画エンコード
CPUレンダリングと並んで、動画エンコードはCPUの性能を調べる定番の方法です。
- Handbrake
- Aviutl(rigaya氏の拡張プラグインを使用)
ちもろぐでは、フリー動画エンコードソフト「Handbrake」と、日本国内で人気の動画編集ソフト「Aviutl」における動画エンコード速度をテストします。
動画エンコードではDDR5メモリの高い帯域幅の影響もあり、Core i9 13900K以上のエンコード速度を安定して出せています。
負荷が軽い480pエンコードはともかく、1080pエンコードにおいて7950Xはi9 13900Kより約7~8%速いです。5950Xとの比較だと最大36%も速いです。
Aviutlにて、拡張プラグイン「x264guiEx」「x265guiEx」を使って動画エンコードをしました。
処理が軽い「x264」、処理が重い「x265」どちらも、Ryzen 9 7950XはCore i9 13900Kより約11~15%も速くエンコードを終えています。従来比で約27%の性能アップです。
AI(機械学習)
2022年ごろから、AIでデジタルイラストを生成する「Stable Diffusion」をはじめ、AI(機械学習)を応用した技術が一般人の間でも身近な存在になりました。
ちもろぐのCPUベンチマークも流行に習って、機械学習のベンチマークを試験的に取り入れます。
- TensorFlow(実務で人気のフレームワーク)
- PyTorch(学術研究で人気のフレームワーク)
- 4x BSRGAN(機械学習による画像アップスケール)
- Stable Diffusion(機械学習によるイラスト生成)
今回から試験的に取り入れたベンチマークは以上4つです。
AnacondaプロンプトからTensorFlow 2をロードして、単純な手書き文字の自動認識(MNIST)トレーニングを実行します。
すべてのCPUコアが処理に使われる設定ですが、実際の結果はマルチスレッド性能にあまり相関しません。それどころか、Ryzen 9 7950Xについては完全に結果が逆行しています。
Ryzen 9 5900Xや5950Xも遅くなっている様子を見るに、おそらく2つのCCDをまたぐレイテンシが原因でうまく性能を出せていない可能性が疑われます。
AnacondaプロンプトからPyTorchをロードして、PyTorch公式が提供しているベンチマーク用のコード(torch.utils.benchmark as benchmark)を使って処理性能をテストします。
なお、処理時間を伸ばすためにベンチマークコードに含める乱数行列は10000×8192として、テストの実行回数は250回です。処理1回あたりの時間に250回をかけて、合計処理時間を求めます。
結果はTensorFlowより分かりやすいですが、いまいちコア数とベンチマーク結果がスケーリングしない部分が多いです。
一応、5950Xと比較すると7950Xはほぼ2倍のスピードで学習を完了していますが、CPUの性能よりDDR5メモリの効果が大きいように見えます。
次は4x BSRGANを使って、512 x 512サイズ画像の超解像(アップスケーリング)をテストします。アップスケーリング後のサイズは2048 x 2048(※BSRGANは4倍のみ対応)です。
コアスレッドの増加に比例して処理時間が縮みますが、DDR5メモリを使っているRyzen 9 7950Xがi9 13900Kをあっさり抑えてトップに。
最後のAIベンチマークは「AI絵師」で話題になっているStable Diffusionです。
初期設定の512×512生成だとグラボでしか処理できないですが、4分の1にあたる256×256生成ならCPUで実行できます。結果はおおむねCPUのマルチスレッド性能に比例しています。
肝心の生成イラストはうまく機能しません。学習元のデータが512 x 512で占めるため、解像度が異なると出力が安定しないのが原因です。
動画編集
「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。
ちもろぐでは、Puget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve Studio 18における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。
Davinci Resolve 18 / 4K動画編集 | |||
---|---|---|---|
テスト内容 | Ryzen 9 7950X | Ryzen 9 5950X | Core i9 13900K |
Standard Overall Score | 2127 /1000 | 1780 /1000 | 2127 /1000 |
