Ryzen 5 3500(6コア6スレッド)をレビューします。価格は約1.7万円で、Core i5 9400F(6コア6スレ)やRyzen 5 2600(6コア12スレ)とほぼ同じ。同価格帯の6コアCPUで、Ryzen 5 3500はどれほどの性能を発揮するのか、詳しく検証です。
打倒Core i5な「Ryzen 5 3500」
今まで2万円以上しかなかったZen2のラインナップに、ようやく2万円を下回る「Ryzen 5 3500」が登場しました。2万円以下だと、1.7万円から買える「Core i5 9400F」がとても強力なポジションを持っていますが、ほぼ同じ価格のRyzen 5 3500の登場で勢力図が大きく変わりそうです。
CPU | Ryzen 5 3500 | Ryzen 5 2600 | Core i5 9400F |
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ロゴ | |||
世代 | 3rd Zen 2 | 2nd Zen+ | 9th Coffee Lake R |
プロセス | 7 nm | 12 nm | 14 nm++ |
TIMCPU内部の熱伝導材 | ソルダリングIHSは金メッキ仕様 | ソルダリング | サーマルグリス個体によりソルダリング |
ソケット | Socket AM4 | Socket AM4 | LGA 1151 (v2) |
チップセット | AMD 400 / 500 | AMD 300 / 400 | Intel 300 |
コア数 | 6 | 6 | 6 |
スレッド数 | 6 | 12 | 6 |
ベースクロック | 3.60 GHz | 3.40 GHz | 2.90 GHz |
ブーストクロックシングルコア使用時 | ~ 4.10 GHz | ~ 3.90 GHz | 4.10 GHz |
ブーストクロック全コア使用時 | ~ 4.10 GHz | ~ 3.90 GHz | 3.90 GHz |
手動OC | 可能 | 可能 | 不可 |
L1 Cache | 384 KB | 576 KB | 384 KB |
L2 Cache | 3 MB | 3 MB | 1.5 MB |
L3 Cache | 16 MB | 16 MB | 9 MB |
対応メモリ | DDR4-3200 | DDR4-2933 | DDR4-2666 |
チャネル | x2 | x2 | x2 |
最大メモリ | 128 GB | 128 GB | 128 GB |
ECCメモリ | U-DIMMのみ | U-DIMMのみ | 不可 |
PCIeレーン | Gen4 | Gen3 | Gen3 |
16 + 4 | 16 + 4 | 16 | |
レーン構成 | 1×16 + 1×4 | 1×16 + 1×4 | 2×8 |
2×8 + 1×4 | 2×8 + 1×4 | 1×8 + 2×4 | |
1×8 + 2×4 + 1×4 | – | – | |
内蔵GPU | なし | なし | なし |
GPUクロック | – | – | – |
TDP | 65 W | 65 W | 65 W |
MSRP | $ 149 | $ 159 | $ 182 |
参考価格国内Amazonの価格 | 16980 円 | 16980 円 | 17414 円 |
1.7万円くらいで似たスペックのCPUをまとめました。
やはり最大の焦点は、Ryzen 5 3500とCore i5 9400Fでしょう。どちらも6コア6スレッドで、動作クロックも最大4.1 GHzでほぼ同じです。第2世代のRyzenまでなら、同じコア数のインテルCPUの方が高性能になりやすいですが、第3世代では1コアあたりの性能が大きく改善しています。
よって同じ価格、同じコア数スレッド数で、Ryzen 5 3500がCore i5 9400Fをハッキリと打ち負かすことができるかどうかが注目ポイントです。
Ryzen 5 3500を実機レビュー
パッケージング & 開封
第3世代RyzenのミドルクラスCPUらしく、パッケージデザインはスッと奥行きがアッサリめです。
反対側もシンプルなデザインで、シルバー色の背景に黒色のフォントで「Zen 2 Architecture(Zen2設計)」とアピールしています。いろいろな言語がデザインされていますが、日本語だけは記載なし・・・ちょっと悲しいですね。
封を切って、中身を引っ張り出します。
パッケージ内容は、左から順に「付属CPUクーラー」「Ryzen 5 3500本体」「保証書」の3つです。
付属CPUクーラーはAMD純正「Wraith Stealth」を同封。ファンの高さが60 mm未満のコンパクトなCPUクーラーで、最大65 Wの熱に対応しています。Ryzen 5 3500程度なら、とりあえず冷やせる性能です。
CPU本体のデザインです。左下のソケット方向マーク(三角形)が小さくなっているので、裏面のマークも確認して、ソケット取り付け時に間違えないよう注意が必要ですね。
「ASRock X570 Taichi」にRyzen 5 3500をセットしました。Ryzen対応のSocket AM4は、インテルのLGA 1151より固定方法がラクで気に入ってます。レバーも小型でCPUクーラーのマウンティングプレートと干渉しづらく、ユーザーフレンドリーです。
テスト環境の紹介と比較対象
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
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PC | ver.AMD | ver.Intel |
CPU | Ryzen 5 3500 | Core i5 9400F |
CPUクーラー | 虎徹Mark II120 mm中型空冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | ASRockZ390 Phantom Gaming 6 |
メモリ | DDR4-2666 8GB x2使用メモリ「G.Skill FlareX C14」 | |
グラフィックボード | RTX 2080 Ti使用グラボ「MSI Gaming X Trio」 | |
SSD | NVMe 250GB使用SSD「Samsung 970 EVO Plus」 | SATA 500GB使用SSD「Samsung 860 EVO」 |
SATA 2TB使用SSD「Micron 1100」 | ||
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1903」 | |
ドライバ | NVIDIA 445.87 |
Ryzen 5 3500をテストするPCスペックをまとめました。CPU本体の比較を行うので、基本的にCPUとマザーボード以外はほぼ同じパーツで揃えています。
CPUクーラーはBTOメーカーでも採用例が多い「虎徹Mark II」、メモリは容量16 GB(クロックは一般的なDDR4-2666)です。
グラフィックボードはレビュー時点で最強性能の「RTX 2080 Ti」を使用しました。CPUのゲーミング性能を計測するのが目的なので、検証に使うグラフィックボードはなるべく高性能な方が良いです。
システムストレージはどちらもSSDで揃え、アプリケーションやベンチマークはSATA接続の2TB SSDから起動しています。おおむね、CPU本体の性能差をテストできるスペック環境です。
Ryzen 5 3500のデータだけでは意味がないので、比較する用にお値段がほぼ同じな「Ryzen 5 2600(6コア12スレッド)」と「Core i5 9400F(6コア6スレッド)」も同時にテストします。
CPU性能をチェック
レンダリング性能
「Cinebench R15」は日本国内だけでなく、国際的にもCPU用の定番ベンチマークソフトです。内容はレンダリングで、CPUが持っている理論上の性能がハッキリと反映されやすいです。
