フルHD画質で最高のコスパを誇る「GTX 1060」ですが、PC初心者にとっての罠が用意されている。3GB版と6GB版の2種類あって、一見するとVRAM容量が違うだけのグラボに見える。しかし、これはまったくの別物と思ったほうが良いので、この記事ではデータに基いてどっちを選ぶべきか紹介する。
GTX 1060の基本スペック
スペック | GTX 1060 3GB | GTX 1060 6GB |
---|---|---|
ダイ | ||
トランジスタ数 | 44億個 | 44億個 |
ダイサイズ | 200mm2 | 200mm2 |
プロセス | 16nm | 16nm |
シェーダーユニット数 | 1152 | 1280 |
TMU数 | 72 | 80 |
ROP数 | 48 | 48 |
演算ユニット数 | 9 | 10 |
ベースクロック | 1506 Mhz | 1506 Mhz |
ブーストクロック | 1708 Mhz | 1709 Mhz |
理論性能 | 3935 GFLOPS | 4375 GFLOPS |
VRAM | 3GB GDDR5 | 6GB GDDR5 |
メモリバス | 192 bit | 192 bit |
メモリ帯域幅 | 192.2 GB/s | 192.2 GB/s |
TDP | 120W | 120W |
希望小売価格 | $199 | $249 |
そもそも、GTX 1060 6GBは「VRAM容量を6GBに増量したバージョン」ではありません。基本スペックをよく見てみると…
- トランジスタ数:44億個
- ダイサイズ:200mm2
3GB版、6GB版、両方ともまったく同じ数のトランジスタが搭載されていて、ダイサイズ(チップの面積)も200mm2のまま変わっていません。にも関わらずシェーダーユニット数は1280個から1152個へ減量され、演算ユニット数も1個減らされている。
つまり…GTX 1060用に生産されたチップのうち、6GB版にふさわしくないチップを「廃棄するのはもったいないので3GB版にダウングレードしたバージョン」というのが実態でしょう。
シェーダーユニットと演算ユニットが減量された結果、GTX 1060 3GB版の理論性能(FP32)は6GB版より約10%低い3935 GFLOPSに落ちている(= 6GB版とくらべて低性能ということ)。
GTX 1060 6GB版の「落ちこぼれ」が3GB版
さて、コスパ重視なら別に3GB版でも良い(オススメはしません)が、データを見てから判断していこう。「GTX 1060なら大抵の3Dゲームを動かせるよ」というよく聞く評判ではなく、データを見て判断したほうが確実だし賢明です。
【性能比較】GTX 1060 3GB版 VS 6GB版
3GB版と6GB版でどれくらいの性能差があり、その性能差のために決して安くはない差額(4~5000円)を払う価値はあるのかどうか確認する。テスト環境は以下。
テスト環境 | |
---|---|
CPU | Core i7 5930K |
グラボ | GTX 1060 3GB |
GTX 1060 6GB | |
メモリー | Corsair Dominator DDR4-3200 32GB |
マザーボード | EVGA X99 Classified |
SSD | Kingston 240GB |
電源ユニット | NZXT 1200W 80+ GOLD |
CPUには6コア12スレッドでシングルスレッド性能に富む「i7 5930K」が使用されている。メモリーも3200Ghzで動作しているし、電源ユニットも80+ GOLD認証で安定性は抜群。ボトルネックを心配すること無く、グラボ本来の性能を検証可能だ。
今回参考にするのは「GTX 1060 3GB vs. 6GB Benchmark: Some Major Performance Swings」で公開されている海外データです。
DOOM 2016
DOOM(2016) – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
平均フレームレート最低フレームレート(全体の1%)最低フレームレート(全体の0.1%)
DOOMではグラフィックAPIを2種類、グラフィック設定から選択可能になっています。まずは標準的な「OpenGL 4.5」で動かした場合のフレームレートを確認。3GB、6GBともに大差無いですね…。
DOOM(2016) – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
しかしグラフィックAPIを「Vulkan API」に変更すると3GB版の平均フレームレートが急変します。一気に約30%ほどのフレームレートを失ってしまう。原因はちょっとよく分かっていないが、4GBのGTX 1050 Tiでは確認されていないのでVRAM起因の可能性あり。
DOOM(2016) – WQHD(2560×1440)/ 最高設定
WQHD画質ではこんな感じ。大きな性能差は出現せず、DOOMをする分にはGTX 1060は3GB、6GBどちらでも良いという結論になる。なお、グラフィックAPIは「OpenGL 4.5」が推奨。「Vulkan API」では3GB版が死にます。
Grand Theft Auto V