4K Media Score | 157 | 128 | 169 |
GPU Effects Score | 137 | 133 | 134 |
Fusion Score | 344 | 273 | 335 |
Davinci Resolveベンチマークの性能は「2127点」、総合スコアでRyzen 9 7950XとCore i9 13900Kはほぼ同じです。
Ryzen 9 5950Xから見ると約19%の性能アップで、4K動画編集のパフォーマンスが確実に改善されています。しかし、動画編集はメモリの性能も影響が大きいため、単純にCPUの性能アップだけが要因ではないです。
「Premiere Pro」は言わずもがな、超有名な動画編集ソフトです。Ryzenが登場した頃はマルチコアが効きづらい残念ソフトでしたが、2020年以降よりマルチコアが効きやすく最適化されています。
Ryzen 9 7950Xの総合スコアはDDR5メモリの効果も相まって、1173点をマーク。Core i9 13900Kすら超えて最高のスコアです。動画編集するならRyzen 9 7950Xは非常に魅力的なCPUです。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。
圧縮スピードは約159600 MIPSと圧倒的な結果に。Core i9 13900Kから見て約83%、Ryzen 9 5950Xから見ると約91%も高いスコアです。しかし、グラフをよく見るとDDR5メモリの効果がハッキリと確認できます。
OCメモリを使えばRyzen 9 5950Xで約13万MIPSを出せるため、7-Zip Benchmarkの比較ではDDR5メモリを使っているZen 4世代のほうが基本的に有利なスコアを残します。
解凍スピードは約252500 MIPSで、Core i9 13900Kより約15%も高いです。解凍はメモリの容量に影響を受けるため、(圧縮より比較的に)対等な性能比較となります。
ブラウザの処理速度
PCMark 10 Professional版の「Microsoft Edgeテスト」と、ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUのブラウザ処理性能をテストします。
Edgeブラウザ(Chromium)の処理速度は、基本的にシングルスレッド性能に影響を受けます。トップは最大5.8 GHzで動作するCore i9 13900Kでした。
krakenテストもシングルスレッド性能が反映されやすいです。Ryzen 9 7950Xは404 ミリ秒、とても速いですがCore i9 13900Kには届きません。
どちらもデスクトップ向けCPUでトップクラスの処理速度です。400 ミリ秒前後の性能は、同じくTSMC 5 nmで製造されているApple M2やApple A16 Bionicよりも高速です。
なお、mozilla krakenは1000 ミリ秒が大きな目標のひとつで、ここでテストしたCPUはすべて1000 ミリ秒を下回っています。つまり、どれを選んでも実用上はまったく問題ない性能です。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Adobe Photoshop CC」の処理速度をテストします。Puget Systems社のプリセットを用いて、Photoshopを実際に動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出する仕組みです。
Ryzen 9 7950XのPhotoshop総合スコアは「1419点」です。従来比で約34%も高いスコアですが、強烈なシングルスレッド性能を持つCore i9 13900Kにはわずかに届かず。
Photoshopベンチマークは高解像度な写真素材を駆使するため、DDR5メモリの効果は決して無視できませんが、依然としてシングルスレッド性能も重要です。
Microsoft Office
パソコンの一般的なワークロードといえば、Microsoftの「Office」ソフトが代表例です。しかし、Microsoft Officeにベンチマークモードはありませんので、ちもろぐでは「PCMark 10 Professional版」を使います。
単なる再現テストではなく、PCMark 10が実際にMicrosoft Office(Word / Excel / PowerPoint)を動かして、各処理にかかった時間からスコアを算出します。
Word、Excel、PowerPointすべての分野で5950Xから確実な改善を確認できました(約14~36%の改善)。