CPUのすべてのコアを100%使用した場合の性能を叩き出すため、理論上の目安になります。ただし、あくまでも目安であり、CPUの性能を代表するスコアではない点は注意してください。
Cinebench R15 / マルチスレッド性能
すべてのCPUコアを使用した場合の「マルチスレッド性能」は、6コア12スレッドのRyzen 5 2600がトップ。同じ6スレッド同士だと、Ryzen 5 3500が若干上回る性能です。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能
1コアあたりの性能を示す「シングルスレッド性能」をチェックすると、Ryzen 5 3500が首位に。同じ6スレッドでもRyzen 5 3500が勝つのは、1コアあたりの性能差から来ているのがよく分かります。
Ryzen 5 2600はマルチスレッド性能こそ優秀ですが、シングルスレッド性能は完全にRyzen 5 3500に抜かされており、汎用性(いろいろなソフトで性能を出せるか※)では負けてしまいます。
※代表例としてはAdobe系のソフトウェア。Photoshopなどは特に顕著です。
Cinebench R15の後継バージョン「Cinebench R20」も検証しておきました。
Cinebench R20 / マルチスレッド性能
6スレッドのRyzen 5 3500が、あと少しで12スレッドのRyzen 5 2600に追いつきそうな勢いを見せています。第3世代Ryzenはホントに効率の良いCPUです。
Cinebench R20 / シングルスレッド性能
シングルスレッド性能は、やはりRyzen 5 3500がトップです。
Cinebenchだけでなく、実際に「Blender」というレンダリングソフトを使って処理速度を計測。内容はスポーツカー「BMW」を生成するのにかかった時間で比較します。
Blender 2.79.7 / 「BMW」の生成時間
レンダリング時間は355秒で、Ryzen 5 2600より50秒ほど遅く、Core i5 9400Fより54秒も速い結果です。
計算速度
Geekbench 4.1はマルチプラットフォーム対応のベンチマークソフトです。内容は多種多様なテストのパッケージで、AESなど暗号処理系の計算速度が問われています。主にCPUの計算速度をスコア化することになります。
Geekbench 4.1 / シングルスレッド性能
スゴイですね。Ryzen 5 2600と比較して、Ryzen 5 3500は約25%もシングルスレッドの計算速度が高速化し、現在のインテルCPUに並ぶまでに進化しています。
Geekbench 4.1 / マルチスレッド性能
マルチスレッドの計算速度は、Core i5 9400Fはもちろん、Ryzen 5 2600すら飛び越えてトップにつけました。
動画エンコード
「動画エンコードにかかる時間」は、CPUの性能を知るうえで分かりやすい指標のひとつです。
まずは定番のフリー動画エンコードソフト「Handbrake」を使ってエンコード性能を検証します。約1 GBのフルHD動画(.mkv)を、Handbrakeの標準プリセットを使ってエンコードして、ログに表示される「平均処理速度」で性能比較します。
Handbrake / Fast 480p(x264)
Ryzen 5 3500のエンコード速度は、Core i5 9400Fより1割も高速です。
Handbrake / Fast 1080p(x264)
フルHDからフルHDへの動画エンコードでは、スレッド数にそった結果になります。それでもCore i5 9400Fをわずかに上回っています。
Handbrake / Fast 480p(x265)
同じプリセットのまま、エンコード形式をH.265(x265)に変更してテストすると、驚くことにRyzen 5 3500がRyzen 5 2600を大幅に超える結果です。
どうして6スレッドのRyzen 5 3500が、12スレッドのRyzen 5 2600を超える性能なのか。かんたんに言うと、第3世代(Zen2)のRyzenは古い世代と違って、エンコードを高速処理できるように設計の改善が施されているからです。
動画エンコードソフトは「AVX2」と呼ばれる命令セットを使って、動画のエンコードを爆発的に高速化しています。しかし、従来のRyzenはこのAVX2という命令を半分ずつしか処理できませんでした。毎回データを半分に切り分けて、幅が128 bitしかない細いベルトコンベアに乗せて処理していたのです。
だから従来のRyzenは、多くの動画エンコードソフトで本来の処理性能を発揮できないという弱点を抱えていました(※一部のソフトは、開発者が最適化することでRyzenでの高速処理を可能にしていた)。
この弱点を解消するべく、第3世代のRyzenではAVX2を処理するために使うベルトコンベアの幅を2倍の256 bit幅に拡張し、一度に処理できるデータ量を2倍に改善。
インテルCPUと同様のベルトコンベアを装備したため、きちんとCPUのコア数に見合ったエンコード処理速度を発揮できるように進化しました。
Handbrake / Fast 1080p(x265)
フルHDからフルHDへH.265形式でエンコードすると、Ryzen 5 3500がトップに立ちました。
- x264guiExをダウンロード(rigaya氏の公式サイト)
日本では大人気の動画編集ソフト「Aviutl」も検証します。rigaya氏が開発した拡張プラグイン「x264guiEx」と「x265guiEx」を使って、2400フレームの動画をエンコード。
Aviutl / x264guiExエンコード
Ryzen 5 3500は、検証した4つのCPUでトップクラスのエンコード速度を叩き出しました。
Aviutl / x265guiExエンコード
x265エンコードでは、よりマルチスレッド性能が効いてくる結果になりますが、それでもRyzen 5 3500がトップです。
動画編集
「Davinci Resolve」はフリー動画編集ソフトとして、Aviutlと並んで完成度の高いソフトです。カラーグレーディングやVFX合成などプロ仕様な機能に加え、PCスペックをフルに活用できる洗練された設計が大きな強み。
今回の検証ではPuget Systems社のベンチマークプリセットを使って、Davinci Resolve 16における動画編集のパフォーマンスを計測します。バッチ処理でDavinci Resolveを動かして、それぞれの処理にかかった時間からスコアを出す仕組みです。
Davinci Resolve / 4K動画編集
4K動画編集は、コア数とスレッド数が多いほど処理性能がアップします。同じ6コアのRyzen 5 3500とCore i5 9400Fは、ほぼ同じ処理速度です。12スレッドのRyzen 5 2600は、この中ではトップに立ちます。
テスト内容 | Ryzen 5 3500 | Ryzen 5 2600 | Core i5 9400F | Core i3 9100F | 単位 | |
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4K | Overall Score | 684 | 761 | 697 | 567 | Score |
4K Test Average | Basic Grade | 54.3 | 62.7 | 51.3 | 37.6 | Score |
4K Test Average | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 77.1 | 80.1 | 79.2 | 62.7 | Score |
4K Test Average | Temporal NR – Better 2 Frames | 73.2 | 86.1 | 77.8 | 65.5 | Score |
