キオクシア(旧東芝メモリ)から、ようやくPCIe Gen5規格に対応した最新NVMe SSD「EXCERIA PLUS G4」が発売されました。
国産NANDメモリ搭載で最大10000 MB/s(10 GB/s)を叩き出す、すごく性能が良さそうなSSDです。他のSSDと比較しながら詳しくレビューします。
(公開:2025/1/30 | 更新:2025/1/30)
EXCERIA PLUS G4のスペックと仕様
KIOXIA EXCERIA PLUS G4 (SSD-CK1.0N5PLG4N) | ||
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容量 | 1 TB (1000 GB) | 2 TB (2000 GB) |
インターフェイス | PCIe 5.0 x4 (NVMe 2.0) | |
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | |
コントローラ | 非公開 | |
NAND | KIOXIA製 BiCS FLASH(3D TLC) | |
DRAM | なし | |
HMB(DRAMレス)方式 | ||
SLCキャッシュ | 非公開 | |
読込速度 シーケンシャル | 10000 MB/s | |
書込速度 シーケンシャル | 7900 MB/s | 8200 MB/s |
読込速度 4KBランダムアクセス | 1300K IOPS | |
書込速度 4KBランダムアクセス | 1400K IOPS | |
消費電力(最大) | 5.30 W | |
消費電力(アイドル) | 50 mW | |
TBW 書き込み耐性 | 600 TB | 1200 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 150 万時間 | |
保証 | 5年 | |
MSRP | $ 135 | $ 220 |
参考価格 2025/1時点 | 13480 円 | 23980 円 |
GB単価 | 13.5 円 | 12.0 円 |
- メーカー仕様表はこちらから
「EXCERIA PLUS G4」は、日本国内のキオクシア四日市工場で製造されている国産NANDメモリ「BiCS 8」を搭載する、PCIe Gen5規格対応のハイエンドNVMe SSDです。
ピーク時で最大10000 MB/s(10 GB/s)と・・・、いかにもGen5対応らしい数値をアピールします。
なお、Gen5対応NVMe SSDは価格の高さが最大のネックでしたが、EXCERIA PLUS G4の初売り価格はなんと約1.3万円から。
スペックを考えれば信じられない破格の安さです。
TBW(書き込み耐性)の比較
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
KIOXIA EXCERIA PLUS G4 | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 EVO Plus (990 EVO Plus:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
KIOXIA EXCERIA PRO (EXCERIA PRO:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
書き込み保証値は容量1 TBあたり600 TBです。
一般的なTLC NAND採用SSDと同等の保証値で、中華ハイエンドのTLC NANDモデルと比較するとやや見劣りします。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
---|---|---|---|
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
MOVE SPEED Panther (MOVE SPEED Panther:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA PRO (EXCERIA PRO:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN5000 (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 600 TBW | 900 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G3 (KIOXIA EXCERIA G3 PLUS:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
CFD SFT6000e (CFD SFT6000e:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
しかし、容量あたり600 TBの書き込み保証値は(実用上)十分すぎる数値です。
- 普通に使った場合:約32.9年
(1日あたり平均50 GBの書き込みを想定) - 毎日AAAゲームをDLする:約16.4年
