インテルの第9世代Coreシリーズはラインナップが出揃うのに時間がかかっていますが、ようやくコスパ派にとって待望の第9世代Core i3が登場しました。
わずか1.1万円台から買える、驚きの低価格を実現した「Core i3 9100F」の実力を検証レビューです。
Core i3 9100Fの仕様とスペック
ザックリとCore i3 9100Fの仕様(スペック)について解説します。第9世代のCore i3 9100Fは、従来のCore i3と比較してスペック的な違いが大きいのが特徴です。
CPU | Core i3 9100F | Core i3 9100 | Core i3 8100 |
---|---|---|---|
世代 | 9th Coffee Lake R | 8th Coffee Lake | |
プロセス | 14nm++ | 14nm++ | |
TIMCPU内部の熱伝導材 | サーマルグリス | サーマルグリス | |
ソケット | LGA 1151 v2 | LGA 1151 v2 | |
チップセット | Intel 300 | Intel 300 | |
コア数 | 4 | 4 | |
スレッド数 | 4 | 4 | |
ベースクロック | 3.60 GHz | 3.60 GHz | |
ブーストクロックシングルスレッド動作時 | 4.20 GHz | × | |
ブーストクロック全マルチスレッド動作時 | 4.00 GHz | × | |
手動OC | 不可 | 不可 | |
L1 Cache | 256 KB | 256 KB | |
L2 Cache | 1 MB | 1 MB | |
L3 Cache | 6 MB | 6 MB | |
対応メモリ | DDR4-2400 | DDR4-2400 | |
チャネル | x2 | x2 | |
最大メモリ | 64 GB | 64 GB | |
ECC対応 | U-DIMMのみ※Registered ECC メモリは不可 | U-DIMMのみ※左と同様 | |
PCIe | 16 | 16 | |
構成 | 1×16 | 1×16 | |
2×4 | 2×4 | ||
1×8 + 2×4 | 1×8 + 2×4 | ||
内蔵GPU | なし | UHD 630 | UHD 630 |
GPUクロック | – | 350 ~ 1100 MHz | 350 ~ 1100 MHz |
TDP | 65 W | 65 W | |
MSRP | $ 122 | $ 117 | |
参考価格 | 11960 円 | – 円 | 14980 円 |
もっとも大きな変更点は「ブーストクロック周波数」の実装です。第8世代のCore i3は常に3.6 GHz固定だったのが、第9世代からは負荷に応じて4.0 ~ 4.2 GHzまで上昇する。
なぜCore i3でブーストクロックを解禁したのか。理由としては、第9世代と第8世代の設計自体はほぼ同じなので、性能を底上げするにはクロック周波数を改善するしかないからです。
引き続き「ECCメモリ」をサポートする
インテルは原則としてXeonブランドでしかECCメモリをサポートしていないが、Core i3に限ってはどうやら例外で以前からECCメモリをサポートし続けています。
ただし、サポートしているのはR-DIMM(Registered ECC DIMM)ではなく、U-DIMM(Unbuffered ECC DIMM)という点だけは注意が必要です。
従来のチップセットで利用可能
第9世代はほとんど第8世代と同一の設計を引き継いでいるので、第8世代に対応しているチップセット「Intel 300」シリーズとの互換性を維持しています。
- Intel Z390(第9世代に対応)
- Intel Z370(BIOSアップデートで対応可)
- Intel H370(BIOSアップデートで対応可)
- Intel B365(第9世代に対応)
- Intel B360(BIOSアップデートで対応可)
- Intel H310(BIOSアップデートで対応可)
互換性を持つチップセットは以上の通り。「Z390」「B365」はアップデートの必要なく第9世代をサポートするため、確実に動作させるならこの2つで決まりです。
それ以外のチップセットはBIOSのアップデートをしなければ第9世代をサポートしないため、購入の際はBIOS更新済みかどうかを確認すること(可能ならPCショップで店員に確認を取りたい)。
「F」版では内蔵GPUと一部機能を省いた
「Core i3 9100」なら内蔵グラフィックスの「Intel UHD Graphics 630」が搭載されているが、今回レビューする「Core i3 9100F」には内蔵GPUと一部の機能が省かれています。
内蔵グラフィックスが無いので、
- QSVエンコードを使いたい人
- オフィス用途でグラボは不要な人
- 企業で大量導入したい場合
以上のような用途を考えているユーザーはターゲットから外れることになる。「F」版の目的は、機能を省くことでインテルCPUの供給不足問題を少しでも改善する狙いが大きいです。
機能を減らすと、その分だけ需要(ターゲット)を絞ることが可能なので、結果的に値下げが可能になるという理屈です。実際のところ、i3 9100Fはi3 8100と比べて3000円も安い。
