Gen5規格で最大14800 MB/s対応の「Samsung 9100 PRO」を買ってみました。
NANDメモリの巨人サムスン(Samsung)が自ら設計し、他社に委託せず自社ファブで製造までする、世界でも稀な完全自社製のフラグシップモデルです。
Gen5世代において「Crucial T700」など他社に先行を許していましたが、ようやく重い腰を挙げて王者の座を取り戻すつもりです。
主要なライバルSSDと比較しながら詳しくレビューします。
(公開:2025/5/14 | 更新:2025/5/14)
Samsung 9100 PROのスペックと仕様
Samsung 9100 PRO (MZ-VAP0T0B-IT) | ||||
---|---|---|---|---|
容量 | 1 TB (1000 GB) | 2 TB (2000 GB) | 4 TB (4000 GB) | 8 TB (8000 GB) |
インターフェイス | PCIe 5.0 x4 (NVMe 2.0) | |||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | 非公開 | ||
コントローラ | Samsung自社開発 | |||
NAND | Samsung製 3D TLC NAND(V-NAND) | |||
DRAM | LPDDR4Xメモリ | |||
1024 MB | 2048 MB | 4096 MB | 8192 MB | |
SLCキャッシュ | 対応(Intelligent TurboWrite) | |||
読込速度 シーケンシャル | 14700 MB/s | 14800 MB/s | ||
書込速度 シーケンシャル | 13300 MB/s | 13400 MB/s | ||
読込速度 4KBランダムアクセス | 1850K IOPS | 2200K IOPS | ||
書込速度 4KBランダムアクセス | 2600K IOPS | |||
消費電力(最大) | 7.6 W | 8.1 W | 9.0 W | 非公開 |
消費電力(アイドル) | 3.3 mW | 4.0 mW | 5.7 mW | |
TBW 書き込み耐性 | 600 TB | 1200 TB | 2400 TB | 4800 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150 万時間 | |||
保証 | 5年 | |||
MSRP | $ 170 | $ 270 | $ 500 | 非公開 |
参考価格 2025/5時点 | 27980 円 | 44980 円 | 84980 円 | – 円 |
GB単価 | 28.0 円 | 22.5 円 | 21.2 円 | – 円 |
- メーカー仕様表はこちらから
「Samsung 9100 PRO」は、Gen4規格NVMe SSDで高い人気を集めていた「990 PRO」の後継モデルです。
Samsung製の第8世代NANDメモリ(V8 NAND)に、Samsung製のLPDDR4Xメモリを搭載し、Samsung 5 nm製の最新SSDコントローラで制御します。
現時点でSamsungがコンシューマ向けに展開している最新のコンポーネント(部品)を結集して作った、フラグシップ(最上位)モデルです。
もちろん、値段も恐ろしく高いですが・・・値段に性能が見合っていれば問題ありません。

TBW(書き込み耐性)の比較
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
Samsung 9100 PRO | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Crucial T700 (Crucial T700:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
ZhiTai TiPro9000 (後日レビュー予定) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
書き込み保証値は容量1 TBあたり600 TBです。
Micron(Crucial)やYMTC(ZhiTai)など、NANDメーカー自社ブランド製品で広く採用されている定番の保証値です。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
MOVE SPEED Panther (MOVE SPEED Panther:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA PRO (EXCERIA PRO:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN5000 (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 600 TBW | 900 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G3 (KIOXIA EXCERIA G3 PLUS:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
CFD SFT6000e (CFD SFT6000e:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
過去のSSDレビューで説明しているとおり、容量あたり600 TBの書き込み保証値は(実用上)十分すぎる数値です。
- 普通に使った場合:約32.9年
(1日あたり平均50 GBの書き込みを想定) - 毎日AAAゲームをDLする:約16.4年
(1日あたり平均100 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの写真を入れる:約6.6年
(1日あたり平均250 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの4K~8K素材を入れる:約1.6年
(1日あたり平均1000 GBの書き込みを想定)
ワークロード別の想定耐用年数をざっくり試算してみた。
PS5の増設ストレージやゲーミングPCのメインSSDなど。ごく普通の使い方なら約30年以上もかかる計算になり、5年間のメーカー保証をあっさり使い切ります。
仮に1日100 GB書き込んでも、TBWを使い切るのに約16年です。4K~8K RAW写真や動画素材を毎日のようにゴリゴリと書き込む用途ですら5年保証内に使い切れないです。
1日あたり1 TBを書き込むプロの映像作家や写真家にありうる過酷なワークロードで、ようやく5年保証を期間内に消費できる計算です。
プロシューマーを除き、一般的なPCゲーマーからクリエイターにとって十分な保証値です。
写真や動画で業務に使うなら最大4800 TBW(4.8 PBW)を提供するWD Blackシリーズや、Nextorage Gシリーズなど高耐久モデルを検討してください。
【余談】型番が「9100」になった理由
型番が「990(3桁)」から「9100(4桁)」に切り替わり、違和感を覚えたかもしれません。
サムスンは型番の命名法則を公式に何も明らかにしていないものの、型番の推移を追っていくと法則が見えてきます。

