ようやく登場した第3世代Ryzenのローエンドモデル「Ryzen 3 3300X」と「Ryzen 3 3100」を、レビュー & ベンチマークするよ。
どちらも同じ4コア8スレッドに見えて、実は内部構造はまったく違っていて、性能もガラッと性格が変わってくるのが面白いCPUです。
Ryzen 3 3300X / 3100のスペックを解説
CPU | Ryzen 3 3300X | Ryzen 3 3100 | Core i3 10100 |
---|---|---|---|
ロゴ | |||
世代 | 3rd Zen 2 | 3rd Zen 2 | 10th Comet Lake S |
プロセス | 7 nm | 7 nm | 14 nm+++ |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリングIHSは金メッキ仕様 | ソルダリングIHSは金メッキ仕様 | サーマルグリス |
ソケット | Socket AM4 | Socket AM4 | LGA 1200 |
チップセット | AMD 400 / 500 | AMD 400 / 500 | Intel 400 |
コア数 | 4 | 4 | 4 |
スレッド数 | 8 | 8 | 8 |
ベースクロック | 3.80 GHz | 3.60 GHz | 3.60 GHz |
ブーストクロックシングルコア使用時 | ~ 4.30 GHz | ~ 3.90 GHz | 4.30 GHz |
ブーストクロック全コア使用時 | ~ 4.30 GHz | ~ 3.90 GHz | 4.10 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 不可 |
L1 Cache | 256 KB | 256 KB | 256 KB |
L2 Cache | 2 MB | 2 MB | 1 MB |
L3 Cache | 16 MB | 16 MB | 6 MB |
対応メモリ | DDR4-3200 | DDR4-3200 | DDR4-2666 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | U-DIMMのみ | U-DIMMのみ | 不可 |
PCIeレーン | Gen4 | Gen4 | Gen3 |
16 + 4 | 16 + 4 | 16 | |
レーン構成 | 1×16 + 1×4 | 1×16 + 1×4 | 2×8 |
2×8 + 1×4 | 2×8 + 1×4 | 1×8 + 2×4 | |
1×8 + 2×4 + 1×4 | 1×8 + 2×4 + 1×4 | – | |
内蔵GPU | なし | なし | Intel UHD 630 |
GPUクロック | – | – | 1100 MHz |
TDP | 65 W | 65 W | 65 W |
MSRP | $ 120 | $ 99 | $ 122 |
参考価格国内Amazonの価格 | 15378 円 | 13178 円 | 17500 円 |
Ryzen 3 3300Xは4コア8スレッドで、最大4.3 GHzで動作する高クロックモデルです。約2000円安いRyzen 3 3100は、同じく4コア8スレッドですが、ブーストクロックは最大3.9 GHzに抑えられてます。
さて、Ryzen 3 3300Xと3100は一見すると「同じ4コア8スレッド」で、動作クロックが違うだけに見えます。しかし、「4コアの中身」には両者で大きな違いがあり、単なるクロック違いではないです。
CCXとは?:「4+0」と「2+2」構成
AMD Ryzenは「CCX(CPU Complex)」と名付けられた、最大4コアのCPUを組み合わせて低価格なマルチコアCPUを作ります。
CPUはコア数が多く、チップの面積が巨大化するほど歩留まり率(不良品の発生率)が悪化します。だからインテルCPUはコア数が多いモデルほど生産数が絞られ、価格が高騰(または品薄)になりやすいです。
とはいえ、Ryzenを構成する最大4コアの「CCX」も、必ず一定の頻度で不良品が発生します。たとえば4コアとして動作しない、3コアCCXや2コアCCXは一定確率で発生するでしょう。
発生した不良品CCXをどうするか。インテルならCeleronやPentiumとして売ってますが、Ryzenなら「2コア同士で合成すれば4コアになるよね?」という考え方が通用します。
Ryzen 3 3100は、2コアCCXを2つ組み合わせて作った「デュアルCCX構成の4コアCPU」。価格が2000円高いRyzen 3 3300Xは、4コアCCX(完動品)を1個だけ使う「シングルCCX構成の4コアCPU」です。
- Ryzen 3 3300X:シングルCCX構成(4 + 0)
- Ryzen 3 3100:デュアルCCX構成(2 + 2)
では、複数のCCXを組み合わせて多コアCPUを作るデメリットとは?・・・CCXを複数使う最大のデメリットとして、レイテンシの発生を挙げられます。
Ryzenでは複数のCCXを接続するために、「インフィニティーファブリック(IF)」と呼ばれるバスインターフェースを使用します。
低コストで多コアCPUを製造する上で、インフィニティーファブリックは画期的な方法ですが、複数のCCXをまたぐ処理が発生すると「レイテンシ(待ち時間)」が発生するのが弱点です。
インフィニティーファブリックの有無(= CCX間のレイテンシの存在)によって、どれほど性能が変化するかは、実際にベンチマークやゲームを検証して確かめます。
低コストでオーバークロック可
世代 | 3rd Zen 2 | 10th Comet Lake S |
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OC対応 | B450 / B550 / X570 | Z490のみ |
CPUオーバークロック | 全モデル対応 | 「K」「KF」モデルのみ |
メモリオーバークロック | 全モデル対応 |
AMD Ryzenは全モデルがオーバークロックに対応しており、安価なB450マザーボードからオーバークロックを楽しめます。ただし、マザーボードの品質はピンキリなので、どこまでオーバークロックできるかは別問題です。
インテルCPUは引き続き、オーバークロックについては厳しい制限が掛かっています。最低でもZ490チップセットが必要で、CPUは「K」または「KF」モデルでなければ、CPUのオーバークロックは不可能です。
メモリのオーバークロックはKやKFを問わず、Z490マザーボードを使うなら全モデル対応。B460やH470マザーボードでは、CPU側の制限※が上限となります。
※Core i7 ~ i9はDDR4-2933まで、Core i5以下はDDR4-2666が制限。Z490マザーボードなら、上限なくメモリオーバークロックが可能です。
BIOSの更新は必要?:サポート表を要チェック
話題の Ryzen 3 3100 と Ryzen 3 3300X に関しましても、もちろん対応しているのでご安心ください。
(*Ryzen 3000 番台が動く BIOS バージョンで大丈夫です。) pic.twitter.com/ImscRnw8ve— GIGABYTE Japan (@GIGABYTE_News) May 23, 2020
Ryzen 3000番台(Zen2)対応のBIOSが入っていれば、Ryzen 3 3300X / 3100は動作します。
しかし、絶対とは言い切れないので念のため、使う予定のマザーボードのCPUサポート表を確認しておきましょう。マザーボードによっては最初から対応してたり、最近になってから対応している場合があります。
