価格設定が妙に高くて、存在そのものが無視されているSanDisk SNシリーズ最下位モデル「WD Green SN3000」を買ってレビューします。
今まで推してきたTLC NAND採用の定番SSDが値上がりする未来がまもなく到来するから、値上げ時代に備えて、あえてSN3000を検証します。
(公開:2025/11/16 | 更新:2025/11/16)
WD Green SN3000のスペックと仕様

| WD Green SN3000 (WDS000T4G0E-00CPS0) | |||
|---|---|---|---|
| 容量 | 0.5 TB (500 GB) | 1 TB (1000 GB) | 2 TB (2000 GB) |
| インターフェイス | PCIe 4.0 x4 | ||
| フォームファクタ | M.2 2280(片面実装) | ||
| コントローラ | 非公開 | ||
| NAND | SanDisk QLC 3D NAND | ||
| DRAM | なし | ||
| HMB(DRAMレス)方式 | |||
| SLCキャッシュ | 非公開 | ||
| 読込速度 シーケンシャル | 5000 MB/s | ||
| 書込速度 シーケンシャル | 4100 MB/s | 4200 MB/s | |
| 消費電力(最大) | 非公開 | ||
| 消費電力(アイドル) | 非公開 | ||
| TBW 書き込み保証値 | 100 TB | 150 TB | 250 TB |
| MTBF 平均故障間隔 | 100 万時間 | ||
| 保証 | 3年 | ||
| MSRP | $ 45 | $ 68 | $ 120 |
| 参考価格 2025/11時点 | 7580 円 | 11280 円 | 23393 円 |
| GB単価 | 15.2 円 | 11.3 円 | 11.7 円 |
「WD Green SN3000」は、定番SSDシリーズ「SanDisk SN」三兄弟の最下位グレードです。
最下位グレードの割に、さほど価格が安くないです。上の二兄弟(SN7100 / SN5100)と価格が近すぎて、あえて買うメリットは見当たりません。
しかし、NAND製造メーカー各社が減産を進めて供給を絞りつつあるため、近い将来に上位モデルの価格がもとに戻ります。
ラインナップ間の価格が調整され、相対的にWD Green SN3000の存在感が改善されてくるでしょう。
WD Green SN3000をレビュー
パッケージデザインと付属品

というわけで、今回はレビュー用に容量2 TB版(型番:WDS200T4G0E)を買いました。
メーカー定価が約2.2~2.3万円ですが、楽天市場(楽天ビック店)なら実質1.8万円です。これでも、まだ安くはないものの、値上げ後の新世界が到来すれば安いクラスに入ります。

付属品は説明書のみ。
SSD本体が、プラスチック製の透明ブリスターパックに収納されています。
基板デザインを目視でチェック

シンプルな基板デザインです。
上位モデルと同じように、マットブラック塗装されたプリント基板に、各パーツが剥き出しの状態で配置されてます。
基板の中央に、「WD Green」のラベルシールが貼られ、保証を受けるときに必要なシリアルナンバー(S/N)も記載されてます。


基板の裏面に、各国の規制認証ロゴをザラッと網羅します。「SanDisk」のロゴデザインも見つかりました。

基板の表面(オモテ側)だけに部品を実装する、スタンダードな「片面実装(single-sided)」です。
取付スペースが非常に狭い、ノートパソコンやゲーム機に増設するときに重宝します。
基板コンポーネント(部品)を紹介

- SSDコントローラ
- 電源管理コントローラ
- NANDメモリ
WD Green SN3000は、主に3つの部品で構成されます。筆者が分かる範囲で、部品の詳細を1つずつ確認します。

- SanDisk(Polaris 3)
A101-000101-A1 5167ZRWA23Q CHINA
SSDコントローラは、SanDiskが自社開発した「Polaris 3」を搭載。PCIe 4.0(Gen4)対応のDRAMレスコントローラです。
DRAMレスSSDで最強格「SN7100」と同じコントローラを踏襲します。三兄弟の最下位グレードなのに、ずいぶんと贅沢なコントローラです。
なお、Polaris 3コントローラの具体的な仕様は不明です。
初めてPolaris 3が搭載されたWD SN770が登場してから約3年が経過しましたが、SanDiskは技術的な詳細を未だに語りません。

