Western Digitalのエントリー向けNVMe SSDに新作「WD Blue SN5000」が登場。
公称スペックに準ずる命名規則に変わったようで、SN5000は最大5150 MB/sに対応するから「SN5000」に。従来モデルより直感的に理解しやすいネーミングです。
今回の記事では、1 TB版(約1.6万円)を買って詳しく比較レビューします。
(公開:2024/8/2 | 更新:2024/8/2)
WD Blue SN5000のスペックと仕様
WD Blue SN5000 スペックをざっくりと解説 | |||
---|---|---|---|
容量 | 1000 GB | 2000 GB | 4000 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4 (NVMe 1.4) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | WD Polaris 3 | ||
NAND | KIOXIA製 112層 3D TLC NAND | KIOXIA製 162層 3D QLC NAND | |
DRAM | なし | ||
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 5150 MB/s | 5150 MB/s | 5500 MB/s |
書込速度 シーケンシャル | 4900 MB/s | 4850 MB/s | 5000 MB/s |
読込速度 4KBランダムアクセス | 730K IOPS | 650K IOPS | 690K IOPS |
書込速度 4KBランダムアクセス | 770K IOPS | 770K IOPS | 900K IOPS |
消費電力(最大) | 6.3 W | ||
消費電力(アイドル) | 75 mW | ||
TBW 書き込み耐性 | 600 TB | 900 TB | 1200 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 175 万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
MSRP | $ 75 | $ 125 | $ 280 |
参考価格 2024/7時点 | 15540 円 | 28750 円 | 51495 円 |
GB単価 | 15.5 円 | 14.4 円 | 12.9 円 |
「WD Blue SN5000」のスペックを、Western Digital US法人のデータシートから分かりやすく抜粋してまとめました(※2024年7月時点の情報にもとづく)。
NANDメーカー純正モデルらしい、割と透明性の高いスペックです。
SSDコントローラにWestern Digitalブランド「Polaris 3」、NANDメモリにWD東芝連合でおなじみ「KIOXIA製 3D NAND」を採用します。
容量1 ~ 2 TBモデルで112層 3D TLC NAND(BiCS5)、容量4 TBモデルのみ162層 3D QLC NAND(BiCS6)を搭載します。
シーケンシャル性能は最大5000 MB/s超をアピール。PCIe 4.0世代で今や当たり前となってきた7000 MB/sクラスに見劣りするものの、実用上の実効性能は実際に動かして見ないと分からないです。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
WD Blue SN5000 | – | 600 TBW | 900 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
KIOXIA EXCERIA PLUS G3 (KIOXIA EXCERIA G3 PLUS:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
CFD SFT6000e (CFD SFT6000e:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
書き込み保証値(TBW)は平均的な数値です。中華ハイエンドモデルより少なく、大手メーカー製のライバル製品とほとんど同じ水準。
ただし、容量2 TB版のみ目立って書き込み保証値が低めです。5年保証をアピールしつつ、ハードユーザーに対するサポートを早々に切りたい思惑が見え透いています。
- 普通に使った場合:約32.9年
(1日あたり平均50 GBの書き込みを想定) - 毎日AAAゲームをDLする:約16.4年
(1日あたり平均100 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの写真を入れる:約6.6年
(1日あたり平均250 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの4K素材を入れる:約1.6年
(1日あたり平均1000 GBの書き込みを想定)
今回レビュー用に買った容量1 TB版の場合、TBWを使い切る目安は以上のとおりです。
一般的なユースケースで軽く30年以上持ちます。
もっとも過酷な想定(1日あたり1000 GB)だと約1.6年で600 TBWを使い切りますが、大多数の一般人は普通に使います。ほとんどの場合、5年間のメーカー保証を使い切れないでしょう。
ライバル製品と価格設定の比較
PCIe 4.0対応のハイエンドNVMe SSDと価格を比較したグラフです。
2024年7月時点、同等スペック比較で信じられないほど強気な価格設定に見えます。人気の高い中華ハイエンドSSDより1~2割も高い価格設定です。
(2024年7月:購入したときの価格)
ふだんの定価が約1.5万円(1 TB版)、約2.9万円(2 TB版)です。ポイント還元が大きいYahooショッピングなら、それぞれ約1.3万円と約2.6万円で狙えますが、それでもまだ高い。
WD Blue SN5000を開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
