米国が誇る半導体メモリメーカーの大手Micronが製造する、エントリー向けNVMe SSD「Crucial P3 Plus」を自腹で買ってレビューします。
予想通り、性能はひどいです。ひどいですが、PCIe 4.0対応で一番安いのが唯一の救いです。
(公開:2023/1/19 | 更新:2023/1/19)
Crucial P3 Plusのスペックと仕様
Crucial P3 Plus スペックをざっくりと解説 | |||
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容量 | 1000 GB | 2000 GB | 4000 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 1.3) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | Phison E21T | ||
NAND | Micron 176層 3D QLC NAND | ||
DRAM | なし | ||
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 5000 MB/s | 5000 MB/s | 4800 MB/s |
書込速度(SLC) シーケンシャル | 3600 MB/s | 4200 MB/s | 4100 MB/s |
書込速度(TLC) シーケンシャル | 非公開 | ||
読込速度 4KBランダムアクセス | 680K IOPS | 650K IOPS | |
書込速度 4KBランダムアクセス | 850K IOPS | 900K IOPS | |
消費電力(最大) | 非公開 | ||
消費電力(アイドル) | 非公開 | ||
TBW 書き込み耐性 | 220 TB | 440 TB | 800 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
MSRP | $ 79 | $ 124 | $ 274 |
参考価格 | 9980 円 | 24600 円 | 49200 円 |
GB単価 | 10.0 円 | 12.3 円 | 12.3 円 |
「Crucial P3 Plus」は、米国の半導体メモリメーカーMicronが製造する「QLC NAND」を搭載した、低価格なNVMe SSDです。
(筆者も含め)SSDに詳しいマニアから忌み嫌われる傾向が強いQLC(4-bit MLC)方式のNANDメモリですが、嫌われている最大の理由は性能の割に価格が安くないからです。
TLC NANDと大差ない価格なら、TLCを買えばいいだけ。QLC NANDを搭載するなら、性能が悪い分だけ値段も下げて、ゲーミングストレージとしての価値をメーカーは推すべきです。
上記のSSDオタクがQLC NANDに抱いている思想に比較的応えてくれる製品が、今回の「Crucial P3 Plus」です。
1 TBモデルがほぼ1万円で、PCIe 4.0対応のメーカー純正NVMe SSDとして最安値に近いです。2~4 TBモデルはまだまだ高いものの、MSRPを調べたところ2 TBが124.99ドル、4 TBが274.99ドルで驚くべき安さ。
値下げされた新しい価格が国内価格にも反映されれば、ゲーム用の大容量ストレージで決定版になれるポテンシャルを秘めています。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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Crucial P3 Plus | 110 TBW | 220 TBW | 440 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (FireCuda 530:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
CFD PG4VNZ | 350 TBW | 700 TBW | 1400 TBW |
Plextor M10PGN | 320 TBW | 640 TBW | 1280 TBW |
Crucial P5 Plus | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
QLC NANDを使っているため、耐久性能評価(TBW)は非常に低いです。TLC NAND比較で3~5割程度の耐久性です。
1 TBモデルの耐久性は220 TBWをアピール。ゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。
220 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると4400日で、耐久値を使い切るのに約12年もかかる計算に。たしかに他と比較すると決してほめられた数値では無いですが、実用上は意外と間に合っています。
読み出しが圧倒的に多いゲーム倉庫に使う場合だと、220 TBWの耐久性が問題になる可能性はさらに低く見積もれます。
ライバル製品と価格設定の比較
NAND製造メーカーの純正モデルで、価格の近いNVMe SSDとSATA SSDの価格を比較してみた。
2023年1月時点、Crucial P3 Plusの価格は1 TBモデルが約10000円、2 TBモデルで約24600円です。正直なところ、かなり渋いコストパフォーマンスです。
性能と価格比で選ぶなら、Crucial P3 Plusはまず選択肢に入らないですね。
Crucial P3 Plusを開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
今回レビューで使うサンプルはTsukumo通販(販売ページはこちら)より、9980円にて1 TBモデルを自腹で購入しました。
Crucialらしい、紺色ベースのシンプルなパッケージデザイン。表面に株式会社アイティーシーの5年保証シールが貼ってあります。
説明書(保証書)とM.2用の小ねじが同封されています。プラスチック製のケースにSSD本体がすっぽりと収まっています。
基板コンポーネント
マットブラック塗装のプリント基板でハイエンドっぽい雰囲気です。SSDを構成するコンポーネントを覆い隠すように製品ラベルシールが貼られています。
ラベルシールを剥がすと5年間の製品保証が無効となるリスクが高いため、別途M.2ヒートシンクを取り付ける場合はシールを剥がさずにそのまま取り付けましょう。
裏面にコンポーネントはありません。各国の認証ロゴや、交換保証(RMA)申請時に必要となるシリアルナンバー(S/N)が記載されたラベルシールが貼られています。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。
シールを剥がして基板のコンポーネントを目視で確認します(※5年間の製品保証が切れる行為ですので、真似しない方が安全)。