- 228060B 452128
電源管理コントローラ(PMIC)も詳細不明ですが、刻印「228060B」は、歴代のSanDisk SNシリーズで同様に確認されています。

- DRAMなし
WD Green SN3000は、DRAMキャッシュを搭載しない「DRAMレスSSD」です。
ここ最近DRAMの値上げが酷いですから、DRAMの省略で得られるコストカット効果は非常に大きく、販売価格を維持する上で重要です。
しかし、DRAMが無いと書き込み性能を維持しづらい傾向が強まります。SN3000では以下のノウハウで性能低下を緩和します。
- HMB(ホストメモリバッファ)
- SRAM内蔵SSDコントローラ
メインメモリのごく一部(SN3000の場合:最大64 MB)を、DRAMキャッシュの代わりに使う「HMB(ホストメモリバッファ)」方式を採用します。
加えて、SSDコントローラに内蔵されたSRAMも巧みに使って、NANDメモリの性能を効率よく引き出します。


- キオクシア製 162層 3D QLC NAND
SanDisk 027207 2T00 CHINA 5287DUKPROFL
SanDiskはWD東芝連合と呼ばれるタッグを組んでいて、NANDメモリの大部分をキオクシア(旧東芝メモリ)から供給します。
WD Green SN3000に搭載されたNANDメモリは、1世代型落ちの「BiCS 6」です。
| 「SN3000」のNAND構成 | |
|---|---|
![]() | |
| ブランド名 | KIOXIA BiCS 6 |
| 基本スペック | 積層数:162層 ※1 記憶方式:QLC(4 bit) 記憶容量:1 Tb(1テラビット) 記憶密度:13.86 Gbit/mm² ※2 I/O速度:2000 MT/s |
| 構成 | 合計2048 GB 1024 Gb x 16 x 1 = 16384 Gb |
※1:81 + 81層の2デッキ構造(CuA方式) / 2:ISSCC 2021公表値の10.4 Gbit/mm²をQLC換算(*1.333…)した数値
キオクシアが現時点で製造する最新世代が「BiCS 8」です。SN3000の「BiCS 6」は1世代落ちですが、今でもなかなか優秀な特性。
記憶容量が1 Tb(1テラビット)もあり、たった1個のチップで容量2 TBを実現します。
ただし、記憶方式は悪名高い「QLC NAND(別名:4-bit MLC NAND)」です。
理論上、TLC NAND方式と比較して同じ製造コストで容量を約1.33倍に増やせますが、代わりに書き込み性能を少なくとも半分以上も犠牲にします。
実際にどれくらい書き込み性能が悪くなるかは・・・ 実機ベンチマークのお楽しみです。
TBW(書き込み保証値)の比較
| SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
|---|---|---|---|
| WD Green SN3000 | – | 150 TBW | 250 TBW |
| WD Blue SN5000 (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 600 TBW | 900 TBW |
| WD Black SN7100 (WD Black SN7100:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
「WD Green SN3000」の書き込み保証値は、容量1 TBあたり150 TBです。容量2 TB版だと250 TB(= 125 TB)に減ってます。
上の二兄弟と比較して、4~5分の1まで保証値が削られ、メーカー保証年数も5年から3年にカットされます。
- 普通に使った場合:約13.7年
(1日あたり平均50 GBの書き込みを想定) - 毎日AAAゲームをDLする:約6.8年
(1日あたり平均100 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの写真を入れる:約2.7年
(1日あたり平均250 GBの書き込みを想定) - 毎日一眼レフの4K~8K素材を入れる:約0.7年
(1日あたり平均1000 GBの書き込みを想定)
ワークロード別の想定耐用年数をざっくり試算してみた。
PS5の増設ストレージやゲーミングPCのメインSSDなど。ごく普通の使い方なら約10年以上もかかる計算になり、3年間のメーカー保証を余裕で消費できます。
仮に1日100 GB書き込んでも、TBWを使い切るのに約7年です。