2020年6月時点のB450 / B550 / X570マザーボードなら、(よっぽど古い在庫を引かない限り)基本的に大丈夫だとは思いますが、心配な人はPCパーツショップ店頭で購入した方が確実です。
Ryzen 3 3300XとRyzen 3 3100のCPU性能
テスト環境
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
PC | ver.AMD | ver.Intel |
CPU | Ryzen 3 3300X / 3100 | Core i3 10100 |
冷却 | 虎徹Mark II120 mm中型空冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | ASUS ROG STRIXZ490-E GAMING |
メモリ | DDR4-2666 8GB x2使用モデル「G.Skill FlareX C14」 | |
グラボ | RTX 2080 Ti使用モデル「MSI Gaming X Trio」 | |
SSD | NVMe 250GB使用モデル「Samsung 970 EVO Plus」 | NVMe 500GB使用モデル「Samsung 970 EVO Plus」 |
SATA 2TB使用モデル「Micron 1100」 | ||
電源ユニットシステム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニットCPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」 | |
ドライバ | NVIDIA 445.87 |
Ryzen 3 3300Xと3100を検証するテスト環境です。比較に使うCPU以外は、可能な限りほぼすべて同じPCパーツで揃え、CPUの性能だけを比較検証できる環境にしています。
メモリは容量8 GBを2枚で合計16 GB、メモリクロックはBTOパソコンで一般的なDDR4-2666です。
グラフィックボードはレビュー時点で最強性能の「RTX 2080 Ti」を使用しました。CPUのゲーミング性能を計測するのが目的なので、検証に使うグラフィックボードはなるべく高性能な方が良いです。
システムストレージはどちらもSSDで揃え、アプリケーションやベンチマークはSATA接続の2TB SSDから起動しています。おおむね、CPU本体の性能差をテストできるスペック環境です。
レンダリング性能
「Cinebench R15」は日本国内だけでなく、国際的にもCPU用の定番ベンチマークソフトです。内容はレンダリングで、CPUが持っている理論上の性能がハッキリと反映されやすいです。
CPUのすべてのコアを100%使用した場合の性能を叩き出すため、理論上の目安になります。ただし、あくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。
Cinebench R15 / マルチスレッド性能
すべてのコアを使用した場合の「マルチスレッド性能」を比較。Ryzen 3 3300Xは4コア8スレッドながらも、6コアのRyzen 5 3500に打ち勝ちます。
さすがに12スレッドのRyzen 5 1600 AFに届きませんが、4コア8スレッドとしてはかなり強力な性能です。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能
1コアあたりの性能を示す「シングルスレッド性能」は、ぶっちぎりでRyzen 3 3300Xがトップ。
Cinebench R15の後継バージョン「Cinebench R20」も検証しておきました。
Cinebench R20 / マルチスレッド性能
マルチスレッド性能はCinebench R15とおおむね同じ傾向で、Ryzen 3 3300XはRyzen 5 3500とRyzen 5 1600 AFに肉薄する性能です。
Cinebench R20 / シングルスレッド性能
シングルスレッド性能は、やはりRyzen 3 3300Xが圧倒的に速く、Ryzen 3 3100はCore i3 10100と同等のスコアに落ち着きます。
Cinebenchだけでなく、実際に「Blender」というレンダリングソフトを使って処理速度を計測。内容はスポーツカー「BMW」を生成するのにかかった時間で比較します。
Blender 2.79.7 / 「BMW」の生成時間
驚くことに、Ryzen 3 3300Xは上位モデルのRyzen 5 3500を27秒も追い抜き、あと7秒でRyzen 5 1600 AFにすら追いつく勢いです。4コア8スレッドにしては異様な速さです。
計算速度
Geekbench 4.1はマルチプラットフォーム対応のベンチマークソフトです。内容はAESなど暗号処理系で構成され、主にCPUの計算速度をスコア化します。
Geekbench 4.1 / シングルスレッド性能
シングルスレッドの計算速度は、Ryzen 3 3300Xがトップに。2番手はCore i3 10100でした。
Geekbench 4.1 / マルチスレッド性能
マルチスレッドの計算速度では、スペック的には上位であるRyzen 5 1600 AFやRyzen 5 3500に、Ryzen 3 3300Xが追いつくスコアを見せます。
動画エンコード
「動画エンコードにかかる時間」は、CPUの性能を知るうえで分かりやすい指標のひとつです。
まずは定番のフリー動画エンコードソフト「Handbrake」を使ってエンコード性能を検証します。約1 GBのフルHD動画(.mkv)を、Handbrakeの標準プリセットを使ってエンコードして、ログに表示される「平均処理速度」で性能比較します。
Handbrake / Fast 480p(x264)
同じ4コア8スレッドCPU同士でも、かなりの性能差が生じているのが興味深い結果です。Core i3 10100は動画エンコードがイマイチ遅いようですね。
Handbrake / Fast 1080p(x264)
更に負荷が重たいフルHD → フルHDへのエンコードでは、Ryzen 3 3300Xが6コアのRyzen 5 3500を超えるエンコード速度を記録します。
Handbrake / Fast 480p(x265)
処理が複雑なH.265 MKVプリセットでエンコードすると、Ryzen 3 3300Xが6コア12スレッドのRyzen 5 1600 AFを抑えて1位に。
Handbrake / Fast 1080p(x265)
同じ設定のまま解像度だけをフルHDに変更すると、若干性能差は緩和されますが、傾向はそれほど変わらずRyzen 3 3300Xの性能が良さがよく分かります。
- x264guiExをダウンロード(rigaya氏の公式サイト)
日本では大人気の動画編集ソフト「Aviutl」も検証します。rigaya氏が開発した拡張プラグイン「x264guiEx」と「x265guiEx」を使って、2400フレームの動画をエンコード。
Aviutl / x264guiExエンコード
x264guiExのテスト結果です。Ryzen 3 3300Xは、Ryzen 5 3500とほぼ同じ時間でエンコードを完了。
Aviutl / x265guiExエンコード
x265guiExも似たような結果です。
動画編集
「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。
今回の検証ではPuget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve 16における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。
Davinci Resolve / 4K動画編集
