キオクシア(旧東芝メモリ)の低価格NVMe SSDシリーズの最新モデル「EXCERIA PLUS G3」が登場。さっそく1TB版を買ってみた。
PLUS G3は、人気のあった前作「EXCERIA PLUS G2」の後継モデルですが、なんとDRAMキャッシュが削除されています。前作を上回る性能を出せるかどうか、詳しく検証してみましょう。
(公開:2023/11/2 | 更新:2023/11/2)
EXCERIA PLUS G3のスペックと仕様
EXCERIA PLUS G3 スペックをざっくりと解説 | ||
---|---|---|
容量 | 1000 GB | 2000 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 1.4) | |
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | |
コントローラ | 非公開 | |
NAND | KIOXIA 112層 3D TLC NAND (BiCS5) | |
DRAM | なし | |
– | – | |
SLCキャッシュ | 非公開 | |
読込速度 シーケンシャル | 5000 MB/s | |
書込速度 シーケンシャル | 3900 MB/s | |
読込速度 4KBランダムアクセス | 770K IOPS | 680K IOPS |
書込速度 4KBランダムアクセス | 950K IOPS | |
消費電力(最大) | 5.3 W | |
消費電力(アイドル) | 50 mW | |
TBW 書き込み耐性 | 600 TB | 1200 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150万時間 | |
保証 | 5年 | |
MSRP | ※北米で未発売 | |
参考価格 2023/10時点 | 9180 円 | 16980 円 |
GB単価 | 9.2 円 | 8.5 円 |
PLUS G3では、PCIe 4.0 x4インターフェイスに対応し、最大5000 MB/sのシーケンシャル性能を出せるように改善。従来モデルで応えられなかったPS5需要に対応します。
一方で、キオクシアが製品の位置づけを示すターゲットユーザーは1つ格下げです。
- Professional
- Enthusiast(PLUS G2)
- Mainstream(PLUS G3)
- Upgrader
スペック上の数値が上がったにも関わらず、なぜかランクを1つ下げています。おそらく、従来モデルに実装されていたDRAMキャッシュを省略した仕様変更が原因です。
なお、DRAMキャッシュを省いたからといって性能が悪いと決めるつけるのは早計です。「HIKSEMI FUTURE」や「WD Black SN770」など、DRAMキャッシュなしでも極めて高い性能を示すSSDが実在します。
それでもランクを1つ下げて扱うのは、キオクシアの根が真面目なのかもしれません。
・・・DRAMキャッシュを省いた以外の変更点は、主にSSDコントローラとNANDフラッシュメモリです。SSDコントローラはデータシート非開示で不明なので、後ほどラベルシールを剥がして目視で確認します。
NANDフラッシュメモリは「BiCS NAND」とのみ表記あり。シーケンシャル性能の改善を見る限り、従来の96層NAND(BiCS4)から、112層NAND(BiCS5)に切り替わっている可能性が高いです。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
KIOXIA EXCERIA PLUS G3 | – | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
KIOXIA EXCERIA PLUS G3 | – | 600 TBW | 1200 TBW |
CFD SFT6000e (CFD SFT6000e:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
書き込み保証値(TBW)が従来モデルから1.5倍アップです。同価格帯のライバルSSDとまったく同等の書き込み保証値を提供します。
仮にゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。
- 普通に使った場合:約32.9年
(1日あたり平均50 GBの書き込みを想定) - 毎日AAAゲームをDLする:約16.4年
(1日あたり平均100 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの写真を入れる:約6.6年
(1日あたり平均250 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの4K素材を入れる:約1.6年
(1日あたり平均1000 GBの書き込みを想定)
600 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると12000日で、耐久値を使い切るのに約33年もかかる計算に。NANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラが経年劣化で故障する確率のほうが高いです。
ライバル製品と価格設定の比較
PCIe 4.0対応のハイエンドNVMe SSDと価格を比較したグラフです。