一見少ないように見えて、自作PC(ゲーミングPC)で使う分には十分な保証値(TBW)です。
ただし、デジタル一眼カメラ(RAW写真)が趣味の方、プロの映像作家(映像クリエイター)の方はもっともっと保証値の高いSSDを推奨します。
「SN850X」(容量8 TB)の保証値は4800 TBWです。業務レベルの過酷なワークロードにある程度の耐性があります。
まだ足りない?・・・なら、保証値10000 TBW(= 10 PBW)を誇る石板級SSD「NE1N8TB」も検討する価値あり。
| SSD | 500 GB | 1 TB | 2 TB |
|---|---|---|---|
| WD Black SN8100 (WD SN8100:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
| Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
| MOVE SPEED Panther (MOVE SPEED Panther:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
| KIOXIA EXCERIA PRO (EXCERIA PRO:レビュー) | – | 400 TBW | 800 TBW |
| WD Blue SN5000 (WD Blue SN5000:レビュー) | – | 600 TBW | 900 TBW |
| KIOXIA EXCERIA PLUS G3 (KIOXIA EXCERIA G3 PLUS:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
| CFD SFT6000e (CFD SFT6000e:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
| Samsung 990 PRO (990 PRO:レビュー) | – | 600 TBW | 1200 TBW |
| Samsung 980 PRO (980 PRO:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
| Solidigm P44 Pro (Solidigm P44 Pro:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
| Crucial P5 Plus (Crucial P5 Plus:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
| Lexar NM790 (Lexar NM790:レビュー) | – | 1000 TBW | 1500 TBW |
| HIKSEMI FUTURE SSD (HIKSEMI FUTURE SSD:レビュー) | – | 1800 TBW | 3600 TBW |
| SK Hynix Gold P31 (SK Hynix Gold P31:レビュー) | 500 TBW | 750 TBW | 1200 TBW |
| WD_BLACK SN770 (WD_BLACK SN770:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
| KIOXIA EXCERIA PLUS G2 (KIOXIA EXCERIA G2 PLUS:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
| KIOXIA EXCERIA G2 (KIOXIA EXCERIA G2:レビュー) | 200 TBW | 400 TBW | 800 TBW |
| WD Blue SN570 (WD Blue SN570 NVMe:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | – |
| Crucial MX500 (Crucial MX500:レビュー) | 180 TBW | 360 TBW | 700 TBW |
| FireCuda 530 (FireCuda 530:レビュー) | 640 TBW | 1275 TBW | 2550 TBW |
| WD Black SN850 (SN850:レビュー) | 300 TBW | 600 TBW | 1200 TBW |
WD Green SN3000の性能をベンチマーク
テスト環境を紹介