しかし、ライバルのCore i9 13900Kはすべての分野で最高のスコアを記録します。Office程度の低負荷タスクでは・・・16コア32スレッドより、最大5.8 GHzがもたらす強烈なシングルスレッド性能のほうが効果が大きいようです。
とはいえスコア自体はPCMark 10の目安である4500点をはるかに超えており、7950Xと13900Kのどちらを使ってもOfficeは極めて快適な動作です。
「IPC」でCPUの真の進化をチェック
最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。
方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz
これでIPCの違いをキレイに抽出できます。グラフを見ての通り、Ryzen 9 7950X(Zen 4世代)は今まででもっとも高いIPCを達成し、ライバルのRaptor Lakeを2%上回ります。
1世代前のZen 3と比較して、約5%のIPC改善です(※AMDがアピールしている13%はあくまでも平均的な改善値で、Cinebench R15は若干ワーストケースに含まれます)。
Ryzen 9 7950Xのゲーミング性能
昨今のグラフィックボードの急激な高性能化にともない、CPU側の性能不足がフレームレートを引っ張る「CPUボトルネック」が分かりやすく出やすい環境になっています。
特にRTX 3080以上のグラフィックボードでは、CPUボトルネックが無視できないほど大きいです。平均100 fps超えのフレームレートでゲームをプレイするなら、8コアかつシングルスレッド性能の高いCPUが重要です。
Ryzen 9 7950Xはゲーム用途に最適な8コア16スレッドをはるかに超える16コア32スレッドを備えており、従来比で25%も改善されたAlder Lake級の高いシングルスレッド性能もあります。
しかしながら、Ryzen 9 7950Xの内部構造は「8コア + 8コア」で、依然としてCCDレイテンシで不利な側面も・・・。実際の結果を確認しましょう。
新しいCPUレビューでは、「よりCPUボトルネックが出やすい」テスト内容に変更しています。以前のレビューではグラフィックボードに負荷がかかりすぎていて、CPUボトルネックが出づらく比較として意味がうすい状態でした。
- Apex Legends(ベンチマークまとめ)
- フォートナイト(ベンチマークまとめ)
- Overwatch 2
- VALORANT
- サイバーパンク2077(ベンチマークまとめ)
- Forza Horizon 5
- Microsoft Flight Simulator 2021(ベンチマークまとめ)
- ELDEN RING(ベンチマークまとめ)
- 原神(ベンチマークまとめ)
- FF14:暁月のフィナーレ
テストに使用するゲームタイトルは以上10個です。海外のAAA洋ゲーの方がベンチマーク機能は充実していますが、残念ながら日本国内でほとんどプレイされていないゲームが多いです。
筆者は「国内でプレイされているゲームのベンチマーク結果」を見たくて仕方がないため、あえて上記のようなベンチマークに向かないタイトルを多めに入れています。
フルHDゲーミング(10個)のテスト結果
ひとつずつグラフを掲載するとムダに長文になるので、テストした結果を以下のスライドにまとめました。
平均フレームレート最低フレームレート(1%)
一部のゲームタイトルで懸念していた「CCDレイテンシ」由来のボトルネックが見られます。
たとえばフォートナイト、VALORANT、原神において、Ryzen 9 7950XよりRyzen 7 7700Xのほうが高いパフォーマンスを安定して出せる傾向を確認しています。
最大クロック周波数も7950Xより7700Xのほうが高い傾向があり、おそらくゲーム用途だと片方のCCDを切り落として(無効化して)8コアCPUとして使ったほうがいい結果を得られるかもしれません。
基本的にRyzen 9 7950Xは高選別モデルであり、下位モデルより電気的特性に優れています。7950Xを8コア化したうえで、ブーストクロックを追加(PBO:+200 MHz)すると性能を伸ばせそうです。
Ryzen 9 7950Xの平均ゲーミング性能は、従来比で確実に改善され、Core i9 12900Kに匹敵します。
シングルスレッド性能が非常に高いCore i9 13900Kには届かないものの、Core i9 12900Kクラスのゲーミング性能は提供してくれます。
4Kゲーミング(5個)のテスト結果
GPU負荷が大きく、CPUボトルネックが出づらい4Kゲーミング(3840 x 2160)の結果も参考程度に調査しました。