Davinci Resolveにおける4K動画編集は、コア数とスレッド数が多いほど処理性能がアップします。
それでもRyzen 3 3300Xは8スレッドながら738点を叩き出し、12スレッドあるRyzen 5 1600 AFにあと一歩のパフォーマンスが記録しています。
Davinci Resolve / 4K動画編集 | |||
---|---|---|---|
テスト内容 | Ryzen 3 3300X | Ryzen 3 3100 | Core i3 10100 |
Overall Score | 738 /1000 | 715 /1000 | 685 /1000 |
Basic Grade | 57.1 | 52.4 | 49.8 |
OpenFXLens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 80.7 | 82.3 | 76.2 |
Temporal NRBetter 2 Frames | 83.8 | 80.5 | 79.4 |
3x Temporal NRBetter 2 Frames | 93.3 | 92.5 | 91.6 |
Optimized Media | 54.3 | 49.9 | 45.7 |
テスト内容 | Ryzen 3 3300X | Ryzen 3 3100 | Core i3 10100 | 単位 | |
---|---|---|---|---|---|
4K | Overall Score | 738 | 715 | 685 | Score |
4K Test Average | Basic Grade | 57.1 | 52.4 | 49.8 | Score |
4K Test Average | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 80.7 | 82.3 | 76.2 | Score |
4K Test Average | Temporal NR – Better 2 Frames | 83.8 | 80.5 | 79.4 | Score |
4K Test Average | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 93.3 | 92.5 | 91.6 | Score |
4K Test Average | Optimized Media | 54.3 | 49.9 | 45.7 | Score |
4K CinemaRAW Light | Codec Average | 75.6 | 75.3 | 71.3 | Score |
4K H264 150Mbps 8bit | 73.9 | 73.3 | 69.9 | Score | |
4K ProRes 422 | 77.8 | 76.7 | 73 | Score | |
4K ProRes 4444 | 68.7 | 64.2 | 61.5 | Score | |
4K RED | 73.1 | 68.1 | 67 | Score | |
4K CinemaRAW Light | Basic Grade | 25.17 | 23.17 | 22.27 | FPS |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 16.34 | 17.5 | 15.95 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 13.75 | 13.63 | 13.25 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.32 | 7.29 | 7.11 | FPS | |
Optimized Media | 48.34 | 46.09 | 41.34 | FPS | |
4K H264 150Mbps 8bit | Basic Grade | 28.09 | 25.83 | 25.16 | FPS |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 16.25 | 17.43 | 15.37 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 17.63 | 17.43 | 17.45 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.72 | 7.68 | 7.64 | FPS | |
Optimized Media | 35.28 | 32.49 | 29.53 | FPS | |
4K ProRes 422 | Basic Grade | 27.72 | 25.58 | 23.9 | FPS |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 16.81 | 18.07 | 16.43 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 18.31 | 17.86 | 17.43 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.89 | 7.85 | 7.81 | FPS | |
Optimized Media | 83.17 | 76.51 | 70.94 | FPS | |
Basic Grade | 14.42 | 13.43 | 12.51 | FPS | |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 12.79 | 11.74 | 11.12 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 10.86 | 9.89 | 9.61 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.37 | 7.33 | 7.22 | FPS | |
Optimized Media | 61.77 | 54.72 | 50.93 | FPS | |
4K RED | Basic Grade | 15.51 | 13.89 | 13.31 | FPS |
OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 11.18 | 10.45 | 10.45 | FPS | |
Temporal NR – Better 2 Frames | 10.54 | 9.69 | 9.82 | FPS | |
3x Temporal NR – Better 2 Frames | 6.04 | 5.87 | 5.89 | FPS | |
Optimized Media | 22.57 | 20.63 | 18.86 | FPS |
スコアの詳細をまとめました。Core i3 10100と比較すると、Ryzen 3 3300Xは約8%も高速にDavinci Resolveを処理できます。
ゲーム実況配信
ゲーム配信ソフトで特に有名な「OBS(略:Open Broadcaster Software)」を使って、CPUの配信性能を検証します。
なお、あくまでもCPUの性能評価としてOBSを使うだけであって、現時点では「ゲーム配信するならNVEncが有利」です。Turing世代のNVEncは高画質かつ、ゲーム中のフレームレートの下落も少ないです。
では、CPUを使ったゲーム配信の性能を検証しましょう。
配信中のドロップフレーム率設定は「veryfast」で固定 | ||||
---|---|---|---|---|