4K Test Average | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 87.1 | 91.4 | 92 | 84.6 | Score |
4K Test Average | Optimized Media | 50.5 | 60.1 | 48 | 33.3 | Score |
4K CinemaRAW Light | Codec Average | 67.7 | 80.9 | 68.9 | 58.1 | Score |
4K H264 150Mbps 8bit | Codec Average | 71.9 | 75.6 | 73.9 | 62.7 | Score |
4K ProRes 422 | Codec Average | 73.4 | 80.3 | 76.6 | 63 | Score |
4K ProRes 4444 | Codec Average | 63.8 | 67.7 | 63.7 | 49.9 | Score |
4K RED | Codec Average | 65.4 | 75.9 | 65.1 | 50 | Score |
4K CinemaRAW Light | Basic Grade | 23.74 | 27.58 | 22.98 | 17.11 | FPS |
4K CinemaRAW Light | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 15.29 | 17.7 | 16.13 | 13.29 | FPS |
4K CinemaRAW Light | Temporal NR – Better 2 Frames | 10.02 | 14.15 | 10.54 | 10.85 | FPS |
4K CinemaRAW Light | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 6.91 | 7.28 | 7.18 | 6.33 | FPS |
4K CinemaRAW Light | Optimized Media | 47.75 | 58.98 | 44.54 | 28.2 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | Basic Grade | 27.82 | 29.79 | 26.52 | 19.14 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 16.25 | 16.97 | 16.61 | 14.31 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | Temporal NR – Better 2 Frames | 16.43 | 17.42 | 18.31 | 15.05 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.41 | 7.6 | 7.76 | 7.56 | FPS |
4K H264 150Mbps 8bit | Optimized Media | 35.28 | 38.03 | 33.22 | 24.71 | FPS |
4K ProRes 422 | Basic Grade | 27.28 | 30.43 | 25.35 | 18.38 | FPS |
4K ProRes 422 | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 16.43 | 17.62 | 17.62 | 13.63 | FPS |
4K ProRes 422 | Temporal NR – Better 2 Frames | 16.43 | 18.07 | 18.77 | 15.37 | FPS |
4K ProRes 422 | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 7.48 | 7.76 | 7.89 | 7.76 | FPS |
4K ProRes 422 | Optimized Media | 76.59 | 90.9 | 72.55 | 51.79 | FPS |
4K ProRes 4444 | Basic Grade | 14.16 | 16.59 | 12.94 | 9.71 | FPS |
4K ProRes 4444 | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 11.94 | 8.59 | 11.55 | 8.75 | FPS |
4K ProRes 4444 | Temporal NR – Better 2 Frames | 10.17 | 12.34 | 9.96 | 7.52 | FPS |
4K ProRes 4444 | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 6.78 | 6.94 | 7.48 | 6.62 | FPS |
4K ProRes 4444 | Optimized Media | 53.76 | 67.5 | 52.71 | 36.18 | FPS |
4K RED | Basic Grade | 13.37 | 16.78 | 13 | 9.34 | FPS |
4K RED | OpenFX – Lens Flare + Tilt-Shift Blur + Sharpen | 10.3 | 11.81 | 10.29 | 7.43 | FPS |
4K RED | Temporal NR – Better 2 Frames | 9.5 | 10.85 | 9.43 | 7.4 | FPS |
4K RED | 3x Temporal NR – Better 2 Frames | 5.4 | 6.01 | 5.59 | 4.84 | FPS |
4K RED | Optimized Media | 19.92 | 23.68 | 18.98 | 13.12 | FPS |
Fusion | Overall Score | 858 | 879 | 881 | 89 | Score |
Fusion Test Average | Score | 85.8 | 87.9 | 88.1 | 1.47 | Score |
Fusion_3DBacklitText | Reference FPS | 1.9 | 1.68 | 1.69 | 17.39 | FPS |
Fusion_PhoneComposite | Reference FPS | 13.14 | 16.76 | 14.73 | 5.37 | FPS |
Fusion_TurbulantParticles | Reference FPS | 5.18 | 4.84 | 5.57 | FPS |
ゲーム実況配信
ゲーム配信ソフトで特に有名な「OBS(略:Open Broadcaster Software)」を使って、CPUの配信性能を検証します。
なお、あくまでもCPUの性能評価としてOBSを使うだけであって、現時点では「ゲーム配信するならNVEncが有利。」と考えてます。Turing世代のNVEncならかなり高画質ですし、ゲーム中のフレームレートの下落も少ないです。
では、CPUを使ったゲーム配信の性能を検証しましょう。
FF14ベンチマーク(紅蓮のリベレーター)を最高設定で実行中に、OBSで録画と配信を同時に行います。配信設定は60 fpsのフルHDで、プリセットは標準よりもやや軽い「veryfast」です。
統計タブに表示されるドロップフレーム率で「コマ落ちしたフレーム数」を記録し、配信した総フレーム数で割り算して割合を求めました。0%がベストで、5%を超えたらイライラする配信になります。
