基本プレイ無料なのに、なぜか数十万円単位でお金が飛んでいくらしい「VRChat」、その理由のひとつがPCスペックです。
- VRChatはとにかくVRAM容量が必要
- VRAM多くて低価格なRadeonがおすすめ
- Radeonはトラブルが面倒だからGeForceで
・・・などなど、PCスペックの中でもグラフィックボードの重要性が高いように見えますが、肝心のデータがまったく示されていません。
というわけで20枚のグラフィックボードを実際に用意して、VRChatに最適なPCスペックを徹底的に検証します。
(公開:2023/9/19 | 更新:2023/9/20)
VRChatの必要動作スペック
VRChatの公式推奨スペックは以下の通りです(https://help.vrchat.com/hc/en-us/articles/1500002378722-System-Requirementsより引用)。
- CPU:Core i5(4コア) / Ryzen 5(6コア)以上
- メモリ:8 GB以上
- グラボ:GTX 1060 / RX 580以上
- ストレージ:21.5 GB以上の空き容量
VRChatのヘルプデスクが2023年8月に更新した推奨スペックですが、ウワサに聞いているよりも軽い要求スペックに見えます。
CPUやメモリの要求度が低く、代わりにグラフィックボードの要求度がやや高いです。といってもGTX 1060やRX 580は2023年時点でローエンドグラボに分類されます。
しかし、上記のヘルプデスクが示したスペックはあくまでも動作をサポートできる最低限度のスペックとのこと。
最高画質で4K解像度や、片目あたり4K解像度(実質4Kが2枚分)のヘッドマウントディスプレイを使った場合を想定したスペックではないため、鵜呑みにすると危険な情報です。
結局、実際にグラフィックボードを用意して調べるしかなさそうです。
VRChatの推奨スペックを調査
どれくらいで推奨スペック?
調査の前に、VRChatにおける推奨スペックの基準を決めておきます。基準を決めるヒントは2つあります。
- VRの性質上、フレームレートが高いほどVR酔いしづらい
- 2023年時点、90 Hz以上に対応するHMDが定番
VRは没入感が非常に高いため、フレームレートの低下やカクツキを体感しやすいです。低いフレームレートは車酔いのように気持ち悪くなる「VR酔い」の原因にもなります。
HMD | 解像度 | リフレッシュレート |
---|---|---|
Valve Index | 2880 x 1600 (片目1440 x 1600) | 最大144 Hz |
Oculus Rift S | 2560 x 1440 (片目1280 x 1440) | 最大80 Hz |
HTC Vive Pro | 2880 x 1600 (片目1440 x 1600) | 最大90 Hz |
HTC Vive Pro 2 | 4896 x 2448 (片目2448 x 2448) | 最大90 Hz |
Pimax Vision 8K Plus | 7680 x 2160 (片目3840 x 2160) | 最大110 Hz |
2023年時点でよく使われているHMD(ヘッドマウントディスプレイ)は、少なくとも80~90 Hz以上のリフレッシュレートに対応。Valve Indexに至っては最大144 Hzに対応します。
- 平均144 fps前後:現状もっとも理想的なVR性能
- 平均90 fps以上:多くのHMDで上限フレームレート
- 60 fps以上:「快適」と感じる人は少ないでしょう
- 60 fps以下:ガタガタな動作でVR酔いの原因
VRChatの理想的なスペックは平均144 fps前後ですが、高解像度になるほど維持しづらいので平均90 fps以上も推奨スペックとして扱います。
テスト方法と検証スペックは?
