NAND業界の巨人サムスン(Samsung)が自社で製造する、フラグシップモデル「Samsung 990 PRO」を買ってみました。
Samsungの「PRO」はその年のコンシューマ向けSSDで絶対王者として君臨しますが、どうやら最新の「990 PRO」はその期待に応えてくれないようです。
(公開:2023/7/27 | 更新:2023/7/27)
Samsung 990 PROのスペックと仕様
Samsung 990 PRO スペックをざっくりと解説 | ||
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容量 | 1000 GB | 2000 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 2.0) | |
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | |
コントローラ | Samsung Pascal | |
NAND | Samsung 176層 3D TLC NAND | |
DRAM | Samsung LPDDR4 | |
1024 MB | 2048 MB | |
SLCキャッシュ | 非公開 | |
読込速度 シーケンシャル | 7450 MB/s | |
書込速度 シーケンシャル | 6900 MB/s | |
読込速度 4KBランダムアクセス | 1200K IOPS | 1400K IOPS |
書込速度 4KBランダムアクセス | 1550K IOPS | |
消費電力(最大) | 7.8 W | |
消費電力(アイドル) | 50 mW | |
TBW 書き込み耐性 | 600 TB | 1200 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150万時間 | |
保証 | 5年 | |
MSRP | $ 80 | $ 160 |
参考価格 2023/7時点 | 17150 円 | 27680 円 |
GB単価 | 17.2 円 | 13.8 円 |
フラグシップモデル「Samsung 990 PRO」のスペックをかんたんに確認します。
NANDメモリに「Samsung 176層 3D TLC NAND」を、SSDコントローラに自社設計の新型モデル「Samsung Pascal」を組み合わせます。
DRAMキャッシュにSamsung製LPDDR4メモリ(1024 MB)を搭載し、SSDコントローラとDRAMキャッシュの合せ技でTLC NAND本来の性能をうまく隠す狙いです。
SK HynixやSolidigmなどと同じく、Samsung製SSDもNANDからコントローラまで、ほぼすべての主要部品を自社で開発と製造を行う完全な垂直統合型モデルです。
しかもSamsungの場合は、コントローラの製造を外部(主にTSMC)に委託せず、自社保有の8 nm級ファブにて製造しています。コンシューマ向けSSDで最高の信頼性に期待できます。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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Samsung 990 PRO | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
書き込み保証値(TBW)は他社の有名ブランド品と同等クラスです。先代の980 PROから特に変化なし。
仮にゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。
600 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると12000日で、耐久値を使い切るのに約33年もかかる計算に。NANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラが経年劣化で故障する確率のほうが高いです。
ライバル製品と価格設定の比較
PCIe 4.0対応のハイエンドNVMe SSDと価格を比較したグラフです。
2023年7月時点、Samsung 990 PROの 1 TBモデルが約1.7万円前後、2 TBモデルが約2.8万円です。タイムセール時のポイント還元込みで約1.5万円を狙えますが・・・他と比較してかなり強気な価格設定です。
たとえばPCIe 4.0で最高峰の性能を持つ「P44 Pro」はセール時なら1万円を切る価格で買えます。1.5倍も価格が高い990 PROが価格に見合う性能を見せられるのか注目です。
Samsung 990 PROを開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
サムスンらしいゴシック体フォントで990 PROと書かれた、見るからにハイエンドな雰囲気漂うパッケージデザインで到着。
今回レビューで使うサンプルは北米版Amazonにて、諸費込みで約1.5万円(99ドル + 為替 + 送料)で購入しました。為替レートのせいで思ったより高く付きます。
