インテルは今年(2019年)の1月中に、内蔵グラフィックスを無効化した新シリーズ「F」を冠するCore i7 / i5 / i3を市場に投入する予定。従来からある「K」や無印とのスペック違いや、内蔵GPUを無効化したバージョンを出すことになった理由など。アッサリまとめて解説してみる。
内蔵GPUフリーな「F」シリーズ
インテルは新たに6つの「F」シリーズ、まだ解禁されていなかった第9世代の「Core i5 9400」を投入。合計で7つのIntel CPUが登場することになりました。SKU(CPU名)は以下の通り。
- Core i9 9900KF
- Core i7 9700KF
- Core i5 9600KF
- Core i5 9400F
- Core i5 9400
- Core i3 9350KF
- Core i3 8100F
「KF」は内蔵グラフィックスを無力化かつ、オーバークロック可能なゲーマー向けCPU。「F」は単に内蔵グラフィックスを無効化しただけのCPUだが、こちらもゲーマー向けと言えますね。
そして「F」シリーズの特徴は内蔵グラフィックスを無効化しただけでなく、企業向け(ビジネス向け)の独自機能をいくつか無効化しているのもポイント。理由はもちろん、ターゲット層がゲーマーや自作erだからです。
無効化された企業向けの機能は以下の3種類。
- Intel vPro Platform Eligiblity
- Intel Stable Image Platform Program
- Intel Trusted Execution Technology
こうすることで、インテルCPUを大量に購入するであろう企業や法人からの需要をカットし、現在の供給不足の状況を(少しでも)打破する狙いが見えてくる。
※ 実際のところは「F」が何を示しているのか、まだインテルの公式見解が出てないので不明だが、とりあえず内蔵グラフィックスから開放されたから「Free = F」なのかなと推測している。
「F」シリーズ:「Core i9」のスペック
世代 | 9th Coffee Lake R | |
---|---|---|
CPU | i9 9900KF | i9 9900K |
プロセス | 14nm++ | |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | |
ソケット | LGA 1151 v2 | |
チップセット | Intel 300 | |
コア数 | 8 | |
スレッド数 | 16 | |
ベースクロック | 3.60 GHz | |
ブーストクロックシングルコア使用時 | 5.00 GHz | |
ブーストクロック全コア使用時 | 4.70 GHz | |
手動OC | 可能 | |
L1 Cache | 512 KB | |
L2 Cache | 2 MB | |
L3 Cache | 16 MB | |
対応メモリ | DDR4-2666 | |
チャネル | x2 | |
最大メモリ | 64 GB | |
ECC対応 | 不可 | |
PCIe | 16 | |
構成 | 1×16 + 2×8 | |
1×8 + 2×4 | ||
内蔵GPU | なし | UHD 630 |
GPUクロック | – | 350 ~ 1200 MHz |
TDP | 95 W | |
MSRP | $ 488 | |
参考価格国内Amazon | – 円 | 65980 円 |
Core i9ブランドは「i9 9900KF」のみ新登場。基本的なスペックは従来の「i9 9900K」と全く同じで、単に内蔵グラフィックスが無効化されているだけになります。
手動オーバークロックが可能な「K」(アンロック)版を購入するユーザーは、大抵「定格」での運用はしない人が多い傾向。更に言えば、オーバークロックを施す時に内蔵GPUをBIOSから切る人も少なくない。
9900KFは内蔵グラフィックスを無効化されているため、おそらく従来の内蔵グラフィックス搭載済みの9900Kより、オーバークロックしやすい可能性があります。
コアゲーマーにとっては、価値あるCPUになると思われる。
「F」シリーズ:「Core i7」のスペック
世代 | 9th Coffee Lake R | 8th Coffee Lake | |
---|---|---|---|
CPU | i7 9700KF | i7 9700K | i7 8700K |
プロセス | 14nm++ | ||
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | サーマルグリス | |