先頭1桁目がおそらく「シリーズ」です。
- Samsung 9シリーズ:NVMe SSD(NVMe規格)
- Samsung 8シリーズ:SATA SSD(3D V-NAND)
- Samsung 7シリーズ:SATA SSD(平面NAND)
現時点で3つのコンシューマ向けシリーズが存在していて、技術的なマイルストーンを達成すると新しいシリーズに切り替える傾向が見られます。
次に「世代ナンバー」が続きます。60 → 70 → 80 → 90 → 100・・・と、世代ごとに型番を10ずつ増やしているだけです。CPUなら「i5 12400」「i5 13400」に相当する部分です。
最後に製品グレードを示す「接尾辞(Suffix)」で締めて完了です。
サムスンの場合、おもに「PRO」「EVO」「EVO Plus」を使い分け、まれに無印モデルや特殊モデル(ZETなど)があります。
- Samsung 9100 PRO:9シリーズ100番台のPROモデル
- Samsung 990 PRO:9シリーズ90番台のPROモデル
- Samsung 983 ZET:9シリーズ80番台のZETモデル※
- Samsung 980:9シリーズ80番台の無印モデル
- Samsung 870 EVO:8シリーズ70番台のEVOモデル
以上のように、型番に区切りを入れれば「9100」にもう違和感はないはずです。Intel CPUの命名法則にかなり似ています。
※983 ZETはOptane SSDに対抗するべく作られた「Samsung Z-NAND」採用のSSDですが、9シリーズを続投させたあたり、Samsung的に所詮SLC NANDに過ぎないZ-NANDなど技術的マイルストーンに値しないと考えている様子がうかがえます。プライドが意外と高いメーカーです。

Samsung 9100 PROを開封レビュー
パッケージデザインと付属品

Yahooショッピング(コジマ店)にて容量1 TBモデルを購入しました。約3.0万円(約6000 pt還元)です。

先代モデル「990 PRO」を踏襲した、マットブラックな背景にSamsung 9100 PRO本体のCGレンダリング画像を中央に配置した、高級感あるパッケージデザインです。
パッケージ裏面にSamsung製品の国内代理店を担当している、ITGマーケティング株式会社のシールが貼ってあります。
- サポート連絡先:050-3116-3031
- ウェブ問い合わせ:https://contact.iodata.jp/sp/samsung/ssd
シールに記載されている連絡先です。
ちなみにウェブ問い合わせ先URLがなぜかIO-DATA社ですが、ITGマーケティング株式会社は株式会社アイ・オー・データ機器の子会社(約60%を所有)だったりします。

- SSD本体
- 説明書
ゴワゴワとした厚手の再生紙でできた、紙製プラスチック製の梱包材にSSD本体がすっぽり収まってます。梱包材の裏側に説明書が入ってます。
基板コンポーネント

マットブラック塗装のプリント基板の上から、コンポーネントを覆い隠すようにラベルシールが貼られていますが、よく見るとSamsung製だと分かるように配慮されてます。
NANDメモリはチラッと「SEC(= Samsung Electronics Co)」刻印が見えるし、SSDコントローラもSamsungの先頭2桁「SA」刻印がチラッと見えるように、絶妙なサイズのラベルシールです。
ラベルシールには、保証を受けるときに必要なシリアルナンバーが記載されています。