テスト環境 「ちもろぐ専用ベンチ機(2023)」 | |
---|---|
スペック | パーツの詳細 |
CPU | Core i9 13900K |
マザーボード | ASUS TUF GAMING Z690-PLUS WIFI D4 |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用モデル「Elite Plus UD-D4 3200」 |
グラボ | 全部で20枚 |
SSD | NVMe 1TB使用モデル「Samsung 970 EVO Plus」 |
OS | Windows 11 Pro(22H2) |
ドライバ | NVIDIA 536.67 Radeon 23.9.1 Intel 31.0.101.4824 |
今回のVRChatベンチマーク検証では、ちもろぐ専用ベンチ機を使います。基本スペックは以上の通り。
CPUはゲーミング性能がトップクラスに高い「Core i9 13900K(24コア)」を使い、メモリはBTOパソコンで標準的な「DDR4-3200」を32 GB(16 GBを2枚)です。
VRChat本体のインストール先はもちろんNVMe SSDです。
検証用のグラボはRTX 4090やRTX 3090などハイエンドモデルはもちろん、Radeon RX 7600やIntel Arc A770など知名度の低いマイナーなグラボも取り揃えています。
検証で使用されたグラボは全部で20枚です。グラボ別に平均フレームレートを調べる総当り戦で、VRChatの推奨スペックにふさわしいグラフィックボードを探します。
テストマップ:Yayoi Forest House
(https://vrchat.com/home/world/wrld_1fd302d5-53a6-4405-8d1f-208419575236)
複数のグラフィックボードを性能比較する場合、テスト条件を揃える必要があります。このテスト条件を揃える作業がVRChatでは事実上、不可能に近く、ベンチマークデータが出てこない原因になっていました。
筆者が当初考えた手法は、VRAMへの負荷が1 GB程度のサブアカウントを24人用意して、Yayoi Forest Houseにサブアカウントを配置して性能比較をする方法です。
- サブアカウント8人で8 GBの負荷
- サブアカウント16人で16 GBの負荷
- サブアカウント24人で24 GBの負荷
- ↑のようにVRAMへの負荷をコントロールしようと計画
しかし、VRChatで任意のアバターを着せるにはレベルアップが必要で、加えてレベルアップが非常に面倒くさい作業だと判明しすぐに断念。
いろいろ考えて最終的に今回のベンチマークではVRAMに容量2 GBのブロックデータを配置し、意図的に使えるVRAM容量を制限する手法で対処します。
- ブロックデータを1個で2 GBカット
- ブロックデータを4個で8 GBカット
- ブロックデータを8個で16 GBカット
- ブロックデータを12個で24 GBカット
- ↑これでVRAM使用量をコントロール可能に
シミュレーション的な手法ですが、VRChatのデータがVRAMから溢れると平均フレームレートの下落やスタッター(カクツキ)の頻発を再現できるなど、古典的ながら意外と機能するやり方です。
テストに使用するグラフィック設定は「Full x8」プリセットです。グラフィックボードに最大級の負荷がかかるため、性能比較に使いやすいです。
レンダリング解像度に影響するスーパーサンプリング倍率や、FOV周りの設定は基本的に「等倍」とします※。
※VRChatユーザーに聞いた限り、SteamVR SSやFOV周りの設定次第で要求スペックが青天井になってしまい、RTX 4090ですら性能不足に陥るようです。
テストマップ「Yayoi Forest House」側の設定は以上の通り。鏡の反射再現度をオフのまま、Bloomのみチェックを入れています。
VRChatの推奨グラフィックボード
【片目4K解像度】VRAM使用量ごとの結果
片目あたり3840 x 2160(合計7680 x 2160※)、VRAM使用量5.3 GBでベンチマークした結果です。
平均60 fps以上を維持できるグラフィックボードは「RTX 4090」「RX 7900 XTX」「RTX 3090」の3つだけで、RTX 4080以下は60 fpsすら維持できません。
※およそ1659万画素で、Pimax 8K Plus(ネイティブ100%)、Valve Index(SteamVR SS:360%)に相当する画素数です。
次のテストでは、VRAMにブロックデータを配置して各グラボがどこまでフレームレートを維持できるか、詳しく見ていきましょう。
VRAM使用量7.3 GB(5.3 + 2.0 GB)でベンチマークした結果です。
テストに使った20枚のグラボすべてがVRAM容量8 GBのため、7.3 GB程度の使用量なら問題なくフレームレートを維持できます。さらにVRAM使用量を増やしましょう。