2023年10月時点、EXCERIA PLUS G3の1 TB版が約9200円、2 TB版で約1.7万円です。一応PCIe 4.0対応(PS5対応)SSDとしてはトップクラスの安さで、国産NAND搭載モデルと考えるともっとも安い価格設定に位置します。
EXCERIA PLUS G3を開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
従来モデルの「PLUS G2」とほとんど変わらない、マットブラックの背景に薄い水色ラインが入ったシンプルなパッケージデザインで到着。
今回レビューで使うサンプルはパソコン工房Webにて9180円で購入しました。
パッケージの裏面に「製造元:キオクシア株式会社」「販売元:株式会社バッファロー」と記載あり。RMA申請に必要なシリアルコード(S/Nナンバー)も印刷されています。
付属品は保証書のみ。紙製のケースに、袋で保護されたSSD本体がすっぽりと収まっています。
基板コンポーネント
インディゴカラーのプリント基板上に、SSDを構成するコンポーネントを覆い隠すように製品ラベルシールが貼られています。
ラベルシールを剥がすと5年間の製品保証が無効になるリスクが高いため、別途M.2ヒートシンクを取り付ける場合はシールを剥がさずにそのまま取り付けましょう。
裏面にコンポーネントはありません。各国の認証ロゴや、交換保証(RMA)申請時に必要となるシリアルナンバー(S/N)が記載されたラベルシールが貼られています。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。
ラベルシールを剥がして、基板のコンポーネントを目視で確認します(※5年間の製品保証が切れる行為ですので、真似しない方が安全)。
- コントローラ:Phison E21T
PS5021-E21-48 C02311H P0XX44.002DC - DRAM:なし
- NAND:KIOXIA 112層 3D TLC NAND
TH58LKTIT25BA8C UT1549 TWN 23259AE
SSDコントローラがPhison E21T、NANDメモリはキオクシアの宣伝通りKIOXIA製です。DRAMキャッシュは搭載せず、最大64 MBのHMB(ホストメモリバッファ)方式※で代用します。
※ホストメモリバッファ方式:メインメモリのごく一部を拝借してDRAMキャッシュの代わりに使う技術
SSDコントローラはPhisonが開発する「Phison E21T」を搭載。DRAMレス(HMB:ホストメモリバッファ方式)対応のエントリー向けSSDコントローラです。
Phisonのメディア向け資料によると、台湾TSMC 12 nm製のARM Cortex R5をベースにしたシングルコアのSoCです。
最大4チャネルのNANDメモリを束ねられ、各チャネルごとに1600 MT/sのインターフェイス速度で動作可能。最大で5000 MB/sの読み込み速度、最大4500 MB/sの書き込み性能に対応します。
NANDメモリはキオクシア(Western Digital)が三重県四日市市で製造しているらしい、「BiCS5」を搭載。
- Bank00: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank01: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank02: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank03: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank04: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank05: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank06: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank07: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank08: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank09: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank10: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank11: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank12: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank13: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank14: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
- Bank15: 0x98,0x3e,0x98,0x3,0x76,0xe4,0x0,0x0 – Toshiba 112L BiCS5 TLC 16k 512Gb/CE 512Gb/die 2Plane/die