裏面にコンポーネントはありません。太い英字フォントの「SAMSUNG SSD」ロゴと、各国の認証ロゴがズラッと列挙されています。

表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンや、PS5の増設ストレージで問題なく使えます。

製品ラベルシールを剥がして、Samsung 9100 PROに実装されているコンポーネントを目視で確認します。

- コントローラ:Samsung Presto
F236D4C S4LY027 ARM PRESTO A2440 - DRAM:Samsung LPDDR4X-4266(1024 MB)
SEC 507 K4U8E1G4AB-MGCL - NAND:Samsung 236層 3D TLC NAND(V8)
SEC 501 K9OUGY8J5F-CCK0
主要コンポーネントがほぼすべてサムスン自社設計かつ自社製造です。SSD業界でもまれな垂直統合型だからこそ可能な離れ業です。
SSDコントローラ、NANDメモリ、DRAMすべてサムスン製が搭載されています。

(ニッケルコーティングで放熱性を高める設計)
SSDコントローラは、Samsung自社設計かつ自社ファブ(Samsung 5 nmプロセス)で製造される「Presto」を搭載。PCIe 5.0(Gen5)対応のDRAM接続型コントローラです。
従来モデルの990 PROで使われていた「Pascal」コントローラと同じく、ARM Cortex-R8を5コア内蔵する高性能なSSDコントローラです。
PrestoとPascalは似たスペックですが、製造プロセスがSamsung 8 nm → Samsung 5 nmへ2世代分も進んでいて、電力効率(= 熱の多さに関係)が改善されます。
5 nm化で電力と熱に余裕ができた分だけ、コントローラの最大性能を大きく引き上げられます。
Prestoコントローラは最大8チャネルのNANDメモリを、それぞれ最大2400 MT/sの帯域で束ねられる性能です。

電源管理コントローラ(PMIC)は詳細不明です。刻印「GTGGjD」と「AtGSI」と記載があるのみ。従来モデルと同じならTexas Instruments製ですが、確証はありません。

DRAMメモリは、Samsung自社設計かつ自社ファブで製造される「Samsung製 LPDDR4X-4266」メモリを、容量8 Gb(= 1024 MB)搭載します。
ノートパソコンやスマートフォンで多用される、省電力性に優れたLPDDR4X規格のメモリです。
最近はDRAMメモリを搭載しないDRAMレスSSDが主流ですが、Samsung 9100 PROのようなフラグシップモデルでは性能の一貫性を高める目的でDRAMメモリをたっぷり搭載します。
特に、連続的な書き込み性能の一貫性が向上する傾向が強いです。
SSDの容量 | Samsung 9100 PRO | Crucial T700 |
---|---|---|
1 TB | 1024 MB | 2048 MB |
2 TB | 2048 MB | 4096 MB |
4 TB | 4096 MB | 8192 MB |
Samsung 9100 PROの場合、SSD容量に対して0.1%の比率でDRAMメモリを搭載します。
ライバル製品のCrucial T700 / T705より半分も少ないですが、一般的に0.1%の比率で十分とされています。