VRAM使用量9.3 GB(5.3 + 4.0 GB)でベンチマークした結果です。
想定通り、VRAM容量が8 GBのグラボを中心にフレームレートの大幅な下落やスタッター(カクツキ)が見られます。ウワサに聞いていたRTX 3070とRTX 3060 12GBの性能逆転も確認できます。
VRChatにおいて、VRAM容量はおそらく最重要事項です。
VRAM使用量11.3 GB(5.3 + 6.0 GB)でベンチマークした結果です。
VRAM容量が8 GBのグラボは軒並み窒息です。VRAMからデータが溢れすぎて処理効率が大幅に下がり、GPU使用率の低下に伴いフレームレートを出せない状態に陥ります。
VRAM容量8 GBのRTX 4060 Tiで、不特定多数のプレイヤーがログインしている「Prismic’s Avatar Search」を訪れると、すぐにVRAMを使い切って物理メモリを使い始めます。
VRAM側で約7.8 GB、物理メモリ側で約13.7 GB、合わせて約21.5 GBもの使用量です。12 GBどころか雑に20 GBもサラッと浪費する恐ろしく最適化不足なゲーム、それがVRChatです。
ただし、「Prismic’s Avatar Search」はマップ自体の負荷が軽いせいか、乱高下が激しいものの平均30 fps程度は出ています。
VRAM使用量13.3 GB(5.3 + 8.0 GB)でベンチマークした結果です。
VRAM容量が12 GBのグラボで性能低下が見られます。ゲーマーから大不評(筆者も渋い評価)なRTX 4060 Ti 16GBがなんとか生き残っているあたり、VRChatはやはりVRAMゲーだと実感します。
VRAM容量に支えられて、Intel Arc A770もしぶとく性能を維持して上位に残っています。
VRAM使用量17.3 GB(5.3 + 12.0 GB)でベンチマークした結果です。
VRAM容量12 GB以下のグラボが競争から脱落します。12 GB組で唯一RTX 4070 Tiがまだ生き残っていますが、フレームレートの乱高下があり、安定性に欠ける動作状況でした。
16 GB組ではRX 6800 XTが意外にも高性能を発揮します。
VRAM使用量21.3 GB(5.3 + 16.0 GB)でベンチマークした結果です。
ほとんどのグラフィックボードで不安定なフレームレート、スタッター(カクツキ)の頻発に陥ります。16 GB組でここまで生き残った「RTX 4080」「RX 6800 XT」もフレームレートの下落が見られます。
当たり前ですが、VRAMを20 GB以上使うシーンではVRAM容量20 GB以上のグラボが有利です。
VRAM使用量25.3 GB(5.3 + 20.0 GB)でベンチマークした結果です。
当然ながらVRAM容量24 GBの「RTX 4090」「RX 7900 XTX」「RTX 3090」だけが性能を維持でき、VRAM容量16 GB未満のグラボは軒並み競争から追い出されました。
なお、上記の状態のままVRAM容量が16 GB以下のグラボで「Prismic’s Avatar Search(20~30人)」や「Prison Escape !(25~32人)」を訪れると、案外動いたりします。
フレームレートはやや乱高下しがちで、新しいユーザーがログインした瞬間に強烈なスタッターが発生するなど、かなり不安定な挙動ですがなんとか動く場合が多かったです。
Windows 10 / 11環境の場合、VRAMが不足したら物理メモリと仮想メモリ(= 初期設定ならメインストレージ)を駆使してアプリケーションをなんとか動作させようと努力する仕様です。
もちろん、VRAMが十分に足りている環境と比較すれば性能差は圧倒的なので、基本的にPublicワールドで大人数と遊ぶ前提ならVRAM容量はあればあるほど良いといえるでしょう。
今回のベンチマークグラフに2つの数値を記載しています。
- 平均フレームレート
- 最低フレームレート(下位1%の平均値)
平均フレームレートはそのままの意味で、データの中身を問わず単に平均化しただけです。
最低フレームレートの方は「全データの内、下から数えて1%の部分を平均化」した数値です。つまり、データの中身に含まれる悪い部分を抽出した数値と考えて差し支えありません。
- 平均fpsと最低fpsの差が小さい:安定していてスムーズな動作
- 平均fpsと最低fpsの差が大きい:バラツキが大きくカクカクとした動作
平均フレームレートと最低フレームレート、2つの数値があれば動作が安定しているかどうかが判断できます。
フルHD(1920×1080)の場合
平均fps最低fps(1%)
フルHD(1920×1080)のベンチマーク結果です。
片目あたり4Kと比較して1割ちょっとの負荷しかかからないため、ミドルクラスのグラフィックボードで十分快適に動作します。
定番の「RTX 3060 12GB」や「RTX 3060 Ti」で問題なし。
WQHD(2560×1440)の場合
平均fps最低fps(1%)