(1日あたり平均100 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの写真を入れる:約6.6年
(1日あたり平均250 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの4K~8K素材を入れる:約1.6年
(1日あたり平均1000 GBの書き込みを想定)
ワークロード別の想定耐用年数をざっくり試算してみた。
PS5の増設ストレージやゲーミングPCのメインSSDなど。ごく普通の使い方なら約30年以上もかかる計算になり、5年間のメーカー保証が先に切れるでしょう。
仮に1日100 GB書き込んでも、TBWを使い切るのに約16年です。4K~8K RAW写真や動画素材を毎日のようにゴリゴリと書き込む用途だと5年保証内に切れます。
一般的なPCゲーマーにとって十分すぎる保証値です。
写真や動画で業務に使うなら4倍のTBWがある容量4 TBモデルや、Nextorage Gシリーズなど高耐久モデルを検討してください。
EXCERIA PLUS G4を開封レビュー
パッケージデザインと付属品
発売当日に、パソコン工房Web通販にて容量1 TBモデルを購入しました。約1.3万円(13580円)です。
従来モデル(PLUS Gシリーズ)と同じく、淡いマリンブルー色の帯と、マットブラックな背景色にSSD本体のCGレンダリング画像を配置したパッケージデザインです。
パッケージの裏面に「製造元:キオクシア株式会社」「販売元:株式会社バッファロー」と記載あり。RMA申請に必要なシリアルコード(S/Nナンバー)も印刷されています。
- SSD本体
- 説明書
紙製の梱包材に、静電気除去袋に包まれたSSD本体がすっぽり収まってます。梱包材の中に説明書が付属します。
説明書に、キオクシア製品を販売している株式会社バッファローのサポート連絡先が記載されています。
- 電話:0570-086-086(有料)
- サポートページ:86886.jp
万が一、5年保証を使う必要が出てしまったときは、製品を購入したショップか上記サポート連絡先から問い合わせます。
基板コンポーネント
従来モデル(EXCERIA PLUS G3)とほとんど瓜二つのデザイン。
インディゴカラーのプリント基板上に、SSDを構成するコンポーネントを覆い隠すように製品ラベルシールが貼られています。
ラベルシールを剥がすと5年間の製品保証が無効になるリスクが高いため、別途M.2ヒートシンクを取り付ける場合はシールを剥がさずにそのまま取り付けましょう。
SSD裏面のラベルシールに、保証に必要なシリアルナンバーや各国の規制認証ロゴマークがズラッと記載されています。
基板の表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな「片面実装」のNVMe SSDです。
取付スペースが狭いノートパソコンや、PS5の増設ストレージに使いやすいです。
製品ラベルシールを剥がして、EXCERIA PLUS G4に実装されているコンポーネントを目視で確認します。
- コントローラ:Phison PS5031-E31
PS5031-E31-61 CS2433H TRKP82.001AA - DRAM:なし
なし - NAND:KIOXIA 218層 3D TLC NAND
TH58LKT2T48BA8R CI0481 TWN 24409AE
SSDコントローラに「Phison PS5031-E31」、NANDメモリにキオクシア製「218層 3D TLC NAND(BiCS 8)」を搭載します。
SSDコントローラはPhison製「PS5031-E31」を搭載。PCIe 5.0(Gen5)対応のDRAMレスコントローラです。
台湾TSMC 7 nm製ARM Cortex-R5を3個(トリプルコア)搭載し、最大4チャネルのNANDメモリを、最大3600 MT/sのインターフェイス速度で接続できます。
中華ハイエンドSSDで知られる「Maxio MAP1602A」よりも、インターフェイス速度が1.5倍も高速です。性能面でかなり期待できます。
割と有名なSSDコントローラメーカーです。
NextorageやSeagate、キングストンやCFDなど。自社でSSDをまったく製造できないメーカーに対し、コントローラとNANDメモリをセットにした「リファレンス版」を数多く供給しています。
採用例が非常に多く、スペックが似ているSSDなら、中身はたいていPhisonコントローラだったりします。
電源管理コントローラ(PMIC)は、Phison製「PS6231」を採用。
DRAMは搭載しません。
メインメモリのごく一部をDRAMキャッシュの代わりに使う「HMB(ホストメモリバッファ)」方式のSSDです。
DRAMが無いと書き込み性能が不利になる傾向がある一方、読み込みワークロードで有利になる傾向もあり、一概にDRAMが無いから悪いとも言い切れないので注意。
NANDメモリは「キオクシア製 218層 3D TLC NAND(BiCS 8)」を採用。刻印は「TH58LKT2T48BA8R」です。
キオクシア(旧東芝メモリ)がCBA技術(CMOS directly Bonded to Array)を使って初めて製造する、最新世代のNANDメモリです。