- コントローラ:Phison E21T
PS5021-E21-48 - DRAM:なし
- NAND:Micron 176層 3D QLC NAND
2LC2D NY161
SSDコントローラはPhison社の「PS5021-E21T(Phison E21T)」を搭載。
TSMC 12 nmで製造される、DRAMキャッシュレス向けのPCIe 4.0対応SSDコントローラです。SoCにARM Cortex-R5を採用します。
最大4チャネルのNANDメモリを束ねられ、最大5000 MB/sのスループットを実現します。
NANDメモリはMicronが自社で製造する「176層 3D QLC NAND」です。
Micronの製品サイトで型番「2LC2D NY161」を検索すると、「Micron N48R」と判明します。88層まで積み上げた3D QLC NANDを2段重ねにして合計176層もの積層数を実現。
記憶密度は1 Tb(= 128 GB)で、今回のCrucial P3 Plusでは4枚重ねにしてパッケージ1個あたり4 Tb(= 512 GB)の容量です。少ないチップで大容量が可能で、SSDの低コスト化に大きく貢献します。
記録方式 | TLC | QLC |
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イメージ | ||
書き換え回数 | 600~ | 200~ |
書き込み速度 | 速い | とても遅い |
読み出し速度 | とても速い | 速い |
レイテンシ | やや速い | 遅い |
価格 | 安い | 安い (※TLCと大差ない) |
ただし、Micron N48Rは記録方式がQLC(4-bit MLC)のNANDメモリです。
現在のSSDで主流のTLC(3-bit MLC)方式より、応答時間(レイテンシ)や書き込み性能が非常に遅く、使い方次第で3.5インチHDD未満の性能に落ち込む場合もあります。
SSDコントローラを巧みに使って、QLC方式の悪い性能をうまく隠そうと努力するSSD製品が多いものの、大きなファイルの書き込みなどであっさりと悪い一面が露見する場合がほとんどです。
Crucial P3 Plusの性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Ryzen 9 5950X16コア32スレッド | |
CPUクーラー | NZXT X63280 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | RTX 3070 8GB | |
SSD | Crucial P3 Plus 1TB | |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」 | |
ドライバ | NVIDIA 471.41 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
980 PROのレビュー以降、SSDをテストするベンチマーク機を更新しました。PCIe 4.0に対応するプラットフォーム「Ryzen 5000」と「AMD X570」をベースに、適当なパーツを組み合わせます。
CPUは16コア32スレッドの「Ryzen 9 5950X」です。16コア32スレッドの圧倒的なCPU性能があれば、最大7000 MB/s超のSSDが相手でもボトルネックになる可能性はほぼ皆無です。
マザーボードはASUS製「ROG STRIX X570-E GAMING」を採用。テスト対象のNVMe SSDをCPU直結レーンのM.2スロット、またはPCIeスロットに挿し込んで各ベンチマークを行います。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- マザーボード付属のヒートシンクを装着
- ケースファンを使ってヒートシンクを冷やす
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。5分間の発熱テストのみ、ヒートシンクを外してケースファンも使いません。
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「Crucial P3 Plus」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題なし。
フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
読み込み速度が約5140 MB/sで、書き込み速度は約3600 MB/sを記録。読み書きともにメーカー公称値どおりの性能です。
テストサイズを64 GiBまで引き上げると、1 GiB時より性能がやや悪化します。シーケンシャル書き込み性能は維持するものの、読み込み性能は約4250 MB/sまで低下します。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
Crucial P3 Plusは62.95 μsで、QLC NANDの割には速いです。価格が近いWD Blue SN570やSamsung 980(無印)よりも速く、正直ちょっと意外です。
書き込みレイテンシも問題なし。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、512 B~64 MB(合計21パターン)のテストサイズでスループットを測定し、SSDの性能が安定しているかどうかを視覚的に示してくれるベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
読み込み速度は7000 MB/s前後でピークに達したあと、安定した性能を維持します。キャッシュに収まる範囲なら、シーケンシャル公称値を大幅に超える性能です。
書き込み速度は6000 MB/s前後に達したあと、安定した性能を維持します。キャッシュの範囲内なら、スペック以上の性能を示しており、特に問題ありません。
HD Tune Pro
HD Tune Proは有料のSSDベンチマークソフトです。SSDの容量全域に渡ってテストを実行して、SSDの性能変化(SLCキャッシュの有無や、キャッシュが剥がれた後の性能など)を手軽に調べられます。
HD Tune Proの結果※クリックで画像拡大します | |
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HD Tune Proで注目するのは「書き込み速度の変化」です。
3枚目のファイルベンチマーク(250 GB分)を見ると、250 GBのテストが終わるまで安定して5000 MB/s以上の書き込み性能を維持します。
QLC NANDは書き込み性能が特に遅いはずなのに、なぜメーカー公称値を大幅に超える性能を維持したまま書き込みが可能なのか・・・?