フルHDより約1.7~1.8倍も負荷が重たくなるWQHD(2560×1440)だと、安定して平均90 fps以上を出せるグラボが減ってきます。
画質を妥協するなら引き続き「RTX 3060 12GB」で大丈夫ですが、最高設定であれば「RTX 3060 Ti」以上が必要です。
4K(3840×2160)の場合
平均fps最低fps(1%)
4K解像度(3840×2160)のベンチマーク結果です。Valve Indexをスーパーサンプリング倍率180%で動作させた場合に近い負荷がかかります。
平均90 fps前後を出すには「RTX 4070 Ti」「RX 7800 XT(RX 6800 XTの後継モデル)」など、現行世代のハイエンドグラボが必要です。
VRChatの推奨グラボまとめ
解像度 | 少人数を想定 (5~10人程度) | 大人数を想定 (20人以上) |
---|---|---|
片目あたり4K 7680 x 2160 | RTX 4080 または RTX 4070 Ti | RTX 4090 または RX 7900 XTX |
両目で4K 3840 x 2160 | RTX 4070 Ti または RTX 4070 | RTX 4080 または RX 7800 XT |
両目で4K(設定を妥協) 3840 x 2160 | RTX 3060 12GB または RX 7700 XT | RTX 4060 Ti 16GB または RX 7800 XT |
VRChat グラボ別フレームレート表 | ||||
---|---|---|---|---|
グラボ | フルHD 1920 x 1080 | WQHD 2560 x 1440 | 4K 3840 x 2160 | 片目4K(VRAM:12GB) 7680 x 2160 |
RTX 4090 | 330.7 fps | 315.4 fps | 161.2 fps | 72.3 fps |
RX 7900 XTX | 328.3 fps | 237.6 fps | 117.0 fps | 62.1 fps |
RTX 4080 | 312.9 fps | 219.8 fps | 108.4 fps | 50.8 fps |
RTX 3090 | 231.4 fps | 176.9 fps | 106.9 fps | 61.1 fps |
RTX 4070 Ti | 247.4 fps | 168.0 fps | 87.0 fps | 43.8 fps |
RX 6800 XT | 222.9 fps | 164.3 fps | 88.2 fps | 49.4 fps |
RTX 3080 | 214.0 fps | 161.6 fps | 94.2 fps | 34.2 fps |
RTX 4070 | 208.8 fps | 141.2 fps | 74.9 fps | 36.9 fps |
RTX 3070 Ti | 183.4 fps | 136.7 fps | 79.7 fps | < 10.0 fps |
RTX 3070 | 159.7 fps | 118.8 fps | 69.0 fps | < 10.0 fps |
RX 6700 XT | 155.0 fps | 111.0 fps | 59.2 fps | 32.3 fps |
RTX 4060 Ti 16GB | 143.8 fps | 98.4 fps | 51.1 fps | 26.2 fps |
RTX 3060 Ti | 140.3 fps | 103.1 fps | 60.0 fps | < 10.0 fps |
RTX 4060 Ti | 144.0 fps | 98.6 fps | 51.6 fps | < 10.0 fps |
Arc A770 16GB | 120.9 fps | 89.5 fps | 51.4 fps | 29.8 fps |
RTX 4060 | 131.5 fps | 89.6 fps | 47.9 fps | < 10.0 fps |
RTX 3060 12GB | 108.4 fps | 78.6 fps | 45.5 fps | 25.1 fps |
RX 6600 XT | 114.7 fps | 79.1 fps | 43.0 fps | < 10.0 fps |
RX 7600 | 110.9 fps | 78.8 fps | 42.9 fps | < 10.0 fps |
RX 6600 | 84.6 fps | 59.8 fps | 34.6 fps | < 10.0 fps |
VRChatにおすすめできるグラフィックボードを表にまとめました。単純な性能だけでなく、VRAM容量も足切りラインに使っているため、他のゲームとは違った傾向です。
少人数を想定するならVRAM容量12 GB以上、大人数ならVRAM容量16 GB以上欲しいです。
VRAM容量が決まったら、使う予定のヘッドマウントディスプレイ(解像度)やグラフィック品質に合わせて、予算内で買える一番良いグラフィックボードを選びます。
VRChatに必要なCPUは?