積層数こそ218層で、ライバル他社の232~238層に出遅れ感があるものの、CBA技術のおかげで高速性能と横方向の密度に優位性があります。
記憶密度はライバル製200層超NANDが14.5~15.03 Gbit/mm²前後にとどまる中、CBAで製造されるキオクシア製218層NANDは少なくとも18.0 Gbit/mm²以上です。
性能面の優位性も強く、キオクシア製218層はメーカー公称値で最大3200 MT/sに対応します。市販モデルにはHigh-Kメタルゲートを導入した改良版(最大3600 MT/s)を使っています。
競合製品だと最大2400 MT/sに制限され、最大3600 MT/sに対して1.5倍もの性能差です。
1 TB:1024 Gb x 4 x 2 = 8192 Gb(1024 GB)
NANDメモリの構成をチェックします。
EXCERIA PLUS G4(容量1 TB)では、記憶密度が1024 Gb(= 128 GB)のチップを4枚重ねたNANDメモリを、全部で2個実装して合計8192 Gb(= 1024 GB)の容量に仕上げます。
8枚重ねたバージョン(チップ1枚で容量1 TB)も確認されているため、EXCERIA PLUS G4(容量2 TB)版も、同じく2個のチップで事足りる計算です。
NANDメモリの配置を工夫すれば片面実装で容量4 TBもおそらく可能なはず。
EXCERIA PLUS G4の性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | |
CPUクーラー | 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | |
マザーボード | BIOSTARZ790 Valkyrie | |
メモリ | DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | |
グラフィックボード | RTX 4060 Ti | |
テスト対象 | EXCERIA PLUS G4 1TB | |
システムSSD | HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | |
電源ユニット | 850 WCorsair HX850i 2021 | |
OS | Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | |
ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9 5950X超えのマルチスレッド性能と、現行最強クラスのシングルスレッド性能で、最大14000 MB/s超えの次世代Gen 5 SSDも難なく処理できます。
原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 5.0 x4
- 対応規格:NVM Express 2.0
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「EXCERIA PLUS G4」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。「PCIe 5.0 x4」で接続されています。
なお、EXCERIA PLUS G4は最新規格のNVM Express 2.0規格準拠モデルですが、一般用途だとNVM Express 1.4規格と大差ないです。
フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。
実際には1024 GB分のNANDメモリが搭載されているものの、全体の約2.3%(24 GB)を予備領域に割り当てる一般的な対応により、ユーザー側で使える容量は1000 GBに目減りします。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読み込みが約10000 MB/s超え、シーケンシャル書き込みが約8500 MB/s前後です。
読み込みと書き込みどちらもメーカー公称値をあっさり超えています。
テストサイズを64 GiBに変更して再テストしても、シーケンシャル性能がまったく変化せず、ランダムアクセス性能(RND4K Q1T1)がやや低下する程度です。
DRAMレス(HMB:ホストメモリバッファ)方式のSSDなら、シーケンシャルも大きく下がる傾向がありますが、EXCERIA PLUS G4は大幅に緩和されています。
なお、下がったからと言って実際の利用シーンで問題や不具合は起きません。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
EXCERIA PLUS G4は36.9 μsを叩き出し、TLC NAND型SSDとして過去に例がない最速記録に。
書き込みレイテンシも過去最高クラスです。上位勢はPhison系コントローラに独占されています。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、テストファイルを小刻みに分割してSSDのスループット(シーケンシャル性能)を測定し、SSDがピーク性能を出しやすいファイルサイズを探るベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