ソケット | LGA 1151 v2 | ||
チップセット | Intel 300 | ||
コア数 | 8 | 6 | |
スレッド数 | 8 | 12 | |
ベースクロック | 3.60 GHz | 3.70 GHz | |
ブーストクロックシングルコア使用時 | 4.90 GHz | 4.70 GHz | |
ブーストクロック全コア使用時 | 4.60 GHz | 4.30 GHz | |
手動OC | 可能 | ||
L1 Cache | 512 KB | 384 KB | |
L2 Cache | 2 MB | 1.5 MB | |
L3 Cache | 12 MB | ||
対応メモリ | DDR4-2666 | ||
チャネル | x2 | ||
最大メモリ | 64 GB | ||
ECC対応 | 不可 | ||
PCIe | 16 | ||
構成 | 1×16 + 2×8 | ||
1×8 + 2×4 | |||
内蔵GPU | なし | UHD 630 | |
GPUクロック | – | 350 ~ 1200 MHz | |
TDP | 95 W | ||
MSRP | $ 374 | $ 359 | |
参考価格国内Amazon | – 円 | 47800 円 | 49200 円 |
Core i7ブランドの従来の「i7 9700K」と同じスペックに設定されており、違いは内蔵グラフィックスの有無だけです。派手にオーバークロックしたいユーザーは、今から買うなら「KF」の方が良い。
「F」シリーズ:「Core i5」のスペック
世代 | 9th Coffee Lake R | 8th Coffee Lake | |||
---|---|---|---|---|---|
CPU | i5 9600KF | i5 9600K | i5 9400F | i5 9400 | i5 8400 |
プロセス | 14nm++ | ||||
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | サーマルグリス | |||
ソケット | LGA 1151 v2 | ||||
チップセット | Intel 300 | ||||
コア数 | 6 | ||||
スレッド数 | 6 | ||||
ベースクロック | 3.70 GHz | 2.90 GHz | 2.80 GHz | ||
ブーストクロックシングルコア使用時 | 4.60 GHz | 4.10 GHz | 4.00 GHz | ||
ブーストクロック全コア使用時 | 4.30 GHz | 3.90 GHz | 3.80 GHz | ||
手動OC | 可能 | 不可 | |||
L1 Cache | 384 KB | ||||
L2 Cache | 1.5 MB | ||||
L3 Cache | 9 MB | ||||
対応メモリ | DDR4-2666 | ||||
チャネル | x2 | ||||
最大メモリ | 64 GB | ||||
ECC対応 | 不可 | ||||
PCIe | 16 | ||||
構成 | 1×16 + 2×8 | ||||
1×8 + 2×4 | |||||
内蔵GPU | なし | UHD 630 | なし | UHD 630 | |
GPUクロック | – | 350 ~ 1150 MHz | – | 350 ~ 1050 MHz | |
TDP | 95 W | 65 W | |||
MSRP | $ 262 | $ 182 | |||
参考価格国内Amazon | – 円 | 33800 円 | – 円 | 29900 円 |
Core i5ブランドには、既に発売済みのアンロック版Core i5 9600Kに、内蔵GPUを無力化した「F」版が登場。
そして、一般ユーザーから高い支持を得ているコスパに特化したCPU「i5 8400」の後継モデルである「i5 9400」と「i5 9400F」がようやく登場。
ただ気になるのがクロック周波数の伸び幅。第8世代と比較して+100 MHzしか伸びていない。TDPを65 Wを厳守した結果、クロック周波数をこれ以上追加するのは無理だったのか。
あるいは、TIMが従来のサーマルグリス仕様に戻っているのか。第9世代の強みは冷えやすいソルダリング仕様のTIMにあるが、まさかゲーマー向けの「K」「KF」のみ…なんてことは無いだろう(と期待したい)。
「F」シリーズ:「Core i3」のスペック
世代 | 9th Coffee Lake R | 8th Coffee Lake | ||
---|---|---|---|---|