Flash IDによる照合結果で「Toshiba 112L BiCS5」と表示されます。
「BiCS5」は112層まで積み上げた3D TLC NAND(56 + 56層の2デッキ方式)です。
従来モデルのBiCS4(96層)から記憶密度を2倍の512 Gbに向上。ビット密度が7.08 Gb/mm²に改善され、以前より少ない部品数で同じ容量を実現できます。
最大スループットも従来比で最大50%アップをアピールしており、実際に今作のPLUS G3で最大5000 MB/s(PLUS G2比で+約47%)までシーケンシャル性能が上がっています。
ただし、記憶密度の改善による部品数の減少 → NANDメモリ並列数の低下を意味するため、同じ容量あたりの書き込み性能がほぼ確実に悪化します。
参考程度に、EXCERIA PLUS G2とPLUS G3の比較写真を置いておきます。
- コントローラ:Phison E12S → E21T
- DRAM:DDR4 1024 MB → なし
- NAND:96層(8個)→ 112層(4個)
部品点数が半分以下です。製造技術の進化を感じます。
EXCERIA PLUS G3の性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | KIOXIA EXCERIA PLUS G3 1TB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9 5950X超えのマルチスレッド性能と、現行最強クラスのシングルスレッド性能で、最大14000 MB/s超えの次世代Gen 5 SSDも難なく処理できます。
原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「EXCERIA PLUS G3」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題なし。
フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
---|---|
テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込み速度が5000 MB/s超え、メーカー公称値通りです。シーケンシャル書き込みも3900 MB/s超え、こちらもメーカー公称値に一致します。
テストサイズを64 GiBに変更してもシーケンシャル性能に変化ないですが、ランダムアクセス性能(RND4K Q1T1)が若干下がる傾向が見られます。
DRAMレスのSSDで広く見られる一般的な症状で実用上の問題は未確認です。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
EXCERIA PLUS G3は47.23 μsを記録し、従来モデル(PLUS G2)から約40%もの性能アップを遂げます。しかし、競合するDRAMレス組は40 μsに迫っています。
書き込みレイテンシは非常に高速です。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
512 Bから512 KBまで、先代のPLUS G2より確実な性能アップが見られます。
書き込み速度も大きく改善されています。
EXCERIA PLUS G3を実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
EXCERIA PLUS G3のロード時間は「5.88秒」でした。PLUS G2より2割強もロード時間が短縮され、WD Black SN770を上回る性能です。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストした3タイトルすべてで、EXCERIA PLUS G3が一貫してWD Black SN770を打ち負かします。
従来モデルから大幅なロード時間短縮を実現し、Overwatch 2ではダブルスコアの差です。ハイエンドDRAMレス組(HIKSEMI FUTUREやNM790)にあと一歩及ばないですが、今後の価格次第で劣らない競争力があるでしょう。
「原神」のロード時間を比較
大人気RPGタイトル「原神」のロード時間を実際にテストします。
- 初回ロード(データロード0%からクリック可能になるまで)
- 初回ロード(クリックしてから操作可能になるまで)
- モンドから千尋の砂漠へワープ
- 千尋の砂漠からスメールシティへワープ
- スメールシティから稲妻城へワープ
- 稲妻城からモンドへワープ
上記6パターンを録画ソフト(120 fps)を使って記録し、動画編集ソフトに取り込んでフレーム単位でロード時間を比較しました。
EXCERIA PLUS G3は「37.79秒」でした。従来モデル(PLUS G2)から約34%もの性能アップで、WD Black SN770に並びます。
各シーン別のロード時間(※グラフの左から順番にパターン1~6並び)です。
初回ロード(#1)を除き、ほとんどのテストパターンでロードタイムが速いです。
パターン6(稲妻城からモンドへワープ)は、すでに読み込んだマップが大量に含まれるため、基本的に大きな時間差はつきません。
DirectStorageのロード時間を比較
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
