SSD製品のオーバーテクノロジーといえば「Intel Optane SSD」を挙げられますが、今回レビューする「WD_BLACK SN770」も同価格帯を圧倒する謎の高性能でオーバーテクノロジー風味が漂うSSDです。
DRAMを搭載しない低価格なSSDながら、DRAMを搭載するSSDを圧倒する性能をじっくりと検証します。
(公開:2023/1/9 | 更新:2023/1/9)
WD Black SN770のスペックと仕様
WD_Black SN770 スペックをざっくりと解説 | |||
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容量 | 500 GB | 1000 GB | 2000 GB |
インターフェイス | PCIe 4.0 x4(NVMe 1.4) | ||
フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
コントローラ | WD NVMe Controller(SanDisk) | ||
NAND | KIOXIA 112層 3D TLC NAND | ||
DRAM | なし | ||
SLCキャッシュ | 非公開 | ||
読込速度 シーケンシャル | 5000 MB/s | 5150 MB/s | |
書込速度(SLC) シーケンシャル | 4000 MB/s | 4900 MB/s | 4850 MB/s |
書込速度(TLC) シーケンシャル | 非公開 | ||
読込速度 4KBランダムアクセス | 460K IOPS | 740K IOPS | 650K IOPS |
書込速度 4KBランダムアクセス | 800K IOPS | ||
消費電力(最大) | 非公開 | ||
消費電力(アイドル) | 非公開 | ||
TBW 書き込み耐性 | 300 TB | 600 TB | 1200 TB |
MTBF 平均故障間隔 | 175万時間 | ||
保証 | 5年 | ||
MSRP | $ 49 | $ 89 | $ 159 |
参考価格 ※2023/01時点 | 8480 円 | 11980 円 | 22980 円 |
GB単価 | 17.0 円 | 12.0 円 | 11.5 円 |
「WD_BLACK SN770」は、Western Digitalが販売するDRAMレスNVMe SSDです。かつて販売されていたSN750やSN750 SEの後継モデルにあたるSSDです。
SSDの性能を安定させる効果があるDRAMキャッシュを搭載せず、メインメモリのごく一部(最大64 MB)を拝借してキャッシュに使うHMB(ホストメモリバッファ)方式のNVMe SSDです。
WD Blue SN570やSamsung 980(無印)やCrucial P3 Plusなど、HMB方式のNVMe SSDが増えていますが、WD Black SN770はその中でも際立って性能に特化しています。
Western Digitalが買収したSanDisk由来のSSDコントローラを搭載し、容量密度が高いキオクシア(旧東芝メモリ)製の112層 3D TLC NANDと組み合わせています。
Western DigitalはSanDisk由来のコントローラについて、詳しい情報を一切公開していないため、部品構成を見る限り「SN570」とほとんど同じです。
同じ部品構成にもかかわらず、SN770はSN570より25万時間も長い175万時間のMTBFと、約40%も速い最大5000 MB/s超えのシーケンシャル性能をアピールします。
SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
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WD_BLACK SN770 | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
Crucial MX500 (FireCuda 530:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
CFD PG4VNZ | 350 TBW | 700 TBW | 1400 TBW |
Plextor M10PGN | 320 TBW | 640 TBW | 1280 TBW |
Crucial P5 Plus | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
耐久性能評価(TBW)も最近のNVMe SSDと同等レベルです。
1 TBモデルで600 TBWをアピールします。ゲーミングPCでシステムストレージとして使った場合、かなり過剰に見積もっても1日あたり平均50 GB程度の書き込みです。
600 TBWを50 GB(0.050 TB)で割ると12000日で、耐久値を使い切るのに約33年もかかる計算に。おそらくNANDメモリの寿命が尽きるより先に、SSDコントローラが経年劣化で故障する確率のほうが高いです。
ライバル製品と価格設定の比較
NAND製造メーカーの純正モデルで、価格の近いNVMe SSD(HMB方式)とSATA SSDの価格を比較してみた。