「創造力を高める」パッケージデザインです。いつものWD Blueらしくターコイズブルーを多用してます。
今回レビューで使うサンプルはYahooショッピングにて約13500円で購入しました(PayPayポイントが約2000くらい付与された)。
パッケージの裏表どちらも代理店のシールは貼ってないようです。パッケージの表側に「国内正規品 安心の5年保証」と書いてあるのみ。
- 説明書
必要最低限の付属品です。
基板コンポーネント
WD Blue SN5000はプリント基板の中央に製品ラベルシールが貼ってあり、コンポーネントそのものは最初から露出した状態です。
わざわざシールを剥がさずとも、目視でコンポーネントを確認できます。
裏面にコンポーネントはありません。各国の認証ロゴや、交換保証(RMA)申請時に必要となるシリアルナンバー(S/N)が記載されています。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンや、PS5の増設ストレージで問題なく使えます。
- コントローラ:WD Polaris 3
SanDisk 20-82-10081-A1S 4165ZK7T3PP - DRAM:なし
- NAND:KIOXIA 112層 3D TLC NAND
SanDisk 004366 1T00 4142DCEYH004
SSDコントローラにWestern Digital内製(SanDisk製)の「Polaris 3」、NANDメモリにWD東芝連合からくるKIOXIA製「112層 3D TLC NAND(BiCS5)」を搭載します。
DRAMキャッシュは搭載せず、最大200 MBのHMB(ホストメモリバッファ)方式※で代用します。WD Blue SN5000の場合、HMB容量は初期設定で65536 KB(64 MB)です。
基本的な構造は「WD Black SN770」と酷似しています。
※ホストメモリバッファ方式:メインメモリのごく一部を拝借してDRAMキャッシュの代わりに使う技術
SSDコントローラはWD Black SN770で実績あるWD内製コントローラをリネームした「Polaris 3」コントローラを搭載。
ころころと名前が変わっていますが、WD Blue SN580やWD Blue SN550でも使われています。モデルによって若干pSLCキャッシュの展開方法が違うくらいです。
Western DigitalはPolaris 3コントローラの技術的な仕様をほとんど明らかにしていないため、製造プロセスや対応チャネル数(スループットも)など、仕様の大部分が不明なまま。
NANDメモリはSanDisk刻印が入った「KIOXIA製 112層 3D TLC NAND」を採用。
旧東芝メモリ(現KIOXIA)が60 + 63層の2デッキ構造で製造するNANDメモリで、100~128層のNANDメモリとして平凡な記憶密度(7.08 Gbit/mm²)です。
インターフェイス速度は1200 MT/sほど。最近流行りの中華ハイエンドが使用する「YMTC製 232層 3D TLC NAND」の半分しかありません。
- YMTC 128層 3D TLC NAND:8.48 Gbit/mm²
- SK Hynix 128層 3D TLC NAND:8.13 Gbit/mm²
- Micron 128層 3D TLC NAND:7.76 Gbit/mm²
- KIOXIA 112層 3D TLC NAND:7.08 Gbit/mm²
- Samsung 128層 3D TLC NAND:6.91 Gbit/mm²
2024年の今となっては、使い古された枯れた技術です。
今回のWD Blue SN5000では、記憶密度が512 Gb(= 64 GB)のチップを8枚重ね、かつ1個使って合計8192 Gb(= 1024 GB)の容量に。
WD Blue SN5000の性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | WD Blue SN5000 1TB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9 5950X超えのマルチスレッド性能と、現行最強クラスのシングルスレッド性能で、最大14000 MB/s超えの次世代Gen 5 SSDも難なく処理できます。
原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「WD Blue SN5000」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。きちんと「PCIe 4.0 x4」接続で認識されています。
フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。
搭載されているNANDメモリは全部で1024 GBですが、実際に使えるユーザー領域は1000 GBです。余った24 GBを予備領域に割り当てて、耐久性と信頼性を向上させます。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
---|---|
テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込みが約5200 MB/s、シーケンシャル書き込みが約5000 MB/sでおおむねメーカー公称値どおりです。
テストサイズを64 GiBに引き上げると、書き込み性能とランダム性能(Q1T1)が下がりますが、DRAMレス(HMB:ホストメモリバッファ)方式のSSDでよく見られる典型的な性能特性です。
実際の利用シーンで問題や不具合は起きません。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
WD Blue SN5000は42.3 μsで、最近のDRAMレスSSDとしてトップクラスに並びます。
書き込みレイテンシは平凡な水準です。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
小さいファイルサイズ(512 Bから8 KB)領域でワースト争いを繰り広げます。素の性能が良すぎるHIKSEMIには及ばないようです。