VRChat経験者の集合知を集めた結果、VRChatに適したCPUの条件は以下の通り。
- CPU内蔵キャッシュ容量が多い
- シングルスレッド性能が高い
- ある程度マルチスレッド性能も必要
CPUのスペック表に「L2キャッシュ」「L3キャッシュ」などと記載されている部分が、CPUの内蔵キャッシュ容量です。基本的に、世代の新しいCPUほど内蔵キャッシュ容量が増えています。
シングルスレッド性能は1コアあたりの性能で、基本的に新しい世代のCPUほど高いです。
マルチスレッド性能はCPUに入っているすべてのコアを同時に使った場合の性能で、コア数が多いCPUほど有利ですが、同じグレード同士だと新世代ほど高性能になる傾向です。
つまり、できる限り新しい世代 & コア数がある程度多い(6コア以上の)CPUが、VRChatに適したCPUといえそうです。
4K(3840×2160)の場合
4K解像度(3840×2160)、ワールド「Yayoi Forest House(ソロ)」で性能差を検証しました。
グラフィックボードに100%の負荷がかかる環境なら、CPUの性能差はほとんど出ないです。4コア8スレッドのCore i3 12100ですら、RTX 4090の性能を引き出しています。
片目で4K(7680×2160)の場合
片目あたり4K解像度(7680×2160)も、先と同じくグラフィックボードだけに負荷がかかる理想的な条件なので、CPUによる性能差がまったく生じないです。
では、理想的な条件が崩れると・・・どうなるのか?Publicワールドに出かけてみましょう。
不特定多数のプレイヤー28~30人が同時にログインしている「Prismic’s Avatar Search」で検証した結果、Core i9 13900KとCore i3 12100で約17%の性能差を確認できます。
一方で、Core i5 13600KとCore i5 12400Fが逆転していたり、CPUの性能差と合わない部分もあります。
Publicワールドでは検証するその時その時で、誰がいて何をしているのかが全く違います。比較する条件が揃わないため、CPUの性能差よりも条件の違いが原因で逆転する場合が多いです。
不特定多数のプレイヤー14~16人が同時にログインしている「Japan Shrime」も、似たような結果になりました。
性能差があるように見えますが、残念ながらテスト時の条件がそれぞれまったく違うため、そもそも比較が成立していません。
4コア8スレッドのCore i3 12100は体感でスタッター(カクツキ)が多い気がするものの、CPUが原因だと断定できないです。
VRChatに必要なメモリ容量
VRChatはメモリの使用量がかなり多いゲームです。
プライベートマップに1人でいるだけならゲーム単体で2.5 GB前後しか使用しませんが、大人数インスタンスに行くとVRAM使用量が一気に増え、VRAMから溢れたデータがメモリに入り込みます。
たとえばVRAM容量が8 GBのグラフィックボードに対して、VRChatから約20 GBのVRAMを要求されると、不足する12 GB分がメモリに押し付けられます。
グラフィックボードのVRAM容量次第で、必要なメモリ容量が大きく変わるゲームです。容量16 GBだと少々心もとないので、最低でも32 GB以上のメモリを推奨したいです。
VRChatの推奨スペックまとめ
グラボは「RTX 3060」「RTX 4070」でOK
解像度 | 少人数を想定 (5~10人程度) | 大人数を想定 (20人以上) |
---|---|---|
片目あたり4K 7680 x 2160 | RTX 4080 または RTX 4070 Ti | RTX 4090 または RX 7900 XTX |
両目で4K 3840 x 2160 | RTX 4070 Ti または RTX 4070 | RTX 4080 または RX 7800 XT |
両目で4K(設定を妥協) 3840 x 2160 | RTX 3060 12GB または RX 7700 XT | RTX 4060 Ti 16GB または RX 7800 XT |
デスクトップモードで遊ぶ予定の方は「RTX 3060 12GB」で十分です。グラフィック設定を妥協できるなら、Valve Indexの150~180%スケーリングで遊べる余力もあります。
Pimax 8K Plus(片目あたり4K)や、Valve Indexで300%以上のスケーリング倍率(片目あたり約4K)を想定する方は「RTX 4080」や「RTX 4090」が必要です。
片目あたり4K解像度でグラフィック設定を妥協して構わないなら、ワンランク下げて「RTX 4070 Ti」や「RX 7800 XT」なども候補になります。
今回のベンチマークデータをよく見ると、Radeon RX 6000~RX 7000シリーズの健闘ぶりに驚きます。
同じ価格帯のGeForceより、VRAM容量が多く、VRAMの物理帯域幅が多いのが勝因です。RadeonはVRChat用にコストパフォーマンスが高いグラフィックボードです。
しかし、VRChat歴5年の「桜乃こはく」さんいわく・・・
特定のシェーダーでエラーが発生したり、「MeganeX」などの特定のVRヘッドセットが使えない等の問題が存在するため、VRChatとの親和性が非常に乏しいのが現状です。
パソコンに関して高い知識のある方であればいくつか改善策もあるようですが、個人的には専門的な設定が不要でトラブルも少ない『NVIDIA』のグラフィックスボードを選ぶことを強くおすすめします。