上限 | CPU | レンダリングラグ | エンコードラグ | 平均fps |
144 fps | Ryzen 3 3300X | 0.0% | 5.0% | 92.7 fps |
Ryzen 3 3100 | 0.0% | 14.4% | 86.6 fps | |
Core i3 10100 | 0.0% | 14.7% | 93.1 fps | |
Core i5 9400F | 0.0% | 32.1% | 101.0 fps | |
Ryzen 5 1600 AF | 0.0% | 2.9% | 87.1 fps | |
Ryzen 5 3500 | 0.5% | 5.2% | 73.9 fps | |
60 fps | Ryzen 3 3300X | 0.0% | 2.5% | 58.2 fps |
Ryzen 3 3100 | 0.1% | 8.4% | 58.7 fps | |
Core i3 10100 | 0.0% | 25.2% | 57.8 fps | |
Core i5 9400F | 0.0% | 10.7% | 57.3 fps | |
Ryzen 5 1600 AF | 0.0% | 0.0% | 56.3 fps | |
Ryzen 5 3500 | 0.4% | 13.5% | 59.0 fps |
4コア8スレッドでは、「veryfast」設定ですらコマ落ちが目立ちました。60 fps制限ならギリギリ配信ができますが、NVEncがある以上、CPUで配信するメリットはほぼ無いでしょう。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。
7-Zip Benchmark / 圧縮
「圧縮」はRyzen 3 3300Xはなんとビックリ、6コアのRyzen 5 3500、6コア12スレッドのRyzen 5 1600 AFすら抑えてのトップです。ライバルのi3 10100は全くダメですね。
7-Zip Benchmark / 解凍
「解凍」はRyzenが得意とする分野で、マルチスレッド数に比例した結果になりました。
ブラウザの処理速度
ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUがブラウザ上のWebアプリをどれだけ速く処理できるかを検証する。単位はミリ秒なので、短いほど処理が速いです。
Mozilla Kraken 1.1 / ブラウザの処理速度
基本的にシングルスレッド性能に比例して速くなるテストなので、当然トップはRyzen 3 3300Xです。Ryzen 3 3100はRyzen 5 3500と同じくらいの処理速度でした。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Photoshop CC」を検証。バッチファイルを使って実際にPhotoshopを動かして、それぞれの処理に掛かった時間からスコアを算出します。
Photoshop CC / 総合的な処理性能
Photoshopはマルチスレッドよりも、シングルスレッド性能が効きやすいソフトです。シンプルに高性能なRyzen 3 3300Xにとって、Photoshopの処理は朝飯前。
CPU | Ryzen 3 3300X | Ryzen 3 3100 | Core i3 10100 |
---|---|---|---|
総合スコア | 872.8 /1000 | 726.2 /1000 | 765.8 /1000 |
一般処理のスコア | 84.9 | 64.8 | 68.3 |
フィルタ系のスコア | 88.0 | 76.6 | 81.9 |
GPUスコア | 88.0 | 76.8 | 83.0 |
Photomergeのスコア | 90.6 | 80.3 | 82.5 |
スコアをまとめました。Ryzen 3 3100はもちろん、ライバルのCore i3 10100すら打ち負かします。Photoshop用の低価格CPUとして、最高の選択肢かもしれないです。
CPU | Ryzen 3 3300X | Ryzen 3 3100 | Core i3 10100 |
---|---|---|---|
総合スコア | 872.8 | 726.2 | 765.8 |
一般処理のスコア | 84.9 | 64.8 | 68.3 |
フィルタ系のスコア | 88 | 76.6 | 81.9 |
GPUスコア | 88 | 76.8 | 83 |
Photomergeのスコア | 90.6 | 80.3 | 82.5 |
テストの詳細結果(単位:秒) | |||
RAW画像の展開 | 1.11 | 1.21 | 1.53 |
500MBへのリサイズ | 1.26 | 1.34 | 1.19 |
回転 | 1.53 | 1.76 | 1.24 |
自動選択 | 8.91 | 15.39 | 16.65 |
マスク | 2.9 | 5 | 4.12 |
バケツ | 1.27 | 2.45 | 2.6 |
グラデーション | 0.43 | 0.5 | 0.52 |
塗りつぶし | 5.39 | 6.62 | 6.05 |
PSD保存 | 7.24 | 7.79 | 7.28 |
PSD展開 | 3.07 | 3.45 | 2.95 |
Camera Raw フィルタ | 5.64 | 6.27 | 6.35 |
レンズ補正フィルター | 14.82 | 16.67 | 15.03 |
ノイズ除去 | 18.43 | 20.8 | 23.23 |
スマートシャーペン | 25.47 | 27.81 | 26.58 |
フィールドぼかし | 13.25 | 15.76 | 14.9 |
チルトシフトぼかし | 13.52 | 16.09 | 15.14 |
虹彩絞りぼかし | 15.61 | 18.42 | 16.9 |
広角補正フィルター | 17.69 | 20.79 | 18.08 |
ゆがみツール(Liquify) | 3.86 | 4.33 | 3.65 |
Photomerge(2200万画素) | 76.48 | 86.27 | 82.11 |
Photomerge(4500万画素) | 102.69 | 115.87 | 115.37 |
※「Puget Systems Adobe Photoshop CC Benchmark」を使用しました。
Microsoft Office
PCMark 8を使って、Microsoft Officeの処理速度を計測します。オフィスソフトはマルチスレッドよりシングルスレッド依存のタスクになるため、基本的に第3世代RyzenやインテルCPUが有利です。
Microsoft Word / 平均処理時間
Wordの処理速度は、おおむねシングルスレッド性能で決まります。ある程度のシングルスレッド性能があれば、性能差はあまり出ないです。
Microsoft Excel / 平均処理時間
Excelの処理速度は、シングルスレッドとほどほどのマルチスレッド性能が求められますが、なぜかRyzen 3 3300XだけでなくRyzen 3 3100まで不可解なほど速い結果に。
Microsoft PowerPoint / 平均処理時間
PowerPointは、Ryzen 3 3300Xがトップで、Ryzen 3 3100とCore i3 10100はほぼ同じ性能です。
Microsoft Office系は、全体的にシングルスレッド性能が効きやすいソフトなので、シングル処理が速いかつシンプル構造を持つRyzen 3 3300Xにとっては余裕でしょう。
ビデオチャット(VC)の処理性能
コロナウイルスの流行によって、テレワーク(在宅勤務)の導入が進んでいます。ビデオ会議に使われるビデオチャット(VC)ソフトも出番が増えてきたため、「ビデオチャットの性能」を検証します。