Grand Theft Auto V – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
次はGTA Vの平均フレームレートを。見ての通り、約7%ほど6GB版の方が高いパフォーマンスが出ており、違うグラボであることをちゃんと示しています。
Grand Theft Auto V – WQHD(2560×1440)/ 最高設定
WQHD画質を見ても傾向は同じで、やっぱり6GB版の方が7%くらい性能が高い。急落時のフレームレートも6GB版の方が安定している。
Grand Theft Auto V – 4K(3840×2160)/ 最高設定
4Kまで引き上げると全体的にキツそうですが、それでも結果は変わらずで6GB版が7%ほど高いパフォーマンスを記録して終了。
Shadow Of Mordor
Shadow Of Mordor – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
日本での知名度は極めて低いが国際的な評価はかなり高い「シャドウ・オブ・モルドール」ではこの通り。それなりにハイスペックが要求されるタイトルだが、GTX 1060であれば平均80fpsを実現している。3GB版は12%ほど劣った結果だ…。
Shadow Of Mordor – WQHD(2560×1440)/ 最高設定
WQHD画質になると3GB版と6GB版の性能差は縮まるが、それでも7%ほど開いています。基本的にこれだけの性能差はVRAM容量だけで説明は不可能。明らかにスペック差(シェーダーユニット数)の違いが影響している。
Assasin Creed Syndicate
Assasin Creed Syndicate – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
アサシンクリード・シンジケート(フルHD画質)ではこんな感じ。6GB版が6%ほど優秀な結果です。最低フレームレートも同様で、3GB版は若干安定性が低い(実用上は問題ないですけど)。
Call of Duty : Black Ops III
Call of Duty : Black Ops III – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
「Call of Duty : Black Ops III」は軽々と動いてしまうが、フレームレートが大きくなればなるほど「差」は見えやすくなります。6GB版は、3GB版に対して10%ほど優秀だ。ゲーミングモニターを考えている人にとって、この差はとくに大きいと思う。
※ゲーミングモニター:リフレッシュレートが3桁台(144Hzや240Hz)の高性能モニターのこと。参考(75Hzや165Hzなど、リフレッシュレート別にディスプレイまとめ)
Call of Duty : Black Ops III – WQHD(2560×1440)/ 最高設定
WQHD画質になっても傾向はまったく変わらず、依然として6GB版の方が10%も優秀な結果に。
Metro Last Light
Metro Last Light – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
「メトロ・ラストライト」の平均フレームレートはこの通り。平均値では差は7%くらいだが、最低フレームレートは10%も開いており、VRAM由来の安定性の欠如が確認できます。「VRAM由来だって?」あとで説明しますね。
Metro Last Light – WQHD(2560×1440)/ 最高設定
WQHD画質に引き上げると、スペック通りの性能差になってきた。だいたい5%くらいは6GB版が優秀といったところ。
Metro Last Light – 4K(3840×2160)/ 最高設定
4K画質になると全体的にしおらしくなってしまうが、それでも6GB版は平均値で6%高いパフォーマンス。
The Division
The Division – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
割りと国内でも有名な「The Division」のフルHD画質。6GB版は7%高い性能を示した。最低フレームレートも6GB版が7%ほど優秀です。3GB版だと60fpsスレスレだが、6GB版なら余裕ということだ。
The Division – WQHD(2560×1440)/ 最高設定
WQHD画質では更に差が開いて、6GB版が9%も高いパフォーマンスを示してしまった。最低フレームレートも同様に8~9%ほど、6GB版の方が優秀。
Mirrors Edge Catalyst
Mirrors Edge Catalyst – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
ミラーズエッジ最新作は両者ともに余裕の様子。性能差はおおむね8%ですね。3GB版だと最低フレームレートで60fpsを割ってしまったが、6GB版なら見事に60fpsを守っています。
Mirrors Edge Catalyst – WQHD(2560×1440)/ 最高設定
そしてWQHD画質では一気に差が開きます。6GB版がすべてのフレームレートにおいて2倍近いパフォーマンスを記録しており、3GB版とは別物であることを見せている。