2023年1月時点、WD_BLACK SN770は1 TB版が約12000円、2 TB版が約26000円でHMB方式としては価格が高いです。
同じHMB方式のSN570は約1万円、Samsung 980は約1.1万円で買えるため、約1.2万円のWD Black SN770は競合製品を上回る価格差以上の性能を要求されます。
特に1TBモデルが8000~9000円台で買えてしまうEXCERIA G2との戦いは要注目です。
WD Black SN770を開封レビュー
パッケージデザイン & 開封
今回レビューで使うサンプルはTsukumo通販(販売ページはこちら)より、約12000円にて1 TBモデルを自腹で購入しました。
マットブラックな背景に「WD_BLACK」のフォントが入った、クールなパッケージデザイン。表面に国内正規品5年保証のシールが貼ってあります。
説明書(保証書)が同封されています。プラスチック製のケースにSSD本体がすっぽりと収まっています。
基板コンポーネント
マットブラック塗装の基板上に、SSDを構成するコンポーネントが2つだけ配置されています。
中央部はただ単にシールが貼ってあるだけで、サイズをスタンダードなM.2 2280規格に合わせるために作られた空間にしか見えないです。
反対側は各国の認証ロゴや規制ロゴが記載されているだけで、コンポーネントは何もありません。
表面だけにコンポーネントが実装されているシンプルな片面実装のNVMe SSDです。取り付けスペースが狭いノートパソコンで問題なく使えます。
基板のコンポーネントを目視で確認します。
- コントローラ:SanDisk
20-82-10081-A1 2312Z6J26XE CHINA - DRAM:なし
- NAND:SanDisk(KIOXIA 3D TLC NAND)
001398 1T00 MALAYSIA 2442YCEH41XZ
SSDコントローラは「SanDisk」ロゴの入ったWD NVMe Controllerを搭載します。Western Digitalが買収したSanDiskが開発したSSDコントローラで、具体的な仕様は不明です。
NANDメモリはKIOXIA製「BiCS FLASH」を搭載。WD Black SN770では、たった1枚のNANDメモリで容量1 TBを実現します。
第5世代BiCS 5メモリ(112層3D TLC NAND)の場合、記憶容量は1024 Gbなので、8枚重ねで合計1 TB(= 8192 Gb)と計算できます。
記憶容量が多いほど少ないNANDメモリで大容量にできますが、並列化して性能を稼ぎづらくなるため、書き込み性能に関しては旧世代のBiCSメモリを使っているSN570やEXCERIA PLUS G2に届かない可能性があります。
WD Black SN770の性能をベンチマーク
テスト環境を紹介
テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
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CPU | Ryzen 9 5950X16コア32スレッド | |
CPUクーラー | NZXT X63280 mm簡易水冷クーラー | |
マザーボード | ASUS ROG STRIXX570-E GAMING | |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2使用メモリ「G.Skill Trident Z C16」 | |
グラフィックボード | RTX 3070 8GB | |
SSD | WD_BLACK SN770 1TB | |
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1909」 | |
ドライバ | NVIDIA 471.41 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「Innocn 27M2V」 |
980 PROのレビュー以降、SSDをテストするベンチマーク機を更新しました。PCIe 4.0に対応するプラットフォーム「Ryzen 5000」と「AMD X570」をベースに、適当なパーツを組み合わせます。
CPUは16コア32スレッドの「Ryzen 9 5950X」です。16コア32スレッドの圧倒的なCPU性能があれば、最大7000 MB/s超のSSDが相手でもボトルネックになる可能性はほぼ皆無です。
マザーボードはASUS製「ROG STRIX X570-E GAMING」を採用。テスト対象のNVMe SSDをCPU直結レーンのM.2スロット、またはPCIeスロットに挿し込んで各ベンチマークを行います。
SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- マザーボード付属のヒートシンクを装着
- ケースファンを使ってヒートシンクを冷やす
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。5分間の発熱テストのみ、ヒートシンクを外してケースファンも使いません。
- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 1.4