海外購入品のため、国内代理店(株式会社ITGマーケティング)のシールは見当たりません。日本国内で購入した場合はITGマーケティングのシールが貼ってあります。
説明書のみ付属します。プラスチック製のケースにSSD本体がすっぽりと収まっています。
基板コンポーネント
マットブラック塗装のプリント基板上に、SSDを構成するコンポーネントを覆い隠すように製品ラベルシールが貼られています。
ラベルシールを剥がすと5年間の製品保証が無効になるリスクが高いため、別途M.2ヒートシンクを取り付ける場合はシールを剥がさずにそのまま取り付けましょう。
裏面にコンポーネントはありません。各国の認証ロゴや、交換保証(RMA)申請時に必要となるシリアルナンバー(S/N)が記載されたラベルシールが貼られています。
ちなみに、裏面のラベルシールはサムスンいわく「サーマル・ヒートスプレッダー」と呼ぶらしく、放熱性を補うヒートシンクを兼ねているそうです。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。
表面に貼ってあるラベルシールは残念ながら厚みがほとんど無い、単なるシールです。裏面のサーマル・ヒートスプレッダーと異なり、ヒートシンク的な効果は期待できません。
ラベルシールを剥がして、基板のコンポーネントを目視で確認します(※5年間の製品保証が切れる行為ですので、真似しない方が安全)。
- コントローラ:Samsung Pascal
S4LV008 A2D9XIA H2224 PASCAL - DRAM:Samsung LPDDR4 1024 MB
SEC 228 K4F8E16 4HMBGCJ - NAND:Samsung 176層 3D TLC NAND
SEC 234 CCK0 K90UGY8J5D
SSDコントローラ、DRAM、NANDメモリすべてSEC(サムスン電子)自社製です。
電源供給を管理するPMICは、テキサス・インスツルメンツ製のロードスイッチ(TPS22990)を複数使って実装されています。
SSDコントローラはSamsungが自社で開発する「Pascal」を搭載。ARM Cortex R5をベースにした高性能な5コアSoCを搭載する、Samsung製で最高峰のコントローラです。
従来のElpisコントローラと同じく、PascalもSamsung 8 nmプロセスで製造されます。キャッシュアルゴリズムの変更、読み取り性能の改善、より低い消費電力に最適化した設計が主な変更点です。
最大2000 MT/sのスループットに対応し、最大8チャネルのNANDメモリを束ねられます。
DRAMはSamsung製LPDDR4メモリを1024 MB搭載します。
型番は「K4F8E16 4HMBGCJ」ですが、Samsungの型番検索サービスにデータがないメモリです。確実に分かるスペックはLPDDR4規格までで、動作クロックや定格電圧は不明です。
NANDメモリはSamsung製176層 3D TLC NANDです。
サムスンが「V7 V-NAND」と呼ぶ第7世代の3D TLC NANDで、他社と同じく2デッキ方式で176層(88 + 88層)まで積み上げ、512 Gbの記憶密度と最大2000 MT/sのスループットを実現します。
ビット密度は8.50 Gb/mm²で170層前後の3D NANDとしては密度が低いです。
競合するSK Hynix製176層が10.80 Gb/m²、Micron製176層(B47R)が10.27 Gb/mm²なので、サムスンの8.50 Gb/mm²はそれほど高密度ではありません。
その代わり平均スループットは184 MB/sで170層前後でほぼ最高の数値です。
Samsung 990 PRO 1TB | Samsung 980 PRO 1TB |
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= 2個使って容量1 TB (512 x 8 x 2 = 8192 Gb) | = 2個使って容量1 TB (256 x 16 x 2 = 8192 Gb) |
Samsung 990 PROでは、記憶密度が512 Gb(= 64 GB)のチップを8枚重ねにして、合計8192 Gb(= 1024 GB)の容量に仕上げます。
NANDメモリの記憶密度が256 Gbから512 Gbへ倍増したため、同じ容量だと書き込み性能が逆に下がってしまう懸念があります。
Samsung 990 PROの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | Samsung 990 PRO 1TB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9 5950X超えのマルチスレッド性能と、現行最強クラスのシングルスレッド性能で、最大14000 MB/s超えの次世代Gen 5 SSDも難なく処理できます。
原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 2.0
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「Samsung 990 PRO」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題が見当たりません。
フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。
まず最初にファームウェアの更新をするべき
Samsung 990 PROを旧ファームウェアで使い続けると、SSDの健康状態(※Crystal Disk Infoに表示される%値)が急激に減ってしまったり、勝手にSSDが暗号化されるリスクがあります。
これらの不具合はサムスン専用ソフト「Samsung Magician」で、ファームウェアアップデートを実行すると修正されます。
- Download – Samsung Magician(公式サイト)
サムスン公式サイトから「Magician Software」をダウンロードして、Samsung 990 PROを使うパソコンにインストールします。
Magician Softwareを起動して、左下に表示される「Update」をクリックしてください。
旧ファームウェアが入っている場合は、最新のファームウェアに「アップデート」可能なはずです。
「OK」をクリックすると自動的にファームウェアの更新が始まり、20秒もしないうちにシャットダウンされます。
パソコンを再起動すると、ファームウェアが最新版に更新されます。今回は「0B2QJXD7」から「3B2QJXD7」に更新されました。
「Full Performance Mode」の劇的な効果
Samsung 990 PROは、空き容量の一部(最大10%)を活用して性能を最適化する「Full Performance Mode」に対応しています。
「Full Performance Mode」を有効化すると、パソコンが再起動されて使える空き容量が931 GBから838 GBに削減されます。
使える容量のほぼ1割を捧げた結果、Samsung 990 PROのランダムアクセス性能が大幅アップ。ランダム読み込みが93 MB/sから113.8 MB/sへ大幅に改善され、TLC NANDのSSDとして最高の数値です。
無視するにはあまりにも効果が大きすぎるため、今回のレビューでは特別に「Full Performance Mode」有効時の性能もテストします。
Full Performance Modeで実行したテストデータは、略して「FPM」でそれぞれの比較グラフに掲載します。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込みが約7160 MB/s、シーケンシャル書き込み速度は約6800 MB/sで、どちらもメーカー公称値にあと一歩届かない性能に。
テストサイズを64 GiBに変更しても、シーケンシャル性能とランダム性能に大きな変化が見られません。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
Samsung 990 PRO(FPM有効)は35.92 μsを記録、TLC NAND型で前人未到の40 usを大きく突破します。競合するライバル製品に対して圧倒的な速さを見せます。
ただし、FPMを使っていない状態だと43.91 μsにとどまり、先代の980 PROと大差ないです。
FPM有効時の書き込みレイテンシは9.08 μsで、過去テストしたNAND型SSDとして最高の数値です。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
512 Bから8 KBまでSamsung 990 PROがトップを走りますが、16 KBから2 MBまで大きく失速してライバルに抜かされ、8 MBでピークに達します。
FPMを有効化すると若干改善が見られるものの、16 KB~2 MB区間で伸び悩む傾向に変わりないです。
一方、書き込み速度はすばらしいの一言につきます。512 Bからピークに達する4 MBまで、Samsung 990 PROがトップを独走します。
ただし、FPMが無い状態だと2 KB~16 KB区間で伸び悩む傾向が見られます。
Samsung 990 PROを実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
Samsung 990 PRO(FPM有効)のロード時間は「5.96秒」でした。競合するライバルたちと同じく、6秒の壁を突破しています。
しかし、FPMが無い状態では「6.42秒」に鈍化してしまい、先代の980 PROとほぼ同じロード時間に落ち着きます。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストした3タイトルすべてで、Samsung 990 PRO(FPM有効)はおおむね中くらいの位置につけます。
FPMがない状態ではCall of Dutyでワーストトップにつけるなど、サムスンのフラグシップモデルとしては不名誉な結果に。
「原神」のロード時間を比較
大人気RPGタイトル「原神」のロード時間を実際にテストします。
- 初回ロード(データロード0%からクリック可能になるまで)
- 初回ロード(クリックしてから操作可能になるまで)
- モンドから千尋の砂漠へワープ
- 千尋の砂漠からスメールシティへワープ