| テスト環境 「ちもろぐ専用:SSDベンチ機」 | ||
|---|---|---|
| Core i7 13700K16コア24スレッド(TDP:125 W) | ||
| 虎徹Mark III120 mmサイドフロー空冷 | ||
| BIOSTARZ790 Valkyrie | ||
| DDR5-6000 16GB x2G.Skill Trident Z5 Neo RGB | ||
| RTX 4060 Ti | ||
| WD Green SN3000 1TB | ||
| HIKSEMI FUTURE70-02TB 2TB | ||
| 1000 W「Corsair RM1000x ATX3.1」 | ||
| Windows 11 Pro検証時のバージョンは「22H2」 | ||
| ドライバ | NVIDIA 536.40 WHQL | |
| ディスプレイ | 3840 x 2160@160 Hz使用モデル「TCL 27R83U」 | |
SSDベンチマークに使用する専用の機材です。
最大15.76 GB/sまで対応できるPCIe 5.0世代の「Intel Z790」マザーボードに、シングルスレッド性能が非常に速い「Core i7 13700K」を搭載。
Ryzen 9000シリーズなど最新プラットフォームと比較して、絶対的な性能ですでに型落ち気味ですが、SSDに対する遅延の少なさで依然として最高峰です。

原則として、CPUに直結したM.2スロットまたはPCIeスロットにテスト対象のSSDを接続します。チップセット経由だと応答速度が低下※してしまい、SSD本来の性能を検証できません。
ベンチ機に採用した「Z790 Valkyrie」は、PCIe 5.0対応のM.2スロットを1本、PCIeスロットを2本備えます。複数の爆速SSDをCPUに直結できる稀有なマザーボードです。
※チップセット経由による性能低下はAMDチップセットだと緩和されますが、CPU直結時と比較して性能が下がる傾向自体は同じです。
そのほか、「BitLocker」と呼ばれるWindows環境で使えるハードウェア暗号化機能も無効化済みです。BitLockerを有効化すると、SSDのランダムアクセス性能が最大50%も下がります。
正確なベンチマークを取るならBitLockerを必ず無効化しましょう。

SSDを熱から保護するサーマルスロットリングによって性能に悪影響が出ないように、以下のような手段でテスト対象のSSDを冷却しながらベンチマークを行います。
- M.2ヒートシンク「Thermalright HR-09」を装着
- 120 mmケースファンを至近距離に設置して冷却
SSDを徹底的に冷やして、サーマルスロットリングがテスト結果に影響を与えないように対策しています。
なお、10分間の温度テスト時のみM.2ヒートシンクとケースファンを取り除いて、温度の上昇を観察します。
SSDドライブ情報と利用できる容量

- インターフェース:NVM Express
- 対応転送モード:PCIe 4.0 x4
- 対応規格:NVM Express 2.0
- 対応機能:S.M.A.R.T. / TRIM / VolatileWriteCache
「WD Green SN3000」の初期ステータスをCrystal Disk Infoでチェック。「PCIe 4.0 x4」で接続されています。
最新規格のNVM Express 2.0対応です。

フォーマット時の初期容量は「1.81 TB」でした。
搭載されたNANDメモリ(2048 GB分)のうち、約2.3%(24 GB)を予備領域に割り当てる、一般的な設定です。
Crystal Disk Mark 8
世界的に有名な定番SSDベンチマークツール「Crystak Disk Mark 8」を使って、SSDの基本的な性能をテストします。
初期設定「1 GiB」と最大設定「64 GiB」で、テスト容量による性能変化も簡易的にチェック可能です。
| Crystal Disk Mark 8の結果※クリックで画像拡大します | |
|---|---|
![]() | ![]() |
| テストサイズ:1 GiB(MB/s) | テストサイズ:64 GiB(MB/s) |
![]() | ![]() |
| テストサイズ:1 GiB(レイテンシ) | テストサイズ:64 GiB(レイテンシ) |
シーケンシャル読込速度が約5100 MB/sに達し、メーカー公称値(5000 MB/s)をきっちり上回ります。
シーケンシャル書き込み速度は約4200~4400 MB/s前後、こちらもメーカー公称値(4200 MB/s)を見事にクリアします。
テスト容量による性能変化(1 GiB → 64 GiB)もごくわずか、DRAMレス(HMB:ホストメモリバッファ)方式SSDとして珍しく一貫性が高いです。

SSDの技術的な進化度合いをはかる「4KBランダムアクセス(RND4K Q1T1)」のレイテンシ(応答時間)を比較したグラフです。
WD Green SN3000は約46.21 μsを記録します。上位モデル「SN7100」に30%以上の大差を付けられますが、過去レビュー平均値を上回る性能です。

書き込みレイテンシは平均的です。上位をPhison系コントローラに独占されています。
ATTO Disk Benchmark

ATTO Disk Benchmarkは、細かく分割したテストサイズごとにSSDの帯域幅(シーケンシャル性能)を測定するベンチマークです。
Windowsの日常的な負荷をシミュレーションするため、テストサイズを小さくして、並列処理を無効化します。
リザルト画面からSSDの評価が分かりにくいので、表計算ソフトでグラフ化して他のSSDと比較します。
テストサイズごとの読み出し性能は正直やや平凡な印象です。
ごく小さな領域(512 B)で上位モデルSN7100と拮抗するものの、16 KB以上から大きく水を開けられます。
書き込み性能はさらに伸びが悪く、すべてのファイルサイズでSN7100に届きません。

WD Green SN3000を実運用で試す
FF14のロード時間を比較
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)で、ゲームロード時間を測定します。ベンチマーク終了後に、ログファイルからロード時間を読み取ります。

