中華系商社カネンカが、あのHuawei(華為技術)が開発した独自のSSD「eKitStor Xtreme 200E」を日本に輸入しています。
Amazonでも普通に買えるようになっていたので、容量1 TB版を買ってファーウェイ製SSDの実力を検証します。
既存の中華系ハイエンド(蝉族)に対して、一定の優位性を示せるかどうかが焦点です。
(公開:2025/9/5 | 更新:2025/9/5)
Huawei eKitStor Xtreme 200Eのスペックと仕様
Huawei eKitStor Xtreme 200E (R-R-HW8-eKS-SSD1T04-D) | |
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容量 | 1 TB (1000 GB) |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 2.0) |
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) |
コントローラ | 非公開 |
NAND | 非公開 |
DRAM | なし |
HMB(DRAMレス)方式 | |
SLCキャッシュ | 非公開 |
読込速度 シーケンシャル | 7000 MB/s |
書込速度 シーケンシャル | 6500 MB/s |
読込速度 4KBランダムアクセス | 900K IOPS |
書込速度 4KBランダムアクセス | 1000K IOPS |
消費電力(最大) | 5.5 W |
消費電力(アイドル) | 3.0 mW |
TBW 書き込み耐性 | 400 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150 万時間 |
保証 | 5年 |
MSRP | 85500 원 |
参考価格 2025/9時点 | 9988 円 |
GB単価 | 10.0 円 |
- メーカー仕様表はこちらから
「Huawei eKitStor Xtreme 200E」は、スマホ製品で有名な・・・あのファーウェイが開発した独自のNVMe SSDです。
厳しい輸入制限を受けているせいで、PhisonやSilicon Motionなど名の知れた定番コントローラを使えないらしく、自社でコントローラを開発したらしいです。
傘下企業のHiSiliconが開発したSSDコントローラとファームウェアを内蔵します。
なお、搭載されているNANDメモリは不明。メーカー仕様表に「3D NAND Flash」表記にとどまり、TLC NANDかQLC NANDかすら非公開です。
メーカー公称スペックも典型的なよくあるPCIe Gen4世代(7000 MB/s台)で、価格も至って普通。もっぱら好奇心を満たすために買う、オタク向けSSDに見えます。

TBW(書き込み耐性)の比較
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
Huawei eKitStor Xtreme 200E | – | 400 TBW | – |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
書き込み保証値は容量1 TBあたり400 TBです。
同じ中華系ハイエンドSSDと比較して、およそ2~4割程度の渋い保証値しかなく、ケチくさい印象を拭えません。
SanDiskやMicronなど有名メーカー品と比較しても6~7割程度の保証値です。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
WD Black SN8100 (WD SN8100:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
MOVE SPEED Panther (MOVE SPEED Panther:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA PRO (EXCERIA PRO:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN5000 (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 600 TBW | 900 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G3 (KIOXIA EXCERIA G3 PLUS:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
CFD SFT6000e (CFD SFT6000e:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
過去のSSDレビューで説明しているとおり、ケチくさいと言っても容量あたり400 TBの書き込み保証値は(実用上)十分な数値です。
- 普通に使った場合:約21.9年
(1日あたり平均50 GBの書き込みを想定) - 毎日AAAゲームをDLする:約11.0年
(1日あたり平均100 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの写真を入れる:約4.5年
(1日あたり平均250 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの4K~8K素材を入れる:約1.1年
(1日あたり平均1000 GBの書き込みを想定)
ワークロード別の想定耐用年数をざっくり試算してみた。
PS5の増設ストレージやゲーミングPCのメインSSDなど。ごく普通の使い方なら約20年以上もかかる計算になり、5年間のメーカー保証をあっさり使い切ります。
仮に1日100 GB書き込んでも、TBWを使い切るのに約11年です。4K~8K RAW写真や動画素材を毎日のようにゴリゴリと書き込む用途ですら、ギリギリ5年保証内に使い切れるくらい。
1日あたり1 TBを書き込むプロの映像作家や写真家にありうる過酷なワークロードで、5年保証を期間内にあっさり消費できる計算です。
プロシューマーを除き、一般的なPCゲーマーからクリエイターにとって十分な保証値です。
写真や動画で業務に使うなら、TBWが倍々に増える大容量モデル(4 TB = 1600 TBW)を選ぶか、最大4800 TBW(4.8 PBW)を提供するWD Blackシリーズを検討してください。
Huawei eKitStor Xtreme 200Eを開封レビュー
パッケージデザインと付属品