- スメールシティから稲妻城へワープ
- 稲妻城からモンドへワープ
上記6パターンを録画ソフト(120 fps)を使って記録し、動画編集ソフトに取り込んでフレーム単位でロード時間を比較しました。
Samsung 990 PRO(FPM有効)は「42.68秒」でした。FPM無効時とほとんど差がなく、先代の980 PROから進歩が見られない(悪い意味で)まさかの結果に・・・。
各シーン別のロード時間(※グラフの左から順番にパターン1~6並び)です。
トップ勢力と比較すると、初回ロードタイムの遅さだけでなく、マップからマップへのロードタイムの遅さも目立ちます。つまり、パターン1~5までまんべんなく遅いです。
パターン6(稲妻城からモンドへワープ)は、すでに読み込んだマップが大量に含まれるため、基本的に大きな時間差はつきません。
DirectStorageのロード時間を比較
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
Samsung 990 PROは0.26秒(16.6 GB/s)、FPM有効時で0.24秒(17.7 GB/s)でした。シーケンシャル性能の割に、実効帯域幅がいまいち伸び切らない傾向です。
とはいえ、すでに十分すぎるほどロード時間が速いため、絶対値で見るとコンマ秒レベルの差しかつかないです。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → Samsung 990 PRO)のコピペ時間です。
写真フォルダとゲームフォルダは、990 PROが展開するSLCキャッシュの範囲内に収まるため、他のハイエンドSSDとほとんど横並びの性能です。
Zipファイル(256 GB)のみ、SLCキャッシュの狭さがボトルネックになってしまい、P44 ProやP5 Plusなど競合するライバルに追い抜かされています。
次は読み込み(Samsung 990 PRO → Optane P5810X)のコピペ時間です。
読み込み速度も期待しているほどの性能が出ておらず、冴えない印象です。ファイルの読み出しについては、Solidigm P44 Proが猛威を振るっており、Samsung 990 PROにも止められません。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。
4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約12.6%(FPM有効)です。FPM無効時で約13.5%でした。
ハイエンドDRAMレス組(Lexar NM790など)にあと一歩及ばずですが、DRAMを搭載するハイエンドモデルとしてはトップの性能です。
4K動画プレビューでは0%(FPM有効)、FPM無効時で約2.69%でした。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
Samsung 990 PRO(FPM有効)のストレージスコア(空き容量10%時)は「4739点」です。空き容量100%なら4716点で、空き容量による性能低下が一切見られません。
SLC NANDを搭載するエンタープライス向けSSD「Samsung 983 ZET」に近い性能です。
ただし、FPMを無効化するとストレージスコア(空き容量10%時)が「3983点」に下がり、性能の低下幅は約7%に広がります。10%未満に抑えているのは見事です。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
Adobeスコア、ファイルコピースコア※、OfficeスコアはFPM有効ならトップクラスです。FPM無効時は他のハイエンドNVMe SSDと横並びです。
ゲームロードスコアのみ、FPMを有効化してもSolidigm P44 Proに届かなかったです。Samsung 990 PROはゲームの読み出しがやや苦手に見えます。
※PCMark 10 Proのコピーテストは基本的にキャッシュの範囲内に収まるため、SLCキャッシュが狭い990 PROでも性能を出せます。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
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Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
(1枚目:比較グラフ / 2枚目:強調グラフ)
見ての通り、FPM(Full Performance Mode)を有効化すると、書き込み速度が大きく下がります。てっきり捧げた1割の容量を利用してさらに性能が上がると予想しましたが、実際は真逆の反応でした。
FPM無効時ならじわじわと書き込み速度が回復する傾向が見られ、空き容量の差がそのまま展開できるSLCキャッシュサイズに影響を与えているようです。
まずは、FPM無効時のざっくりとした内訳を・・・
- SLCキャッシュで爆速(約120 GBまで)
- SLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動モードに変化