WD Green SN3000のロード時間は「6.40秒」でした。
可も不可もない普通のロード時間です。中華ハイエンドSSD(蝉族)にも追いつかないです。
FPSタイトルのロード時間を比較
PCMark 10(Pro版)を使って、「Battlefield V」「Call of Duty Black Ops IV」「Overwatch 2」のロード時間を測定します。
なお、測定されたロード時間は各スコアから逆算された概算値(ざっくりとした予想値)です。実際のロードとは異なっているので注意してください。
テストされたゲームタイトル3本(Battlefield V / Call of Duty / Overwatch 2)すべてで、WD Green SN3000はSN7100に10%ほど遅れるロード時間です。
HP FX700やLexar NM790など、人気の高い中華ハイエンドSSDにあと一歩及ばない性能です。
DirectStorageのロード時間を比較

ゲームロード時間を大幅に高速化する「DirectStorage API」適用時のロード時間をベンチマーク。
- CPU展開(Core i7 13700K)
- GPU展開(RTX 4060 Ti)
以上2パターンのロード時間を比較しました。基本的に、シーケンシャル性能が速いほど、ロード時間を短縮できるはずです。
Windows 11はゲームのロード時間を大幅に短縮する「DirectStorage API」に対応しています。
SSDに保存されているゲームデータをメインメモリに送り込み、メインメモリからVRAMに流し込みます。入ってきたデータをCPU または GPUの凄まじい演算性能で展開(解凍)し、ゲームロード時間を短縮する技術です。
NVMe SSDからメインメモリにデータを転送する部分で、SSDのシーケンシャル性能が重視されます。SATA SSDよりNVMe SSD、同じNVMe SSDでもPCIe 4.0やPCIe 5.0の方が有利になる可能性が高いです。
CPUで展開する場合は、Core i7 13700K(CPU)の演算性能がボトルネックになってしまい、SSDの性能差が一定ラインで頭打ちに。
RTX 4060 Ti(GPU)で展開すると、シーケンシャル性能に比例した性能差がハッキリと出ます。
WD Green SN3000は0.22秒(18.8 GB/s)前後を叩き出し、Gen4世代(7000 MB/s超)SSDに近い性能です。
ファイルコピーにかかった時間
Windows標準のコピペ機能と目視によるストップウォッチでは正確性に欠けるので、ファイルコピーに便利なフリーソフト「DiskBench」を使って、ファイルコピーに掛かった時間を計測します。
- ゲームフォルダ(容量85.3 GB / 81424個)
- 写真ファイル(容量113 GB / 5012枚)
- 圧縮データ(容量256 GB / zipを2個)
以上3つの素材をファイルコピーテストに使います。ソース(基準となるストレージ)は安定した性能に定評がある「Optane SSD P5810X 400GB」です。
書き込み(Optane P5810X → WD Green SN3000)のコピペ時間です。
・・・かなり驚きました。QLC NANDを使っているから、もっと悲惨な結果を想像していたのに、実際の結果は意外と良好です。
ゲームフォルダ(85 GB)の書き込みに至っては、なんとSamsung 9100 PROに匹敵します。
SanDisk SNシリーズ最下位グレードでも、SSDコントローラが上位モデルと同じ「Polaris 3」なだけあり、弱点の隠し方が巧みです。
一度に巨大なpSLCキャッシュを即座に展開して吸収し、まるでTLC NANDかのように振る舞います。
写真フォルダ(113 GB)やZipファイル(256 GB)の書き込みも目詰まりなく終わらせ、軽く300 GB近い巨大なキャッシュ展開が見られます。
一般的な使い方において、SN3000が極端に遅くなるシーンはなかなか目にできないでしょう。