Amazonにて容量1 TBモデルを購入しました。約1万円です。

真っ白な背景にSSD本体のCGレンダリング画像を浮遊させる、シンプルなパッケージデザインを採用します。
左上にHuaweiロゴ、右下に製品ブランドロゴ(Huawei eKit)が示されてます。
パッケージの裏面に代理店を示すシール等が見当たりませんが、Amazonで購入する場合はあまり気にしなくて大丈夫です。
何か不具合や問題があったら、基本的にAmazonの返品交換システムを使えば問題なし。サポートの利便性において、Amazonに勝るプラットフォームはないです。

- SSD本体
- 説明書
プラスチック製の梱包材にSSD本体がすっぽり収まってます。梱包材の裏側に説明書が挟み込まれていました。
基板コンポーネント

マットブラック塗装のプリント基板に、ペラペラのステッカーみたいなラベルシールが、コンポーネント群を覆い隠すように貼ってあります。
ラベルシールに各国の認証ロゴや規制ロゴが記載されていますが、中国市場向けの製品らしく規制ロゴの数が控えめです。

反対側にHuaweiロゴや製品名がデザインされたシールが貼ってあります。
「Warranty Void if Removed」、ラベルシールを剥がすと保証が無効になるそうです。

基板の表面(オモテ側)だけにコンポーネントが実装されているシンプルな「片面実装」のNVMe SSDです。
取付スペースが狭いノートパソコンや、PS5(PS5 Pro)の増設ストレージに使いやすいです。

部品を覆い隠しているラベルシールを剥がして、Huawei eKitStor Xtreme 200Eに実装されているコンポーネントを目視で確認します。

- コントローラ:Huawei Custom 1801
81FV 010GC10 RTFQ5M8S9 9215-CN 01 - DRAM:なし
- NAND:YMTC 232層 3D QLC NAND
30C0P32-2
一見しただけだと、よくある中華系SSDに共通のプラットフォームに見えます。しかし、SSDコントローラと周辺回路が明らかにオリジナル設計です。
順番に各コンポーネントの中身を確認します。

横幅1.0 mm x 縦幅1.3 mmもある大型SSDコントローラを搭載します。
HiSiliconが開発した「Huawei Custom 1801」コントローラです。
残念ながら、名前以外の技術的な情報はまったく公開されておらず、対応チャネル数やインターフェイス速度。SoCアーキテクチャも不明。
パッケージサイズ(寸法)から、少なくともMaxioTech「MAP1602A」に該当しない、とだけ分かります。
念のため、ロシア製の部品検査ソフト「Flash ID」を使って総当たりでコントローラに参照を掛けましたが、何も引っ掛からないです。
InnoGrit、Silicon Motion、JMicron(MaxioTech)、TeneFaなどなど。主要なSSDコントローラがまったくヒットしません。まさに謎のSSDコントローラです。

電源管理コントローラ(PMIC)は不明です。刻印「LYW6206」とだけ記載があるのみ。

DRAMは搭載しません。
メインメモリのごく一部をDRAMキャッシュの代わりに使う「HMB(ホストメモリバッファ)」方式のSSDです。
DRAMが無いと書き込み性能が不利になる傾向がある一方、読み込みワークロードで有利になる傾向もあり、一概にDRAMが無いから悪いとも言い切れないので注意。


NANDメモリはおそらく「YMTC製 232層 3D QLC NAND(Xtacking 3.0)」を採用。
2つのウェハを重ね合わせて多層化を可能にする「Xtacking 3.0」技術で製造され、200層超えのNANDメモリで最高の記録密度(19.7 Gbit/mm²)を実現します。
QLC NANDとしてトップクラスの性能特性を誇りますが、所詮QLC NANDです。SSDコントローラ側でうまく制御しなければ、素人でも性能の悪さに気づきます。

1 TB:1024 Gb x 4 x 2 = 8192 Gb(1024 GB)
NANDメモリの構成をチェックします。
Huawei eKitStor Xtreme 200E(容量1 TB)では、記憶密度が1024 Gb(= 128 GB)のチップを4枚重ねたNANDメモリを、全部で2個実装して合計8192 Gb(= 1024 GB)の容量に仕上げます。