NANDメモリは「Samsung製 236層 3D TLC NAND(V8世代)」を採用。刻印は「K9OUGY8J5F-CCK0」です。
Samsungが自社で製造する、コンシューマ向けで最新世代の※²のNANDメモリです(※²:V9世代はまだ未発売)。
従来モデルのV7世代より積層数が176層から236層に増え、PCIe 5.0世代で競合する他社の200層世代NANDとようやく同じ土俵に追いつきます。
記憶密度は512 Gb → 1024 Gb(1 Tb)に倍増、インターフェイス速度は2000 MT/s → 2400 MT/sに性能アップします。
最大2400 MT/sで動作できる「Presto」コントローラと組み合わせて、メーカー公称値で最大14000 MB/sを超えるとんでもないシーケンシャル性能を狙う設計です。
なお、Samsung製200層世代は技術的な観点でキオクシア(旧東芝メモリ)に遅れを取っています。
SSDの容量 | Samsung V8 NAND (236層 3D TLC) | KIOXIA BiCS 8 (218層 3D TLC) | Samsung V9 NAND (286層 3D TLC) |
---|---|---|---|
製造方法 | CuA CMOS under Array (118層 + 118層) | CBA CMOS directly Bonded to Array (109層 + 109層) | CuA CMOS under Array (143層 + 143層) |
記憶密度 | 1 Tb (1024 Gb) | 1 Tb (1024 Gb) | 1 Tb (1024 Gb) |
容量密度 | 約11 ~ 12 Gb/mm² | 約17 ~ 18 Gb/mm² | 約19 ~ 22 Gb/mm² |
速度 | 2400 MT/s | 3600 MT/s | 3200 MT/s |
WD Black SN7100やEXCERIA PLUS G4で採用されている「BiCS 8」メモリの場合、Samsung製より18層少ない218層なのに、密度とインターフェイス速度が1.5倍です。
現行世代(第8世代)の200層NANDメモリとして、キオクシア(旧東芝メモリ)が製造する「BiCS 8」が現状トップクラスの性能です。
キオクシア製NANDを積極的に採用し続けている、あのSanDisk(旧Western Digital)が、もしBiCS 8を使ったPCIe 5.0世代モデルを出してくると・・・9100 PROはひとたまりもない予感がします。

1 TB:1024 Gb x 4 x 2 = 8192 Gb(1024 GB)
NANDメモリの構成をチェックします。
Samsung 9100 PRO(容量1 TB)では、記憶密度が1024 Gb(= 128 GB)のチップを4枚重ねたNANDメモリを、全部で2個実装して合計8192 Gb(= 1024 GB)の容量に仕上げます。
最新世代V8 NANDならチップ1枚で容量2 TBを実現可能ですが、表面積を稼いで放熱性を高めるためにあえて512 GB版を2枚使っていると予想します。

デジタルノギスで基板の厚みを測定します。
- 合計:2.08 mm
- プリント基板:0.86 mm
- 放熱ラベル:0.50 mm
- NANDメモリ:0.72 mm
プリント基板が約0.86 mmで、NANDメモリと合わせて約1.58 mmです。差し引くとNANDメモリの厚みを約0.72 mmと計算できます。
過去のレビューを見る限り、厚みが0.9 mm前後で8枚スタック、1.1 mmを超えると16枚スタックです。0.72 mmは格段に薄型だから、4枚スタックの可能性が高いです。

基板の裏側に貼ってある「放熱ラベル(Heat spreader label)」は厚み0.5 mmもありました。
熱伝導率が高い銅製の超薄型ヒートシンクです。サムスンの資料いわく、NANDメモリとDRAMメモリの放熱性を向上させる効果があるらしいです。

Samsung 9100 PROの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介

テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
---|---|---|
![]() | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
![]() | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
![]() | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
![]() | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
![]() | RTX 4060 Ti | |
![]() | Samsung 9100 PRO 1TB | |
![]() | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
![]() | 1000 WCorsair RM1000x ATX 3.1 | |
![]() | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「TCL 27R83U」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9000シリーズなど最新プラットフォームと比較して、絶対的な性能ですでに型落ち気味ですが、SSDに対する遅延の少なさで依然として最高峰です。

原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
そのほか、「BitLocker」と呼ばれるWindows環境で使えるハードウェア暗号化機能も無効化済みです。BitLockerを有効化すると、SSDのランダムアクセス性能が最大50%も下がります。
正確なベンチマークを取るならBitLockerを必ず無効化しましょう。

SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量

- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 5.0 x4
- 対応規格:NVM Express 2.0
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「Samsung 9100 PRO」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。「PCIe 5.0 x4」で接続されています。
従来モデルのSamsung 990 PROと同じく、NVM Express 2.0規格に対応しますが、一般的な用途でほとんどメリットはないです。

フォーマット時の初期容量は「931 TB」でした。
実際に搭載されているNANDメモリ全体の約2.3%(1 TB = 24 GB)を予備領域に割り当てる一般的な対応です。
純正ユーティリティソフト「Samsung Magician」から、予備領域(オーバープロビジョニング領域)を最大11%まで追加もできます。
SSDの寿命を伸ばしたり、pSLCキャッシュの持続性を高めて性能の一貫性を改善したり、好みに合わせて調整できる柔軟な仕様です。