小さいファイル領域(2 KB ~ 16 KB)で、HIKSEMI(MAP1602A)とほぼ同等に並ぶトップクラスの読み込み速度です。
書き込み性能も小さいファイル領域でトップクラス。中程度のファイルサイズからHIKSEMI(MAP1602A)に迫る速度にとどまります。
特定のファイルサイズで乱高下するDRAMレスSSDによくある傾向が見られますが、実際に該当するファイルサイズをコピーしても問題ない速度です。
ATTO Disk Benchmarkだけで発生する謎の症状です。
EXCERIA PLUS G4を実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
EXCERIA PLUS G4のロード時間はわずか「5.63秒」でした。従来モデルのPLUS G3より改善され、中華ハイエンドシリーズを軒並み上回るロード時間に達します。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10 Professional Edition(有償版)で利用できる機能を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
Call of DutyとOverwatch 2で、EXCERIA PLUS G4がトップクラスに入ります。Battlefiled Vだけイマイチ振るわず、Crucial T500に大きく差をつけられます。
全体的なゲームロード時間は、Crucial T700やCrucial T500が依然トップクラスを独走中です。
DirectStorageのロード時間を比較
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをGPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合はCPUの演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差がそれほど確認できません。
GPU展開(RTX 4060 Tiで展開)では、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
EXCERIA PLUS G4は0.21秒(20.2 GB/s)前後で、Crucial T700の次に高性能です。最大10000 MB/sのシーケンシャル性能が効いています。
従来モデルのPLUS G3から約1.4倍も読み出し速度が改善しました。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → EXCERIA PLUS G4)のコピペ時間です。
写真フォルダとゲームフォルダは他社のハイエンドモデルと横並びでまずまずの結果ですが、Zipファイル(256 GB)のみ目立って遅れています。
原因はpSLCキャッシュのサイズで、容量1 TB版だと一度に210 GB程度しかpSLCキャッシュを展開できない仕様です。
コピーする256 GBのうち、210 GBまで平均4000 MB/s前後の爆速を維持し、残り46 GBで大きく速度を落とします。容量2 TB版なら他社ハイエンドに並ぶでしょう。
次は読み込み(EXCERIA PLUS G4 → Optane P5810X)のコピペ時間です。
全体的に読み出し速度は従来比で、順当に性能アップが見られます。しかし、Crucial T500やT700には及ばず、最大10000 MB/sもある割にやや期待外れな印象。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにSLCキャッシュを使って耐える製品が多いですが、このSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずTLC NAND本来の性能でテストが実行されます。
SLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。
4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約10.9%です。
NAND型SSDでそう簡単に超えられない「10%の壁」はやはり突破できず、中華ハイエンドシリーズに勝てませんでしたが、Crucial T500には勝っています。
4K動画プレビューのドロップフレーム率は0%で見事に完封。
従来モデルのPLUS G3が約10%も落としていたから、0%まで完封できるPLUS G4は劇的な改善と評価できます。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
EXCERIA PLUS G4(1 TB)のストレージスコア(空き容量10%時)は「3628点」です。空き容量100%なら4893点です。
空き容量による性能低下は約26%に達します。
100%時スコアこそSamsung 983 ZET(SLC NAND)を超える最高のスコアですが、空き容量が減った状態だと中華ハイエンド(MAP1602A)シリーズと同等まで落ち込みます。