配信中のドロップフレーム率設定は「veryfast」で固定 | ||||
---|---|---|---|---|
上限 | CPU | レンダリングラグ | エンコードラグ | 平均fps |
144 fps | Ryzen 5 3500 | 0.5% | 5.2% | 73.9 fps |
Ryzen 5 2600 | 0.0% | 0.0% | 84.4 fps | |
Core i5 9400F | 0.0% | 32.1% | 101.0 fps | |
Core i3 9100F | 0.4% | 78.3% | 110.2 fps | |
60 fps | Ryzen 5 3500 | 0.4% | 13.5% | 59.0 fps |
Ryzen 5 2600 | 0.0% | 0.0% | 57.3 fps | |
Core i5 9400F | 0.0% | 10.7% | 57.3 fps | |
Core i3 9100F | 0.0% | 74.1% | 57.8 fps |
6コア6スレッドだと、veryfast設定ですら目に見えてカクカクとした動作でかなり苦しいです。とはいえ今更OBSをCPUでエンコードするメリットはほとんど無いので、グラフィックボードにお金を掛けたほうがコスト効率は良いですね。
圧縮と解凍
ファイルの圧縮と解凍のスピードを、有名なフリー解凍ソフト「7-Zip」を使って計測。付属のベンチマークツールで、圧縮と解凍のスピードを「MIPS」という単位で分かりやすく表示してくれます。
7-Zip Benchmark / 圧縮
以前は苦手としていた「圧縮」も、第3世代Ryzenでは克服してきちんと性能を出し切れるようになっています。Ryzen 5 3500はRyzen 5 2600にあと1割まで迫り、Core i5 9400Fを置いてけぼりに。
7-Zip Benchmark / 解凍
「解凍」はもともとRyzenの得意分野で、スレッド数に比例した結果になりました。
ブラウザの処理速度
ブラウザ上で動作するベンチマーク「mozilla kraken 1.1」を使って、CPUがブラウザ上のWebアプリをどれだけ速く処理できるかを検証する。単位はミリ秒なので、短いほど処理が速いです。
Mozilla Kraken 1.1 / ブラウザの処理速度
シングルスレッド性能の改善が効いています。Ryzen 5 2600より2割も高速化し、Core i5 9400Fですら遅れを取るスピードです。
Photoshop CC
写真編集の定番ソフト「Photoshop CC」を検証。バッチファイルを使って実際にPhotoshopを動かして、それぞれの処理に掛かった時間からスコアを算出します。
Photoshop CC / 総合的な処理性能
「RyzenはAdobeと相性が悪い。」
なんて言ってる人を見かけたら気をつけましょう。確かに、古いRyzenはシングルスレッド性能が不足していて、Photoshopのようなマルチスレッド性能が効きにくいソフトを効率よく動かせませんでした。
しかし、第3世代Ryzenになってからは大幅に改善され、同じコア数のインテルCPUに対してRyzenが打ち勝つレベルにまで進歩しています。Ryzen 5 3500はCore i5 9400Fに並ぶ処理速度で、Photoshop用に問題なく使える性能です。
CPU | Ryzen 5 3500 | Ryzen 5 2600 | Core i5 9400F | Core i3 9100F |
---|---|---|---|---|
総合スコア | 809.6 | 765 | 781 | 748 |
一般処理のスコア | 71.9 | 68.4 | 73.1 | 69.4 |
フィルタ系のスコア | 82.8 | 80.6 | 79.5 | 75 |
Photomergeのスコア | 95.4 | 84.5 | 85.3 | 85.2 |
GPUスコア | 88.5 | 84.4 | 87 | 82.5 |
テストの詳細結果 | ||||
RAW画像の展開 | 2.87 | 3.63 | 3.42 | 3 |
500MBへのリサイズ | 1.3 | 1.41 | 1.33 | 1.29 |
回転 | 1.29 | 1.36 | 1.11 | 1.24 |
自動選択 | 16.41 | 17.3 | 15.74 | 18.16 |
マスク | 5.11 | 5.26 | 4.33 | 4.66 |
バケツ | 2.64 | 2.73 | 2.52 | 2.92 |
グラデーション | 0.52 | 0.44 | 0.47 | 0.56 |
塗りつぶし | 14.36 | 16.65 | 18.44 | 17.65 |
PSD保存 | 8.78 | 9 | 9.54 | 9.36 |
PSD展開 | 3.09 | 3.34 | 2.96 | 2.98 |
Camera Raw フィルタ | 6.78 | 7.22 | 6.83 | 8.03 |
レンズ補正フィルター | 16.59 | 17.85 | 17.92 | 16.92 |
ノイズ除去 | 21.84 | 19.76 | 23.28 | 25.02 |
スマートシャーペン | 26.92 | 26.61 | 25.86 | 31.89 |
フィールドぼかし | 16.5 | 17.64 | 17.3 | 17.23 |
チルトシフトぼかし | 16.48 | 17.49 | 16.84 | 18.08 |
虹彩絞りぼかし | 18.59 | 18.93 | 19.08 | 20.56 |
広角補正フィルター | 20.61 | 21.56 | 23.53 | 23.77 |
ゆがみツール(Liquify) | 11.26 | 11.75 | 11.62 | 11.97 |
Photomerge(2200万画素) | 85.9 | 95.26 | 92.59 | 91.02 |
Photomerge(4500万画素) | 108.09 | 124.36 | 125.39 | 127.89 |
※「Puget Systems Adobe Photoshop CC Benchmark」を使用しました。
Microsoft Office
PCMark 8を使って、Microsoft Officeの処理速度を計測します。オフィスソフトはマルチスレッドよりシングルスレッド依存のタスクになるため、基本的には第3世代RyzenやインテルCPUの方が有利です。
Microsoft Word / 平均処理時間
Wordの処理速度はシングルスレッド性能の差が、わかりやすく反映される結果に。やはりRyzen 5 2600のようなシングルスレッドの遅いCPUは、Officeソフトには不向きなようです。
Microsoft Excel / 平均処理時間
Excelはシングルスレッド性能と、多少のマルチスレッド性能も求められます。6コアでシングルの速いCore i5 9400FとRyzen 5 3500が、おおむね互角の処理速度です。
Microsoft PowerPoint / 平均処理時間
PowerPointでは、Ryzen 5 3500が並外れた処理速度を見せつけます。
ビデオチャット(VC)の処理性能
コロナウイルスの流行によって、テレワーク(在宅勤務)の導入が進んでいます。ビデオ会議に使われるビデオチャット(VC)ソフトも出番が増えてきたため、本レビューより「ビデオチャットの性能」を検証に加えてみます。
検証方法は「PCMark 10」のビデオチャットテストを使います。内容はビデオチャットを再生したときのフレームレート、顔認識の処理速度、エンコード(アバター着用など)の処理速度などが含まれ、総合スコアを算出できます。
PCMark 10 / ビデオチャットの性能
ビデオチャットの総合的な性能は、Ryzen 5 2600がトップで、次にRyzen 5 3500でした。顔認識はかなりマルチスレッド性能が求められるようで、12スレッドあるRyzen 5 2600にとって有利です。