- Intel vPro Platform Eligiblity
- Intel Stable Image Platform Program
- Intel Trusted Execution Technology
なお、省かれた一部機能は3つあります。どの機能も個人ユーザーにとっては必要性があまり無い。「なにこの機能?」と思ったならまず必要ないので、F版を選んで問題はない。
「Core i3 9100F」のスペックをまとめる
- 無印版Core i3より価格がとても安い
- クロック周波数が大幅に引き上げられた
- 従来のチップセットを利用可能
- ECCメモリ(U-DIMM)をサポート
- 内蔵グラフィックスはなし
Core i3 8100と比較して、かなり順当なグレードアップを果たしています。価格は約3000円も安くなったし、クロック周波数はおおむね1割の底上げが施されている。
これから実際に検証レビューを行いますが、少なくともスペック上ではCore i3 9100Fは従来のCore i3よりずっと魅力的なCPUだと言えます。
Core i3 9100Fを実機レビュー
テスト環境(スペック)を紹介
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Core i3 9100F | |
Core i5 9400F | ||
冷却 | NZXT X62280 mm簡易水冷ユニット | |
グラボ | RTX 2080 Ti使用モデル「MSI Gaming X Trio」 | |
メモリ | DDR4-2666 8GB x2使用モデル「G.Skill SniperX C19」 | |
マザーボード | ASRock Z390 Extreme4 | |
SSD | SATA 250GB使用モデル「Samsung 860 EVO」 | |
SATA 2TB使用モデル「Micron 1100」 | ||
電源ユニット | 1200 W(80+ Platinum)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit使用バージョンは「1809」 | |
ドライバ | NVIDIA 419.35 | |
ディスプレイ | 1920 x 1080 @240 Hz使用モデル「BenQ XL2546」 |
※「青字」は該当するレビュー記事へリンクしています。
Core i3 9100Fの検証には「ちもろぐ専用ベンチ機」を使う。メモリは大抵のタスクで必要十分な16 GB(8 GBの2枚組)を搭載し、グラボはボトルネック検証のため「RTX 2080 Ti」を搭載している。
WindowsやアプリケーションをインストールしているストレージはすべてSSDで、マザーボードは電源回路が強靭なASRock Z390 Extreme4を使っています。
ボトルネックになりうる要因はほとんど排除したテスト環境になるため、Core i3 9100Fが持っている実力を忠実に検証可能です。
レンダリング性能
国内だけでなく、国際的にもCPUの定番ベンチマークとなっている「Cinebench R15」。内容はレンダリングなので、CPUの持つ理論上の性能がしっかりと反映されやすい。
ただし、あくまでも理論上の性能が再現されるだけであって、Cinebenchで出てきたスコアがCPUの性能を代表するわけではない点に注意。「100%の性能を出せるとしたらどれくらい強いのか?」ということです。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能
1コアあたりの性能はクロック周波数が3.6 GHzから4.2 GHzまで引き上げられた分だけ改善しています。Core i5並のシングル性能に進化したので、あらゆるタスクで性能アップを期待できる。
Cinebench R15 / マルチスレッド性能
マルチスレッド性能もおおむねクロック周波数に沿った結果です。3.6 GHzから4.0 GHzは約11%の伸びで、実際のスコアは574から632で約10%の伸びになっています。
ベンチマークではなく実際のレンダリングでも性能が改善しているのかどうか。フリーのレンダリングソフト「Blender」を使って、BMWが生成されるのに掛かった時間で比較する。
Blender 2.78 / 「BMW」の生成時間
結果は605秒から554秒に短縮され、約8.5%の性能アップになりました。Core i3 9100Fのマルチスレッド性能は、i3 8100と比較しておおむね1割の改善になったのは間違いない。
計算速度
Geekbench 4.1はマルチプラットフォーム対応のベンチマーク。内容は多種多様なテストなパッケージとなっているが、中身はAESなど暗号処理系の計算速度が問われているので、CPUの計算速度をスコア化することになります。
Geekbench 4.1 / シングルスレッド性能
シングルスレッド性能はクロック周波数に比例する結果です。i3 8100より1割も速い。
Geekbench 4.1 / マルチスレッド性能
マルチスレッド性能もクロック周波数に比例した結果になりました。