残念ながらRadeonはVRChatとの相性が悪いと言われています。いくつか解決策もあるそうですが、PCに詳しくない(= VRChatが目的でパソコン本体に興味がない)ユーザーにとって、魅力的とは言えない状況とのこと。
トラブルシューティングに自信ある方はRadeonに挑戦してみてはどうでしょうか。参考までに、筆者が今回行ったベンチマーク作業中にRadeon由来のトラブルを一切確認できませんでした。
CPUは最新世代「8コア以上」を推奨
解像度 | 少人数を想定 (5~10人程度) | 大人数を想定 (20人以上) |
---|---|---|
片目あたり4K 7680 x 2160 | Core i5 13400~13600K または Ryzen 7 7700X | Core i7 13700 または Ryzen 7 7800X3D |
両目で4K 3840 x 2160 | Core i5 13400~13600K または Ryzen 7 7700X | Core i7 13700 または Ryzen 7 7800X3D |
両目で4K(設定を妥協) 3840 x 2160 | Core i5 12400~13400 または Ryzen 7 5700X | Core i5 12400~13400 または Ryzen 7 5800X3D |
予算が限られている場合は「Core i5 13400(10コア)」や「Ryzen 7 5700X(8コア)」で妥協し、浮いた予算をグラフィックボードに充てるほうが効率よくフレームレートを稼げます。
日常的に大人数インスタンス(20人以上)を想定する場合は、「Core i7 13700(16コア)」や「Ryzen 7 7800X3D(8コア + 96 MBキャッシュ)」が無難です。
AMD Ryzen X3Dシリーズは、CPU内蔵キャッシュを増量したゲーム特化型CPUです。
- Ryzen 7 7800X3D(96 MBキャッシュ)
- Ryzen 7 5800X3D(96 MBキャッシュ)
CPUボトルネックが大きいシミュレーション系ゲームで大きな効果を示す傾向があり、ゲーム次第でCore i9 13900Kを上回るシーンも確認されています。
VRChatでは測定条件を揃えたベンチマークデータがまだ無いものの、多くのVRChatユーザーから「無印版よりX3D版の方がフレームレートが伸びやすい」と評判です。
ただし、ゲーム以外の用途でコストパフォーマンスが悪化しやすいので注意。VRChatが最優先なのか、バランスを取るかで適切なCPUは変わります。
メモリは「32 GB以上」を推奨
用途と目的 | メモリ容量 |
---|---|
VRChatをプレイ | 最低32 GB |
同時にネット見る | 32 GB欲しい |
ゲーム実況配信 | 48 GB以上 |
プライベートマップは容量16 GBで足りますが、不特定多数のユーザーが同時にいるPublicワールドでメモリの使用量が大きく増加します。
最低でも32 GB以上の容量をおすすめします。
VRChatにおすすめなゲーミングPC
【低予算向け】LEVEL M76M
知る人ぞ知る高コスパゲーミングPC「LEVEL∞」
LEVEL-M76M-134-SAX 2023年9月時点のスペック | |
---|---|
CPU | Ryzen 7 5700X (8コア / 16スレッド) |
CPUクーラー | 空冷式クーラー |
マザーボード | AMD B550チップセット |
メモリ | 16 GB (DDR4-3200 / 2枚組) |
グラフィックボード | RTX 3060 12GB |
SSD | 500 GB(NVMe SSD) |
HDD | – |
電源ユニット | 700 W (80 PLUS Bronze) |
OS | Windows 11 Home |
納期 | 2~7日 |
参考価格 | 141700 円(送料:無料) 最新価格をチェックする |
VRChatの低予算なゲーミングPC選びで迷ったら、「LEVEL∞ M76M」が今おすすめです。
CPUにRyzen 7 5700X(8コア16スレッド)、グラボにRTX 3060 12GB、メモリ容量16 GBを搭載します。
- メモリスロット:空き2本
- M.2 SSD:あと1枚
- 拡張カード:あと2枚
(キャプチャボードやサウンドカードなど) - HDDやSSD:最大6台まで
(ケースの都合でHDDは最大2台まで)
ミニタワーケースを採用するためパーツの拡張性はやや少なめですが、普通のゲーミング用途だと割りと十分な拡張性が揃っています。
空いているメモリスロットが2本あり、メモリの増設がとても簡単。M.2 SSDもあと1枚追加でき、HDDやSATA SSDを合計で6台(HDDはケースの都合で2台)まで増設できます。
(万が一)BTOのメーカー保証を受けるときは、増設したメモリを抜き取っておくだけで大丈夫です。
流行りのツールレス設計 ※クリックで画像拡大 | |
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パソコン工房のPCケースはなるべく道具を使わずに取り外しができる「ツールレス設計」を採用。PC初心者でも直感的にパーツの増設がしやすい親切なデザインです。
↑LEVEL∞を買ってレビューしてみた記事はこちらからどうぞ。
【両目で4Kなら】G-Tune DG
定番のHMD「Valve Index」でプレイ可能
G-Tune DG-I7G70 2023年9月時点のスペック | |
