OCMEMORYより、Hynix C-dieの後継モデルにあたる「Hynix D-die」チップを搭載したオーバークロックメモリ「V-color DDR4 PRISM II RGB」が発売されました。今回OCMEMORY様からDDR4-3600モデルを提供して頂いたので、実効性能やOC耐性を検証します。
「V-color DDR4 PRISM II RGB」を検証レビュー
仕様とスペックを紹介
スペック | VOC3600CL18D-16GBP2 |
---|---|
メーカー | V-Color |
フォームファクタ | デスクトップ用 |
規格 | DDR4-3600 |
プロファイル | DDR4-3600 : CL18-22-22-42 @1.35V |
容量 | 8 GB |
枚数 | 2枚 |
DRAMチップ | Hynix D-die8Gb DRAM(1024M x8) |
ランク | 1-Rank |
チップ数 | 8個 |
V-Color DDR4 PRISM II RGBのDDR4-3600モデルのスペック(仕様)は以上のとおりです。正式な型番は「VOC3600CL18D-16GBP2」なので、通販サイトで検索する際は型番で探してみてください。
メーカーは台湾のV-Color Technologyで、カラフルなデザイン性に特化したオーバークロックメモリやM.2 SSDを開発販売しています。日本では代理店のOCMEMORY社とコラボしたバージョンが入ってます。
対応規格はXMPプロファイルでDDR4-3600です。タイミング(CAS Latency)は18-22-22-42で、電圧は1.35 Vで動作します。DRAMチップにはHynix C-dieの後継にあたる「Hynix D-die」を搭載しています。
- C-die:DDR4-3600 / 19-20-20-40 @1.35 V
- D-die:DDR4-3600 / 18-22-22-42 @1.35 V
D-dieはHynix C-dieと同様に、低コストでそこそこ優秀なオーバークロック耐性を実現する高コストパフォーマンスなDRAMチップです。ただ、具体的にD-dieとC-dieが何が違い、どう改良されているのかは分かりません。
詳しいオーバークロック耐性などは実際に試してからのお楽しみ。
コンポーネント情報をチェック
Thaiphoon Burnerを使ってメモリのコンポーネント情報をチェックしました。製造メーカーは「Hynix」で、ダイ(チップ)の詳細は「8 Gb D-die」です。ほぼ間違いなくHynix D-dieが搭載されています。
開封 & 外観チェック
パッケージは黒一色にカラフルなフォントで「v-color」とだけ書かれた、シンプルなデザインです。
反対側には、代理店OCMEMORYの保証シールが貼ってありました。
保証シールには「ライフタイム保証」と記載があります。保証規定内の使い方で初期不良や故障になった場合、永久保証とは違って同じ製品との交換で対応になる保証方法です(※修理しない)。
もし現行品が終息していた場合は、同等品かそれ以上の製品との交換になるとのこと。
プラスチック製の梱包で、メモリが1枚ずつ収められています。2枚セットだけど1枚ずつ梱包されているのはちょっと珍しいですね。
「V-color DDR4 PRISM II RGB」のヒートシンクはとても指紋が付きやすいため、ヒートシンクに付いた汚れを拭き取るためのクリーニングクロスが付属しています。
CPUクーラーの受熱ベースプレート面のような映り具合です。ヒートシンク上部に取り付けられたRGBバーは、マザーボード各社のRGB LED制御ソフトでライティングを設定できます。
ヒートシンクの下はブラックカラーな基板のようです。黒色のメモリは割と安価なDDR4メモリがよく見かけます。
LEDライティングのイメージ
システムに通電すると、自動的にLEDライティングバーが虹色に点灯します。
コバルトブルーやライムグリーンも、爽やかな発色でとてもキレイです。
横から見るとこんな感じ。メモリスロット周辺がLEDライティングで照らされて、かなり雰囲気が出ます。
テスト環境と検証方法
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Ryzen 9 3950X | |
CPUクーラー | Corsair H100i Pro RGB240 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASRock X570 Taichi | |
メモリ | VOC3600CL18D-16GBP2 | |
グラフィックボード | GTX 1650 4GB | |
SSD | NVMe 250GB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 | |
SATA 2TB使用SSD「Micron 1100」 | ||