EXCERIA PLUS G3は0.29秒(14.69 GB/s)で、従来比で約30%の性能アップです。おおむねシーケンシャル性能の伸び(3500 → 5000 MB/s)に比例します。
とはいえ、すでに十分すぎるほどロード時間が速いため、絶対値で見るとコンマ秒レベルの差しかつかないです。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → EXCERIA PLUS G3)のコピペ時間です。
写真フォルダとゲームフォルダでは、競合する多くのNVMe SSDと横並びに。一方、256 GBのZipファイルの書き込みでSN770に2倍近くも引き離されてしまい、展開できるSLCキャッシュの狭さを示唆します。
次は読み込み(EXCERIA PLUS G3 → Optane P5810X)のコピペ時間です。
従来モデル(PLUS G2)からすべてのパターンで改善が見られ、WD Black SN770に並びます。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。
4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約18.7%です。従来モデルから確実に改善されているものの、競合するSN770に及ばない結果です。
4K動画プレビューでは約9.4%で、従来比でなんと3分の1まで抑えられます。なお、SN770は約3%程度でほぼ完封。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
EXCERIA PLUS G3のストレージスコア(空き容量10%時)は「2649点」です。空き容量100%なら4110点で、空き容量による性能低下はなんと約36%に達します。
従来モデルのPLUS G2から25%の性能アップにとどまり、WD Black SN770に追いつけない少々残念な結果に終わります。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
Adobeスコアで50%近い大幅な改善を見せ、SN770に迫ります。ゲームロードの改善幅もかなり大きく、SN770すら超えます。しかし、ファイルコピーの伸び幅が小さく、SN770に大きく差をつけられています。
Officeスコアは60%もの性能アップを遂げ、SN770を打ち負かします。つまり、ファイルコピー以外の分野なら、WD Black SN770と同等かそれ以上の性能です。
※PCMark 10 Proのコピーテストは基本的にキャッシュの範囲内に収まるため、SLCキャッシュが狭いSSDでもハイスコアを出しやすいです。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
(1枚目:比較グラフ / 2枚目:強調グラフ)
約231 GBを書き込んだ後、一気に書き込み性能が悪化します。その後12あたりまで平均600 MB/sで書き込みがつづき、残り2分でSLCキャッシュが枯渇して平均300 MB/sまで落ち込みます。
では、グラフの中身をざっくりと解説します。
- SLCキャッシュで爆速(約231 GBまで)
- SLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動モードに変化
- SLCキャッシュが切れてTLC NAND本来の性能に
- テスト終了までSLCキャッシュは一切復活しない
空き容量の2割に相当する約231 GBのSLCキャッシュを展開できる仕様です。SLCキャッシュが切れると平均600 MB/s前後、最悪のケースで300 MB/sまで落ち込みますが、普通に使っていれば遭遇しないでしょう。
SLCキャッシュの再展開はかなり遅く、1時間待っても数GBしか復活しません。TRIM GCコマンドやシステムの再起動で、ふたたび4000 MB/s近い爆速SLCキャッシュを展開可能です。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
最初の5分間だけ爆速で、残りの10分間はずっと遅いまま。15分間の書き込み容量は、従来モデル(PLUS G2)のほぼ半分にまで悪化します。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは2つです。
- ドライブ温度:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
どちらも常に同じ温度を表示するため、実質的に1つのセンサーです。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
テストを開始して1分ほどでSLCキャッシュが枯渇して、書き込み性能が大きく下がり、結果的にSSD温度の上昇がおだやかに緩和されます。
じわじわと温度が上昇し続け、センサー読みで80℃に達するとサーマルスロットリングらしき挙動が発生します。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から約8~9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使ってSSDの表面温度を撮影します。
- SSDコントローラ:81 ~ 83℃
- NANDメモリ(右):65 ~ 67℃
- NANDメモリ(左):70 ~ 71℃