検証方法は「PCMark 10」のビデオチャットテストを使います。内容はビデオチャットを再生したときのフレームレート、顔認識の処理速度、エンコード(アバター着用など)の処理速度などが含まれ、総合スコアを算出できます。
PCMark 10 / ビデオチャットの総合スコア
ビデオチャットの総合的な性能は、Ryzen 5 1600 AFとほぼ同じです。顔認証テストがマルチスレッド性能を要求するので、マルチスレッド性能に比例した結果になりやすいです。
なお、PCMark 10の開発元によれば、ビデオチャットを含む基本的なテストなら4100点以上あれば十分とのこと。つまり、ここに掲載したCPUは「スコアの差」こそあれど、実用上はどれを選んでも違いが分かるどうかは分かりません。
PCMark 10 / ビデオチャットの性能
顔認識やアバター着用など複雑なタスクをせず、ただビデオチャットを再生するだけなら性能は頭打ちです。
「IPC」でCPUの真の進化をチェック
最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。
方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz
これでIPCの違いをキレイに抽出できます。グラフを見て分かる通り、CPUの世代や設計が新しいほどIPCは改善されます。
Ryzen 3 3300XとRyzen 3 3100は第3世代Ryzen(Zen2)で、現行トップクラスのIPCです。しかも、Ryzen 3 3300XはシングルCCX構造ゆえに、通常のRyzenより素直な性能に期待できます。
Ryzen 3 3300XとRyzen 3 3100のゲーミング性能
ゲームで高フレームレートを出すなら、グラフィックボードの性能が重要です。しかし、グラフィックボードが高性能なほど、CPUの性能も影響が大きくなります。
現時点で最強のグラボである「RTX 2080 Ti」を使って、FF14:漆黒の反逆者ベンチマークを実行してみると、同じグラボなのに実際の性能に差が出るのが分かります。
これが「CPUボトルネック」と呼ばれる現象です。過去の検証データでは、傾向としてRyzenはゲーム性能でインテルCPUに劣りやすいです。
シングルスレッド性能が良いのに、なぜかゲーム性能は振るわない。ソフトウェアの最適化不足が原因なのは間違いないですが、CCX間のレイテンシもおそらく原因の一つだと思ってます。
Apex Legend
Apex Legends1920 x 1080 / 最高設定 / 射撃訓練 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Apex Legendsは、Ryzenだと頭打ちです。Ryzen 3 3300Xなら、もしかして・・・と期待したけれどダメですね。
Battlefield V
Battlefield V 1920 x 1080 / 最高設定(DX11) / 最後の虎 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Battlefiled Vでは、Ryzen 3 3300XがCore i3 10100とほぼ横並びのゲーミング性能です。最低フレームレートを見ると、Ryzen 3 3300Xの方が安定しています。
CS : GO
Counter Strike : Global Offensive1920 x 1080 / 最高設定 / Dust II |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
CS:GOはどのCPUを使っても余裕で240 fps以上を出せており、わずかな性能差は実用上ほとんど意味を持ちません。
と言ったものの、Ryzen 3 3300XはCore i3 10100すら抑えてのトップフレームレートを叩き出してます。
Call of Duty : Black Ops IV
Call of Duty : Black Ops IV1920 x 1080 / 最高設定 / Contraband |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
コールオブデューティーはマップ「Contraband」で計測。意外とRyzen 3 3300Xがトップ性能で、次にi3 10100でした。一方、デュアルCCX構成のRyzen 3 3100はまったく伸びません。
Fortnite : Battle Royale
Fortnite : Battle Royale1920 x 1080 / 最高設定 / ミスティ・メドウズ |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
フォートナイトはマップ「ミスティ・メドウズ」で、ゲーム内の正午(12時)頃に計測しました。
インテルCPUの方が効率よくフレームレートを伸ばせる傾向が強いゲームですが、Ryzen 3 3300XはCore i3 10100やCore i5 9400Fを見事に上回るフレームレートです。
Overwatch
Overwatch 1920 x 1080 / エピック設定(100%) / 練習場 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
オーバーウォッチはどのCPUを使っても、平均240 fpsは余裕でオーバー。若干インテルCPUの方が伸びやすいように見えますが、実用上はかろうじて無視できる性能差です。
PUBG
PUBG1920 x 1080 / ウルトラ設定 / 練習場 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
PUBGは練習場を走って計測。方向転換をする時は、すばやくエイムを振っています。
Ryzenだとエイムを振った時にフレームレートの落ち込みが大きいので、基本的にインテルCPUの方が安定しやすいです。しかし、Ryzen 3 3300Xはかなり安定したパフォーマンスを示します。
Rainbow Six Siege
Rainbow Six Siege 1920 x 1080 / 最高設定 / ファベーラ |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
レインボーシックスシージは「ファベーラ」にて計測しました。Ryzen 3 3300Xは、Ryzen 3 3100を約30%も引き離し、ライバルのCore i3 10100すら上回る性能です。
ARK Survival Evolve
ARK Survival Evolve 1920 x 1080 / 高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
じわじわと日本国内でも人気が出てきたARK Survival Evolveも検証。なお、最高設定はあまりにも重たすぎて非現実的なので、ひとつ下の高設定でテストしてます。
FF14
FF14 : 漆黒のヴィランズ 1920 x 1080 / 最高品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
FF14(漆黒の反逆者)ベンチマークはスクエニ製のゲームだけあって、インテルCPUによく最適化されています。
なので、Core i3 10100とi5 9400Fがトップクラスなのは当たり前。注目したいのはRyzen 3 3300Xと3100の性能差です。同じ4コア8スレッドでも、実際のパフォーマンスには大きな差が出ています。
クロック周波数の差をはるかに超える性能差です。インフィニティーファブリックのレイテンシが、スクエニ系ゲームで性能が出づらい要因なのかも?