PCMark 10 / ビデオチャットの快適度
顔認識やアバター着用など複雑なタスクをせず、ただ再生するだけなら性能は頭打ちです。
「IPC」でCPUの真の進化をチェック
最後は「IPC(クロックあたりの処理性能)」をテストします。IPCが高いとは、つまるところ「同じクロックなのに性能が高い」わけですから、CPUのクロック周波数を固定してベンチマークを行えばある程度は明らかにできます。
方法はシンプルで、クロック周波数を3.5 GHzに固定してCinebench R15をシングルスレッドモードで実行するだけ。
Cinebench R15 / シングルスレッド性能@3.5 GHz
すると、キレイにIPCの差がデータとして現れます。
グラフをザッと見た感じ、IPCの速さはやはりCPUの世代に比例しています。現時点では、第3世代Ryzen、第9世代Intel Core、第2世代Ryzenの順にIPCが高いです。
ゲーミング性能の違いを検証
ゲーミングで高いフレームレートを出すためには、グラフィックボードが一番重要。ですが、グラフィックボードが高性能であればあるほど、CPUに求められる性能も高くなります。
現時点で最強のグラボである「RTX 2080 Ti」を使って、FF14:漆黒の反逆者ベンチマークを実行してみると、同じグラボなのに実際の性能はかなり違っているのが分かります。
これが「CPUボトルネック」と呼ばれる現象です。では、Ryzen 5 3500がRTX 2080 Tiの性能をどこまで引き出せるのかを検証していく。
Apex Legend
Apex Legends1920 x 1080 / 最高設定 / 射撃訓練 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Apex LegendはもともとCPUボトルネックが出づらい傾向が強いのですが、若干ながらCore i5 / i3の方がフレームレートが高いです。
Battlefield V
Battlefield V 1920 x 1080 / 最高設定(DX11) / 最後の虎 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
Battlefiled VはCPU負荷がかなり大きいゲームです。トップはCore i5 9400Fで、やはりインテルは安定しています。Ryzen 5 3500はRyzen 5 2600と比較して大幅な改善ですが、Core i5は超えられず。
CS : GO
Counter Strike : Global Offensive1920 x 1080 / 最高設定 / Dust II |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
CS:GOはマップ「Dust II」にて検証です。結果はインテルCPUの優位性を認められます。とはいえ、どのCPUを使ってもCS:GOは余裕で240 fps以上を安定して叩き出せるので、実用上は特に問題ないです。
Call of Duty : Black Ops IV
Call of Duty : Black Ops IV1920 x 1080 / 最高設定 / Contraband |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
コールオブデューティーはマップ「Contraband」で計測。尋常ならざる異様なCPU負荷を誇るゲームで、4コアのCore i3 9100Fは完全にヘタってます。6コアでようやくマトモに安定し、Ryzen 5 3500はCore i5 9400Fに迫る勢いです。
Fortnite : Battle Royale
Fortnite : Battle Royale1920 x 1080 / 最高設定 / ミスティ・メドウズ |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
フォートナイトは「ミスティ・メドウズ」にて計測。インテルCPUの方が効率よくフレームレートを伸ばせ、Ryzenはやや苦戦です。それでもRyzen 5 3500は、Ryzen 5 2600と比較して2割近くも性能アップ。素直にスゴイです。
Overwatch
Overwatch 1920 x 1080 / エピック設定(100%) / 練習場 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
オーバーウォッチはCore i5の方が伸びやすい傾向です。Ryzen 5 3500は平均240 fpsを保ってはいるものの、Core i3 9100Fやi5 9400Fは最低フレームレートで240 fpsを維持しています。ガチゲーマー的には評価が分かれる性能差ですね。
PUBG
PUBG1920 x 1080 / ウルトラ設定 / 練習場 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
PUBGもインテルCPUが有利で、Ryzen 5 3500はやや苦戦。平均値だけでなく、エイムをすばやく振った時のフレームレートの下落もRyzenでは未だに目立っており、ガチでゲームするならRyzen・・・とは言えない状況です。
Rainbow Six Siege
Rainbow Six Siege 1920 x 1080 / 最高設定 / ファベーラ |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
レインボーシックスシージは「ファベーラ」にて計測しました。こちらはRyzenが健闘していて、Ryzen 5 3500はCore i5 9400Fをわずかに上回る平均フレームレートです。最低フレームレートも安定しています。
ARK Survival Evolve
ARK Survival Evolve 1920 x 1080 / 高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
じわじわと日本国内でも人気が出てきたARK Survival Evolveを、今回のレビューより追加。最高設定はあまりにも重たすぎて非現実的なので、ひとつ下の高設定でテストします。
結果はかなりインテルが有利です。Ryzen 5 3500はRyzen 5 2600よりは大幅にマシですが、Core i3 9100Fと同じ程度のフレームレートで、Core i5 9400Fには抜かされてしまいました。
FF14
FF14 : 漆黒のヴィランズ 1920 x 1080 / 最高品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
FF14(漆黒の反逆者)ベンチマークはインテルCPUが伸びやすいです。Ryzen 5 3500はCore i3 9100Fに並び、Core i5 9400Fには後塵を拝する状況。
Shadow of the Tomb Raider
Shadow of the Tomb Raider 1920 x 1080 / 最高設定(SMAA / DX11) |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
FF14と同じくスクエニが制作した「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」では、インテルCPUが突出して高いパフォーマンスを発揮。Ryzen 5 3500はCore i5 9400Fを超えるシングルスレッド性能を持っていながら、ゲーム性能はなぜか振るわない。
やはり最適化の壁は未だRyzenの前に立ちはだかっています。スクエニはそろそろRyzenユーザーのために、アップデートをしたほうが良いのでは?