平均フレームレート最低フレームレート(1%)
やはり4Kゲーミングだと、CPUボトルネックはほとんど発生しません。
VALORANTのみ3%ほど性能差が出ていますが、平均値だと大きな差がないです。
4Kゲーミングの場合、CPUボトルネックを気にするよりも、グラフィックボードにお金をかけた方が良い結果を得られるでしょう。
消費電力とCPU温度
ちもろぐのCPUレビューでは、電力ロガー機能が付いた電源ユニットを2台使って、CPU単体の消費電力を実際に測定します。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
電源ユニットを2台に分けて電力供給を分割しているため、CPUに電力供給している電源ユニットの計測値(+12V Power)を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。
ゲーミング時の消費電力と温度
FF14:暁月のフィナーレ(最高設定)をテスト中に、CPUの消費電力を測定したグラフです。
Ryzen 9 7950Xの消費電力は平均107 W(ピーク129 W)で、Ryzen 9 5950Xから約20 Wも増えてしまい、Core i9 13900Kとほぼ同じ消費電力です。
ゲーム中のCPU温度は平均61℃(ピーク71℃)です。消費電力が増え、Zen 3世代より若干冷えづらい性質も手伝い、Ryzen 9 5950Xから7℃も温度が上がります。
比較した中でもっともゲーム中のCPU温度が高く、Core i9 13900Kより熱い結果に。
100%負荷時の消費電力と温度
CPU使用率が常時100%に達するCinebench R23(ストレステストモード)にて、Ryzen 9 7950Xの消費電力を測定したグラフです。
Ryzen 9 7950Xの消費電力は平均235 W(ピーク251 W)で、従来比で約110 Wも消費電力が増加します。標準PPT(パッケージ電力)が142 Wから230 Wに増えた分だけ、消費電力も比例して増加します。
なお、ライバルのCore i9 13900Kは平均で300 W超(ピークで400 W近い)です。100 Wも低い消費電力で同等の性能を出せているあたり、さすがTSMC 5 nmプロセスを使っているだけのことはあります。
100%負荷時のCPU温度は平均95℃(ピーク95℃)で、サーマルリミットが発動しています。
Zen 4世代は従来世代よりさらに冷えづらいうえに、Ryzen 9 7950Xに至っては従来比で100 W以上も多い230 W前後の消費電力です。当然ながらCPU温度は上がる一方で、一瞬でサーマルリミット(95℃)に引っかかります。
Zen 4世代のCPUチップは面積が81 mm²から70 mm²へ約13.6%も小型化しています。面積あたりの熱量(熱密度)が非常に高く、CPUクーラーが熱を回収しづらい設計です。
CPUクーラーとの互換性を維持しようと努力した結果、ヒートスプレッダー(CPUの殻)の厚みが4.5 mmと分厚いのも熱の回収効率が落ちる要因です。
なお、AMDは公式に「95℃で製品寿命にまったく問題はないし、PPTが残っているならCPU温度が95℃に達するまで自動でブーストクロックを引き上げる仕様」と言い切っています。
よって、CPU温度が常時95℃と表示されていてもAMDが意図したとおりの正しい挙動であり、実用上の問題はありません。
ワットパフォーマンス
消費電力1ワットあたりの性能(ワットパフォーマンス)は消費電力の大幅な増加に伴い、従来比で約20%の悪化です。
基本的にCPUは高いクロックを目指すほど、消費電力が指数関数的に増加してしまい、ワットパフォーマンスの悪化を招きます。
とはいえ従来比で20%も悪化しても、ライバルのCore i9 13900Kを軽々と上回るワットパフォーマンスを維持しているのは素直に感心せざるをえないです。
要するに、AMDはRyzen 9 7950Xにおいて従来比でさらなる改善を狙うよりも、ライバル製品(i9 13900K)に対して勝てればいい程度に調整したと考えられます。
温度制限とPPT制限で7950Xを扱いやすく改善しよう
そのままでも特に問題ないですが、せっかくなので「PPT制限」と「温度制限(サーマルリミットの変更)」を行い、Ryzen 9 7950Xの挙動がどう変化するかを確認します。
消費電力を制限するPPTは「Precision Boost Overdrive」から設定できます。たとえばPPTに「88」と入力した場合、パッケージ電力に88 Wの制限がかかり、CPUは88 W以上の電力を消費できなくなります。
サーマルリミットの設定は「Platform Thermal Throttle Limit」から設定します。Auto(初期設定)は95℃です。「90」と入力すると、CPU温度が90℃を超えない範囲で自動的にブーストクロックが調整されます。