Shadow of the Tomb Raider
Shadow of the Tomb Raider 1920 x 1080 / 最高設定(SMAA / DX11) |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」も、スクエニ製のゲームです。FF14と似たような傾向で、インテルCPUに有利な結果になりやすいのは当然。
Ryzen 3 3300Xと3100では約17%の性能差が生じていて、明らかにクロック周波数では説明がつかないほどの性能差です。
モンスターハンターワールド
Monster Hunter World1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
モンスターハンターワールドはCPU負荷が重たいゲームのひとつです。ある程度はマルチスレッド性能が無ければ、平均フレームレートは良くても最低フレームレート(3%)はやや不安定。
Ryzen 3 3300XはCore i3 10100を抑えて1位、逆にRyzen 3 3100は今ひとつです。
黒い砂漠
黒い砂漠 1920 x 1080 / リマスター品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
黒い砂漠は無料MMORPGでは、世界最高峰のグラフィックを誇るタイトルですが、HTT(SMT)と相性が悪いなど。ソフトウェアの最適化は未だにダメな部分が多いです。
データを見ての通り、4コア8スレッドだと6コア6スレッドにアッサリ負けたりします。一方で、Ryzen 3 3300Xは4コア8スレッドの割には、妙にフレームレートが伸びていて驚きです。
※なお、測定方法はゲーム内時刻を午前11:30~午後12:30(正午付近)に限定したうえで、負荷が重たい「首都カルフェオン」を馬で走るのみ。
平均パフォーマンス
平均フレームレート 1920 x 1080 / RTX 2080 Tiに対して |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
ここまでの検証結果を平均パフォーマンスとしてまとめました。
Ryzen 3 3300Xの平均フレームレートは、今回比較した6つのCPUでは最高性能です。インテル有利なゲームではギリギリCore i3 10100に負けますが、平均値ならi3 10100を打ち負かします。
デュアルCCX構成のRyzen 3 3100は、同じ4コア8スレッドでありながら、Ryzen 3 3300Xとは比較にならないRyzenらしい大人しいゲーム性能です。
平均フレームレート 1920 x 1080 / RTX 2080 Tiに対して |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
あくまでも「平均値」ですので、参考程度に見てください。
モンスターハンターワールドやレインボーシックスシージなど、マルチスレッド性能を要求するゲームでは、6コア12スレッド(または8コア8スレッド)以上の方がより安定する場合もあります。
「黒い砂漠」に見る・・・レイテンシの影響
検証の結果、同じ4コア8スレッドのZen2同士でも、4コアの内部構成によってゲーミング性能は大きく左右されることが分かりました。
3300Xと3100の性能差は、クロック周波数では説明できないほど大きい性能差です。よって、CCX間のレイテンシが、ゲーム性能に多大な影響を与えている可能性は高いと推測できます。
特に「黒い砂漠」は分かりやすい例です。黒い砂漠はHTT(SMT)と相性が悪い特徴があり、インテルCPUならHTTを無効化すると一気にフレームレートが伸びます。
しかし、RyzenではSMT無効化が効くのは8コアまでで、12コア以上のRyzenだとまったく効果が出ないのです。8コアなら1つのCCXに4コア入ってるので、まだ効率が良いのでしょう。
12コアになるとCCXは2個から4個に倍増し、レイテンシは更に不利です。SMTを無効化しても、それ以上に複数のCCX間で生ずるレイテンシが大きなロスになっていると予想しています。
消費電力とオーバークロック
CPUの消費電力といえば、まず頭に浮かぶのは「TDP」です。しかし、TDPはあくまでも「これくらいの発熱量があるから、発熱量に対応したCPUクーラーを使ってね。」という意味合いの方が強く、イコール消費電力ではない。
よって本レビューでは電力ロガー機能のついた電源ユニットを使って、CPU本体の実際の消費電力を計測します。たとえば、電源ユニットから100 Wの電力が供給されていれば、CPUの消費電力は約100 Wと判断できます。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
電源ユニットを2台使ってCPUとそれ以外のパーツで供給を完全に分割しているため、CPUに給電している電源ユニットの計測値を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。
消費電力とワットパフォーマンス
消費電力は、Handbrakeで「Fast 1080p(x264)」プリセットでエンコードしながら測定します。10コア20スレッドCPUまでなら、この方法でCPU使用率は常時100%に張り付き、CPU本体の消費電力をほぼフルに引き出せます。
消費電力(+12Vレールの実測値)
全コア負荷時の動作クロックは、Ryzen 3 3300Xが4.2 GHz前後に対して、Ryzen 3 3100は3.9 GHzとかなり大人しいです。
クロック周波数が高いほど消費電力は派手に上昇するのがRyzenの特徴なので、Ryzen 3 3300Xは約68 WでRyzen 3 3100は約50Wほど、実に40%近い差が生じています。
ワットパフォーマンス(動画エンコード時)
1ワットあたりの動画エンコード速度(= ワットパフォーマンス)を計算すると、トップはRyzen 3 3100です。
Ryzen 3 3300XはライバルのCore i3 10100に、少し劣るワットパフォーマンスに。なお、動画エンコードの性能で計算しているため、結果は総合的に考える必要があります。
CPU温度は意外と熱い
CPU温度(中央値)
動画エンコード中(CPU使用率100%)の状態で、虎徹Mark IIで冷やしたデータです。
Ryzen 3 3300XとRyzen 3 3100では、CPU温度は15℃も差が出ました。Ryzen 3 3300Xの方が選別されたコアですが、4コアCCXゆえに熱密度が高く、かなり熱が出やすいようです。
虎徹Mark IIを使っても中央値で75℃前後ですので、付属の「Wraith Stealth」クーラーで冷やすのは苦労する可能性があります。Ryzen 3 3100の方は付属クーラーで大丈夫です。
付属クーラー「Wraith Stealth」は、一応スペック上は65 WのTDPに対応する92 mm径CPUクーラーです。
虎徹Mark IIと冷却性能を比較すると、Wraith Stealthは最大84℃、虎徹Mark IIは最大74℃でした。温度差は10℃に達し、Wraith Stealthで100%負荷のRyzen 3 3300Xを冷やすのは少々厳しいです。
動画エンコード中の動作クロックも、4.2 GHzから4.1 GHzへ低下(消費電力は約5.6 W低下)し、TDPが65 Wに収まるように自動的にクロック周波数が調整されています。
Ryzen 3 3300Xの性能をムダなく引き出すなら、付属クーラーではなく少なくとも「虎徹Mark II」を使いたいところです。
オーバークロックと「低電圧化」を試す
Ryzen 3 3100はAuto設定の時点で十分に省エネなので、特に検証はしてません。自由度の高そうなRyzen 3 3300Xのみ、低電圧化と手動オーバークロックを試してみた。