NANDメモリを含めた厚みが1.94 mmほど、プリント基板の厚みが0.84 mmで、NANDメモリ本体の厚みが1.10 mmです。
今まで確認されてきたYMTC製 232層 NANDメモリとおおむね同じ厚みを確認できます。

Huawei eKitStor Xtreme 200Eの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介

テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
---|---|---|
![]() | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
![]() | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
![]() | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
![]() | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
![]() | RTX 4060 Ti | |
![]() | Huawei eKitStor Xtreme 200E 1TB | |
![]() | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
![]() | 1000 W「Corsair RM1000x ATX3.1」 | |
![]() | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「TCL 27R83U」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9000シリーズなど最新プラットフォームと比較して、絶対的な性能ですでに型落ち気味ですが、SSDに対する遅延の少なさで依然として最高峰です。

原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
そのほか、「BitLocker」と呼ばれるWindows環境で使えるハードウェア暗号化機能も無効化済みです。BitLockerを有効化すると、SSDのランダムアクセス性能が最大50%も下がります。
正確なベンチマークを取るならBitLockerを必ず無効化しましょう。

SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量

- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 2.0
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「Huawei eKitStor Xtreme 200E」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。「PCIe 4.0 x4」で接続されています。
一般用途であまりメリットがないですが、対応規格が最新版のNVM Express 2.0です。

フォーマット時の初期容量は「953 GB」でした。
一般的に、搭載されたNANDメモリのうち約2.3%を予備領域に割り当てますが、Huawei eKitStor Xtreme 200Eでは予備領域に使わずそのままユーザー領域として開放されています。
実際に使える空き容量が約24 GB多いです。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
---|---|
![]() | ![]() |
テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
![]() | ![]() |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込みが約7000 MB/sをさっくり超え、シーケンシャル書き込みは約6300 MB/s前後です。
ほぼメーカー公称値に近い性能を出せています。
テストサイズを64 GiBに変更して性能の変化をチェックすると、シーケンシャル性能はおおむね一貫した結果になり、ランダムアクセス性能(RND4K Q1T1)が大きく下がります。
DRAMレス(HMB:ホストメモリバッファ)方式のSSDでよく見られる典型的な性能特性であって、実際の利用シーンで問題や不具合は確認できないです。

体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
Huawei eKitStor Xtreme 200Eは約51.0 μsもかかってしまい、過去レビューの平均値を下回る平凡な性能です。
同じ価格帯のライバル機「WD Black SN7100」は、すでに30 μs台の世界に到達しています。

書き込みレイテンシも平凡そのもの。上位勢はPhison系コントローラに独占されています。
ATTO Disk Benchmark

ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
小さいファイル領域(1 KB ~ 128 KB)で速度がまったく伸びない様子です。同じQLC NANDで、MAP1602Aコントローラ搭載のHP FX700を相手に大差を付けられています。
書き込み性能も同様の傾向です。小さいファイル領域で著しく性能が伸びづらく、2 MB以上でようやくピーク速度に達します。

Huawei eKitStor Xtreme 200Eを実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。

Huawei eKitStor Xtreme 200Eのロード時間は「6.40秒」でした。
可も不可もない普通のロード時間です。中華ハイエンドSSD(蝉族)にも追いつかないです。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストされたゲームタイトル3本(Battlefield V / Call of Duty / Overwatch 2)すべてで、Huawei eKitStor Xtreme 200Eが平凡なロード時間で終わります。
HP FX700やHIKSEMI FUTUREなど、中華ハイエンド系に及ばない性能です。
DirectStorageのロード時間を比較

Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
Huawei eKitStor Xtreme 200Eは0.23秒(18.2 GB/s)前後で、Gen4世代(7000 MB/s超)SSDにおおむね横並びの性能です。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → Huawei eKitStor Xtreme 200E)のコピペ時間です。
Zipファイル(256 GB)の書き込みが非常に遅いです。途中でpSLCキャッシュが枯渇してしまい、QLC NAND本来の性能(約90 MB/s)に落とされます。
pSLCキャッシュ内に収まる写真フォルダやゲームフォルダの書き込みは、特に問題なく完了します。