PPT制限、サーマルリミットの変更、それぞれを設定したRyzen 9 7950Xの性能は以下のとおりです。
非常に興味深い結果になりました。
まずはサーマルリミットの変更から。温度制限を95℃から70℃に下げても、マルチスレッド性能はわずか4.2%しか減らないです。心理的に95℃が気になってしまうなら、とりあえず70℃に設定すると良いでしょう。
次はPPT制限の結果です。やはりというべきか・・・、ワットパフォーマンスの大幅な改善が見られます。
Ryzen 9 5950Xとほぼ同じ125 W設定ですら、マルチスレッド性能は約34000 cbを維持します。同じ消費電力で約34%も性能が上昇し、ワットパフォーマンスは約1.2倍です。
Ryzen 7 7700Xと同じ142 W設定では、約35000 cbでCore i9 13900Kより約16%低い性能です。16%低い性能ですが、消費電力は半分以下の47%で済みます。
142 W程度であれば、過剰なVRMフェーズもいらないです。今後発売されるであろうA620チップセットの格安マザーボードで、何不自由なく安定した運用が可能でしょう。
PPT制限によるゲーミング性能への影響はほとんど無し。65 Wに制限しても、FF14ベンチマークの結果は誤差レベルです。
PPT制限、およびサーマルリミット変更時の消費電力がこちらのグラフ。おおむね指定したパッケージ電力+αの消費電力が出ています。
サーマルリミットを5℃変更すると、消費電力が15 W前後(13~16 W)減るようです。
PPT制限のCPU温度はこの通り、消費電力が下がれば下がるほど発熱が減って、CPU温度がぐんぐんと下がります。
Ryzen 9 7950Xの場合、CPU温度は注視する必要のないパラメータですので、95℃を超えない範囲なら「好み」に合わせて調整するかたちです。
CPUクーラーの動作音を抑えて静音化したい場合は、サーマルリミットを70℃や65℃に下げるとよし(※サーマルリミットにおまかせして、95℃のままCPUクーラーのファン回転数を下げてしまう手もあり)。
ワットパフォーマンスを改善したいなら、PPT制限とコア電圧の調整(Curve Optimizer)を用いて消費電力を抑えるとよし。・・・「95℃」を超えない限り、完全に好みの問題です。
参考程度に、PPT制限時のクロック周波数も掲載しておきます。↑このグラフから確認できる事実は主に2つでしょうか。
1つは、クロック周波数を5.0 GHz以上に伸ばすのは非常に効率が悪いです。PPTを190から230 Wに増やしても、クロック周波数はわずか150 MHzしか伸びません。
2つ目、同じ消費電力であれば従来比で確実にクロックが伸びやすくなっています。Ryzen 9 5950Xと同じ125 W設定を見ると、5950Xが平均3837 MHzで、7950Xは平均4560 MHzへ、723 MHzもクロックが高いです。
まとめ:新たな16コアCPUの頂点かつワッパの権化
「Ryzen 9 7950X」のデメリットと弱点
- ゲーミング性能は一歩譲る
(CCDレイテンシの存在) - 付属クーラーなし
- CPUクーラーの互換性
- 初見だとビビる「95℃」
- 対応マザーボードが高価
- DDR5メモリもいまだ高い
- 国内販売価格が高い(11.8万円)
「Ryzen 9 7950X」のメリットと強み
- 5.0 GHzを超えるクロック耐性
- 非常に高いシングルスレッド性能
- すぐれたゲーミング性能
- 汎用性の高いCPU性能
- AVX-512をサポート
- 非常に優れたワットパフォーマンス
- PPT制限でさらに扱いやすい
- PCIe 5.0と4.0をサポート
- DDR5メモリに対応
- 内蔵GPU「Radeon Graphics」搭載
- 「TSMC 5 nm」プロセス採用
- 従来比で100ドルもの値下げ
(円安がなければ10万円未満)
「Ryzen 9 7950X」は、現在販売されているZen 4世代でもっとも買う価値のあるCPUです。
100 Wも少ない消費電力でCore i9 13900K(300 W超)に肉薄するマルチスレッド性能を可能にし、前世代比で25%も改善したAlder Lake級のシングルスレッド性能も両立します。
ゲーミング性能はi9 13900Kに一歩届かなかったですが、Core i9 12900Kと同等レベルの性能が提供されており、それほど大きな問題ではありません。
従来比で大幅な性能アップを実現しつつ、ワットパフォーマンスでライバルをかんたんに打ち負かし、そのうえMSRPを100ドルも値下げしています。値下げして性能アップを実現している文句なしの後継モデルです。