CPU温度は4.5 GHz(1.431 V)で、最大97.5℃に達しました。予想通りかなりの爆熱です。虎徹Mark IIでは、Ryzen 3 3300Xの手動オーバークロックは満足にできません。
消費電力は4.5 GHz時で、平均84.1 Wです。
「低電圧化」は4.2 GHz(1.225 V)で検証し、消費電力は平均59.2 Wに抑えられます。定格より約9 W下がり、CPU温度も最大70℃に低下しました。
クロック | コア電圧 | 最大温度 | 消費電力 | エンコード速度 | 効率 |
---|---|---|---|---|---|
Auto | Auto | 74.0 ℃ | 68.3 W | 38.1 fps | 0.56 fps |
4.20 GHz | 1.225 V | 70.0 ℃ | 59.2 W | 40.5 fps | 0.68 fps |
4.50 GHz | 1.431 V | 97.5 ℃ | 84.1 W | 43.2 fps | 0.51 fps |
「低電圧化」は効果てきめんです。消費電力と熱が下がるだけでなく、クロックが安定することで動画エンコードの性能も改善。結果的にワットパフォーマンスも向上します。
一方、オーバークロックは無駄に消費電力が跳ね上がるだけで、得られるメリットは多くは無いです。時間を費やしてチューニングするなら、OCより低電圧化の方がメリットは多いでしょう。
クロック | Cinebench R15 | |
---|---|---|
Auto | 205 cb | 1126 cb |
4.20 GHz | 197 cb | 1111 cb |
4.50 GHz | 213 cb | 1202 cb |
なお、低電圧化はクロック周波数を固定するので、マルチスレッド性能は維持できてもシングルスレッド性能は下がってしまいます。
幸いなことに、Ryzen 3 3300Xには「シングルCCX構成」という圧倒的な優位性があり、多少シングルスレッド性能が下がったところで・・・ゲーミング性能は誤差程度にしか変化しないです。
メモリのオーバークロックとゲーム性能
Ryzen 3 3300Xのゲーミング性能はそのままの状態でもかなり強力ですが、メモリのオーバークロックを組み合わせれば更に性能アップを目指せます。
メモリの設定 | FF14ベンチマーク |
---|---|
DDR4-2666CL14-14-14-34 1T | |
DDR4-3200CL14-14-14-34 1T | |
DDR4-3333CL14-14-14-34 1T | |
DDR4-3600CL16-16-16-36 1T |
メモリのオーバークロックが効果的な「FF14:漆黒のヴィランズ」だと、DDR4-2666(CL14)からDDR4-3333(CL14)にオーバークロックしただけで、スコアは約7.8%アップです。
ただし、メモリのオーバークロックはCPUよりも難易度が高いです。使うメモリの品質はもちろん、マザーボードの設計や相性、CPUのメモリコントローラーの品質まで。複数の要因が関わってきます。
特にBIOSバージョンの影響は極めて大きいので、メモリのオーバークロックに挑戦するなら、マザーボードのBIOSをなるべく最新版にアップデートしてください。
参考までに、今回の検証に使ったメモリを紹介。タイトなオーバークロック耐性に定評がある「Samsung Bダイ」チップを搭載したDDR4メモリです。
最初から収録されているXMPプロファイル(DDR4-3200 CL14-14-14-34)を適用するだけでも、かなり強力なオーバークロック効果を得られます。
まとめ:Core i3を圧倒する新生「Ryzen 3」
第3世代Ryzenのローエンドモデルとして投入された「Ryzen 3 3300X」と「Ryzen 3 3100」は、ついにCore i3を打ち負かす存在に進化しています。
従来のRyzen 3は、Core i3と比較して今ひとつパッとしないCPUでしたが、今回の第3世代Ryzen 3は非常に強力です。特にシングルCCX構成を持つ「Ryzen 3 3300X」は、ゲーム性能も文句なしに優秀。
そのままでも高性能なのに、オーバークロックの制限は無し。安価なB450マザーボードでも、CPUとメモリの手動オーバークロックが可能など、性能に伸びしろまで与えられています。
CPU単体のコストパフォーマンスはもちろんのこと、プラットフォームまで含めたコスパは圧倒的にRyzen 3が有利です。
ライバルの第10世代Core i3は、マザーボードの買い替えが必要で、オーバークロックもガチガチの制限付き。あまりにも不利です。よほどの理由が無い限り、Core i3 10100を選ぶ必要はありません。
「Ryzen 3 3300X / 3100」のデメリットと弱点
Ryzen 3 3300X | Ryzen 3 3100 |
---|---|
|
|
Ryzen 3 3300Xは定格でも温度が高いので、可能であれば虎徹クラスのCPUクーラーが欲しいです。
Ryzen 3 3100は温度と消費電力は大人しいですが、デュアルCCX構成ゆえにRyzen 3 3300Xほど優れた性能ではありません。
「Ryzen 3 3300X / 3100」のメリットと強み
Ryzen 3 3300X | Ryzen 3 3100 |
---|---|
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|
Ryzen 3 3300Xは、シングルCCX構成のおかげでレイテンシが極めて少なく、不得意なはずのゲーミング性能でCore i3 10100を打ち負かします。
優れたシングルスレッド性能も加わり、PhotoshopやOfficeなど、あらゆるタスクで優れたパフォーマンスを発揮できます。ライバルのi3 10100がRyzen 3 3300Xに勝てるのは、スクエニ系ゲームぐらいです。
価格に対するパフォーマンスにおいて、Ryzen 3 3300Xはクリエイティブからゲーミングまで圧倒的に有利で、Core i3 10100を選ぶ価値をまったく見いだせません。
i3 10100を選ぶくらいならi5 9400Fの方が良いでしょう。と言っても、i5 9400Fもオーバークロック制限が厳しいので、メモリOCで性能を水増しできるRyzen 3 3300Xの方が有利なことに変わりないです。
というわけで、個人的な評価はRyzen 3 3300Xに「Sランク」、Ryzen 3 3100に「A+ランク」で決まりです。
シングルCCX構成のRyzen 3 3300Xは、本当にオールマイティーな性能の持ち主で、現行の4コア8スレッドCPUでは万人におすすめできます。
デュアルCCX構成のRyzen 3 3100は、3300Xほど万能な性能ではありませんが、付属クーラーで運用可能なCPU温度と価格の安さを評価して「A+」です。
以上「Ryzen 3 3300Xと3100をレビュー:i3 10100に出る幕なし・・・」でした。
ちもちゃん10世代インテルも出た訳ですし
そろそろCPUベンチマーク性能比較表更新して欲しいです!
3300Xも超速で売り切れたので一番のデメリットは入手性かも…
でも手に入らないのんほおおおおお!
「デメリットと弱点」のところ、「オーバークロックは伸びない」は3100ではなく3300Xの弱点ではないでしょうか。
余談ですが、Tom’s Hardwareのレビューでは3100を4.4GHz(1.4V)にオーバークロックして検証していました。かなり伸びるようなので興味があればお試しください。
「2 + 2」コア構成が足を引っ張って、3300X超えは厳しい予感はしますが、時間がある時に試してみます。
情報ありがとうございます。
在庫切れなんだが
安定流通まであと1ヶ月くらいかかるかな?