容量1 TBモデルで、10%時スコアを4000点台に維持できたSSDは引き続きCrucial T500とT700だけです。同じPhisonコントローラでも、これほど挙動が違っていて興味深いです。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
10%時スコアの悪化に大きく貢献した項目は「ファイルコピー」評価です。
空き容量が減っていると、pSLCキャッシュの再展開がやや鈍くなってしまい、結果的にスコアを稼ぎづらい様子。
一方でオフィス評価はCrucial T700に並んでしまうなど、とんでもなく強い一面も見られます。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
---|---|
Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
テスト開始から約200 GBまで、平均5600 MB/s超の猛スピードを維持し、その後pSLCキャッシュが枯渇して平均870 MB/s程度まで落ち込みます。
さらに書き込みを続けていくと、最終的に平均430 MB/sまで追い込まれます。
キャッシュ構造 | 平均書込速度 |
---|---|
1段階 pSLCキャッシュ | 4268 MB/s |
2段階 pSLC + TLC | 814 MB/s |
3段階 TLCネイティブ | 430 MB/s |
ブロックファイルを約900 GB書き込んで、キャッシュ構造をさらに深堀りします。
pSLCキャッシュをフルに展開する平均4000 MB/s超の爆速モードから始まり、約200~220 GBの書き込みでpSLCキャッシュが枯渇して混合モード(pSLC + TLC)へ移行します。
混合モードを約400 GBほど続けてようやくpSLCキャッシュが完全に枯渇し、平均430 MB/s程度の書き込み速度へ下落です。
一度に展開できるpSLCキャッシュは安定して210 GB前後です。効いている範囲なら4000 MB/s前後、切れると400~900 MB/sをうろうろと頑張ります。
pSLCキャッシュの再展開は非常にスピーディーで、書き込みを終えた後すぐに爆速モードで書き込めます。
空き容量が200 GBの状態でもpSLCキャッシュが効いているものの、完全な爆速モードが復活しなかったです。
ほとんど混合モード(pSLC + TLC)でしか動かず、PCMark 10のファイルコピー評価が大きく下がった理由が分かります。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
EXCERIA PLUS G4は15分で約768 GBを書き込みます。Crucial T500より多少マシ程度で、HIKSEMIなど中華ハイエンドに大きく距離を取られています。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
- ドライブ温度:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは2つですが、どちらも常に同じ温度を表示します。実質的に1つのセンサーです。
ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
テスト開始から急速に温度が上昇し続け、センサー読みで80℃に達すると、性能を一時的に落とす挙動(サーマルスロットリング)が明らかです。
テスト終盤からpSLCキャッシュが枯渇してTLC NAND本来の性能に戻ると、SSDの温度上昇も緩やかに飽和します。
つまり、空き容量がたっぷりあれば温度が上昇しやすく、逆に空き容量が少ない状況なら温度も穏やかになると予想できます。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から約8~9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使ってSSDの表面温度を撮影します。
- NANDメモリ(左):66 ~ 67℃
- DRAMキャッシュ(中央):なし
- SSDコントローラ(右):84 ~ 85℃
SSDコントローラの表面温度は、HWiNFOが表示するセンサー読みから5℃ズレてます。おおむね精度の高いセンサーですが、おそらく80℃以上をほとんど表示しない仕様です。
センサー読みで80℃に達するとサーマルスロットリングを発動させるため、80℃以上を表示する機能自体が不要だと思われます。
別売りのM.2ヒートシンクは基本的になくて大丈夫です。容量1 TBの場合、書き込み時の爆速モードを長く維持できないから、あってもなくても性能に大差ないでしょう。
爆速モードを長く維持できる容量2 TB以上なら、別売りのM.2ヒートシンクがあると便利です。
または、何もつけずにケースファンで風を当てるか、マザーボード付属のM.2ヒートシンクがあったら取り付けるくらいで十分。
まとめ:国産SSDとして過去最高クラスの性能
(名作WD Black SN770に匹敵)
「EXCERIA PLUS G4」のデメリットと弱点
- DRAMキャッシュなし
- 素の書き込み性能が遅い
- 高負荷時の温度が高い
- 空き容量による性能低下あり
- 価格設定が高い
(発売当日のお手頃価格は何・・・?)