SSDコントローラ周辺は80℃超えまで、NANDメモリ側は65~71℃まで温度が上昇します。
温度センサーを信頼するなら、HWiNFOに表示される温度はSSDコントローラにあたります。サーモグラフィーカメラとの温度差は3℃前後に過ぎず、センサーの精度も良好です。
EXCERIA PLUS G3にM.2ヒートシンクが必要か聞かれれば「不要」とだけ。
温度が上がり切る前にSLCキャッシュが枯渇して性能を出せなくなり、さらに上昇してサーマルスロットリングを引っ掛けても、性能差はとても少ないです。
マザーボードにM.2ヒートシンクが付属しているなら取り付ける程度で大丈夫でしょう。
まとめ:タイムセール時の売れ筋SSDに仲間入り
「KIOXIA EXCERIA PLUS G3」のデメリットと弱点
- DRAMキャッシュなし
- 素の書き込み性能が遅い
(従来比でほぼ半分に低下) - 空き容量による性能低下あり
- 発売間もない価格だとコスパは普通
「KIOXIA EXCERIA PLUS G3」のメリットと強み
- 最大5000 MB/sのシーケンシャル性能
- WD Black SN770に迫る実用性能
(ファイルコピー以外なら勝ってます) - そこそこ速いランダムアクセス速度
- ゲームロード時間が速い
- 十分な広さのSLCキャッシュ
- 十分な耐久性(600 ~ 1200 TBW)
- 大容量モデルあり(最大2 TB)
- 国産(四日市産)NANDメモリを搭載
- 5年保証
キオクシア(旧東芝メモリ)が四日市で製造しているらしい、国産NVMe SSDとして高い完成度を誇ります。
しかし、レビュー時点の価格設定だと同価格帯のライバルが強力です。数百円の差額でトップクラスの性能な「SN770」や、約3000円の差額で容量2 TBかつ最強クラスの性能を持つ「Lexar NM790」など。
競争がとても激化していて現状の価格では、正直コストパフォーマンスが良いと言えません。
従来モデルのPLUS G2と同じく、1 TB版で約7000円まで値下がりしたら低予算で定番のNVMe SSDになります。タイムセール時であれば売れ筋SSDの仲間入りを果たすでしょう。
以上「KIOXIA EXCERIA PLUS G3レビュー:まさかのDRAMキャッシュ削除!?」でした。
EXCERIA PLUS G3を入手する
レビュー(2023年10月)時点で、EXCERIA PLUS G3は1 TB版が約9200円、2 TB版が約1.6万円で買えます。それぞれあと2000~3000円下がったらコスパ最高峰です。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
おすすめなSSDを解説
結構気にしていない方も多いですが、
SONY公式的にはホストメモリーバッファを使うSSDは非推奨なんですよね
https://www.playstation.com/ja-jp/support/hardware/ps5-install-m2-ssd/
何と!
初めて知りました。
情報ありがとうございます。
ネクストレージのSSDもセール時にはお買い得になりますよね。
値段が下れば大容量ファイルをかきこまない用途としていいかもですね。
あと、ジェネリックfirecuda 530こと、東芝商社のTDL-M7Aの性能も気になります。
現時点でEXCERIA PROとPlus G3の価格差が1,300円(Amazonで)ほどなので、性能差を考えるとキャッシュ付いててReadも7,000MB/s超えてるPROの方が良さそうですね。
おっしゃる通り、価格が下がれば選択肢に十分入ると思います。
Proもそろそろリニューアルして性能あげてほしいですね~
ご祝儀価格がご祝儀価格じゃないのエラい
検証お疲れ様でした。
WD Black SN770強すぎる。
キオクシアとWDの経営統合、破談したのは残念です。
最強ストレージ企業、爆誕ならず。
国産NANDが欲しいという人にいいですね。
ところで、Optane P5810Xでも原神のロード時間が速くないのはやはりCPU性能がボトルネックなんですかね?
原神がDirectStorageに対応+4090だとロード爆速になるのかな?
実質的には、G3世代では作らなそうなPlus無し後継の下級品でしょうかねー
素人にわからないように微妙にブランドを毀損しつつ、安物を高く売るのは今時の商売らしい
gen4DRAMなしを作っただけでしょ捻くれ過ぎ
プロgen4DRAMあり
プラスgen3DRAMあり→gen4DRAMなし
無印gen3DRAMあり
このご時世に「PLUS G2と同じ価格だったら~」とはやかもちさんもなかなか厳しいなと思いましたけど、他社が値上がりする中でもPLUS G2は値上がりしてないんですね。
ここは国内製造の強みですかね。
ブラックフライデーセールで飛びついたけど、サムやWDと違ってクローンソフトがついてないのね
安物買いの銭失いとまでは言わんけど、もう2,000円くらい上げてAcronisの1年ライセンスでもつけてもらわないとシステムストレージとしての選択肢としては微妙かなあ
このレビュー記事を参考にして2TB版を購入させていただきました。ありがとうございます。
このレビューをじっくり読んでいたら2TBを買い逃しました
とてもつらい
コントローラが製品のちょうど真ん中なのか。これ高さが違うんだったらヒートシンクつける場合はわざわざ高さ合わさなきゃいけない製品ってことになるけどどうなんでしょ
2024年夏プライムデー先行セール対象になりましたね