次は読み込み(WD Green SN3000 → Optane P5810X)のコピペ時間です。
おおむねシーケンシャル性能(最大5000 MB/s)に比例する、平凡な速度を出せています。
比較グラフをよく見ると、シーケンシャル性能の割にコピー時間が遅いSSDがポツポツと見られます。
なぜシーケンシャル性能の割に遅いSSDが出てしまうのか。理由は単に「間髪入れずに次のコピーテストを実行」しているからです。
- Zip(256 GB)→ 写真(113 GB)→ ゲーム(85.3 GB)の順番
SSDは書き込み性能を稼ぐためにpSLCキャッシュを展開して耐える製品が多いですが、このpSLCキャッシュの回復が遅いと・・・次のコピーテストに間に合わずNANDメモリ本来の性能でテストが実行されます。
pSLCキャッシュをスピーディーに再展開できるかかどうかも実力の内と(筆者は)考えているので、コピーテストは間髪入れず次から次へと実行します。
なお、データコピー先のリファレンスSSD「Optane P5810X」は、pSLCキャッシュの概念すら無い特殊なSSDだからベンチマーク結果に悪影響を及ぼさないです。
Premiere Pro CC:4K動画プレビュー
動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro CC」に、4K動画素材(448 MB/s)と2K動画素材(175 MB/s)を読み込み、2つの動画を同時にプレビューします。
Premiere Proの動画素材プレビューは、素材を配置しているストレージの性能に影響を受けやすく、SSDの性能が不足すると「コマ落ち」が発生しやすいです。
Premiere Proの標準機能「コマ落ちインジケータ」で落としたフレームを測定し、動画素材の総フレーム数で割ってドロップフレーム率を計算します。

4K + 2K動画プレビューのドロップフレーム率は約13.8%です。
10%の壁を超えられない平凡グループの仲間入りを果たします。

4K動画プレビューのドロップフレーム率は0%で見事に完封します。

PCMark 10:SSDの実用性能

PCMark 10 Professional Editionの「Full System Drive Benchmark」を使って、SSDの実際の使用シーンにおける性能を測定します。
- PCMark 10(UL Benchmarks)
Full System Drive Benchmarkには23種類のテストパターン(Trace)が収録されており、パターンごとの転送速度や応答時間を測定し、SSDの実用性能をスコア化します。
なお、SSDは空き容量によって性能が大きく変化する可能性があるため、空き容量100%だけでなく容量を90%埋めた場合(= 空き容量10%)のテストも行いました(※2回:連続で約2時間のワークロード)。
WD Green SN3000のストレージスコア(空き容量10%時)は「3058点」です。空き容量100%なら4034点です。
空き容量による性能低下は約24%とやや大きめ。
一般的にQLC NANDは空き容量が減ると、性能の下がる度合いも大きいですが、容量2 TBのおかげで低下幅を緩和できています。

PCMark 10ストレージテストの細かい内訳を確認します。
興味深い傾向です。
読み込みワークロードが占めるAdobe評価とゲームロード評価で、約30%近い大きな下落を記録します。
同じく読み込みワークロードのOffice評価もやや大きく、約20%の下落です。ファイルコピー評価が約9%しか下がっておらず、pSLCキャッシュの使い方が上手です。
つまり、WD Green SN3000はQLC NANDだけれど、本来苦手な書き込みよりも読み込みで性能低下が目立っています。
といっても・・・下がった後の性能ですら、WD Black SN770やSamsung 990 EVOに迫るスコアを維持していますし、実用上の性能はなかなか悪くないです。
| 実用スコアの内訳 Full System Drive Benchmark | |
|---|---|
| Adobe Score | Adobe Acorbatの起動 Adobe After Effectsの起動 Adobe Illustratorの起動 Adobe Premiere Proの起動 Adobe Lightroomの起動 Adobe Photoshopの起動 Adobe After Effets Adobe Illustrator Adobe InDesign Adobe Photoshop(重たい設定) Adobe Photoshop(軽量設定) |
| Game Score | Battlefield Vの起動(メインメニューまで) Call of Duty Black Ops 4の起動(メインメニューまで) Overwatchの起動(メインメニューまで) |
| Copy Score | 合計20 GBのISOファイルをコピー(書き込み) ISOファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) ISOファイルをコピー(読み込み) 合計2.37 GBのJPEGファイルをコピー(書き込み) JPEGファイルを作成してコピー(読み込みと書き込み) JPEGファイルをコピー(読み込み) |
| Office Score | Windows 10の起動 Microsoft Excel Microsoft PowerPoint |
15分間の連続書き込みテスト
1 MBのテストファイルを15分間に渡って、ただひたすら連続して書き込み続ける過酷な検証方法です。
コンシューマ向けSSDのほとんどは、数分ほど連続して書き込むだけで「素の性能」を明らかにできます。
pSLCキャッシュの挙動やサイズ、キャッシュが切れた後の性能低下など。連続書き込みテストで様々な挙動が判明します。
テスト開始から3900 MB/s超のスピードを叩き出し、その後432 GB書き込んだあたりでpSLCキャッシュが切れてQLC NANDとの混合モードに移行し、平均350 MB/sへ鈍化します。