というわけで、ちもろぐの評価は「A+ランク」で決まりです。
前任者のRyzen 9 5950Xと同じく、Sランクを与えられる性能とコスパの持ち主ですが、残念ながら対応マザーボードのラインナップに明らかな欠陥があります。
Ryzen 9 5950Xにあって、7950Xに無いモノ。それは安価な対応マザーボードです。ライバルのCore i9 13900Kですら、2万円台のマザーボードで問題なく運用できます。
PCIe 4.0を上限にして基板コストを抑えたB650マザーボードや、もっと安価なA620チップセットのマザーボードが無いと・・・、Ryzen 9 7950X含めZen 4世代そのものが盛り上がらないでしょう。
以上「Ryzen 9 7950Xベンチマーク&レビュー:最高のデスクトップCPU」でした。
レビューで使用したパーツはこちら【おすすめです】
マザボの値段は問題ですよね…
ただ今後何世代か使い回せると考えるならDDR5やPCIe5.0の過渡期だし頻繁にパーツ載せ替える人には初期投資として悪くはない気もする
まあ次の世代まで待てる人は待っても良いと思うけどね
そういえば無印5600が国内で2万円切りましたね
自分はAliで16000円で買いました
重箱の隅ですみませんが、メリットと強みの「従来比で100ドルもの値上げ」はtypoかと…
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
改めて5950Xのワッパが異常すぎる件。そして12600Kと13600Kの性能の高さが浮き彫りに。移行期の今、無理にDDR5環境を整えようとしなくても、(特に旧世代マザーやメモリを持っている人にとっては)この辺で良いと思えてしまいました。
本記事の7950Xについては、エンコードとアップスケーリング、圧縮あたりは流石だなあと思う一方で、インテルさんに張り合って爆熱競争に参戦したのは頂けないというか。あと、AVX-512ってほんとに必要だったのでしょうぁ?(提唱者のインテルさんですら、既に撤退気味だというのに)
ここ半月ほどでの度重なる新作レビュー、ありがとうございました。
> AVX-512ってほんとに必要だったのでしょうぁ?(提唱者のインテルさんですら、既に撤退気味だというのに)
Rocket LakeでAVX-512とDL Boost(VNNI)を投入し、対応アプリ(Topaz Gigapixel等)でのパフォーマンスは非常に高性能でした。しかし、マトモな対応ソフトが少なすぎて一般ユーザーの間でまったく使われず、機械学習をガッツリ使うユーザーはCUDA(NVIDIA GPU)に行ってしまい、ほとんど使われずに終わってしまった感がありますね。
Zen 4のAVX-512はRocket Lakeよりやや高性能ですが、こちらも同じ命運をたどりそうです。
ご教示ありがとうございます。対応ソフトでのパフォーマンスは凄いんですね。勉強になりました。
5950Xはもともと180Wくらい入れられる所、AM4が原則142Wまでしかサポートしていないので標準設定がワット制限済みって状態なので……。今ほどシングル速度競争にもなっていなかったので電圧もさほど高くなかったですし。さすがに7950Xも13900Kも90W以下で130W程度の5950Xを超えてくるので、さすがに世代の壁は超えられませんね。
> さすがに7950Xも13900Kも90W以下で130W程度の5950Xを超えてくるので、さすがに世代の壁は超えられませんね。
ご指摘ありがとうございます。記事中よく読んでみたら、そのことはしっかり記載されてましたね。すみません。
機械学習のベンチとても参考になります。
AIが学習できる形にデータを整える『前処理』にも結構な時間を取られるので、その辺りでの比較や、ディープラーニング以外のアルゴリズム(コンペで人気のLightGBM等)での処理時間の比較も個人的には非常に気になるところなのですが、マニアックすぎますかね…。
低電圧化したらどちらもほとんど変わらんな
どっちにしても円安すぎて買えないけど
円安が本当に残念ですよね。
Ryzen 9 5950X発売時の為替レートだと、7950Xは9.3~9.5万円(税込)くらいで買える計算です。
レビューで使ったASUS X670E-PLUSも3.8~3.9万円になる計算なので、円安ホントに・・・。
円安がキツすぎるのとam4マザボ+ddr4のコスパが良かったせいで余計に高く見える…
次世代にマザボ互換zen5と新Pコア搭載meteorが控えてるのを考えると余計に手が出しにくい…
「Ryzen 9 7950X」のメリットと強み のところにて…
間違い 「従来比で100ドルもの値上げ」
正しくは 「従来比で100ドルもの値下げ」
だと思いますヨ!