書き込み性能はすべてのテスト領域で安定した傾向です。ピーク速度に達した後も性能がフラフラと乱高下せず、フラットな直線を維持します。
WD Blue SN5000を実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
WD Blue SN5000のロード時間は「6.77秒」、5秒台どころか6秒すら割れません。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストした3タイトルすべてで、一貫してWD Black SN770と同等のゲームロード性能です。
Samsung 990 EVOより格段に速いですが、HIKSEMIやLexar NM790には届きません。
「原神」のロード時間を比較
大人気RPGタイトル「原神」のロード時間を実際にテストします。
- 初回ロード(データロード0%からクリック可能になるまで)
- 初回ロード(クリックしてから操作可能になるまで)
- モンドからフォンテーヌへワープ
- フォンテーヌからスメールシティへワープ
- スメールシティから稲妻城へワープ
- 稲妻城からモンドへワープ
上記6パターンを録画ソフト(120 fps)を使って記録し、動画編集ソフトに取り込んでフレーム単位でロード時間を比較しました。
WD Blue SN5000は「51.84秒」でした。
各シーン別のロード時間(※グラフの左から順番にパターン1~6並び)です。
初回ロード(#1~#2)でしか目立った差がなく、ファストトラベル(ワープ時)のパターンだとほぼ同等のロード時間でした。
パターン6(稲妻城からモンドへワープ)は、すでに読み込んだマップが大量に含まれるため、基本的に大きな時間差はつきません。
DirectStorageのロード時間を比較
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
WD Blue SN5000は0.26秒(16.25 GB/s)で、最大5000 MB/sのシーケンシャル性能に見合う結果に。
とはいえ絶対値で見るとコンマ秒レベルの差しかなく、実用上のロード時間は実質的にほぼ同じでしょう。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → WD Blue SN5000)のコピペ時間です。
かなり大容量のpSLCキャッシュを展開できるようで、Zipファイル(256 GB)の書き込みでもトップクラスに入ります。日常的なファイルコピーなら常時スピーディーでしょう。
次は読み込み(WD Blue SN5000 → Optane P5810X)のコピペ時間です。
どのテストファイルでも平均以上の読み込み速度です。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。
4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約15.9%です。
一般的なTLC NAND型SSDはドロップフレーム率10%の壁を超えられません。WD Blue SN5000も例に漏れず、10%の壁を超えられない平均的なSSDの仲間入り。
10%を割ったSSDは今のところすべて中華ハイエンドシリーズ(YMTC 232層 + MAP1602A)に限られます。
4K動画プレビューのドロップフレーム率は4.6%です。
本テストを完封できるSSDはもっぱら中華ハイエンドシリーズとCrucial T500に限られます。WD Blue SN5000も過去の例と同じく0%完封できません。
むしろWD Black SN770よりやや悪化しました。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
WD Blue SN5000のストレージスコア(空き容量10%時)は「3580点」です。空き容量100%なら3748点で、空き容量による性能低下はわずか約4.5%です。
やはりWestern Digital内製(SanDisk)コントローラは、実使用に近いワークロードで高い性能を示します。
空き容量が少ない状況でも、SK Hynix Platinum P41やSamsung 990 EVOなど。格上のコンポーネントを採用する上位モデルを打ち負かします。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
すべてのテストパターンで、WD Blue SN5000はWD Black SN770とほとんど同じスコアです。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
テスト開始から約365 GBでpSLCキャッシュが終了、その後テストが終了する15分後まで平均560 MB/sの書き込み性能を維持します。
WD Blue SN5000のキャッシュ構造をさらに深堀りします。
ブロックファイルを約900 GB書き込み、WD Blue SN5000の2段階のキャッシュ構造が見えてきます。
グラフの中身をざっくりと解説すると
- pSLCキャッシュで爆速(約360 GBまで)
- pSLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動モードで
書き込み性能がやや低下 - pSLCキャッシュが切れてTLC NAND本来の性能に
展開できるpSLCキャッシュがかなり大きいです。
ざっくり350~360 GB前後までpSLCキャッシュを展開でき、pSLCキャッシュが切れたあとは平均390 MB/sまで書き込み速度が落ち込みます。
いったんpSLCキャッシュを使い切ってしまうと書き込み速度がかなり遅いものの、日常的なシーンで一度に350~360 GBも使うシーンはほとんど無いでしょう。
SN5000では「nCache 4.0」と呼ばれる動的なpSLCキャッシュ制御が搭載されていて、少なくとも12 GBのpSLCキャッシュをごく短時間で復活させられます。
日常的なファイルコピーや、PCMark 10のファイルコピー評価スコアで非常に高い性能を出せる理由です。最後のファイルコピーから数秒ほど待てば、12 GBのpSLCキャッシュが復活します。