純正ソフト「Samsung Magician」

- Samsung Magician Software(semiconductor.samsung.com)
サムスン公式サイトから無料でダウンロードできる、純正ユーティリティ「Samsung Magician」に対応します。
とても無料ソフトに見えないレベルで機能が豊富なので、代表的な便利機能をいくつか紹介しておきます。
Crystal Disk Markのように、GUIベースでDiskSpdを動かしてSSDの性能を測定するベンチマーク機能を使えます。テストサイズやキュー数も自由に設定できます。
自己診断(Diagnostic Scan)は、不良セクタを検出する簡易的なスキャン機能です。
パフォーマンス設定から、SSDの動作モードを変更できます。
- Full Performance Mode:できるかぎり性能を最優先
- Standard Mode:デフォルト設定
- Power Saving Mode:省電力性を重視
- Custom Mode:自分で設定をカスタマイズ
おもに省電力状態(L1 ASPM等)に移行するかどうかや、オーバープロビジョニング領域を変更して、SSDの実効パフォーマンスに「味付けする」機能です。
Full Performance Modeで読み込みワークロードが全体的に向上しますが、肝心のキャッシュ超過後の書き込み性能がそれほど変わらないです。
基本的にデフォルト設定(Standard Mode)で問題ありません。
オーバープロビジョニング設定は、SSDのユーザー領域(実際に使える容量)をあえて予備領域に奉納して、代わりにSSDの寿命と一貫性を得ようとする設定です。
こちらも基本的にデフォルト設定(全体の約2.3%を割り当て済み)で問題ないでしょう。
- LED設定:LEDライティングを調整(Samsung 9100 PROは非対応)
- Secure Erase:SSDを出荷時の状態にリセット
- PSID Revert:PSID(本体記載のコード)を使ってSSDをリセット
- Encrypted Drive:ハードウェア暗号化(PCG Opal 2.0)を設定
Secure EraseはマザーボードのBIOS画面から手軽にサクッとできるため、わざわざUSBメモリを用意してSamsung Magician上でやるメリットが少ないです。
Samsung Magicianからブートドライブ(Cドライブ)のタブに移動して、「Data Migration」からソースドライブを選んで、Samsung製SSDにデータをクローンできます。
ソースドライブのメーカー指定は特になく、ターゲットドライブのみSamsung製SSD限定です。
- システム詳細:SSDのシリアルナンバーを表示
- ニュースルーム:Samsung SSDの製品情報をチェック
- Magician共通設定:起動オプションやダークモードを設定
Samsungらしい黒色と紺色を基調とした「ダークモード」を選べます。

左下にある「Update」をクリックして、SSD本体の制御ソフトウェア(ファームウェア)を最新版に更新できます。

Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
---|---|
![]() | ![]() |
テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
![]() | ![]() |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込みが約14300 MB/s、シーケンシャル書き込みが約13300 MB/s前後です。読み込みが少しだけメーカー公称値に届かず、書き込みは公称値にほぼ一致します。
なお、シーケンシャル性能で最大14300 MB/s(Gen4で7150 MB/s)がIntel Coreプラットフォームの上限です。約14000 MB/sを超えていれば問題ないです。
14700 ~ 14800 MB/sを出すにはAMD Ryzenプラットフォームが必要です。
テストサイズを64 GiBに変更して性能の変化をチェックすると、シーケンシャル書き込み性能がわずかに下がり、ランダムアクセス性能(RND4K Q1T1)も微妙に下がる傾向が見られます。
DRAMキャッシュをたっぷり搭載するSSDなら、テストサイズに関係なく数値が安定するはずですが、なぜかランダムアクセス性能にブレがあります。

体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
Samsung 9100 PROは37.9 μsほどで、過去レビューしてきたTLC NAND型SSDで大きな壁になっている40 μs台を突破します。
しかし、謎のオーパーツ級コントローラと東芝のBiCS 8を搭載する「WD Black SN7100」は、Samsung 9100 PROより一足先に前人未到30 μs台の世界に到達しています。

書き込みレイテンシも相変わらず平凡、どころか先代990 PROより鈍化しています。
上位勢は引き続きPhison系コントローラに独占されています。
ATTO Disk Benchmark

ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
重要性が高い小さいファイル領域から中程度のファイル領域(1 KB ~ 512 KB)で、ライバルのCrucial T700に遅れを取っています。
ピーク速度こそ優秀なものの、ファイルシステムにボトルネックがあるWindows環境で得られるメリットはとても限定的です。
書き込み性能は極端に小さいサイズでCrucial T700を上回り、4 KB領域から一気に逆転されてしまい、精彩に欠ける残念なパフォーマンスです。
その後のピーク速度はやはりCrucial T700以上に達するものの、Windows環境であまりメリットはありません。

Samsung 9100 PROを実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。

Samsung 9100 PROのロード時間は「5.76秒」でした。
なかなか速いロード時間ですが、中華ハイエンドシリーズ(HIKSEMI)が2年も先に到達済みです。「ようやく追いついた」と考えるべきです。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
PCMark 10を使ったロード時間ベンチマークだと、かなり強いです。
Battlefield VとCall of DutyでCrucial T700を打ち負かし、Overwatch 2でおおむね同等でした。
DirectStorageのロード時間を比較

Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
Samsung 9100 PROは0.24秒(17.43 GB/s)前後しか出せず、PCIe 5.0帯域を使っている割にまったく振るわない性能です。
ライバルのCrucial T700が依然として最高のDirect Storage性能を叩き出し、Samsung 9100 PROを大きく引き離して勝利します。
念のため補足すると、Crucial T700 / T705はDirect Storageに最適化されたSSDコントローラを使っています。・・・だからと言って負けていい免罪符にはならないでしょう。
容量1 TBで約2.8万円を請求するなら、価格に見合う説得力ある性能を見せるべきです。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → Samsung 9100 PRO)のコピペ時間です。
Zipファイル(256 GB)と写真フォルダの書き込みがトップクラスに並びます。ゲームフォルダはイマイチ伸びず、Crucial T700より約25%も遅いです。

次は読み込み(Samsung 9100 PRO → Optane P5810X)のコピペ時間です。
Zipファイル(256 GB)と写真フォルダの書き込みでトップクラスに入り、ゲームフォルダだと平均以下です。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。

4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約10.3%です。
Crucial T700の約13%を超える性能ですが、Samsung 9100 PROよりずっと価格が安い中華ハイエンドシリーズと横並びにとどまります。

4K動画プレビューのドロップフレーム率は0%で見事に完封です。
DRAMキャッシュ搭載モデルが完封(率0%)グループに加入するのは、Crucial T500とT700につづき3枚目です。完封グループの多数をDRAMレス型が占めています。

ComfyUI:画像生成AIモデルの読み込み

画像生成AIの定番ソフト「ComfyUI」を使って、「.safetensors」形式モデルの読み込みにかかった時間を比較します。
テキストエンコーダーやVAEの読み込み時間は一切含まないです。有志制作のカスタムノード「ComfyUI-Dev-Utils」で、読み込み時間を記録して比較しました。

現時点でもっとも主流なAI生成モデル「SDXL 1.0(約6.46 GB)」の読み込み時間です。
VRAM容量に入り切るサイズだから、基本的にシーケンシャル性能に比例する処理ですが、実際のベンチマーク結果はどうも直感に反する不可解な内容です。
シーケンシャル性能が効いているように見えて、まったく効いていないSSDもあります。幸い、Samsung 9100 PROは問題なく性能を発揮します。

VRAMに入り切らない巨大生成モデル「HiDream(約31.8 GB)」の読み込み時間です。
VRAMから溢れたデータがメインメモリに移動し、それでも収まりきらず共有メモリにまで波及する複雑なI/O処理が連続的に発生します。
内部処理が複雑化すると、SSDのシーケンシャル性能から結果を予測するのが難しいです。全体を俯瞰して見る限り、シーケンシャル性能とランダム性能どちらも重要そうに見えます。

PCMark 10:SSDの実用性能

PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
Samsung 9100 PROのストレージスコア(空き容量10%時)は「4997点」です。空き容量100%なら6236点です。
ついに10%スコアが約5000点に達し、7年前(2018年)に発売されたハイエンドSSD「Samsung 983 ZET」を明確に上回る性能を記録します。
同じく7年前(2018年)に発売されたIntel製フラグシップSSD「Optane 905P」には、10%スコアで届かず・・・。空き容量による性能低下が約20%もあるのが敗因です。

PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
やはり、空き容量が減ってくると書き込み性能が下がり、ファイルコピー評価でスコアの下落幅が大きいです。
Adobe評価もやや落ち込みがあり、Officeとゲームロード評価は下落をかなり抑えられています。
では、Optane 905PとSamsung 9100 PROのスコア差分を確認します。
- Adobe評価:905Pが約40%高性能
- ゲームロード:905Pが約9%高性能
- ファイルコピー:9100 PROが約104%高性能
- Office評価:950Pが約47%高性能
Samsung 9100 PRO(2025)がハッキリとOptane 905P(2018)を打ち負かしたシーンは、ファイルコピー評価のみ。
Adobe評価とOffice評価は依然としてOptane 905Pが強力ですが、約40~50%程度の性能差まで追い詰めています。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
テスト開始から約250 GBまで、約6800 MB/s前後の猛スピードで推移し、pSLCキャッシュが枯渇するとTLC NANDとの混合モードに切り替わり、平均1700 MB/s程度を維持しつづけます。


キャッシュ構造 | 平均書込速度 (Average) |
---|---|
1段階 pSLCキャッシュ | 3951 MB/s |
2段階 pSLC + TLC | 1542 MB/s |
3段階 TLCネイティブ | 1350 MB/s |
ブロックファイルを約900 GB書き込んで、キャッシュ構造をさらに深堀りします。
pSLCキャッシュによる平均4000 MB/s近い爆速モードから始まり、約250 GB書き込んだあたりで一時的にpSLCキャッシュが切れてTLCネイティブモードに入ります。
その後、数秒で混合モード(pSLC + TLC)に切り替わり、平均1300 MB/s前後に回復します。テスト終盤で平均1500 MB/sまで回復し、平均1350 MB/s前後でテスト完了です。

(空き容量:100%時)
実際のファイルコピーで、pSLCキャッシュの挙動をチェック。
平均4000 MB/s近い爆速モードはなぜか最初の2~3秒で終わってしまい、その後ずっと混合モード(pSLC + TLC)で平均1350 MB/s程度しか出なかったです。
数分待っても爆速モードは復活しないし、TRIM/GCコマンドを投げてもパッとしない応答です。特定のI/Oパターンで爆速モードをうまく展開できない可能性が考えられます。

(空き容量:10%時)
空き容量を10%(約99 GB)まで減らした状態もチェック。
やはり2~3秒で爆速モードが終わり、混合モードを約60 GB続けたあと、展開できるpSLCキャッシュがついに底をついて平均770 MB/sまで下がります。
先代モデルSamsung 990 PROで見られた、手堅い書き込み性能はもう失われました。
NANDメモリの高密度化(512 Gb → 1024 Gb)により、同じ容量あたりの書き込み性能が大きく下がったせいです。


時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
Samsung 9100 PROは15分で約1590 GBを書き込みます。980 PROや990 PROに及ばず、Crucial T700と同程度です。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度

- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度3:NANDメモリの温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つですが、そのうち2つが常に同じ温度を示します。実質2つです。

ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
テスト開始から急速に温度が上昇し続け、センサー読みで90℃を超えても・・・サーマルスロットリングらしき症状が見られません。
90℃を超えてから性能がほんの僅かに下がっている気もしますが、正直、誤差です。
サーモグラフィーで表面温度を確認

テスト開始から約8~9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使ってSSDの表面温度を撮影します。
- NANDメモリ(左):79 ~ 81℃
- NANDメモリ(中央):81 ~ 82℃
- SSDコントローラ(右):90 ~ 91℃
SSDコントローラの表面温度は、HWiNFOが表示するセンサー読みから4~5℃だけズレてます。実際の温度よりも少しだけ高い温度を表示するセンサー仕様です。
個人的に低くズレているとサーマルスロットリングの判定が甘くなりそうで怖いですが、Samsung 9100 PROは高めにズレているから特に問題ないでしょう。
別売りのM.2ヒートシンクを付けるかどうかは好みの問題です。
5 nm製コントローラのおかげか、高負荷でも発熱がかなり大人しいです。サーマルスロットリングも10分程度なら目立って発生しません。
SSDに直接ケースファンで風を当てるか、マザーボード付属のM.2ヒートシンクを取り付けるくらいで十分です。
まとめ:9100 PROが王者でいられる時間は短い