理由は2つあります。1つは、Crucial P3 Plusに搭載されているPhisonコントローラが、HD Tune Proに対して不思議な挙動をする傾向が強いから。いわゆるベンチ詐欺コントローラです。
2つめは、Crucial P3 PlusのSLCキャッシュが非常に巨大で、250 GB程度の書き込みならSLCキャッシュの範囲内で吸収できてしまう可能性です。
というわけで、無料で使える定番SSDベンチマークでSSDの性能を正しく測定するのは非常に難しいです。実戦テストで性能を確かめましょう。
Crucial P3 Plusを実運用で試す
ゲームのロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
Crucial P3 Plusのロード時間は「7.02 秒」で、ハイエンドNVMe SSDに匹敵する性能です。
読み込み性能で不利なはずのQLC NANDでありながら、同価格帯のNVMe SSDをすべて上回るゲームロード時間です。おそらく、WD Black SN770と同じく、SLCキャッシュを巧みに使って本来の性能をうまく偽装しています。
SLCキャッシュの生成に必要な空き容量が足りている分には、TLC NAND並の性能に底上げできるようです。
空き容量が不足するとどうなるかは、後ほどテストするPCMark 10 Full System Drive Benchmarkのゲームロードスコアを確認してください。
ファイルコピーの完了時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量62 GB / 76892個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 6000枚)
- 圧縮データ(容量128 GB / zip形式)
ファイルコピーに使う素材は以上の3つ。ファイルコピーの基準となるストレージは、PCIe 4.0対応かつ書き込み性能が高速なSamsung 980 PRO(1 TB)です。
書き込み(980 PRO → Crucial P3 Plus)速度はシーケンシャル性能に沿った結果です。
ゲームフォルダの書き込みは同価格帯のNVMe SSDと大差ないです。空き容量を活用したSLCキャッシュの生成により、QLC NAND本来のひどい性能を非常にうまく隠蔽します。
写真フォルダとZipファイルの書き込みも非常に高速で、100 GB程度のファイルであればSLCキャッシュで吸収できるようです。
次は読み込み(Crucial P3 Plus → 980 PRO)のコピペ時間です。
ゲームフォルダの読み出しは平凡で、同価格帯のNVMe SSDと少し速い程度。写真フォルダとZipファイルの読み出しはかなり高速で、ハイエンドNVMe SSDに匹敵するほど。
やはり、空き容量に十分な余裕があるかぎり、TLC NANDレベルの性能を発揮します。
Premiere Pro:4K素材プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」で、1秒あたり448 MBの4K動画素材をプレビューします。Premiere Proのプレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
コマ落ちしたフレーム数はPremiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で3回測定して平均値を出し、動画素材の総フレーム数で割り算してドロップフレーム率を計算します。
4Kプレビューのドロップフレーム率は約25%です。
写真フォルダやZipファイルの読み出しが速かったように、大容量な動画素材の読み出しも良好です。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Storage Test」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Storage Testには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を80%埋めた場合(= 空き容量20%)のテストも行いました(※2回:約2時間)。
Crucial P3 Plusのストレージスコアは「711点(空き容量20%時)」です。
空き容量が100%の状態なら、TLC NAND搭載のハイエンドNVMe SSDに匹敵する「2722点」をマークします。しかし、空き容量が少ない状態だと並のSATA SSDにすら劣るスコアにとどまります。
空き容量が少ない状態の平均応答時間は244 μs、実行帯域幅がわずか118 MB/sです。お世辞にも「良い」とはいえない、ひどい性能です。
同じ価格帯の「EXCERIA G2」や「SK Hynix Gold P31」に約3倍近い性能差をつけられています。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
Adobeスコアは過去最低です。SATA SSDのMX500や870 EVOにも大きく劣ります。
ゲームロードスコアも過去最低、ファイルコピースコアはSATA SSDと大差ない過去最低レベル、Officeスコアも同様でSATA SSDと大差ない最悪に近いスコアです。