モンスターハンターワールド
Monster Hunter World1920 x 1080 / 最高設定 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
モンスターハンターワールドは意外にもRyzen 5 2600が首位に。6コア6スレッドだとCPU負荷率が100%近くで振り切っていて、まだ不足している感がありました。だから12スレッドのRyzen 5 2600が、6スレッドCPUを抑える結果になったのでしょう。
黒い砂漠
黒い砂漠 1920 x 1080 / リマスター品質 |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
黒い砂漠は無料MMORPGでは、世界最高峰のグラフィックを誇るタイトルですが、ソフトの最適化は依然としてイマイチです。
Ryzen 5 2600だとビックリするくらいフレームレートが伸びず、Ryzen 5 3500でようやくいい感じに。ただ、Ryzen自体の性能アップではなく、単にSMT(インテルはHTT)がない状態が効いているのが現実です。
平均パフォーマンス
平均フレームレート 1920 x 1080 / RTX 2080 Tiに対して |
平均フレームレート最低フレームレート(下位3%)
ここまでの検証結果を平均パフォーマンスとしてまとめました。
平均パフォーマンスを見ると、ライバルのCore i5 9400FはRyzen 5 3500より約9.4%も高い平均フレームレートです。ゲームによっては20%近い性能差になる場合もあり、まだまだソフト側の最適化に大きな課題があります。
これでも旧世代のRyzen 5 2600よりは改善されてはいるものの、同価格帯で同じ6コア6スレッドCPUであるCore i5 9400Fに劣っているのが事実です。どこまでゲーム性能を求めるかにもよりますが、フレームレートを追求するならCore i5をおすすめします。
消費電力とオーバークロック
CPUの消費電力といえば、まず頭に浮かぶのは「TDP」です。しかし、TDPはあくまでも「これくらいの発熱量があるから、発熱量に対応したCPUクーラーを使ってね。」という意味合いの方が強く、イコール消費電力ではない※。
よって本レビューでは電力ロガー機能のついた電源ユニットを使って、CPU本体の実際の消費電力を計測します。たとえば、電源ユニットから100 Wの電力が供給されていれば、CPUの消費電力は約100 Wと判断できます。
テスト環境 | ||
---|---|---|
電源ユニット #1システム全体 | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
電源ユニット #2CPUのみ | 850 W(80+ Gold)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 |
電源ユニットを2台使ってCPUとそれ以外のパーツで供給を完全に分割しているため、CPUに給電している電源ユニットの計測値を見れば、CPU本体の消費電力が明らかになる仕組みです。
※半導体の場合は、TDPと消費電力は一致しやすいので「だいたい同じ」と思っても構わない。ただし、最近はマザーボードによって消費電力が大きく変わることも少なくない。
消費電力とワットパフォーマンス
消費電力は、Handbrakeで「Fast 1080p(x264)」プリセットでエンコードしながら測定します。10コア20スレッドCPUまでなら、この方法でCPU使用率は常時100%に張り付き、CPU本体の消費電力をほぼフルに引き出せます。
消費電力(+12Vレールの実測値)
Ryzen 5 3500は平均で約59 Wの消費電力です。Core i5 9400Fとほとんど同じで、Ryzen 5 2600と比較して30%も消費電力が減っています。基本的に第3世代Ryzenは、電力効率が大幅に改善されている傾向が強いです。
ワットパフォーマンス(動画エンコード時)
1ワットあたりの動画エンコード速度(= ワットパフォーマンス)を求めると、Ryzen 5 3500がトップです。Core i5 9400Fは悪くないですが、Ryzen 5 3500が相手では厳しいですね。
CPU温度はかなり大人しい
CPU温度(中央値)
Ryzen 5 3500は中央値で64.5℃です。選別された中でも下位のチップが使われているのか、消費電力の割にはCPU温度がやや高めに出ています。虎徹Mark IIで余裕で冷やせるので特に問題ではないですが、ちょっと気になる傾向です。
Core i5 9400Fとi3 9100Fでは、CPU温度の逆転が起きており、やはりチップの選別具合が発熱に与える影響はとても大きいです。
どちらにせよ、虎徹クラスで冷却は十分ですので「CPU温度は大人しい」と評価できます。
オーバークロックと「低電圧化」
Ryzen 5 3500は手動オーバークロック対応のCPUです。しかし、実際に試してみるとオーバークロックの余地は皆無に近く、仮にできたとしても得られるメリットがリスクに対してまったく見合わないです。
なので、オーバークロックとは逆の方向である「低電圧化」を試します。低電圧化は、CPUの性能を維持しつつ、消費電力とCPU温度をもっと抑えてしまおうという実に「おいしい設定」です。
BIOSからクロック周波数を3.90 GHzに、CPUのコア電圧を1.250 Vに変更してテスト。結果、CPU温度は64.5℃から約7℃も下がって、57.7℃に抑えられました。毎度思うんですが、Ryzenは自動設定だとコア電圧が高すぎです。
消費電力は59.2 Wから約8.7 Wも下がって、50.4 Wにまで低下。Core i5 9400F、Core i3 9100Fよりも低い消費電力です。
クロック | コア電圧 | 最大温度 | 消費電力 | エンコード速度Handbrake Fast 1080p | 効率ワットパフォーマンス |
---|---|---|---|---|---|
Auto | Auto | 65.3 ℃ | 59.2 W | 37.0 fps | 0.63 fps |
3.90 GHz | 1.250 V | 58.6 ℃ | 50.4 W | 37.6 fps | 0.75 fps |
温度と消費電力が下がったにも関わらず、動画エンコード速度はAuto設定よりもやや改善。ワットパフォーマンスは約19%アップです。やはりRyzenはオーバークロックよりも、「低電圧化」がデタラメに美味しいですね。
まとめ:6コア6スレで最高効率のCPU
今回の検証レビューで、Ryzen 5 3500は若干の弱点を残しつつも、Core i5 9400Fに対して高いワットパフォーマンスで圧倒できるCPUと判明しました。特に「低電圧化」を施すと、同クラスでRyzen 5 3500に太刀打ちできるCPUは、ほぼ皆無の状況です。