Eular3Dは流体力学の計算をCPUに実行させる。Geekbench以上にCPUの計算速度が問われるベンチマークです。単位はHz(ヘルツ:1秒あたりの計算回数)で示され、数値が大きいほど速いことを示す。
Eular3D Benchmark / 計算速度
シンプルな計算はクロック周波数が速いほど有利なので、当然i3 9100Fが速い結果になります。
動画エンコード
定番の無料動画エンコードソフト「Handbrake」を使って、エンコード性能を検証する。内容は約1 GBのアニメファイル(.mkv)を、mp4形式にエンコードし、ログに記録される「平均処理速度」で比較する。
Handbrake x264 / 平均処理速度
「x264」エンコードは見事にスペック通りの性能を発揮した。i3 9100Fはi3 8100より約11%も速く動画エンコードをこなす。
Handbrake x265 / 平均処理速度
より複雑な「x265」エンコードもほぼ同じ傾向です。i3 9100Fの方が約11%エンコードが速い。
フリー動画編集ソフト「Aviutl」に、拡張プラグイン「x264guiEx」を導入して動画エンコードの速度を検証する。
Aviutl / x264guiExエンコード
問題なく動画エンコードの時間は短縮されている。「x264」だと約8%の時間短縮になりました。
Aviutl / x265guiExエンコード
「x265」エンコードも問題なく、約8%エンコード時間を短縮することに成功。
ゲーム実況配信
4コアCPUでゲーム実況配信をしようと考える人は、まずいないかもしれないが、一応どれくらい配信ができるのか。「OBS(略:Open Broadcaster Software)」を使って検証。
検証方法はFF14(紅蓮のリベレーター)をOBSを使ってフルHD配信する。同時に録画も行い、コマ落ちせずに配信できているかどうかをチェックします。
コマ落ちの頻度(=ドロップフレーム率)はOBSの標準機能を使って計測する。ドロップフレーム率を抑えられているほど、CPUのゲーム配信性能が高いことを意味します。
OBS録画配信 / Fast設定 / 60fps制限
OBS録画配信 / Faster設定 / 60fps制限
OBS録画配信 / Veryfast設定 / 60fps制限
やっぱり4コアしか入ってないCore i3にゲーム実況配信は荷が重すぎです。軽い設定のVeryfastですら、ドロップフレーム率は60%に達する。快適な配信は不可能でした。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で出してくれる。
7-Zip Benchmark / 圧縮
クロック周波数が伸びた分だけ、スコアが改善した。
7-Zip Benchmark / 解凍
圧縮もクロック周波数通りの結果です。1割のスコア改善だと、実際の利用シーンで体感するのは難しい。
ブラウザの処理速度
ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUがブラウザ上のWebアプリをどれだけ速く処理できるかを検証する。単位はミリ秒なので、短いほど処理が速い。
Mozilla Kraken / Webアプリの処理速度
JavaScriptの実効速度はシングルスレッド性能の方が優位なため、クロック周波数が最大4.2 GHzにまで向上したi3 9100Fは、6コアのi5 9400Fに並ぶ処理速度を発揮してみせた。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Photoshop CC」を検証。バッチファイルを使って実際にPhotoshopを動かして、それぞれの処理に掛かった時間からスコアを算出する。
Photoshop CC / 総合スコア
おおむねクロック周波数に沿った結果です。スコアの内訳も確認してみよう。
CPU | Core i3 9100F | Core i3 8100 | Core i5 9400F | Core i7 9700K |
---|---|---|---|---|
総合スコア | 666 /1000 | 608.6 /1000 | 713.8 /1000 | 941.2 /1000 |
一般処理 | 62.6 | 59.4 | 69.1 | 97.1 |
フィルター処理 | 61.3 | 54.5 | 65.4 | 86.2 |
Photomerge | 85.2 | 76.5 | 87.9 | 104 |
GPUスコア | 34.3 | 31.4 | 41.7 | 58.5 |
Photoshopはコア数よりもシングルスレッド性能が重視される(時代遅れな)ソフトです。だからクロック周波数が改善するだけで、処理速度はかなり速くなりやすい。
Microsoft Office
PCMark 8を使って、Microsoft Officeの処理速度を計測する。オフィスソフトはシンプルな処理になるため、クロック周波数が速くなったi3 9100Fはそこそこ良い結果を出すはず。
Microsoft Word / 平均処理時間
やっぱり1割くらい処理速度が改善されています。オフィスソフトは本当にシングルスレッド性能重視なアプリケーションですね。
Microsoft Excel / 平均処理時間