---|---|
CPU | Core i7 13700F (16コア / 24スレッド) |
CPUクーラー | 水冷式240 mmサイズCPUクーラー |
マザーボード | Intel B760チップセット |
メモリ | 32 GB (DDR5-4800 / 2枚組) |
グラフィックボード | RTX 4070 |
SSD | 1 TB (NVMe SSD) |
HDD | – |
無線LAN | Wi-Fi 6E (最大2.4 Gbps) |
電源ユニット | 750 W (80 PLUS Bronze) |
OS | Windows 11 Home |
納期 | 最短4日 |
参考価格 | 259800 円(送料:無料) 最新価格をチェックする |
VRChatをValve Index(両目で4K相当)でプレイするなら「G-Tune DG」がおすすめです。
CPUにCore i7 13700F(16コア24スレッド)、グラフィックボードにRTX 4070、容量32 GB(DDR5-4800)メモリを標準搭載します。容量1 TBのNVMe SSDも入ってます。
PCケースは台湾In Winが設計する、G-Tuneオリジナルケースを採用。剛性がある金属製シャーシです。エアフロー(通気性)に優れたシンプルな内部構造を採用し、冷却性能とメンテナンス性能に優れます。
流行りのツールレス設計 ※クリックで画像拡大 | |
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標準で取り付け済みの防塵フィルター(ホコリ防止フィルター)は指でつまんで取り外しでき、メンテナンスが簡単です。ドライブベイも指で引っ張るスライド式です。
道具をなるべく使わずにパーツの増設・交換ができる、昨今流行りのツールレス設計に仕上がっており、PC初心者でも使い勝手に優れます。
- メモリスロット:空き0本
- M.2 SSD:あと1枚
- 拡張カード:あと2枚
(キャプチャボードやサウンドカードなど) - HDDやSSD:最大4台まで
(ケースの都合でHDDは最大1台まで)
Intel B760チップセットを搭載し、必要最低限のパーツ拡張性を確保します。ゲーム用なら割と間に合う拡張性ですが、メモリスロットに空きが無いのが弱点です。
幸い、G-Tune DGは標準スペックで容量32 GBのメモリを搭載しているため、わざわざ自分でメモリを増設する手間はありません。
他社BTOと差別化ポイント G-Tune DGの特徴 |
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他社の同等スペックモデルと比較すると価格がやや高いですが、値段が高いなりに「他社と差別化したメリット」が付いてきます。
標準で240 mm水冷式CPUクーラー、容量32 GBメモリ、無線LAN(Wi-Fi 6E)を搭載済み。
さらに、3年間のメーカー保証が標準で付いてきます。普通のBTOメーカーなら1年保証がスタンダードで、3年保証は有料オプション扱いです。
【片目で4Kなら】LEVEL R779
高解像度なHMDでVRChatをプレイ可能
LEVEL-R779-L139C-XL1XB 2023年9月時点のスペック | |
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CPU | Core i9 13900KF (24コア / 32スレッド) |
CPUクーラー | 360 mm水冷式クーラー |
マザーボード | Intel Z790チップセット (2.5G LANポート搭載) |
メモリ | 32 GB (DDR5-4800 / 2枚組) |
グラフィックボード | RTX 4090 |
SSD | 2 TB (NVMe SSD) |
HDD | – |
無線LAN | – |
電源ユニット | 1000 W (80 PLUS Platinum) |
OS | Windows 11 Home |
納期 | 最短2日 |
参考価格 | 499800 円(送料:無料) 最新価格をチェックする |
VRChatを片目あたり4K相当、かつ大人数インスタンスでプレイするなら「LEVEL R779(RTX 4090)」を推奨します。
CPUにCore i9 13900KF(24コア32スレッド)と360 mmラジエーター水冷式CPUクーラーを組み合わせ、CPUの性能をできるかぎり引き出します。
グラフィックボードはRTX 4090 24GBを搭載。容量32 GB(DDR5-4800)メモリ、容量2 TBのNVMe SSDも標準で搭載します。
- メモリスロット:空き2本
- M.2 SSD:あと1枚
- 拡張カード:あと3枚
(キャプチャボードやサウンドカードなど) - HDDやSSD:最大4台まで
(ケースの都合でHDDは最大2台まで)
Intel Z790チップセットを搭載し、パーツの拡張性も充実です。一般的なLANポートの2.5倍の性能を持つ「2.5G LAN」も搭載します。
以上「VRChatの推奨スペックを実際に検証してみた【グラボ別ベンチマーク】」について、検証と解説でした。VRChatのPCスペック選びの参考になれば幸いです。
RTX 4000搭載のおすすめゲーミングPC【解説】
RTX 3000搭載のおすすめゲーミングPC【解説】
- 2023/09/19:記事を公開
- 2023/09/20:最低フレームレート(下位1%)を追加(UPDATE !!)