なお、この現象はRX 480の4GB版と8GB版の間にも確認されており、VRAM容量の違いが思わぬパフォーマンス差(それも20~50%規模の笑えないレベルの差)を生み出してしまう可能性を示唆しているということだ。
保険料を払う気持ちでGTX 1060の6GB版を手にとることは決して間違った選択ではない。
GTX 1060は「3GB版」と「6GB版」どちらがいいか
3GB版のメリット・デメリット
ここまで見てきたとおり、グラフィックの処理能力は全体的に5~10%ほど6GB版に劣っている。特にミラーズエッジ・カタリスト(WQHD画質)のように、VRAM由来のフレームレート急落現象は要注意。
- 6GB版より性能が5~10%低い
- VRAM容量に起因するフレームレートの急落リスクあり
しかしメリットも大きいです。「価格」だ。NVIDIA公式のMSRP(希望小売価格)は、3GB版が199ドルで、6GB版は249ドル。6GB版は25%も割高なので、10%程度の性能差を考えると微妙だと感じてしまう。
- 3GB版は6GB版より5000円ほど安い
「安さ」「コスパ」を重視したいなら、3GB版を選んだほうが良さげ。とりあえずフルHD画質(1920×1080)に関しては、ほぼ問題ないグラフィック性能を持っているからね。
6GB版のメリット・デメリット
「割高」に感じてしまう6GB版のメリットは、なんといっても「圧倒的な安心感」。これに尽きる。
DOOM(2016) – フルHD(1920×1080)/ 最高設定
「Vulkan API」で動かすと、フレームレートが急落する現象が確認されているため、環境が変わると思ったように性能が出ない…というリスクを3GB版は抱えている。6GB版ならその心配が無いのだ。
Mirrors Edge Catalyst – WQHD(2560×1440)/ 最高設定
そして何より怖いのが、ミラーズエッジ最新作(WQHD画質)で確認されたVRAM容量に起因するフレームレートの急落だ。これがある以上、5000円の保険料を払って6GB版を買う価値は大いにあるだろう。
解説:VRAM不足とフレームレートの関係について
- 「なぜ3GB版は、6GB版に対して安定性に欠けるのだろう。性能的には5~10%程度しか差がないはずなんでしょ?」
こう思う人は当然いると思います。ぼくも「なんだなんだ、3GB版の妙な不安定さは」と思っているところだ。これもデータを見れば一発で分る。
これはVRAM容量が4GBの「AMD Radeon R9 380」を使って、MMORPG「黒い砂漠」にて計測したフレームレートとVRAM使用量の時系列データです。よ~く見ると関係性が見えますよね。
- VRAM使用量が3500(3.5GB)を超えると、フレームレートが急落している
- VRAM使用量が3000(3.0GB)以下になると、フレームレートがもとに戻っている
なぜ3GB版のGTX 1060が妙に不安定なのか、答えはここにあるんですよ。もうひとつデータを。
さっきのデータを「散布図」にして、回帰直線を引きました。R2(相関係数みたいなものです)は0.354と、あまり高くはない。しかし、グラフの右側に分布が偏っていることから、やはり…
- VRAM使用量が3500(3.5GB)を超えると、フレームレートが急落する
VRAMの残りがわずかになると、フレームレートが急落する現象が高い確率で起こるということです。
結論:GTX 1060は「6GB版」がおすすめ
特に「アンチエイリアス」というグラフィック設定を使う場合はVRAM消費量が増える傾向にあり、容易に3GB以上のVRAMが必要になることが多い。GTX 1060は3GB版ではなく4GB版を出していれば、もっと安心して買えただろう。
結論としてどうせ買うなら「6GB版」ということに。2017年の時点で、ほぼすべてのゲームタイトルで4K画質までなら使用するVRAMは6GBを超えないことが分かっている。
つまりGTX 1060 6GB版であれば、VRAM由来のフレームレート急落現象に遭遇するのは極めて稀になるということだ。
今は4K画質がかなり大きいディスプレイサイズとして扱われているが、いずれは8K画質や超高解像度のVRゲーミングの登場と普及によって6GB以上のVRAMが当たり前になる。
- 6GB版は性能がやや高め(5~10%ほど)
- フルHDやWQHD画質でVRAM不足になるのは稀
- 10%高い性能、安心のVRAM容量に対し、20~25%の価格差は十分に受け入れられる
というわけで、「3GBと6GBのどちらを選べばいい?」と聞かれたら「6GB版です。」と答えます。以上「GTX 1060は3GBと6GBのどちらがいい?6GB版です。」について書きました。
GTX 1060 6GB搭載のおすすめマシン
GALLERIA DT | |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit |
CPU | Core i5 7500 (4コア / 4スレッド / 3.40~3.80Ghz) |
GPU | GTX 1060 6GB |
メモリー | DDR4-2400 4GB*2 |
マザーボード | Intel B250搭載マザーボード(MicroATX) |
SSD | 250GB |