Excelも傾向は変わらない。
Microsoft PowerPoint / 平均処理時間
PowerPointも速くなりました。
ただ、1割くらいの変化を実際に体感できるかは微妙なところ。Excelに5000行くらいデータを入れるハードな使い方なら体感できるかもしれないが、日常的な使い方なら難しいです。
それでも「安くて速い」に越したことは無いので、i3 9100Fの方が優位な事実はまったく変わりません。
ゲーミング性能の違いを検証
ゲーミングで高いフレームレートを出すためには、グラフィックボードが一番重要。ですが、グラフィックボードが高性能であればあるほど、CPUに求められる性能も高くなる。
現時点で最強のグラボである「RTX 2080 Ti」を使って、FF15ベンチマークを実行してみると、同じグラボなのに実際の性能はかなり違っているのが分かります。これが「CPUボトルネック」と呼ばれる現象です。
速すぎるグラボに対してCPUが追いつけないと、グラボが持っている本来の性能を出せなくなる現象です。FF15以外のゲームでも「違い」はあるのかを、以下より検証していく。
Apex Legend
Apex Legends1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Apex Legendは(ぼくが知る範囲では)もっとも洗練されたゲームです。CPUの性能を問わず、グラフィックボードの持つ性能を存分に引き出してくれる優れた設計のゲームですね。
CS : GO
Counter Strike : Global Offensive1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
CSGOは古いゲームなのでCPUの影響を受けやすい。i3 8100より性能が改善されているが、Core i5などと比較するとまだまだです。
Call of Duty : Black Ops IV
Call of Duty : Black Ops IV1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
コールオブデューティーでは、Core i3 9100Fが平均値と最低値(下位3%)ともに大幅な改善を見せました。
Rainbow Six Siege
Rainbow Six Siege 1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
レインボーシックスシージでも改善した。クロック周波数が4.0 GHzに変更された影響はかなり大きいですね。
PUBG
PUBG1920 x 1080 / ウルトラ設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
PUBGは平均フレームレートが改善したが、最低フレームレートはなぜか下がってしまった。
Assassin’s Creed Odyssey
Assassin’s Creed Odyssey1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
超重量級ゲームの代表格「アサクリオデッセイ」ではクロック周波数が伸びただけフレームレートも向上したが、Core i5やi7と比較すると埋められない壁を認識できる。
FF14
Final Fantasy 14 : 紅蓮のリベレーター 1920 x 1080 / 最高品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
FF14:紅蓮のリベレーターでは、大きな変化は出ませんでした。
Final Fantasy XV
Final Fantasy XV : Benchmark 1920 x 1080 / 高品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
一方FF15ベンチマークでは、平均フレームレートと最低フレームレートともに改善した。
Grand Theft Auto V
Grand Theft Auto V1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
グランドセフトオート5はわずかに改善です。
Rise of the Tomb Raider
Rise of the Tomb Raider 1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
トゥームレイダーは順当な性能アップを実現できた。
The Witcher 3
The Witcher 3 : Wild Hunt1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
ウィッチャー3も順当な性能アップです。
モンスターハンターワールド
Monster Hunter World1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
モンスターハンターワールドはCPUの影響を受けやすい。特にマルチスレッド性能に影響を受けやすいため、多少クロック周波数が改善した程度では、実際の性能はほとんど変わらない。