あらゆる分野で低い位置につけており、同じ価格帯のNVMe SSDに対して完膚なきまでに敗北します。
性能が良いのは空き容量があるうちに限られ、使っているうちに空き容量が減ってしまえば、SATA SSDにすら劣る性能に劣化します。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
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Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
約1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
Crucial P3 Plusと価格が近い代表的なNVMe SSDと比較しました。テストを開始して約1分ほど3700 MB/s前後の性能を維持し、272 GBを超えたあたりで75 MB/s前後まで下がります。
その後も性能が回復する様子がないまま、15分のテストが終わるまで安定して75 MB/s前後のひどい書き込み性能を維持します。
3.5インチのSATA HDDの内周側と同じくらいか、下手するとHDDより劣っている性能です。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
15分間の書き込み量で比較すると、Crucial P3 Plusがワースト1位です。15分たっても331 GBしか書き込めないです。
空き容量が少ない状態だと、書き込みがたった20 MB/s程度しか出ない場合も。SATA HDDを大きく下回る、激安microSDカード並の性能です。
上記のコピーグラフを見てわかる通り、SLCキャッシュの再構築も遅いです。空き容量が180 GBあれば、45 GBのSLCキャッシュを生成できるはずですが、キャッシュの生成がまったく安定しません。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つです。
- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度8:NANDメモリの温度
Cruciai製品としては珍しく、NANDメモリとSSDコントローラそれぞれに温度センサーを搭載します。
SSDコントローラの温度はNANDメモリより高く表示されるため、NANDメモリだけに温度センサーを搭載するのが一般的な対応です。
にもかかわらず今回のCrucialはあえてSSDコントローラにも温度センサーを搭載しています。消費者に対して良心的な姿勢を取っているメーカーと受け取っていいでしょう。
参考までに、NANDメモリとSSDコントローラそれぞれにセンサーを搭載するメーカーは(筆者の知る限り)サムスンとSK Hynixの2社だけでした。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を5分間実行しました。
テスト開始直後に70 MB/s前後に書き込み性能が下がり、3500 MB/s前後に回復したり、70 MB/sに戻ったりを繰り返します。
サーマルスロットリングの影響に見えますが、SLCキャッシュの生成が安定していない症状にも見えます。そもそも70 MB/s程度の遅さでは、サーマルスロットリングを発生させるほどの負荷に届かないです。
次はサーモグラフィーカメラを使って、実際の温度を確認します。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から5分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使って撮影。
- NANDメモリ(右):60 ~ 61℃
- SSDコントローラ:75 ~ 76℃
- NANDメモリ(左):59 ~ 61℃
NANDメモリの表面温度が60℃前後で、SSDコントローラの表面温度は75℃前後です。
HWiNFOに表示される「ドライブ温度」「ドライブ温度8」がNANDメモリ側で、「ドライブ温度2」はSSDコントローラ側の温度だと判断できます。
別売りのM.2ヒートシンクは必要ないです。エアフローを与えない環境で使っても、サーマルスロットリングらしい症状が見られません。
マザーボードにヒートシンクが付属しているなら装着するくらいでOKです。ただし、マザーボード付属のヒートシンクはネジの締めすぎに要注意。締めすぎると基板に圧力がかかりすぎてSSDの故障につながります。
まとめ:容量1 TBで1万円なら「買う価値」なし
「Crucial P3 Plus」のデメリットと弱点
- QLC NANDを採用
- 空き容量が少ないと性能が大きく劣化
- ランダムアクセス速度が遅い
- 耐久性が低い(110 ~ 800 TBW)
- コストパフォーマンスが良くない
- 多段キャッシュを生成できない
※SLCだけでなくMLCやTLCキャッシュもほしい
「Crucial P3 Plus」のメリットと強み
- 最大5000 MB/sのシーケンシャル性能
- 空き容量があれば驚くほど高性能
- SLCキャッシュが大きい(250 GB強)
- 低価格ながらPCIe 4.0対応
※PS5の増設用ストレージにうれしい - 大容量モデルあり(最大4 TB)
- 価格が安い
- 5年保証