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1903」 |
検証にはAMD X570プラットフォームを使用します。CPUに「Ryzen 9 3950X」、マザーボードは「ASRock X570 Taichi(BIOSはP2.50)」です。
メモリのテスト方法は以下の通り。
- SiSoft Sandra Lite 20(メモリ帯域幅テスト)
- Karhu RAM Test(メモリ安定性テスト)
SiSoft Sandraでメモリの実効帯域幅(= 実際にどれくらいの性能が出ているのか?)を計測したあと、RAM Testを使ってエラーが出ずに安定した動作が可能かどうかを調べます。
SiSoft Sandraはそれなりに負荷が重たいテストではあるものの、短時間で終わるので案外すんなりと通りやすいです。一方、RAM Testは「カバー率」と呼ばれる指標で安定性を評価します。
安定性がダメな場合は、カバー率が100%に届くことはほぼないです。だいたい10%くらいでエラーが検出されてテストが自動で停止します。ちもろぐでは、300%以上カバーできれば問題ないと判断します。
定格クロックで動作検証
まずはマザーボードのUEFIからXMPプロファイルを読み込み、仕様どおりの動作ができるかどうかを検証です。
テスト結果 | レイテンシ設定値 |
---|---|
問題なく安定動作が確認できました。X570プラットフォームはBIOSアップデートで確実にメモリ周りが安定してきてたので、DDR4-3600程度なら基本的には余裕で動作します。
SiSoft Sandraで計測した実効帯域幅は「33.61 GB/s」です。2枚挿しかつレイテンシ設定が遅めなので、等速より少し遅めの帯域幅になります。
メモリのオーバークロックを検証
DDR4-3600のままレイテンシを詰める
AMD Ryzen環境ではDDR4-3600くらいあればクロックは十分です。ここから更に効率よく性能アップを目指すなら、レイテンシを小さくするのが効果的。たとえば「CL19」の部分を「CL16」にするなど。
今回は「19-22-22-42」になっているレイテンシを「16-19-19-39」に縮めてみてテストを行ってみた。
テスト結果 | レイテンシ設定値 |
---|---|
意外とすんなりとテストが通ってしまった(驚き)。RAM Testの安定性テストはカバー率300%を問題なくクリアし、安定した動作です。
SiSoft Sandraによる実効帯域幅は「34.78 GB/s」を記録。DDR4-3600(CL19)よりも約3.5%、実際のメモリ性能が早くなっています。
DDR4-3733を試してみる
次はXMPプロファイルのまま、クロックだけをDDR4-3733へ引き上げてみます。なお、メモリの動作モードはBIOS側から明示的に指定して、自動的に1:2モードに切り替わらないように調整しました。
テスト結果 | レイテンシ設定値 |
---|---|
安定性テストはまったく問題なく300%をクリア。SiSoft Sandraの帯域幅テストも当然クリアして「34.66 GB/s」を記録しました。レイテンシはXMPのままなので、DDR4-3600(CL16)には届かないですね。
ちなみにレイテンシを18-20-20-40に縮めてテストした場合は、RAM Testは通らなかったです。SiSoft Sandraは通りましたが「34.46 GB/s」だったので、DDR4-3733以上でレイテンシを詰めるのはやや難しい印象。
DDR4-4000に挑戦してみる
第3世代RyzenはDDR4-3733~3800を超えると、メモリの動作モードが強制的に「1:2」に切り替わります。そのため、見た目のクロックはスゴイけれど実際の性能はさほど出なくなるため、実用上のメリットは薄いです。
ですが、一応DDR4-4000を試しておきます。レイテンシをXMPプロファイルの初期値のまま、クロックだけをDDR4-4000に引き上げてテストです。
テスト結果 | レイテンシ設定値 |
---|---|
メモリの動作モードはやはり「1:2」に切り替わり、RAM Testの安定性テストは余裕でクリアしました。SiSoft Sandraで計測した実効帯域幅は「33.11 GB/s」で、XMPプロファイルをそのまま使った時よりも遅いです。
DDR4-4400に挑戦してみる
DDR4-4133(20-24-24-44)で検証すると意外とRAM Testが通ったため、さらに高いクロックを目指して検証を続けました。
- DDR-4400(20-22-22-42 @1.398 V)はRAM Testが7%でエラー
- DDR-4400(20-24-24-44 @1.410 V)はRAM Testが37%でエラー
- DDR-4400(20-26-26-46 @1.446 V)は無事クリア
結果的にレイテンシを緩めてメモリ電圧を追加すれば、DDR4-4400の安定動作も可能です。