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「WD_BLACK SN770」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。特に問題なし。
ただし、規格がNVM Express 1.4です。互換性の問題が生じる可能性は低いですが、古いマザーボードだとSSDを認識しないなど、問題が発生するリスクがあります。
たとえばASRock製の一部B350 / B450マザーボードでは、SN770を認識しない可能性があるとメーカー側から警告文が出ています。
フォーマット時の初期容量は「931 GB」でした。
Crystal Disk Mark 8
「Crystak Disk Mark 8」は、日本どころか世界で一番有名と言っても過言ではない、定番のSSDベンチマークソフトです。性能の変化をチェックするため、初期設定の「1 GiB」に加え、最大設定の「64 GiB」もテストします。
Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
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テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
読み込み速度が約5230 MB/sで、書き込み速度は約4990 MB/sを記録。読み書きともにメーカー公称値どおりの性能が出ています。
テストサイズを64 GiBまで引き上げても、読み込みと書き込みどちらもおおむねメーカー公称値どおりです。なお、読み込みレイテンシ(4K)は悪化が見られます。
体感性能や実用性能に影響が大きい、4KBランダムアクセスのレイテンシ(応答時間)の比較グラフです。
WD Black SN770は46.82 μsで、ライバルのSamsung 980やEXCERIA G2をあっさりと追い抜かす性能です。価格が2倍近いハイエンド級と肩を並べる応答速度を見せます。
書き込みレイテンシもかなり良好で、WD Blue SN570やSamsung 980をあっさり打ち負かしてしまいました。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、512 B~64 MB(合計21パターン)のテストサイズでスループットを測定し、SSDの性能が安定しているかどうかを視覚的に示してくれるベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果からSSDの評価が非常に分かりにくいので、表計算ソフトを使ってグラフ化して他のSSDと比較します。
読み込み速度は5000 MB/s前後でピークに達したあと、安定した性能を維持します。キャッシュに収まる範囲なら、シーケンシャル公称値どおりの性能です。
書き込み速度は4700 MB/s前後に達したあと、安定した性能を維持します。キャッシュの範囲内なら、おおむねスペック通りの性能を示しており、特に問題ありません。
HD Tune Pro
HD Tune Proは有料のSSDベンチマークソフトです。SSDの容量全域に渡ってテストを実行して、SSDの性能変化(SLCキャッシュの有無や、キャッシュが剥がれた後の性能など)を手軽に調べられます。
HD Tune Proの結果※クリックで画像拡大します | |
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HD Tune Proで注目するのは「書き込み速度の変化」です。
3枚目のファイルベンチマーク(250 GB分)を見ると、なんと250 GBいっぱい書き込んでも書き込み性能にまったく変化が見られず、平均3900 MB/s前後を叩き出しています。
250 GB以上の巨大なSLCキャッシュを確保しているとも考えられますが、HD Tune Proは割りと対策されている傾向のあるベンチマークです。
HD Tune Proの結果だけではなんとも評価できないため、実運用ベンチマークへ進みましょう。
WD Black SN770を実運用で試す
ゲームのロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。
WD Black SN770のロード時間は「7.23 秒」で、ハイエンドNVMe SSDに匹敵する性能です。
DRAMキャッシュを搭載しないHMB方式のSSDとしては、過去最高のロード時間を記録します。
基本的に、ゲームロード時間はランダムアクセス速度(読み込みの応答時間)に比例して早くなる傾向があるため、読み込み応答時間がハイエンド製品並みに速いSN770なら違和感のない結果です。
ファイルコピーの完了時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量62 GB / 76892個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 6000枚)
- 圧縮データ(容量128 GB / zip形式)
ファイルコピーに使う素材は以上の3つ。ファイルコピーの基準となるストレージは、PCIe 4.0対応かつ書き込み性能が高速なSamsung 980 PRO(1 TB)です。