HDD | 1TB |
電源 | 500W 静音電源(80+ BRONZE) |
保証 | 1年間 持込修理保証 |
実際に使ってみて「良い…」と感じたのが、ガレリアDTというゲーミングマシン。フルHDマスターはデータ通りの素晴らしい仕事をしてくれる。詳細レビューは以下。
グラフィックボードについてもっと知りたい
GTX 1060 6GBと並んで大人気のグラボが「GTX 1050 Ti」だ。GTX 1060と比較してどうなのか、データにもとづいて詳しく解説している。
GeForce 10、Polaris 20、Vegaまで、2017年に活躍した様々なグラフィックボードからベストなGPUを7品まとめた記事。動作フレームレートなど、データに基づいて性能を分かりやすく解説したのが特徴です。
大変、丁寧な解説でよくわかりました。
ありがとうございました。
で、ちょっとだけ指摘させてください。
>そもそも、GTX 1060 6GBは「VRAM容量を6GBに増量したバージョン」ではありません。
これは同意です。
>基本スペックを見ての通り、搭載されているシェーダーユニット数は1152個から1280個(+11%)へ増量されているし、演算ユニット数も1個多い。
これはおそらく誤認識です。
ダイサイズが同じですので、3GB版というのは、6GB版のテストを通らなかった「あかん子」のうち、ほんの一部だけがNGなチップを再利用したものと思われます。
なので、
>基本スペックを見ての通り、3GB版は搭載されているシェーダーユニット数が1152個で本来の1280個から10%減量されているし、演算ユニット数も1個少ない。
が、正しい表記ではないかと思います。
あー…なるほど。生産されたRyzen用のダイの内、ダメな子だけ「Ryzen 3」など下位モデルに使用される感じですね。分かりやすい指摘ありがとうございます、記事の方を調整しますね。
ああ、ここまで反映していただけるとは。感激です。
お役にたてたようでなによりです。
はじめまして。いつも楽しくそしてフムフムと読ませていただいております。
ご相談をさせていただきたく、コメント残させていただきます。
このブログを読んで黒い砂漠をやってみたいと思いましたが、スペックを上げる必要があると考え、新規作り直しも含め考えています。
CPU:i5 7600k
GPU:GTX1060 6GB
メモリ:16GB
等を考えていますが、マザーボードのおすすめはありますでしょうか?
現在使っているマザーボードはDDR3のもので、USB3.0も搭載していないため
ここまできたらそこからすべて変えてしまおうかと考えています。
もしおすすめのものがございましたら、教えていただけないでしょうか。
CPUのオーバークロックをしないなら、無難に「PRIME H270-PRO」というマザーボードが良いと思います。安定性に定評があり、ドスパラなどのBTOメーカーでも広く採用されているマザーボードです。
CPUのオーバークロックをするなら、チップセットに「Z270」が搭載されているマザボが必要なので「Z270 GAMING PRO CARBON」あたりがオススメ。このマザボはオーディオチップに「Realtek ALC1220」が採用されているので、音質が安物のマザボより高品質なのもメリットだと思います。
詳細ページ:ASUSTek PRIME H270-PRO ATXマザーボード
詳細ページ:MSI Z270 GAMING PRO CARBON ATXゲーミングマザーボード
参考になれば幸いです。
コメントありがとうございます。
オーバークロック悩むところですね。
予算と相談しながら決めていきたいと思います!詳しくありがとうございました。
単純にどちらが良いかというクエスチョンなら6GBですが、値段も考えると3GBも十分アリな選択肢かなぁとは思います。
一番安い1060の3GB版は21500円程度(ドスパラ)、対して6GB版は一番安いもので28000円ほど(アマゾン)。
価格対性能比を考えると・・・・・!
という訳で価格.comの全gpu売れすじ上位50点をエクセルで回帰分析してコスパの良いGPUを計算してみたらGTX 1060 の3GB版の圧勝でした、ええ。 (性能の値にはドスパラのGPU性能比較を用い、OC版には5%のウェイトをかけました)
コストパフォーマンスをとにかく重視するなら3GB版が良いと思います。VRAM消費量が4GB程度のゲームなら、そこまでフレームレートを喪失しませんし。逆にCoD:WW2のように、5GB以上もVRAMを使うゲームだと20%前後のフレームレートを喪失するため、VRAMを多量に使うゲームをするつもりなら6GB版が良いですね。
こんにちは。アクセスログからツタって来ました。
すみません、ワードプレスにブログを乗り換えた時、「トラックバックリンク通知を試みる」のチェック入れっぱなしだったみたいです。
お邪魔であれば、お手数ですが削除をお願いします。
あ、ちなみに、僕も1060の6GBを購入しました!まぁ、普通にゲームする分のコスパとしては十分かと。
分かりました~。ぼくはトラックバックリンクが来ても全然気にしてないので大丈夫ですが、コメント欄から削除しておきますね。
VRAM3GBは少ないよねー、、
GTX1650でも4GB、
GTX1050でも4GB、
でなんで1060で3GBになったんや、、