Crucial P3 Plusは176層まで積み上げた高級な3D QLC NANDを使ったSSDですが、残念ながら176層まで積層してもQLC NANDの素性の悪さは依然として大きく改善されていません。
空き容量が十分にある状態なら、SLCキャッシュを生成してTLC NAND並の高い性能を発揮できる一方で、空き容量が減ってしまうとmicroSDカード並の劣悪な性能に下がります。
空き容量の利用効率が悪いSLCキャッシュだけでなく、MLCキャッシュやTLCキャッシュなどでキャッシュ構造を「多段」にして、QLC本来の性能をさらに隠蔽できる仕組みが必要です。
残念ながら、QLC NANDはおすすめできる水準から程遠い状況です。ちもろぐの個人的な評価は「B+ランク」で決まり。
GB単価が0.5~0.6円まで値下がったら検討して良いかもしれません。GB単価が1.0円超えなら、同じ価格でもっと魅力的なNVMe SSDがあります。
以上「Crucial P3 Plusレビュー:なんてひどい性能、買う理由が非常に少ない」でした。
おまけ:「PS5」では普通に使えるように見える
Crucial P3 PlusをPS5に増設すると、問題なくPS5用の増設ストレージとして認識されます。測定された読み込み性能は5012 MB/sで、PS5推奨値の5500 MB/sより若干低いです。
Sonyいわく、PS5はHMB(ホストメモリバッファ)方式をサポートしていないため、DRAMキャッシュレスのNVMe SSDだと予想外のパフォーマンス低下があり得るとのこと。
フォーマット後の表示空き容量は1.00 TBでした。平均的なPS5タイトルであれば、10本くらいダウンロードできる余裕です。
PS5内蔵ストレージから、Crucial P3 Plusに約270 GB分のゲームを移動するのにかかった時間は220秒(3分40秒)です。
平均1258 MB/sで移動できており、空き容量に余裕があるとゲームの移動もサクサクと進みますが、空き容量が減ると100 MB/s以下に落ち込む可能性が高いです。
では、PS5内蔵ストレージとCrucial P3 Plusで、PS5ゲームタイトルのゲームロード時間がどれくらい変化するか比較します。
- Horizon Forbidden West
- Forspoken Demo
- Ghost Wire Tokyo
- DEATH STRANDING DIRECTOR’S CUT
- 原神
ロード時間の比較に使ったタイトルは以上の5つです。基本的にボタンを押してから画面が表示されるまでにかかった時間を、測定するロード時間として扱います。
※FS:ファストトラベル / Load:初回ロード
結果は大差なし。Horizon Forbidden WestとDeath Strandingの初回ロードだけ、Crucial P3 Plusの方が約1秒遅いです。
原神もPS5内蔵ストレージとCrucial P3 Plusで、大きな性能差を確認できず。・・・それにしても原神(PS5版)は、PC版より2~5倍もロード時間が速くて驚きます。
モンド → 稲妻のロードが1秒で終わっているため、いったんロードしたエリアをキャッシュ化して呼び出す形で爆速化しているような挙動です。
というわけで、NVMe SSDの評価としては「ひどい」としか言えませんが、PS5用ストレージと割り切って使う分には問題なさそうです。
空き容量が減るとダウンロード速度が遅くなるリスクがあるものの、そもそもPSストアのダウンロードサーバーが遅い※ので実用上の問題にならないと思われます。
※Steamサーバーで実測200 MB/s超えを出せる10G光回線を使っていても、PS5だと有線・無線どちらを使っても30 MB/sしか出ないです。
Crucial P3 Plusの容量4 TBモデルは約4.7万円で、Yahooショッピングの還元込みで実質4.4万円で購入できます(※2023年1月時点)。
PCIe 4.0対応NVMe SSDとしては最安値で、PS5のSSD増設に重宝します。
Crucial P3 Plusを入手する
定番の通販サイトで購入できます。Crucial P3 Plusでもっとも買う価値のある4 TBモデルは、Yahooショッピング(Joshin Web)がおすすめです。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
おすすめなSSDを解説
最近よくcrucialがP2やP3の広告キャンペーンをやってますが、これ見ると売れない理由がよく分かりますね…
OS用に使ってる人もいますけど、やっぱSN570やサムスン980を選びたいなあ
> あらゆる分野で低い位置につけており、同じ価格帯のNVMe SSDに対して完膚なきまでに敗北します。
> 性能が良いのは空き容量があるうちに限られ、使っているうちに空き容量が減ってしまえば、SATA SSDにすら劣る性能に劣化します。
草。
しかし見方によっては、容量の80%までしか使わないという縛りで買うって考え方もあるのかな。4TBモデルなら、3.2TBまでしか使わないみたいな。その場合の容量単価で考え直せば、コスパはどうなんだろうかっていうのは気になりますね。
ま、そんな面倒な使い方をしなければならない時点で買いませんけどね。他にも優良な製品は沢山あるわけですし。天下のCrucialがこんなものを出してくるとは、メーカーの栄枯盛衰を感じます。
素朴な疑問なんだが、PS5ってPCIe4.0じゃないとだめなん?