テスト結果 | レイテンシ設定値 |
---|---|
この設定でSiSoft Sandraを実行すると、実効帯域幅は「33.17 GB/s」でした。実効性能はイマイチかもしれませんが、とりあえずDDR4-4400で動作できることは分かったので良しとします。
テスト結果まとめ:意外と遊べるメモリです
実効帯域幅(設定別)
クロック | レイテンシ | モード | 安定性 | 実効性能 |
---|---|---|---|---|
DDR4-3600 | 18-22-22-42 | 1:1 | 300%クリア | 33.61 GB/s |
DDR4-3600 | 16-19-19-39 | 1:1 | 300%クリア | 34.78 GB/s |
DDR4-3733 | 18-22-22-42 | 1:1 | 300%クリア | 34.66 GB/s |
DDR4-4000 | 18-22-22-42 | 1:2 | 300%クリア | 33.11 GB/s |
DDR4-4133 | 20-24-24-44 | 1:2 | 300%クリア | 33.52 GB/s |
DDR4-4400 | 20-26-26-46 | 1:2 | 300%クリア | 33.17 GB/s |
筆者はメモリのオーバークロックに関しては、ほぼ初心者です。それでもテキトーにそれっぽいレイテンシを入力しただけの素人な設定で、「VOC3600CL18D-16GBP2」は問題なく動作できます。
DDR4-3600以上のメモリクロックで動作できますし、レイテンシを緩めてメモリ電圧を追加するならDDR4-4400まで安定動作を確認できました。レイテンシを詰めるのは少々厳しい印象ですが、クロックを伸ばす分には柔軟なメモリです。
まとめ:低コストでかなりの高クロックを狙える
価格はHynix C-dieを採用する同スペックのオーバークロックメモリと比較して、やや高めです。XMPプロファイルを適用して使うだけならコストパフォーマンスはイマイチかもしれません。
一方で、Hynix D-dieチップになったおかげなのかメモリクロックは伸ばしやすく、DDR4-3600ではレイテンシを若干詰めやすくなっています。手動でオーバークロックを設定する前提なら妥当な価格のメモリです。
「VOC3600CL18D-16GBP2」の良いところ
- AMD Ryzen環境でDDR4-3600が安定動作
- C-dieの後継「Hynix D-die」を採用
- クロックは意外と伸ばしやすい印象アリ
- 最大でDDR4-4400まで安定動作を確認
- LEDライティングに対応した光るデザイン
- ライフタイム保証
- 手動でOCする前提ならコスパは良い
最大の強みはHynix D-dieチップ搭載のメモリが確実に入手できる点。
スペックの割に安価な格安オーバークロックメモリの多くはHynix C-die採用ではありますが、メーカー側がHynix C-die搭載をアピールしているわけではありません。ほとんどがC-dieなはずですが実態は不明です。
対して「VOC3600CL18D-16GBP2」はメーカー側がしっかりとHynix D-die搭載を強くアピールしている製品で、信頼感が違います。よって低コストでそこそこのメモリOCを楽しみたい人におすすめです。
「VOC3600CL18D-16GBP2」の微妙なとこ
- DDR4-3600(CL18)としては普通な価格
- 取り扱いショップは少なめ(2019/12時点)
まだ発売が始まってばかりだからか、価格設定はそれほど安くないです。XMPプロファイルだけでなく、手動でオーバークロックを楽しむ前提でなければコストパフォーマンスは普通です。
もう一つの弱点は入手性。記事を書いた時点では、PCショップアークとOC Works、あとはPC1sで取り扱いがあります(※Amazonでは今は発売されていませんが、今後も発売されるかは未定)。
以上「V-color DDR4 PRISM II RGBをレビュー:Hynix D-die搭載メモリは意外と遊べる」でした。
V-color DDR4 PRISM II RGBシリーズを入手する
現在、国内ではDDR4-3600モデルが約1.2万円。さらに選別されたHynix D-dieを搭載するDDR4-4133モデルは約1.7万円で購入できます。DDR4-4133モデルは他と比較しても明らかに安いので、コスパはDDR4-3600よりも良さそうです。
「V-color DDR4 PRISM II RGBシリーズを入手する」の下のモデル、Hynix D-dieだと思うのですがHynix C-dieと表示されてます。
広告部分での誤記はまずいと思うのでお知らせです。
あ…ホントだ。詳細テキストが反映されていないですね。修正します(_ _)
上位の4133、8*2kitが尼で9000円なんですが、約2年経った今でも遊べる良コスパメモリですか?コレ→(gp/product/B08B681349)