次は読み込み(Huawei eKitStor Xtreme 200E → Optane P5810X)のコピペ時間です。
Zipファイルも写真フォルダも、特に目立った強みのない平凡な記録です。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。

4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約13.5%です。
10%の壁を超えられない平凡グループの仲間入りを果たします。MAP1602Aコントローラ搭載のSSDなら、TLCやQLCを問わず10%前後に入ります。

4K動画プレビューのドロップフレーム率は0%で見事に完封します。

ComfyUI:画像生成AIモデルの読み込み

画像生成AIの定番ソフト「ComfyUI」を使って、「.safetensors」形式モデルの読み込みにかかった時間を比較します。
テキストエンコーダーやVAEの読み込み時間は一切含まないです。有志制作のカスタムノード「ComfyUI-Dev-Utils」で、読み込み時間を記録して比較しました。

現時点でもっとも主流なAI生成モデル「SDXL 1.0(約6.46 GB)」の読み込み時間です。
モデルがVRAM容量に入り切るサイズなら、基本的に読み込み時間はシーケンシャル性能に比例します。Huawei eKitStor Xtreme 200Eも他社の7000 MB/s級と同程度の読み込み時間でした。

VRAMに入り切らない巨大生成モデル「HiDream(約31.8 GB)」の読み込み時間です。
VRAMから溢れたデータがメインメモリに移動し、それでも収まりきらず共有メモリにまで波及する複雑なI/O処理が連続的に発生します。
内部処理が複雑化すると、SSDのシーケンシャル性能から結果を予測するのが難しいです。全体を俯瞰して見る限り、シーケンシャル性能とランダム性能どちらも重要そうに見えます。

PCMark 10:SSDの実用性能

PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
Huawei eKitStor Xtreme 200Eのストレージスコア(空き容量10%時)は「1207点」です。空き容量100%なら2650点です。
空き容量による性能低下は約55%に膨れ上がります。つまり、空き容量が減っただけで性能が半減しました。

PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
Adobe評価とOffice評価で約50%前後の大きな下落で、ファイルコピー評価は約75%(4分の3)もの大幅な下落です。
QLC NANDはpSLCキャッシュで性能を補う設計ですが、キャッシュを作る資源となる空き容量が減ってしまえば、ロクに性能を維持できない状況に陥ります。
読み込みがほとんどを占める、ゲームロード評価だけ下落幅が小さいです。やはりQLC NANDはゲーム倉庫が適任です。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
テスト開始から4000 MB/s前後のスピードに達し、その後260 GB書き込んだあたりでpSLCキャッシュが切れてQLC NANDとの混合モードに移行し、平均96 MB/sへ鈍化します。

キャッシュ構造 | 平均書込速度 (Average) |
---|---|
1段階 pSLCキャッシュ | 3838 MB/s |
2段階 pSLC + TLC | 251 MB/s |
3段階 TLCネイティブ | 96 MB/s |
ブロックファイルを約900 GB書き込んで、キャッシュ構造をさらに深堀りします。
pSLCキャッシュによる平均3840 MB/s近い爆速モードから始まり、約180 GBほど書き込んだあたりで混合モード(pSLC + QLC)に移行します。
混合モードはわずか20 GB程度しか持続せず、そのままQLCネイティブモードへ移行してしまい、平均96 MB/sの亀のような遅さでテストを終えました。

(空き容量:100%時)
容量1 TBなら一度に約100~250 GB前後までpSLCキャッシュを展開できますが、空き容量が100%でも挙動がイマイチ安定せず、30 MB/sまで落ちるシーンも。
pSLCキャッシュの再展開はスピーディーでも、短時間で全回復はどうやら無理な雰囲気です。
明示的にTRIM/GCコマンドを送ると即座にpSLCキャッシュが復活するものの、やはり全回復に至らないです。

(空き容量:10%時)
空き容量10%はさらに悲惨です。約10~25 GBしかpSLCキャッシュを展開できず、すぐにQLC NAND本来の遅さが顕在化します。


時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
Huawei eKitStor Xtreme 200E 1TBは15分で約345 GBを書き込みます。Crucial P3 Plusとほぼ同じ水準で、TLC NANDモデルの半分以下です。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度

- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度3:NANDメモリの温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つです。3つとも独立した温度を表示します。