Ryzen9君は処理早いけども消費電力が高い…
電力制限すれば相変わらず化けますね
今って選択肢がたくさんあって面白い世代ですね
この機に潤沢な予算でDDR5世代に乗り換えたいなら新ソケットが長生きするこいつ
DDR4メモリを残して安い板と石を買って延命するならほぼ前世代i9ゲーミングの13600K
もっと安く済ませるならzen2から安い5600あたりへの石だけ載せ替えもできる
乗り換えのタイミングとスタイル次第でどれ選んでもいいのほんと楽しい
今世代はマザーボード代が倍化しているのでZEN4が圧倒的に厳しいことに。
ZEN3で凌いで、マザーボードの価格が来年再来年、落ち着いてからが本番かなと。
今買うと古いマザーボードを使いまわすメリットがあるのか微妙なのとで。
cpuランキング一覧表とそのリンクページが1枚あるとめっちゃ面白いのになーと前から思ってました
自分が見つけられないだけかも知れませんが、もしないなら作って欲しいです
良いcpuで潜在能力の高さを感じるだけに、レイテンシ、高いマザボ、冷えにくい構造、にしても絶妙に足を引っ張っててとても勿体ないCPU
これらを解決していれば7900xtxがpcle5.0対応っぽいのでcpu.gpu相乗効果で不動のAMD時代が来る世界線も見えてました
7000x3dシリーズに期待していますが、7950xのレイテンシ構造は変わりないような気がするので、7800x3dの性能次第では13600kで酌もうかなと思います
どのcpuをもってしても7900xtxにとってはcpu性能が足りないのですが
現状最新世代CPUのランキングをつけるとしたら
1位 13700K
2位 13600K
3位 13900K
4位 7950X
5位 7700X
6位 7900X
7位 7600X
ですね。
個人的にですが存在感も含めて平均的に隔離していない感覚かと。
迷いなくこの順位にしましたが、13900Kや7950Xを性能で1位に推すのも分かります。
13700Kと13600Kは個人的に11万円もする7950XがA+ランクならばSランクですね。
一つ追試して欲しい点があるんですが、
7950Xを8コアに制限(1チップ無効化)するとゲームのfpsが向上するらしいです。
理由が、サーマルバジェットの空きが増えてクロックがさらに上がるとか。実際にそうなのかを、見てみて欲しいです。
クロックを上げたいだけなら無効化までしなくてもできますね。
ただしそれだけではCCDレイテンシ分不利なので、無効化するとゲームで7700Xと並ぶのか少し気にはなりますね。無効化すると7950Xのコスパが悪すぎて不味いですが。
グリスのおすすめを教えてほしい。
PC向けのシリコンの入って無いねずみ色のやつが最適
特にMX4が塗りやすくていいよ
こうマザーやメモリが高いと次期APUに期待ですかねぇ
内蔵GPUの性能次第では流れが変わるかもしれないですから
クロックが高い割に、シングルがAlder Lakeレベルに留まるのが意外。
うちの7950XはDDR5-6000 16GBx2、空冷でケース組み込み状態、185w制限、 curveで-25、温度リミット95℃でR23マルチ10分で38999でした
実行時CPU最高温度は86℃
1passならマルチ39382、シングル2094
24コアには流石に勝てませんが良い感じに仕上がったと思います
今回は使ってみたいCPUで組んだのでコスパとかは無視です
ストレス発散にもなったし良い買い物でしたよ
面白いコメント、ありがとうございます。空冷でここまでいけるのは、Ryzenらしい特徴ですね。
最近のCPUは水冷で使うのが当たり前って感じの検証が多いですが、空冷での使い勝手や性能差、更には静音性とのトレードオフを比較することは、多くのユーザーにとっても興味のある内容じゃないかと思ってます。
水冷を使ったことがないのでファンの音に関しては比較できませんが…
CPUクーラー、ケースファン全て140mmサイズで合計6個積んでます
流石にベンチ中は風切り音が大きいですが
常に全開で動かすわけではないので個人的には許容範囲です
というか私の作業内容だと長時間全開になる作業はベンチマークくらいしか無いですから f^_^;
Ryzenは設定次第で色々楽しめる面白いCPUだと思います
動画エンコードは何分の動画をエンコードした場合の検証結果ですか?
7900Xも欲しいわね、5950Xよりベンチ性能上でCPU単価同じくらいらしいし
マザーボードがもう少し安くなってくれたら割といいんだけど
tuf x670eのusb cって映像出力できるんですか?
またできる場合はigpuからの映像が出力されますか?