CPU | i3 9350KF | i3 8350K | i3 8100F | i3 8100 |
プロセス | 14nm++ | |||
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリング | サーマルグリス | ||
ソケット | LGA 1151 v2 | |||
チップセット | Intel 300 | |||
コア数 | 4 | |||
スレッド数 | 4 | |||
ベースクロック | 4.00 GHz | 4.00 GHz | 3.60 GHz | |
ブーストクロックシングルコア使用時 | 4.60 GHz | – | ||
ブーストクロック全コア使用時 | ?? GHz | – | ||
手動OC | 可能 | 不可 | ||
L1 Cache | 256 KB | 256 KB | ||
L2 Cache | 1 MB | 1 MB | ||
L3 Cache | 8 MB | 6 MB | ||
対応メモリ | DDR4-2400 | |||
チャネル | x2 | |||
最大メモリ | 64 GB | |||
ECC対応 | 対応 | |||
PCIe | 16 | |||
構成 | 1×16 + 2×8 | |||
1×8 + 2×4 | ||||
内蔵GPU | なし | UHD 630 | なし | UHD 630 |
GPUクロック | – | 350 ~ 1150 MHz | – | 350 ~ 1100 MHz |
TDP | 91 W | 65 W | ||
MSRP | $ 173 | $ 117 | ||
参考価格国内Amazon | – 円 | 22900 円 | – 円 | 16900 円 |
Core i3ブランドには、i3 8350Kの後継モデルとして「i3 9350KF」が登場。内蔵グラフィックスが無効化されただけでなく、今までのi3には無かったターボブースト機能が有効化されたのが特徴です。
全コア負荷時のブーストクロックは不明ですが、手動オーバークロックをしなくても最大4.6 GHzで動作できる。
あとはコスパ良好で過去のCore i5を亡き者にした「i3 8100」の「F」版が追加された。単に内蔵グラフィックスが無効化されただけですが、供給量によっては価格下落の要因になるかも。
「F」シリーズの違いをまとめると
- 発熱の原因になる内蔵グラフィックスを無効化
- Core i3は一部ブーストクロックを解禁
- 企業向けのIntel独自機能を無効化
主な違いは、以上の3つに集約される。
ここにきて新シリーズを追加するインテルの思惑としては、やはり供給不足の問題を解決するための一時的な策という感じですね。
現状のラインナップは良くも悪くも万人向けで、様々なユーザー層から需要を集めてしまうため、ただでさえ供給力不足に陥っているインテルCPUの値上げ圧力になっている。
そこで、今回の「F」シリーズを追加することで緩和する狙い。内蔵グラフィックスを無効化したことで、オフィスユースのユーザーはそれなりに削れそうです。
更に、企業やビジネス向けのIntel独自機能(vPro、SIPP、Trusted)も無効化することで、企業や法人からのニーズもある程度は遮断できる可能性がある。
そしてデスクトップ版のCore i3では異例のブーストクロック解禁や、内蔵GPUの無効化による発熱の抑制など。高いクロック周波数をウリにすることで、ユーザー層をゲーマーに絞ったというわけ。
ゲーマーや自作erにターゲットを絞ったのだから、在庫が枯渇しにくくなって価格が落ち着く可能性がある。これが「F」シリーズの大きな目的であり、一時的なシリーズで終わる可能性が高い理由です。
というわけで、以上「インテルの新シリーズ「F」を解説:内蔵GPU無効化の意味」でした。
え、安くなってくれなきゃヤダ...
ていうか内臓GPUってどれくらい生産コストかかってるんだろうか
FでCPUのiGPUをDirectX 12のEMA(Explicit Multi Adapter)として利用できなくなるわけでコストパフォーマンスが気になります。
Fのレビューのときは、是非EMA(Explicit Multi Adapter)によるパフォーマンス差についても考察をお願いします。
あと個人的には、UHDの再生ができなくなるので現時点ではFは選択できないです。
DX3D12のEMA使ってるゲーム無いから、外部GPU使ってる場合、パフォーマンス影響は皆無だよ
KAITOKUさん
DX3D12のEMA使ってるゲームって無いんですね。
残念。
効果がないのかなぁ。
core i3って4C4Tでは?