「Ryzen 5 3500」のデメリットと弱点
- オーバークロックはほぼ無理
- メモリOCがややシビア
- ゲーミング性能はCore i5 9400Fに負ける
Ryzenの中でも特に選別落ちのチップが使われています。オーバークロックはビックリするくらい自由度が低く、定格の4.0 GHz以上にするのは難しいです。そしてメモリのオーバークロック耐性もイマイチで、Ryzen 7で通っていた設定がダメな場合がほとんどでした。
一応DDR4-3200に対応するCPUとはいえ、3200で安定しない可能性も考えられるため、Ryzen 5 3500はDDR4-2666くらいで運用したほうが良さそうです(※PC初心者ならなおさらのこと)。
Core i5 9400Fに対して目立った弱点は、やはりゲーミング性能。ゲームを重視するか、しないのかで、Ryzen 5 3500とCore i5 9400Fを選び分ける必要があります。
「Ryzen 5 3500」のメリットと強み
- 6コア6スレCPUではトップクラスの性能
- マシになったゲーミング性能
- 驚異的なワットパフォーマンス
- 大人しいCPU温度
- コストパフォーマンスはかなり優秀
Ryzen 5 3500は、同じ6コア6スレッドCPUとしてもっとも効率の良いCPUです。IPCが改善したおかげで、少ないクロック周波数でより高い性能を発揮するため、消費電力あたりの性能ではインテルCPUにまず負けません。
低電圧化すれば、レンダリングやエンコード性能を維持したまま、消費電力とCPU温度をもっと低くできます。「効率」はRyzen 5 3500の最大のメリットです。
というわけで、筆者の個人的な評価は「A+ランク」で決まり。同じ価格のCore i5 9400Fを上回るシングル / マルチスレッド性能は素直に高評価できますが、ゲーミング性能では割と劣ってしまったので、Sランクは見送りました。
以上「Ryzen 5 3500をレビュー:6コアCPU「i5 9400F」と徹底比較」でした。
Ryzen 5 3500を搭載するBTOゲーミングPCでおすすめは、最近レビューした「ガレリアRT5」です。税込みで10万円を切る価格で、CPU性能からゲーム性能まで、うまくまとまっています。
一つ気になったのですが、CPUの消費電力測定について、電源ユニットのロガーから測定できるのは電源ユニットが消費している電力量であって、100%CPUに入っているわけではない(VRM部の効率があるので)と思います。
HWinfoなどで読んだほうが正確な気がしますが、どうでしょうか。
HWiNFOからチェックできる「Package Power」は、マザーボードによって数値がかなり違ってデータの整合性に問題が出たため、電源ユニットを使った測定方法に切り替えてます。
ただこの電源ユニット・・・分解能がイマイチなので、アイドル時の消費電力はうまく測定できないのが欠点ですね。
なんか逆に14nmのままでIntel頑張ってるよなという印象が。AMD負けないでほしい。
インテルCoreブランドは、とにかく過去の遺産が莫大なので、なんだかんだ言って安定はしてますよね。
AMD Ryzenはソフトウェアの最適化がもっと進んでくれれば、より万能なCPUになれると思います。
検証ありがとうございます
大差はないかもしれませんが
Ryzen側のメモリをDDR4-2666からDDR4-3200に
変えた場合の結果も知りたいですね
それをすると、メモリクロックの影響が大きいゲームでかなり有利なスコアが出ます。たとえばFF14だと、3~5%は伸びます。
メモリで差はしっかりあると思いますよ。
ただしゲームでは勝てないでしょうし9400Fの方もより高速なメモリで伸ばすと思いますが。
新しいryzen3、ryzen5をレビューする予定はありますか?
Ryzen 3 3100、Ryzen 3 3300X、Ryzen 5 1600AFはレビュー予定です。
まぁRyzen5は3600(6コア12スレッド)があるからしゃーない
B550チップセットも発表されたし、ZEN3も発表が近づいてきてるし、楽しみだ
いつも大変勉強になり、役に立つ記事掲載、ありがとうございます。
楽しく読ませてもらっています。
丁度おととい、この3500でメインマシンを組みましたので、評価が大変気になっていたところです。
これから簡易水冷か、空冷か、はたまたなんちゃって本格水冷化など考えているので、いろいろと教えてください。
では、新型コロナにも気を付けてお過ごしください。
ちなみに、アンダークロックもして、温度を下げるようにして
環境に配慮してます。
コメントぶつ切りになり、すみません。
テスト環境のメモリ2666という点が気になりますね
結構、悩ましいところなんですよね。
CPU側の定格メモリクロックだと、Zen2はDDR4-3200になってしまい、かなり有利です。かと言ってインテル側をDDR4-3200に合わせると、それはオーバークロックです・・・。
だからBTOメーカーで非常に採用例が多い「DDR4-2666」を選んでます。
先日発表のIntelのデスクトップ向け第10世代のi5がRyzenと同じ6コア12スレッドとなったのでgen10 core i5 vs gen2 Ryzen5 が気になりますね。
比較サイトがありましたので貼り付けておきます
Ryzen5 3600 VS core i5 10400F
https://www.cpu-monkey.com/en/compare_cpu-amd_ryzen_5_3600-927-vs-intel_core_i5_10400f-1247
Ryzen3 3300X VS core i3 10320
https://www.cpu-monkey.com/en/compare_cpu-amd_ryzen_3_3300x-1345-vs-intel_core_i3_10320-1154
コメント反映遅れました。引用URLがスパムbot判定に引っ掛かってたようです。
ちなみに、cpu-monkeyで掲載されてる数値は基本的に「推測値」なので、参考程度に見たほうが良いです。
返信ありがとうございます。
出てもいないCPUの結果が出てて何故?とは思ってました
これで解決です。ありがとうございます。
今買う低価格品なら3300Xが良いんですかね~?マザボ含めると…
Intelはマザボが高いので微妙なのか?と考えて悩んでます
インテルはASRockのH470 / B460モデルが、K無しのCPUでも実質的なオーバークロックを行う「BFB Technology」に対応してるので、コスパ重視ならまだ待ったほうが良さそう。
低価格品なら3300Xがかなり強いと思います。レビューもする予定です。
3300Xは4コアのくせに3500を脅かすらしいですなぁ
えっ、3500のほうが2600よりエンコ速度が速い…!?