| キャッシュ構造 | 平均書込速度 (Average) |
|---|---|
| 1段階 pSLCキャッシュ | 2307 MB/s |
| 2段階 pSLC + TLC | 359 MB/s |
| 3段階 TLCネイティブ | 160 MB/s |
ブロックファイルを約1800 GB書き込んで、キャッシュ構造をさらに深堀りします。
pSLCキャッシュによる平均2300 MB/s前後の高速モードから始まり、約396 GBほど書き込んだあたりで混合モード(pSLC + QLC)に移行します。
pSLCキャッシュが瞬間的に切れる挙動を定期的に繰り返しつつ、平均的にはテスト終了までずっと混合モードをほぼ途切れず維持します。
切れた瞬間のみ160 MB/sまで落ち込み、平均360 MB/sの書き込み速度です。
QLC NANDを使ったSSDとして過去に例がない性能です。TLC NANDを使った安物のSATA SSD※より、はるかにマトモな性能だったりします。
※Crucial BX500やCrucial T500など、TLC NAND採用でもSN3000より遅いSSDがたくさん実在します。

(空き容量:100%時)
実際の使用感をチェックしました。
十分な空き容量があれば、100 GB単位の巨大なpSLCキャッシュをサクッと展開でき、QLC NANDの割に安定した書き込み性能を発揮します。
キャッシュの再展開もスピーディーです。128 GB分の書き込みを終えて、直後にまた128 GBを投げても、きちんとpSLCキャッシュが展開されます。
SN8100やSN7100と同様に、SanDisk製「nCache 4.0」アルゴリズムはやはり優秀です。

(空き容量:10%時)
もちろん、空き容量10%は苦戦します。
60~70 GB程度のpSLCキャッシュ展開にとどまり、枯渇すると平均350 MB/sに落ち込みます。


時間あたりの書き込み量を比較したグラフです。
WD Green SN3000 2TBは15分で約703 GBを書き込みます。SN7100(TLC NAND)のざっくり半分程度にとどまります。
QLC化で約3~4分の1まで下がる事例も少なくないので、半分程度に抑えられるなら悪くないです。
SSDの動作温度をテスト
高負荷時のセンサー温度

- ドライブ温度:NANDメモリの温度
- ドライブ温度2:SSDコントローラの温度
- ドライブ温度3:NANDメモリの温度
モニターソフト「HWiNFO」で表示できる温度センサーは3つです。3つとも独立した温度を表示します。

ケースファンによるエアフローを一切与えない環境で、SSDが激しく発熱しやすい「連続書き込みテスト」を10分間実行しました。
テスト開始から急速に温度が上昇し続け、最終的に115℃まで上昇します。これほど強烈な温度でも、サーマルスロットリングらしい症状が一切確認できないです。
性能をわずかに微振動させながら温度を調整※する、非常にきめ細かい制御が行われています。
※ 110℃が数秒くらい続くと「Warning: Temperature Exceeded Critical Threshold」トリガーが発動して、サーマルスロットリングモードに移行します。発生しても、制御があまりに細かすぎて体感はできないので安心を。
なお、一点興味深いパターンが発見できました。
テスト中に突如としてpSLCキャッシュが全回復し、書き込み性能が爆速化します。その時、NAND側の温度が下がり、代わりにSSDコントローラの温度が急上昇しています。
この反転パターンから、爆速モード時はNANDメモリを使っておらず、SSDコントローラ側(SRAM + HMB)でほとんど完結していると推測できます。
サーモグラフィーで表面温度を確認