(= おそらくTLC NAND本来の性能) - SLCキャッシュがわずかに回復して性能アップ
Intelligent TurboWrite 2.0システムは最大120 GBのSLCキャッシュを展開でき、キャッシュを超過した後は基本的に回復しません。
後半になるにつれて微妙に書き込み速度が改善するため、微妙にSLCキャッシュが回復して平均速度が上がっている可能性はありますが、確認するのは難しいです。
FPM有効時の内訳は・・・
- SLCキャッシュで爆速(約120 GBまで)
- SLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動モードに変化
(= おそらくTLC NAND本来の性能)
シンプルです。Intelligent TurboWrite 2.0システムによって最大120 GBまでSLCキャッシュを展開した後、一切SLCキャッシュが復活しないまま平均1400 MB/s前後でテストを終えます。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
FPM有効時だとDRAMレスのHIKSEMI FUTUREにすら遅れを取りますが、FPM無効なら先代の980 PROとほぼ同じ水準を維持します。
980 PRO(128層)から990 PRO(176層)にアップグレードした割に、肝心の書き込み性能の伸び幅が少ないです。
128層が256 Gbダイに対して176層は512 Gbダイです。記憶密度が2倍になったためNANDメモリ1枚あたりの書き込み性能が下がっているのが原因でしょう。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つです。
- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:NANDメモリの温度
- ドライブ温度3:SSDコントローラの温度
やや低めの温度が表示される1と2がNANDメモリ、もっとも高い温度を表示する3がおそらくSSDコントローラの温度です。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
テスト開始から2分ちょっとでサーマルスロットリングが発生します。SSDコントローラが95℃前後に達するたび、サーマルスロットリングで性能を落として温度を抑えます。
温度が下がるとサーマルスロットリングが解除され性能も戻りますが、すぐにまたサーマルスロットリングが発生する繰り返しです。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使って撮影。
- SSDコントローラ:92 ~ 93℃
- NANDメモリ(右):83 ~ 84℃
- NANDメモリ(左):82 ~ 83℃
SSDコントローラ周辺は93℃近くまで、NANDメモリ側は80℃前半まで温度が上昇します。
NANDメモリ側の温度センサーはそこそこ正確で、SSDコントローラ側は実際よりやや高めの温度を示します。低く表示するよりマシです。
Samsung 990 PROは高負荷時の発熱がかなり激しいです。
サーマルスロットリングも頻発するため、過酷なワークロードを想定している方はM.2ヒートシンクの装着を強くおすすめします。
少なくとも、マザーボードの付属M.2ヒートシンクにケースファンで風を当ててあげると安心です。
M.2スロットの場所が悪ければ、別売りのヒートシンクで高さを稼いでケースのエアフローが当たりやすいように配置するといいでしょう。
まとめ:驚異的な性能ですが・・・値段に見合うか疑問
「Samsung 990 PRO」のデメリットと弱点
- 高負荷時の温度が高い
- ゲームロード時間が遅い
- Full Performance Modeを
使うと空き容量が減る - Full Performance Modeを
使うと書き込み性能が下がる - 価格がやや高い
- 旧ファームウェアは地雷
「Samsung 990 PRO」のメリットと強み
- 最大7450 MB/sのシーケンシャル性能
- DRAMキャッシュ搭載
- Full Performance Mode
有効時の性能は驚異的 - 空き容量による性能変化が少ない
- かなり速いランダムアクセス速度
- 十分な耐久性(600 ~ 1200 TBW)
- 大容量モデルあり(最大2 TB)
- Samsung自社製造モデル
- 専用ソフトでファームウェア更新に対応
- 5年保証
Samsung 990 PROは、FPM(Full Performance Mode)有効時に限り、PCIe 4.0世代で圧倒的な性能を出せるNVMe SSDです。
約10%の空き容量と約30%の書き込み性能を捧げて、ようやくSolidigm P44 Proを約30%近くも上回る実用性能を発揮します。
しかし、FPM(Full Performance Mode)を使用しない990 PROの性能は・・・値段に対してかなり渋いです。実用性能はP44 Proを上回りますが、大容量ファイルのコピーやゲームロード時間で遅れを取ります。
残念ながら、Samsung 990 PROを好んで選ぶ理由が見当たらないです。