(量産済みのV9 NANDを使っていれば・・・)
「Samsung 9100 PRO」のデメリットと弱点
- pSLCキャッシュの再展開が遅い
- 保守的なpSLCキャッシュサイズ
- 素の書き込み性能が遅い
- 高負荷時の温度がやや高い
- 空き容量による性能低下あり
- Gen5規格なのにDirect Storageが遅い
- コスパも良くない
- 価格がとても高い
「Samsung 9100 PRO」のメリットと強み
- 爆速なシーケンシャル性能(14 GB/s)
- DRAMキャッシュ搭載
- 速いランダムアクセス速度
- ゲームロード時間が速い
- 書き込みに強いキャッシュ構造
(※特定のパターンでうまく機能しない) - サーマルスロットリングしづらい
- 十分な耐久性(600 ~ 4800 TBW)
- 大容量モデルあり(最大8 TB)
- 片面実装で扱いやすい
- Samsung Magicianソフト対応
- ファームウェア更新に対応
- Samsung設計 & 自社で製造
- 5年保証
「Samsung 9100 PRO」は、理論上は過去レビューしてきたTLC NAND採用のNVMe SSDで最高峰の性能です。
・・・あくまでも「理論上」です。実際のワークロードで、9100 PROの非常に高い価格を正当化するうえで障害になりうる数多くの妙な挙動が見られます。
レビューで指摘した妙な挙動をあらためて列挙すると、
- Crystal Disk Markの変動幅が大きい
(※DRAMキャッシュ搭載モデルで珍しい挙動) - 小さいファイル領域でCrucial T700に勝ててない
- Direct Storage APIの処理が遅い
- pSLCキャッシュの効きが悪いパターンが目立つ
- pSLCキャッシュ再展開の条件が不明瞭
などなど、普通にベンチマークしたり使っているうちに気づくレベルの挙動が目立っています。
別に価格が安ければ目くじらを立てる必要もないですが、Samsung 9100 PROは非常に高価なフラグシップモデルです。多少の弱点が許されない立場です。
PCMark 10で測定した実用スコアこそ、かつてのフラグシップモデル「983 ZET」を打ち負かします。でも実際のワークロードで得られた使用体験が全体的に良くないです。
もしかして、不明瞭な挙動を修正するファームウェアが用意されているのでは?
念のため「Samsung Magician」ソフトで確認したものの、特にファームウェアの更新も来てなかったです。

久々に買い物検定失格・・・。
Samsungによる自社設計かつ自社ファブ製で信頼性が高く、洗練されたソフトウェア「Samsung Magician」を無料で使い放題なところが、Samsung 9100 PRO独自の強みでしょうか。
しかし、やっぱり価格と性能の釣り合いが悪いと感じています。Crucial T700の比じゃないコスパの悪さに映ります。
以上「Samsung 9100 PROレビュー:Gen5世代の王者奪還を狙うサムスンの意欲作【値段も王者】」でした。

「Samsung 9100 PRO」を入手する
レビュー時点の価格は1 TBモデルが約2.8万円、2 TBモデルが約4.8万円です。
それぞれ同じ値段で「SN7100 2TB(レビュー)」または「SN7100 4TB」を買えるほど高い値段です。
「Samsung 9100 PRO」の代替案
PCIe Gen5対応のハイエンドSSDがもっぱらの代替案です。
PCMark 10による実効スコアこそSamsung 9100 PROに抜かされましたが、小さいファイル領域の速度や実際のファイルコピー、Direct Storage処理など。
多くのワークロードでSamsung 9100 PRO以上の性能です。現行モデルの「T705」なら、なおさら9100 PROを超える性能だと予想できます。
Gen5世代そのものがコスパが悪く、あまり他人におすすめできる余地が少ない製品群ですが、仮にGen5を買うなら「Crucial T700(T705)」を勧めます。
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