3300Xが売り切れててやむなく3500を買ったのが本当に悔やまれます笑
さっきまで3500をポチるところだった
レビューありがとうございます。3300Xは結構発熱するんですね・・・
一点お聞かせ下さい。
mini-ITXで組もうと思うのですが,クーラーはNH-D9Lか120mmの簡易水冷を検討しています。
どちらでも冷却性能は充分足りるでしょうか?
実際にMini-ITXケースに入れて検証したわけではないので、断定はできませんが、虎徹Mark IIよりは冷却性能は高いと思われます。
120 mm簡易水冷については、安価な製品だと虎徹Mark IIとそう変わらない場合もあるので、AsetekがOEM元の「Corsair」製が無難です。
回答ありがとうございます。
noctuaの性能を信じてみることにします。
シングルCCXなら、強いZEN2が更に強化できることが証明された
今後のZENは1CCXで8コアを擁するという噂もあるので、
8コア16スレッド1CCXの製品とか出てきたらいよいよAMD最強になってしまう
インフィニティーファブリックが無いだけで、ここまで効率が良いのはホントに驚きですよね・・・。
8コアのCCXはコスト的に問題ないのかが気になるところですが、シングルCCXで8コアモデルが強いのは、ほぼ間違いないないと思います。
i3はもちろんだけど、地味にRyzen5 3500も涙目の性能ですね
i3と3300xの差額でグラボは買えないので、グラボが要らない用途ならi3も役割はあります
3100+vega8みたいなAPUが1.5万円ぐらいで出てきたらマジで立場がなくなるけど…
3300って3500より実測値高いのか
最速で完売してて草
やっぱりもうインテルはダメなんだな…
3300Xの在庫復活を待ってる内に3600XTやZEN3が発売されそう
1つのダイにコアが4つみたいな書き方になってませんか?
1600af、3300Xどっちも入手困難なので
ちょっと背伸びして3600を買っちゃいました。
リテールクーラー+熊グリス使っていますが
虎徹2に変更した方が良いでしょうか?
3600にMX4でリテールクーラー付けてるけど今んとこ何の問題もない
でも使ってるケースとか負荷のかかり具合で冷却事情なんてガラッと変わってくるから、他人の話なんてあんまり当てにせんほうがいいぞ
CPU温度測るアプリ入れて温度高かったら虎徹に変える、問題なかったらそのまま、それだけ
3300Xの登場で真に涙目なのはi3 10100君よりもRyzen 5 3500君だと思うの
一応もの3300Xより僅かながらワットパフォーマンスで勝ってるのと、在庫供給量が多いのが強みではあるけど
初めまして。
高校生で初めて自作pcを組もうと思っているのですが、今買うならcorei3 9100fとryzen3 3100 どちらが良いでしょうか?
何に使うのか分からないのと、ビデオカードの存在知ってるのかも若干疑問だけど。
トラブル対応全部引っくるめてi3-9100Fに丸投げしたい気分。
discordとゲームを同時に使用するとどれくらいフレームレートに影響するのでしょうか?
4コア8スレッドの3300と6コア6スレッドの9400ではどれくらい差があるのでしょうか?
B550マザーボードも出るので,初めての自作PCをしようと思っています.
Ryzen3 3300X /3100と組み合わせるなら,どのグラボがコストパフォーマンスが高いでしょうか?
RTX 2060くらいまではRyzen 3 3300Xでいけます。
コスパ重視ならB450でいいのでは
PCIe4.0に1万円以上の価値を見出しているなら別だけど
【予算別】自作PCの組み立てプランと解説を10個まとめたよ
https://chimolog.co/bto-build-pc-plans/#2_10AMD_RyzenPC
だいたいこれを参考にしてみるといいんじゃないですかね
むしろ最強空冷は忍者伍なのかアサシン三なのウンコなのか決めて頂きたい
・Silver Arrow IB-E Extreme
・ASSASSIN III
・NH-D15
・Ninja 5
・Dark Rock Pro 4
この5つをすでに用意済みなので、あとは時間さえあれば検証して動画にしようかな・・・と思ってるとこです。
最近RYZENで自作PC組んだのですが
正直、この季節ZEN2CPUのアイドル~常用域での温度は不満です。
良いCPUクーラー入れたところで、CPUは自体は涼しくても部屋が暑いです。
そんなに多くないと思いますが動画編集やエンコメインで常にCPUのピークが必要な方にはRYZENは良いと思いますが
ブラウザ、オフィスソフト、ゲーム等を普段使いするならインテルの方が良いと思いました。
それを知らずに組んだのか…
10100の生きる道はNEC Mateなんかの法人・官公庁向け事務用PCへの組み込みでしょう。
この手のPCは内蔵gpuでネットとエクセルさえ動いて安ければ問題無し。その意味で10100は大口需要は見込めます。
最新記事のCPU比較助かりました。
シネベンチR15のシングル高い順に並べると
R3 3300Xのコスパの異常な高さが光りますね。
消耗品で計上したいんで助かります。
PRO 4350G がシングルCCX構成のようなので、グラボを積んだら3300X並みに働いてくれそうですね。
https://ascii.jp/elem/000/004/021/4021569/3/
Renoirの単品販売は絞るようなので、良い性能が出ても結局入手困難になりそうですが・・・
14nm+++なんてものはありませんよー。公式が使ってるのは14nm++までです。
BF5の比較で
「Battlefiled Vでは、Ryzen 3 3300XがCore i3 10100とほぼ横並びのゲーミング性能です。」
となっていますが、グラフを見るとCore i5 9400Fのそれと取り違えているように見えます。
この記事でAMDがzen3でやる事が分かった。
・8コア単位でシングルCCX
・クロック周波数上げ
個人的には人間が差異を感じるのは絶対値での差ではなく比なので240fpsと220fpsってよほど感度が高い人でない限り気付かないだろうから安い方で良いんじゃない…?って感じもする。
100と80であれば気づくだろうから100を求めたほうが良いと思うけど。(100fpsと90fpsの違いが二重盲検法でわかる人なら240を追い求めても良いと思う)
10100は官公庁の事務用、個人のネット用にはよいかと。サーバー用にもいいかと。
7世代のi7と同等スペックなので、性能をもてあますだろうけど。
b550-a strixで3300x dramエラーで起動しません、、、
b450-pro tufでは起動するんですが、、、