書き込み(980 PRO → WD Black SN770)速度はシーケンシャル性能に沿った結果です。
ゲームフォルダ、写真フォルダ、ZipファイルすべてのテストでSN770がSamsung 980やEXCERIA G2を大幅に上回るスピードで書き込みを終えています。
特に写真フォルダとZipファイルの書き込みは凄まじく、平均2.2~2.9 GB/sもの書き込み速度を叩き出します。
次は読み込み(WD Black SN770 → 980 PRO)のコピペ時間です。
ゲームフォルダの読み出しはランダムアクセス速度の割には苦戦気味。写真フォルダとZipファイルの読み出しは猛烈に速く、過去に比較したすべてのSSDで最高の記録です。
Premiere Pro:4K素材プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」で、1秒あたり448 MBの4K動画素材をプレビューします。Premiere Proのプレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
コマ落ちしたフレーム数はPremiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で3回測定して平均値を出し、動画素材の総フレーム数で割り算してドロップフレーム率を計算します。
4Kプレビューのドロップフレーム率は約15.5%です。
過去レビューしたHMB方式のNVMe SSDをぶっちぎりで圧倒する驚異的な性能です。写真フォルダやZipファイルの読み出しが非常に速い傾向と一致します。
PCMark 10:SSDの実用性能
PCMark 10 Professional Editionの「Storage Test」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Storage Testには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を80%埋めた場合(= 空き容量20%)のテストも行いました(※2回:約2時間)。
WD Black SN770のストレージスコアは「3260点(空き容量20%時)」です。空き容量100%なら3458点で、空き容量による性能低下が約6%に抑えられています。
空き容量20%のスコアはライバルのSN570やEXCERIA G2やSamsung 980を約67%も上回り、旧モデルのSN750 SEから約2.9倍もの性能アップです。
過去レビューしてきたHMB方式のどのSSDよりもはるかに高いスコアで、ハイエンドクラスのNVMe SSDとすら肩を並べる驚異的な性能を発揮します。
SSDコントローラと1枚のNANDメモリだけを搭載した、簡素なパッケージ内容からは想像もできないようなスコアを叩き出しており、SanDisk由来のSSDコントローラに対する謎が深まるばかりです。
PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
Adobeスコア、ゲームロードスコア、ファイルコピースコア、Officeスコア。すべての分野でSN770はライバル製品をかんたんに打ち負かし、SN850やP41 PlatinumなどハイエンドSSDに匹敵するスコアを記録します。
実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
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Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
約1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら書き込み続ける過酷な検証方法です。
一般向けに販売されているほとんどのSSDは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。SLCキャッシュの有無やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下などなど。
15分の連続書き込みテストによって、SSDのいろいろな挙動が判明します。
WD Black SN770と競合する代表的なNVMe SSDと比較しました。テストを開始して数秒で、書き込み性能が1610 MB/s前後まで下がります。
その後も1610 MB/s前後の性能を維持し、空き容量が4分の1に近づくとTLC NAND本来の性能に近い483 MB/s前後に下がります。
時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
15分間の書き込み量で比較すると、HMB方式の中でSN770がトップです(EXCERIA PLUS G2はDRAMキャッシュ搭載モデル)。10分と5分の期間でもSN770がトップの成績です。
動的なSLCキャッシュ生成能力のおかげで、NANDメモリ本来の性能をうまく隠して高いパフォーマンスを維持して見せます。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは2つです。
- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:NANDメモリの温度
温度センサーはメーカーによって違います。一般的にセンサーを1つだけ搭載するメーカーが多いですが、SN770は珍しくセンサーを2つ搭載します。
ただし、どちらの温度センサーも似たような数値が表示されるため、おそらくNANDメモリの温度を表示しています。
参考までに、NANDメモリとSSDコントローラそれぞれにセンサーを搭載するメーカーは(筆者の知る限り)サムスンとSK Hynixの2社に限られます。
ヒートシンクを取り外し、ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を5分間実行しました。
テスト開始直後に1500 MB/s前後に書き込み性能が下がり、その後ずっと1500 MB/s前後の性能を維持します。
HWiNFOに表示される温度は72℃にとどまりますが、性能が乱高下するなどサーマルスロットリングらしき症状は特に確認できませんでした。
次はサーモグラフィーカメラを使って、実際の温度を確認します。
サーモグラフィーで表面温度を確認
テスト開始から5分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使って撮影。
- SSDコントローラ:81 ~ 82℃
- NANDメモリ:71 ~ 72℃
NANDメモリの表面温度が70℃台で、SSDコントローラの表面温度は80℃台です。
よって、HWiNFOに表示される温度はNANDメモリ側で、SSDコントローラの温度を表示しないと考えたほうが自然です。
別売りのM.2ヒートシンクは必要ないです。エアフローを与えない環境で使っても、サーマルスロットリングらしい症状が見られません。
マザーボードにヒートシンクが付属しているなら装着するくらいでOKです。ただし、マザーボード付属のヒートシンクはネジの締めすぎに要注意。締めすぎると基板に圧力がかかりすぎてSSDの故障につながります。
まとめ:値段はエントリー、性能はハイエンド
「WD Black SN770」のデメリットと弱点
- DRAMキャッシュなし
- SLCキャッシュが限定的(わずか数秒)
※書き込み4000 MB/s以上を維持できる範囲 - 素の書き込み性能は平凡
「WD Black SN770」のメリットと強み
- 最大5150 MB/sのシーケンシャル性能
- ハイエンドNVMe SSD並の性能
- 同価格帯を凌駕する実用性能
- 空き容量による性能低下が少ない
- 高速なランダムアクセス速度
- ゲームロード時間
- 十分な耐久性(300 ~ 1200 TBW)
- 大容量モデルあり(最大2 TB)
- 極めて高いコストパフォーマンス
- 5年保証
WD Black SN770は、SanDisk由来のSSDコントローラによる動的かつ柔軟なSLCキャッシュ生成能力を駆使し、WD Black SN7xxシリーズ最高の性能を発揮します。
キオクシア(旧東芝メモリ)製の112層 3D TLC NANDをポツンと1枚だけ搭載したハード構成からは、とても想像がつかない(いい意味で)理解に苦しむすさまじいパフォーマンスです。
SLCキャッシュを剥がしきった素の書き込み性能こそ、TLC NANDらしい平凡な性能ですが、いわゆる普段使いで100 GBを超えるファイルのやり取りはそれほど多くないです。
Windowsの普段使いで日常的に使われるワークロードに対して、SN770は極めて最適化された性能特性をもち、空き容量を80%埋めた状態でもハイエンド並みの性能を維持します。
ちもろぐの個人的な評価は「A+ランク」で、1万前半で買えるSSDの中では限りなく「Sランク」に近い評価です。
「どのSSDを選べばいいか分からない?」・・・なら、WD Black SN770を選びましょう。ハイエンド級の性能で、95%くらいの自作PCユーザーにとって満足できる性能だと思われます。
予算1万円未満で買う場合は「EXCERIA G2」が選択肢ですが、予算1万円を少しでも超えていいならSN770を強く推したいです。
以上「WD Black SN770レビュー:簡素なハードから想像もつかない不気味な性能」でした。
WD Black SN770を入手する
何かしらセールがあると安くなりがちです。Amazon、Tsukumo通販、パソコン工房など。価格が安い通販から買うのがおすすめ。
NVMe SSDのおすすめレビュー記事
おすすめなSSDを解説
NANDの多積層とDRAMレスから想定してたよりはランダムもイケてる…万能やん…
こういう最新のいかにもシーケンシャルだけは速いです的で簡素なPCIe 4.0 SSDと、逆に3.0世代で速度は頭打ちだけど64層程度の積層でチップが(両面とか)多数実装されててDRAMキャッシュもありますという並列ヤレそうな古いの
あまりOS以外入れたくないC:ドライブはどっちが向くんだろう
OS用途ですが、最新のフラッシュメモリはランダムアクセスが高速なので、ロード時間の短縮に寄与できるでしょうから新しいSSDがいいんじゃないでしょうか。とはいえMX500みたく、ほとんどの従来品のSSDも最近のロットから順次新しいフラッシュメモリに変更されているみたいですね。
うわあ後3か早く欲しかった!!!!!!!!