黒い砂漠
黒い砂漠 1920 x 1080 / リマスター品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
黒い砂漠は割とコア数が重視されるため、クロック周波数が伸びが実際のゲーミング性能に影響を及ぼすことはなかった。
平均パフォーマンス
平均フレームレート 1920 x 1080 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
ここまでの検証結果を平均してまとめると、Core i3 9100Fのゲーミング性能はi3 8100と比較して約6%の改善になりました。クロック周波数が4.0 GHzになった影響は大きいですね。
ただ、6コアのCore i5や8コアのCore i7と比較すると最大で30%近い性能差があります。RTX 2070を超えるハイエンドGPUと組み合わせるのは効率が悪いと言わざるを得ない。
CPU温度と消費電力
CPU温度はクロックに合わせて上昇
CPU温度 / 動画エンコード実行時
全コアのクロック周波数が3.6 GHzから4.0 GHzに引き上げられたため、当然ながらCPUの発熱も上昇しています。
Core i3 8100が最大56℃だったのに対して、Core i3 9100Fは最大59℃に。妥当な上昇値なので特に問題ないが、意外と驚いたのがCore i5 9400FのCPU温度です。
6コアもあってクロック周波数同じく4.0 GHzくらいなのに、4コアのCore i3シリーズより温度が抑えられている。原因を調べてみると「コア電圧」が0.05 Vくらい違っていた。
コア電圧(Auto設定) / 動画エンコード実行時
なぜこんな差があるのかと言えば、基本的にCPUのグレードは選別によって違うためです。インテルの場合は、Core i7になれないチップをCore i5に、Core i5になれないチップはCore i3として販売します。
グレードの低いチップ(=選別落ちしたチップ)ほど、高いクロック周波数を出すために必要なコア電圧が高い傾向にあります。だからCore i3よりCore i5の方がなぜか温度が低いわけですね。
消費電力もクロック増加分だけ上昇
消費電力(Package Power)
クロック周波数が1割増加しコア電圧もかなり昇圧されているため、CPUの消費電力は約18%も高くなってしまった。性能の伸び幅よりも、消費電力の方が増えています。
ワットパフォーマンス(動画エンコード時)
そのためワットパフォーマンスはCore i3 8100と比較して約6%の悪化です。Core i3 9100Fは、従来の設計をそのままに性能アップを目指したわけですから、この結果は妥当です。
まとめ:低予算ゲーミングPCに使いやすいCPU
「i3 9100F」のデメリットと弱点
- ハイエンドグラボには追いつけない
- i3 8100より高い消費電力とCPU温度
- オフィス用途には使いにくい
「F」版なので内蔵グラフィックスが無い。だから事務用パソコンなど、内蔵グラフィックスで事足りるような用途には向かない。必ずグラボを組み合わせることになります。
そしてグラボを組み合わせる場合は、あまり性能が良すぎるグラボは注意。Core i5やi7と比較してゲーミング性能はかなり低いため、GTX 1660 Tiあたりが限度でしょう。
消費電力と温度はi3 8100より高くなってしまったが、適切なCPUクーラーがあれば問題なく処理できる温度ですので、それほど大きな弱点ではない。
「i3 9100F」のメリットと強み
- i3 8100より10%進化したCPU性能
- やや改善されたゲーミング性能
- 「1.1万円台」という手頃な価格設定
- 優れたコストパフォーマンス
Core i3 9100Fの強みは、なんといってもコストパフォーマンスが改善したことです。i3 8100より3000円も安い価格でありながら、性能はおおむね10%優秀なのは強い。
クロック固定版のCore i3としては歴代最高の性能に達しています。GTX 1650など低予算グラボと組み合わせて格安ゲーミングPCを組むなら、i3 9100Fはとても使いやすいCPUです。
個人的な評価は「A+」ランクで決定。かなりゴリ押しで何とかした感は否定できないけれど、結果的には「i3 8100より高性能で低価格」という世代更新に似合う結果を残したので素直に高評価できる。
「低予算ゲーミングPC」を組む上で役立つ、コストパフォーマンス抜群のCPUです。
以上「1.1万円台の「Core i3 9100F」をレビュー:格安ゲーミングPCの定番になるか?」でした。
Core i3 9100Fを入手する
記事を書いた時点での最安値は11960円で、ほとんどの通販で12000円前後で入手可能です。
Core i3 9100FにおすすめなマザーボードはASRock製の「B365 Phantom Gaming 4」。
約12000円という低価格ながら、VRMフェーズ回路は8本(最大95 WのCPUに対応)、Ultra M.2スロットを2個、Intel製のLANチップ、高品質なALC1200オーディオチップ搭載など。
品質の高いコンポーネントを装備することで、廉価マザーボードで突出したコストパフォーマンスを実現しています。