「EXCERIA PLUS G4」のメリットと強み
- 爆速なシーケンシャル性能(10000 MB/s)
- 驚異的なランダムアクセス速度
- ゲームロード時間が速い
- 広大かつ迅速なpSLCキャッシュ
- 十分な耐久性(600 ~ 1200 TBW)
- 大容量モデルあり(最大2 TB)
- 片面実装で扱いやすい
- 国産NANDメモリ(BiCS)を搭載
- 5年保証
キオクシア(旧東芝メモリ)初のPCIe 5.0対応SSD「EXCERIA PLUS G4」は、シーケンシャルだけが速い見掛け倒しの性能にとどまらず、実効性能をきちんと大幅に改善しています。
WD Black SN770を上回り、Crucial T500に迫る性能です。シンプルに高性能で全体的にお見事な出来栄え。
購入時の価格なら、おすすめSSDの「迷ったらコレ級」に入れていいレベルです。
・・・そう、購入時の価格なら。
残念ながらレビュー記事を完成させた時点では、価格がなぜか大幅に上がっています。
- 容量1 TB:13580 → 19980円
- 容量2 TB:23980 → 33980円
EXCERIA PLUS G4はDRAMレス型でトップを争える性能ですが、さすがに容量1 TBが約2万円近い価格だとおすすめできません。
より安価でもっと高性能な「Crucial T500」を選べるからです。ブランドを気にせずコスパ重視なら、HIKSEMIなど中華ハイエンドシリーズも依然として強力。
価格が安定して元に戻ったら「迷ったらコレ級」をEXCERIA PLUS G4に置き換えるかもしれませんが、今のところCrucial T500から変えられません。
以上「KIOXIA EXCERIA PLUS G4レビュー:最大10000 MB/s「国産」Gen5 SSDがついに登場」でした。
「EXCERIA PLUS G4」を入手する
レビュー時点の価格は容量1 TB版が約2.0万円、容量2 TBが約3.4万円です。
(1月25日の発売価格:AKIBA PC Hotline! より)
発売当日の価格設定はいったい何だったのか、今後のタイムセール価格を誤って設定してしまった可能性?
どちらにせよ、現状の価格は魅力に欠ける印象を拭えないです。WD Black SN770やCrucial T500と同程度の価格に戻ってほしいです。
おすすめなSSDを解説
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購入時の価格ならって所で思わず笑ってしまった…
T500みたいに高値スタートだからこれからの値動きがどうなるか気になります。
キオクシアさん株式上場を果たしたから、四半期ごとの決算とか「きっかけ」があれば潔くタイムセールしてくれそう。(と勝手に期待してます)
買うかどうか迷ってたモデルなのでレビューありがたい!…けど逆ご祝儀相場なんて聞いてないよぉ!?キオクシアァ!?
たしかに安すぎるとは思いましたが低コスト化という話だったのでこの相場なのかと…。中華ガジェットよろしく初動で好評レビュー稼いで価格釣り上げる商法なんですかねぇ…
ビデオカード含め、今後は初値が一番安いのがデフォにでもなるのかしら・・・
これってSSD版アリバイ価格だったってこと?国産企業ェ…
Gen4ですら持て余してるのにもうGen5かぁ
DRAMレスのハイエンドSSDが出るほど約2年前から存在していた蝉族の異常さがわかって逆に怖くなる
HIKSEMIシリーズがここまで持ちこたえる現状に驚いてます。
とにかくMaxioTech社(元JMicronのエンジニアが立ち上げた企業)の技術力が凄いです。pSLCキャッシュの超高速な再展開で、NANDメモリ側の性能が多少悪くても簡単に隠蔽できるところが強いですね。
23000円だったら買っていたが
Amazonで32000円を見た瞬間G3買ってしまった
Phison E31×BiCs8の組み合わせ強いなー
製品は良いのに値上げされたのが痛い…
値下がり待ってる内にPhison E28積んだExceria Pro Gen5版が来るかも?
yahooショッピングに出たら買おうと思ってたらめっちゃ値上がりしてて残念
実際に購入し運用してみたところ、自環境ではsn850xの方が優秀で少しガッカリしたものの品自体は悪くは無い性能でした……筆者さんが仰るように「元々の価格だったら」という但し書きが付きますが。
流石に1TB 2万円の価値は皆無です。セール時価格次第ではアリになるかもしれません。
ネイティブ書き込み性能なら、SN850Xは今も強い部類です。
基本的に書き込み性能は、あえて旧世代のNANDメモリを使ったほうが有利です。SN850XはBiCS 100層台だから、今作の200層台よりも容量あたりの書き込み性能が高く、同じ容量で比較するとSN850Xがほぼ勝ちます。DRAMキャッシュもあるから、空き容量が減っても耐えやすいです。
逆にリード性能やランダム重視なら、EXCERIA PLUS G4はかなり優秀かと。まぁでも・・・1TBで2万円はちょっと話にならないですね。
RTX5080/90の発売とダブるから後で買おうと思ってたら・・何この価格。ひどいなぁ。