凡ミスです…orz。修正しました。
待ち切れずに9700k買っちゃったっす(^。^)
マザボがMSI Z370 GAMING PLUSなんですけどOCはしない方が良いですよね?
定格が良さそうです。ぼくも7フェーズしか無いGigabyteのZ370マザボで、i9 9900Kのオーバークロックに挑戦していますが、VRMフェーズの温度が100℃を突破してBSOD出まくりだったので(苦笑)。
ありがとうございます!
余裕が出来たらフェーズ数の多いZ390買ってOCしたいと思います(^-^)
いいっちゃいいんだけどやっぱり値段だよなぁ
8350Kを使う層だと、結局OCすることを考えると9350KFに変える意味がどれだけあるのか・・・
殻割をしないのならOC耐性があるソルダリングに意味はあるかもしれないけども・・・
そう言えば、iGPUが無効化されてる場合、そちらに電力供給してる2フェーズってどうなっちゃうんでしょうかね?
他の所の電力供給に回されればいいけど多分そんなことはないだろうし・・・
前提的な知識ないからわからないんだけど内蔵GPUが無いとなぜOCしやすくなるの?
あといくつか機能無いのになぜ少しも安くなってないのだろう?
実際にやっていて、内蔵GPUを落とすと苦戦していたクロックがあっさり通ったりするので、無駄な電力を使わなくなるから・・・と推測してます。
価格が同じなのは、Fシリーズの目的がコスパ改善では無いからです。
なるほど実際にやっていてと言うのは別のK付のをBIOSで停止してかな、物理的に無いのではなくシステムで停止してるだけで作りは同じ、コスパ改善でもない、とするとホントに供給緩和になるのか?普通にK付の作ればいいような?
え、選別落ち?あれじゃぁ寧ろ質が悪い?
・・・i3のFKぐらいしか見どころないなぁ。
使わない機能の有無まで「質」として評価するかどうか ってだけですねそれ
選別落ちをゲーミング向けってことにしてノーマル版と同価格でぼったくるだけの簡単な商売
ノーマル版の相場が下がる効果は多少あるでしょう
まぁ、そうなりますよね。製品として流す基準を下げて、供給を増やしているわけですから。
以前、Optaneについてレス頂き有難うございました。素人なのでまたまた初歩的な質問です。
(1)つまり、供給不測の状況では、企業・法人向けより自作・ゲーマー向けがおいしい商売なのでしょうか。
(2)企業・法人向けとなると、端末は低コストコンシュマーCPU、サーバーはXeonで、Coreの上位機種なんて出番がないように思うのですし、世代ではむしろCoreが進んでいますが、そうすると生産設備面でも競合でも競合するのでしょうか。
(1)上でも言っているけど内蔵GPUの出来が悪いのをゲーマー向けとして売っているだけだから美味しいといえば美味しい商売だけど別に供給不足でなくともやろうと思えば何時でもできます。
(2)は質問の意味が良く分らないです。
グラボの不具合とか故障した時大変そう…
もし第10世代と同時にintelのdGPUきてAMD Dual Graphicsみたいな機能が追加されたら凄いごちゃごちゃしそう
外部GPU付ければ「F」でも問題ないってことで大丈夫そうですかね?
そういうことです。最近はF付きの方が安いので、ゲーミングPCに使うならコスパよくて重宝します。
Zen2発売後にF/KFシリーズの価格改定があったと思うので、単純なコスパでは無印やKに勝ると言えるでしょうね。
ただ、私は今年古いPCが故障して数日使えなくなっただけでもイライラしたPC依存症なので、
初の自作の際に「万一グラボが初期不良や故障した場合にPCが実質使用不可になるF/KFシリーズ」は選択肢に入りませんでした。
自作を繰り返していて既に予備のグラボがある場合は別ですが、BTOで初めてゲーミングPCを購入しようという場合や、私のように初自作の時などは注意が必要ですね。