PCIe3.0だと門前払い。PCIe4.0でも速度が足りないと警告。YouTubeにそういう動画が上がってますよ。(一例としてはFPSおじさんとか)
ほー3年前の機械のくせに生意気だな
ありがとうございます
日本の公式サイトにQLCの表記がなかったので情報助かります
P2に毛が生えた程度の性能しかないのかよ…
もっと安くなってくれればほどほどに使えて大容量ならOKって層には売れるんでしょうけどね…現状じゃ性能や耐久性の割に価格の旨味が皆無に近くて買えませんね。
メリットといえば4TBモデルが片面実装ということですね。
GB単価が1円未満でないと買う価値無しとはちもろぐさん容量埋めてからの性能で相当絶望したのだろうと伺えます。
QLCはTBWが数年で使い切ってしまってからはTLCしか買っていませんがやっぱりQLCは容量が減ったときの挙動が駄目ですね。
性能の P5 Plus 、コスパの P2 、この2枚だけで良かったのだ・・・
P5 PlusはGen4のウルトラハイエンドとまではいかないまでも体感では大差ない程度で安価、良いSSDですよねぇ。
言い方悪いですが粗悪品を出してしまうと他のSSDも売れなくなってしまいそうで…折角NANDやら何やら全部自分のところで作っているという信頼感もあるのに。
P5Pはコスパ優秀なんですけどねえ…。今の値段差でP3Pが価格.comの売れ筋上位になる理由が分からない。
自分の環境だとPSストアのDLサーバーから有線150MB/s辺りで降ってくるので本体かDNS設定辺りの相性問題かで不具合ありそうですね
速度が1Gbps LANの限界値越えてて草
4TBを倉庫用ならいいかも知れないですね
それもちゃんとしたメーカーのTLCのGen4が6万まで落ちてきてるので微妙ですが…
一回suneast とかいう謎メーカーのM2SSDをレビューしてみてほしいっす
比較サイトの容量ごとの最安値だいたいこのメーカーだけどおっそろしくて買えないっす
値段の割にコスパいいって結論付けてるサイトもあるけどちもろぐさんみたいに徹底的に測定してるわけでもないし真実を知りたい
>PS5だと有線・無線どちらを使っても30 MB/sしか出ないです。
俺の環境PS4でゲームのダウンロード50MB/s出てるけどPS5って接続遅いの?
dram搭載でTLC、gen4対応のJNH S720Dが2tbで1.9kなの気になりますね。
中華メーカーレビューするならやって欲しいです。
中華メーカーはレビューしてもすぐに仕様が変わるから意味ない気がする
19kですね。間違えました。
forspokenってゲームがDirectStorage対応みたいなので、今度からローディング時間の参考にできそうですね。
すごい今更なんですがGB単価1円ならやめとけ、0.5~0.6円ならまあ…ってなると1TBで1000円以下とかいうすごい値段になるんですがこれは皮肉の類ですかね?
2023年8月現在。
2TBが12300円ほど、4TBが26500円ほどと、ついに実用的な値段に下がったようです。
容量を全部使い切らない事を前提にすれば結構アリと思います。
今ならコスパの良いゲーム用PCを作りたい人にはオススメ出来そうですね
どちらかと言えば倉庫用にしたいですね。
HDD卒業、オールSSD化したい人は買い時かもしれません。
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