普通に使っていると常時爆速に感じられるキャッシュ構造です。ちなみに最大360 GB近い動的キャッシュの方は、TRIM/GCコマンドを送り込むと強制的に復活可能です。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
WD Blue SN5000は15分で約807 GBを書き込み、WD Black SN770より約100 GB少ないです。
SN770はpSLC + TLC混在モードの持続時間がやや長く、そこで100 GB分の差がついています。SN5000はpSLCキャッシュ枯渇後、すぐにTLCネイティブへ移行します。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つです。
- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度3:NANDメモリの温度
センサー1と3はほとんど同じ温度を表示するため、実質的に2つのセンサーです。
M.2ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
センサー1とセンサー3がほぼ同じ温度を表示します。温度変化が飽和するとセンサー3がやや細かい推移を表示する仕様です。
センサー2は96℃まで上昇します。90℃を超えたあたりでサーマルスロットリングを一瞬だけ発動させますが、その後すぐにpSLCキャッシュが枯渇して書き込み速度と発熱が落ち着きます。
キャッシュ枯渇後の平均390 MB/s前後を維持する程度なら、サーマルスロットリングは一切発動しないです。
普通に使っていれば、サーマルスロットリングの影響をまったく感じられないと思われます。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から約8~9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使ってSSDの表面温度を撮影します。
- NANDメモリ(左):69 ~ 70℃
- プリント基板(中央):66 ~ 67℃
- SSDコントローラ(右):88 ~ 89℃
NANDメモリ側が約70℃ほど、SSDコントローラ側で約90℃まで上昇します。
ソフト読みセンサー(HWiNFO)とのズレはNAND側で3℃くらい、コントローラ側で最大6℃くらいです。誤差が少ない正確なセンサーを搭載しています。
WD Blue SN5000に別売りのヒートシンクは不要です。
マザーボードの付属のM.2ヒートシンクがあるなら使うくらいで大丈夫。心配ならケースファンでゆるく風を当てると余裕です。
まとめ:SN5000は実質SN770(安くなればアリ)
「WD Blue SN5000」のデメリットと弱点
- DRAMキャッシュなし
- 素の書き込み性能は平凡
- 平均を下回るゲームロード時間
- 高負荷時の温度が高い
- 容量4 TBモデルは「QLC NAND」
- 価格が高い
「WD Blue SN5000」のメリットと強み
- 最大5150 MB/sのシーケンシャル性能
- 空き容量による性能変化が少ない
- 速いランダムアクセス性能
- 広大なpSLCキャッシュ(350 GB超)
- 十分な耐久性(600 ~ 1200 TBW)
- 大容量モデルあり(最大4 TB)
- WD純正ソフトウェアに対応
- ファームウェア更新に対応
- 5年保証
「WD Blue SN5000」はほとんどWD Black SN770のリネームモデルです。
pSLCキャッシュの展開方法にわずかな差がある程度にとどまり、基本的な性能の大部分がSN770と酷似しています。一般的な使い方だとSN770とまったく同じです。
過去もっとも性能の高いWD Blue SSDだと思われますが、残念ながら価格設定がまったくBlueじゃない・・・。今のところBlackモデルと似た価格設定で、かなり割高に感じます。
同じ値段で中華ハイエンドSSDの容量2 TBモデルが買えてしまうので、コストパフォーマンスを重視する方ならWD Blue SN5000を選ぶ意味がないでしょう。
今後のタイムセール価格に注目したいです。
以上「WD Blue SN5000 レビュー:1ミリも面白みがない「名作SN770」のリネームモデル」でした。
「WD Blue SN5000」を入手する
レビュー(2024年7月)時点で、1 TB版が約1.6万円、2 TB版が約2.9万円です。タイムセール時の値下げ価格はまだ分かりません。
仮に1 TB版が約1.2万円、2 TB版が約2.4~2.5万円まで下がったとしても、即決で購入を決められる価格に見えないです。
ブランド信仰があった頃のぼくなら安いと感じたでしょうが、中華ハイエンドSSDシリーズのせいですっかり価値観を破壊されてしまいました。全部「YMTC 232層 + MAP1602A」シリーズのせいです。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
おすすめなSSDを解説
最近記事が多くて嬉しい。どれも楽しんで読ませて貰ってます
素早いレビュー調査さすがです
連続書き込みのグラフですが、TLC直書きとpSLC→TLC変換逆ではないですかね?
pSLCから読み出してTLCに書き込みなおすのと直書きでは前者の方が時間かかりますから……
(1TBモデルで)1万少々の物に5000円の保険を掛けるか?って話だな
中華は検査しない(もしくは甘い)だけで
バックアップ必須の消耗品なのは有名メーカーも変わらない
なんか最近大手のSSDは性能は良くてもご祝儀でのふっかけ方が尋常じゃないですね。
4TBはQLCなのに値段の上がり方変わらないのおかしいよWDさん
Samsung990EVOが一時期の安売り攻勢はどうしたんだというレベルで高いから互いに競って値下げ合戦してくれないですかね(切実)
ROMはおシャカになったときのダメージがデカいからブランド品を使いたいんじゃ
[…] WD Blue SN5000 レビュー:1ミリも面白みがない「名作SN770」のリネームモデルでした […]