国内の実売価格で競合するライバル(P44 ProやP41 Platinumなど)に並べば一考の余地ありですが、現状の1 TBで約1.7万円の強気すぎる価格設定では支持できません。
FPMを使用すると空き容量が1割ほど減るため、実質価格は約1.9万円に跳ね上がり、容量単価の悪化を許容できるかどうかも好みが分かれる仕様でしょう。
以上「Samsung 990 PROレビュー:SSDの絶対王者だった面影はもう・・・ない。」でした。
Samsung 990 PROを入手する
2023年7月時点、Samsung 990 PROの1 TB版が約1.7万円から買えます。
個人輸入なら5000円ほど安く購入できますが、輸入するリスクを負ってまで入手する価値は無いと思います。
Solidigm P44 ProやLexar NM790など、990 PROより低価格で同等かそれ以上の性能を持つNVMe SSDが買える時代です。
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今回は論外としてちもさんの超高評価SSDもS評価って貰ってないですよね
どのラインまでいけばSいけるんですか
実はスコアリングを作るときに「いずれはOptane SSDの量産化が進んでMLC NANDと同じくらいの値段で買えるようになるかも」という予測を入れて最高評価Sを作ってしまっい、今その予測がハズれてます。
※スコアリングを見直すかどうかは未定です。
まあ簡単に100点満点付けるよりは採点渋い方が信用できる向きはあるから…
表のP44のレビューへのリンクの名前とMX500のレビューのリンクが間違っていると思います
ありがとうございます。修正しました。
990PROのコントローラーは5nmです
SAMSUNGならではの強みで低発熱が良いですね
その分お高いですが^^;
検証お疲れ様でした。
個人的にサムスンSSD=ベンチ番長のイメージが強すぎる為、避けてました。
どうやらそれは正解だったようです。
しかし、大半の自作erの脳裏にベンチ番長として刻まれてしまった。
よって、どんなに酷評されてもベンチマークスコアさえ良ければ満足してしまう自作erは一定数居ると思われます。
使い始めにファーム更新しないといけないってのがもうありえないけど
なぜか持ち上げたがる人が多数いるのが不思議でならない
990PROの検証結果待ってました。ありがとうございます!
2TBを使っているんですが、FPMの存在を初めて知りました・・・
ノーマル状態だと省電力&シーケンシャル、FPMだとランダム&ゲーミング寄りの性能に変化するんですね。
性能と消費電力のバランスはSAMSUNGとしても悩みどころだったのかもしれませんね・・・選べるのは中々面白いです。
初期FWで寿命がゴリゴリ削れる問題(更新必須)、コスパの微妙度さえ納得できれば、巷で叩かれるほど悪いSSDではないのかな~と実際使って思う所です。
未だに欠陥ファームウェアの製品が出回ってるのか。論外だな。
NAND SSDの値段も大分優しくなってる昨今この値段は確かに多くの人にとってあまり買う価値ないですねー
検証お疲れ様です
wdのBlue sn580の検証もよかったらお願いします
欠陥品のゴミは蝉以下ですねぇ
俳句蝉とか言う頭おかしい(褒め言葉)SSDの引き立て役になってしまってる
2TBの蝉族を持ってくとコスパで一気に苦しくなる感じっすね…
いや1TB+DRAMと2TBのHMB比べるなやって話だったらそれまでなんですがね…
あの構成で買えるうちに買ったほうが良いっすね。
度重なるバグ&不誠実な対応でメーカー純正の信頼性も地に落ちてるのがなぁ…
本当にこれ
まあ990PRO買っちゃったんだが・・・
Solidigm P44 ProってintelのSSDなんだね 値段も安いし今度からSolidigm 買おう
やっぱりコスパの悪さが気になるものの、Firecuda 530やSN850Xより優秀な傾向があるのはやっぱり強み
そこは元王者の意地だろうか
まあその上にいるソリダイムや蝉族が優秀すぎて霞んでますが……w
物は言いよう。悪評を彷彿とさせるタイトルの割に、実性能は悪くない。
問題は国内代理店の価格設定か。
4TBモデルは地味ながらパッケージングでブレイクスルーがあったようだ
ここを見て昨年末買った990PROのファームウェアをアップデートしなければと思い、
Magician(Ver8.0.0)をダウンロードして立ち上げてみたんだけど、
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Samsung SSD 990 PRO 1TB |S6Z*********
最新バージョン 0B2QJXD7
現在、最新バージョンのファームウェアを実行しています。
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と出てきてアップデートできない。。。0B2QJXD7って古いよなぁ。。
1年たってなくて、総書込み量が5250GBで健康状態93%って普通なのか。。。
自己レス
問い合わせたらファームウェアは限定公開でうんたらかんたらと返信があったのですが、今日からどうやらバージョンが4B2QJXD7になったので、3B・・からの更新に伴う空白期間だったのかも。無事アップデートできました。