これならゲーム動画編集目的で多コアだからということで2600や1600AFを買う意味が…
1600AFは、値段のめちゃくちゃ安いので、コスパで選ぶならアリなCPUになりそうな予感。
i5-9400Fとほぼ同性能で内蔵GPU付きのi5-8400が2017年に2万円で売られてたんだよなぁ
まあ当時は他のパーツが高かったけど
クーポンで8400 1.7万円と更にポイント還元11%で買えた時期もあったのですが懐かしいですね。
当時はメモリ16GBで1.1万円はしてましたけど。
いつも参考にさせて頂いております。
今回、原因不明のトラブル発生です。ASRock AB350 Gaming K4を購入してBIOSを指定の6.20に変更しましたが、画面出力されずに数秒おきに電源のON-OFFを繰り返します。既存で使用中の同一マザー(Ryzen 5 2400G)を換装して試しましたが同じ症状です。ビデオカードを他のものに交換やBIOSを最新の6.30に変更なども症状変わらずです。CPUの初期不良?(何十台も組み立てましたが経験ありません)仕方ないのでCPUは返品交換処理中です。品薄で入荷が遅れています。新しいCPUが到着しても改善しないような気がして不安です。マザーが適合しない?ならASRockの責任となりますが?新規購入のマザーはRyzen 5 2400Gで稼働しますしMSI Radeon RX 580 ARMOR MK2 8G OCのビデオカードも問題ありません。
PCはHDD一台の構成でメモリーも標準です。当初上位のマザーを購入とも思いましたが特に性能を求めることもしないので、安価(1万円以下)で販売していたAB350 Gaming K4を再度購入した次第です。安定動作で気に入ったマザーです。
長文になり申し訳ありません。同じマザーで稼働している方、原因がわかる方がおられましたら教えてください。よろしくお願いします。
自己レスです。
メモリー動作速度の低下設定など色々と試しましたが、
メモリーがシングル動作なら起動します。メモリースロットのA又はBの片側のみ使用ですね。販売店とASrockに対応を依頼中です。それよりも困った事に、CPU動作一覧に3-3100と3-3300Xが追加掲載されています。怖くて信用出来ません。
そもそも動作表になければマザーを購入しない訳ですから。
今までに40台以上組立ましたがBIOSとCPUの不適合は初めての経験でした。
> メモリーがシングル動作なら起動します。
これは経験あります。ぼくの場合はGigabyteのZ370マザーボードで、メモリをデュアルチャネルにすると不安定 or POST不可です。片側に2枚挿し込むなど、デュアルチャネルを避ければ動いてました。マザーを変更すると治ったので、マザーが原因でした。(※まれにCPU側のメモコンが逝ってる場合もありますが、かなり稀です)
返品交換するか、返金してもらってB450 Steel LegendやTUF B450-PRO Gamingあたりを買い直すのもアリかと。
> CPU動作一覧に3-3100と3-3300Xが追加掲載されています。怖くて信用出来ません。
AGESAがあれば、対応は可能ですので。ASRock問わず、どこのメーカーも対応AGESAが入ってきたら、BIOSをアップして対応表に新しいCPUを掲載するはずです。
それより怖いのは、古いチップセット(特にB350)のマザーボードほど、旧世代CPUとの互換性や安定性に問題が出るリスクがあることです。B350マザーは、最近出てきたMSIの「MAX」シリーズを除き、BIOS ROMの容量が128 Mbしかないです。そのROM容量に収まり切らないほどBIOSが大きくなると、古いコードを断捨離する必要があり、結果的に新しいCPUと相性が良いけど古いCPUとはダメ・・・みたいなことが起こってます。
ASRockだと、BIOSのダウンロードページで「~~~(特定のCPU)が使用されている場合、ASRockはこのBIOSの更新を推奨しません。」と、注意書きをするほどです。
3600と3500の差はどれくらいでしょう
値段を考えるとどちらがコスパが良さげでしょうか
Ryzen 5 3600レビュー
https://chimolog.co/bto-cpu-ryzen-5-3600/
予算次第ですが、3600の方がコスパはいいです。
3500を使ってますが、負荷が非常に高いマルチタスクはもたつくかな? といった感じです。仕事やゲームでバリバリ酷使するなら、3600がいいと思います。
ただ今すぐ必要ないなら、3100か3300を待つほうがいいでしょう。こっちのスコアは、マルチもシングルも3500に勝って、価格も3500より安いそうなので……
ASRock AB350 Gaming K4 で稼働できると判明しました。
原因はメモリーの許容範囲が非常に狭いことでした。
メーカーのASRock は指定のメモリーなら稼働と譲りませんがMatisseのメモリー一覧は存在していません。AB350はMatisse非対応と言えば良いものを、
標準のメモリー、CFD販売 デスクトップPC用メモリ DDR4 2666等ではシングル動作でしか起動できません。逆にオーバークロックのTeam DDR4 3000Mhz (PC4-24000)で試した所、問題なく稼働できて3Dゲームの「Shadow of the Tomb Raider」が快適に動作しました。メモリー電圧が1.2Vではだめで、1.35V程度なら正常にデュアル動作可能となるのかも知れません。一時はB450のマザーに買い替えも検討していたので諦めないで良かったです。3000シリーズのMatisseはメモリー要注意と言えますね。
いつも読ませていただいていますが、コメントは初めてとなります。
メモリの安定感はマザーボードにもかなり依存しそうです。
Zen 3待ちということで、X570+Ryzen 5 3500で1台組んでみたのですが、Linuxが動かない問題への対策でBIOSを最新版に上げた状態で、DDR4-3600(CL19)のメモリがXMP適用だけで3600(CLは切り上げられて20)としてすんなり動作しています。
[…] .0GHzくらいでも動くみたいですが買ったばかりで壊したくないのでこの辺が無難かと。(参考)Ryzen 5 3500をレビュー:6コアCPU「i5 9400F」と徹底比較 | ちもろぐ https://chimolog.co/bto-cpu-ryzen-5-3500/ […]