ちょうどセールでcrucialの2TBポチって取り付けた所でした……………
PS5使えるかどうか試してほしかった
使えるだろうけど
いつも楽しく拝見しております。
WD Dashboardのゲームモードも試されましたでしょうか。
ゲームモードをONにして計測した場合、苦戦気味だったゲームフォルダの読み出しも改善されたりするのかも……?と可能性を感じました。
これからの記事投稿も楽しみに、応援しております。
このレビュー、尼の初売り前に読みたかった…
SN850X、990 PROのレビューをお願いします。
KIOXIA EXCERIA PRO 、 Plextor M10PGN をレビューする予定はありますか?
SN850のレビューでも書かれてたけど、Sandisk由来のコントローラーorファームウェアが優秀すぎるのか
WD SN系のコントローラーなんですが
確証はないのですがSandisk系ではなくHGST系な気がします
始祖たるSN100~200はHGSTの製品なので…
Sandisk買収はたぶん東芝NANDライセンス絡みかと
このSSDメインメモリをキャッシュとして使用してない?
だから本体にDRAM搭載してなくても早いんじゃないかと・・・
記事中のHMBの事じゃないでしょうか
価格が下がってきてSN770と近い価格帯でかつDRAMキャッシュ搭載のCrucialのP5 Plusをレビューしてくれませんか?
ドスパラwebのGWセール(4月21日 11:00 ~ 4月28日 10:59まで)にて2TBモデルがクーポンで2万円だったので即ポチりました!
ごくたまに一か月に一回くらいですがゲームストレージ専用で使っていてゲーム中に落ちる時があります
そうなるとドライブごとPCから認識が消えてしまいます、再起動で治りますが謎です、ゲームモードを使用するとなりやすい気がします
あとWD Dashboardを起動すると挿してあるUSBメモリの認識が飛びます、起動している限りそのUSBメモリはエラーで認識しません、これも謎です
おま環にしてはきついので皆さんの見識があれば聞きたいです
私も不思議な現象に悩んでました。
このSSDをメインストレージに使っていて、スリープから復帰して数十秒経つと、たまに、SSDではなく倉庫用の内蔵HDD(Toshiba)が消えます。
デバイスマネージャーの更新では認識できず、OS再起動が必要になります。
他の内臓SSDは消えません。
HDDをいくら調べても問題が見つからず、内蔵ディスク数を減らしたり、HDDをSATA増設ボード経由で接続するように変えてもダメでした。
OSの更新、OSの変更(10⇔11)、ドライバの更新、UEFIのリセット、…etc 全てダメ。
しかし、そのHDDを他のPCに接続しても何の問題も生じません。
結局HDDをSeegate製に替えたら症状が治まりましたが、結局のところ明確な原因はわからないままで、モヤモヤしています。
この製品ですがヒートシンクは付けた方がよいと思います。
ヒートシンク無しの場合、10月の室温25度の環境で連続書き込み後にTrimすると温度が上限の85度を超えて、S.M.A.R.Tのクリティカルワーニングが発生しました。
ヒートシンクを取り付ける際は、NANDメモリよりもコントローラのチップの方が高さが低いので工夫してください。
これコントローラ温度もソフトで拾ってるような・・・
比較グラフに蝉族も入れようぜ