目的別にi3 9100Fと組み合わせたいグラボ
目的別 | 組み合わせたいグラボ |
---|---|
ゲーミングモニター144 Hzのモニター | ボトルネック的に厳しい… |
普通のモニター60 Hzのモニター | GTX 1650 ~ GTX 1660 Ti |
FXや株式トレードマルチディスプレイ前提 | GT 710 ~ GT 1030 |
CPUボトルネックによるフレームレートの喪失が大きいので、基本的にゲーミングモニターで使うのはオススメしない。144 Hz以上のモニターを使うなら、最低でもCore i5 9400Fが欲しいです。
リフレッシュレートが60 Hzの一般的なモニターを使う場合は、ボトルネックを気にする必要がほぼ無いため、平均60 fps以上を出せるグラボを選べば問題ない。
グラフィックボードはすでにレビュー済みなので、参考にどうぞ。
Core i3 9100FをFXや株式トレードで使いたい人には、「HDMI端子を4つ搭載」するELSA製のGT 730ボードが用途にピッタリでおすすめ。マルチディスプレイを構築するなら、4つのHDMIは便利です。
仕事場の事務用PCをCore i3(グラフィックあり)にしました。ちょっと前のCore i5と同性能で安定して早い/速いです。自作&BTOだと、もう少し出せばRyzen 5が買えてしまうので微妙な所ですが、デスクワークには適してますね。
i3買う層って、グラボ付けずに脳味噌内蔵グラフィックで済ませるパターンの方が多い気がするので、なんだかコレジャナイ感が漂うのですよね。。
(アキバの一部店舗では実際にそういった発言があるらしい)
Core i3は何気にECCメモリ対応なので、ちょっとしたサーバー用途で使う場合に内蔵GPUなしは痛い…という話もありますね。逆に考えれば、こうでもしないと1.2万円でCore i3を出せない程度に、インテルの生産設備は逼迫してるってことなんでしょうけど。
i3 9100F+RTX2060かi5 9400F+GTX1660tiかで悩みます。
値段はどちらも合計5万ほど、FPSもいろいろ調べて60FPS以上は出て差は10FPSもない。でもこの記事みるかぎりi3にRTXは重過ぎるみたいなのでi5+GTXのほうがいいんでしょうか。
クロック周波数だけではフレームレートを改善しにくいゲームもあるので、RTX 2060以上ならCore i5(6コア)の方が良い結果を得られやすいです。ゲームだけでなく他の用途でもメリットが大きいですし。
Ryzen 3との比較も見たいです
一昔前(第7世代まで)は「ゲームしながら録画配信は4コアCore i7がオススメ!とかPC雑誌やらなんやらででかでかと書いてあったのになあ(一応スレッド数は8だけど)
時代の流れですねー
画質を落としたHD配信なら4/8のCPUで出来そうですけど、コア数が増えてくると、そこそこの画質でFHD配信を…というふうに内容がハードルアップした感があります。ホント時代の流れですね。
「時代の流れ」…。言い得て妙ですよね。
過去を振り返れば、例えばメモリを2GB搭載したPCが最高スペックだった時代があったり、2コアCPUが最高スペックだった時代があった訳で(例えが古過ぎ?)、結局の所は、その時代の性能帯域と自分の予算を比較して妥協点を探り当てるしかないんですよね…。
そういう意味に於いては、最高位ではないパーツの評価やパーツ構成を考察していくのは楽しいですし、不特定多数に向けた良き参考資料になると思います。
はじめまして、軽めのゲーム用途に先日9100FとGTX1060で組み立ててみましたが、ベンチマーやってみるとやはり欲が出てくるもので新しいグラボに目が行ってしまいます。
ボトルネックを考慮すると1660辺りが限度だそうですが2060だとレイトレは無視したとしても過剰ですかね?
9100 f 570でpubg の平均fps120程度迄可能です。高オプションからテクスチャ等の重い物切っていく事で可能です。
今は6万円前後でpubgが100fps超えは
凄いですよね
ゲームに依るところですが、144 Hzのゲーミングモニターなら体感できるかギリギリの差になります。すでに持ってる環境からのアップグレードなら「RTX 2060」は十分アリです。(※一から組むならCore i5をおすすめしますが..)
2019/12/7現在ですが、アマゾン価格で¥9,422、1万切りしましたね。
自分も¥11,000前後で購入しましたが、1万切り記念に追加で1個買ってしまいましたw
余剰パーツのほか、生えてくるパーツでもう1台組む予定ですが、AMDerとしても、この石はなかなかいいですね、構成考えるのが楽しい石です。
ホント2万円以下でゲーム用のCPUとなると、インテルはまだまだ優秀ですよね。Core i5 9400F、Core i3 9100Fは特に使いやすいです。
上位モデルはIntelもAMDも切磋琢磨して面白いCPUを開発してほしいですね。
GPUもRX5700がなかなか素晴らしいので、この調子でNvidiaに負けないように頑張ってほしいところです。
ちなみに、新Athlonは復権がうれしくて、200GE~3000Gまで順次そろえてしまいました。
PCが増え続けてやばいですw