実際にゲーミングPCを使ってみた【レビュー】
実際にベンチマークしてみた【ゲーム別fps】
内容を見て思い浮かんだ事として、ここまでVRAM溢れが当たり前だと、一般的なゲームに比べてメインメモリの速度(帯域)もそれなりに性能に影響してきそうな感じがしますけど、どうなんでしょうね
これ気になりますね
今のところDDR5メモリはDDR4との差が金額ほどはないって言われていますが、スワップ前提のようなVRCに関して言うなら優秀になるのかどうかや、OCの有用性などとても気になります。
メインメモリの帯域を検証するには、やはり、読み書きしないダミーデータではなく、実際に使われるデータで埋めないといけないでしょうね。
まぁ今回の検証も、VRAMの少ない2枚くらいだけでも、検証用他ユーザー4人時とダミーデータ4GB時の比較を示して、手法の妥当性を示すとより説得力が出ると思います。
4080が3080に、4070tiが3070tiに、4070が3070に一部負けてたりするのはVRAM帯域の問題ですかね?
これが噂の最新世代はunity製最適化不足ゲーが苦手ってやつですか
VRchatの検証ありがとうございます!
いかんせんベンチ結果等が本当に少ないゲームなので、こうした記事は大変助かります。
記事内を読んでいて気になった点なのですが、pimax8k plusの内部解像度は5k(片目2.5k)相当で、アプリ経由のアップスケールで8k解像度にしてます
ネイティブで8k(片目4k)を出せるのはpimax8k xの方ですね
解像度別の変化からもVRAM容量で決まるようなほどコア差は関係ないようにも思えますが、差が生じてるのは同じ容量でもVRChatにおいてのVRAMの使い方の上手さに差があるからでしょうか。
素晴らしい比較ありがとうございます。いつものグラボレビューのソロベンチで感じていた違和感が解消できました。
Publuicアバターならランクアップせずに利用できた気がします。少数ですがCC0ラインセンスのものもあるので、記事用スクショにも使えます。
唯一無二の検証、素晴らしいです。
解像度別比較のソロ状態の方はVRAM使用量はどれくらいだったのでしょうか?
素敵な検証でした!
CPU側への負荷は主にユーザーの動きの同期やそのアバターの揺れ物などに影響されると言われています、ここを一人でベンチマークするのは大変かもしれませんね…
よくVRCでの最適なCPUはAMDの5000X3Dと7000X3Dシリーズと言われています、実際使っていてだいぶ軽くなり、フレーム生成時間から見ても好転しました。
どうにか数字で、これを検証できたらいいんですけどね。
CPUやそのメモリというよりグラボで決まるようですね。
非常に大変な検証お疲れ様です。これだけ沢山の種類のグラボによる比較はこれまで無かったので貴重な記事だと思います。
ただ3点、検証方法と結論に疑問があったのでコメントさせて下さい。
まず第一に、「VRAM制限をかけたら総VRAM量の少ないグラボはダメでした」というのは当たり前で、この方法で「VRChatにはVRAMが大事」と結論づけるにはやや恣意的に思えます。つまり実際のプレイではグラフィック処理性能で逆転するかもしれない2種間に対してVRAMが多い側に下駄を履かせているように見えます。
第二に、実際のVRChatでフレームレートが落ちる要因はまずワールドのUdonスクリプト、アバターのIKとPhysboneによるCPU負荷で、次にワールド、アバターのグラフィック処理です。そしてVRAM不足によって起こるのはfps低下ではなく今回の検証でも散見されたfps11現象、つまりfpsの頭打ちです。これらは分けて考える必要があります。なぜなら実際にインスタンスにユーザーが増えたときに増大するのは当然VRAMだけではないからです。
最後に、デスクトップ環境とVR環境の実効フレームレートは大きく異なるため、使用したVR機材か、もしくはデスクトップ環境で検証した旨を書いたほうが良いかと思われます。
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