テスト開始から約8~9分経過したあたりで、サーモグラフィーカメラを使ってSSDの表面温度を撮影します。
- NANDメモリ(左):80 ~ 81℃
- NANDメモリ(左):81 ~ 82℃
- SSDコントローラ(右):107 ~ 109℃
SSDコントローラの表面温度は、HWiNFOが表示するセンサー読み温度とざっくり一致します。
NANDメモリ側が約10℃も上振れますが、上振れする分には問題なし。メーカー側に温度を不当に低く見せようとする意思がなく、安全な熱制御を優先する姿勢が明らかです。
別売りのM.2ヒートシンクは不要です。マザーボード側の付属ヒートシンクがあれば十分、またはケースファンからゆるく風が当たっていれば余裕で冷やせます。
SanDisk純正ソフトの対応状況
純正ソフト「SanDisk Dashboard」

- SanDisk Dashboard(support-en.sandisk.com)
SanDisk公式サイトから無料でダウンロードできる、純正ユーティリティ「SanDisk Dashboard」に対応します。
SSDの基本ステータス(S.M.A.R.T.情報)を見たり、書き込みキャッシュを有効 / 無効化したり、健康状態のレポートを出力する機能もあります。
ただし、Samsung SSDのようにOP領域(オーバープロビジョニング容量)を任意で指定する設定は見当たりませんでした。

SSD本体の制御ソフトウェア(ファームウェア)の更新も可能です。
クローンソフト「Acronis True Image」

- Acronis True Image for Western Digital(support-en.sandisk.com)
WD Green SN3000を購入したユーザー限定で、SSDクローンソフト「Acronis True Image for WD」を5年間使えます。
ソースディスク(クローン元)と、ターゲットディスク(クローン先)を選んで、「ブータブルOSを含むクローンを作成」でSSDのクローンがあっさり完成です。
最後のオプション画面から、クローンしない領域(フォルダやファイル)を任意で選ぶ「除外設定」もできます。

まとめ:SSD暴騰時代の救世主になる予感

(QLC NANDでも東芝 x SanDiskタッグは強い)
「WD Green SN3000」のデメリットと弱点
- QLC NAND採用
- DRAMキャッシュなし
- 平凡なランダムアクセス性能
- 素の書き込み性能が遅い
- 高負荷時の温度が高い
- 空き容量による性能低下あり
- 保証値が少ない(250 TBW)
「WD Green SN3000」のメリットと強み
- 5000 MB/s超のシーケンシャル性能
- ゲームロード時間はそこそこ
- スピーディーかつ広大な
pSLCキャッシュ(約400 GB) - 書き込みに強いキャッシュ構造
- 片面実装で扱いやすい
- SanDisk純正ソフトウェアに対応
- ファームウェア更新に対応
- 「Acronis True Image (5年)」
- 3年保証
現時点の価格設定と市場にもとづくと、WD Green SN3000に高い評価は与えられないでしょう。
少ない差額を払えば、SNシリーズの上位モデル「SN7100」に手が届くため、あえてSN3000を選ぶ理由を見つけられないです。
しかし、将来的にSN3000は魅力的なオプションになる可能性を秘めています。
NAND製造メーカー各社がTLC NANDの減産を進め、おすすめするに値する定番SSDたちが今の価格で買えなくなる未来が到来します。
そうなってしまった時、相対的に価格が安く、それなりの性能とソフトウェア対応を備えるSN3000は・・・決して悪くない選択肢です。
SanDisk側も現状の歪なラインナップを自覚してるでしょうし、値下げではなく、上位モデルの値上げで「歪」を修正する可能性が高いです。

以上「WD Green SN3000レビュー:SSD高騰時代のちょうどいいになる未来」でした。

「WD Green SN3000」を入手する
レビュー時点の価格は容量2 TBモデルが約1.8~万円です。
「WD Green SN3000」の代替案
安価な代替案が「Crucial P3 Plus」です。
容量1 TBに限りTLC NAND版が流通していて、運良くTLC版を引ければコストパフォーマンスが高いです。
少し値段が上がってしまいますが、まず間違いない定番モデルが「WD Black SN7100」です。
ランダムアクセス、ゲームロード、キャッシュ制御。さらに省電力性まで。どこを取ってもバランスがいい最高のオールラウンダーモデル。
コスパ良く高性能な大容量モデルなら、典型的な蝉族に分類される「Biwin NV7400(4TB)」がおすすめ。
現行Gen4ハイエンドに匹敵する性能を手頃な価格で買えます。
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