(容量1 TBモデル)
ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
テスト開始から急速に温度が上昇し続け、最終的に95℃まで上昇します。サーマルスロットリングらしい症状はまったく出ないです。
サーマルスロットリングに達するよりも先に、pSLCキャッシュが枯渇してロクに性能を出せないからです。
サーモグラフィーで表面温度を確認

テスト開始から約8~9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使ってSSDの表面温度を撮影します。
- NANDメモリ(左):57 ~ 58℃
- NANDメモリ(中央):62 ~ 63℃
- SSDコントローラ(右):94 ~ 95℃
SSDコントローラの表面温度は、HWiNFOが表示するセンサー読み温度とほぼ一致します。
表面温度は95℃前後からまったく伸びなくなり、わずかにサーマルスロットリングを発動している様子です。
なお、サーマルスロットリングが性能に与える悪影響はまったく見られません。
ソフト読みと表面温度どちらも95℃に達する頃合いなら、すっかりpSLCキャッシュが切れていて、そもそもマトモな性能を出せない状況です。
別売りのM.2ヒートシンクは不要です。マザーボード側の付属ヒートシンクがあれば十分、またはケースファンからゆるく風が当たっていれば余裕で冷やせます。

まとめ:巨大企業HuaweiでもSSDの内製は難しい

(ZhiTai OEMにHuaweiシール貼ったほうがマシ)
「Huawei eKitStor Xtreme 200E」のデメリットと弱点
- QLC NAND採用(記載なし)
- DRAMキャッシュなし
- 平凡なランダムアクセス性能
- 素の書き込み性能が極めて遅い
- 高負荷時の温度がやや高い
(高負荷が続かないから実際は低温) - 空き容量による性能変化が大きい
- pSLCキャッシュが全回復しづらい
- 価格設定がやや高い
「Huawei eKitStor Xtreme 200E」のメリットと強み
- 7000 MB/s超のシーケンシャル性能
- ゲームロード時間はそこそこ
- 十分な耐久性(400 TBW)
- 片面実装で扱いやすい
- 世にも珍しい「Huawei」製SSD
- 5年保証
以前レビューした「HP FX700(QLC NAND搭載の蝉族)」と比較して、「Huawei eKitStor Xtreme 200E」は精彩に欠ける微妙な性能のSSDです。
基本的に、QLC NANDを快適に動かすには、広大かつ迅速なpSLCキャッシュ制御が欠かせません。
MaxioTechが開発したMAP1602Aコントローラなら、たとえQLC NANDでもそう簡単にはQLCと見抜けないレベルまで、性能の悪さを巧みに隠蔽します。
一方で、Huawei製オリジナルコントローラは隠蔽が下手です。pSLCキャッシュが復活したかと思えば、割とすぐに切れてしまい・・・平均90 MB/s台のお見舞いです。
価格が安いならまだ許容できますが、Huaweiは謎に強気な価格設定です。
同じ価格帯にもっと高性能でコスパも優れたSSDがいくらでもあり、あえてHuaweiを選ぶ合理的なメリットをまったく見いだせません。

筆者のように、好奇心でSSDを買う一部のマニアにしか相手にされないでしょう。
以上「Huawei eKitStor Xtreme 200Eレビュー:あのファーウェイが作ったSSDが駄作」でした。

「Huawei eKitStor Xtreme 200E」を入手する
レビュー時点の価格は1 TBモデルが約1.0万円です。
「Huawei eKitStor Xtreme 200E」の代替案
ほぼ同じ価格で買える魅力的な代替案が「Crucial P3 Plus」です。
容量1 TBに限りTLC NAND版が流通していて、うまくTLC版を引ければ凄くコストパフォーマンスが高いです。
少し値段が上がってしまいますが、まず間違いない定番モデルが「WD Black SN7100」です。
ランダムアクセス、ゲームロード、キャッシュ制御。さらに省電力性まで。どこを取ってもバランスがいい最高のオールラウンダーモデル。
コスパ良く高性能な大容量モデルなら、典型的な蝉族に分類される「Biwin NV7400(4TB)」がおすすめ。
現行Gen4ハイエンドに匹敵する性能を手頃な価格で買えます。
おすすめなSSDを解説
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SSDコントローラの大きさの単位がミリメートル(mm)になっていますが、センチメートル(cm)の誤記のような気がします。
Huaweiって時点で買う価値があるものが出てくると思わないけど世間的にはそうじゃないのか